JP2016138813A - 水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法 - Google Patents
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Abstract
Description
水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して前記緻密膜にHeガスを透過させる工程と、
単位時間あたりの前記Heガスの透過量F、前記Heガス透過時に前記緻密膜に加わる差圧P、及び前記Heガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式によりHe透過度を算出し、該He透過度に基づいて前記緻密膜の緻密性を評価する工程と、
を含む、方法が提供される。
本発明は、水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法に関する。水酸化物イオン伝導緻密膜は、好ましくは層状複水酸化物緻密膜(LDH緻密膜)であるが、これに限定されず、水酸化物イオン伝導性を有するあらゆる緻密膜であってよく、例えば水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる膜であることができる。いずれにしても、水酸化物イオン伝導緻密膜は透水性を有しない程に緻密な膜であることが望まれる。この緻密膜は水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないことで、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。前述したとおり、電池用固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、バルク形態のLDH緻密体では高抵抗であるとの問題があったが、緻密膜の形態とすることで厚みを薄くして低抵抗化を図ることができる。すなわち、緻密膜は、金属空気電池(例えば亜鉛空気電池)及びその他各種亜鉛二次電池(例えばニッケル亜鉛電池)等の各種電池用途に適用可能な固体電解質セパレータとして、極めて有用な材料となりうる。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が緻密膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。
上述のとおり、水酸化物イオン伝導緻密膜は、水酸化物イオン伝導性を有するあらゆる緻密膜であってよく、例えば水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる膜であることができる。水酸化物イオン伝導性を有する無機材料は、一般式:M2+ 1−xM3+ x(OH)2An− x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)で表される層状複水酸化物を含んでなるのが好ましい。すなわち、好ましい水酸化物イオン伝導緻密膜は層状複水酸化物緻密膜、すなわちLDH緻密膜(以下、LDH膜という)である。水酸化物イオン伝導緻密膜は透水性を有しない膜であることが望まれる。
緻密膜(好ましくはLDH膜)は多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、緻密膜が、多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられた複合材料の形態で用意される。ここで、多孔質基材の表面とは、多孔質基材の概形を板として巨視的に見た場合の板面の最表面を主として指すが、多孔質基材中における微視的に見て板面最表面の近傍に存在する孔の表面をも付随的に包含しうるのはいうまでもない。
LDH膜及びLDH含有複合材料は、(a)多孔質基材を用意し、(b)所望により、この多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、(c)多孔質基材に水熱処理を施してLDH膜を形成させることにより、好ましく製造することができる。
多孔質基材は、前述したとおりであり、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらの多孔質セラミックスを用いるとLDH膜の緻密性を向上しやすい傾向がある。セラミックス材料製の多孔質基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を多孔質基材に施すのが好ましい。
所望により、多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させてもよい。このように起点物質を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。このような起点の好ましい例としては、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種、LDHの構成要素となりうる陽イオンを与える化学種、又はLDHが挙げられる。
LDHの結晶成長の起点は、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種であることができる。このような陰イオンの例としては、CO3 2−、OH−、SO3 −、SO3 2−、SO4 2−、NO3 −、Cl−、Br−、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。したがって、このような起点を与えうる起点物質を、起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質基材の表面に付着させればよい。表面に陰イオンを与える化学種が付与されることで、Mg2+、Al3+等の金属陽イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
(例えば濃硫酸)、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸等のスルホン化可能な酸に浸漬すればよく、他のスルホン化技術を用いてもよい。スルホン化可能な酸への浸漬は室温又は高温(例えば50〜150℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜14日間である。
LDHの結晶成長の起点は、層状複水酸化物の構成要素となりうる陽イオンを与える化学種であることができる。このような陽イオンの好ましい例としては、Al3+が挙げられる。この場合、起点物質が、アルミニウムの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物及びヒドロキシ錯体からなる群から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物であるのが好ましい。したがって、このような起点を与えうる起点物質を起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質部材の表面に付着させればよい。表面に陽イオンを与える化学種が付与されることで、LDHの層間に入りうる陰イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
(c)で用いる原料水溶液(すなわちLDHの構成元素を含む水溶液)をそのまま工程(b)に用いることができる。この場合であっても、工程(b)における水熱処理を密閉容器(好ましくはオートクレーブ)中、酸性ないし中性のpH域(好ましくはpH5.5〜7.0)にて50〜70℃という比較的低温域で行うことにより、LDHではなく、Al
(OH)3の核形成を促すことができる。また、Al(OH)3の核形成後、核形成温度での保持又は昇温により、尿素の加水分解が進むことで原料水溶液のpHが上昇していくため、LDHの成長に適したpH域(好ましくはpH7.0超)で工程(c)にスムーズに移行することができる。
(OH)3である。特に、Al(OH)3に変換することで、これを核としてLDHの成長を促進させることができる。そこで、このAl(OH)3を水熱処理により多孔質基材の表面に均一に形成させた後に、同じく水熱処理を伴う工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。アルミニウムの蒸着は物理蒸着及び化学蒸着のいずれであってもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。また、アルミニウムの変換のための水熱処理に用いる水溶液は、既に蒸着により与えられているAlと反応してAl(OH)3を生成可能な組成であればよく、特に限定されない。
結晶成長の起点は、LDHであることができる。この場合、LDHの核を起点としてLDHの成長を促すことができる。そこで、このLDHの核を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
LDHの構成元素を含む原料水溶液中で、多孔質基材(所望により起点物質が付着されうる)に水熱処理を施して、LDH膜を多孔質基材の表面に形成させる。好ましい原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し(例えばpH7.0超、好ましくは7.0を超え8.5以下)、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH膜を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH膜の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
本例では、多孔質基材上に層状複水酸化物(LDH)膜を形成したLDH含有複合材料試料として試料A1〜A10を以下のようにして作製した。
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、1150℃で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
試料A1〜A6についてのみ、以下の手順により多孔質基材に対してポリスチレンスピンコート及びスルホン化を行った。すなわち、ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlを多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3 −=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(4)で作製した原料水溶液と上記(3)でスルホン化した多孔質基材(試料A1〜A6)又は上記(2)で洗浄した多孔質基材(試料A7〜A10)を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70〜75℃で168〜504時間水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜の形成を行った。このとき、水熱処理の条件を適宜変更することにより、様々な緻密性を有する10種類の配向膜を作製した。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.0〜2.0μmであった。こうして、LDH含有複合材料試料(以下、複合材料試料という)として試料A1〜A10を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとしての形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定してXRDプロファイルを得る。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。その結果、膜試料A1〜A10のいずれも層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。
He透過性の観点から膜試料A1〜A10の緻密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、図1A及び図1Bに示されるHe透過度測定系10を構築した。He透過度測定系10は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計12及び流量計14(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ16に供給され、この試料ホルダ16に保持された緻密膜18の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
Zn透過性の観点から膜試料A1〜A10の緻密性を評価すべく、Zn透過試験を以下のとおり行った。まず、図2A及び図2Bに示されるZn透過測定装置40を構築した。Zn透過測定装置40は、L字状の開口管で構成される第一槽44にフランジ62aが一体化されたフランジ付き開口管(PTFE製)と、L字状の管で構成される第二槽46にフランジ62bが一体化されたフランジ付き開口管(PTFE製)とをフランジ62a,62bが対向するように配置し、その間に試料ホルダ42を配置し、試料ホルダ42に保持された緻密膜の一方の面から他方の面にZnが透過可能な構成とした。
以下に示される例はHe透過度及びZn透過割合の評価を行った例ではないが、各種多孔質基材上にLDH緻密膜を形成できることを示す参考例である。
(1)多孔質基材の作製
<試料B1〜B3>
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、表2に示される温度で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。焼成後、アルミナ製多孔質基材を2cm×2cm×0.3cmの大きさに加工した。
ジルコニア(東ソー社製、TZ−3YS(試料B4の場合)又はTZ−8YS(試料B5の場合))、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ジルコニア):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、表2に示される温度で3時間焼成して、ジルコニア製多孔質基材を得た。焼成後、ジルコニア製多孔質基材を2cm×2cm×0.3cmの大きさに加工した。
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3 −=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)で洗浄した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料B1〜B5という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.5μmであった。こうして、層状複水酸化物含有複合材料試料(以下、複合材料試料B1〜B5という)を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとしての形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料B2の結晶相を測定したところ、図6に示されるXRDプロファイルが得られた。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定した。その結果、膜試料B2は層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。なお、図6に示されるXRDプロファイルにおいては、膜試料B2が形成されている多孔質基材を構成するアルミナに起因するピーク(図中で○印が付されたピーク)も併せて観察されている。膜試料B1及びB3〜B5についても同様に層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。
膜試料B2の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた膜試料B2の表面微構造のSEM画像(二次電子像)を図7に示す。
膜試料B2について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は膜試料表面の6μm×6μmの領域について行われた。その結果、膜の表面の気孔率は19.0%であった。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出したところ、81.0%であった。
膜試料B1〜B5が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図9Aに示されるように、例B1において得られた複合材料試料120(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部22aを備えたシリコンゴム122を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器124,126で挟んで接着した。シリコンゴム122側に配置されるアクリル製容器124は底が抜けており、それによりシリコンゴム122はその開口部122aが開放された状態でアクリル製容器124と接着される。一方、複合材料試料120の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器126は底を有しており、その容器126内にはイオン交換水128が入っている。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料120の多孔質基材側にイオン交換水128が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。図9Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定した。このとき、アクリル製容器124の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取った。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定した。その結果、25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった。このことから、膜試料B1〜B5(すなわち機能膜)はいずれも透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
12 圧力計
14 流量計
16 試料ホルダ
16a ガス供給口
16b 密閉空間
16c ガス排出口
18 緻密膜
20 多孔質基材
22 接着剤
24 治具
26a,26b 密封部材
28a,28b 支持部材
30 締結手段
32 継手
34 ガス供給管
40 Zn透過測定装置
42 試料ホルダ
44 第一槽
46 第二槽
48 第一の水溶液
50 第二の水溶液
52 緻密膜
54 多孔質基材
56 接着剤
58 治具
60a,60b 密封部材
62a,62b フランジ
64 締結手段
Claims (17)
- 水酸化物イオン伝導緻密膜の緻密性を評価する方法であって、
水酸化物イオン伝導緻密膜の一方の面にHeガスを供給して前記緻密膜にHeガスを透過させる工程と、
単位時間あたりの前記Heガスの透過量F、前記Heガス透過時に前記緻密膜に加わる差圧P、及び前記Heガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式によりHe透過度を算出し、該He透過度に基づいて前記緻密膜の緻密性を評価する工程と、
を含む、方法。 - 前記差圧Pが0.001〜10atmの範囲内となるようにHeガスが供給される、請求項1に記載の方法。
- 前記方法が、前記Heガスの供給に先立ち、前記緻密膜を試料ホルダに保持する工程をさらに有し、前記試料ホルダが、
前記Heガスの試料ホルダ内への導入を可能とするガス供給口と、
前記緻密膜の前記一方の面の所定領域への前記Heガスの供給を可能とする密閉空間と、
前記緻密膜を透過したHeガスの排出を可能とするガス排出口と、
を備えてなる、請求項1又は2に記載の方法。 - 前記He透過度が10cm/min・atm以下である緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に適したものとして認定し、所望により該認定された緻密膜を二次電池用水酸化物イオン伝導性セパレータの用途に供する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記He透過度が1.0cm/min・atm以下である、請求項4に記載の方法。
- 前記認定された緻密膜は、水接触下で評価した場合における単位面積あたりのZn透過割合が10m−2・h−1以下である、請求項4又は5に記載の方法。
- 前記Zn透過割合が1.0m−2・h−1以下である、請求項6に記載の方法。
- 前記緻密膜が、水酸化物イオン伝導性を有する無機材料及び/又は有機材料を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記水酸化物イオン伝導性を有する無機材料が、一般式:M2+ 1−xM3+ x(OH)2An− x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)で表される層状複水酸化物を含んでなる、請求項8に記載の方法。
- 前記一般式において、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH−及び/又はCO3 2−を含む、請求項9に記載の方法。
- 前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記緻密膜と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなる、請求項9又は10に記載の方法。
- 100μm以下の厚さを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記緻密膜が、多孔質基材の少なくとも一方の表面に設けられた複合材料の形態で用意される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記多孔質基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項13に記載の方法。
- 前記多孔質基材が、セラミックス材料で構成され、該セラミックス材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の方法。
- 前記多孔質基材が、0.001〜1.5μmの平均気孔径を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記多孔質基材の表面が、10〜60%の気孔率を有する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
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