以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(以下、単に「ゼオライト膜複合体」ということがある。)は、多孔質支持体と該多孔質支持体の表面に形成されたゼオライト膜とを有する。このゼオライト膜は、好ましくはゼオライトが膜状に結晶化してなるものである。
[多孔質支持体]
本発明において用いられる多孔質支持体は、表面にゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性を有することが好ましい。好適な多孔質支持体としては、ポリスルフォンや酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、フッ化ビニリデン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどのガス透過性の多孔質高分子やたとえばシリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレス等の金属焼結体やメッシュ状の成形体、ガラス、カーボン成型体などの無機多孔質が挙げられる。この中でもセラミックス焼結体や金属焼結体、ガラス、カーボン成型体などの無機多孔質支持体が好ましい。
無機多孔質支持体は、基本的成分あるいはその大部分が無機の非金属物質から構成されている固体材料であるセラミックスを焼結したものが好ましい。
好ましいセラミックス焼結体としては、α−アルミナ、γ−アルミナなどのアルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体が挙げられる。これらは単独の焼結体であってもよく、複数のものを混合して焼結したものであってもよい。これらセラミックス焼結体は、その表面の一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することがある。これにより、多孔質支持体とゼオライト膜との密着性が高くなる。
アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む(特にアルミナまたはムライトのうち少なくとも1種を含む)無機多孔質支持体は、無機多孔質支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、無機多孔質支持体とゼオライトの結合が強固になり、緻密で分離性能の高いゼオライト膜が形成されやすくなるのでより好ましい。
本発明において用いられる多孔質支持体は、その表面(以下「多孔質支持体表面」ともいう。)において、多孔質支持体上に形成されるゼオライトを結晶化させる作用を有することが好ましい。
前記多孔質支持体表面は、細孔径が制御されていることが好ましい。多孔質支持体表面付近における多孔質支持体の平均細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、とりわけ好ましくは1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下である。
多孔質支持体の表面は滑らかであることが好ましく、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。
本発明において用いられる多孔質支持体の、多孔質支持体表面付近以外の部分の細孔径は制限されるものではなく、また特に制御される必要は無いが、その他の部分の気孔率は通常20%以上、より好ましくは30%以上、通常60%以下、好ましくは50%以下であることが好ましい。多孔質支持体表面付近以外の部分の気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右し、前記下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、前記上限超では多孔質支持体の強度が低下する傾向がある。
本発明において用いられる多孔質支持体の形状は、気体混合物や液体混合物を有効に分離できるものであれば制限されるものではなく、具体的には平板状、管状、円筒状、多数の貫通孔を有するハニカム状のものやモノリスなどが挙げられる。
管状の多孔質支持体は、通常長さ2cm以上、好ましくは4cm以上、さらに好ましくは8cm以上、特に好ましくは10cm以上、とりわけ好ましくは20cm以上であり、通常200cm、好ましくは150cm以下、より好ましくは100cm以下である。多孔質支持体の長さがこの範囲より短い場合、1本あたりの流体の分離処理量が少ない場合があり、また、この範囲より長い場合、製造に手間がかかる場合がある。
管状の多孔質支持体の内径は、通常0.2cm以上、好ましくは0.3cm以上、より好ましくは0.4cm以上、さらに好ましくは0.5cm以上、特に好ましくは0.6cm以上、最も好ましくは0.7cm以上、より一層好ましくは0.9cm以上であり、通常2cm以下、好ましくは1.5cm以下、より好ましくは1.2cm以下である。
外径は通常0.3cm以上、好ましくは0.5cm以上、より好ましくは0.6cm以上、さらに好ましくは0.8cm以上、特に好ましくは1.0cm以上であり、通常2.5cm以下、好ましくは1.7cm以下、より好ましくは1.3cm以下である。
厚さは通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上、特に好ましくは1.0mm以上、最も好ましくは1.2mm以上であり、通常4mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。
この範囲より内径、外径、肉厚が小さい場合支持体の強度が下がり折れやすくなる場合がある。この範囲より内径、外径が大きい場合、単位体積当たりの多孔質支持体の本数が小さくなる場合がある。この範囲より肉厚が大きい場合は透過性能が低下する傾向がある。
[RHO型ゼオライト]
本発明において用いられるRHO型ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでRHO構造のものを示す。RHO型ゼオライトは3.6×3.6Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
本発明において用いられるRHO型ゼオライトのフレームワーク密度は、14.1T/1000Åである。フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Å3あたりの酸素以外の骨格を構成する元素の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIER に示されている。
[ゼオライト膜]
本発明におけるゼオライト膜とは、ゼオライトにより構成される膜状物のことであり、好ましくは、前記多孔質支持体の表面にゼオライトを結晶化させて形成されたものである。膜を構成する成分として、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じ含んでいてもよい。
本発明で用いられるゼオライト膜は、ゼオライト膜に含まれるゼオライトとしてRHO型のゼオライト(以下、RHO型ゼオライト膜ということがある。)を含むことを特徴とし、好ましくはRHO型のゼオライトを主成分とするものである。該ゼオライト膜には、一部、モルデナイト型、MFI型、ANA型、GIS型などの他の構造のゼオライトが含まれていてもよく、アモルファス成分などが含有されていてもよい。該ゼオライト膜は、通常70wt%以上、好ましくは80wt%以上、より好ましくは90wt%以上がRHO型ゼオライトで構成される。
本発明において用いられるゼオライト膜の厚さは、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上、特に好ましくは1.0μm以上、最も好ましくは1.2μm以上である。また通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下の範囲である。ゼオライト膜の厚さが上記範囲より小さい場合、欠陥が生じやすく、分離性能が悪い膜が生じやすい傾向がある。ゼオライト膜の厚さが上記範囲より大きい場合、透過性能が低くなる傾向がある。
ゼオライト膜におけるゼオライトの粒子径は特に限定されるものではないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向があることから、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは200nm以上、特に好ましくは500nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに好ましくはゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合である。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなるためである。水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
該ゼオライト膜に含まれるRHO型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、特に限定されるものではないが、通常4以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。前記モル比の上限としては通常100以下、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下、最も好ましくは20以下である。SiO2/Al2O3モル比が前記下限未満では耐久性が低下する傾向があり、前記上限を超過するとガスの吸着能が低くなりガスの透過量が小さくなる傾向がある。
該ゼオライト膜に含まれるRHO型ゼオライトのCs/Al2O3モル比は、特に限定されるものではないが、通常1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、一層好ましくは0.6以下、より一層好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.1以下である。Cs/Al2O3モル比が上限値以上である時、RHO型ゼオライトの細孔がCsイオンによって塞がれることがあり、ガスの透過量が著しく小さくなる傾向があり好ましくない。Cs/Al2O3モル比の下限値は特に制限がなく、値が小さければ小さいほどガスの透過量が大きくなる傾向にあり望ましいが、通常0.01以上である。
RHO型ゼオライト膜において、該RHO型ゼオライトは実質的にF元素を含まないものが好ましい。このようなRHO型ゼオライト膜は、フッ酸やフッ化ナトリウムなどのフッ素化合物を原料として用いないことで形成される。F/Al2O3モル比は通常0.1以下、好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.01以下、一層好ましくは0.005以下、より一層好ましくは0.001以下、最も好ましくは0.0007以下である。F/Al2O3モル比が上限値よりも大きいと、ゼオライト膜複合体の使用中にFが分離対象の液体やガスに混入する恐れがある。F/Al2O3モル比の下限値は特に制限がなく、実質的にF元素を含まないことが望ましいが、通常1.0×10−10以上である。
ゼオライト膜を構成するゼオライトのSiO2/Al2O3モル比、Cs/Al2O3モル比、F/Al2O3モル比は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られる数値である。ゼオライト膜複合体の場合はゼオライト膜複合体のゼオライト膜についてSEM−EDXで測定した値である。数ミクロンの膜のみの情報を得るために通常はX線の加速電圧を10kVで測定する。
本発明で用いられるゼオライト膜は、ゼオライトにより構成される膜状物をそのまま用いることもできるが、通常は各種支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体として使用し、好ましくは以下詳述する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体として用いる。
[多孔質支持体上へのゼオライト膜の形成方法]
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体にあっては、好ましくは多孔質支持体の表面にゼオライトが膜状に固着しており、場合によっては一部のゼオライト膜が多孔質支持体の表面付近の細孔内部にまで入り込んで固着していてもよい。
このような多孔質支持体上のゼオライト膜は、多孔質支持体表面においてゼオライトを膜状に結晶化させる方法、多孔質支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、ゼオライトのスラリーを多孔質支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを多孔質支持体に固着させる方法などによって形成される。
これらの方法の中でも、多孔質支持体表面においてゼオライトを膜状に結晶化させる方法が好ましく、具体的には多孔質支持体表面においてRHO型ゼオライトを水熱合成等により、膜状に結晶化させる方法が好ましい。
本発明では、結晶化したゼオライト膜は緻密であることが好ましく、膜の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが好ましい。
ゼオライト膜は多孔質支持体表面の任意の位置に設けられる。管状多孔質支持体にゼオライト膜を設ける場合、外表面にゼオライト膜をつけてもよいし、内表面につけてもよく、さらに適用する系によっては両面につけてもよい。装置の構成によって異なるが、分離対象の気体混合物または液体混合物と接触する面にゼオライト膜をつけると、流体処理量を多くすることができ、望ましい。
また通常、外表面は内表面よりも曲率が小さいため支持体表面に生成するゼオライトが成長する方向がそろいやすくなり、特定の面への配向がおこりやすくなるので、特に外表面にゼオライト膜をつけることが好ましい。
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜とを有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、該ゼオライト膜がRHO型ゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=18.7°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の1.0倍以上であることを特徴とする。すなわち、多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜は、RHO型ゼオライトを含み、ゼオライト膜表面のX線回折パターンにおいて、2θ=18.7°付近のピークの強度と2θ=8.3°付近のピークの強度との比([2θ=18.7°付近のピークの強度]/[2θ=8.3°付近のピークの強度]で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。))が、1.0以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上である。ピーク強度比Aは大きければ大きいほどよく、上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
また、本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜とを有する多孔質支持体−ゼオライト膜複合体であって、該ゼオライト膜がRHO型ゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=14.4°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.5倍以上であることを特徴とする。すなわち、多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜は、RHO型ゼオライトを含み、ゼオライト膜表面のX線回折パターンにおいて、2θ=14.4°付近のピークの強度と2θ=8.3°付近のピーク強度との比([2θ=14.4°付近のピークの強度]/[2θ=8.3°付近のピークの強度]で表される強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。))が0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは5以上である。ピーク強度比Bは大きければ大きいほどよく、上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
特に、2θ=18.7°付近のピークの強度と2θ=8.3°付近のピークの強度との比が1.0以上で、かつ、2θ=14.4°付近のピークの強度と2θ=8.3°付近のピーク強度との比が0.5以上であることが好ましい。
X線回折パターンとは、ゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作成した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
X線回折パターンは、ゼオライト膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
本発明において、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。
2θ=18.7°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち18.7°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=14.4°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち14.4°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=8.3°付近のピークとは基材に由来しないピークのうち8.3°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=18.7°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERによれば、空間群を
(No.229)とした時にRHO構造において指数が(3,1,0)の面に由来するピークである。なお、上記空間群を以下「Im−3m」と記載する。
X線回折パターンで2θ=14.4°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERによれば、空間群をIm−3m(No.229)とした時にRHO構造において指数が(2,1,1)の面に由来するピークである。
また、X線回折パターンで2θ=8.3°付近のピークはCOLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERによれば、空間群をIm−3m(No.229)とした時にRHO構造において指数が(1,1,0)の面に由来するピークである。
(3,1,0)面由来のピークの強度と(1,1,0)の面に由来のピーク強度の典型的な比は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERによれば0.70である。
そのため、この比が1.0以上であるということは、例えば、RHO構造をIm−3m(No.229)とした場合の(3,1,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト結晶が配向して成長することにより分離性能の高い緻密な膜が形成される。
(2,1,1)面由来のピークの強度と(1,1,0)の面に由来のピーク強度の典型的な比は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITES Fifth Revised Edition 2007 ELSEVIERによれば0.07である。
そのため、この比が0.5以上であるということは、例えば、RHO構造をIm−3m(No.229)とした場合の(2,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト結晶が配向して成長することにより、分離性能の高い緻密な膜が形成される。
このように、ピーク強度比A、Bのいずれかが、上記した特定の範囲の値であるということは、ゼオライト結晶が配向して成長し、分離性能の高い緻密な膜が形成されていることを示すものである。
RHO型ゼオライト結晶が配向して成長している緻密なゼオライト膜は、次に述べる通り、ゼオライト膜を水熱合成法により形成する際に、例えば、アルミニウム元素源として特定のアルミノシリケートゼオライトを用いること、及び/または、特定の有機テンプレートを用いること、及び/または特定のアルカリ元素源を用いることで達成することができる。
[RHO型ゼオライトの製造方法]
本発明におけるRHO型ゼオライトは、具体的には、アルミニウム元素源、ケイ素元素源、アルカリ金属元素源、有機構造規定剤(テンプレート)、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成することにより製造することができる。
本発明におけるRHO型ゼオライトの製造方法はアルミニウム元素源としてフレームワーク密度が15T/1000Å以下のアルミノシリケートゼオライトを用いて製造することを特徴とする。
用いるアルミノシリケートゼオライトのフレームワーク密度は、通常15T/1000Å以下、好ましくは14.8T/1000Å以下、より好ましくは14.6T/1000Å3以下、さらに好ましくは14.5T/1000Å3以下、特に好ましくは14.3T/1000Å3以下であり、通常10T/1000Å3以上、より好ましくは10.5T/1000Å3以上、更に好ましくは10.6T/1000Å3以上、特に好ましくは10.8T/1000Å3以上である。
フレームワーク密度は、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revised Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値であり、骨格密度を表す値である。
即ち、フレームワーク密度は、ゼオライトの単位体積1000Å3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構成により決まるものである。
ゼオライト由来の、骨格を構成するナノパーツが有機構造規定剤を取り囲むように再び結晶構造を作ることでSARの高いRHO型ゼオライトを製造することが可能となる。フレームワーク密度が15T/1000Å以下のゼオライトは、溶解性が高く、骨格を構成するナノパーツに容易に分解されるため、RHO型ゼオライトの製造に好適である。フレームワーク密度が10T/1000Åよりも小さいと、ゼオライトが溶解しすぎてナノパーツとしての役割を果たせなくなることがある。
アルミニウム元素源として用いるアルミノシリケートゼオライトとしては、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rあるいはltaを骨格中に含むものが、RHO型ゼオライトに再構成されやすく、好ましい。
d6rあるいはltaを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、FAU、GME、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SZR、TSC、WEN、LTA、CLO、KFI、LTN、PAU、TSC、UFIが挙げられ、より好ましくはAEI、AFT、AFX、CHA、ERI、FAU、KFI、LEV、LTL、MWW、SAV、LTA、KFI、LTN、PAU、TSCであり、更に好ましくはAEI、AFX、CHA、FAU、LTAであり、特に好ましくはFAU型ゼオライトまたはLTA型ゼオライトであり、最も好ましくはFAU型ゼオライト(Y型ゼオライト)である。
アルミニウム元素源として用いるアルミノシリケートゼオライトのシリカ(SiO2)/アルミナ(Al2O3)モル比は通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、一層好ましくは15以上、特に好ましくは20以上、最も好ましくは25以上であり、通常100以下、好ましくは85以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは35以下である。シリカ/アルミナモル比が上記上限より大きいと、塩基性溶液中で溶解しにくい場合がある。シリカ/アルミナモル比が上記下限よりも小さいと、塩基性溶液中での溶解度がきわめて高くなる場合がある。シリカ/アルミナモル比が30以下、特に25以下、とりわけ10以下のアルミノシリケートゼオライトは廉価で入手しやすく製造上好ましい。
アルミノシリケートゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のRHO型ゼオライトの合成方法においては、目的とするRHO型ゼオライトのAl及びSi含有量に応じて、アルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム元素源及び/又はケイ素元素源が必要に応じ用いられる。アルミノシリケートゼオライトとアルミニウム元素源及び/又はケイ素元素源は、アルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム元素源及び/又はケイ素元素源との合計で、後述のアルミニウム元素源及びケイ素元素源の使用量となるように用いられる。
本発明では、上述のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全アルミニウム元素源の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を上述のアルミノシリケートゼオライト(フレームワーク密度が15T/1000Å以下のゼオライト)とすることが好ましい。また、全ケイ素元素源の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を上述のアルミノシリケートゼオライト(フレームワーク密度が15T/1000Å以下のゼオライト)とすることが好ましい。
<アルミニウム元素源>
本発明においては、前述のアルミノシリケートゼオライト(フレームワーク密度が15T/1000Å以下のゼオライト)以外のアルミニウム元素源を用いて原料混合物の組成を調製しても構わない。このアルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム元素源は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、例えばアモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。なお、後述のケイ素元素源として挙げたアルミノシリケートゲルは、アルミニウム元素源ともなる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
原料混合物の調製のしやすさや生産効率の点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルミニウム元素源(アルミノシリケートゼオライトを含む。)中のアルミニウム(Al)のモル比Al/Siは、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上であり、さらに好ましくは0.06以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。このAl/Si比が上記上限値よりも大きいと、得られるRHO型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が低くなる傾向にあり、得られたRHO型ゼオライトがアルカリ溶液中で溶けやすく、ゼオライト膜合成時の種結晶としての用途などに不適切となることがある。このAl/Si比が上記下限値よりも小さいと、RHO型ゼオライトが得られにくくなることがある。
<ケイ素元素源>
本発明においては、前述のアルミノシリケートゼオライト(フレームワーク密度が15T/1000Å以下のゼオライト)以外のケイ素元素源を添加して原料混合物の組成を調製しても構わない。このアルミノシリケートゼオライト以外のケイ素元素源は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、トリメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。好ましくは、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ケイ素元素源は、ケイ素元素源に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。
<アルカリ金属元素源>
本発明に用いられるアルカリ金属元素源に含まれるアルカリ金属原子は、特に限定されず、ゼオライトの合成に使用される公知のものが使用できるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンを存在させて結晶化させることが好ましい。アルカリ金属イオンは、好ましくはナトリウム、カリウム、およびセシウムの少なくとも1種であり、特に好ましくはナトリウムおよびセシウムである。これらの少なくとも1種のアルカリ金属原子が含まれることにより、結晶化の進行が容易となり、また副生物(不純物結晶)が生成しにくくなる。
アルカリ金属元素源としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルカリ金属元素源は、その適当量を使用することにより、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくできる。アルカリ金属元素源(R)と、種結晶以外の水熱合成用原料混合物に含まれるケイ素(Si)とのモル比R/Siは、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.35以上であり、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.4以下である。
アルカリ金属元素源のケイ素に対するモル比(R/Si)が上記上限値よりも大きいと、生成したゼオライトが溶解しやすく、ゼオライトが得られなかったり収率が著しく低くなったりする場合がある。R/Siが上記下限値よりも小さいと、原料のアルミニウム元素源やケイ素元素源が十分に溶解せず、均一な水熱合成用原料混合物が得られず、RHO型ゼオライトが生成しにくくなる場合がある。
前述の通り、アルカリ金属元素源としてNa及びCsを用いるのが好ましい。NaとCsのモル比Na/Csは、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。Na/Csが上記上限値よりも大きいと、Csのコストは高いのでコスト的に不利になりやすい。Na/Csが上記下限値よりも小さいと、Csの効果が弱くなりすぎRHO型ゼオライトができにくくなる場合がある。
<有機構造規定剤>
RHO型ゼオライトの結晶化において、有機テンプレート(有機構造規定剤)を用いることが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上する。
有機テンプレートとしては、RHO型ゼオライトを形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
RHO型ゼオライトの製造においては、有機テンプレートとして、クラウンエーテルに代表される大環状化合物や水溶性カチオン系ポリマーやアミン類が好ましく用いられる。大環状化合物としては、特に限定されるものではないが電子供与性(ドナー)原子として酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子をもつ大環状化合物が好ましく、ゼオライト結晶の生成のしやすさなどの点から、特に12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、24−クラウン−8−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、クリプタンド[2.2]、クリプタンド[2.2.2]が好ましく、18−クラウン−6−エーテルが特に好ましい。
水溶性カチオン系ポリマーの分子量は通常10000以上、好ましくは100000以上、より好ましくは150000以上、特に好ましくは200000以上であり、通常10000000以下、好ましくは1000000以下、より好ましくは500000以下、さらに好ましくは400000以下、特に好ましくは350000以下である。分子量がこの範囲外ではゼオライトが結晶化しにくくなりRHO型ゼオライトが得られなかったり、他の構造のゼオライトが生じたり、収率が低下したりする場合がある。水溶性カチオン系ポリマーとしては特に限定されるものではないが、ポリジアリルジアルキルアンモニウム塩、ポリジアミノジメチルアンモニウム塩、ポリビニルピリジン4級塩等の高分子4級アミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等が好ましく、より好ましくはポリジアリルジアルキルアンモニウム塩、ポリジアミノジメチルアンモニウム塩であり、特に好ましくはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドである。
水溶性カチオン系ポリマー以外を有機テンプレートとして用いる場合には、有機テンプレートの使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上であり、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。上記下限値より少ないと、RHO型ゼオライトが十分に生成しない場合がある。また、上記上限値よりも大きいと、コストが多くかかり不利である場合がある。
水溶性カチオン系ポリマーを有機テンプレートとして用いる場合には、有機テンプレートの使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種結晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常1.0×10−6以上、好ましくは1.0×10−5以上、好ましくは2.0×10−5以上、より好ましくは2.5×10−5以上であり、通常1.0×10−3以下、好ましくは5.0×10−4以下、より好ましくは3.0×10−4以下、さらに好ましくは1.3×10−4以下、さらに好ましくは8.0×10−5以下である。上記範囲外のときRHO型ゼオライトが十分に生成しない場合がある。
<水の量>
本発明のRHO型ゼオライトの製造方法において、水熱合成用原料混合物中の水の量は結晶の生成しやすさの観点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上である。また廃液処理にかかるコスト抑制の点から、通常100モル以下、好ましく50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。
<種結晶>
本発明においては、水熱合成用原料混合物に種結晶を添加しても添加しなくてもよいが、添加することで合成時間を短くできるという点で添加することが望ましい。種結晶として用いるゼオライトしては、LTA型ゼオライト、RHO型ゼオライトが挙げられ、好ましくはRHO型ゼオライトである。RHO型ゼオライトを用いると、短時間でRHO型ゼオライトを得ることができる。
構造規定剤を含むRHO型ゼオライトは、溶解しにくく、ゼオライト膜合成中に完全には溶解しないと考えられるため、種結晶に用いられるRHO型ゼオライトは、構造規定剤を含有したRHO型ゼオライトが好ましい。ただし、構造規定剤を用いずに合成されたり、焼成等により構造規定剤が除去されたRHO型ゼオライトを用いても構わない。
種結晶として用いるRHO型ゼオライトの平均粒径は、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上であり、特に好ましくは0.3μm以上であり、とりわけ好ましくは0.5μm以上であり、通常5.0μm以下、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下である。平均粒径が上記下限値よりも小さいと、合成初期に完全に溶解しやすくなり、種結晶としての役割を果たさなくなる場合がある。平均粒径が上記上限値よりも大きい場合には、溶解しにくいために、種結晶として作用しにくくなる可能性がある。
種結晶の使用量(重量W1)が水熱合成用原料混合物中のSiO2量(重量W2)に占める割合(W1/W2×100%)は、0.1重量%以上であり、また反応をより円滑に進めるために、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。また、使用量(W1/W2×100%)の上限は特に限定されないが、製造コスト抑制の点から通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは22重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
<水熱合成用原料混合物の調製>
本発明のRHO型ゼオライトの製造方法においては、水熱合成用原料混合物を作製する前に、上述の構造規定剤(好ましくは18−クラウン−6−エーテル)と、アルカリ金属元素源(好ましくはNa源とCs源)と、一部または全部の水とを混合し、加熱して予めクラウンエーテル−アルカリ水溶液を調製し、クラウンエーテルとCsの間で錯形成することが望ましい。
混合し加熱する際の温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは75℃以上であり、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。加熱温度が上記下限温度よりも低いと、クラウンエーテルとCsとが十分に錯形成せず、RHO型ゼオライトが生成しにくくなる場合がある。また、加熱温度が上記上限温度よりも高いと、無駄に加熱エネルギーを使うこととなり、コスト的に不利になる可能性がある。
加熱時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常10時間以下、好ましくは7時間以下、より好ましくは5時間以下である。加熱時間が上記下限時間よりも短いと、クラウンエーテルとCsとが十分に錯形成せず、RHO型ゼオライトが生成しにくくなる場合がある。また、加熱時間が上記上限時間よりも長いと、無駄に加熱エネルギーを使うこととなり、コスト的に不利になる可能性がある。
得られたクラウンエーテル−アルカリ水溶液を上記アルミニウム元素源のアルミノシリケートゼオライトに滴下混合し、場合によってはその他の原料を添加混合することで、水熱合成用原料混合物を得る。
<熟成>
上記のようにして調製された水熱合成用原料混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で所定時間熟成することが好ましい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となる。そのため所定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが可能となる。
熟成温度は通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、特に好ましくは40℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは8時間以上、特に好ましくは12時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは4日以下、さらに好ましくは2日以下である。
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された水熱合成用原料混合物ないしはこれを熟成したものを耐圧容器に入れ、自己発生圧力(自生圧力)下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
水熱合成の際の反応温度は、通常110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは140℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは160℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常10時間以上、好ましくは20時間以上、より好ましくは40時間以上、さらに好ましくは60時間以上、特に好ましくは70時間以上であり、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
上記の条件で反応させることにより、RHO型ゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し難くなり、RHO型ゼオライトを収率よく得ることが可能となる。
<RHO型ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物であるRHO型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は通常細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は、特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトを得ることができる。有機構造規定剤は、次に記載の処理方法によっても除去することができる。
有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方の除去処理は、酸性溶液や有機構造規定剤分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理を採用することができ、これらの処理を組合せて用いてもよい。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出したりする等の方法により、含有される有機構造規定剤等を除去することができる。好ましくは製造性の面で焼成による有機構造規定剤等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、さらに好ましくは450℃以上、特に好ましくは500℃以上であり、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
本発明のRHO型ゼオライトの製造方法では、アルミニウム元素源としてアルミノシリケートゼオライトを使用することによって、従来製造できなかった広い範囲のSiO2/Al2O3モル比のRHO型ゼオライトを製造することができる。よって、得られたRHO型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は特に限定されるものではないが、通常100以下、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下、一層に好ましくは30以下、特に好ましくは25以下、最も好ましくは20以下であり、通常4以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。この範囲にあるとき、例えば触媒としての活性点が多く触媒等の用途にも好適に用いられる他、脱Alしにくく耐久性の点でも望ましい。またゼオライト膜合成時の種結晶としても、適度な溶解性を持つ点で望ましい。
尚、ここでいうSiO2/Al2O3モル比はゼオライト試料を酸分解あるいはアルカリ融解により完全溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP)発行分光分析および/またはICP質量分析によりシリコン原子およびアルミニウム原子の含有量(重量%)を求める元素分析法、あるいは、ICP発光分析および/またはICP質量分析によってシリコン原子およびアルミニウム原子の含有量を求めた標準試料を用いて分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のシリコン原子およびアルミニウム原子含有量(重量%)を求めることによって算出された値をいう。
本発明のRHO型ゼオライトの製造方法によって得られたRHO型ゼオライトの平均粒径は、特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは8μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。平均粒径が0.1μmよりも小さいと、RHO型ゼオライトをゼオライト膜合成の種結晶と用いた際に溶けやすいため、水熱合成の初期に完全に溶解してしまい、種結晶として作用しなくなる傾向があり好ましくない。また、上限値以上である時、RHO型ゼオライトをゼオライト膜合成の種結晶と用いる際に支持体の細孔径よりも大きいため支持体上にうまく担持できず、緻密な膜が生成しにくくなる傾向があり好ましくない。また、触媒などとして用いる際にガス拡散性が高くなり有用であるという点で上記範囲内が好ましい。
製造されたRHO型ゼオライトの比表面積はプロトン型としたのちにN2吸着で測定した値として、通常300m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上であり、通常1000m2/g以下、好ましくは800m2/g以下、より好ましくは750m2/g以下である。この範囲にあるとき触媒などに用いられる際に細孔内表面に存在する活性点が多くなるという点で好ましい。
[多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法]
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、例えば、(1)支持体上にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを支持体に固着させる方法などの何れの方法によって製造することができる。
これらの中で、セラミックス支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法が特に好ましい。結晶化の方法に特に制限はないが、支持体を、ゼオライト製造に用いる水熱合成用原料混合物中に入れて、直接水熱合成することで支持体表面などにゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
即ち、前述のRHO型ゼオライトの製造方法と同様に、アルミニウム元素源、ケイ素元素源、アルカリ金属元素源、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた水熱合成用原料混合物に多孔質支持体(好ましくは種結晶を付着させた支持体)を浸漬した状態で水熱合成することで、RHO型のゼオライトを主成分とするゼオライト膜複合体を得ることができる。
RHO型のゼオライトを主成分とするゼオライト膜複合体の製造に用いる水熱合成用原料混合物としては前述のRHO型ゼオライト製造に用いる水熱合成用原料混合物と同様のものを用いてもよいが、多孔質支持体上に欠陥のない緻密な膜を製造するために、次に説明するアルミニウム元素源、アルカリ金属元素源、有機構造規定剤及び水を含む水熱合成用原料混合物を用いることが好ましい。
<アルミニウム元素源>
多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造に用いられるアルミニウム元素源は、特に限定されないが、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、アルミノシリケートゲルなどが挙げられ、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、アルミノシリケートゲルが好ましく、アルミノシリケートゼオライト、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルミニウム元素源として用いるアルミノシリケートゼオライトとしては前述のRHO型ゼオライトの製造に用いられるアルミノシリケートと同様のものが好ましい。
アルミノシリケートゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。アルミノシリケートゼオライトをアルミニウム元素源として用いる場合には、全アルミニウム元素源の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を上述のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。また、全ケイ素元素源の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を上述のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。アルミノシリケートゼオライトの割合がこの範囲にあるときRHO型ゼオライト膜のSARが高くなり、耐酸性、耐水性に優れた適用範囲の広いゼオライト膜となる。
種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルミニウム元素源(前述のアルミノシリケートゼオライトおよび、そのほかのアルミニウム元素源を含む。)の使用量(前述のAl/Si比)の好ましい範囲は、前述のRHO型ゼオライトの製造の場合と同じである。即ち、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上であり、さらに好ましくは0.06以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。
なお、Si/Al比が上記上限値より大きいと、得られるRHO型ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比が低くなる傾向にあり、得られたRHO型ゼオライト膜の耐水性、耐酸性が低く、ゼオライト膜としての用途が限定されることがある。Si/Al比が上記下限値よりも小さいと、RHO型ゼオライト膜が得られにくくなることがある。
<ケイ素元素源>
本発明において、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体製造に用いる水熱合成用原料混合物のケイ素元素源として、特に限定されるものではないが、通常、前述のRHO型ゼオライトの製造方法で用いたものと同様であり、アルミノシリケートゼオライト以外のヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、トリメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができ、好ましくは、前述のアルミノシリケートゼオライト、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルであり、より好ましくはアルミノシリケートゼオライト、コロイダルシリカ、珪酸ナトリウムである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ケイ素元素源は、ケイ素元素源に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。
<アルカリ金属元素源>
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(以下、「多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体」や単に「RHO型ゼオライト膜複合体」、「ゼオライト膜複合体」という場合がある)の製造に用いる水熱合成用原料混合物のアルカリ金属元素源に含まれるアルカリ金属原子は、前述のRHO型ゼオライト膜の製造方法で用いたものと同様のものを用いることができる。
多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造に用いる水熱合成用原料混合物のアルカリ金属元素源の適当量は、種結晶以外の水熱合成用原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
アルカリ金属元素源のケイ素に対するモル比がこの上限値以上であると生成したゼオライトが溶解しやすく、ゼオライト膜に欠陥が生じやすいため、分離性能が低いゼオライト膜となりやすく不適な場合がある。この下限値以下であると原料のアルミニウム元素源やケイ素元素源が十分に溶解せず、RHO型ゼオライトが生成しにくくなり緻密なRHO型ゼオライト膜が得られにくくなる点で不適な場合がある。
本発明においてNaとCsを含むアルカリ金属元素源を用いるのが好ましいが、NaとCsのモル比はNa/Csとして通常1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。上記下限以下であるとCsのコストは高いのでコスト的に不利になりやすい。上記上限以上であるとCsの効果が弱くなりすぎRHO型ゼオライトが生成しにくくなり緻密なRHO型ゼオライト膜が得られにくくなる点で不適な場合がある。
<有機構造規定剤>
多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造においては有機テンプレート(有機構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上し、耐酸性・耐水性に優れたゼオライト膜となり好適である。
有機テンプレートとしては、前述のRHO型ゼオライトの製造方法で説明したものと同様のものを、同様の使用量で用いることができる。
<水の量>
水熱合成用原料混合物中の水の量は、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常200モル以下、好ましく150以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは60以下である。上記上限よりも大きいと、反応混合物が希薄すぎて、欠陥のない緻密な膜ができにくくなることがある。10未満であると、反応混合物が濃いために、自発核が生じやすくなり、支持体からのRHO型ゼオライトの成長を阻害し、緻密な膜ができにくくなることがある。
<水熱合成用原料混合物の調製>
水熱合成用原料混合物を作製する前に、上述の構造規定剤18−クラウン−6−エーテルとアルカリ金属元素源(Na源とCs源)と一部または全部の水を混合し、加熱して予めクラウンエーテル−アルカリ水溶液を調製し、クラウンエーテルとCsの間で錯形成することが望ましい。
混合し加熱する際の温度及び時間の好適範囲は、前述のRHO型ゼオライトの製造方法の場合と同じである。
得られたクラウンエーテル−アルカリ水溶液を上記アルミニウム元素源のアルミノシリケートゼオライトに滴下混合し、場合によってはその他の原料を添加混合することで、水熱合成用原料混合物を得る。
<熟成>
上記のようにして調製された水熱合成用原料混合物は、前述のRHO型ゼオライトの製造方法の場合と同様にして熟成されてもよい。
<種結晶>
水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法あるいはその両方などを用いることができる。
ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、RHO型ゼオライトを効率よく結晶化させて、RHO型ゼオライト膜複合体製造をするためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であるRHO型あるいは、IZAがcomposite building unitとして定めるd6rあるいはltaを骨格中に含むゼオライトを種結晶と
して用いることがRHO型ゼオライトに再構成されやすく好ましい。種結晶として好適なゼオライトとして具体的には、RHO型ゼオライト、LTA型ゼオライト、FAU型ゼオライトがあげられ、RHO型ゼオライト、LTA型ゼオライトがより好ましく、RHO型ゼオライトが特に好ましい。これらの種結晶は1種類を用いても構わないし、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。これらのゼオライトを種結晶として用いたときに短時間で緻密なRHO型ゼオライト膜複合体を得ることができる。
また、種結晶に用いるRHO型ゼオライトとしては構造規定剤を含有したRHO型ゼオライトでも、構造規定剤を用いずに合成したり、焼成したりするなどして構造規定剤を含有しないRHO型ゼオライトでもどちらを用いても構わないが、構造規定剤を含むRHO型ゼオライトは溶解しにくく、合成中に完全に溶解せずにRHO型ゼオライトが成長する際の核となりやすいと考えられるため、特に望ましい。
平均粒径の大きい種結晶を用いた場合、水熱合成時に種結晶が支持体から脱離し、その役割を果たさない場合があるため、種結晶の粒子径は支持体の細孔径に近いことが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは1μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは、3μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。
平均粒径が上記下限値よりも小さいと、合成初期に完全に溶解しやすくなり、種結晶としての役割を果たさなくなる場合がある。平均粒径が上記上限値よりも大きい場合には、溶解しにくいために、種結晶として作用しにくくなる可能性がある。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に一端を封止した支持体を浸漬したのちに支持体を他端から吸引することで支持体表面に強固に種結晶を付着させる吸引法や種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性良く膜複合体を製造するにはディップ法および吸引法が望ましく、種結晶を支持体に密着させる点ではスラリー上の種結晶を塗りこむ方法および吸引法が望ましい。また、種結晶を支持体に密着させる目的および/または過剰な種結晶を取り除く目的で、ディップ法や吸引法に続きラテックス手袋を着用した指などで種結晶が付着した支持体をこすって押し込むことも好適に行われる。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水が好ましい。分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全重量に対して、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上である。また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体表面に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜となる可能性がある。分散液中の種結晶の量が多すぎると、ディップ法や塗りこむ方法においては支持体上に付着する種結晶の量がほぼ一定となるため、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
支持体にディップ法、吸引法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させたのち、乾燥した後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。乾燥温度は通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。乾燥時間は十分に乾燥していれば問題ないが通常10分以上、好ましくは30分以上であり、上限は特に指定しないが、経済的な観点から通常5時間以下である。
乾燥後の種結晶付着支持体に対し、種結晶を支持体に密着させる目的および/または過剰な種結晶を取り除く目的で、ラテックス手袋を着用した指などで種結晶が付着した支持体をこすって押し込むことも好適に行われる。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材表面1m2あたりの重量で、通常0.1g以上、好ましくは0.5g以上、より好ましくは1g以上、さらに好ましくは3g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
種結晶の量が下限未満の場合には、結晶ができにくくなり、膜の成長が不十分になる場合や、膜の成長が不均一になったりする傾向がある。また、種結晶の量が上限を超える場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体表面から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合がある。何れの場合も、緻密なゼオライト膜が生成しにくくなる傾向となる。
<水熱合成>
水熱合成により支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。
水熱合成は、上記のようにして種結晶を担持した支持体と調製された水熱合成用原料混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。静置状態での水熱合成が、支持体上の種結晶からの結晶成長を阻害しないという点で緻密なRHO型ゼオライト膜複合体を得るのに望ましい。
ゼオライト膜を形成させる際の水熱合成の温度は特に限定されないが、通常110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは140℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは160℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
反応時間は特に限定されないが、通常10時間以上、好ましくは20時間以上、より好ましくは40時間以上、さらに好ましくは60時間以上、特に好ましくは70時間以上であい、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日、更に好ましくは5日以下である。本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
ゼオライト膜形成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、この温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、乾燥させる。乾燥温度は通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
乾燥時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥する時間であれば特に限定されず、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。上限は特に限定されず、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内である。
水熱合成を複数回繰り返すことでゼオライト膜の緻密性を向上させることも可能である。水熱合成を複数回繰り返す場合には1回目の水熱合成で得られたゼオライト膜複合体を水洗して加熱乾燥したのちに、新たに用意した水性反応混合物に再び浸漬して水熱合成を行えばよい。1回目の水熱合成後得られたゼオライト膜複合体は必ずしも水洗や乾燥を行う必要はないが、水洗し乾燥することで水性反応混合物の組成を意図した組成に保つことができる。複数回合成する場合の合成回数は通常1回以上、好ましくは2回以上であり通常10回以下、好ましくは5回以下、より好ましくは3回以下である。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
焼成温度は通常250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、さらに好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
焼成温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離濃縮の際の透過量が減少する場合がある。焼成温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
焼成時間は、昇温速度や降温速度により変動するが、有機テンプレートが十分に取り除かれる時間であれば特に限定されず、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上である。上限は特に限定されず、例えば、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、特に好ましくは24時間以内である。焼成は空気雰囲気で行えばよいが、酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
焼成の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換してもよい。本発明のRHO型ゼオライト膜複合体を合成する際にCsを用いた場合には、細孔をCsイオンが塞いでガス透過係数が小さくなるため、イオン交換を行うことが望ましい。イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na+、K+、Li+などのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などのアルカリ土類金属イオン、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Zn2+、Ag+などの遷移金属のイオンおよびAl3+などが挙げられる。これらの中で、サイズが小さいために細孔を閉塞せず、ガス透過係数を大きくすることができるという点でプロトン、Na+、K+、Li+が好ましく、Na+が特に好ましい。
イオン交換は、焼成後(テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜複合体を、交換するイオンを含む水溶液に浸漬し、加熱することで行う。交換するイオンを含む水溶液のイオン濃度は通常0.01mol/L以上、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.5mol/L以上、さらに好ましくは1mol/L以上であり、通常5mol/L以下、好ましくは2mol/L以下である。イオン濃度が下限値よりも低いと、イオン交換が十分に行われない可能性がある。イオン濃度が上限値よりも高いと、ゼオライトが溶解し、ゼオライト膜の緻密性が失われ、分離性能が低くなることがある。
対イオンの種類としては通常、NO3 −、Cl−などがあげられ、NO3 −が焼成によってガスに分解する点で特に好ましい。また、プロトンにイオン交換する場合はNH4NO3が好適に用いられる。
イオン交換を行う温度としては、通常、室温以上、好ましくは40℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、特に好ましくは100℃以下である。温度が下限値よりも低いと、イオン交換の速度が遅く十分に交換されない可能性がある。温度が上限値よりも高いと、ゼオライトが溶解し、ゼオライト膜の緻密性が失われ、分離性能が低くなることがある。加熱の際に用いる容器は特に限定されないが、オートククレーブなどの密閉容器が好適に用いられる。
加熱時間は特に限定されないが、通常30分以上、好ましくは45分以上、より好ましくは1時間以上であり、通常2時間以下、好ましくは1.5時間以下である。加熱時間が下限よりも短いと、イオン交換が十分にされないことがある。加熱時間が上限よりも長いと、ゼオライトが溶解し、ゼオライト膜の緻密性が失われ、分離性能が低くなる場合がある。
イオン交換後は水洗などにより、イオン交換に用いた水溶液を十分に取り除くことが望ましい。さらに必要に応じて200℃〜500℃で焼成してもよい。
また、イオン交換では溶液を取り換えて上述の処理を繰り返すことによって交換しているイオンの割合を増やすことができる。イオン交換を繰り返す場合には水洗後、水洗乾燥後、に行ってもよいし焼成後に繰り返してもよい。また、目的に応じて、NH4NO3で交換焼成してプロトンに交換したのちに、Na+などの金属イオンに交換するといったことを行ってもよい。
繰り返しイオン交換を行う際の回数は通常10回以下、好ましくは5回以下である。イオン交換の回数が上限以上だとゼオライトが溶解し、ゼオライト膜の緻密性が失われ、分離性能が低くなることがあるため好ましくない。
有機テンプレートを用いないで合成した場合は乾燥後、有機テンプレートを用いて合成した場合は焼成後のゼオライト膜複合体のうち合成前の支持体の重さを引くことで得られるゼオライト膜の重量は通常10g/m2以上、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは100g/m2以上であり通常1kg/m2以下、好ましくは500g/m2以下、より好ましくは300g/m2以下である。ゼオライト膜の重量が上記下限以下であるとき、欠陥が生じやすくなり分離性能が不十分となることがある。重量が上記上限以上である時、透過量が少なくなりやすく、処理量が不十分となりやすい。
有機テンプレートを用いないで合成した場合は乾燥後、有機テンプレートを用いて合成した場合は焼成後、イオン交換を行ったゼオライト膜についてはイオン交換後のゼオライト膜複合体の空気透過量は、通常300L/(m2・h)以下、好ましくは200L/(m2・h)以下、より好ましくは180L/(m2・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01ml/(m2・h)以上である。
ここで、空気透過量とは、実施例の項で詳述するとおり、ゼオライト膜複合体を大気圧下におき、ゼオライト膜複合体の内側を5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m2・h)]である。
有機テンプレートを用いないで合成した場合は乾燥後、有機テンプレートを用いて合成した場合は焼成後、イオン交換を行ったゼオライト膜についてはイオン交換後のゼオライト膜複合体のCO2パーミエンスは通常1.0×10−7(mol/(m2・sec・Pa))以上、好ましくは1.2×10−7(mol/(m2・sec・Pa))以上、より好ましくは1.4×10−7(mol/(m2・sec・Pa))以上であり、通常1.0×10−4(mol/(m2・sec・Pa))以下、好ましくは1.0×10−5(mol/(m2・sec・Pa))以下、より好ましくは5.0×10−6(mol/(m2・sec・Pa))以下である。
また、N2のパーミエンスは通常1.0×10−10(mol/(m2・sec・Pa))以上、好ましくは5.0×10−10(mol/(m2・sec・Pa))以上、より好ましくは1.0×10−9(mol/(m2・sec・Pa))以上であり、通常3.0×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下、好ましくは2.7×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下、より好ましくは2.5×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下、さらに好ましくは2.3×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下である。
また、CH4のパーミエンスは通常1.0×10−11(mol/(m2・sec・Pa))以上、好ましくは1.0×10−10(mol/(m2・sec・Pa))以上、より好ましくは1.0×10−9(mol/(m2・sec・Pa))以上であり、通常3.0×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下、好ましくは1.0×10−8(mol/(m2・sec・Pa))以下、より好ましくは5.0×10−9(mol/(m2・sec・Pa))以下である。
ここで、各気体のパーミエンスとは、実施例の項で詳述するとおり、ゼオライト膜複合体を十分乾燥させたのちに供給側の圧力を0.4MPa(絶対圧)とし透過側の圧力を大気圧として差圧0.3MPaとしたときの50℃における値である。
各種気体のパーミエンスを測定する際のゼオライト膜複合体の乾燥条件は十分に乾燥する条件であれば特に制限されないが、加熱乾燥することが望ましく、加熱温度は通常100℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは170℃以上、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。また、透過しやすいガスを透過させながら乾燥することが望ましく、HeあるいはH2を透過させながら乾燥することが望ましい。その際の供給側と透過側の圧力差としては通常0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上であり、通常1MPa以下、好ましくは0.8MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。乾燥時間は通常1時間以上、好ましくは1.5時間以上であり、通常5時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。上記範囲のとき最も効率的に乾燥が可能である。
かくして得られるRHO型ゼオライトを含むゼオライト膜複合体は、優れた特性をもつものであり、本発明における気体あるいは液体の混合物の膜分離手段としてとくにN2分離の膜分離手段として好適に用いることができる。
[気体混合物の分離]
本発明のゼオライト膜複合体は、複数の成分からなる気体混合物または液体混合物を接触させ、透過性の高い成分を透過させて分離する、気体混合物または液体混合物の分離方法に適用可能である。
気体混合物の分離方法は、上記ゼオライト膜複合体に、複数の気体成分からなる気体混合物を接触させ、該気体混合物から、透過性の高い気体成分を透過して分離することに特徴を有するものである。特に本発明のゼオライト膜複合体は、N2の分離に好適に用いることができる。
本発明におけるゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体分子とを好適に分離することができる。
従って、本発明における透過性の高い気体成分とは、RHO型のゼオライト(好ましくはアルミノ珪酸塩)結晶相の細孔を通過しやすい気体分子からなる気体成分であり、分子径が概ね3.6Å程度より小さい気体分子からなる気体成分が好ましい。
ゼオライトの有効細孔径は導入する金属種やイオン交換、酸処理、シリル化、有機テンプレートを焼成する際の酸素濃度などによって制御することが可能である。有効細孔径を制御することによって、分離性能を向上させることも可能である。
イオン交換により、イオン半径の大きな1価のイオンで交換した場合には、有効細孔径は小さくなる方向となり、一方イオン半径の小さな1価のイオンで交換した場合には有効細孔径は、RHO構造がもつ細孔径に近い値となる。またカルシウムのような2価のイオンの場合にも交換サイトの位置によっては、有効細孔径がRHO構造がもつ細孔径に近い値となる。
シリル化によっても、ゼオライトの有効細孔径を小さくすることが可能である。外表面の末端シラノールをシリル化し、さらに、シリル化層を積層することによって、ゼオライトの外表面に面した細孔の有効細孔径は小さくなる。
また、本発明のゼオライト膜複合体のもうひとつの分離機能は、ゼオライトの表面物性の制御により気体分子のゼオライト膜への吸着性を制御することである。すなわち、ゼオライトの極性を制御することによりゼオライトへの吸着性の大きな分子を透過させやすくすることもできる。
ゼオライト骨格のSiをAlで置換することにより極性を大きくすることが可能であり、これにより、極性の大きい気体分子を積極的にゼオライト細孔に吸着、透過させることができる。また、Alの置換量が減少すると極性の小さいゼオライト膜となり、極性の小さい気体分子を透過させるに有利となる。
このほか、イオン交換によって、分子の吸着性能や、ゼオライト細孔径の制御を制御し、透過性能をコントロールすることもできる。
本発明において、望ましい気体混合物としては、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、六フッ化硫黄、ヘリウム、一酸化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。前記ガスを含む気体混合物の成分のうち、パーミエンスの高い気体成分は、ゼオライト膜複合体を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給ガス側に濃縮される。
さらに気体混合物としては、上記成分の少なくとも2種の成分を含むものがより好ましい。この場合、2種の成分としては、パーミエンスの高い成分とパーミエンスの低い成分の組合せが好ましい。
ガス分離の条件は、対象とするガス種や組成、膜の性能により異なるが、温度は、通常0〜300℃、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは室温〜150℃である。
供給ガスの圧力は、分離対象のガスが高圧であればそのままの圧力でもよく、適宜圧力を減圧調整して所望の圧力にして用いてもよい。分離対象のガスが、分離に用いる圧力より低い場合は、圧縮機などで増圧して用いることができる。
供給ガスの圧力は特に制限されないが、通常大気圧若しくは大気圧より大きく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.11MPa以上である。また、通常上限値は20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。
供給側のガスと透過側のガスの差圧は特に制限されないが、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、更に好ましくは1MPa以下である。また、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上である。
ここで差圧とは、当該ガスの供給側の分圧と透過側の分圧の差をいう。
尚、本発明における圧力[Pa]は、特に断りのない限り、絶対圧を指す。
供給ガスの流速は、透過するガスの減少を補うことが可能である程度の流速でまた供給ガスにおいて透過性の小さなガスの膜のごく近傍における濃度とガス全体における濃度が一致するように、ガスを混合できるだけの流速であればよく、分離ユニットの管径、膜の分離性能にもよるが、通常0.5mm/sec以上、この好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
本発明の分離方法において、スイープガスを用いてもよい。スイープガスを用いた方法とは、透過側に供給ガスとは異なる種類のガスを流し、膜を透過したガスを回収するものである。
スイープガスの圧力は、通常大気圧であるが特に制限はなく、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、更に好ましくは1MPa以下であり、下限は、好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは、0.1MPa以上である。場合によっては、減圧にして用いてもよい。
スイープガスの流速は、特に制限はないが、通常1×10−7mol/(m2・s)以上1×104mol/(m2・s)以下である。
気体混合物の分離に用いる装置は、特に限定されないが、通常はモジュールにして用いる。膜モジュールは、例えば、図4および5に示したような装置でもよいし、「ガス分離・精製技術」(株)東レリサーチセンター2007年発行22頁に例示されている膜モジュールを用いてもよい。
[分離性能]
本発明の多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れかつ、高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れた性能を持つ。特に無機ガス、低級炭化水素の分離に優れた分離性能を示す。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示し、例えば、膜を透過する気体成分のパーミエンス(Permeance)[mol・(m2・s・Pa)−1]が、例えば二酸化炭素を、温度50℃、差圧0.098MPaで透過させた場合、通常1×10−9以上、好ましくは5×10−8以上、より好ましくは1×10−7以上であり、上限は特に限定されず、通常1×10−4以下である。
ここで、パーミエンス(Permeance:透過度)とは、透過する物質量を、膜面積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol・(m2・s・Pa)−1]であり、実施例の項において述べる方法により算出される値である。
本発明のゼオライト膜複合体は、上記のとおり、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れかつ、高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れるものであり、例えば空気からの酸素富化ガスの製造(医療用、燃焼用酸素富化空気など)や燃焼排ガス中のN2分離によるCO2回収用途などに特に好適に用いることができる。
[液体混合物の分離]
本発明の液体混合物の分離または濃縮方法は、上記多孔質支持体−ゼオライト膜複合体に、複数の成分からなる液体の混合物を接触させて、該混合物から、透過性の高い物質を透過させて分離する、または、該混合物から透過性の高い物質を透過させることにより、透過性の低い物質を濃縮することに特徴をもつものである。この発明において、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、上記と同様のものが用いられる。また、好ましいものも上記と同様である。
本発明の分離または濃縮方法において、ゼオライト膜を備えた多孔質支持体を介し、支持体側又はゼオライト膜側の一方の側に複数の成分からなる液体の混合物を接触させ、その逆側を混合物が接触している側よりも低い圧力とすることによって混合物から、ゼオライト膜に透過性が高い物質(透過性が相対的に高い混合物中の物質)を選択的に、すなわち透過物質の主成分として透過させる。これにより、混合物から透過性の高い物質を分離することができる。その結果、混合物中の特定の成分(透過性が相対的に低い混合物中の物質)の濃度を高めることで、特定の成分を分離回収、あるいは濃縮することができる。
分離または濃縮の対象となる混合物としては、本発明における多孔質支持体−ゼオライト膜複合体によって、分離または濃縮が可能な複数の成分からなる液体の混合物であれば特に制限はなく、如何なる混合物であってもよい。
分離または濃縮の対象となる混合物が、例えば、有機化合物と水との混合物(以下これを、「含水有機化合物」と略称することがある。)の場合、通常水がゼオライト膜に対する透過性が高いので、混合物から水が分離され、有機化合物は元の混合物中で濃縮される。パーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離または濃縮方法は、本発明の方法におけるひとつの実施形態である。パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離または濃縮方法であるため、分離または濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
ベーパーパーミエーション法は、液体の混合物を気化させてから分離膜に導入する分離・濃縮方法であるため、蒸留装置と組み合わせて使用することや、より高温、高圧での分離に用いることができる。またベーパーパーミエーション法は、液体の混合物を気化させてから分離膜に導入することから、供給液中に含まれる不純物や、液体状態では会合体やオリゴマーを形成する物質が膜に与える影響を低減することができる。本発明により得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体はいずれの方法に対しても好適に用いることができる。
また、ベーパーパーミエーション法で高温での分離を行う場合、一般的に温度が高いほど、また混合物中の透過性の低い成分の濃度が高いほど、例えば有機化合物と水との混合物の場合、有機化合物の濃度が高いほど分離性能が低下するが、本発明により得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、高温でも、混合物中の透過性の低い成分の濃度が高い場合でも高い分離性能を発現することができる。そして通常、ベーパーパーミエーション法は、液体混合物を気化させてから分離するため、通常はパーベーパレーション法よりも過酷な条件での分離となるため、膜複合体の耐久性も要求される。本発明により得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、高温条件下でも分離が可能な耐久性を有しているのでベーパーパーミエーション法に好適である。
前記多孔質支持体−ゼオライト膜複合体は、特定の物理化学的性質を有することで、混合物中の透過性の低い成分の濃度が高い場合のみならず、透過性の低い成分の濃度が低い場合でも高い透過性能、選択性を発揮し、耐久性に優れた分離膜としての性能を持つ。例えば有機化合物と水との混合物の場合、水の濃度にかかわらず高い選択性を発揮する。すなわち、本発明の特定の物理化学的性質を有するゼオライト膜複合体は、幅広い濃度範囲の混合物の分離および濃縮に好適である。
選択性は分離係数により表される。分離係数は膜分離で一般的に用いられる選択性を表す以下の指標である。
分離係数=(Pα/Pβ)/(Fα/Fβ)
[ここで、Pαは透過液中の主成分の質量パーセント濃度、Pβは透過液中の副成分の質量パーセント濃度、Fαは透過液において主成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度、Fβは透過液において副成分となる成分の被分離混合物中の質量パーセント濃度である。]
含水有機化合物は、適当な水分調節方法により、予め含水率を調節したものであってもよい。また、水分調節方法としては、それ自体既知の方法、例えば、蒸留、圧力スイング吸着(PSA)、温度スイング吸着(TSA)、デシカントシステムなどが挙げられる。
さらに、ゼオライト膜複合体によって水が分離された含水有機化合物から、さらに水を分離してもよい。これにより、より高度に水を分離し、含水有機化合物をさらに高度に濃縮することができる。
有機化合物としては、例えば、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸類や、スルフォン酸、スルフィン酸、ハビツル酸、尿酸、フェノール、エノール、ジケトン型化合物、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルフォンアミド、第1級および第2級ニトロ化合物などの有機酸類;メタノール、エタノール、イソプロパノール(2−プロパノール)などのアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミドなどの窒素を含む有機化合物(N含有有機化合物)、酢酸エステル、アクリル酸エステル等のエステル類などが挙げられる。
これらの中から、RHO型ゼオライトの分子ふるいと親水性の両方の特徴を生かすことのできる含水有機化合物の分離としては、有機酸と水との混合物からの有機酸の分離や低級アルコールの水からの分離があげられ、具体的には酢酸と水の分離、エタノールと水の分離、メタノールと水の分離などが好適な例として挙げられる。
また有機化合物は、水と混合物(混合溶液)を形成し得る高分子化合物でもよい。かかる高分子化合物としては、分子内に極性基を有するもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリオール類;ポリアミン類;ポリスルホン酸類;ポリアクリル酸などのポリカルボン酸類;ポリアクリル酸エステルなどのポリカルボン酸エステル類;グラフト重合等によってポリマー類を変性させた変性高分子化合物類;オレフィンなどの非極性モノマーとカルボキシル基等の極性基を有する極性モノマーとの共重合によって得られる共重合高分子化合物類などが挙げられる。
前記含水有機化合物は、水とフェノールの混合物のように、共沸混合物を形成する混合物でもよく、共沸混合物を形成する混合物の分離においては、水を選択的にかつ、蒸留による分離よりも効率よく分離可能な面で好ましい。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類と水の混合物;酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等;のエステル類と水の混合物、ギ酸、イソ酪酸、吉草酸等のカルボン酸類と水の混合物;フェノール、アニリン等の芳香族有機物と水の混合物;アセトニトリル、アクリロニトリル等の窒素含有化合物と水の混合物等が挙げられる。
さらに、含水有機化合物は、水とポリマーエマルジョンとの混合物でもよい。ここで、ポリマーエマルジョンとは、接着剤や塗料等で通常使用される、界面活性剤とポリマーとの混合物である。ポリマーエマルジョンに用いられるポリマーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのオレフィン−極性モノマー共重合体、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂;尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;天然ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのブタジエン共重合体等のゴム等が挙げられる。また界面活性剤としては、それ自体既知のものを用いればよい。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(1)X線回折(XRD)の測定方法
XRD測定は以下の条件に基づき行った。
装置名:Bruker社製New D8 ADVANCE
光学系:集中光学系
光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (2.5°)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(Lynx Eye 1D mode)
Ni−filter
Soller Slit (2.5°)
ゴニオメーター半径:280mm
測定条件 X線出力(CuKα):40kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.01°
計数時間:57.0sec(0.3sec×190ch)
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
測定データには可変→固定スリット補正を行った。
尚、X線は円筒管(ゼオライト膜複合体)の軸方向に対して垂直な方向に照射した。また、X線はできるだけノイズ等がはいらないように、試料台においたゼオライト膜複合体と、試料台表面と平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面ではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE+9.4(英語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
尚、ピーク強度比を算出する際は、各ピークの強度の実測値からベースライン強度を除いた強度を用いた。
(2)空気透過量
ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、密閉状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターで空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m2・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOFLOC社製8300、N2ガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/min(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM−2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
(3)SEM測定
SEM測定は以下の条件に基づき行った。
装置名:ULTRA55(Zeiss社製)
加速電圧:10kV
(4)SEM−EDX測定
SEM観察:機種名 ULTRA55(Zeiss社製)
加速電圧 10 kV
観察倍率 2000 倍
WD 7 mm
検出器 チャンバーSE検出器
EDX分析:機種名:Quantax200(Bruker社製)
検出器 XFlash 4010
加速電圧 10 kV
収集時間 60 s
倍率2000倍で一定範囲を走査し、X線定量分析を行った。
この際、ICP分析によって元素量を求めた粉末サンプルによって得た、検量線を用いた。
(5)単成分ガス透過試験
単成分ガス透過試験は、図5に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料ガスは、二酸化炭素(純度99.9%、高圧ガス工業社製)またはメタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ社製)またはヘリウム(純度99.995%、株式会社ジャパンヘリウムセンター製)または窒素(純度99.99% 東邦酸素工業株式会社製)である。
図5において、ゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
ゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒形のゼオライト膜複合体の内側と、透過ガス8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2には、試料ガスの供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図5の装置において、試料ガス(供給ガス7)を、一定の圧力で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、ゼオライト膜複合体を透過した透過ガス8を、配管11に接続されている流量計(図示せず)にて測定する。
さらに具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給ガスによるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧を一定として、透過ガス流速が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料ガス(透過ガス8)の流速を測定し、ガスのパーミエンス[mol・(m2・s・Pa)−1]を算出する。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いる。
上記測定結果に基づき、理想分離係数αを下記式(1)により算出する。
α=(QCO2/QCH4)/(PCO2/PCH4) (1)
〔式(1)中、QCO2およびQCH4は、それぞれ、二酸化炭素およびメタンの透過量[mol・(m2・s)−1]を示し、PCO2およびPCH4は、それぞれ、供給ガスである二酸化炭素およびメタンの圧力[Pa]を示す。〕
ここには二酸化炭素とメタンの理想分離係数の算出法を示したが、他のガスと他のガスの理想分離係数も同様に算出される。
[実施例1](RHO型ゼオライトの製造)
RHO型ゼオライトを次の通り合成した。
22.8gの18−クラウン−6−エーテル(東京化成社製)と5.8gのNaOH(キシダ化学社製)及び4.7gのCsOH・H2O(三津和化学社製)を84.1gの水に溶解させ、得られた溶液を80℃で3時間撹拌することにより、クラウンエーテル−アルカリ水溶液を得た。
29.8gのFAU型ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比(以下「SAR」という場合がある)=30、Zeolyst社製 CBV720)に上記クラウンエーテル−アルカリ水溶液を滴下し、更に種結晶として国際公開公報WO2015/020014号に従って合成したRHO型ゼオライトを0.6g添加し、室温で2時間撹拌し、水熱合成用原料混合物を調製した。この混合物の組成(モル比)は次の通りである。
SiO2/Al2O3/NaOH/CsOH/H2O/18−クラウン−6−エーテル=1/0.033/0.30/0.06/10/0.18
この水熱合成用原料混合物を室温で24時間熟成した後、耐圧容器に入れ、150℃のオーブン中に静置し、72時間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉末のXRDを測定したところ、格子面間隔表示で表1に示すような位置にピーク及び相対強度を有するRHO型ゼオライトである事を確認した。また、XRDパターンを図1に示す。
[実施例2](多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造)
多孔質支持体上にゼオライトを直接水熱合成することにより多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体を作製した。多孔質支持体としては、ムライトチューブ(ムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)ニッカトー社製)を40mmの長さに切断した後、水で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
実施例1で得られたRHO型ゼオライトをボールミルで粉砕したものを種結晶として用いた。500mLのポリビンに、実施例1で得たRHO型ゼオライト10gと3φmmのHDアルミナボール(ニッカトー社製)300g、水90gを入れ、6時間、ボールミル粉砕して10重量%のRHO型ゼオライト分散液とした。このゼオライト分散液に、RHO型ゼオライトが3重量%になるように水を添加して種結晶分散液を得た。
この種結晶分散液を上記支持体に滴下し、ラテックス手袋を着用した指でこすりこむこと(以下、ラビング法ということがある)により種結晶を付着させた。種結晶が付着した支持体を、100℃で5時間以上乾燥させた。付着した種結晶の重量は約4.6g/m2であった。
水熱合成用原料混合物として、以下のものを調製した。
6.8gの18−クラウン−6−エーテル(東京化成社製)と2.1gのNaOH(キシダ化学社製)及び4.2gのCsOH・H2O(三津和化学社製)を125.9gの水に溶解し、80℃で3時間撹拌することにより、クラウンエーテル−アルカリ水溶液を得た。
8.9gのY型(FAU)ゼオライト(SAR=30、Zeolyst社製 CBV720)に上記クラウンエーテル−アルカリ水溶液を滴下し、水熱合成用原料混合物を調製した。
得られた水熱合成用原料混合物のゲル組成(モル比)は
SiO2/Al2O3/NaOH/CsOH/H2O/18−クラウン−6−エーテル=1/0.033/0.36/0.18/50/0.18であった。
この種結晶を付着させた支持体を上記水熱合成用原料混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し150℃で72時間、自生圧力下で加熱した。
所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体をオートクレーブから取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後、テンプレート焼成前のゼオライト(以下as−madeということがある)の状態での空気透過量は3.8L/(m2・分)であった。この多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を第1のRHO型ゼオライト膜複合体とした。
<繰り返し合成>
上記第1のRHO型ゼオライト膜複合体を水熱合成用原料混合物に浸漬し水熱合成することで第1のRHO型ゼオライト膜複合体上にさらにRHO型ゼオライトを合成した。水熱合成用原料混合物としては第1のRHO型ゼオライト膜複合体を合成する際に用いたものと同様のものを用い、水熱合成用原料混合物を入れたテフロン(登録商標)製内筒に第1のRHO型ゼオライト膜複合体を垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、150℃で72時間、自生圧力下で加熱した。
所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体(RHO型ゼオライト膜複合体)をオートクレーブから取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。テンプレート焼成前(as−made)の該RHO型ゼオライト膜複合体の空気透過量は0.0L/(m2・分)であった。得られたRHO型ゼオライト膜複合体のテンプレートを除去するために電気炉で400℃、5時間焼成し(テンプレート焼成工程)、第2のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。このとき150℃までの昇温速度と降温速度はともに2.5℃/分、150℃から400℃までの昇温速度と降温速度は0.5℃/分とした。焼成後の第2のRHO型ゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から、支持体上に結晶化したRHO型ゼオライトの重量は215g/m2であった。焼成後の第2のRHO型ゼオライト膜複合体の空気透過量は0.21L/(m2・分)であった。
生成した第2のRHO型ゼオライト膜複合体のXRDを測定したところRHO型ゼオライトが生成していることがわかった。XRDパターンを図2に示す。図2中の※は支持体由来のピークである。XRD測定は前記の条件により行った。
(2θ=18.7°付近のピークの強度)/(2θ=8.3°付近のピークの強度)=1.9であり、(2θ=14.4°付近のピークの強度)/(2θ=8.3°付近のピークの強度)=1.1であった。
Im−3m(No.229)における(3,1,0)面と(2,1,1)面に由来するピークの強度が顕著に強いことから、これらの面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していると考えられる。
[実施例3](多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造)
多孔質支持体としてはムライトチューブ(ムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)ニッカトー社製)を40mmの長さに切断した後、水で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
支持体上には水熱合成に先立ち、以下に示す方法で合成したRHO型ゼオライトの種結晶をラビング法で付着させた。
<種結晶の作成>
7.9gの18−クラウン−6−エーテル(東京化成社製)と14gのNaAlO2(純度:70重量%以上、キシダ化学社製)、3.8gのNaOH(キシダ化学社製)及び6gのCsOH・H2O(三津和化学社製)を54gの水に溶解し、得られた溶液を80℃で3時間撹拌することにより、クラウンエーテル−アルカリ水溶液を得た。
90gのコロイダルシリカ(シリカ濃度:40重量%、スノーテックス40、日産化学社製)に上記クラウンエーテル−アルカリ水溶液を滴下し水熱合成用原料混合物を得た。
以下に水熱合成用原料混合物のゲル組成(モル比)を示した。
SiO2/Al2O3/NaOH/CsOH/H2O/18−クラウン−6−エーテル=1/0.1/0.36/0.06/10/0.05
この水熱合成用原料混合物を室温で24時間熟成した後、耐圧容器に入れ、110℃のオーブン中に静置し、96時間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉末のXRDを測定したところ、RHO型ゼオライトである事を確認した。
実施例2と同様に500mLのポリビンに、得られたRHO型ゼオライト粉末10gと3φmmのHDアルミナボール(ニッカトー社製)300g、水90gを入れ、6時間ボールミル粉砕を行った。ボールミル粉砕して得られた10重量%のRHO型ゼオライト分散液に、RHO型ゼオライトが3重量%になるように水を添加して種結晶分散液を得た。
この種結晶分散液を支持体に滴下し、ラビング法により種結晶を支持体に付着させ、実施例2と同様に乾燥させたのち、実施例2と同じ方法で調製した水熱合成用原料混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し150℃で72時間、自生圧力下で加熱した。
所定時間経過後、放冷した後に多孔質支持体−ゼオライト膜複合体をオートクレーブから取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後、テンプレート焼成前(以下as−madeということがある)の状態で円筒管状の膜複合体の一端を封止し、他の一端を真空ラインに接続することで管内を減圧とし、真空ライン設置した流量計で空気の透過量を測定したところ、透過量は0.2L/(m2・分)であった。
この多孔質支持体−ゼオライト膜複合体を実施例2と同じ条件でテンプレートを除去するために焼成し多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体を得た。多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したRHO型ゼオライトの重量は108g/m2であった。焼成後の空気透過量は0.2L/(m2・分)であった。
生成したRHO型ゼオライト膜複合体のXRDを測定したところRHO型ゼオライトが生成していることがわかった。XRDパターンを図3に示す。図3中の※は支持体由来のピークである。(2θ=14.4°付近のピークの強度)/(2θ=8.3°付近のピークの強度)=2.5であり、Im−3m(No.229)における(2,1,1)面への配向が推測された。
得られたRHO型ゼオライト膜複合体の表面をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していた。また、断面をSEMで観測した結果、膜厚は約0.5〜7μmであり、平均するとおよそ3μmであった。
[実施例4](多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造)
多孔質支持体としてアルミナチューブ(外径6mm、平均細孔径0.15μm、ノリタケカンパニーリミテド社製)を40mmの長さに切断した後、水で洗浄したのち乾燥させたものを用いた以外は実施例2の第1のRHO型ゼオライト膜複合体と同様に多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体を合成した。
as−madeでの空気透過量は1.9L/(m2・分)であった。実施例2、3と同様にテンプレートを除去するために、得られたRHO型ゼオライト膜複合体を焼成し、多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体を得た。このRHO型ゼオライト膜複合体の重量は55g/m2であった。このRHO型ゼオライト膜複合体をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していることが認められた。
<イオン交換>
このようにして得られたテンプレート除去後のRHO型ゼオライト膜複合体を、水36.8gに硝酸アンモニウムを3.2g溶かした1Mの硝酸アンモニウム水溶液が入ったテフロン容器(登録商標)製内筒(65ml)に入れた。オートクレーブを密栓し、100℃で1時間、静置状態、自生圧力下で加熱した。
所定時間経過後、放冷した後に、RHO型ゼオライト膜複合体を水溶液から取出した。水溶液から取出したRHO型ゼオライト膜複合体について、1Mの硝酸アンモニウム水溶液を用いて再度イオン交換処理を同様に行った。水で洗浄した後、100℃で4時間以上乾燥させNH4 +型のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。
NH4 +型のRHO型ゼオライト膜複合体をH+型にするため、このRHO型ゼオライト膜複合体を電気炉で400℃、2時間焼成した。このとき150℃までの昇温速度と降温速度はともに2.5℃/分、150℃から400℃までの昇温速度と降温速度は0.5℃/分とし、H+型のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。
得られたRHO型ゼオライト膜複合体の膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、(2θ=14.4°付近のピークの強度)/(2θ=8.3°付近のピークの強度)=1.1であり、Im−3m(No.229)における(2,1,1)面への配向が推測された。SEM−EDXにより測定した、RHO型ゼオライト膜複合体のSiO2/Al2O3モル比は11であった。また、Cs/Al2O3モル比は0.17であった。
このRHO型ゼオライト膜複合体について図5の装置を用いて上述の単成分ガス透過試験を行い、単ガス成分透過性能を測定した。測定に先だちRHO型ゼオライト膜複合体を装置中であらかじめ乾燥させた。その際、恒温槽の温度を180℃とし、供給ガス7としてHeを、耐圧容器2とゼオライト膜複合体との間に導入して、圧力を約0.3MPaに保ち、ゼオライト膜複合体の円筒の内側を0.098MPa(大気圧)として、約120分間乾燥させた。
その後、供給ガスを各評価ガスに変更した。このとき、供給側の圧力を0.4MPaとし、供給ガス7側と透過ガス8側の差圧を0.3MPaとした。また、恒温槽の温度を50℃とした。透過ガス流速が安定したのちに、ゼオライト膜複合体を透過した試料ガス(透過ガス8)の流速を測定し、ガスのパーミエンス[mol・(m2・s・Pa)−1]を算出した。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いた。
このようにして得られた各評価ガスのパーミエンスを以下に示す。
CO2:1.5×10−7 mol・(m2・s・Pa)−1
N2 :2.2×10−8 mol・(m2・s・Pa)−1
CH4:9.8×10−9 mol・(m2・s・Pa)−1
[実施例5](多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造)
多孔質支持体としてはアルミナチューブ(外径6mm、平均細孔径0.15μm、ノリタケカンパニーリミテド社製)を40mmの長さに切断した後、水で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
支持体上には水熱合成に先立ち、「Microporous and Mesoporous Materials 132 (2010) 352−356)」に記載の方法で合成したRHO型ゼオライトの種結晶を実施例2と同様にボールミルして3重量%の種結晶分散液を作製し、この分散液を用いて実施例2と同様にラビング法により支持体に付着させ乾燥させた。
この種結晶を付着させた支持体を実施例2と同じ方法で調製した水熱合成用原料混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し160℃で18時間、自生圧力下で加熱した。
所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体をオートクレーブから取り出し洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。乾燥後、as−madeの状態での空気透過量は1.5L/(m2・分)であった。実施例2〜4と同様にテンプレートを除去するために、得られたRHO型ゼオライト膜複合体を焼成し、RHO型ゼオライト膜複合体を得た。焼成後のゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したRHO型ゼオライトの重量は50g/m2であった。
<イオン交換>
RHO型ゼオライト膜複合体を実施例4と同様にイオン交換を行い、NH4 +型のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。
NH4 +型のRHO型ゼオライト膜複合体をH+型にするため、RHO型ゼオライト膜複合体を電気炉で実施例4と同一条件で焼成し、H+型のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。
<膜分離性能の評価>
RHO型ゼオライト膜複合体について実施例4と同様に単成分ガス透過試験を行い、単ガス成分透過性能を評価した結果、以下に示す各評価ガスのパーミエンスが得られた。
CO2:2.5×10−7 mol・(m2・s・Pa)−1
CH4:6.0×10−9 mol・(m2・s・Pa)−1
またCO2とCH4のパーミエンス比は41であった。
[実施例6](多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体の製造)
多孔質支持体としてはアルミナチューブ(外径6mm、平均細孔径0.15μm、ノリタケカンパニーリミテド社製)を40mmの長さに切断した後、水で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
支持体上には水熱合成に先立ち、実施例2と同様に多孔質支持体−RHO型ゼオライト膜複合体を合成した。
所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体をオートクレーブから取り出し洗浄後100℃で3時間以上乾燥させた。乾燥後、as−madeの状態での空気透過量は0.0L/(m2・分)であった。得られたRHO型ゼオライト膜複合体のテンプレートを除去するために電気炉で300℃、5時間焼成し(テンプレート焼成工程)、第2のRHO型ゼオライト膜複合体を得た。このとき室温から100℃までの昇温と降温をともに2時間、100℃から300℃までの昇温速度と降温速度は0.5℃/分とした。得られたRHO型ゼオライト膜複合体を焼成し、RHO型ゼオライト膜複合体を得た。焼成後のゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から支持体上に結晶化したRHO型ゼオライトの重量は52g/m2であった。
<膜分離性能の評価>
RHO型ゼオライト膜複合体を用いて、アンモニア/窒素の混合ガスからのアンモニア分離試験を図4の装置を用いて行った。
前処理として、200℃で、供給ガス7としてアンモニアと窒素の混合ガスを、耐圧容器2とRHO型ゼオライト膜複合体との間に導入して、圧力を約0.3MPaに保ち、RHO型ゼオライト膜複合体の円筒の内側を0.098MPa(大気圧)として、約120分間乾燥した。
その後、10%アンモニア/90%窒素の混合ガス(250℃)を100SCCMで流通させ、背圧を0.3MPaに設定した。この時、RHO型ゼオライト膜複合体の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.2MPaであった。また、膜内を透過したガスは、図4のライン9からスイープガスとしてアルゴンガスを5.4sccm供給した。
得られた透過ガスのアンモニアの濃度は66%であった。またパーミエンスを算出すると、アンモニアのパーミエンスは5.5×10-9[mol/(m2・s・Pa)]、窒素のパーミエンスは2.7×10-10[mol/(m2・s・Pa)]であり、アンモニアと窒素のパーミエンス比21であった。従って、本発明のRHO型ゼオライト膜複合体を用いると、窒素を含む混合ガスから窒素を分離する事が確認された。