JP2015044162A - 気体の分離または濃縮方法、および高酸素濃度混合気体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これらの問題を解決すべく耐薬品性、耐酸化性、耐熱性、耐圧性が良好な無機膜が提案されてきている。無機膜としてはPd膜、複合酸化物膜などの緻密膜やシリカ膜、ゼオライト膜等の多孔質膜がある。緻密膜では溶解拡散を原理とする分離であるが、多孔質膜では分子ふるい、吸着性を利用する分離であり、膜に溶解しない成分同士でも分離対象とすることができる。その中でもゼオライト膜は結晶性を有し、サブナノメートルの規則的な細孔を持つため、細孔径が均一であり分子ふるい効果が高く、分離性能に優れている。また組成を変えることなどで吸着性の制御も期待できる。さらに結晶性であるためにアモルファスな形態であるシリカ膜等と比較して安定性にも優れている。
用い得るゼオライト膜の中で、A型ゼオライト膜は水蒸気安定性に乏しく、また結晶間隙のない膜にすることが難しいため結晶間隙を通過する気体が多く存在し分離性能は十分でない。FAU膜はゼオライトの細孔が0.6〜0.8nmであり、水素などの小さな気体分子2個分がゼオライト細孔内に入りうる大きさであり、上述した気体分離の多くの場合で分子ふるい効果は期待できない。この膜は、ゼオライト細孔への吸着特性をもつ分子ともたない分子の分離、例えば二酸化炭素と窒素の分離に向いている。しかし、吸着性のない分子は分離しにくく、適用範囲が狭い。MFI膜の細孔径は0.55nmであり、これもFAU膜同様に気体分子の分離には細孔がやや大きく分離性能も高くない。
細孔径が小さく、小さな気体の分離に適した膜としてDDR(特許文献1)、SAPO−34(非特許文献1)、SSZ−13(非特許文献2)が知られている。また本発明者らがこれらの膜の課題である透過性、耐水性、分離性に優れたゼオライト膜複合体とそれによるガス分離方法を見出し先に提案している(特許文献2)。
。
本発明は、かかる従来技術の問題が解決された、様々なkinetic直径の小さな気体を高い分離性で分離することができ、特に4Å以下のような気体が含まれる気体混合物の分離または濃縮方法を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、分離または濃縮方法を利用することで、高酸素濃度の混合気体の製造方法を提供することを課題とするものである。
即ち、本発明の要旨は、次の(1)〜(15)に存する。
(1) 複数の気体成分を含有する混合気体を分離膜に接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、気体の分離または濃縮方法。
(2) 該混合気体が、酸素を含有する混合気体であり、該混合気体から酸素を分離する、または、該混合気体から酸素を透過させる(1)に記載の気体の分離または濃縮方法。(3) 該混合気体が、メタン及びヘリウムを含有する混合気体であり、該混合気体から、ヘリウムを分離する、または、該混合気体からヘリウムを透過させる、請求項(1)に記載の気体の分離または濃縮方法。
(4) 該混合気体が、二酸化炭素及び窒素を含有する混合気体であり、該混合気体から、二酸化炭素を分離する、または、該混合気体から二酸化炭素を透過させる、(1) に
記載の気体の分離または濃縮方法。
(5) 該ゼオライト膜は、水熱合成によりゼオライトを形成した後、Si化合物を含む溶液中で処理して得られたものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の気体の分離または濃縮方法。
(6) 天然ガスを分離膜に接触させて、天然ガスのうち透過性の高い成分を透過させることにより、天然ガスから該透過性の高い成分を分離する、または、天然ガスから透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する天然ガスの分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、天然ガスの分離または濃縮方法。(7) 該透過性の高い成分がヘリウムである、(6)に記載の天然ガスの分離または濃縮方法。
(8) 燃焼気体を分離膜に接触させて、燃焼気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、燃焼気体から該透過性の高い成分を分離する、または、燃焼気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する燃焼気体の分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、燃焼気体の分離または濃縮方法。
(9) 該透過性の高い成分が二酸化炭素である、(8)に記載の天然ガスの分離または濃縮方法。
(10)酸素を含有する混合気体を分離膜に接触させることにより、高酸素濃度の混合気体を製造する方法であって、該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、
該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、
該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、高酸素濃度混合気体の製造方法。
本発明の気体の分離または濃縮方法は、複数の気体成分を含有する混合気体を分離膜に接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮方法であって、該分離
膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする。
なお、本明細書において、無機多孔質支持体と、その上に形成されたゼオライト膜を「ゼオライト膜複合体」と言う場合があり、これを「膜複合体」と略称することがある。また、「無機多孔質支持体」を「多孔質支持体」または「支持体」と略称することがある。
本発明において、多孔質支持体としては、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性があり、無機の多孔質よりなる支持体(無機多孔質支持体)であれば如何なるものであってもよい。例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体(セラッミクス支持体)、鉄、ブロンズ、ステンレス等の焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体(セラミックス支持体)が挙げられる。それらの中で、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。これらの支持体を用いれば、部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなる。
本発明において、かかる多孔質支持体上、すなわち支持体の表面などにゼオライトを膜状に形成させる。支持体の表面は、支持体の形状に応じて、どの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば、円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
多孔質支持体は、必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、多孔質支持体の表面とはゼオライトを結晶化させる無機多孔質支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であってもよい。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってもよい。
本発明において、上記多孔質支持体上にゼオライト膜を形成させて、ゼオライト膜複合体を得る。
ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機化合物、あるいは下記詳述するようなゼオライト表面を修飾するSi化合物またはその反応物などを必要に応じ含んでいてもよい。また、本発明におけるゼオライト膜は、一部アモルファス成分などを含んでいてもよいが、実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜が好ましい。
ゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それゆえ、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合が特に好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので特に好ましい。
ゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体とを好適に分離することができる。なお分離に供される分子に上限はないが、分子の大きさは、通常100Å程度以下である。
尚、ゼオライトとしては、アルミノ珪酸塩であるものが好ましい。
ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は、X線光電子分光法(XPS)のより得られる数値である。XPSは膜表面の情報を得る分析法であり、この分析法により、膜表面のSARを求めることができる。
ましくは28以上、さらに好ましくは30以上、よりさらに好ましくは32以上、特に好
ましくは50以上、最も好ましくは80以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは500以下、最も好ましくは300以下である。ゼオライト 膜表面のSiO2/Al2O3モル比
が25以上であることにより膜表面の膜表面の細孔径が狭小化しており分離性能が向上すると考えられる。また、膜表面のSARが上限以下であることにより、吸着性の点で、透過度が小さくならないというメリットがある。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含むものが好ましく、酸素6〜8員環の細孔構造を有するゼオライトを含むものがより好ましい。
なお、本明細書において、ゼオライトの構造は、上記のとおり、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示す。
フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Å3あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001 ELSEVIERに示されている。
本発明において、ゼオライト膜複合体は、ゼオライト膜がCHA型ゼオライトを含む場合、X線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、特に好ましくは8以上、もっとも好ましくは10以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
uKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作製した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIER(以下これを、「非
特許文献1」ということがある。)によればrhombohedral settingで空間群を
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、非特許文献1によればrhombohedral settingで空間群を
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、非特許文献1によればrhombohedral settingで空間群を
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,0,0)面由来のピークの強度の(2,0,−1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、Halil Kalipcilar et al., "Synthesis and Separation Performance of SSZ-13 Zeolite Membranes on Tubular Supports", Chem. Mater. 2002, 14, 3458-3464(以下これを、「非特
許文献2」ということがある。)よれば2未満である。
オライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
そのため、この比が0.5以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
ピーク強度比A、Bはその値が大きいほど配向の程度が強いことを示し、一般的に配向の程度が強いほど緻密な膜が形成されていることを示す。一般的には配向が強いほど分離性能が高い傾向があるが、分離対象の混合物によっては分離性能が高くなる最適な配向の程度は異なるので分離対象の混合物によって適宜、配向の程度が最適なゼオライト膜複合体を選択して使用することが望ましい。
本発明において、多孔質支持体−ゼオライト膜複合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、水熱合成により、無機多孔質支持体上にゼオライトを形成させた後、Si化合物を含む溶液中で浸漬などの処理をする方法が好ましい。
具体的には、例えば、ゼオライト膜複合体は、組成を調整して均一化した水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)を、多孔質支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱することにより調製できる。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性、耐水蒸気性が向上する。
合わせて使用してもよい。
ゼオライトがCHA型の場合、有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
水性反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiO2に対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO2モル比)で、通常0.005以上、好まし
くは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。
Si元素源とアルカリ源の比は、M(2/n)O/SiO2(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
水性反応混合物中へのKの添加は、前記のとおり、rhombohedral settingで空間群を
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得る。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。
CHA型ゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させてその分散液に支持体を浸けて種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性よく膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、とくに好ましくは3質量%以下である。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1m2あたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
くなることがある。反応時間が長すぎると、求めるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
テンプレートの焼成を目的とする加熱処理の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換してもよい。イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na+、K+、Li+などのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cu、Znなどの遷移金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na+、K+、Li+などのアルカリ金属イオンが好ましい。
NO3、NaNO3などアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200℃〜500℃で焼成してもよい。
かくして得られる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体(加熱処理後のゼオライト膜複合体)の空気透過量[L/(m2・h)]は、通常1400L/(m2・h)以下、好ましくは1000L/(m2・h)以下、より好ましくは700L/(m2・h)以下、より好ましくは600L/(m2・h)以下、さらに好ましくは500L/(m2・h)以下、特に好ましくは300L/(m2・h)以下、もっとも好ましくは200L/(m2・h)以下である。透過量の下限は特に限定されないが、通常0.01L/(m2・h)以上、好ましくは0.1L/(m2・h)以上、より好ましくは1L/(m2・h)以上である。
続いて、ゼオライト膜複合体を、Si原子を1原子以上含む化合物である、Si化合物を含む液体で浸漬等の処理をする。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、上記した特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi層を形成することにより、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径となり、分離性能が向上させることができると考えられる。また、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。
これらのSi化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
処理の方法としては液に浸漬し、浸漬した液の中でSi化合物との化学的な結合を形成させてもよいし、浸漬した後にゼオライト膜を液から出して表面にSi化合物が付着した状態で化学的な結合を形成してもよいし、浸漬中、浸漬後の両方で化学的な結合の形成をしてもよい。
水を溶媒として用いる場合、溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、
より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。温度が低すぎると、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が不十分でSi化合物による修飾が十分に行われず膜表面の親水性が十分に向上しないことがある。温度が高すぎると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライト膜が壊れる可能性がある。
液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
溶液中のSi化合物の含有量は、Si化合物のモル濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、Si元素の場合の濃度としては、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
水中に例えば、NaOH、KOH、アミン等の塩基性物質を添加することで微量のOH−1イオンを積極的に存在させてもよく、その場合、水溶液中のOH−1イオン濃度は、通常0.01mol/l以下、より好ましくは0.005mol/l以下であり、通常0.0001mol/l以上、好ましくは0.0005mol/l以上、より好ましくは0.001mol/l以上である。水中にOH−1イオンが存在することによって、存在しない場合よりも短時間で同等の効果を得ることが可能になる。水中のOH−1イオン濃度が高すぎると、ゼオライト膜が溶解して破壊されやすくなり処理時間の厳密なコントロールが必要となる。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸などが好ましく、ギ酸、酢酸、乳酸がより好ましく、酢酸が特に好ましい。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸などが好ましく、硫酸、硝酸、燐酸がより好ましい。
また、H+濃度は、通常1×10−10mol/l以上、好ましくは1×10−8mol/l以上、より好ましくは1×10−7mol/l以上、特に好ましくは1×10−5mol/l以上であり、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好ましくは1mol/l以下である。
次に有機溶媒を用いる浸漬処理について説明する。
この場合、溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは110℃以下である。温度が低すぎると、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が不十分でSi化合物による修飾が十分に行われず分離性能が十分に向上しないことがある。温度が高すぎるとゼオライト膜が壊れる可能性がある。
用い得る有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の非極性溶媒、アニソール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒、および、アセトンなどの極性溶媒が挙げられる。これらの中で、トルエン、イソプロピルアルコールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
溶液中のSi化合物の含有量は、Si元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。また、Al化合物の含有量は、Al元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
表面処理時の圧力は特に限定されず、大気圧、あるいは密閉容器中に入れた処理溶
液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性気体を加えても差し支えない。
浸漬後の加熱は通常の乾燥機などで行うことも出来るし、密閉容器中に浸漬後の膜を入れて加熱してもよい。密閉容器中に浸漬後の膜を入れる際には少量の水を膜に接触しないように共存させてもよい。
かくして製造されるゼオライト膜複合体は、上記のとおり優れた特性をもつものであり、本発明の分離または濃縮方法における膜分離手段として好適に用いることができる。
本発明の分離または濃縮方法は、複数の気体成分を含有する混合気体を上記詳述した分離膜に接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する。
(透過性が相対的に低い混合気体中の物質)の濃度を高めることで、特定の成分を分離回収、あるいは濃縮することができる。
本発明の方法において、分離または濃縮の対象となる混合気体としては、例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1−ブテン、2-ブテン、イソブテン、六フッ化硫黄、ヘリウム、一酸
化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。これらの気体成分のうち、パーミエンスの高い気体成分は、ゼオライト膜複合体を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給気体側に濃縮される。
ここで、パーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)とは透過する物質量を、膜
面積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol・(m2・s・Pa)−1]である。
メタン及びヘリウムを含有する混合気体を用いる場合は、該混合気体から、ヘリウムを分離する、または、該混合気体からヘリウムを透過させるために使用されることが好ましい。メタン及びヘリウムを含有する混合気体としては、天然ガスなどが挙げられる。
本発明で用いるゼオライト膜に対して、酸素は高い透過性を有する。そのため、このゼオライト膜に酸素を含有する混合気体を接触させ分離させることにより、酸素を含有する混合気体、例えば空気中の酸素濃度を高めることができ、高酸素濃度の混合気体を製造することができる。
また、本発明で用いるゼオライト膜に対して、ヘリウムは高い透過性を有する。そのため、このゼオライト膜に、例えばヘリウムやメタンを含有する天然ガスを接触させることにより、ヘリウムを分離することができる。
これら混合気体の分離や濃縮の条件は、対象とする気体種や組成等に応じて、それ自体既知の条件を採用すればよい。
その一つである円筒型分離膜モジュールを説明する。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料気体(混合気体)の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
混合気体からの気体分離温度としては、0から500℃の範囲内で行なわれる。膜の分離特性から考えると室温から100℃の範囲内が望ましい。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
以下の実験例において、物性や分離性能等の測定は、特に明記しない限り次のとおり行った。
(1)X線回折(XRD)測定
ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
このSEM−EDX測定により、生成したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比を求めた。なお、SEM−EDX測定において、X線の照射エネルギーを10kV程度とすることにより数ミクロンのゼオライト膜のみの情報を得ることができる。
ゼオライト膜表面のXPS(X線光電子分光法)測定を、以下の条件で行った。
・装置名:PHI社製 Quantum2000
・X線源:単色化Al−Kα、出力 16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃(5μA)、イオン銃(2V)併用
・分光系:パルスエネルギー 187.85eV@ワイドスペクトル
117.40eV@ナロースペクトル(Al2p)
29.35eV@ナロースペクトル(C1s,O1s,Si
2p)
・測定領域:スポット照射(照射面積<340μmφ)
・取り出し角:45°(表面より)
このXPS測定により、生成したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を求めた。
大気圧下で、ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、気密性を保持した状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターでゼオライト膜複合体を透過した空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m2・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOFLOC社製8300、N2気体用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/min(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM−2100M、Air気体用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
単成分気体透過試験は、図1に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料気体は、二酸化炭素(純度99.9%、高圧気体工業社製)、メタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ製)、窒素(純度99.99%、東邦酸素工業製
)、ヘリウム(純度99.99、ジャパンヘリウムセンター製)である。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体の内側と、透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管(スイープ気体導入用配管)12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
さらに具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給気体によるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給気体7側と透過気体8側の差圧を一定として、透過気体流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料気体(透過気体8)の流量を測定し、気体のパーミエンス[mol・(m2・s・Pa)−1]を算出する。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給気体の供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いる。
α=(Q1/Q2)/(P1/P2) (1)
〔式(1)中、Q1およびQ2は、それぞれ、透過性の高い気体および透過性の低い気体の透過量[mol・(m2・s)−1]を示し、P1およびP2は、それぞれ、供給気体である透過性の高い気体および透過性の低い気体の圧力[Pa]を示す。〕
ゼオライト膜複合体の混合気体透過試験は、図1に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料気体は、圧縮空気である。
図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。高温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
上記測定結果に基づき、分離係数α’を下記式(2)により算出する。
α’=(Q’1/Q’2)/(P’1/P’2) (2)
〔式(2)中、Q’1およびQ’2は、それぞれ、透過性の高い気体および透過性の低い気体の透過量[mol・(m2・s)−1]を示し、P’1およびP’2は、それぞれ、供給気体中の透過性の高い気体および透過性の低い気体の分圧[Pa]を示す。〕
無機多孔質支持体とCHA型ゼオライト膜の膜複合体は、CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
水酸化リチウム1水和物0.29gと1mol/L−KOH水溶液13.9gと水104.0gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)1.32gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.35gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.4gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
O3=10である。
無機多孔質支持体としてアルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
焼成後のゼオライト膜複合体の空気透過量は177L/(m2・h)であった。
生成した膜のXRDを測定したところCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて50℃で単成分気体透過評価を行なった。前処理として、ゼオライト膜複合体を、140℃で、供給気体7として二酸化炭素を、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との円筒の間に導入して、二酸化炭素の透過量が安定するまで乾燥した。評価した気体は二酸化炭素、メタン、窒素、ヘリウムである。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて、50℃で空気の分離評価を行なった。空気を配管7から供給し、背圧が0.1MPaとなるように背圧弁6を調整し、空気分離を行った。
得られた分離結果を表1に示す。分離後の酸素濃度は28%であり、分離前よりも酸素濃度は高くなっているもののその濃度は十分でなかった。
加熱時間を24時間とした以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。付着した種結晶の質量は1.0g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は126g/m2であった。
このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は19.0であった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に5
0℃で単成分気体透過評価を行なった。このようにして得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は15、He/CH4パーミエンス比は16であり、分離性能としては不十分であった。
無機多孔支持体としてムライトチューブを使用した以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。付着した種結晶の質量は0.7g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は140g/m2であった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例2と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は17、He/CH4パーミエンス比は17であり、分離性能が向上している傾向にあるものの不十分であった。
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L−NaOH水溶液10.8gと1mol/L−KOH水溶液7.2gと水103.3gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.91gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、TMADAOH水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.43gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.8gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
無機多孔質支持体として比較例1と同様のアルミナチューブを用いた。
種結晶 として、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH
=1/0.033/0.1/0.06/20/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用いた。 この種結晶を0.3質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は0.6g/m2であった。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は17、He/CH4パーミエンス比は17であり、分離性能が向上している傾向にあるものの不十分であった。
比較例3と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は1.9g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は146g/m2であった。このように得た膜複合体に実施例1同様に表面処理を実施した。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は35、He/CH4パーミエンス比は145であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。
とがわかった。
種結晶の分散液の濃度を0.3質量%とした以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.5g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は146g/m2であった。
4、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度
)=5.9であった。
ピークの強度)=0.91、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.
8°付近のピークの強度)=0.32であった。
9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)ともに高く、rhombohedral settingにおける(1,0,0)面、(1,1,1)面への配向が推測された
このように得た膜複合体にメチルシリケートオリゴマーの濃度を10質量%とした以外は実施例1と同様に表面処理を実施した。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は26、He/CH4パーミエンス比は26であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。
オートクレーブを密閉し、自生圧力下で加熱する条件を180℃、18hとした以外は実施例3と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.5g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は123g/m2であった。
このように得た膜複合体にメチルシリケートオリゴマーの濃度を25質量%とし、液温を40℃とした以外は実施例1と同様に表面処理を実施した。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に5
0℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は42、He/CH4パーミエンス比は180であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
水酸化リチウム1水和物0.23gと1mol/L−KOH水溶液11.0gと水110gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.89gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、TMADAOH水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.38gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)7.05gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
その後、加熱時間を18時間とした以外は実施例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.3g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は96g/m2であった。
このゼオライト膜複合体について、SEM−EDXにより測定したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比は17.6、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は76.2であり表面のSiの割合が高いことがわかる。
得られた無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて、50℃で空気の分離評価を行なった。得られた分離結果を表1に示す。分離後の酸素濃度は34%であり、比較例1、2および3と比べて高い濃度の酸素が得られることがわかった。
比較例1〜3、実施例1〜5の結果を表1に示す。
2. 耐圧容器
3. エンドピン
4. 接続部
5. 圧力計
6. 背圧弁
7. 供給気体
8. 透過気体
9. スイープ気体
10. 排出気体
11. 配管
12. 配管
Claims (10)
- 複数の気体成分を含有する混合気体を分離膜に接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、気体の分離または濃縮方法。 - 該混合気体が、酸素を含有する混合気体であり、該混合気体から酸素を分離する、または、該混合気体から酸素を透過させる、請求項1に記載の気体の分離または濃縮方法。
- 該混合気体が、メタン及びヘリウムを含有する混合気体であり、該混合気体から、ヘリウムを分離する、または、該混合気体からヘリウムを透過させる、請求項1に記載の気体の分離または濃縮方法。
- 該混合気体が、二酸化炭素及び窒素を含有する混合気体であり、該混合気体から、二酸化炭素を分離する、または、該混合気体から二酸化炭素を透過させる、請求項1に記載の気体の分離または濃縮方法。
- 該ゼオライト膜は、水熱合成によりゼオライトを形成した後、Si化合物を含む溶液中で処理して得られたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の気体の分離または濃縮方法。
- 天然ガスを分離膜に接触させて、天然ガスのうち透過性の高い成分を透過させることにより、天然ガスから該透過性の高い成分を分離する、または、天然ガスから透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する天然ガスの分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、天然ガスの分離または濃縮方法。 - 該透過性の高い成分がヘリウムである、請求項6に記載の天然ガスの分離または濃縮方法。
- 燃焼気体を分離膜に接触させて、燃焼気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、燃焼気体から該透過性の高い成分を分離する、または、燃焼気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する燃焼気体の分離または濃縮方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、燃焼気体の分離または濃縮方法。 - 該透過性の高い成分が二酸化炭素である、請求項8に記載の燃焼気体の分離または濃縮方法。
- 酸素を含有する混合気体を分離膜に接触させることにより、高酸素濃度の混合気体を製
造する方法であって、
該分離膜が、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜であり、
該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、
該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることを特徴とする、高酸素濃度混合気体の製造方法。
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