JP2020131184A - ゼオライト膜付多孔質支持体、その製造方法、及びそれを用いた窒素の分離方法 - Google Patents

ゼオライト膜付多孔質支持体、その製造方法、及びそれを用いた窒素の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】メタン等の炭化水素から窒素を除去することが可能なゼオライト膜付多孔質支持体の提供。
【解決手段】多孔質支持体上に、MFI型ゼオライトにより構成されるMFI型ゼオライト膜が形成されたゼオライト膜付多孔質支持体であって、MFI型ゼオライト膜表面が、一般式(1)

(式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理されているゼオライト膜付多孔質支持体。
【選択図】なし

Description

本発明は、Si含有化合物により表面処理されたゼオライト膜付多孔質支持体及びその製造方法に関する。また、本発明は、当該ゼオライト膜付支持体を用いた窒素の分離方法に関する。
液化天然ガス(LNG)製造プラントやLNG受入基地、LNG輸送船では、液化プロセスの制御や貯槽への入熱によりメタンと窒素の混合ガスであるボイルオフガスが発生する。ボイルオフガスのようにメタンに窒素が含有されている混合ガスから燃料用の濃縮メタンを回収するために、従来は、平衡吸着量の差を利用して分離する圧力スウィング吸着法が用いられてきたが、ガスの処理量を大容量化することに伴って吸着剤使用量の増大や設置面積の増大などの問題があった。このため、省エネルギーかつ簡素な窒素分離方法の確立が望まれていた。
近年、無機多孔質支持体表面に形成させたゼオライト膜を用いた気体分離方法が報告されている。ゼオライト膜は、ゼオライトから構成される膜であり、分子のサイズや形状の違いにより選択的に分子を通過させる性質を有する。このため、分子ふるいとして広く利用されている。例えば、窒素/メタン分離用(窒素とメタンの分離用)としては、CHA型ゼオライト膜の開発が進められており、非特許文献1にSSZ−13により構成される膜、非特許文献2にSAPO−34により構成される膜が記載されている。また、特許文献1ではSi化合物により表面処理したCHA型ゼオライト膜の水/酢酸分離について記載されている。
特開2015−147204号公報
Ting Wu,Merritt C.Diaz,Yihong Zheng,Rongfei Zhou,Hans H.Funke,John L.Falconer,and Richard D.Noble,Journal of Membrane Science, 473,(2015),P201−209 Ti Huang,Lei Wang,Zhuonan Song,Shiguang Li,and Miao Yu,Angewandte Chemie International ,Edition 54,(2015),P10843−10847
酸素8員環構造であるCHA型ゼオライトは窒素透過度が低い。このため、CHA型ゼオライト膜により窒素とメタンを分離するには、必要膜面積が大きくなり、窒素の効率的な除去が困難である。
本発明の目的は、メタン等の炭化水素から窒素を分離することが可能なゼオライト膜付多孔質支持体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、Si含有化合物によりMFI型ゼオライト膜表面を表面処理したゼオライト膜付多孔質支持体を脱窒素プロセスへ適用することでメタン等の炭化水素を高純度化できるため、装置の簡素化や低コスト化が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、多孔質支持体上にMFI型ゼオライトにより構成されるMFI型ゼオライト膜が形成されたゼオライト膜付多孔質支持体であって、
該MFI型ゼオライト膜表面が、一般式(1)
(式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理されていることを特徴とする、ゼオライト膜付多孔質支持体である。
本発明によれば、メタン等の炭化水素から窒素を分離することが可能なゼオライト膜付多孔質支持体を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、多孔質支持体上にMFI型ゼオライトにより構成されるMFI型ゼオライト膜(以下、単に「ゼオライト膜」ともいう)が形成されたゼオライト膜付多孔質支持体であって、
ゼオライト膜表面が、一般式(1)
(式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理されていることを特徴とする、ゼオライト膜付多孔質支持体である。
本発明のゼオライト膜付多孔質支持体は、多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜がMFI型の結晶相を含有し(つまり、MFI型のゼオライトにより構成されており)、かつゼオライト膜表面が一般式(1)
(式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれ、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理されている。これにより、窒素と炭化水素を含有するガスと接触させた際に、選択的に窒素を透過させる。
本発明のゼオライト膜付多孔質支持体において、ゼオライト膜にMFI型ゼオライトが含有されていることは、国際ゼオライト学会による分類で構造コードがMFIであるX線回折(以下、「XRD」という。)パターンとの比較により判断することが可能となる。
ゼオライト膜表面は、一般式(1)で表されるSi含有化合物(以下、単に「Si含有化合物」ともいう)で表面処理されたものである。これにより高選択的に窒素を透過させることが可能となる。ここで、表面処理されているとは、ゼオライト膜の表面にSi含有化合物が固定されている事を指す。Si含有化合物をMFI型ゼオライト膜に固定する手段は、特に限定されるものではなく、例えば、化学的な手段(例えば、化学結合)及び/又は物理的な手段(例えば、ファンデルワールス力による固定)を用いることができる。
本発明のゼオライト膜付多孔質支持体におけるゼオライト膜は、多孔質支持体上に形成されている。これにより窒素と炭化水素を含む気体を該ゼオライト膜が形成されている側の表面に接触させることで、窒素を選択的に分離することができる。
ここで、多孔質支持体上とは、多孔質支持体の外表面(多孔質支持体に設けられる孔の表面を除いた多孔質支持体の表面)と多孔質支持体の外部につながる孔の開口部(多孔質支持体の外表面に露出する孔の開口部)を指す。つまり、多孔質支持体上に形成されるゼオライト膜は、多孔質支持体の外表面を覆うとともに、多孔質支持体の外部につながる孔を塞ぐ。
なお、ゼオライト膜は、多孔質支持体上に形成されていればよく、ゼオライト膜の一部分が、多孔質支持体に設けられる孔の内部に侵入し、その孔の表面上(つまり、内表面上)に形成されていてもよい。また、ゼオライト膜は、多孔質支持体上の全ての領域に形成されていてもよく、多孔質支持体上の一部の領域のみに形成されていてもよい。
ゼオライト膜は、MFI型ゼオライトから構成される膜であり、MFI型ゼオライト以外にも、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シリカ、アルミナが挙げられる。ゼオライト膜は、MFI型ゼオライトが緻密に集合することで形成されており、このゼオライト膜の表面がSi含有化合物により表面処理されていることにより、炭化水素の透過が阻止される。一方、ゼオライト膜には、MFI型ゼオライトの骨格構造(具体的には、酸素10員環)に起因して、微細な細孔(分子レベルの細孔)が形成されており、この微細な細孔により窒素が透過する。
ゼオライト膜の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上100μm以下とすることができる。
多孔質支持体としては、圧力差に耐える強度や、耐熱性を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、無機系多孔質支持体、又は無機有機ハイブリッド多孔質支持体等が挙げられる。
無機系多孔質支持体としては、多孔質であれば特に制限されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、または炭化珪素などのセラミックス焼結体、またはステンレスなどの焼結金属、ガラス、カーボン成形体等を用いることができる。無機有機ハイブリッド多孔質支持体としては、特に限定するものではなく、例えば、前記無機系多孔質支持体と酢酸セルロース等の有機系支持体を混合又は積層させたものが挙げられる。強度、耐熱性、耐腐食性の観点で無機系多孔質支持体が好ましく、アルミナから構成されるアルミナ多孔質支持体がより好ましい。
多孔質支持体表面層の孔径は、例えば、0.05μm以上3.0μm以下とすることができ、さらには0.08μm以上2.0μm以下であることが好ましく、またさらには0.10μm以上1.5μm以下の範囲であることがより好ましい。当該支持体の孔径の評価は、バブルポイント法や水銀圧入法などで行うことができる。尚、多孔質支持体表面層とは、ゼオライト膜を形成し得る多孔質支持体の表面部分を指し、例えば、多孔質支持体の外表面から、多孔質支持体の厚さの25%程度までの部位である。また、ゼオライト膜を形成する支持体表面層以外の部分の孔径は、特に制限されないが、0.05μm以上3.0μm以下、さらに0.30μm以上1.5μm以下であることが例示できる。また、多孔質支持体の気孔率は窒素を分離する際の強度及び透過流量を左右するため、20%以上60%以下の気孔率を有するものが好ましい。
多孔質支持体の形状は、気体混合物を有効に分離できる形状であれば制限されるものではなく、例えば、平板状、波板状、管状、円柱状、円錐状、円錐台状、円筒状、角柱状、角筒状、角錐状、角錐台状、又は円柱状、若しくは角柱状の孔が多数存在するハニカム状などが挙げられる。波板状、管状、円柱状、円錐状、円錐台状、円筒状、角柱状、角筒状、角錐状、角錐台状、又は円柱状の多孔質支持体については、中心がくり抜かれた筒状のものが好ましく、筒は貫通しているものでもよいし、試験管状の貫通していないものであってもよい。
本発明のゼオライト膜付多孔質支持体において、ゼオライト膜を構成するMFI型ゼオライトとしては、シリカライト−1が好ましい。シリカライト−1は、結晶の骨格構造がケイ素および酸素で構成され、結晶の骨格構造内にアルミニウムを実質的に含まないMFI型ゼオライトである。これによりゼオライト膜はより窒素透過性能が高く、かつ、より耐久性に優れる。
ゼオライト膜の表面を表面処理する際のSi含有化合物は、一般式(1)で表され、式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基であることが好ましい。nは、0〜6の数字であることが好ましい。Rは、炭素数1又は2のアルキル基が好ましい。
具体的なSi含有化合物としては、高選択的かつ長期的に窒素を分離することができる点で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのSi含有化合物は、2種以上を組わせて用いてもよい。
ゼオライト膜に対する窒素透過度は、窒素の温度が20℃において、10×10−9mol/m/s/Pa以上が好ましく、更には20×10−9mol/m/s/Pa以上であることが好ましい。これにより、窒素を分離するために必要なゼオライト膜面積を小さくすることができ、経済的に有利である上に装置の簡素化が可能となる。ゼオライト膜に対する窒素透過度は、例えば、ゼオライト膜の膜厚を変更することなどにより調整できる。
ゼオライト膜に対する炭化水素透過度は低いほど好ましく、例えばメタン透過度は、メタンの温度が20℃において、10×10−9mol/m/s/Pa以下が好ましく、更に好ましくは9×10−9mol/m/s/Pa以下である。これにより、より効率的にメタン等の炭化水素を回収することができる。ゼオライト膜に対する炭化水素透過度は、例えば、ゼオライト膜の膜厚を変更することなどにより調整できる。
なお、本明細書においてゼオライト膜に対する透過度は、単位分圧差で単位面積のゼオライト膜を通過する単位時間あたりのガスのモル数(透過流量)を指す。また、本明細書において、透過度は、窒素またはメタンの分圧差を0.2MPa、膜面積を0.00063m、及び膜温度を20℃の条件で行う試験に基づいて得られる値である。
次に、本発明のゼオライト膜付多孔質支持体の製造方法について説明する。
本発明のゼオライト膜付多孔質支持体は、一般式(1)
(式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれ、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物を含む溶液に、ゼオライト膜が形成された多孔質支持体を浸漬することにより、製造することができる。
ゼオライト膜が形成された多孔質支持体(多孔質支持体上にゼオライト膜が形成されている多孔質支持体)は、公知の方法で製造することができるため、詳細な説明は省略する。公知の方法としては、例えば、特開2015−150527号公報に記載の方法や、国際公開第2017/221761号に記載の方法が挙げられる。なお、一例としては、MFI型ゼオライトの種晶を多孔質支持体の外表面に付着し、種晶が付着した多孔質支持体を、ゼオライト膜合成用原料組成物(MFI型ゼオライトの構成成分を含む溶液)に浸漬して水熱合成する方法を挙げることができる。
Si含有化合物を含む溶液は、少なくともSi含有化合物と溶媒を含む溶液である。溶媒としては、エタノール、ヘキサン等の溶媒で希釈して使用することができる。Si含有化合物を含む溶液としては、例えば、Si含有化合物1モルをエタノール300モルで希釈した溶液を挙げることができる。なお、本実施形態の製造方法では、ゼオライト膜が形成された多孔質支持体にSi含有化合物を固定できれば、Si含有化合物を含む溶液を使用することにかえて、Si含有化合物をそのまま用いてもよい。
ゼオライト膜が形成された多孔質支持体を、Si含有化合物を含む溶液に浸漬する際の温度は、低すぎると表面処理に時間がかかるため、20℃以上が好ましく、50℃以上が更に好ましい。高すぎるとゼオライト膜と多孔質支持体との熱膨張率の差で欠陥が生じるため、200℃以下が好ましい。表面処理の際の圧力は大気圧でも減圧下でも良い。
表面処理後は水や溶媒等で洗浄した後、電気炉等の加熱により乾燥させることが好ましい。乾燥時の加熱温度はゼオライト膜と多孔質支持体との熱膨張率の差で欠陥が生じるのを防ぐのに好適なため、300℃以下が好ましい。また、昇温速度と降温速度は5℃/min以下が好ましく、3℃/min以下が更に好ましい。これにより、窒素をより高選択的に分離することが可能になる。
ゼオライト膜が形成された多孔質支持体を、Si含有化合物を含む溶液に浸漬することで、ゼオライト膜の表面にSi含有化合物が固定され、本発明のゼオライト膜付多孔質支持体が製造される。なお、本明細書において、表面処理とは、ゼオライト膜の表面にSi含有化合物を固定する処理を指す。
次に、本発明のゼオライト膜付多孔質支持体を用いた窒素の分離方法について説明する。
本発明の分離方法は、窒素と炭化水素とを含む混合ガス(以下、「窒素/炭化水素混合ガス」ともいう)から窒素を分離する方法である。
本発明の窒素の分離方法は、ゼオライト膜付多孔質支持体に窒素と炭化水素とを含む混合ガスを接触させることを含む。窒素/炭化水素混合ガスは、ゼオライト膜(Si含有化合物で表面処理されたゼオライト膜)が形成される面に接触されればよい。例えば、多孔質支持体が、対向する2つの表面(多孔質支持体上の面)を有し、その少なくとも一方の表面上にゼオライト膜が形成されている場合、その一方の表面に対して窒素/炭化水素混合ガスを接触すればよい。この場合、窒素/炭化水素混合ガスから分離される窒素ガスが他方の面から排出される。
ゼオライト膜付多孔質支持体に窒素/炭化水素混合ガスが接触することにより、当該ガスから窒素が分離される。さらに詳しくは、ゼオライト膜に窒素/炭化水素混合ガスを接触させると、窒素が選択的にゼオライト膜を透過する。そして、透過した窒素は、多孔質支持体に設けられる孔を介して、ゼオライト膜付多孔質支持体の外部に排出される。つまり、窒素/炭化水素混合ガス中の窒素は、選択的にゼオライト膜及び多孔質支持体を透過し、窒素/炭化水素混合ガスから分離される。この際、窒素と同伴する炭化水素等はゼオライト膜により阻害され、その炭化水素の膜透過量は極めて少ない。
理想分離係数を(窒素の透過度)/(メタンの透過度)で表した場合、本発明における分離は、分離係数2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上の性能を有するゼオライト膜を用いて行うことができる。
本発明の分離方法では、ゼオライト膜の温度を0℃以上100℃以下に保持することが好ましく、この場合、窒素を高選択的に分離することができる。膜温度は炭化水素が凝縮しない温度以上であることが好ましく、例えば、メタンは−89℃以上、エタンは−89℃以上、プロパンは−42℃以上、ブタンは0℃以上が好ましい。これにより、ゼオライト膜の細孔や多孔質支持体の孔内において、メタン等の炭化水素の凝縮が抑制され、より効率的に分離を行うことができる。膜温度は、200℃以下であることが好ましく、更には100℃以下であることが好ましい。これにより、窒素をより高選択的に透過させることができる。
本発明の分離方法において、ゼオライト膜付多孔質支持体に接触される窒素/炭化水素混合ガスの圧力は特に限定するものではなく、0.10MPa以上が好ましい。これにより窒素の透過流量が多くなり、必要膜面積を小さくすることができる。すなわち必要なゼオライト膜面積を小さくすることができ、経済的に有利である上に装置の簡素化が可能となる。本発明において、0.20MPa以上がさらに好ましい。
本発明の分離方法における窒素透過度は10×10−9mol/m/s/Pa以上が好ましく、更には20×10−9mol/m/s/Pa以上であることが好ましい。これにより、窒素を分離するために必要なゼオライト膜面積を小さくすることができ、経済的に有利である上に装置の簡素化が可能となる。
本発明の分離方法における炭化水素透過度は低いほど良いが、メタン透過度は10×10−9mol/m/s/Pa以下が好ましく、更に好ましくは9×10−9mol/m/s/Pa以下である。これにより、より効率的にメタン等の炭化水素を回収することができる。
窒素/炭化水素混合ガスにおける炭化水素は、少なくともメタンを含むことが好ましい。メタンは天然ガス等の主成分であることから、本発明の分離方法を工業的に実施するのに好適なものとなる。他の炭化水素は特に限定するものではなく、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、ブタジエンからなる群から選ばれる1種が挙げられ、2種以上を含んでいてもよい。また、窒素/炭化水素混合ガスは、前記ガスのほか、二酸化炭素、水、酸素、希ガス等の第三成分を含んでいてもよい。
なお、本発明の分離方法は、ゼオライト膜付多孔質支持体により分離された窒素を回収する工程を含んでいてもよい。窒素の回収方法は、特に限定されるものではないが、通常、ゼオライト膜付多孔質支持体で分離された窒素は、窒素/炭化水素混合ガスを接触した面に対向する面(以下、「対向面」ともいう)から排出される。このため、例えば、対向面に回収装置を配置することにより、ゼオライト膜付多孔質支持体で分離された窒素を回収することができる。
本発明の分離方法を用いることで、メタン等の炭化水素から不純物としての窒素を高選択的に分離することが可能である。
本発明に係る表面処理ゼオライト膜は、系外から大量の熱エネルギーを加えることなく、窒素/炭化水素混合ガスから窒素を高選択的に透過分離することが可能であり、メタン等の炭化水素高純度化において省エネルギー製造プロセスを提供することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(X線回折測定)
一般的なXRD装置(装置名:RINT UltimaIII、理学電機製)を使用し、試料のXRD測定を行った。測定条件は以下のとおりとした。
線源 : CuKα線(λ=1.54Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎分6.5°
発散スリット: 1/3deg
散乱スリット: 1/3deg
受光スリット: 7.0mm、0.15mm
ステップ幅 : 0.01°
測定範囲 : 2θ=5〜40°
(ガス透過度評価)
表面処理シリカライト膜付多孔質支持体について、窒素透過度、及びメタン透過度を評価した。評価手順は次の通りである。表面処理シリカライト膜表面へ窒素またはメタンを供給し、圧力調整弁によりそれぞれ0.2MPaに設定した。膜温度を20℃に保持し、シリカライト膜を透過したガス(つまり、表面処理シリカライト膜付多孔質支持体を通過したガス)を石鹸膜流量計および圧力変化法により流量を評価した。透過度、及び理想分離係数は次式により算出した。なお、透過度は、上述した条件の試験に基づいて得た。窒素透過度は、窒素の温度が20℃における透過度であり、メタン透過度は、メタンの温度が20℃における透過度である。
透過度=(透過流量(mol/s))/(膜面積(m))/(圧力差(Pa))
理想分離係数=(窒素透過度)/(メタン透過度)
実施例1
(MFI型ゼオライト(シリカライト−1)種晶付多孔質支持体の作製)
水酸化ナトリウム(関東化学製特級)1g、蒸留水58.3g、コロイダルシリカ(日産化学製SI−30)16.2g及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製特級)5.5gを室温で1h撹拌混合した後、130℃、20hで水熱合成を実施した。次いで、合成溶液をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃で15h乾燥させ、500℃、15hで焼成した。得られた種晶に対して、XRDによって構成相の同定を行い、当該種晶の結晶相がシリカライト−1であることを確認した。
前記種晶0.4gをエタノール50mlに分散させ、円筒型多孔質支持体(材質:αアルミナ、平均細孔径:0.7μm(表面側:0.15μm)、気孔率:35〜45%、長さ:3cm、外径:1cm、内径:0.7cm)を浸漬し、これを100℃で乾燥させることで支持体外表面に種晶を担持した。
(シリカライト−1膜付多孔質支持体の作製)
水酸化ナトリウム(関東化学製特級)1g、蒸留水655.5g、テトラメトキシシラン(信越化学製)74.6g及びテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)0.66gを室温で1h撹拌混合した後、前記種晶付多孔質支持体を浸漬し、180℃、24hで水熱合成を実施した。次いで、合成溶液から取り出した支持体を蒸留水で洗浄した後、500℃、15hで焼成した。得られた多孔質支持体の膜部分に対して、XRDによって構成相の同定を行い、当該ゼオライト膜部分の結晶相がシリカライト−1であることを確認した。
(3−アミノプロピルトリメトキシシランによる表面処理、及びガス透過度評価)
前記シリカライト−1膜付多孔質支持体に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APrTMOS)による表面処理を次の方法で実施した。APrTMOS(信越化学製)18.8g及びイソプロパノール(和光純薬工業株式会社製)300mlの混合溶液に、シリカライト−1膜付多孔質支持体を浸漬し、75℃、10hで還流後、エタノールで洗浄し、220℃、24hで加熱することによりAPrTMOS処理シリカライト−1膜付多孔質支持体を得た。ガス透過度評価結果を表1に示す。
実施例2
(フェニルトリメトキシシランによる表面処理、及びガス透過度評価)
表面処理の際、フェニルトリメトキシシラン(PhTMOS)(信越化学製)3.4g及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)300mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガス透過度評価を実施した。ガス透過度評価結果を表1に合わせて示す。
実施例3
(n−プロピルトリメトキシシランによる表面処理、及びガス透過度評価)
表面処理の際、n−プロピルトリメトキシシラン(PrTMOS)(信越化学製)2.8g及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)300mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガス透過度評価を実施した。ガス透過度評価結果を表1に合わせて示す。
実施例4
(n−ヘキシルトリメトキシシランによる表面処理、及びガス透過度評価)
表面処理の際、n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMOS)(信越化学製)3.5g及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)300mlを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガス透過度評価を実施した。ガス透過度評価結果を表1に合わせて示す。
比較例1
(シリカライト−1膜付多孔質支持体(表面処理なし)の作製とガス透過度評価)
表面処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてガス透過度評価を実施した。
ガス透過度評価結果を表1に示す。
本発明のゼオライト膜を用いることで窒素含有炭化水素ガスに含まれる窒素を分離することが可能である。

Claims (8)

  1. 多孔質支持体上にMFI型ゼオライトにより構成されるMFI型ゼオライト膜が形成されたゼオライト膜付多孔質支持体であって、
    前記MFI型ゼオライト膜表面が、一般式(1)
    (式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理されていることを特徴とする、ゼオライト膜付多孔質支持体。
  2. 20℃における窒素透過度が20×10−9mol/m/s/Pa以上であることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト膜付多孔質支持体。
  3. 前記多孔質支持体がアルミナにより構成されるアルミナ多孔質支持体であることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライト膜付多孔質支持体。
  4. 前記MFI型ゼオライトがシリカライト−1であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載のゼオライト膜付多孔質支持体。
  5. 前記Si含有化合物が3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1乃至4いずれか一項に記載のゼオライト膜付多孔質支持体。
  6. MFI型ゼオライトにより構成されるMFI型ゼオライト膜であって、多孔質支持体上に形成されるMFI型ゼオライト膜表面を、一般式(1)
    (式中、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アリル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれる1つの置換基、nは0〜8の数字、Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるSi含有化合物で表面処理することを特徴とする、請求項1乃至5いずれか一項に記載のゼオライト膜付多孔質支持体の製造方法。
  7. 請求項1乃至5いずれか一項に記載のゼオライト膜付多孔質支持体に、窒素と炭化水素とを含むガスを接触させることを特徴とする窒素の分離方法。
  8. 前記炭化水素がメタンであることを特徴とする請求項7に記載の窒素の分離方法。
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