JP2012250905A - 電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具 - Google Patents

電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具 Download PDF

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Abstract

【課題】化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる電子機器用カバーガラスの製造方法およびガラス基板保持具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、四角形状のガラス基板100を、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液に浸漬させることにより、ガラス基板を化学強化処理する化学強化工程と、化学強化工程後に、ガラス基板を化学強化処理液から取出した後、ガラス基板の温度を下げる冷却工程と、を含み、冷却工程では、化学強化処理液がガラス基板表面で固化しないように、ガラス基板表面から排出させることを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、携帯電話やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末装置の表示画面の保護に用いられる携帯機器用カバーガラスや、ポインティングデバイス等のセンサ用カバーガラスを含む電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具に関する。
携帯電話やスマートフォン、PDAなどの携帯端末装置では、液晶などの表示装置を保護するために、表示装置の外側に透明な保護板が配置される。保護板としては、アクリルなどの樹脂が多く用いられているが、樹脂の保護板は撓み易いため、板厚を厚くしたり、表示装置との間隙を多く取ったりする必要がある。
そこで、携帯端末装置の表示装置の保護のためには、ガラス素材からなるカバーガラスを用いることが好ましい。ガラスは、硬度が高いために撓みが少なく、薄型化に寄与することができる。但し、ガラスは割れるという特性を有しているため、強度を向上させる必要がある。
特許文献1では、カバーガラスの外形を切り抜いた後に、切り抜いたガラス基板をイオン交換処理により化学強化することが提案されている。特許文献1によれば、化学強化して表面に圧縮応力が作用するイオン交換層を形成することで、破損し難い携帯端末用のカバーガラスを製造できるとしている。また、特許文献1には、化学強化のために、例えば、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどの化学強化処理液を用いて、温度400℃〜550℃で処理を行うことが記載されている。
特開2007−99557号公報
最近になってカバーガラスの薄型化、大面積化が進んでおり、カバーガラスには従来に比べてはるかに厳しい平坦度が求められている。また、薄型化、大面積化に伴って強度向上も求められている。このような中で、強度を向上させるために化学強化したカバーガラスを大量に製造したところ、平坦度のばらつきが大きくなるという問題が発生した。
本発明は、上記の課題に鑑み、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具を提供することを目的としている。
ところで、一般的に化学強化処理は、高温の化学強化処理液にガラス基板を浸漬することによって行われる。そして化学強化が終了すると、化学強化処理液を溜めた化学強化槽からガラス基板が引き上げられる。本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、平坦度が良好なものとそうでないものとの間には、前記ガラス基板が化学強化槽から引き上げられた後、ガラス基板表面に付着している化学強化処理液がガラス基板表面で固化する状態が異なることを見出した。さらに検討した結果、化学強化処理液の固化がガラス基板上に不均一に残留している場合、特に化学強化ラックに搭載したガラス基板表面の下方縁部の表裏面に不均一に残留している場合、ガラス基板の平坦度のばらつきが発生することを見出した。この原因は化学強化処理液がガラス基板の表裏面に不均一に偏って付着した状態でその凝固点を通過すると、ガラス基板の表裏面に不均一に化学強化処理液が固化、残留し実質的な化学強化時間に差異が発生するために、化学強化の度合いがガラス基板の面内でばらつき、その結果、ガラス基板の平坦度がばらつくと推定した。そこで当該化学強化処理液が当該ガラス基板表面で固化しないように、化学強化処理後のガラス基板表面に付着した化学強化処理液を排出(ないし除去)することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法の代表的な構成は、四角形状のガラス基板を、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液に浸漬させることにより、該ガラス基板を化学強化処理する化学強化工程と、前記化学強化工程後に、前記ガラス基板を化学強化処理液から取出した後、当該ガラス基板の温度を下げる冷却工程と、を含む電子機器用カバーガラスの製造方法であって、前記冷却工程では、当該化学強化処理液が当該ガラス基板表面で固化しないように、ガラス基板表面から排出させることを特徴とする。
また本方法は化学強化工程後の冷却工程において、ガラス基板表面に付着した化学強化処理液を、当該化学強化処理液が凝固するまえに、前記ガラス基板から排出する方法であってもよい。このため、ガラス基板上での化学強化処理液の固化(結晶化)が抑制され、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、前記冷却工程では、ガラス基板上に付着した化学強化処理液が、四角形状のガラス基板の1つの角から流れ落ちるようガラス基板を保持する構成としてもよい。上記の構成とすることで、冷却工程において、四角形状のガラス基板に付着した化学強化処理液を、ガラス基板の四角形の角部に集め該角部から流出させるため、ガラス基板に付着した化学強化処理液を素早くガラス基板上から排出することができる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、前記冷却工程では、前記ガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるように該ガラス基板を保持する構成としてもよい。上記の構成とすることで、ガラス基板上に付着していた化学強化処理液が流れ落ち易くなり、ガラス基板上での化学強化処理液の固化(結晶化)が抑制される。よって、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、ガラス基板の板厚が1.3mmより小さい構成の場合により好ましい。冷却工程でガラス基板に化学強化溶液が表裏面で偏って残った場合、化学強化処理液の固化(結晶化)が表裏面で偏って発生するため、板厚が薄いガラス基板の場合、特に板厚が1.3mmより小さいガラス基板の場合には、形状変化(反り)が生じ易くなり平坦度のばらつきが大きくなる。しかし、本発明の構成とすることにより、板厚が1.3mmより小さいガラス基板であっても、反りが生じ難くなり、平坦度のばらつきを抑制できる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、ガラス基板の主表面の面積が、30.5cm2より大きい構成の場合により好ましい。冷却工程でガラス基板に化学強化処理液が偏って残った場合、主表面の面積が大きい場合、特に、主表面の面積が、30.5cm2より大きいガラス基板の場合には、ガラス基板に付着した化学強化液が多量になりガラス基板から流れ落ち難くなり、平坦度のばらつきが大きくなる。しかし、本発明の構成とすることにより、主表面の面積が30.5cm2より大きいガラス基板であっても、反りが生じ難くなり、平坦度のばらつきを抑制できる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、化学強化処理工程後のガラス基板の主表面の圧縮応力値が、400MPa以上である場合により好ましい。
さらに、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、化学強化処理工程後の、四角形状のガラス基板の圧縮応力層の厚さが、ガラス基板の板厚の7%以上20%以下である場合により好ましい。
上記のように、従来と比べて強い圧縮応力値や、深い圧縮応力層を形成した場合であっても、本発明を適用することにより、平坦度のばらつきを抑制することができるので、例えば、ガラス基板を薄板化や大面積化させた場合であっても強度と平坦度の両立を図ることができる。
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法は、四角形状のガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるようにガラス基板を保持する保持部材を有するガラス基板保持具を用いて化学強化処理工程を行った後、ガラス基板保持具に保持された状態で、冷却工程を行う場合がより好ましい。上記の構成とすることで、ガラス基板保持具を用いた化学強化処理工程および冷却工程の実施により、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる。
本発明にかかるガラス基板保持具の代表的な構成は、加熱溶融された化学強化塩からなる化学強化処理液から取出された、四角形状のガラス基板の温度を下げる際に用いられるガラス基板保持具であって、四角形状のガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるようにガラス基板を保持する保持部材を有することを特徴とする。上記の構成とすることで、ガラス基板上に付着していた化学強化処理液が流れ落ち易くなり、ガラス基板上での化学強化処理液の固化(結晶化)が抑制される。よって、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる。
本発明によれば、化学強化後のガラス基板の平坦度のばらつきを抑制できる電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具を提供することができる。
本実施形態における電子機器用カバーガラスに用いられるガラス基板を説明する図である。 図1のガラス基板のA−A断面図である。 図1のガラス基板をラック内に配列した状態を示す図である。 化学強化後にガラス基板を冷却する状態を模式的に示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
本実施形態においては、電子機器用カバーガラスの例として、携帯機器用カバーガラスを例に用いて説明する。なお電子機器用カバーガラスとしては、携帯電話やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末装置の表示画面の保護に用いられる携帯機器用カバーガラスのほか、ポインティングデバイス等のセンサ用カバーガラスを含む。
図1は、本実施形態における携帯機器用カバーガラスに用いられるガラス基板を説明する図である。ガラス基板100は、携帯端末の表示画面を保護するカバーガラスとして用いられる。なお、ガラス基板100は、後述する製造工程を経た後、必要に応じて例えば、印刷等の加飾を施すことでカバーガラスとなる。ガラス基板100は、四角形(矩形)の外形部分102を有する板状であり、基板面内に、上部付近に形成されたスピーカー用孔部104と、下部付近に形成された複数の小径孔部106とを有している。
次に、本実施形態にかかる携帯機器用カバーガラスの製造方法について説明する。ガラス基板100は、板状ガラスの主表面にレジストパターンを形成し、エッチャントでエッチングすることにより所望の形状に切り抜いたものである。エッチングにより外形を形成しているので、端面は鏡面で非常に高い平滑性を有し、機械加工では必ず生じるマイクロクラックが生じないため、携帯端末用カバーガラスに求められる高い強度を得ることができる。また、機械加工では困難な複雑な形状であっても、容易に加工することができる。なお、本発明にかかる携帯機器用カバーガラスの製造方法として、上記したエッチングによって外形加工する以外にも、機械加工によって外形加工を行ってもよく、形状加工については特に限定されるものではない。
板状ガラスは、溶融ガラスから直接シート状に成型したもの、あるいは、ある厚さに成型されたガラス体を所定の厚さに成型し、主表面を研磨して所定の厚さに仕上げたものを使用することができる。特に、溶融ガラスから直接シート状に成型した場合には、板状ガラスの主表面がマイクロクラックのない表面状態を有するため好ましい。溶融ガラスから直接シート状に成型する方法としては、ダウンドロー法、フロート法などが挙げられる。また、上記成型法以外にも、プレス法によって板状ガラスを形成してもよい。
板状ガラスとしては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等が挙げられ、強い圧縮応力を形成できる観点からアルミノシリケートガラスがより好ましい。中でも、SiO2、Al2O3、Li2O及び/又はNa2Oを含有したアルミノシリケートガラスであることが好ましい。Al2O3は、後述する化学強化においてイオン交換性能を向上させるため有用である。Li2Oは、化学強化においてNa+イオンとイオン交換させるための成分である。Na2Oは、化学強化においてK+イオンとイオン交換させるための成分である。ZrO2は、機械的強度を高めるために有用である。なお、Li2O及びNa2Oのうち、Na2Oを含むガラス組成であれば良く、Li2Oを省略可能である。この場合には、後述の化学強化処理液に硝酸カリウムの溶融塩を用いることができる(硝酸ナトリウムを省略可能)。
ここで、レジストパターンを形成する際には、まず、板状ガラスの両主表面上にレジスト材をコーティングする。レジスト材としては、エッチングする際に使用するエッチャントに対して耐性を有する材料であればよい。ガラスは多くの場合、フッ酸を含む水溶液のウェットエッチングや、フッ素系ガスのドライエッチングにより食刻されるので、例えば、フッ酸耐性に優れたレジスト材などを用いることができる。
次に、所望のマスクパターンを有するフォトマスクを板状ガラスの両主表面と平行に配置して、レジスト材の両面から光を照射して露光する。露光後のレジスト材を現像すると、エッチングされる領域以外の領域(残る領域)にレジストパターンが形成される(ネガ型)。
エッチング方法は、湿式エッチング(ウェットエッチング)、乾式エッチング(ドライエッチング)のいずれであってもよい。ウェットエッチングに使用するエッチャントは、板状ガラスを食刻できるものであればよい。例えば、フッ酸を主成分とする酸性溶液や、フッ酸に硫酸、硝酸、塩酸、ケイフッ酸のうち少なくとも一つの酸を含む混酸などを用いることができる。ドライエッチングに使用するエッチャントは、板状ガラスを食刻できるものであればよいが、例えばフッ素系ガスを使用することができる。
板状ガラスをエッチングすると、所望の形状のガラス基板100が切り抜かれる。ウェットエッチングでは、ガラスは等方的にエッチングされる。したがってレジストパターンによってマスクされていない領域は、両面から溝が掘り下げられるように溶解し、やがて板厚のほぼ中央部で溝が連続することによって分離する。
図2は、図1のガラス基板100のA−A断面図である。ここでは、板状ガラスがウェットエッチングにより等方的にエッチングされた場合におけるガラス基板100の端面の断面形状を示している。ガラス基板100の端面は、図2に示すように、中央部が外方に向かって最も突出した境界部102aを有していて、その境界部102aから両方の主表面側に向かって緩やかに湾曲した傾斜面102b、102cが形成される。
なお、傾斜面102b、102cと主表面との境界、および傾斜面102b、102c同士の境界部102aは、半径数十μmの丸みを帯びた形状にすることが好ましい。このような端面形状とすることで、携帯端末装置のフレーム等に当該カバーガラスを装着する際、カジリや欠けが生じることなく容易に装着することができる。
また、エッチング後にレジスト剥離が行われる。レジスト材をガラス基板100から剥離するための剥離液としては、KOHやNaOHなどのアルカリ溶液を用いることが好ましい。なお、レジスト材、エッチャント、剥離液の種類は、被エッチング材料である板状ガラスの材料に応じて適宜選択することができる。
続いて、エッチングによる形状加工工程の後に、板状ガラスから切り抜いたガラス基板100に対して、イオン交換処理による化学強化を行う。化学強化は、ガラスの表層面のイオンをイオン半径の大きな他のイオンと交換することにより、ガラス表面に圧縮応力層を形成し、機械的強度をさらに高める処理である。化学強化は、例えば、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどの溶融塩を用い、温度300℃〜450℃、1時間〜30時間の処理を行うことにより、ガラス中のLi+イオンを溶融塩中のNa+イオンと、ガラス中のNa+イオンを溶融塩中のK+イオンと交換する。化学強化により形成する圧縮応力層は5μm以上あればよい。好ましくは、圧縮応力層の厚みは、35μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上が望ましい。なお、化学強化は、ガラス基板100をエッチングによって切り抜く前、すなわち板状ガラスの状態であっても、エッチングによって切り抜いた後であってもよい。特に、端面部分にも圧縮応力層を形成できる観点では、ガラス基板100を切り抜いた後に行うことが好ましい。これにより、ガラス基板100の端面も化学強化されるため、ガラス基板100を携帯端末装置に装着する際、ガラス基板100の欠けや割れが生じることを防止できる。
以下、図3を参照して、図1に示す板状のガラス基板100を載置して、このガラス基板100を化学強化する工程について説明する。図3は、図1のガラス基板100をラック内に配列した状態を示す図である。
まず、板状のガラス基板100を、化学強化用ラック(以下、ラック)110内に配列する。ラック110は、ガラス基板保持具であり、図3に示すように、2つの側板112、114と、2つの側板112、114の間に配置された支持部材(保持部材)116a、116b、116c、118とを備えている。支持部材116a、116b、116c、118は、長手方向に所定間隔で溝が形成された鋸歯状の部材である。
ガラス基板100の長辺(下辺)108aは、支持部材116a、116b、116cの溝が当接して3点で支持される(実際には2点以上あればよい)。また、ガラス基板100の短辺(側辺)108bは、支持部材118の溝が当接して1点で支持される。このようにして、ガラス基板100は、支持部材116a、116b、116c、118によりラック110内で所定間隔を隔てて確実に支持される。
ラック110に支持されたガラス基板100は、図3に示すように、ガラス基板100の下辺108aが水平方向に対して斜めになるように保持されている。ここで、ガラス基板100の下辺108aが水平方向に対して10〜50度の角度で斜めに保持されることが好ましい。なお、ラック110では、支持部材116a、116b、116c、118が2組配置されているので、ガラス基板100を2列に配列できる。
従って、ラック110は、ガラス基板100の下辺108aが水平方向に対して斜めとなるようにガラス基板100を保持可能となっている。このため、比較的大面積のガラス基板であっても、化学強化処理液中で安定して保持することができ、携帯機器のデザインに対応する多種多様なサイズのガラス基板の化学強化を行うことができる。よって、ガラス基板のサイズ毎にラックを作成する必要がなくなり、ガラス基板の製造効率を向上させることができる。
次いで、図示しないケージにラック110を複数段収容した後に、化学強化用の図示しない槽を用意する。槽は、内部に化学強化用の化学強化処理液が溜められている。また、槽の側面には、化学強化処理液を加熱するヒーターが配置されている。
続いて、このケージをクレーンで吊り上げて、槽内に配置する。ケージを槽内に配置することで、ラック110内に所定間隔を隔てて載置されたガラス基板100が、対流する化学強化処理液に浸漬される。
以下、図4を参照して、化学強化後にガラス基板100を冷却する工程について説明する。図4は、化学強化後にガラス基板100を冷却する状態を模式的に示す図である。化学強化を終了すると、再びケージをクレーンで吊り上げて、化学強化処理塩を溜めた槽からラック110を引き上げる。なお、本発明における冷却工程とは、例えば冷媒等を用いて強制的にガラス基板の温度を下げる構成としてもよいし、自然に放熱することでガラス基板の温度を下げる構成であってもよく、両者を組み合わせてもよい。
引き上げられたラック110内に載置されたガラス基板100は、空中で冷却される。ここで、引き上げ速度は、約10〜100cm/分、空中での保持時間は約1〜100分間である。このとき、ガラス基板100の下辺108aは、上記したようにラック110の支持部材116a、116b、116c、118により水平方向に対して斜めになるように保持されている。このため、ガラス基板100では、図4に示すように、基板上に付着した化学強化処理液が矢印に示すように流れ落ち易く、下辺108aと側辺108bとが交差する角部から化学強化処理液がその凝固点に達するよりも高い温度で、ガラス基板から急速に落下する。このため、化学強化後にガラス基板100を空中で冷却する際に、ガラス基板表面に付着している化学強化処理液が、当該化学強化処理液の凝固点以下になるまでの間に前記ガラス基板表面から排出される。すなわち、化学強化処理液がガラス基板表面で固化しないように、ガラス基板表面から化学強化処理液を排出させることができる。この結果、ガラス基板100上でガラス基板上での化学強化処理液の固化(結晶化)が抑制される。
このように、化学強化工程後に、ガラス基板100を化学強化処理液から取出して冷却する冷却工程では、ガラス基板100の表面に付着した化学強化処理液中の化学強化処理液を固化(結晶化)させることなく、ガラス基板100の温度を低下させている。なお、空冷冷却工程後のガラス基板100の温度は化学強化処理液の凝固点以下である。
その後ラック110は水中に浸漬され、急冷される。
上述した工程により、ガラス基板100を化学強化し、さらに空中と水中で冷却した後、ガラス基板100の付着物を取り除くために、ガラス基板100を洗浄する。洗浄方法としては、水などの洗浄液で洗い流す方法や、洗浄液に浸漬する浸漬法、洗浄液を流しながら回転するロール体をガラス基板100に接触させるスクラブ洗浄法などを利用することができる。浸漬法では、洗浄液に超音波を印加した状態で実施してもよい。その後、ガラス基板100に、必要に応じて加飾を施すことでカバーガラスが製造される。
本発明において使用されるガラス基板のガラス組成については特に限定されるものではないが、携帯機器用カバーガラスとして好適に使用できるように、Li含有量は8%重量以下が好ましく、4%重量以下がより好ましく、2%重量以下がさらに好ましく、2重量%より小さく0%重量が最も好ましい。そして、上記範囲のガラス組成を用いて、本実施の形態に好適な製造方法を適用することにより、携帯機器用カバーガラスとして好適な強度と平坦度を達成できる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。ガラス組成として、64.5重量%のSiO2と、8.0重量%のAl2O3と、0.4重量%のLiO2と、16.0重量%のNa2Oと、1.0重量%のZrO2とを含むガラス材料を使用した。
試験に使用した四角形状のガラス基板は、長辺10.1cm短辺5.0cm主表面の面積約50.5cm2、または長辺6.1cm短辺5.0cm主表面の面積が約30.5cm2、もしくは長辺10.1cm短辺8.0cm主表面の面積約80.8cm2である。またガラス基板の板厚は0.5mmまたは1.3mmである。ガラス基板の長辺が下辺となるように、そして上記下辺が水平方向に対して成す角度を変えてラック110に保持した状態で、化学強化工程および冷却工程を実施した。結果を表1に示す。表1には、ガラス基板に関して、化学強化処理液の固化(結晶化)の有無と平坦度が示されている。
ここで、化学強化処理液の固化(結晶化)の有無については、冷却工程でのガラス基板の下辺の縁部分を目視観察することで確認した。評価基準は、以下の通りである。
○:化学強化処理液の固化無し
×:化学強化処理液の固化有り
また、得られたガラス基板の平坦度を測定した。平坦度は、JIS B0602により規定され、ここでは、Nidek社製フラットネステスター FT−900を用いて測定した。平坦度が悪い場合、反射像の歪みが発生し、カバーガラスを搭載した携帯機器の外観品質が悪化する。特に、タッチパネル方式の携帯機器の場合には、カバーガラスの面積が大きいため、高い平坦度が求められる。従って、タッチパネル方式の携帯機器用カバーガラスを製造する場合には、平坦度のばらつき(標準偏差値)が、6μm以下、より好ましくは4μ以下、さらに好ましくは2μm以下であることがより好ましい。なお、以下の試験における評価数は各30である。平坦度の評価ランクは以下の通りである。
○○○:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、2um以下
○○:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、2umを超え4um以下
○:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、4umを超え6um以下
×:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、6umを超え8um以下
××:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、8umを超え10um以下
×××:平坦度(最大断面高さ)標準偏差値が、10umを超える
Figure 2012250905
表1から分かるように、ガラス基板の下辺を水平方向と角度10deg、30deg、45degの状態で保持した実施例1〜6は、化学強化処理液の固化が無い。一方、下辺を水平の状態で保持した比較例1〜3は化学強化処理液の固化が有った。また、実施例1〜6は比較例1〜3に比べ、ガラス基板の平坦度ばらつきが向上した。
実施例2と比較例1からガラス基板の板厚が0.5mmの場合、また実施例4と比較例2からガラス基板の板厚が1.3mmの場合、何れもガラス基板を傾ける(角度をつける)方が平坦度ばらつきは向上し、本発明の効果があることが分かる。
実施例2と比較例1からガラス基板の主表面の面積が50.5cm2の場合、また実施例5と比較例3からガラス基板の主表面の面積が80cm2の場合、また実施例6と比較例4から主表面の面積が30.5cm2の場合、何れもガラス基板を傾けた(角度をつける)方が平坦度ばらつきは向上し、本発明の効果があることが分かる。
上記の結果からガラス基板の板厚が1.3mmより小さい場合、または主表面の面積が30.5cm2よりも大きい場合には、冷却工程でガラス基板の下辺を水平方向に対して斜めに保持すれば、化学強化処理液が流れ落ち易くなり、表1に示すように化学強化処理液の固化が無くなる。よって、板厚が1.3mmより小さい、または主表面の面積が30.5cm2よりも大きいガラス基板は、冷却工程で斜めに保持することで、反りが生じ難くなり、平坦度のばらつきを抑制できることになる。
上記説明したように、本実施形態では、化学強化後にガラス基板100を冷却する工程において、ガラス基板表面に付着している化学強化処理液を、当該化学強化処理液の凝固点以下になるまでの間に前記ガラス基板表面から排出するので、ガラス基板100上に付着していた化学強化処理液が固化することなく、流れて基板上から落下する。このため、化学強化後にガラス基板100の平坦度のばらつきが発生する事態を回避できる。
実施例および比較例のガラス基板100の圧縮応力値及び圧縮応力層の厚みを計測した。計測は、表面応力計(有限会社折原製作所製、FSM−6300LE)で干渉縞の本数とその間隔を観察し、ガラス基板表面近傍の圧縮応力値と圧縮応力層の厚みを算出した。算出に際し、ガラス基板の屈折率(nd)を屈折率計測計(株式会社島津デバイス製造KPR−200)により計測した値を用いた。なお、ガラス基板の光弾性定数を280[(nm/cm)/MPa]として算出した。
実施例および比較例のガラス基板(測定数各1合計10)の圧縮応力は、平均値605MPaであり、また圧縮応力層の厚みは、平均35μmであった。
さらに化学強化条件を変えて、他の圧縮応力値及び圧縮応力層の厚みを有するガラス基板を作成し、上記と同様の試験を行った。その結果、圧縮応力値は400MPa以上、また、圧縮応力層の厚さは、表面の片側の圧縮応力層の厚さが板厚の7%以上20%以下(主表面の場合は表裏面の合計で、14%以上40%以下)以下の範囲であり、平坦度のばらつきについて実施例と同様な携帯機器用カバーガラスとして良好な結果が得られた。
上記実施形態では、化学強化後の冷却工程において、ガラス基板100の下辺108aが水平方向に対して斜めになるようにガラス基板100を保持した状態で冷却したが、これに限定されない。一例として、ガラス基板100を化学強化処理液から取出す際に、ガラス基板100を揺動させたり、ガラス基板100に対して高温のエアーを吹付けてもよい。このようにしても、化学強化後にガラス基板100上で化学強化処理液が固化(結晶化)することが抑制され、化学強化後のガラス基板100の平坦度のばらつきを抑制できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、携帯電話やスマートフォン、PDAなどの携帯端末装置の表示画面の保護に用いられる電子機器用カバーガラスの製造方法および電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具に利用することができる。
100…ガラス基板、102…外形部分、104…スピーカー用孔部、106…小径孔部、108a…長辺(下辺)、108b…短辺(側辺)、110…ラック、112、114…側板、116a、116b、116c、118…支持部材

Claims (9)

  1. 四角形状のガラス基板を、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液に浸漬させることにより、該ガラス基板を化学強化処理する化学強化工程と、
    前記化学強化工程後に、前記ガラス基板を化学強化処理液から取出した後、当該ガラス基板の温度を下げる冷却工程と、を含む電子機器用カバーガラスの製造方法であって、
    前記冷却工程では、当該化学強化処理液が当該ガラス基板表面で固化しないように、ガラス基板表面から排出させることを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
  2. 前記冷却工程では、ガラス基板上に付着した化学強化処理液が、四角形状のガラス基板の1つの角から流れ落ちるようガラス基板を保持することを特徴とする請求項1記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  3. 前記冷却工程では、前記ガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるように該ガラス基板を保持することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  4. 前記ガラス基板の板厚が1.3mmより小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  5. 前記ガラス基板の主表面の面積が、30.5cm2より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  6. 前記化学強化処理工程後の前記ガラス基板の主表面の圧縮応力値が、400MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  7. 前記化学強化処理工程後の、四角形状の前記ガラス基板の圧縮応力層の厚さが、前記ガラス基板の板厚の7%以上20%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  8. 前記四角形状のガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるように当該ガラス基板を保持する保持部材を有するガラス基板保持具を用いて化学強化処理工程を行った後、当該ガラス基板保持具に保持された状態で、前記冷却工程を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
  9. 加熱溶融された化学強化塩からなる化学強化処理液から取出された、四角形状のガラス基板の温度を下げる際に用いられる電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具であって、
    前記四角形状のガラス基板の下辺が水平方向に対して斜めになるように当該ガラス基板を保持する保持部材を有することを特徴とする電子機器用カバーガラスのガラス基板保持具。
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