JP2013241291A - 電子機器用カバーガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】化学強化後のガラス基板の寸法精度を向上できる電子機器用カバーガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法の代表的な構成は、ガラス素板110を機械加工により加工する形状加工工程と、機械加工による被加工領域をエッチングするエッチング工程と、化学強化工程と、を含み、化学強化工程での化学強化条件と、その化学強化条件で化学強化を行った場合におけるガラス基板100の寸法の伸びとの対応関係を予め把握しておき、形状加工工程及びエッチング工程においては、化学強化工程での化学強化条件に基づいて、対応関係を参照して、化学強化工程後のガラス基板の寸法が電子機器用カバーガラスに求められる寸法になるべく、ガラス基板の加工量を決定することを特徴とする。
【選択図】図7
【解決手段】本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法の代表的な構成は、ガラス素板110を機械加工により加工する形状加工工程と、機械加工による被加工領域をエッチングするエッチング工程と、化学強化工程と、を含み、化学強化工程での化学強化条件と、その化学強化条件で化学強化を行った場合におけるガラス基板100の寸法の伸びとの対応関係を予め把握しておき、形状加工工程及びエッチング工程においては、化学強化工程での化学強化条件に基づいて、対応関係を参照して、化学強化工程後のガラス基板の寸法が電子機器用カバーガラスに求められる寸法になるべく、ガラス基板の加工量を決定することを特徴とする。
【選択図】図7
Description
本発明は、携帯機器(携帯型電子機器)の表示画面のカバー部材として用いられる携帯機器用カバーガラスと、例えばポインティングデバイス等のタッチセンサのカバー部材として用いられるタッチセンサ用カバーガラスとを含む電子機器用カバーガラスの製造方法に関する。
スマートフォンを含む携帯電話や、タブレット端末やスレートPC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯機器では、液晶などの表示装置を保護するために、表示装置の外側にカバーガラスが配置される。また、ノートパソコン用のポインティングデバイスであるタッチセンサ(トラックパッド)等にも、センサ基板やタッチパネル用の透明電極(ITO:Indium-tin-oxide)を保護するためにカバーガラスが配置される。
一般に、カバーガラスは、大きい一枚板のガラス素板から任意の形状のガラス基板を抜き出し、この抜き出されたガラス基板を加工することにより製造される。ガラス素板からガラス基板を抜き出す方法としては、機械的加工手段により加工する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
ガラスは割れや欠けを生じやすいという特性を有しているため、強度を向上させる必要がある。特に携帯機器やタッチセンサのカバーガラスは使用者が触って使用することが前提となっているため、衝撃や摺動に耐える強度が必要とされる。これに対して、特許文献2では、カバーガラスの外形を抜き出した後に、抜き出されたガラス基板をイオン交換処理により化学強化することが提案されている。特許文献2によれば、化学強化して表面に圧縮応力が作用するイオン交換層を形成することで、撓みを抑え、また破損し難い携帯端末用のカバーガラスを製造できるとしている。また、特許文献2には、化学強化のために、例えば、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどの化学強化処理液を用い、温度400〜550(℃)で処理を行うことが記載されている。
近年、携帯機器の需要増加に伴い、電子機器用のカバーガラスの需要も急増している。このような背景の下、電子機器用カバーガラスには、例えば携帯機器の表示画面を保護するために強度を高めるだけでなく、より高い寸法精度も求められている。
しかしながら、上記のように化学強化によって強度の向上を図ると、製造された電子機器用カバーガラスは、製品として要求される寸法精度を満たさない場合があるという問題が発生した。これは、化学強化によって寸法に伸びが発生するところ、この伸び量のコントロールが難しいという事情があるためである。化学強化は、生産効率の問題から大きな処理槽で数百枚に及ぶ多量のガラス基板を一度に処理することから、寸法に狂いが生じると大量の不良品を生成することになるため、生産効率上深刻な問題となる。
本発明は、上記の課題に鑑み、化学強化後のガラス基板の寸法精度を向上できる電子機器用カバーガラスの製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法の代表的な構成は、ガラス素板を、機械加工により電子機器用カバーガラスの形状のガラス基板に加工する形状加工工程と、形状加工工程の後に行われ、機械加工による被加工領域をエッチングするエッチング工程と、ガラス基板を化学強化処理液に接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンよりも大きなイオン半径である化学強化処理液中のイオンとイオン交換することによりガラス基板を化学強化する化学強化工程と、を含み、化学強化工程での化学強化条件と、その化学強化条件で化学強化を行った場合におけるガラス基板の寸法の伸びとの対応関係を予め把握しておき、形状加工工程及びエッチング工程においては、化学強化工程での化学強化条件に基づいて、対応関係を参照して、化学強化工程後のガラス基板の寸法が電子機器用カバーガラスに求められる寸法になるべく、ガラス基板の加工量を決定することを特徴とする。
上記構成によれば、化学強化による伸び量に応じて形状加工工程及びエッチング工程におけるガラス基板の加工量を決定することから、化学強化後のガラス基板の寸法精度を向上させることができる。
エッチング工程においては、機械加工によるダメージ層を除去する加工量が設定され、形状加工工程においては、対応関係を参照して決定された加工量に、エッチング工程での加工量を考慮して得られる値を該形状加工工程の加工量として決定することが好ましい。
上記構成によれば、エッチング工程においてダメージ層を除去するための加工量を確保することができ、機械加工によるガラス基板の強度低下を抑えて、ガラス基板の強度を向上させることができる。
エッチング工程は、複数枚のガラス基板が積層された状態で行われることが好ましい。
上記構成によれば、時間のかかる工程であるエッチング工程において同時に処理できる枚数を増やすことができるため、生産効率を向上させることができる。
エッチング工程の前に行われ、ガラス基板にガラス基板の厚さ方向に貫通する開口を形成する開口形成工程をさらに含み、エッチング工程においては、開口の内壁面をエッチング液によりエッチングすることが好ましい。
これにより、スピーカーやボタン用の開口においても強度の低下を抑えると共に、寸法精度を向上させることができる。
ガラス基板は、Li2Oを含有するアルミノシリケートガラスであり、化学強化条件とは、化学強化処理液中に含まれるLi+イオンの濃度であることが好ましい。
ガラス基板から化学強化処理液へと移動するLi+イオンの濃度は、その化学強化処理液がそれまで処理したガラス基板の量(枚数)に応じたものになる。すなわちLi+イオンの濃度が大きいほど多くのガラス基板を処理してきたことになり、ガラス基板の伸び量は小さくなる対応関係を持つ。そこで、Li+イオンの濃度と伸び量の対応関係を把握しておくことにより、ガラス基板の加工量を適切に決定することができる。
ガラス基板は、Li2O及びNa2Oの少なくともいずれか一方を含有するアルミノシリケートガラスであり、化学強化条件とは、化学強化処理液中に含まれるK+イオンの濃度であることが好ましい。
化学強化条件には温度や処理時間も含まれるが、中でも化学強化処理液中のイオン濃度が支配的である。したがってイオン濃度と伸び量の間で対応関係(相関)を得ることができる。そしてガラス基板がアルミノシリケートガラスである場合には、化学強化処理液からガラス基板へと移動するK+イオンの濃度と伸び量との対応関係を把握しておくことにより、ガラス基板の加工量を適切に決定することができる。
本発明によれば、化学強化後のガラス基板の寸法精度を向上できる電子機器用カバーガラスの製造方法を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。かかる実施の形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は電子機器用カバーガラスを説明する図であって、図1(a)は外観斜視図、図1(b)はガラス基板の端部のA−A断面図である。本発明にかかる製造方法によって製造される電子機器用カバーガラスは、スマートフォンを含む携帯電話や、タブレット端末やスレートPC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯機器、もしくはノートパソコン用のポインティングデバイス等のタッチセンサのカバーガラスとして利用可能である。ガラス基板100は、本実施形態では、携帯電話(携帯機器)用のカバーガラスを図示して説明する。
図1(a)に示すように、ガラス基板100の外周部102はおおむね矩形状である。また、ガラス基板100には、例えばスピーカーやボタン、マイク用の開口104が設けられている。ガラス基板1の板厚は特に限定されないが、カバーガラスを利用する各種機器の重量増大の抑制や、機器の薄型化の観点から、通常は、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましい。なお、板厚の下限値は、ガラス基板の機械的強度を確保する観点から、0.1mm以上とすることが好ましい。ガラス基板1の外形形状は、組み込み対象となる携帯機器に応じて適宜設定されうる。
図1(b)に示すように、本実施形態のガラス基板100は、一対の主表面100aと、一対の主表面100aに対して直交する方向に沿って配置された端面100bと、主表面100aと端面100bとの間に配置された一対の介在面(面取り面、チャンファー面)100cとを有する。介在面100cは、カバーガラスの製造工程上、あるいはカバーガラスの携帯機器への組付け時において、クラックが生じることによる強度低下を回避するために設けられている。介在面100cと同様に、ガラス基板100には、開口104の内壁面104bと一対の主表面100aとの間にも一対の介在面104cが形成されている。
ガラス基板100は、後述するように大判のガラス素板110(図5(a)参照)から切り出される。ガラス素板110は、溶融ガラスから直接シート状に成型したもの、あるいは、ある厚さに成型されたガラス体を所定の厚さに成型し、主表面を研磨して所定の厚さに仕上げたものを使用することができる。特に、ガラス素板110として溶融ガラスから直接シート状に成型したものを用いる場合には、ガラス素板110の主表面がマイクロクラックのない表面状態を有するため好ましい。溶融ガラスから直接シート状に成型する方法としては、ダウンドロー法、フロート法などが挙げられる。
ガラス素板110は、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、透明な結晶化ガラスなどで構成されていることが好ましい。中でも、SiO2、Al2O3、Li2O及び/又はNa2Oを含有したアルミノシリケートガラスであることが好ましい。Li2Oは、化学強化においてNa+イオンとLi+イオンを交換させるための成分である。Na2Oは、化学強化においてK+イオンとNa+イオンを交換させるための成分である。ZrO2は、機械的強度を高めるために有用である。ただしアルミノシリケートガラス以外の素材であっても、化学強化可能な材料であればよい(Li2O及びNa2Oの少なくともいずれか一方を含有していればよい)。
図2は電子機器用カバーガラス(ガラス基板100)の製造方法を実施する製造システムの機能ブロック図である。製造システム120は、機械加工装置122と、エッチング装置124、剥離装置126、化学強化処理槽128、検査装置130を備えている。また製造システム120はさらに、化学強化処理槽128から化学強化条件を取得する条件測定装置132と、化学強化条件と寸法の伸び量の対応関係を格納したテーブル134を記憶する記憶部136、機械加工装置122における加工量を決定する加工量決定装置138を備えている。図2および図3において実線はガラス素板またはガラス基板の流れを示し、破線はデータまたは処理の流れを示す。
製造を開始する前の事前準備として、化学強化工程での化学強化条件と、その化学強化条件で化学強化を行った場合におけるガラス基板の寸法の伸び量との対応関係を予め把握しておく。化学強化においてはガラス基板のLi+イオンまたはNa+イオンを、化学強化処理液のNa+イオンまたはK+イオンによって置換する。このため、化学強化処理が進むほどガラス基板表層のイオンが交換された範囲(化学強化層)が膨張し、寸法が増大する。そこで、化学強化条件と伸び量との対応関係を把握しておくことにより、化学強化条件から伸び量を推定することが可能となる。
図3は対応関係を把握するための構成を説明する図である。図3(a)に示す製造システムでは、図2に示した構成と比べて、さらに化学強化処理槽128の前段に配置された検査装置140と、対応関係把握装置142を示している。
対応関係把握装置142は、化学強化処理槽128の前後の検査装置140、検査装置130からそれぞれガラス基板の寸法を取得することにより、化学強化処理による寸法の伸び量を取得する。ここでいう伸び量とは、ガラス基板100の長さまたは幅方向の変化量を用いる方が、厚み方向の寸法よりも好ましい。
そして対応関係把握装置142は、ガラス素板110がアルミノシリケートガラスである場合には、条件測定装置132により、化学強化処理液に含まれるLi+イオンの濃度を取得する。Li+イオンはガラス基板から化学強化処理液へと移動するため、Li+イオンの濃度はその化学強化処理液がそれまで処理したガラス基板の量(枚数)に応じたものになる。すなわちLi+イオンの濃度は化学強化処理液の疲労の程度を示し、濃度が高いほどガラス基板の伸び量は小さくなる対応関係を持つ。そこで、Li+イオンの濃度と伸び量の対応関係を予め把握しておくことにより、Li+イオンの濃度から伸び量を推定することが可能となる。
図3(b)に示す表1は、Li+イオンの濃度と基板寸法の伸び量の対応関係を格納したテーブル134の内容の例である。このガラス基板が製品として要求される目標寸法は長辺100(mm)、短辺50(mm)であり、本例では短辺寸法を測定した。測定は(株)ニコン製のCNC画像測定システム「NEXIV」を使用した。
例1〜例3は、化学強化工程を化学強化処理液のLi濃度を、0(ppm)、900(ppm)、1800(ppm)の条件で実施した。化学強化処理液は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩、温度360(℃)、浸漬時間は3時間である。Li濃度はイオンクロマトクラフィー(Dionex製 ICS−2000)により測定した。使用した交換カラムはCS−12A、また溶離液はメタンスルホン酸である。化学強化の前後において、ガラス基板寸法を測定した。表1中の基板寸法変動比は、化学強化によるガラス基板の寸法変化量を表すための比である。また、基板寸法変動比は、化学強化後基板寸法/化学強化前基板寸法である。
そして表1を参照すれば、例1から例3に向かってLi+イオンの濃度が高くなるほどに、基板寸法変動比が小さくなっていることがわかる。したがって、Li+イオンの濃度と基板寸法変動比との間に、明らかな対応関係(相関関係)をみることができる。
またLi+イオンの濃度に代えて、K+イオンの濃度を同様に用いることができる。K+イオンは化学強化処理液からガラス基板へと移動するため、K+イオンの濃度は化学強化処理液の処理能力を示すと考えることができる。そこで、K+イオンの濃度と伸び量との対応関係を予め把握しておくことにより、K+イオンの濃度から伸び量を推定することが可能となる。
図4は電子機器用カバーガラスの製造方法を説明するフローチャート、図5は積層工程から形状加工工程まで説明する図、図6はエッチングを説明する図、図7はガラス基板の寸法の関係を説明する図である。以下、図4のフローチャートに沿って、図2および図5から図7を参照しながら、電子機器用カバーガラスの製造方法について説明する。
ガラス素板積層工程(ステップ200)は、例えばダウンドロー法やフロート法により作製された所定のサイズの大判のガラス素板110を、接着性材料112を介在させながら積層することによってガラス素板の積層体114を作製する工程である。図5(a)はガラス素板の積層体114を示す図である。ガラス素板110の積層枚数は例えば10〜100枚程度である。
ガラス素板110の間に介在させる接着性材料112は、所定の接着強度があり、また後で剥離又は分解させることができる材料であることが好ましい。また、接着性材料112としては、例えば紫外線硬化樹脂、ワックス、光硬化樹脂、可視光線硬化樹脂等を使用することができる。ワックスは、所定の温度で軟化して液状になり常温で固形状となるので、接着・分離作業が容易である。
切断工程(ステップ202)、開口形成工程(ステップ210)、形状加工工程(ステップ212)は、機械加工装置122によって行う。
切断工程(ステップ202)においては、図5(b)に示すように、ガラス素板の積層体114を円板カッター150(ダイヤモンドディスク)によって縦横に分割(切断)して、小片のガラス基板100の積層体を作製する。この小片のガラス基板100の大きさは、最終的に得られるカバーガラスよりも少し大きい程度である。切断工程によって得られた小片のガラス基板の積層体108の斜視図を図5(c)に示す。図5(c)に示すように、ガラス基板の積層体108は、接着性材料112とガラス基板100が交互に積層された構造となっている。切断工程後の積層体108の側面では、接着性材料112とガラス基板100の端面が同一平面をなしている。
次に開口104の形成および外形の加工を行うが、ここで、本発明の特徴的な構成として、開口形成工程(ステップ210)および形状加工工程(ステップ212)における加工量の決定を行う。
条件検出工程(ステップ204)においては、条件測定装置132を用いて化学強化条件の検出を行う。検出する化学強化条件は、予め把握した対応関係に応じたものである。例えばテーブル134にLi+イオンと伸び量との対応関係が格納されている場合には、化学強化条件としてLi+イオンの濃度を検出する。同様に、テーブル134にK+イオンと伸び量との対応関係が格納されている場合には、化学強化条件としてK+イオンの濃度を検出する。
対応関係取得工程(ステップ206)においては、加工量決定装置138が条件測定装置132から化学強化条件を取得して、記憶部136のテーブル134に格納された対応関係を参照し、その化学強化条件に基づいてこれに対応する伸び量を取得する。
そして加工量決定工程(ステップ208)において加工量決定装置138は、化学強化工程後のガラス基板の寸法が電子機器用カバーガラスに求められる寸法になるべく、ガラス基板の加工量を決定する。決定した加工量は、機械加工装置122へと送られる。加工量の決定の方法については図7を用いて後述する。
開口形成工程(ステップ210)においては、、ガラス基板の積層体108に対して、ガラス基板の厚さ方向に貫通する開口104を機械加工により形成する。開口104は、設計上の形状に沿って、加工量決定工程で決定された加工量に基づいて(設計上の形状からオフセットさせて)形成する。なお、カバーガラスに開口が設けられていなければ開口形成工程は不要である。開口形成工程では、例えば図5(d)に示すように、ドリル152等を用いて所望の形状の開口をNC加工により形成する。
形状加工工程(ステップ212)においては、ガラス基板の積層体108の外形を、カバーガラスの外形形状(設計上の形状)に沿って、加工量決定工程で決定された加工量に基づいて(設計上の形状からオフセットさせて)、機械加工を行う。形状加工工程では、例えば図5(d)に示すように、グラインダ154等を用いてガラス基板の積層体108の外縁を研削して、所望の外形形状にする。形状加工後のガラス基板100の端面は、接着性材料112とガラス基板100の端面が同一平面をなしていて、比較的粗い表面性状の機械加工面となっている。
エッチング工程(ステップ214)は、積層体108を構成する各々のガラス基板100の端部に対し、加工量決定工程で決定された加工量に基づいてエッチング装置124によってエッチングを施す。積層体に対してエッチングを行うことにより、時間のかかる工程であるエッチング工程において同時に処理できる枚数を増やすことができるため、生産効率を向上させることができる。エッチング液としては、少なくともフッ化水素酸を含むものであれば特に限定されないが、必要に応じて、硫酸あるいは塩酸等、酸解離定数がフッ化水素酸よりも大きい酸を添加剤として加えてもよい。例示的なエッチング液は、液総量1kgあたり、10molのフッ化水素酸と、添加剤として1.0molの硫酸とを含む。
図6(a)はエッチング前のガラス基板の端部の断面図である。エッチング前は、積層体108を構成する接着性材料112とガラス基板100の端面は、前工程である形状加工工程における機械加工(研削)によって同一面となっている。エッチング工程では、積層体108を構成する各々のガラス基板100の端面106aをエッチングすることにより、ダメージ層の除去と介在面100cの形成とを同時に行う。ダメージ層とは、図6(a)にクロスハッチにて示すように、研削加工によって端面106aに形成されたクラック106bが存在する層(深さ方向の領域)、もしくは存在すると考えられる層である。
図6(b)はエッチング後のガラス基板の端部の断面図である。図6(b)に示すように、エッチングが進行すると、積層体108を構成する各ガラス基板100の端面106aは、接着性材料112の端面よりも例えば20〜200μm程度内側まで溶解・除去されて、ガラス基板100に端面100bが形成される。これにより端面100bの外観の仕上がりが良好になると共に、前工程で生じうる微少なクラック106bを含むダメージ層を除去することができる。
さらに、接着性材料112とガラス基板100の界面にエッチング液が浸透することで、介在面100cが形成される。このとき、実質的に等方性エッチングがなされるため、介在面100cは丸みを帯びた形状となる。また開口104内においても同様にエッチングが行われて、内壁面104bおよび介在面104cが形成される。これにより、物理的なダメージによるガラス基板の角部分の応力集中を回避でき、強度の向上を図ることができる。また、開口104においても寸法精度を向上させることができる。
剥離工程(ステップ216)は、剥離装置126によってガラス基板の積層体108を1枚ずつ剥離し、個々のガラス基板100を分離する工程である。剥離工程における剥離方法は接着性材料の特性に依存するが、例えば、紫外線硬化樹脂からなる接着性材料の中には、温水(摂氏80〜90度)の環境下で剥離又は分解するタイプの接着性材料が存在する。そのような場合には、積層体108を温水を含む容器内に浸漬させることで、積層体108を1枚ごとのガラス基板に分離することができる。
化学強化工程(ステップ218)では、複数枚のガラス基板を、カセット(ホルダー)に装填し、化学強化処理槽128内の化学強化処理液にカセットを浸漬させる。これにより、ガラス基板に含まれる1種以上のアルカリ金属を、溶融塩のアルカリ金属との間でイオン交換処理を行い、ガラス基板の表層部分に圧縮応力層を形成する。
ガラス素板110の組成を上記のようなアルミノシリケートガラスとした場合には、化学強化処理液は、硝酸カリウム、または、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混塩とする。そして所定の温度(例えば320℃〜470℃)で所定の時間(例えば3分〜600分)浸漬することにより、Li+イオンがNa+イオンで置換され、Na+イオンがK+イオンで置換されて、化学強化が施される。
最終洗浄工程(ステップ220)は、例えば、化学強化後のガラス基板100をパレットに載せた状態で行われる酸洗浄、アルカリ洗浄、純水によるリンス洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)による洗浄の少なくともいずれかを含む。検査工程(ステップ222)では、検査装置130によって洗浄工程後のガラス基板100について寸法を測定し、検品を行う。
図7は各工程の段階における寸法の関係について説明する図である。図7において、最終的な電子機器用カバーガラスに求められる寸法を設計寸法Sとする。切断工程においては、ガラス基板100は設計寸法Sよりも少し大きい程度に切断されるが、このときの工作精度はさほど高いものではないため、切断工程後の寸法を基準に形状加工工程を行うわけではない。
加工量決定装置138は、以下のようにして形状加工工程およびエッチング工程における加工量を決定する。最終的な設計寸法をSとする。形状加工工程における加工量(設計寸法からのオフセット量)をα、エッチング工程における加工量(取り代)をβ、化学強化工程における伸び量をγとすると、S+α−β+γ=Sであるから、α−β+γ=0が成り立つ。そして加工量決定装置138はテーブル134から、化学強化条件に基づいて対応関係を参照し、伸び量γを取得することができる。そこで、α−β+γ=0を満たすように加工量α、βを決定することができる。
なおエッチング工程における加工量βは、少なくとも機械加工によるダメージ層を除去する加工量を設定することが好ましく、ある程度の加工量を確保する必要がある。このことから加工量βを決定することができるため、対応関係を参照して決定された伸び量γに、エッチング工程での加工量βを考慮して得られる値を、形状加工工程の加工量αとして決定することができる。上記の式を変形させると、α=−γ+βとして加工量αを決定することができる。これにより、エッチング工程においてダメージ層を除去するための加工量を確保することができ、機械加工によるガラス基板の強度低下を抑えて、ガラス基板の強度を向上させることができる。
このように、化学強化条件と伸び量との対応関係を予め把握しておき、化学強化条件に基づいて取得した伸び量に応じて形状加工工程及びエッチング工程におけるガラス基板の加工量を決定することから、化学強化後のガラス基板の寸法精度を向上させることができる。
本発明において特に重要なことは、実際に製作してみてから寸法の狂いをフィードバックするのではなく、製作前に加工量を修正できる点である。生産効率上の観点から、上記したように複数枚のガラス素板110を積層し、1枚のガラス素板から多数枚のガラス基板100を切り出している。そして化学強化工程ではさらに多く、数百枚のガラス基板を同時に化学強化処理する。したがって製作後の検査段階において寸法が狂っていることを発見したとしても、大量の不良品を生じてしまう。しかしながら本発明によれば、不良品を生じることなく加工量を修正することが可能となり、生産効率を著しく向上させることが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態では、ガラス基板の積層体108を対象として、開口形成工程、形状加工工程、及びエッチング工程を行う例について説明した。しかしながら、本発明の加工方式は、このような積層方式に限るものではなく、1枚のガラス基板単位で各工程を行う方式(枚葉方式)でもよい。また、開口形成工程及び形状加工工程の少なくとも一方を枚葉方式で行った後、ガラス基板を積層して、積層体をエッチングしてもよい。
本発明は、携帯機器(携帯型電子機器)の表示画面のカバー部材として用いられる携帯機器用カバーガラスと、タッチセンサのカバー部材として用いられるタッチセンサ用カバーガラスとを含む電子機器用カバーガラスの製造方法として利用することができる。
100…ガラス基板、100a…主表面、100b…端面、100c…介在面、102…外周部、104…開口、104b…内壁面、104c…介在面、106a…端面、106b…クラック、108…ガラス基板の積層体、110…ガラス素板、110a…ガラス素板の積層体、112…接着性材料、120…製造システム、122…機械加工装置、124…エッチング装置、126…剥離装置、128…化学強化処理槽、130…検査装置、132…条件測定装置、134…テーブル、136…記憶部、138…加工量決定装置、140…検査装置、142…対応関係把握装置、150…円板カッター、152…ドリル、154…グラインダ
Claims (6)
- ガラス素板を、機械加工により電子機器用カバーガラスの形状のガラス基板に加工する形状加工工程と、
前記形状加工工程の後に行われ、前記機械加工による被加工領域をエッチングするエッチング工程と、
前記ガラス基板を化学強化処理液に接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンよりも大きなイオン半径である前記化学強化処理液中のイオンとイオン交換することによりガラス基板を化学強化する化学強化工程と、
を含み、
前記化学強化工程での化学強化条件と、その化学強化条件で化学強化を行った場合における前記ガラス基板の寸法の伸び量との対応関係を予め把握しておき、
前記形状加工工程及び前記エッチング工程においては、前記化学強化工程での化学強化条件に基づいて、前記対応関係を参照して前記化学強化工程における伸び量を取得し、前記化学強化工程後のガラス基板の寸法が電子機器用カバーガラスに求められる寸法になるべく、前記ガラス基板の加工量を決定することを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。 - 前記エッチング工程においては、前記機械加工によるダメージ層を除去する加工量が設定され、
前記形状加工工程においては、前記対応関係を参照して取得した伸び量に、前記エッチング工程での加工量を考慮して得られる値を該形状加工工程の加工量として決定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。 - 前記エッチング工程は、複数枚の前記ガラス基板が積層された状態で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
- 前記エッチング工程の前に行われ、前記ガラス基板に前記ガラス基板の厚さ方向に貫通する開口を形成する開口形成工程をさらに含み、
前記エッチング工程においては、前記開口の内壁面をエッチング液によりエッチングすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。 - 前記ガラス基板は、Li2Oを含有するアルミノシリケートガラスであり、
前記化学強化条件とは、化学強化処理液中に含まれるLi+イオンの濃度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。 - 前記ガラス基板は、Li2O及びNa2Oの少なくともいずれか一方を含有するアルミノシリケートガラスであり、
前記化学強化条件とは、化学強化処理液中に含まれるK+イオンの濃度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
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2012
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