JP2012184535A - 炭素繊維基材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、基材の内外部において表面処理による酸化状態のムラが少ない炭素繊維基材および、炭素繊維基材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
湾曲した炭素繊維からなり、炭素繊維が平面方向および厚み方向に配向した、厚さが2.00mm〜25.00mmの炭素繊維基材であり、ESCAで測定した該基材表面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(A)および、ESCAで測定した該基材内部のいずれの面におけるC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(B)において、以下の式により求められる基材内外面の均一度が0.80〜1.00の範囲にあることを特徴とする炭素繊維基材。
基材内外面の均一度=(B)/(A)
【選択図】なし

Description

本発明は、構造体の内部と外部の炭素繊維が均一に表面処理された炭素繊維基材およびその製造方法に関する。
近年、炭素繊維基材と各種マトリックス樹脂とからなる炭素繊維複合材料は、その優れた力学特性から航空宇宙用途、スポーツ用途、産業用途などの幅広い分野で活用されている。しかしながら、炭素繊維複合材料は生産性が低く、価格も高いことから、今後、さらに用途を広げるためには生産性向上による低コスト化が必要である。
炭素繊維複合材料の低コスト化方法として、炭素繊維を高目付化の織編物や不織布などのシート状の構造体にすることで炭素繊維基材の積層枚数を減らし、マトリックス樹脂との複合工程を簡略化することで生産性の向上が可能であるが、この場合、工程通過性の観点から炭素繊維をシート状の構造体とした後に電解処理することが必要となる。
そこで炭素繊維構造体の表面処理手段として、例えば、炭素繊維の不織布を電解液で湿潤させ、半乾燥状態で電極ローラーの間を通す方法(特許文献1)が提案されている。また、炭素繊維束の表面処理ではあるが、電解浴中の電解液を炭素繊維の走行方向に対して向流となるように流動させる方法(特許文献2)が知られている。
特開平6−166953号公報 特開昭58−132126号公報
ところが特許文献1の方法や特許文献2の表面処理方法では、厚みのある構造体に関しては、処理ムラの問題があることを、本発明者らは見出した。そして特許文献2の方法では、処理の効率化がよくないだけでなく、等方性を得るために炭素繊維に湾曲を与えようとした時、炭素繊維は曲げ方向の力に対し弱いため、炭素繊維化後に捲縮構造を付与することが困難であることを見出した。
本発明の目的は、炭素繊維基材の内外部において表面処理による酸化状態のムラが少ない炭素繊維基材および、炭素繊維基材の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、湾曲した炭素繊維からなり、炭素繊維が平面方向および厚み方向に配向した、目付が200〜1000g/mの炭素繊維基材であり、ESCAで測定した該基材表面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(A)および、ESCAで測定した該基材内部のいずれの面におけるC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(B)において、以下の式により求められる基材内外面の均一度が0.80〜1.00の範囲にあることを特徴とする炭素繊維基材である。
基材内外面の均一度=(B)/(A)
さらに本発明は、耐炎化繊維を構造体化し耐炎化繊維構造体にする工程、耐炎化繊維構造体を焼成し炭素繊維構造体にする工程、炭素繊維構造体を表面処理し炭素繊維基材にする工程を有する炭素繊維基材の製造方法であって、炭素繊維構造体の表面処理時に超音波処理を行うことを特徴とする炭素繊維基材の製造方法であり、
耐炎化繊維を構造体化し耐炎化繊維構造体にする工程、耐炎化繊維構造体を焼成し炭素繊維構造体にする工程、炭素繊維構造体を表面処理し炭素繊維基材にする工程を有する炭素繊維基材の製造方法であって、炭素繊維構造体の表面処理時にサクションによる吸引を行うことを特徴とする炭素繊維基材の製造方法である。
本発明によれば、炭素繊維基材の内外部において表面処理による酸化状態のムラが少ない炭素繊維基材を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系、フェノール樹脂系などの炭素繊維を挙げることができる。炭素繊維の繊維長は特に制限されず、長繊維と短繊維のいずれの形状でもよいが、短繊維とする場合は、15mm〜100mmであることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、80mm以下であることがより好ましい。短繊維とする場合は繊維長をこの範囲とすることで、乾式法により不織布状の炭素繊維構造体を製造する際の工程通過性が良好なものとなる。炭素繊維の繊維径は、特に制限されるものではないが、例えば直径で2〜15μmである。
本発明において、炭素繊維基材が湾曲した炭素繊維から形成されていることが必要である。湾曲した炭素繊維とは、炭素繊維基材の表面および厚さ方向に対して水平にスライスした任意の面をマイクロスコープで観察した際、炭素繊維の単糸が湾曲して多方向を向き、同一角度で連続した直線部分が5mm以下であることを意味する。繊維が多方向を向くことで繊維の重なりが増えるため、同一方向に繊維が配向している場合に比べて基材内部の空隙が増え、低密度となる。そのため、表面処理時の溶液の浸透性が良く、基材の内部と外部の酸化状態を均一にすることができる。
また、湾曲した炭素繊維が基材を構成することにより、繊維が多方向に向くために等方性の複合材料が得られる。そのため、従来のように繊維の配向方向を変えるために基材を複数枚積層する必要がなくなるため、生産性を向上させることができる。なお、発明の効果を損なわない範囲であれば、直線部分が5mm以上の炭素繊維を含んでもよいが、湾曲繊維の比率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
本発明における、炭素繊維が平面方向および厚み方向に配向した炭素繊維基材とは、炭素繊維がプリプレグのように平面方向のみに並んでいるものではなく、中央部で切断する前のベルベットや別珍などのパイル組織織物、表裏生地を中糸で連結させたダンボールニットなどの編物、ニードルパンチ不織布など、繊維が平面方向と厚さ方向に並んだ三次元構造体であることを意味する。このような構造にすることで、低密度化することができ、炭素繊維構造体を表面処理する際に内外部の処理ムラを低減することができる。
なお、本発明においては、炭素繊維の表面処理が未処理の構造体のことを炭素繊維構造体、表面処理後の炭素繊維構造体のことを炭素繊維基材と呼ぶ。
本発明における炭素繊維基材の目付は、表面処理時の炭素繊維基材の内部と外部の酸化状態の均一性向上や、炭素繊維基材の1枚当たりの目付を大きくし、マトリックス樹脂との複合化の際の積層工程を簡略化するため、目付が200〜1600g/mである。、目付は300g/m以上であることがより好ましく、400g/m以上であることが更に好ましい。また、1400g/m以下であることがより好ましく、1000g/m以下であることが更に好ましい。
本発明において、炭素繊維基材の表面と内部のいずれの面においても、表面処理による処理バラツキが少ないことが重要である。表面処理により、炭素繊維にCOO基とC−O基を導入することにより、マトリックス樹脂との接着性を高めることができるが、基材表面と内部で処理バラツキがあり、導入された官能基量に差がある場合は、複合材料物性の均一性が低下してしまう。
表面処理による炭素繊維基材表面と内部のバラツキは、炭素繊維基材をESCA(X線光電子分光法 )で測定することで得られる、C1sピークをピーク分割し、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比から判断することができる。
COO基比およびC−O基比は、ESCAにより測定されるC1sスペクトルをピーク分割することで求めるものである。通常のC1sスペクトル測定にて得られるスペクトルの帯電補正を行うために、メインピークをC−C、C=C、CHxの結合エネルギーを示す284.6eVとし、C−O基のピーク位置を286.6eV、C=O基のピーク位置を287.6eV、COO基のピーク位置を288.6eVとし、ベンゼン環など共役系のπ−π*サテライト成分を285.9eVと290.8eVとし、C−C、C=C、CHxのピークの高さをC1sのメインピークの高さと同じになるようにしてピーク分割を行う。
COO基比は、COO基のピーク面積をC1sスペクトルのピーク全体の面積で除することにより求めることができる。また、C−O基比についても同様に、C−O基のピーク面積をC1sスペクトルのピーク全体の面積で除することにより求めることができる。
本発明の炭素繊維基材は、ESCAにより測定される、基材表面に存在する炭素繊維のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(A)と、基材を任意の面で切って露出させた基材内部の炭素繊維のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(B)において、B/Aで求められる基材内外面の均一度が0.80〜1.00、好ましくは0.85〜1.00、より好ましくは0.90〜1.00、さらに好ましくは0.95〜1.00の範囲にあるものである。この値が0.80以上であると、基材表面と内部の炭素繊維の処理バラツキが少ないため、マトリックス樹脂と複合した際に物性バラツキの少ない複合材料が得られる。
本発明の炭素繊維基材は、炭素繊維構造体の密度のコントロールが容易かつ、生産性も高いことから、ニードルパンチ不織布であることが好ましい。
また、密度は特に制限されるものではないが、炭素繊維基材の寸法安定性およびマトリックス樹脂の含浸時間短縮の観点で、0.010〜1.100g/cmであることが好ましく、0.400g/cm以上であることがより好ましく、0.700g/cm以上であることが更に好ましい。また、1.000g/cm以下であることがより好ましく、0.900g/cm以下であることが更に好ましい。
本発明の炭素繊維基材の厚さは、JIS L 1913 6.1(厚さ(A法))に準じて、圧縮弾性試験機を用い、圧力0.5kPaを加圧したときの厚さが0.30〜25.00mmが好ましい。厚さが0.30mm以上であると、嵩高い複合材を作製する際に炭素繊維基材の積層枚を減らせるためコストを低下することができる。また、厚さが25mm以下であると数表面処理時の炭素繊維基材の内部と外部の酸化状態の均一性向上や、マトリックス樹脂との複合化の際に樹脂の含浸時間を短縮しコストを低下することができる。そのため、炭素繊維基材の厚さは、0.50mm以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.80mm以上である。また、20.00mm以下であることがより好ましく、更に好ましくは15.00mm以下である。
次に、本発明の炭素繊維基材を得るための好ましい製造方法について説明する。本発明において、まず、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系のいずれかの繊維からなる前駆体繊維を得る。中でも、高強度の炭素繊維が得られやすい原料として、アクリル系共重合体が好ましい。アクリル系共重合体としては、アクリロニトリル90重量%、好ましくは95重量%以上からなるアクリル系共重合体を使用することができる。アクリロニトリルと共重合するコモノマーとしては、アクリル酸、イタコン酸等の有機酸、若しくはそれらの有機酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、またはアリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の有機酸、若しくはそれら有機酸の金属塩等が挙げられる。
アクリル共重合体は、乳化重合、塊状重合あるいは溶液重合等の公知の方法によって重合することができ、紡糸原液は、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸あるいはロダンソーダー水溶液等により調製することができる。なお、紡糸原液中のアクリロニトリル共重合体の濃度は、好ましくは13〜25重量%、より好ましくは15重量%以上であり、また、より好ましくは20重量%以下である。アクリロニトリル共重合体の濃度が13重量%未満の場合は、乾湿式紡糸法により得られる繊維の表面に、フィブリルに起因する凹凸の発生が顕在化し、得られる炭素繊維の強度特性が低下することがある。
次に、この紡糸原液を口金から一旦空気中に押し出し、溶媒と水から成る凝固浴中に紡出する乾湿式紡糸法により紡糸後、水洗、浴延伸する。ここで構成単繊維間での接着を有効に抑止するために、例えば、アミノ変性シリコーンを必須成分としたシリコーン系油剤等を付与することが好ましい。その後、乾燥緻密化し必要に応じて加圧スチーム等の熱媒中で延伸することによりアクリル系前駆体繊維を得る。
このようにして得られたアクリル系前駆体繊維を、200〜300℃の空気雰囲気中で、必要に応じて延伸しながら加熱することにより耐炎化繊維を得る。
次いで、耐炎化繊維に捲縮を付与する。捲縮の付与は、座屈を利用した機械的押し込み加工法を用いることができる。耐炎化繊維の捲縮数は5〜15個/インチ、捲縮率は5〜20%が好ましい。このように、捲縮を付与した耐炎化繊維は繊維が平面方向と厚さ方向に並んだ三次元構造体化(例えば不織布化)した後に焼成することで、捲縮構造を保持したまま炭素繊維化され、湾曲した炭素繊維が得られる。炭素繊維は曲げ方向の力に対し弱いため、炭素繊維化後に捲縮構造を付与することは困難である。
次いで、以下ニードルパンチ不織布の例を示す。捲縮を付与した耐炎化繊維をカットし、繊維長15mm〜100mmの短繊維とする。これを、カードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いて作製したウェブを用いて、ニードルパンチ法により、目付は、200〜1000g/mの耐炎化繊維不織布を製造する。ニードルパンチの本数は、後述の表面処理時の寸法安定性を向上し、耐炎化繊維の損傷を抑制するため、100本〜2000本/cmとすることが好ましく、100〜1500本/cmとすることがより好ましく、100〜1000本とすることがさらに好ましい。
次に、緻密化した耐炎化繊維不織布を焼成し、炭素繊維化する。まず、耐炎化繊維不織布を600〜1000℃の窒素雰囲気中で焼成して前炭化不織布とする。次いで、1200〜1900℃の窒素雰囲気中で焼成することにより、湾曲した炭素繊維からなる不織布(炭素繊維構造体)が得られる。
また、耐炎化繊維不織布の焼成前に熱プレスで緻密化しておくことが好ましい。緻密化して焼成後の炭素繊維基材中の空隙を少なくすることで、マトリックス樹脂を溶融含浸して複合材とする際に、低圧での含浸が可能となる。そのため、炭素繊維の破断を防ぐことができ、高強度の複合材が得られることができる。熱プレスの方法としては、特に制限されるものではなく、例えばカレンダーやプレス機を用いて100℃〜250℃で加熱しながら圧縮することで緻密化することができる。この場合、圧縮率、圧縮条件によっては耐炎糸繊維の破断する可能性があるので、破断状況を確認しながら、温度や圧力、圧縮速度を制御することが好ましい。
次に、炭素繊維基材とマトリックス樹脂の複合化の際の炭素繊維表面の接着性を改善するため、炭素繊維構造体の表面処理を行う。炭素繊維構造体の表面処理を行うことで炭素繊維基材となる。
表面処理は、処理の効率化のために炭素繊維束でなく炭素繊維構造体の状態で行うことが好ましい。炭素繊維に湾曲を与えるために捲縮を施していた場合、捲縮が付与された繊維束を解して均一に広げることが困難であるため、炭素繊維束でなく炭素繊維構造体の状態で行うことが好ましい。
表面処理方法としては、オゾンガスによる酸化やコロナ処理、プラズマ処理などの気相処理では、炭素繊維基材表面と内部の繊維で処理バラツキが生じる可能性が高いため、液相による酸化処理を行うことが好ましい。
しかし、炭素繊維構造体の状態で表面処理を行おうとすると、従来の炭素繊維束で表面処理を行う場合に比べ、厚みがあり、内部に多くの空隙を有する。そのため、処理ムラが多くなる場合がある。また、特開昭58−132126号公報の電解酸化による表面処理のように、走行方向に対して対向するように電解液を強制的に流したとしても、表面処理中に発生した気泡を構造体内部から除去するのは困難であり、構造体内部の気泡が表面処理中に除去されない場合、炭素繊維と処理液が接触しない箇所が生じるため、処理ムラとなる可能性がある。
そこで、本発明の炭素繊維基材の製造方法においては、炭素繊維構造体内部の気泡を積極的に除去することが必要である。構造体内部の気泡を除去することにより、基材内外部の表面処理ムラを大幅に低減することができる。
本発明のような厚みのある構造体内部の気泡除去方法として、構造体内部から気泡を除去し易いだけでなく、炭素繊維表面の不純物が洗浄されるため、表面処理の槽中で超音波処理を行うことが好ましい。超音波の周波数は、炭素繊維構造体の形状を崩し難く、かつ気泡の除去と洗浄効果が高く、表面処理による炭素繊維基材の内部と外部の酸化状態を均一にできることから、24KHz〜300KHzであることが好ましく、24KHz〜200KHzであることがさらに好ましい。
また、構造体内部の気泡除去方法として、表面処理液を攪拌する方法や基材の走行方向に対して対向するように処理液を流動させる方法などに比べ、構造体の厚み方向への通水効果が著しく高く、処理液を構造体内部に均一に通水できる方法としてサクションによる吸引であることも好ましい態様の一つである。また、サクション吸引時の真空度は、構造体中の気泡を効果的に除去でき、表面処理による炭素繊維基材の内部と外部の酸化状態を均一にできることや、真空ポンプの設備コストを抑制できる点で、10〜300torrであることが好ましく、20torr以上であることがより好ましく、30torr以上であることがさらに好ましい。また、200torr以下であることがより好ましく、100torr以下であることがさらに好ましい。
本発明において、炭素繊維構造体の表面処理工程が電解酸化による処理であることは好ましい態様の一つである。電解酸化処理で用いる電解質に特に制限はないが、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、硝酸アンモニウム、硝酸水素アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウムなどの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩、マレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩、または、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアルカリを単独または2種類以上の混合物を用いることができる。
電解液の濃度は、処理効率が損われない範囲であればよく、0.1〜2mol/リットル程度で行うことができる。
電解槽での酸化電気量は被表面処理炭素繊維トウの炭化度に合わせて最適化することが好ましく、複数の電解槽で電解処理を行うことが好ましい。また、マトリックス樹脂との接着性改善効果が得られ、繊維の過剰な酸化による炭素繊維の強度低下を抑制できる点で、総電気量は5〜1000クーロン/g(炭素繊維トウ1g当たりのクーロン数)であることが好ましく、10〜500クーロン/gの範囲にすることがさらに好ましい。
また、本発明において、炭素繊維構造体の表面処理工程がオゾン水による酸化処理であることは好ましい態様の一つである。オゾン水による酸化処理では、電解液を用いないため、電解質の残留による物性への影響がない。
オゾン水による酸化処理は、オゾンガスを純水に溶解した浴槽中に炭素繊維構造体を浸漬させるものである。オゾン水による酸化処理のコストパフォーマンスに優れる点で、オゾン水中のオゾン濃度は10mg/L〜110mg/Lであることが好ましく、より好ましくは30〜100mg/L、さらに好ましくは40〜90mg/Lである。
また、同様の理由で、オゾン水浴槽中での処理時間は、1〜10分であることが好ましく、2分以上であることがより好ましく、3分以上であることがさらに好ましい。また、7分以下であることがより好ましく、5分以下であることがさらに好ましい。
[測定方法]
(1)炭素繊維基材の目付
20cm×20cmの試験片を5枚採取し、それぞれの試験片の重量から目付を求めた。得られた目付の平均値を炭素繊維基材の目付とした。
(2)炭素繊維基材の厚さおよび密度
JIS L 1913 6.1(厚さ(A法))に準じて、20cm×20cmの試験片を5枚採取し、(株)大栄科学精機製作所製の全自動圧縮弾性・厚さ測定器(型式:CEH−400)を用い、圧力0.5kPaの加圧下で10秒後における各試験片の厚さを10箇所測り、その平均値を炭素繊維基材の厚さとした。この厚さと長さ(20cm×20cm)、重量から、見かけ密度を少数第3位四捨五入して求めた。得られた5枚の見かけ密度の平均値を炭素繊維基材の密度とした。
(3)COO基比およびC−O基比
ESCA (X 線光電子分光法) にて、炭素繊維基材の表面に存在する炭素繊維および、炭素繊維基材を任意の面で切り、内部に存在する炭素繊維を下記の条件でC1sスペクトルを測定し、ピーク分割を行った。
ピーク分割は、スペクトルの帯電補正を行うために、C1sメインピークをC−C、C=C、CHxの結合エネルギーを示す284.6eVへ合わせ、C−O基のピーク位置を286.6eV、C=O基のピーク位置を287.6eV、COO基のピーク位置を288.6eV、ベンゼン環など共役系のπ−π*サテライト成分を285.9eVと290.8eVとし、C−C、C=C、CHxのピークの高さをC1sのメインピークの高さと同じになるようにしてピーク分割を行い、COO基、C−O基のそれぞれのピーク面積をC1sピーク全体の面積で除すことで得られた値をCOO基比、C−O基比とした。
・装置: Quantera SXM(PHI 社製)
・励起X 線:monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6 eV)
・X線径:200μm
・光電子脱出角度:45 度(試料表面に対する検出器の傾き)
・データ処理:スペクトル(ナロースキャン)のスムージング:9-point smoothing
・測定サンプル数:サンプリング間隔を1cm以上離して、表面および内部の面を各5点測定した。
・ピーク分割:Avantageデータシステム(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、C1sピークのピーク分割を行った。
(4)炭素繊維基材内外の均一度
ESCAによるC1sスペクトルのピーク分割により得られた、炭素繊維基材表面のCOO基比とC−O基比の比率の和(A)と、炭素繊維基材内部の面のCOO基比とC−O基比の比率の和(B)を求め、以下の式から基材内外面の均一度を求めた。
基材内外面の均一度=(B)/(A)
(5)炭素繊維基材中の炭素繊維の湾曲割合
炭素繊維基材表面に存在する任意の炭素繊維の単糸を20倍に拡大し、KEYENCE社製のマイクロスコープVHX−100の2点間距離測定モードを用いて、基材表面の観察可能な炭素繊維単糸100本について、同一角度で連続した直線部分の距離を測定した。炭素繊維単糸中に5mm以上の直線部がない場合は、湾曲繊維1本とカウントし、100本中の湾曲繊維の割合が何%であるか算出した。また、厚さ方向に対して水平にスライスした任意の面についても同様に測定し、湾曲繊維の割合を算出した。
[実施例1]
AN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなる、極限粘度[η]が1.8であるAN共重合体を20重量%含むジメチルスルホキシド(DMSO)の紡糸原液を調製し、この紡糸原液のpHが8.0になるまでアンモニアガスを吹き込んだ。その後、乾湿式紡糸法により45℃に温調された紡糸原液を、孔数3000Hからなる口金から一旦空気中に押し出し、DMSO溶液を満たした凝固浴中に紡出した。
次に、凝固した糸条を熱水中で水洗後、90℃の浴中で4倍に延伸し、さらに油剤浴を通じてアミノ変性シリコーンをノニルフェノールEO付加物で乳化した、油剤濃度が2.0重量%のシリコーン系油剤を、繊維の重量100重量%に対して0.7重量%付与した。油剤付与後の糸条を、150℃に温調した加熱ローラーを用いて乾燥緻密化後、さらに加圧スチーム中で4倍に延伸し、180°に温調した加熱ローラーで乾燥処理し、単繊維繊度1.0dtex、総繊度3000dtexのアクリル系前駆体繊維束を得た。
このようにして得られた前駆体繊維束を、250〜280℃の空気雰囲気中で安定化処理して耐炎化繊維束とした後、クリンパーにて、捲縮数7個/インチ、捲縮率12%で捲縮を付与し、繊維長が76mmとなるようにカットした。
得られた耐炎化繊維をカード、クロスラッパーに通して得たウェブをニードルパンチし、目付1210g/m、厚さ19.55mmの耐炎化繊維不織布を作成した。
次に、窒素雰囲気中で最高温度800℃の前炭化炉で、400〜500℃の雰囲気温度における昇温速度が100℃/分として前炭化処理し、次いで、窒素雰囲気中で最高雰囲気温度が1450℃の炭化炉で1000〜1200℃の雰囲気温度における昇温速度を200℃/分として焼成した。その結果、目付609g/m、厚さ16.68mm、密度0.037g/cmの炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)が得られた。
この炭素繊維不織布を炭酸水素アンモニウム水溶液(0.1モル/リットル)中に浸漬し、水溶液中で26KHzにて超音波処理しながら76c/gの電気量となるように電解酸化処理を行い、水洗および乾燥を行った。電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比をESCAにて測定した。
測定結果から、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求め、基材内外面の均一度を算出したところ、値が0.86と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が91%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を炭酸水素アンモニウム水溶液(0.1モル/リットル)中に浸漬し、真空度80torrでサクションして炭素繊維不織布の表面から裏面に強制的に通水しつつ、76c/gの電気量となるように電解酸化処理を行い、水洗および乾燥を行った。電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面を実施例1と同様に、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.90と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が95%、内部面が90%であった。
評価結果を表1に示した。
[実施例3]
オゾン発生器(住友精密工業社製)より発生した濃度220g/mのオゾンガスを純水中に溶解させ、オゾン濃度センサー(溶存オゾン測定タイプ)を用いて、純水中のオゾンの濃度が60mg/Lになるように調整した。このオゾン水中に、実施例1で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を浸漬し、オゾン水中で26KHzにて超音波処理しながら3分間浸漬処理した後、炭素繊維不織布を乾燥させた。オゾン水処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面を実施例1と同様に、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。その結果、基材内外面の均一度は0.91と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、実施例1と同様に湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が96%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例4]
オゾン発生器(住友精密工業社製)より発生した濃度220g/m3 のオゾンガスを純水中に溶解させ、オゾン濃度センサー(溶存オゾン測定タイプ)を用いて、純水中のオゾンの濃度が60mg/Lになるように調整した。このオゾン水中に、実施例1で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を浸漬し、真空度80torrでサクションして炭素繊維不織布の表面から裏面に強制的に通水しつつ、3分間浸漬処理した後に乾燥させた。
オゾン水処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面を実施例1と同様に、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。その結果、基材内外面の均一度は0.94と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、実施例1と同様に湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が96%、内部面が88%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例1]
電解処理中に超音波処理せず、静置して行った以外は実施例1と同様とし、炭素繊維基材の表面および、基材の厚み方向に半裁した面について、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。その結果、基材内外面の均一度は0.43と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低かった。また、実施例1と同様に湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が91%、内部面が93%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1で焼成した炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を炭酸水素アンモニウム水溶液(0.1モル/リットル)が入った槽中に浸漬させながら0.5m/分で走行させた。さらに、炭素繊維不織布が入る側の槽の壁の高さを出側の壁の高さよりも低くし、炭素繊維不織布の走行方向に対して炭酸水素アンモニウム水溶液が0.3m/分で向流にオーバーフローするように調整し、76c/gの電気量となるように電解酸化処理を行い、水洗および乾燥を行った。
電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面について、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.63と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低かった。また、実施例1と同様に湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が93%、内部面が92%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例3]
電解処理中に超音波処理せず、静置して行った以外は実施例3と同様とし、炭素繊維基材の表面および、基材の厚み方向に半裁した面について、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.55と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低かった。また、実施例1と同様に湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が96%、内部面が90%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例1で得られた耐炎化繊維不織布を200℃に加熱したプレス機にて、26MPaの圧力でプレスし、密度1.116g/cmに緻密化した。次に、窒素雰囲気中で最高温度800℃の前炭化炉で、400〜500℃の雰囲気温度における昇温速度が100℃/分として前炭化処理し、次いで、窒素雰囲気中で最高雰囲気温度が1450℃の炭化炉で1000〜1200℃の雰囲気温度における昇温速度を200℃/分として焼成した。その結果、目付780g/m、厚さ0.71mm、密度1.094g/cmの炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)が得られた。
この炭素繊維不織布を実施例1と同様に電解酸化処理、水洗、乾燥を行い、電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比をESCAにて測定した。
その結果、基材内外面の均一度は0.84と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が92%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例6]
実施例1で得られた耐炎化繊維をカード、クロスラッパーに通して得たウェブをニードルパンチし、目付2420g/m、厚さ30.63mmの耐炎化繊維不織布を作成した。得られた耐炎化繊維不織布を200℃に加熱したプレス機にて、3MPaの圧力でプレスし、密度0.741g/cmに緻密化した。
次に、窒素雰囲気中で最高温度800℃の前炭化炉で、400〜500℃の雰囲気温度における昇温速度が100℃/分として前炭化処理し、次いで、窒素雰囲気中で最高雰囲気温度が1450℃の炭化炉で1000〜1200℃の雰囲気温度における昇温速度を200℃/分として焼成した。その結果、目付1573g/m、厚さ2.22mm、密度0.709g/cmの炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)が得られた。
この炭素繊維不織布を実施例1と同様に電解酸化処理を行い、電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比をESCAにて測定した。
その結果、基材内外面の均一度は0.83と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が92%、内部面が86%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例7]
実施例5で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を実施例3と同様にオゾン水処理、乾燥を行った後、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.83と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が91%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例8]
実施例6で得られた耐炎化繊維不織布を200℃に加熱したプレス機にて、28MPaの圧力でプレスし、密度1.101g/cmに緻密化した。
次に、窒素雰囲気中で最高温度800℃の前炭化炉で、400〜500℃の雰囲気温度における昇温速度が100℃/分として前炭化処理し、次いで、窒素雰囲気中で最高雰囲気温度が1450℃の炭化炉で1000〜1200℃の雰囲気温度における昇温速度を200℃/分として焼成した。その結果、目付1573g/m、厚さ2.22mm、密度1.079g/cmの炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)が得られた。
この炭素繊維不織布を実施例1と同様に電解酸化処理を行い、電解酸化処理後の炭素繊維不織布(炭素繊維基材)の表面および、基材の厚み方向に半裁した面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比をESCAにて測定した。
その結果、基材内外面の均一度は0.80と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が93%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
[実施例9]
実施例8で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を実施例3と同様にオゾン水処理、乾燥を行った後、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.82と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が少なく、均一度が高いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が94%、内部面が85%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例4]
実施例5で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を比較例3と同様にオゾン水処理、乾燥を行った後、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.46と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が97%、内部面が89%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例5]
実施例5で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を比較例2と同様に電解酸化処理、水洗、乾燥を行い、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.56と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が94%、内部面が86%であった。評価結果を表1に示した。
[比較例6]
実施例5で焼成して得られた炭素繊維不織布(炭素繊維構造体)を比較例3と同様にオゾン水処理、乾燥を行った後、C1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和を求めた。
その結果、基材内外面の均一度は0.48と炭素繊維基材の表面と内部の官能基量の差が大きく、均一度が低いことが判った。また、炭素繊維基材表面および、厚さ方向に対して水平にスライスした内部の面について、湾曲繊維の割合を測定したところ、表面が94%、内部面が87%であった。評価結果を表1に示した。
Figure 2012184535
本発明にかかる炭素繊維基材および炭素繊維基材の製造方法は、高目付の炭素繊維構造体の表面処理ムラを小さくすることができ、積層枚数の少ない低コストな炭素繊維複合材料用炭素繊維基材として適用することができる。

Claims (9)

  1. 湾曲した炭素繊維からなり、炭素繊維が平面方向および厚み方向に配向した、目付が200〜1600g/mの炭素繊維基材であり、ESCAで測定した該基材表面のC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(A)および、ESCAで測定した該基材内部のいずれの面におけるC1sピーク中に占めるCOO基比とC−O基比の比率の和(B)において、以下の式により求められる基材内外面の均一度が0.80〜1.00の範囲にあることを特徴とする炭素繊維基材。
    基材内外面の均一度=(B)/(A)
  2. ニードルパンチ不織布である請求項1に記載の炭素繊維基材。
  3. 炭素繊維基材の密度が0.010〜1.100g/cmである請求項1または2に記載の炭素繊維基材。
  4. 炭素繊維基材の厚さが0.30mm〜25.00mmである請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維基材。
  5. 耐炎化繊維を構造体化し耐炎化繊維構造体にする工程、耐炎化繊維構造体を焼成し炭素繊維構造体にする工程、炭素繊維構造体を表面処理し炭素繊維基材にする工程を有する炭素繊維基材の製造方法であって、炭素繊維構造体の表面処理時に超音波処理を行うことを特徴とする炭素繊維基材の製造方法。
  6. 耐炎化繊維を構造体化し耐炎化繊維構造体にする工程、耐炎化繊維構造体を焼成し炭素繊維構造体にする工程、炭素繊維構造体を表面処理し炭素繊維基材にする工程を有する炭素繊維基材の製造方法であって、炭素繊維構造体の表面処理時にサクションによる吸引を行うことを特徴とする炭素繊維基材の製造方法。
  7. 耐炎化繊維構造体を熱プレスにより緻密化する工程を含む請求項5または6に記載の炭素繊維基材の製造方法。
  8. 表面処理が電解酸化処理である請求項5〜7のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
  9. 表面処理がオゾン水による酸化処理である請求項5〜7のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
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