JP2006348401A - 耐炎化繊維シート前駆体およびその製造方法ならびに耐炎化繊維シートの製造方法 - Google Patents

耐炎化繊維シート前駆体およびその製造方法ならびに耐炎化繊維シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐炎性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、柔軟性、軽量性に優れ、高精密ろ過性と微粉末繊維の発生の少ない耐炎化繊維シート、特に耐炎化エアフィルター用繊維シートを得るための耐炎化繊維シート前駆体を提供する。
【解決手段】 カルボン酸基エステルを有するモノマ、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル系共重合体からなる不織布などからなるポリアクリロニトリル系繊維シートであって、該シートが平均直径1μm未満のポリアクリロニトリル系極細繊維を含んでいることを特徴とする耐炎化繊維シート前駆体、およびこれを酸化性雰囲気中で150〜350℃で1〜240分熱処理することを特徴とする耐炎化繊維シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアクリロニトリル系極細繊維を含む布帛からなる耐炎化繊維シート前駆体およびその製造方法、ならびに耐炎化繊維シートの製造方法に関する。
従来からポリアクリルニトリル系布帛からなる耐炎化繊維シートが知られており、例えばポリアクリロニトリル系共重合体繊維の布帛を活性ガス雰囲気中で加熱し耐炎化繊維シートが得られ、さらにこれを不活性ガス中で炭化させ、炭素繊維シートを製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。一般に耐炎化繊維シートは、高温ガス中のダストを捕集するための耐熱性フィルタ材、特に発火が生じる使用条件に好適な耐熱性フィルタ材、ファイヤーブロッキングレイヤーなど火炎から被覆物を護る耐炎化布、防炎カーテン、消防服、耐熱耐炎肌着、炉前作業服、溶接服、化学服等の防炎衣料や、火花防護シート、耐熱手袋、エプロン、防災ずきん等の保護具、断熱材、特に自動車、電車や航空機などのダッシュボード、エンジンルーム等における吸音・遮音・断熱材、病院、劇場、ホテル等の内装材・建材・什器類、防火カバー、ダクト表面材、プラスチック防炎材、補強材、ガスケット等のシール材等の産業資材等、耐炎性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、柔軟性、軽量性を活かした用途に広く活用されている。
さらに、耐炎化繊維シートは炭素繊維シート前駆体としても利用されており、耐炎化繊維シートを焼成して得られる炭素繊維シートは、構成される炭素繊維の高強度、高弾性率を活かした補強材や、導電性、熱伝導性を活かした電極材、特に最近では燃料電池電極材の構成部材としての価値が高まりつつある。
これらの用途に対して、耐炎化繊維を直径2μm以下の極細繊維とすることによって、高精密エアフィルター用途に適用する提案がなされており、これによって、不燃性が要求されるエアフィルターに対して微粒子の捕捉除去とろ過抵抗の低減を両立することが可能となる(特許文献2参照)。その手法として、メチルメタクリレート系ポリマーがマトリックス(海)相、アクリロニトリル系ポリマーが島相となるようブレンドされた前駆体繊維を得て、これを酸化性雰囲気下で加熱することで耐炎化繊維を製造する手法を用いている。しかし特許文献2には具体的なエアフィルターの製造法が記載されておらず、耐炎化繊維を不織布化する通常の方法(特許文献3参照)を適用しても、構成される超極細アクリロニトリル系繊維はほとんどが集合体としてしか存在することはできず、極細単繊維に分散することは困難であった。これはマトリックス層とともに耐炎化処理したポリアクリロニトリル系超極細繊維が特に前駆体単繊維の内部で熱処理によって膠着してしまい、ウォータージェットによる柱状流処理でほとんど開繊できないためである。さらに開繊された一部の超極細繊維は耐炎化繊維シート中に結着されておらず柱状流処理や使用時に微粉末として脱落する問題を有する。
ところで、ポリアクリロニトリル系極細繊維の集合体を得る手法として、アクリロニトリル系ポリマーと異種ポリマーを混合し共通溶剤で溶解させて紡糸原液を調整し、溶剤紡糸法で糸条を形成後、該異種ポリマーの溶剤で該異種ポリマーを抽出する手法が提示されている(特許文献4参照)。しかしこの文献はスエード調人工皮革等に用いる極細アクリル繊維に関するもので耐炎に関する記載はなく、本願発明のようにある特定のポリマーを特定組成にて用いることにより極細繊維集合体からなる耐炎化繊維シート前駆体が得られる点については何ら示唆されていない。
さらに、ポリアクリロニトリル系繊維をシート化し、耐炎化処理する手法に関しては、特許文献1以外に、ポリアクリロニトリル系繊維シートをローラー加熱により片面ないしは表面を耐炎化する方法(特許文献5参照)、ポリアクリロニトリル系繊維シートを耐炎化処理液で処理した後に圧力を付与しつつ耐炎化処理する方法(特許文献6参照)等が知られているが、ポリアクリロニトリル系繊維として超極細繊維を用いる点については何ら示唆されていない。
特開昭55−006501号公報 特開平03−082825号公報 特開平09−119052号公報 特開昭58−174622号公報 特開平04−065561号公報 特開2004−300601号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決できる耐炎化繊維シート前駆体およびその製造方法ならびに耐炎化繊維シートの製造方法を提供することにある。
本発明は以下の構成を要旨とするものである。
本発明の第1の発明は、カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル系共重合体からなるポリアクリロニトリル系繊維シートであって、該シートが平均直径1μm未満のポリアクリロニトリル系極細繊維を含んでいることを特徴とする耐炎化繊維シート前駆体である。
また本発明の第2の発明は、カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル系共重合体50重量%以下と溶媒可溶性重合体50重量%以上を混合紡糸し、得られる繊維から溶媒を用いて溶媒可溶性重合体を溶出させポリアクリロニトリル系極細繊維を得、引き続き該ポリアクリロニトリル系極細繊維を含むポリアクリロニトリル系繊維シートを製造することを特徴とする耐炎化繊維シート前駆体の製造方法である。
また本発明の第3の発明は、前記耐炎化シート前駆体を酸化性雰囲気中で150〜350℃で1〜240分熱処理することを特徴とする耐炎化繊維シートの製造方法である。
本発明の耐炎化繊維シート前駆体は、これを耐炎化することにより、耐炎性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、柔軟性、軽量性に優れ、高精密ろ過性と微粉末繊維の発生の少ない耐炎化繊維シート、特に耐炎化エアフィルター用繊維シートを得ることができる。
本発明の耐炎化繊維シート前駆体の製造方法により、目的の繊維シート前駆体を生産性に優れ、環境負荷の少ない方法で製造でき、また本発明の耐炎化繊維シートの製造方法により、目的の繊維シートを製造することができる。
本発明で得られた耐炎化繊維シートは、耐炎性高性能エアフィルター以外に、火炎の漏れがなく軽量性に優れた耐炎化繊維シートや、断熱材、内装材、建材、什器類、産業資材等に広く活用することができる。さらに本発明で得られる耐炎化繊維シートはそのまま、あるいは樹脂含浸加工や機能性微粒子加工を施して炭素化することにより、炭素繊維シートを得ることができ、高強度、高弾性率を活かした補強材や、導電性、熱伝導性を活かした電極材として有用である。
以下、本発明の耐炎化繊維シート前駆体について詳細に説明する。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートに用いるポリアクリロニトリル系共重合体は、アクリロニトリルモノマーと、カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリマーである。このような共重合ポリマーを用いることで耐炎化工程での環化が進行しやすくなる。
カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが上げらる。
カルボン酸エステル基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの代表されるメタクリル酸エステル類などが上げられる。
アクリルアミド系モノマーとしては、例えばアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドが上げられる。
カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、およびアクリルアミド系モノマーから選ばれる複数種のモノマーを共重合することもできる。
また、これら以外にもスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類、さらにp−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などを含んでも構わない。
これら成分の共重合比は0.1〜10mol%が好ましい。0.1mol%以上とすることにより環化促進が可能となり、10mol%以下とすることにより耐炎化に際しての繊維シートの収縮を抑えることができる。これらの目的のために当該共重合成分は0.2〜5mol%とすることがより好ましい。
このポリアクリロニトリル系共重合体の重量平均分子量は1万〜40万とすることにより、ポリアクリロニトリル系繊維の配向制御および、別工程での耐炎化の観点から好ましく、10万〜20万が可紡性の観点からより好ましい。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートは平均直径1μm未満のポリアクリロニトリル系極細繊維を含む。1μm未満とすることにより、耐炎化工程の後に極細耐炎化繊維からなる繊維シートを得ることができ、高精密耐炎性ろ過フィルターに供することができる。この極細耐炎化繊維シートをさらに炭素化することにより、通常の炭素繊維シートを越える、強度、弾性率、導電性、熱伝導性をもった極細炭素繊維シートを得ることも可能となる。該平均直径は、好ましくは500nm未満、さらに好ましくは300nm未満である。該平均直径の下限は製造の困難さから1nmである。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートには、本発明の効果を損ねない範囲で、かつ該繊維シートの内部ろ過効果、補強効果を向上させるために、繊度が0.5〜4dtexの太繊度ポリアクリロニトリル系繊維を混合させることができる。この場合、該太繊度アクリロニトリル系繊維はポリアクリロニトリル系繊維シート中に1〜90重量%の比率で混合させることが好ましく、10〜70重量%の比率がより好ましく、30〜50重量%の比率がさらに好ましい。また該太繊度アクリロニトリル系繊維は効率的に環化反応するために該ポリアクリロニトリル系極細繊維と同様にカルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル共重合体とすることが好ましい。この場合、共重合比率は該ポリアクリロニトリル系極細繊維と同等かそれより高いことが繊維シートの耐炎化を均一に進行させるために好ましい。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートは主にポリアクリロニトリル系極細繊維、あるいはポリアクリロニトリル系極細繊維と太繊度アクリロニトリル系繊維で構成されるが、発明の主旨を損ねない範囲で少量の添加、付着物を含んでも構わない。ポリアクリロニトリル系繊維シートの全重量に占めるポリアクリロニトリル系繊維の合計重量の割合は特に規定されないが、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。添加物としては繊維シートとしての強度を高めるための樹脂があげられ、例えばエポキシ化合物やポリビニルアルコールなどのビニル化合物、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸及びそのエステル化物、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどとそれぞれの共重合体を用いることができる。また耐炎化、炭素化工程での工程通過性を良好とする目的で油剤を含んでも構わない。油剤の組成は公知のものが使用でき、例えばアミノ変成シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーンやポリアルキレングリコールなどの混合物などがあげられる。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートは、織物、編物、不織布などの繊維からなるシート状物である。ポリアクリロニトリル系繊維を耐炎化後に繊維シートとする場合に比較して、本発明は耐炎化前に繊維シートとするため、ポリアクリロニトリル系極細繊維間の膠着を回避することができ、分散性、開繊性の良好な繊維シートを得ることができる。また、繊維を耐炎化する場合に比較して強度の高い繊維を用いて繊維シートを製造することができるため、加工工程の生産性を高めることができる。さらに繊維シートとして耐炎化処理が可能なため、繊維形態での耐炎化処理に比較して、面方向に均一に耐炎化することができる。
本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートは、織編物とすることができるが、織物では平織、綾織、朱子織等の基本組織の他、変化組織でも構わず、必要に応じて多重織にしても良い。編物では経編でも横編でも丸編でもよく、平編、ゴム編等の基本組織の他、変化組織でも構わない。
また該繊維シートを構成する繊維は、平均直径が1μm未満のポリアクリロニトリル系極細繊維の集合体である繊維束が直径30μm以下の単繊維を構成する長繊維マルチフィラメントまたは短繊維紡績糸であることが好ましい。長繊維マルチフィラメントの場合の繊度は30〜3000dtexであることが好ましい。30dtex以上とすることにより製造コストを抑えることができ、3000dtex以下とすることにより肉薄で軽量な繊維シートとなり実用特性に優れ、耐炎化工程での蓄熱、暴走反応を起こしにくい繊維シートが得られる。
短繊維紡績糸の場合は、単糸、双糸のいずれでもよく、繊度はメートル番手で14〜50番手であることが好ましい。14番手以上とすることにより肉薄で軽量な繊維シートとなり実用特性に優れ、耐炎化工程での蓄熱、暴走反応を起こしにくい繊維シートが得られ、50番手以下とすることにより製造コストを抑えることができる。短繊維紡績糸の撚り数は単糸の場合、300〜800回/m、双糸の上撚りの場合、300〜800回/m、双糸の下撚りの場合、500〜900回/mが好ましい。下限として記した撚り数以上とすることにより、繊維シート表面の毛羽が少ないものとなり、上限として記した撚り数以下とすることでも毛羽の少ないものが得られる。
織物または編物からなる本発明の繊維シートは、その開口率が5%以下であることが好ましい。開口率を5%以下とすることにより、織編物としての均一性が高く、ろ過フィルターや燃料電池基材として良好な特性が得られる。開口率の下限値は0%でもよい。なお、開口率は、次の式で求められる。
開口率(%)=(S2/S1)×100
S1:織編物面積
S2:織編物面積S1領域内で織編物を構成する糸が存在しない部分の面積
本発明では、ポリアクリロニトリル系繊維シートが不織布であることが好ましい。従来の耐炎化繊維から構成される不織布は繊維間空隙が大きく、この空隙が精密ろ過性や熱風や火炎の通気抵抗性、燃料電池構成部材としての通液抵抗性を損ね、またこれらの面方向の均一性を低下させていた。不織布からなる本発明の繊維シートは、ポリアクリロニトリル系極細繊維を使用することによりこれらの問題を解消することができ、さらに薄肉で同等性能の製品を得ることができる。また、不織布からなる本発明の繊維シートは、耐炎化処理することにより、構成するポリアクリロニトリル系極細繊維間が部分的に膠着するため、微粉末繊維の発生の少ない耐炎化繊維シートを得ることができる。
不織布の形態としては、ニードルパンチ方式、ウォータージェット方式で得られた不織布が、厚み方向の繊維配向を高めるため好ましい。
不織布からなる本発明の繊維シートの単位面積あたりの重量は、適用用途に応じて選択することができるが、耐炎化工程での処理を問題なく進行させるためには、20〜500g/mであることが好ましく、より好ましくは50〜200g/mである。
前述した繊維間空隙をより密に埋めるためにはポリアクリロニトリル系極細繊維の繊維長は10mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以下である。繊維長を10mm以下とすることによって極細繊維同士の絡まりを防ぎ、緻密で分散性の良好な不織布を得ることができる。また、不織布の引張、引裂強度、および形態保持性高めるためには、単糸繊度0.5〜4dtexの太繊度ポリアクリロニトリル系繊維を含有させることが好ましく、この太繊度ポリアクリロニトリル系繊維の繊維長も10mm以下とすることが好ましい。太繊度ポリアクリロニトリル系繊維の繊度は0.5dtex以上とすることで不織布の形態を維持しやすく、4dtex以下とすることで繊維間空隙が大きくなることを防ぎやすい。太繊度繊維とその空隙を埋める極細繊維の組み合わせにより、均一で薄肉、高性能の不織布を得ることができる。
次に、本発明の耐炎化繊維シート前駆体の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系共重合体は、アクリロニトリルモノマーと、カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリマーである。このような共重合ポリマーを用いることで耐炎化工程での環化が進行しやすくなる。
共重合するモノマーとしては前述した成分を使用することができる。0.1mol%以上とすることにより環化促進が可能となり、10mol%以下とすることにより耐炎化に際しての繊維シートの収縮を抑えることができる。
このポリアクリロニトリル系共重合体の重量平均分子量は1万〜40万とすることにより、ポリアクリロニトリル系繊維の配向制御および、別工程での耐炎化の観点から好ましく、10万〜20万が可紡性の観点からより好ましい。
本発明で用いる溶媒可溶性重合体は、溶媒に可溶であれば特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えばポリオレフィン類、ポリビニルアルコール類、ポリアルキレングリコール類、ポリエステル類、ポリアミド類等、およびその共重合体を使用することができる。溶媒可溶性重合体の溶出に使用する溶媒はアクリロニトリル系共重合体に対して難溶性であれば重合体に合わせて適宜選定できるが、環境負荷が低いものが好ましく、水系が最も好ましい。この点から溶媒可溶性重合体はアルカリ水溶液可溶であるポリエステル類や高温熱水可溶であるポリビニルアルコール類およびその共重合体が最も好ましい。ポリビニルアルコール類を用いる場合、その鹸化度は80mol%以上が熱水可溶の点から好ましく、90mol%以上がより好ましい。
混合紡糸におけるアクリロニトリル系重合体と溶媒可溶性重合体の混合比率はアクリロニトリル系共重合体50重量%以下と溶媒可溶性重合体50重量%以上である。このような比率とすることにより、後述する溶出操作により直径が1μm未満のアクリル系極細繊維を得ることができる。アクリロニトリル系共重合体の比率は30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。また、生産性の観点からアクリロニトリル系共重合体の比率は3重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。
原料の好適な例は、溶媒可溶性重合体としてポリビニルアルコール系重合体を用い、溶媒にジメチルスルホキシドを用い、イタコン酸を0.5〜5mol%共重合したポリアクリロニトリル系重合体の混合比率が重合体全量に対して10〜30重量%となるように溶液ブレンドされたものである。さらにポリビニルアルコール系重合体とポリアクリロニトリル系重合体の重合度は、各々をジメチルスルホキシドの同濃度溶液とし同じ温度で測定した溶液粘度が粘度比1:3〜3:1となる程度がより好ましい。この理由は定かではないが、イタコン酸が持つカルボキシル基とポリビニルアルコールの持つヒドロキシル基が相互作用することおよびそれぞれのポリマーの粘度バランスが好適となることによりポリアクリロニトリル系重合体の分散が非常に細かくなり、直径が細く、かつ均一なポリアクリロニトリル系極細繊維が得られるためと推測される。
次に、アクリロニトリル系共重合体と溶媒可溶性重合体を混合して紡糸する。紡糸方法は特に限定されず、溶融紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸法などが適用できるが、アクリロニトリル系共重合体の紡糸という点から湿式および乾湿式紡糸が特に好ましい。湿式および乾湿式紡糸での溶媒はアクリロニトリル系共重合体と溶媒可溶性重合体に共通の溶媒が好ましく、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
混合方法は特に限定されず、海島型などの複合紡糸や2液のブレンド紡糸などが適用できる。ブレンド手法も均一に混合できれば特に制限はなく、例えば紡糸原液の混合攪拌、押出機などによる混練、あるいは紡糸口金直前での静的混練子による混合などを単独あるいは併用して用いることができる。
このように得られた混合紡糸繊維は、ポリアクリロニトリル系極細繊維の直径を減少させ、かつ配向を高めるために、延伸することが好ましく、湿式および乾湿式紡糸においては浴延伸を行うことが好ましい。なお延伸は多段で行うことが好ましく、総延伸倍率は目的に応じ適宜調整することができるが約2〜30倍程度が好ましい。また工程の途中で適宜、乾燥、給油、洗浄を行っても良い。
本発明では、その後必要に応じて糸加工を行った後、得られる繊維から溶媒を用いて溶媒可溶性重合体を溶出させる溶出操作を行うことにより、ポリアクリロニトリル系極細繊維を得る。この場合、溶出操作の前後に必要に応じて糸加工を行うことができる。
溶出は得られた繊維を走行させながら連続処理しても良いし、かせ状やパッケージでバッチ処理しても構わない。連続処理は、紡糸後に一旦巻き取った繊維を解舒して行っても良いし、紡糸工程、延伸工程、あるいは耐炎化工程と連続して行っても構わない。なお、本発明の製造方法では、溶媒で溶出された溶媒可溶性重合体は回収、再利用することにより、高い歩留まりと省資源化が達成できるため好ましく採用される。
紡糸から溶出までの好適な例は、紡糸温度30〜100℃で、孔径 0.01〜5mmで孔数1〜1,000,000の紡糸口金から乾湿式紡糸を行い、アルコール系の凝固浴で凝固させ、30〜100℃の加熱浴中で多段延伸させ、一旦キャンに収納するか巻き取るか、または連続して熱水を用いて溶出に十分な時間、浸漬させてポリビニルアルコール系重合体を溶出させる手法である。
前述した糸加工とは、給油工程、開繊工程、捲縮付与工程、切断工程、紡績工程、撚糸工程、糊付け工程、熱処理工程等による加工であり、溶出操作の前後で必要に応じて実施する。給油工程は、その後の工程での毛羽発生や糸切れ、あるいは融着が生じないように油剤を付与する工程であり、例えばアミノ変成シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーンやポリアルキレングリコールなどの混合物などが付与される。開繊工程はエア交絡、流体加工等によって、極細繊維間の空間を広げるものであり、捲縮付与工程、切断工程は通常の短繊維加工と同様のものでクリンプの付与、繊維の切断を行う工程であり、その後の紡績工程や不織布加工工程の通過性を良好なものとする。撚糸工程、糊付け工程、熱処理工程は、通常の製織、製編における工程通過性を良好なものとするため適宜実施する。
引き続き、本発明では該ポリアクリロニトリル系極細繊維を含むポリアクリロニトリル系繊維シートを通常の製織、製編、不織布加工などによって製造する。繊維シートが織物や編物の場合には、ポリアクリロニトリル系極細繊維は長繊維フィラメントや短繊維紡績糸として使用し、織物では経糸、緯糸のいずれにも用いることができる。
ポリアクリロニトリル系繊維シートが不織布の場合、ポリアクリロニトリル系極細繊維および必要に応じて太繊度ポリアクリロニトリル系繊維を混合して不織布とすることができる。不織布の製造方法としては、紡績工程にかけて、スライバー状にするか、水中に分散、抄造してウエブを形成し、これに柱状流処理を行って繊維同士を絡み合せる方法が採用できる。
また、本発明のポリアクリロニトリル系繊維シートを製造する方法として、湿式抄紙法を採用することが、ポリアクリロニトリル系極細繊維を一本一本の繊維に分散できるため好ましく採用される。この場合、本発明の混合紡糸繊維を繊維長10mm以下にカットした後、溶媒可溶性重合体を溶出し、その後得られたポリアクリロニトリル系極細繊維を一旦乾燥させることなく抄紙する不織布の製造方法である。これによると、ポリアクリロニトリル系極細繊維の直径を1μm以下まで充分分散させることができる。さらに、ポリアクリロニトリル系極細繊維と親和性の高い分散液を用いると、ポリアクリロニトリル系極細繊維の直径を300nm以下まで分散させることも十分可能であり好ましく、100nm以下まで分散させることがより好ましい。
このように混合紡糸繊維を溶出後にそのまま分散させた状態で抄紙し繊維シートを得る方法において、不織布からなるポリアクリロニトリル系繊維シートに、少量のバインダー樹脂を含浸することができる。この場合の樹脂としては、ポリビニルアルコールが好適である。ポリビニルアルコールは接着性、柔軟性、耐熱性に優れた耐炎化繊維シート前駆体を得ることができる。樹脂含浸の手法は特に限定されないが、溶媒可溶性重合体をポリビニルアルコールとし、これを完全に除去させずにわずかに残留させることは工程簡略化の観点から好ましい手法である。
耐炎化に際しては、熱処理前あるいは熱処理工程中で適宜加圧加工を施すことができ、カレンダーロールで加圧処理する場合には1〜500kN/m、平板型プレスの場合には2〜1000MPaの圧力を付与することが、耐炎化繊維シートの平滑性や薄肉化、あるいは均一性向上にとって好ましい。
本発明の耐炎化繊維シート前駆体は実質的にポリアクリロニトリル系繊維のみで構成されるため、公知のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維シート前駆体と同様に耐炎化することができる。耐炎化の条件は特に限定されるものではなく、温度150〜350℃で、空気などの酸化性雰囲気下で熱処理する方法が好ましく採用される。150分以上とすることにより耐炎化を進行させることができ、350℃以下とすることにより耐炎化反応の暴走を抑えることができる。また、処理時間についても、限定されるものではないが、1〜240分とすることが好ましく、1分以上とすることにより耐炎化を進行させることができ、240分以下とすることによりエネルギーコストを低減することができる。この観点から処理時間は5〜120分であることがより好ましい。耐炎化工程での延伸倍率は走行状態や要求特性により適当な値とすることが可能であり、例えば0.80〜1.20の範囲で設定できる。
本発明の目的とする耐炎化繊維シートの代表的な特性値を以下に示す。構成する繊維の平均直径は必要に応じて混合している0.5dtex以上の太繊度繊維を除くと1μm未満であり、好ましくは500nm未満、さらに好ましくは300nm未満であり、1nm以上である。限界酸素指数LOIは45以上、好ましくは50以上、80以下である。単位面積あたりの重量は20〜500g/mである。嵩密度は0.1〜0.8g/cmである。繊維密度は1.35〜1.45g/cmである。
本発明の耐炎化繊維シートは必要に応じて炭素化することができる。炭素化の条件は特に限定されるものではなく、例えば温度1000℃以上の不活性雰囲気下で焼成する炭素化工程を経て、炭素繊維とされる。必要に応じて、耐炎化工程と炭素化工程の間に、温度400〜800℃の範囲にある不活性雰囲気下で焼成する前炭素化工程や、炭素化工程以降に、温度1800〜4000℃の範囲にある不活性雰囲気下で焼成する黒鉛化工程を付加しても良い。各工程での延伸倍率は走行状態や要求特性により適当な値とすることが可能であり、例えば0.80〜1.20の範囲で設定できる。
本発明で得られる耐炎化繊維シートは、燃料電池電極材の構成部材として用いる場合には、熱硬化性樹脂を含浸し不活性気体中で1300℃以上の温度で熱処理させることができる。含浸させる樹脂としては炭化収率の高い樹脂を用いることが好ましく、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、セルロース系高分子化合物等が挙げられる。本発明に用いる熱硬化性樹脂は常温において粘着性、或いは流動性を示すもので、フェノール系樹脂、フラン系樹脂等が好ましく用いられる。フェノール系樹脂としては、アルカリ触媒存在下にフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に、公知の方法によって酸性触媒下にフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する固体の、熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものを用いることが好ましい。フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることもできる。樹脂含浸方法としてはディップ法、ニップ法があり、樹脂を溶剤等に溶かし粘度調整を行い。次いで耐炎繊維シートを樹脂溶液中に浸漬させ、次いで余分な樹脂を絞る方法である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.ポリアクリロニトリル系重合体の重量平均分子量
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、単にGPCという)法により、下記の測定装置および条件を用いて測定したGPC曲線より、分子量分布曲線を求め、Mn,Mwを算出した。
GPC装置:CLASS−LC10(島津)
カラム :TSK−GEL−GMH4(×2)
溶媒 :DMF(0.01N−LiCl)
流速 :1ml/min
温度 :40℃
試料濃度 :0.1重量%
試料濾過 :0.5μ−FHLP FILTER(MILLIPORE)
注入量 : 0.1ml
検出器 :示唆屈折率検出器 RID−10AV(島津)
アクリルニトリル系共重合体の分子量校正曲線は、基準として単分散ポリスチレンを用い、ユニバーサルキャリブレーション法により求めた。
なお、ポリスチレン(PSt)からアクリルニトリル系重合体への分子量変換は、次式の各係数を用いて行った。
[η]=KMa
KPSt=2.606×10−4
aPSt=0.612
KPAN=2.33×10−4
aPAN=0.75
B.ポリアクリロニトリル系極細繊維の平均直径
試料となる繊維をエポキシ樹脂に含浸した後にミクロトームを用いて繊維軸に垂直な面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所、H−7100FA)により繊維外周付近を4万倍の倍率で観察を行い、得られた画像を画像処理ソフト(三谷商事(株)製、Winroof)で円形図形分離を行い、島成分それぞれの面積から円換算径を算出し、50以上のデータ点数を用いて平均直径、およびCV%を求めた。
C.限界酸素指数(LOI)
JIS K 7201:1999 酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に従って測定した。
D.微粉末発生量
300mlのビーカー中に25℃に温度調整した水/エタノール(90/10容量基準)液200mlを入れ、さらにこの溶液に耐炎化繊維シート0.1gをおよそ1cm角に切断して投入し、ラボラン型回転子(30mmL、直径8mm)で10分間撹拌する。その後、撹拌した耐炎化繊維シートをステンレス製金網(8メッシュ)でろ別し、ろ液中の繊維微粉末をメンブレンフィルター(孔径6μm)で分離し、その重量を測定する。この値から耐炎化繊維シート1g当たりの微粉末発生量(mg/g)を算出した。
E.フィルター捕集効率
試験室内の大気のダスト(0.3〜0.5μm)の個数をパーティクルカウンター(リオン株式会社製KC01D1)にて計測し、aとする。繊維シートを通過したダクト内の空気のダスト(0.3〜0.5μm)の個数を上記パーティクルカウンターにて計測し、bとする。次式でフィルター性能(捕集効率)を求めた。
捕集効率(%)=100×(a−b)/a
実施例1
ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなるポリアクリロニトリル系共重合体の濃度21重量%の紡糸原液(A)を得た。重合後、アンモニアガスをpH8.5になるまで吹き込んだ。得られたポリアクリロニトリル重合体の重量平均分子量は14.0万であった。
重合度1700の完全鹸化ポリビニルアルコール(鹸化度99mol%)をジメチルスルホキシドに溶解させ濃度21重量%の紡糸原液(B)を得た。なお、両者の紡糸原液の45℃での粘度比は(A):(B)=1:1.4であった。
紡糸原液(A)10重量部と(B)90重量部をフラスコに投入し90℃のウォーターバス中で30分攪拌し、混合紡糸原液(C)を得た。この紡糸原液を60℃に保温しつつ、直径2mmのシリンジを用い、吐出量0.5mL/minで一旦空気中に吐出し、約8mmの空間を通過させた後、5℃の35%ジメチルスルホキシド水溶液からなる凝固浴に導入して凝固させ、水洗した後、70℃、90℃、98℃の液浴中で、全倍率15倍に延伸し、さらに180℃の加熱ローラーを用いて乾燥緻密化処理を行い、約60dtexの混合紡糸繊維を得た。この繊維を引きそろえ、およそ20000dtexとして、繊維長2mmに切断し、カットファイバーを得た。
ヒーターをセットした50リットルのビーターを用いてこのカットファイバー50gを80℃の水中に逐次投入し、ポリビニルアルコールを溶出すると同時に分散させたところ、15分程度で水分散液を得ることができた。
この分散液を冷却した後、大きさ25cm×25cmで高さ40cmの手漉き抄紙機に投入し、さらに水を追加するとともに、さらに攪拌した。手漉き抄紙機の水を抜き、金網上に残ったサンプルを濾紙に転写して、温度125℃で乾燥処理し濾紙からサンプルを剥離し、さらにカレンダー加工機にて4kN/mで加圧処理した。得られた不織布繊維シートからなるポリアクリロニトリル系繊維シートの目付けは40g/m、厚みは0.19mm、構成する繊維の平均直径は0.20μmであった。
このポリアクリロニトリル系繊維シートを、空気中で初期温度210℃、昇温速度2℃/分で250℃まで20分間熱処理し、耐炎化繊維シートを得た。得られた耐炎化繊維シートのLOIは55、フィルター捕集効率は85%、微粉末発生量は0mg/gであった。
実施例2
実施例1で得られたカットファイバー(A)と、常法により得られた単糸繊度1.3dtex、カット長2mm、イタコン酸共重合率1モル%のポリアクリロニトリル繊維カットファイバー(B)80g((A)と(B)の重量比率5:1)の重量比で80℃の水中に逐次投入し、カットファイバー(A)のポリビニルアルコールを溶出すると同時に分散させた以外は、実施例1と同様にして水分散液を得、実施例1と同様にして繊維シートとした。得られた繊維シートの目付けは120g/m、厚みは0.63mm、構成する繊維の内、極細繊維の平均直径は0.20μmであった。
さらにこれを実施例1と同様にして耐炎化繊維シートとした。得られた耐炎化繊維シートのLOIは55、フィルター捕集効率は89%、微粉末発生量は0mg/gであった。
比較例1
実施例1で得られたカットファイバー(A)に代えて、常法により得られた単糸繊度0.5dtex、カット長2mm、イタコン酸共重合率1モル%のポリアクリロニトリル繊維カットファイバー40gを80℃の水中に逐次投入し、カットファイバー(A)のポリビニルアルコールを溶出すると同時に分散させた以外は、実施例1と同様にして水分散液を得、実施例1と同様にして繊維シートとした。得られた繊維シートの目付けは40g/m、厚みは0.24mm、構成する繊維の平均直径(円断面換算)は7.0μmであった。
さらにこれを実施例1と同様にして耐炎化繊維シートとした。得られた耐炎化繊維シートのLOIは55、フィルター捕集効率は39%、微粉末発生量は0mg/gであった。
比較例2
実施例1でポリアクリロニトリル重合体紡糸原液(A)と完全鹸化ポリビニルアルコール紡糸原液(B)の配合を、紡糸原液(A)60重量部と(B)40重量部とした以外は実施例1と同様にして不織布繊維シートを得た。得られたシートの目付けは55g/m、厚みは0.34mm、構成する繊維の平均直径(円断面換算)は65μmであった。
比較例3
実施例1で得られた混合紡糸繊維を、80℃の水中に導入して20分間ポリビニルアルコール溶出処理を行い、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンおよびアルキレンオキサイド変性シリコーンを含む水エマルジョン系(油剤濃度2.0重量%)の油剤浴を通過させ、180℃の加熱ローラーを用いて乾燥処理を行い、ポリアクリロニトリル系重合体からなる耐炎化繊維前駆体繊維を得た。得られた繊維の平均直径は20μmであった。得られた耐炎化繊維前駆体繊維を、空気中で250℃で20分間熱処理し、耐炎化繊維を得た。得られた耐炎化繊維を引きそろえ、およそ20000dtexとして、繊維長2mmに切断し、カットファイバーを得た。
得られたカットファイバー50gを50リットルのビーターを用いて常温の水中に投入し分散させ、15分程度で処理した。この分散液を用いて実施例1と同様に繊維シートを得た。得られた不織布繊維シートからなるポリアクリロニトリル系繊維シートの目付けは38g/m、厚みは0.32mm、構成する繊維の平均直径は3.0μm、LOIは55、フィルター捕集効率は47%、微粉末発生量は15mg/gであった。
本発明で得られた耐炎化繊維シート前駆体およびその製造方法により、耐炎性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、柔軟性、軽量性に優れ、高精密ろ過性と微粉末繊維の発生の少ない耐炎化繊維シートを得ることができ、耐炎性高性能エアフィルター以外に、火炎の漏れがなく軽量性に優れた耐炎化繊維シートや、断熱材、内装材、建材、什器類、産業資材等に広く活用することができる。また本発明で得られる耐炎化繊維シートはそのまま、あるいは樹脂含浸加工や機能性微粒子加工を施して炭素化することにより、炭素繊維シートを得ることができ、高強度、高弾性率を活かした補強材や、導電性、熱伝導性を活かした電極材として有用である。

Claims (4)

  1. カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル系共重合体からなるポリアクリロニトリル系繊維シートであって、該シートが平均直径1μm未満のポリアクリロニトリル系極細繊維を含んでいることを特徴とする耐炎化繊維シート前駆体。
  2. 該ポリアクリロニトリル系繊維シートが不織布であることを特徴とする請求項1の耐炎化繊維シート前駆体。
  3. カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマー、またはアクリルアミド系モノマーを共重合させたポリアクリロニトリル系共重合体50重量%以下と溶媒可溶性重合体50重量%以上を混合紡糸し、得られる繊維から溶媒を用いて溶媒可溶性重合体を溶出させポリアクリロニトリル系極細繊維を得、引き続き該ポリアクリロニトリル系極細繊維を含むポリアクリロニトリル系繊維シートを製造することを特徴とする耐炎化繊維シート前駆体の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の耐炎化シート前駆体を酸化性雰囲気中で150〜350℃で1〜240分熱処理することを特徴とする耐炎化繊維シートの製造方法。
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