JP6497011B2 - ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維およびそれを用いたシート状物ならびにポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維(以下、「PAN系耐炎化繊維」と称する場合がある)は、ポリアクリロニトリル(PAN)またはその共重合体(PANおよびその共重合体を以下、「PAN系樹脂」と称する場合がある)よりなる繊維(PAN系樹脂からなる繊維を以下、「PAN系繊維」と称する場合がある)を耐炎化(酸化)して得られるものである。PAN系樹脂としては、アクリロニトリルモノマーと、カルボン酸基を有するモノマー、カルボン酸エステル基を有するモノマーまたはアクリルアミド系モノマー等を共重合させたポリマーが挙げられる。このような共重合ポリマーは耐炎化工程での環化が進行しやすくなる点で好ましい。
本発明のPAN系耐炎化繊維は、共連続多孔構造を有する。
また、共連続多孔構造を形成する細孔(以下、細孔という)の平均直径は5〜1,500nmであることが好ましい。細孔の平均直径が大きいほど軽量化や内外均一性が向上する。そのため、細孔の平均直径は10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。一方、細孔の平均直径が小さいほど物性が向上するため、細孔の平均直径は1,000nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
本発明のPAN系耐炎化繊維は、共連続多孔構造を実質的に有しない部分(以下、単に「共連続多孔構造を有しない部分」という場合がある。)を含んでいることも好ましい態様である。共連続多孔構造を実質的に有しない部分とは、“クロスセクションポリッシャ”(登録商標)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)の倍率で観察した際に、1画素以下であることにより明確な細孔(空隙)が観察されない部分が、一辺が後述のX線から算出される構造周期Lの3倍に対応する正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。
PAN系耐炎化繊維は、長繊維であっても、短繊維であってもよい。また断面の形状は、何ら制限されず、丸断面、三角断面などの多葉断面、扁平断面や中空断面など任意の形状とすることが可能である。
S 1 : 織編物面積
S 2 : 織編物面積S 1領域内で織編物を構成する糸が存在しない部分の面積
また、不織布の場合、その形態としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチで得られた不織布が、厚み方向の繊維配向を高いため好ましい。
次に、本発明のPAN系耐炎化繊維の製造方法を説明する。本発明のPAN系耐炎化繊維は、一例として、PAN系樹脂10〜90重量%と消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする相溶化工程と、樹脂混合物を紡糸する紡糸工程と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させる相分離工程と、消失樹脂を除去する消失樹脂除去工程と、PAN系繊維を耐炎化する耐炎化工程とを有するものである。
相溶化工程は、PAN系樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
紡糸工程は、上記相溶化工程において相溶させた樹脂混合物を紡糸し、PAN系繊維とする工程である。本発明においては、PAN系樹脂と消失樹脂が相溶しているため、紡糸の際に安定して口金から吐出することができる。PAN系樹脂と消失樹脂を混合した後、繊維化する手段としては、通常の紡糸方法を採用することが好ましい。紡糸方法は特に限定されず、溶融紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸、エレクトロスピニング等が適用できるが、PAN系樹脂の紡糸性や生産性が優れるという点から、湿式紡糸や乾湿式紡糸が好ましい。湿式紡糸や乾湿式紡糸での溶媒はPAN系樹脂と消失樹脂を溶解する溶媒が好ましく、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
相分離工程は、相溶化工程において相溶させた樹脂混合物を相分離させて微細構造を形成する工程である。
このように得られた繊維は、強度や柔軟性を向上させるために延伸することが好ましい。本発明においては、共連続構造を有しているため均一性があり、安定して延伸することができる。なお延伸は多段で行うことが好ましく、総延伸倍率は目的に応じ適宜調整することができるが約2〜30倍程度が好ましい。なお、延伸工程の前、途中、後で適宜、乾燥、給油、洗浄を行っても良い。また、延伸は後述する耐炎化工程と同時に行うこともできる。
消失樹脂除去工程は、相分離工程において相分離で微細構造を形成させたPAN系繊維から消失樹脂を除去する工程である。工程である。
耐炎化工程は、PAN系繊維に対し耐炎化処理を行う工程である。耐炎化工程は前述の消失樹脂除去工程の前でも後でも良いが、後である方が繊維内外部の耐炎化均一性、消失樹脂の除去性等の点で好ましい。また、前述のように、耐炎化工程において消失樹脂の除去を行ってもよい。すなわち、耐炎化工程は消失樹脂除去工程を兼ねる工程であってもよい。また、繊維の状態で耐炎化処理を行っても良いし、後述するようにシート状等の使用する用途に適した形態にした後、耐炎化処理しても良い。
本発明ではPAN系耐炎化繊維または耐炎化する前の前駆体繊維(消失樹脂除去工程を行う前の繊維を含む)を、通常の製織、製編、不織布加工などによってシート状物として形成することができる。シート化は、紡糸工程以降のいずれの段階においても行うことが可能である。
評価手法
〔共連続多孔構造〕
PAN系耐炎化繊維の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。このとき、孔部と枝部が連続しつつ絡み合った様子が観察された場合、連続多孔構造を有していると判断した。
PAN系耐炎化繊維を試料プレートに挟み込み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料及び二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度2θより、共連続多孔構造の構造周期を下記の式によって得た。
〔平均空隙率〕
PAN系耐炎化繊維を樹脂中に包埋し、その後カミソリ等で断面を露出させ、日本電子製SM−09010を用いて加速電圧5.5kVにて試料表面にアルゴンイオンビームを照射、エッチングを施す。得られた材料の断面を走査型二次電子顕微鏡にて材料中心部を1±0.1(nm/画素)となるよう調整された拡大率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、計算に必要な着目領域を512画素四方で設定し、着目領域の面積A、孔部分の面積をBとして、下記の式で算出されたものを言う。
[実施例1]
70gのイタコン酸を1モル%共重合させたポリアクリロニトリル共重合体(MW15万)と70gのシグマ・アルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(MW4万)、及び、溶媒として400gの和研薬製ジメチルスルホキシド(DMSO)をセパラブルフラスコに投入し、3時間攪拌および還流を行いながら150℃で均一かつ透明な溶液を調整した。このときポリアクリロニトリル共重合体の濃度、ポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ13重量%であった。
ポリビニルピロリドンに変え、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体を用いた以外は実施例1と同様にPAN系耐炎化繊維を作製した。ポリアクリロニトリル共重合体とポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体は相溶せず、得られたPAN系耐炎化繊維には空隙が大小ランダムに形成され、共連続構造は有さず構造周期も確認できなかった。
Claims (5)
- 構造周期が10〜3,000nmの共連続多孔構造を有するポリアクリロニトリル系耐炎化繊維。
- 前記共連続多孔構造を形成する細孔の平均直径が5〜1,500nmである、請求項1に記載のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維。
- 請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維から形成されたシート状物。
- ポリアクリロニトリル系樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする相溶化工程と、
相溶した樹脂混合物を紡糸する紡糸工程と、
紡糸したポリアクリトニトリル系繊維を相分離させる相分離工程と、
消失樹脂を、前記ポリアクリロニトリル系樹脂に溶解せずかつ消失樹脂に溶解する溶媒との接触、加熱または酸化により除去する消失樹脂除去工程と、
耐炎化処理を行う耐炎化工程と
を有するポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の製造方法。 - 前記ポリアクリトニトリル系樹脂と消失樹脂の組み合わせが、スチレン−アクリロニトリル共重合体/ポリフェニレンエーテル、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、またはポリアクリロニトリル/ポリ乳酸である、請求項4に記載のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の製造方法。
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