JP6943194B2 - 芯鞘複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

芯鞘複合繊維およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6943194B2
JP6943194B2 JP2018013227A JP2018013227A JP6943194B2 JP 6943194 B2 JP6943194 B2 JP 6943194B2 JP 2018013227 A JP2018013227 A JP 2018013227A JP 2018013227 A JP2018013227 A JP 2018013227A JP 6943194 B2 JP6943194 B2 JP 6943194B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
core
sheath
superabsorbent polymer
composite fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018013227A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018127754A (ja
Inventor
崇晃 三原
崇晃 三原
祐樹 山下
祐樹 山下
大 近藤
大 近藤
健太郎 田中
健太郎 田中
康作 竹内
康作 竹内
堀口 智之
智之 堀口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JP2018127754A publication Critical patent/JP2018127754A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6943194B2 publication Critical patent/JP6943194B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Multicomponent Fibers (AREA)

Description

本発明は、吸湿性、放湿性並びに静電性に優れる繊維およびその製造方法に関するものである。
繊維は、ロープや魚網といった産業用繊維、衣服を代表される衣料用繊維として、繊維から編物、織物や組物といった様々な形態に加工され、人類社会を支える重要な基礎材料である。
従来の繊維、特に合成繊維は、様々な機能の付与と大量生産性により、その応用範囲を広げてきたが、特に衣料用繊維としては、皮膚が接触した際の感覚、柔軟性、皮膚刺激等を考慮し、快適性を重視した機能付与がなされてきた。中でも吸湿性、放湿性は、衣料用繊維として非常に重要な特性である。合成繊維は、特に吸湿性、放湿性に課題がある場合が多く、種々のアプローチでこれを改善することが試みられてきた。
例えば、特許文献1には、芯部に親水性ポリマーとポリアクリロニトリルを、鞘部にアクリロニトリルを配するランダムな異形断面アクリル繊維に関する記載がされている。
特開平8−337926号公報
特許文献1に記載のアクリル系繊維は、芯部に親水性ポリマーが存在するため、吸放湿性を持つ。しかしながら、衣料用繊維としては、さらなる吸放湿性の向上が求められており、特に、冬季の乾燥した環境でも保水による静電性を得ることができる繊維の創出が課題となっていた。
上記課題を解決するための本発明は、芯部と鞘部からなる芯鞘複合繊維であって、芯部は、水分率2%以上の高吸水性ポリマー(A)を50質量%以上含有し、鞘部が、水分率2%以上の高吸水性ポリマー(B)と、水分率2%未満の低吸水性ポリマーとを含有し、かつ鞘部は、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが共連続構造を形成する共連続構造部分を有する芯鞘複合繊維である。
本発明により、吸放湿性に優れるとともに、静電性にも優れる繊維を提供することができる。
実施例1の芯鞘複合繊維の鞘部における共連続構造部の透過型電子顕微鏡写真である。
<芯鞘複合繊維>
本発明において、高吸水性ポリマーとは、水分率が2.0%以上のポリマーを指す。ここで水分率とは、20℃、湿度65%の時点でポリマーが含有する水分量を元に、80℃、真空環境で24hr以上乾燥した後に測定した基準となるポリマー量を用いて算出した値である。高吸水性ポリマーは、水分率が2.0%以上であるものであれば特に限定されず、従来公知のポリマー、あるいは新規に合成されたポリマーを用いることができるが、熱、溶媒等を用いて可塑化することが可能であるポリマーを用いることが好ましい。熱、溶媒等を用いて可塑化することが可能なポリマーとしては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ビニル系モノマーを重合したポリマーなどを例示することができる。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等を例示することができる。芳香族ポリエステルの数平均分子量は、1万〜6万の範囲であると、成形性、力学特性に優れるため好ましい。
また、脂肪族ポリエステルとしては、飽和ジカルボン酸とジオールとの重縮合により得られるもの、またはヒドロキシカルボン酸を重縮合したものが好適に用いられる。これら重縮合により得られる脂肪族ポリエステルの例として、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)共重合体、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリピバロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコールとコハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸よりなるポリエステルなどが挙げられる。また脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、4〜50万の範囲であると、成形性、力学特性に優れるため好ましい。
ポリエーテルとしては、芳香族ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルを用いることができるが、コストの点からは脂肪族ポリエーテルを用いることが好ましい。脂肪族ポリエーテルの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、中でも最も安価であるポリエチレングリコールを用いることが好ましい。ポリエーテルの分子量は、重量平均分子量で1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、ポリマーとして十分な強度を持つことが可能であるため好ましく、1,000,000以下であると溶媒への溶解性に優れること、粘性が成形しやすい範囲に制御しやすい点から好ましい。
ポリアミドは、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドを例示することができる。芳香族ポリアミドの例としては、アラミドなどを例示することができる。また脂肪族ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66などを例示できる。中でもポリアミド6、ポリアミド66は、耐熱性、力学的特性と価格の面から好適である。ここでポリアミドの分子量は、重量平均分子量で1,000〜500,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、ポリマーとして十分な強度を持つことが可能であるため好ましく、500,000以下であると溶媒への溶解性に優れること、粘性が成形しやすい範囲に制御しやすい点から好ましい。
ビニル系モノマーを重合したポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、アクリレート系ポリマーを例示することができる。これらのうち、ホモポリマーでも親水性を有する、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。ここでビニル系モノマーを重合したポリマーの分子量は、重量平均分子量で1,000〜2,000,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、ポリマーとして十分な強度を持つことが可能であるため好ましく、2,000,000以下であると溶媒への溶解性に優れること、粘性が成形しやすい範囲に制御しやすい点から好ましい。
なお、ここで例示したポリマーのうち、ホモポリマーの水分率が2.0%未満のものは、水分率が2.0%以上となるよう親水性ユニットを共重合したり、親水性基を化学的に導入したりする処理を適宜実施したものを高吸水性ポリマーとして用いてもよい。ここで、親水性ユニットとは、ポリマーの繰り返し単位内であるユニットに極性基を持つものを言う。極性基の例としては、酸性または塩基性を示す基であれば良いが、ヒドロキシル、カルボニルなどの酸素を含有する基、チオール、スルホン酸などの硫黄を含有する基、アミン、アミドなどの窒素を含有する基などを例示することができる。また親水性基を化学的に導入する方法としては、酸または塩基で改質する方法、酸化または還元を利用する方法、加熱を利用する方法、放射線を利用する方法などを例示できる。前記した方法は、1種類または複数種類組み合わせて使用することもできる。
中でも吸水性とコストとのバランスから、吸水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコールを選択することが好ましい。
本発明において、低吸水性ポリマーとは、前記同様に測定される水分率が2.0%未満のポリマーを指す。
低吸水性ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等を例示することができる。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルを例示することができる。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを例示することができる。また脂肪族ポリエステルとしては、飽和ジカルボン酸とジオールとの重縮合により得られるもの、またはヒドロキシカルボン酸を重縮合したものが好適に用いられる。これら重縮合により得られる脂肪族ポリエステルの例として、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)共重合体、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリピバロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコールとコハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸よりなるポリエステルを例示することができる。
ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリドや、これらの変性体などを例示することができる。
また前記に分類されない種々のポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアルキレングリコールや、これらの変性体を例示することができる。
また本発明における低吸水性ポリマーは、コストと力学的強度に代表される物性のバランスから、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリサルフォンを選択することが好ましい。中でもポリアクリロニトリルを選択することが、繊維とした際の物性に優れることから好ましい。
本発明においては、鞘部を構成する高吸水性ポリマーと低吸水性ポリマーは、相溶状態をとることが可能な組み合わせになるものを用いる必要がある。ここでいう「相溶状態」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの相分離構造が観察されない状態をいう。高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーは、ポリマー同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。
複数のポリマーが相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また特に高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものが好適な例として挙げられる。
相溶状態にある高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとは、後述する相分離を誘発した際に、スピノーダル分解型相分離を誘起しやすく、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを少なくとも一部で共連続構造とすることができる。
本発明の芯鞘複合繊維は、高吸水性ポリマー(A)を50質量%以上含有する芯部を有する。高吸水性ポリマー(A)が50質量%以上含有されていると、高い吸湿性と放湿性を有することが可能になる。芯部における高吸水性ポリマー(A)の量は特に限定されないが、100質量%であると、優れた吸湿性、放湿性の機能を発揮できる点で好ましい。一方、99%未満であると、高吸水性ポリマー(A)以外の成分が芯鞘複合繊維の形態を保つ機能を発揮する点で好ましい。高吸水性ポリマー(A)の含有量は、上記観点から適宜選択されるが、55〜95%の範囲であると、吸湿性、放湿性と力学的特性のバランスに優れるため好ましい。ここで高吸水性ポリマー(A)以外の成分は、特に限定されず、低吸水性ポリマーを用いても良いし、低分子量成分であっても良いし、粒子等の別素材であっても良いが、低吸水性ポリマーを用いると、力学的特性の補完効果が大きいため好ましい。
本発明の芯鞘複合繊維の鞘部は、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを含有し、かつ高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが共連続構造を形成する共連続構造部分を有する。このような共連続構造により、高吸水性ポリマー(B)の連続相が水透過のパスとして機能することで吸湿性、放湿性を担保することができるとともに、低吸水性ポリマーの連続相が力学特性の向上に寄与することで、吸放湿性、静電製と耐久性を両立することができる。また、海島状相分離等の共連続以外の分散状態よりも、高吸水性ポリマー(B)相と低吸水性ポリマー相が受けた力を相互に支えあう構造となるため、力学的特性を飛躍的に向上させることが可能になる。特に、高吸水性ポリマー(B)が海、低吸水性ポリマーが島を形成している海島状相分離構造を有する態様と比較して、非常に高い耐久性を示すことができ、特に繰り返して使用される洗濯耐久性が飛躍的に向上することから、吸湿性、放湿性といった特性を安定して長期間使用することが可能になる。更には、後工程で染色等の後加工を実施する際にも、後加工で使用する染料、顔料やpH調整剤等の薬剤が、高吸水性ポリマー(B)または低吸水性ポリマーのいずれか浸透しやすい経路により、芯鞘複合繊維に効率よく充填される効果も得られることから、後加工における自由度が高くなる。
高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが共連続構造を形成している、とは、超薄切片を作成し、必要に応じて電子染色を施した後に透過型電子顕微鏡で三次元構造を観察した際、またはX線CT、FIBによるスライスアンドビュー法など、三次元構造を観察した際に、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとがそれぞれ連続していることが確認できる状態を言う。またこの際、観察領域の端部に存在する欠損箇所については、これを含めない。欠損箇所は、観察領域の端部に存在するため、見かけ上粒子等のように観察される場合がある。また三次元構造を観察する際、コンピュータ上で高吸水性ポリマー(B)または低吸水性ポリマーのいずれか1種類のポリマーを透過状態として回転、拡大、縮小等して観察すると、連続した状態を観察しやすく、好ましい。
鞘部における共連続構造は、構造周期を有していることが好ましく、その場合構造周期は0.005μm〜20μmであることが好ましい。ここで、共連続構造の構造周期とは、本発明の芯鞘複合繊維試料に対して、X線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度θより、下記の式で算出されるものである。また構造周期が1μmを超え、X線の散乱ピークが観測できない場合には、適宜電子染色等を施した後、X線CT法によって芯鞘複合繊維試料の共連続構造部分を三次元撮影し、フーリエ変換を行ってスペクトルを得て、同様に構造周期を算出する。つまり本発明でいうスペクトルとは、X線散乱法、またはX線CT法からのフーリエ変換によって得られる1次元の散乱角度と散乱強度の関係を示すデータである。構造周期の値は、共連続構造が配向した材料である場合には、測定する方向によって構造周期の値が変化する場合があるが、いずれかの方向で測定した際に、構造周期が上記範囲に入るものであればよい。
Figure 0006943194
構造周期:L、λ:入射X線の波長
0.005μm以上の構造周期を有する相分離構造を有していれば、共連続構造を形成する高吸水性ポリマー(B)、低吸水性ポリマー双方が持つ特性を十分に引き出すことが可能になり、吸湿性、放湿性と力学特性のバランスに優れた芯鞘複合繊維を得られる。また、相分離部分が20μm以下の構造周期であれば、構造体として欠陥が少なく、力学的に優れた材料とすることが可能になる。構造周期の値は、用途に合わせて任意に選択することができる。
本発明の芯鞘複合繊維における鞘部は、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが相溶状態で固定化された相溶部分を含むことが好ましい。相溶状態で固定化されている、とは、互いに分散した高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーが、1nm以下の領域で混合され、分散された状態であることをいう。相溶状態で固定化されていることは、必要に応じて電子染色した芯鞘複合繊維の鞘部を超薄切片法またはFIB法で透過型電子顕微鏡観察した場合に、明確なコントラストが存在せず、1nmより大きいドメインが観察されないことにより確認できる。また相溶部分とは、後述の相分離部分の構造周期Lの3倍の長さを一辺とする正方形の領域以上の面積で相溶状態が観察される部分を意味する。
相溶部分が高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを含むことは、相溶部分を表面とした試料を準備し、TOF−SIMSを用いてフラグメントを分析した際に、前述の高吸水性ポリマー(B)および低吸水性ポリマーのセグメント由来の成分が検出された場合に、相溶部分が高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを含んでいると判断できる。
異種のポリマーは、通常はポリマーの界面において、単位面積当たりでは弱い相互作用しか示さない。しかし、このように高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーが相溶状態で固定化されていると、両者の界面積が非常に大きくなって全体として高い接着性を発揮し、材料全体の強度およびじん性が高まる。また、特に耐薬品性の低い高吸水性ポリマー(B)は、相溶状態で固定化されていることで溶解を抑えることが可能になり、長期間にわたって安定した機能を維持することが可能となる。すなわち、耐薬品性の低い高吸水性ポリマー(B)の分子鎖が、低吸水性ポリマーに非常に狭い範囲で拘束されているため、当該耐薬品性の低い高吸水性ポリマー(B)の分子鎖の運動性を制限する。従って、溶媒によって膨潤すると、当該耐薬品性の低い高吸水性ポリマー(B)は粘度が非常に大きくなったいわゆるゲル状態で固定化されるため、溶解しにくく耐久性の高い芯鞘複合繊維が得られる。
相溶部分は、鞘部の表面を覆う形態や海島状に分散した形態など、鞘部中でどのような形態で存在しても構わないが、鞘部の表面の少なくとも一部を覆うように存在すると、吸放湿性、静電性を長期間にわたって維持することができるため好ましい。この態様において、相溶部分による鞘部表面の被覆率は特に限定されるものではないが、表面積のうち1%以上が相溶部分で覆われていれば耐久性を十分に高めることが可能である。耐久性を更に高める観点から、表面積のうち5%以上の面積が相溶部分で覆われていることが好ましく、20%以上が覆われていることがより好ましく、50%以上が覆われていることが更に好ましい。
また相溶部分の厚みは特に限定されないが、薄いほど水の拡散抵抗が下がるため吸放湿速度が向上し、また厚いほど耐久性が高まるため好ましい。このことから相溶部分の厚みは、0.05〜50μmの範囲であると前記特性をバランスさせることができ、好ましい。
なお、鞘部には、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマー以外に、前記特性を損なわない範囲で、他の添加剤を併用することもできる。添加剤の例としては、染料、顔料、滑材、充填材、導電助剤などを挙げることができる。
本発明の芯鞘複合繊維における芯部と鞘部の比率は、任意に決定することができるが、芯部の比率が高いと芯鞘複合繊維としての吸湿性を高いレベルに保つことが可能であることから好ましく、鞘部の比率が高いと芯鞘複合繊維としての耐久性を高めることができることから好ましい。これらのバランスから、繊維断面における芯部の面積比率は3%〜95%の範囲であることが好ましく、10〜80%の範囲であるとより好ましく、20〜70%の範囲であると更に好ましい。
本明細書において、繊維とは、平均直径に対して平均長さが100倍以上のものを指す。本発明の芯鞘複合繊維は、フィラメント、長繊維であっても、ステープル、短繊維、チョップドファイバー、ミルドファイバーであっても良い。また断面の形状は、何ら制限されるものではなく、丸断面、三角断面等の多葉断面、扁平断面やS字断面、十字断面、中空断面など任意の形状とすることが可能である。
更に、本発明の芯鞘複合繊維により、繊維の柔軟性を活かした繊維構造物、例えば織物、編物、組物などを形成することも可能である。また、このとき他の繊維素材、例えば天然繊維、合成繊維、半合成性繊維や再生繊維、無機繊維との複合も好適である。天然繊維の例としては、綿、麻などの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、石綿などの鉱物繊維を挙げることができる。合成繊維の例としては、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの繊維を挙げることができる。また半合成繊維の例としては、アセテートなどを挙げることができる。再生繊維の例としては、レーヨン、キュプラなどを挙げることができる。無機繊維の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、SiC繊維などを挙げることができる。
これら他の繊維素材は、長繊維でも短繊維でも構わないが、長繊維である場合には、長繊維状とした本発明の芯鞘複合繊維を巻き取る際に、長繊維同士を合一させて巻き取ることで複合化させることが好ましい。長繊維同士の複合化によって、長繊維が持つ強度や柔軟性を活かした構造体とすることが可能になる。また他の繊維素材が短繊維であれば、短繊維とした本発明の芯鞘複合繊維とともに、短繊維同士を混合、紡績して繊維化することも好ましい。
こうして得られた繊維構造物は、外衣、内衣、下着などの衣類、カーシート、エアバッグ、シートベルトなどの自動車内装材料、床敷材、寝具、カーテンなどのインテリア材料、漁網、ロープなどの産業用資材等として利用することも好ましい。特に本発明の芯鞘複合繊維は、外衣、内衣、下着などの衣類に用いることで、吸湿性、放湿性や静電性といった機能を実感しやすいため好ましい。
<芯鞘複合繊維の製造方法>
本発明の芯鞘複合繊維は、一例として、一定の条件下で相溶する高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相溶させてポリマーアロイとする相溶化工程と、相溶した状態のポリマーアロイを鞘部、高吸水性ポリマー(A)を芯部とする繊維を紡糸する紡糸工程と、紡糸した繊維の鞘部の高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相分離させ、固定化する相分離工程とを有する製造方法により製造することができる。
あるいは、他の例として、一定の条件下で相溶する高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相溶させてポリマーアロイとする相溶化工程と;
相溶した状態のポリマーアロイを鞘部、高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーを芯部とする繊維を紡糸する紡糸工程と;
紡糸した繊維の鞘部の高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相分離させ、固定化する相分離工程と;
化学的処理を行い、高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーに高吸水性を付与して高吸水性ポリマー(A)とする高吸水性付与工程と;
を有する芯鞘複合繊維の製造方法によっても製造することができる。

〔相溶化工程〕
相溶化工程は、一定の条件下で相溶する高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを相溶させた状態のポリマーアロイとする工程である。ここでいう「相溶させた状態」とは、光学顕微鏡で高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの相分離構造が観察されない状態をいう。相分離構造とはいわゆる海島構造や海島の島内に更に海島構造を形成するサラミ構造などのように、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが互いにほぼ全てが混和せず、何らかの構造が見られる状態を指す。高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーは、ポリマー同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。
「一定の条件下で相溶する」とは、混合する複数のポリマーの重量分率や、温度、溶媒等の条件を調整すれば、いずれかの条件で相溶状態となり得ることを意味する。複数のポリマーが相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また特に高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発される組み合わせが好適な例として挙げられる。
高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを混合する方法については限定されるものではなく、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式のミキサーや、スクリューによる混練押出機などが挙げられる。
また高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを混合する際の温度(混合温度)を、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーが共に軟化する温度以上とすることも好ましい態様である。ここで軟化する温度とは、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーが結晶性高分子であれば融点、非晶性樹脂であればガラス転移点温度である。混合温度を高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーが共に軟化する温度以上とすることで、両者の粘性を下げられるため、より効率の良い攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されるものではないが、熱分解によるポリマーの劣化を防止し、品質に優れた芯鞘複合繊維を得る観点から、400℃以下であることが好ましい。
高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの混合割合は、使用する材料の相溶性を考慮して設定すべきであるが、一般的には高吸水性ポリマー(B)が10〜90質量%に対し低吸水性ポリマーが90〜10質量%となるように相溶させることが好ましい。また、ポリマー同士の相溶性は組成比が1対1に近づくにつれて悪化する傾向があるため、相溶しにくい系を原料に選択した場合には、高吸水性ポリマー(B)の量を増やす、減らすなどして、いわゆる偏組成に近づけることで相溶性を改善することが好ましい。
高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを混合する際に、溶媒を添加することも好ましい態様である。溶媒を添加することで、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの粘性が下がり、相溶しやすくなるとともに、成形も容易となる。ここでの溶媒も特に限定されるものではなく、高吸水性ポリマー(B)又は低吸水性ポリマーのうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であるものであれば良く、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーをいずれも溶解するものであれば、両者の相溶性を向上させることが可能となるためより好ましい態様である。溶媒の添加量は、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの合計重量に対して20質量%以上であることが好ましい。また一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーの合計重量に対して90質量%以下であることが好ましい。
〔紡糸工程〕
紡糸工程は、相溶化工程において相溶した状態のポリマーアロイを鞘部、高吸水性ポリマー(A)あるいはその原料ポリマーを芯部とする繊維を紡糸する工程である。高吸水性ポリマー(A)としては、鞘部に使用する高吸水性ポリマー(B)と同じポリマーを用いてもよいし、異なるポリマーを用いてもよく、用途に応じて適宜選択できる。
高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーとは、芯鞘複合繊維を紡糸した後に、化学的処理によって高吸水性を付与することにより、高吸水性ポリマー(A)に変換し得るポリマーである。ここで化学的処理としては、酸やアルカリといった薬品を用いる方法、電子線、γ線などの放射線を利用する方法など、原料ポリマーの種類に応じて適宜選択される。
紡糸方法としては従来公知の方法を適宜選択することができるが、相分離を誘発する方法に応じて選択されることが好ましい。従来公知の紡糸方法としては、溶融紡糸法、溶液紡糸法が挙げられる。中でも溶液紡糸法には、乾式紡糸法、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法が挙げられる。また溶融紡糸法あるいは溶液紡糸法の一部として電界紡糸法を選択することもできる。
ポリマーアロイと高吸水性ポリマー(A)は、それぞれが鞘部と芯部となるように吐出される。吐出する方法としては、予め口金内で流路を限定し、芯部と鞘部とを合流してから吐出する方法や、二重管口金を用いて外周部にポリマーアロイ、内部に高吸水性ポリマー(A)を吐出する方法、先に芯部を形成した後にノズルを用いて鞘部を形成する方法など、公知の方法を用いることができる。
〔相分離工程〕
相分離工程は、鞘部の高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相分離させ、固定化する工程である。
混合された高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーを相分離させる方法は特に限定されるものではなく、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法、化学反応を用いて相分離を誘発する反応誘起相分離法や、光、圧力、剪断、電場、磁場の変化を利用して相分離を起こす方法等が挙げられる。なかでも熱を利用する、非溶媒を添加して相分離を起こす手法が、相分離構造やサイズを制御することが比較的容易であるため好ましい。
特に、相溶部分を効率的に形成するためには、急激な場の変動を工程中に導入することが好ましい。急激な場の変動を伴う工程が存在することで、急速な相分離を誘発して、ポリマー材料中に高効率に相溶部分を形成させることが可能になる。
ここで、場の変動とは、相分離を誘発する熱、濃度(非溶媒)、光、圧力、剪断、電場、磁場などの変化を指す。これらの変化は単独で行っても複数を組み合わせて行っても良い。場の変動は、例えば溶媒浴により引き起こすことができ、より具体的には高温で吐出された流動化されたポリマーアロイを冷却された溶媒浴に導入することや、逆に低温で吐出された流動化されたポリマーアロイを高温に保たれた溶媒浴に導入することが挙げられる。また溶媒浴以外には、キャスティングドラム、空気、窒素などの気体を吹き付ける方法なども好適に用いられる。
また、急激な場の変動とは、流動化されたポリマーアロイの流動方向に沿って、10cmの範囲である場の値が10%以上変化することを示す。例えば、温度であれば、0cmの位置で100℃であった場の温度が、10cmの位置で90℃以下または110℃以上変動することを言う。また同様に濃度であれば、0cmの位置で溶媒Aが0%、すなわち空気雰囲気であり、10cmで溶媒Aが100%の雰囲気である場合などが該当する。場の値の変化率は、大きいほど実質的に高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが相溶した部分を形成させやすくなるため30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。
具体的には、溶融紡糸法を選択した場合には、口金面から10cmでの雰囲気温度が、吐出前の温度よりも10%以上冷却あるいは加熱される状態とすることが、また溶液紡糸法を選択した場合には、口金から吐出後、10cm以内に溶媒以外の液体に接触するか、あるいは雰囲気温度が吐出前よりも10%以上低下する状態とすることが、相溶部分が鞘部の表面を覆うように形成されやすいことから、特に好ましい。
紡糸工程において溶融紡糸法あるいは溶液紡糸法を選択した場合には、口金から吐出された複合ポリマーを温度、湿度を制御した空気を用いて冷却して相分離を誘発する方法や、水分や溶媒蒸気を含む気体にて非溶媒の効果により相分離を誘発する方法、水浴、溶媒浴などに導いて相分離させる方法が、工程の自由度が高いため好ましい。
また繊維状の形態が得られた後に、適宜延伸することも好ましい。延伸によって分子が繊維軸方向に配向することで、繊維としての強度、弾性率を高めることが可能になる。延伸の方法については特に限定されず、従来公知の方法を用いることが可能であるが、加熱したローラー間で延伸する方法、液浴を用いて延伸する方法、加熱されたスリットの間を通して延伸する方法などを例示することができる。
〔高吸水性付与工程〕
高吸水性付与工程は、鞘部に高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーを用いた場合において、当該原料ポリマーに化学的処理により高吸水性を付与する工程である。高吸水性付与工程は、通常相分離工程の後に行なわれる。このような化学的処理としては、原料ポリマーの種類に応じ、紡糸工程の説明中で述べた方法を用いることができる。特に酸やアルカリを用いた処理を行う場合には、液浴に酸やアルカリの溶液を満たして、相分離工程後の繊維を浸漬することで処理することが好ましい。処理温度は、芯鞘複合繊維を構成する他ポリマーの特性を大きく損ねない範囲で適宜選択できるが、300℃未満の温度が好ましい。
〔熱処理工程〕
更に得られた繊維に対して熱処理を行うことで、寸法安定性を付与することもできる。熱処理温度は、低吸水性ポリマーのガラス転移点温度以上の温度であることが、熱処理による寸法安定性付与の効率が良いことから好ましい。また更に低吸水性ポリマーが結晶性ポリマーである場合には、結晶化温度以上かつ融点以下の温度で熱処理を施すことで、低吸水性ポリマーの結晶化によって、より寸法変化の少ない繊維を得ることが可能になる。熱処理温度の上限は特に限定されないが、低吸水性ポリマーが非晶性樹脂である場合には400℃以下、結晶性樹脂である場合は融点以下の温度であると、熱処理に伴う低吸水性ポリマーの分解や流動化を抑止して、糸切れや着色のない繊維を得ることが可能になるため好ましい。熱処理は、従来公知の方法で実施できるが、加熱ロールに接触させる方法、ロール間に設置した液浴、接触式ヒーター、非接触式ヒーターによって加熱する方法のうち、コスト、熱処理効率等を勘案して適宜選択することが好ましい。また熱処理は、前記した方法のうち1つ以上を選択して、前記温度範囲内で複数回実施することも好ましい。
以下に本発明の好ましい実施の例を記載するが、これら記載は何ら本発明を制限するものではない。
評価手法
〔共連続構造〕
本発明の芯鞘複合繊維を超薄切片法により電子顕微鏡観察が可能な状態とし、必要に応じて電子染色を施した。得られた観察用試料について、電子線トモグラフィー法により三次元構造を観察した。
〔共連続構造の構造周期〕
本発明の芯鞘複合繊維を試料プレートに挟み込み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料及び二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度θより、共連続構造の構造周期を下記の式によって得た。
Figure 0006943194
構造周期:L、λ:入射X線の波長
〔相溶部分〕
芯鞘複合繊維を超薄切片として、必要に応じて電子染色を施し、これを透過型電子顕微鏡で観察した。得られた画像から、1nmより大きい相分離状態が観察されない部分が、一辺が相分離部分の構造周期Lの3倍となる領域以上にわたって観察される部分を、相溶部分と判断した。
またTOF.SIMS 5(ION−TOF社製)を用いて1次イオンとしてBi3 2+を相溶部分に照射し、正負の2次イオンを分析して、あらかじめ分析しておいた高吸水性ポリマー(B)及び低吸水性ポリマーの、それぞれに由来する成分が検出されることで、相溶部分であるかを判断した。
〔吸湿性〕
芯鞘複合繊維を25℃、湿度65%で24時間以上放置して重量W0を測定する。その後、50℃に設定した真空乾燥機で24時間の乾燥を行い、重量W1を測定する。得られたW0、W1から、吸湿性R(%)を、
R(%)=(W0−W1)/W1×100
の式により算出した。
〔芯鞘比率〕
芯鞘複合繊維の断面を顕微鏡で観察し、芯部の面積をA、鞘部の面積をBとして、A/(A+B)×100(%)として芯比率を算出した。
[実施例1]
高吸水性ポリマー(A)として75gのポリビニルアルコール(PVA)(MW2.5万)と425gのジメチルスルホキシド(DMSO)を混合し、均一かつ透明な溶液1を調製した。
また高吸水性ポリマー(B)として37.5gのポリビニルピロリドン(PVP)(MW4万)、低吸水性ポリマーとして37.5gのポリアクリロニトリル(PAN)(MW15万)と、溶媒として425gのDMSOとをセパラブルフラスコに投入し、攪拌および還流を行いながら均一かつ透明な溶液2を調製した。このときポリアクリロニトリルの濃度、ポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ7.5質量%であった。
得られた溶液1を芯部、溶液2を鞘部として、溶液1と溶液2の吐出比を1:1として口金から凝固浴へ吐出して導き、その後ロールにて引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
得られた原糸を水洗して乾燥することで、芯鞘複合繊維を得た。
得られた繊維は透明であり、柔軟性を保っていた。また吸湿性は、8.9%であり、優れた吸湿性を示した。また、繊維の表面全体に相溶部分が形成されており、その最大厚みは6μmであった。更に三次元構造を観察した結果、図1に示すように、鞘部の相分離部分には共連続構造が形成されていた。また、相分離部分の構造周期は0.24μmであった。また相溶部分をTOF−SIMS分析したところ、ポリアクリロニトリルとポリビニルピロリドンのそれぞれに由来する成分が検出された。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例2]
高吸水性ポリマー(A)をポリビニルピロリドン(MW4万)へ変更した以外は実施例1と同様の方法で芯鞘複合繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例3]
高吸水性ポリマー(A)をポリエチレングリコール(PEG)(MW4万)へ変更した以外は、実施例1と同様の方法で芯鞘複合繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[比較例1]
溶液1を用いず、溶液2のみを用いて単独の口金から吐出して紡糸を行った以外は、実施例1と同様の方法で繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[比較例2]
溶液1を用いず、溶液2の高吸水性ポリマー(B)を用いず、低吸水性ポリマーを75gに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[比較例3]
高吸水性ポリマー(B)を用いず、低吸水性ポリマーを75gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で芯鞘複合繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例4]
高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーとして75gのポリ酢酸ビニル(PVAc)(MW2.5万)と425gのジメチルスルホキシド(DMSO)を混合し、均一かつ透明な溶液1を調製した。
また高吸水性ポリマー(B)として37.5gのポリビニルピロリドン(MW4万)、低吸水性ポリマーとして37.5gのポリアクリロニトリル(MW15万)と、溶媒として425gのDMSOとをセパラブルフラスコに投入し、攪拌および還流を行いながら均一かつ透明な溶液2を調製した。このときポリアクリロニトリルの濃度、ポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ7.5質量%であった。
得られた溶液1を芯部、溶液2を鞘部として、溶液1と溶液2の吐出比を1:1として口金から凝固浴へ吐出して導き、その後ロールにて引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
得られた原糸を水洗して乾燥した後、水酸化ナトリウム溶液中で鹸化反応を行い、再び水洗、乾燥することで芯鞘複合繊維を得た。
得られた繊維は透明であり、柔軟性を保っていた。また吸湿性は、7.7%であり、優れた吸湿性を示した。また、繊維の表面全体に相溶部分が形成されており、その最大厚みは6μmであった。更に三次元構造を観察した結果、図1に示すように、鞘部の相分離部分には共連続構造が形成されていた。また、相分離部分の構造周期は0.24μmであった。また相溶部分をTOF−SIMS分析したところ、ポリアクリロニトリルとポリビニルピロリドンのそれぞれに由来する成分が検出された。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例5]
高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーとして75gのセルロースアセテート(CA)(MW2万)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で芯鞘複合繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
Figure 0006943194

Claims (11)

  1. 芯部と鞘部からなる芯鞘複合繊維であって、
    前記芯部は、水分率2%以上の高吸水性ポリマー(A)を50質量%以上含有し、
    前記鞘部が、水分率2%以上の高吸水性ポリマー(B)と、水分率2%未満の低吸水性ポリマーとを含有し、
    かつ前記鞘部は、前記高吸水性ポリマー(B)と前記低吸水性ポリマーとが共連続構造を形成する共連続構造部分を有する芯鞘複合繊維。
  2. 前記鞘部における共連続構造の構造周期が0.005〜20μmである、請求項1記載の芯鞘複合繊維。
  3. 前記鞘部が、さらに、前記高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとが相溶状態で固定化された相溶部分を有する、請求項1または2に記載の芯鞘複合繊維。
  4. 前記相溶部分が、前記鞘部の表面の少なくとも一部を覆うように存在する、請求項3に記載の芯鞘複合繊維。
  5. 繊維の表面積のうち50%以上が前記相溶部分で覆われている、請求項4に記載の芯鞘複合繊維。
  6. 前記高吸水性ポリマー(A)および高吸水性ポリマー(B)が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群より選択されるポリマーである、請求項1〜5のいずれかに記載の芯鞘複合繊維。
  7. 前記低吸水性ポリマーがポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルおよびポリサルフォンからなる群より選択されるポリマーである、請求項1〜6のいずれかに記載の芯鞘複合繊維。
  8. 維断面における芯部の面積比率が3%〜95%である、請求項1〜7のいずれかに記載の芯鞘複合繊維。
  9. 一定の条件下で相溶する高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相溶させてポリマーアロイとする相溶化工程と;
    相溶した状態のポリマーアロイを鞘部、高吸水性ポリマー(A)を芯部とする繊維を紡糸する紡糸工程と;
    紡糸した繊維の鞘部の高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相分離させ、固定化する相分離工程と;
    を有する芯鞘複合繊維の製造方法。
  10. さらに、前記相分離工程を経た繊維に熱処理を行う熱処理工程を有する、請求項9に記載の芯鞘複合繊維の製造方法。
  11. 一定の条件下で相溶する高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相溶させてポリマーアロイとする相溶化工程と;
    相溶した状態のポリマーアロイを鞘部、高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーを芯部とする繊維を紡糸する紡糸工程と;
    紡糸した繊維の鞘部の高吸水性ポリマー(B)と低吸水性ポリマーとを相分離させ、固定化する相分離工程と;
    化学的処理を行い、高吸水性ポリマー(A)の原料ポリマーに高吸水性を付与して高吸水性ポリマー(A)とする高吸水性付与工程と;
    を有する芯鞘複合繊維の製造方法。
JP2018013227A 2017-02-08 2018-01-30 芯鞘複合繊維およびその製造方法 Active JP6943194B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017020960 2017-02-08
JP2017020960 2017-02-08

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018127754A JP2018127754A (ja) 2018-08-16
JP6943194B2 true JP6943194B2 (ja) 2021-09-29

Family

ID=63173663

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018013227A Active JP6943194B2 (ja) 2017-02-08 2018-01-30 芯鞘複合繊維およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6943194B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7253907B2 (ja) * 2018-11-30 2023-04-07 東洋紡せんい株式会社 紡績性及び吸放湿性に優れた紡績糸及び織編物

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10314555A (ja) * 1997-05-21 1998-12-02 Asahi Chem Ind Co Ltd ポリアクリロニトリル系膜
JPH1170326A (ja) * 1997-06-20 1999-03-16 Asahi Chem Ind Co Ltd ポリアクリロニトリル系膜
JP2004293011A (ja) * 2003-03-28 2004-10-21 Toray Ind Inc 吸湿性芯鞘アクリル系繊維およびその製造方法
JP6497011B2 (ja) * 2014-09-19 2019-04-10 東レ株式会社 ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維およびそれを用いたシート状物ならびにポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018127754A (ja) 2018-08-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
He et al. Fabrication of drug‐loaded electrospun aligned fibrous threads for suture applications
CN106435822B (zh) 获自磺基聚酯的水可分散的多组分纤维
TWI639737B (zh) 具有提昇之可逆熱性質之多成分纖維及其織物
CN106460239B (zh) 具有改进的可分散性的聚合物纤维
Tohidi et al. Preparation and characterization of poly (lactic‐co‐glycolic acid)/chitosan electrospun membrane containing amoxicillin‐loaded halloysite nanoclay
An Tran et al. Melt spinning of biodegradable nanofibrillary structures from poly (lactic acid) and poly (vinyl alcohol) blends
WO2015129488A1 (ja) 多孔質炭素材料、炭素材料強化複合材料、多孔質炭素材料プリカーサ、多孔質炭素材料プリカーサの製造方法、及び多孔質炭素材料の製造方法
KR101510589B1 (ko) 항균성을 갖는 ptfe 나노섬유 차폐막 및 그 제조 방법
Lee et al. Preparation and characterization of poly (vinyl alcohol) nanofiber mats crosslinked with blocked isocyanate prepolymer
Xi et al. Silk fibroin coaxial bead-on-string fiber materials and their drug release behaviors in different pH
JP6943194B2 (ja) 芯鞘複合繊維およびその製造方法
Ma et al. Improving the hydrolysis resistance of poly (lactic acid) fiber by hydrophobic finishing
Korkmaz Memiş et al. Production of thermal and water responsive shape memory polyurethane nanocomposite filaments with cellulose nanowhisker incorporation
KR20190067763A (ko) 폴리머 얼로이 섬유 및 그것으로 이루어지는 섬유 구조체
Bonakdar et al. Highly porous biobased membranes via electrospinning of PBS and CTAB
JP5204149B2 (ja) 抗菌性及び抗カビ性を有するポリエステル繊維及びその製造方法
KR102184471B1 (ko) 유기 수지 무권축 스테이플 파이버
Tajima et al. Fabrication and characterization of poly‐γ‐glutamic acid nanofiber
Mao et al. Properties of aligned poly (L‐lactic acid) electrospun fibers
KR101316765B1 (ko) 자외선 차단성 폴리아마이드 조성물 및 이를 이용한 섬유
JP6116503B2 (ja) 炭素繊維用サイジング剤及びその用途
JP6617399B2 (ja) ポリマー材料
Draczyński et al. The influence of forming conditions on the properties of the fibers made of chitin butyryl‐acetic copolyester for medical applications
JP5437472B2 (ja) 抗菌性及び抗カビ性を有するポリエステル繊維及びその製造方法
JP4284058B2 (ja) ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201109

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210729

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210810

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210823

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6943194

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151