JP2012174521A - 金属部材およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐腐食性に優れた金属部材を提供すること。
【解決手段】本発明により提供される金属部材200は、金属製の表面を有する基材210上に耐腐食性の保護層220が設けられた構成を有する。保護層220は、基材210の表面に含まれる金属元素Lに化学結合したトリアジンチオール誘導体を含む。そのトリアジンチオール誘導体は、金属元素Mのイオンにより架橋されたネットワーク構造を形成している。本発明によるとさらに、かかる金属部材200を用いたリチウムイオン二次電池が提供される。
【選択図】図4

Description

本発明は、耐腐食性の保護層を有する金属部材と、その利用に関する。
銅やアルミニウム等の金属から形成された部材は、各種分野において広く利用されており、その耐久性(耐腐食性等)は、該部材を含む製品の耐久性に影響し得る。かかる金属部材を含む製品の一例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な正負の電極と、それら両電極間に介在された電解質とを備え、電解質のリチウムイオンが両電極間を行き来することにより充放電を行う。リチウムイオン二次電池に関する技術文献として、特許文献1が挙げられる。防錆処理が施された金属部材に関する技術文献として、特許文献2が挙げられる。
特開2002−216741号公報 特開平10−195345号公報
ところで、一般的なリチウムイオン二次電池では、その電解質(六フッ化リン酸リチウム(LiPF)や四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)等)が、該電池内部に混入した水分と反応して、フッ化水素(HF)等の酸を発生させる場合がある。このように、酸が発生または存在し得る系に金属部材が配置された製品では、該金属部材の腐食によって製品性能が低下することがある。例えば、リチウムイオン二次電池においては、その端子部(特に銅製の負極端子部)が酸に侵されて錆びてしまうことがあった。かかる端子部の耐腐食性を向上し、電池の耐久性を高める手段として、該端子部表面に樹脂を含む被膜を付与する方法が知られている。しかしながら、これら表面処理が施された金属部材であっても、HF等の酸に対して十分な耐腐食性が実現されない場合があった。
本発明は、耐腐食性(耐酸性)に優れた金属部材を提供することを一つの目的とする。本発明の他の目的は、かかる金属部材を用いたリチウムイオン二次電池の提供である。さらに他の目的は、かかる金属部材を製造する方法を提供することである。
本発明によると、金属製の表面を有する基材と、該基材の表面に設けられた保護層(防錆層)と、を備えた金属部材が提供される。その保護層は、トリアジンチオール誘導体と、金属元素Mのイオン(以下、単にMイオンと称することもある。)と、を含む。そのトリアジンチオール誘導体は、上記基材表面に含まれる金属元素Lと化学結合している。上記保護層は、複数のトリアジンチオール誘導体がMイオンによって架橋されたネットワーク構造を形成している。換言すれば、上記保護層は、上記Mイオンによって(典型的には、該Mイオンが配位することにより)架橋された複数のトリアジンチオール誘導体から形成されたネットワーク構造を有する被膜であって、それら複数のトリアジンチオール誘導体の少なくとも一部が上記基材中の金属元素Lと化学結合(典型的にはメルカプチド結合)することによって該基材に固定されている。
ここに開示される金属部材の保護層は、化学結合によって基材表面に強固に固定され、且つトリアジンチオール誘導体がMイオンによって架橋されてなる膜構造を有する。かかる構造の保護層は、Mイオンによる架橋により膜構造の緻密性が向上されているので、HF等の酸が透過し難く、該金属部材表面に優れた耐腐食性を付与し得る。かかる金属部材は、酸(典型的にはHF)が発生または存在し得る環境において用いられる金属部材として好適である。
好ましい一態様では、上記金属元素Mが銅(特に銅(II)イオンとして)である。他の好ましい一態様では、上記金属元素Lが銅である。さらに他の好ましい一態様では、上記金属元素L,Mのいずれもが銅である。かかる態様の金属部材は、例えば、リチウムイオン二次電池の負極端子部を構成する部材として好ましく使用され得る。ここで「端子部」とは、電池のうち正極または負極の活物質から電池外部に至る電流経路を構成する部分をいい、典型的には、その表面に活物質が保持されておらず且つ電池ケースの内部に位置する部分(換言すれば、電解液や電池ケース内のガスに直接接触し得る部分)を指す。シート状の集電体に活物質が保持された形態を有する正負の電極シートを重ね合わせて捲回してなる電極体を備え、それら集電体にそれぞれ接続された正負の電極端子の一端が電池ケースの外部に引き出された形態の電池において、上記電極端子のうち電池ケースの内部に位置する部分は、ここに開示される技術における端子部の一典型例である。
本明細書によると、また、ここに開示される金属部材を用いてなるリチウムイオン二次電池が提供される。かかるリチウムイオン二次電池は、該電池内で発生し得る酸(典型的にはHF)に対して高い耐久性を示し得る。好ましい一態様では、該電池の負極端子部に、ここに開示されるいずれかの金属部材が適用されている。かかる態様のリチウムイオン二次電池は、電池内で発生し得るHFによる負極端子部の腐食を起因とする電池性能(耐久性等)の低下がより抑制されたものであり得る。上記保護層は、上記負極端子部を構成する金属部材の表面全体に付与されていてもよく、部分的に(例えば、HF(電解液に溶解した酸または電解液から電池内部の空間に蒸発したHFであり得る。)による影響を受けやすい部分のみに)付与されていてもよい。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、耐腐食性に優れた金属部材を用いて(例えば、該電池の負極端子部に用いて)構成されていることから、酸(典型的にはHF)がより多く発生し得る態様(例えば、高容量化された態様等)であっても、酸に対する耐久性(耐腐食性等)に優れたものであり得る。かかる電池は、車両において使用される電源として好ましく採用され得る。したがって、本発明によると、ここに開示されるいずれかのリチウムイオン二次電池を備えた車両1(図3)が提供される。特に、かかるリチウムイオン二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が好ましい。
本明細書によると、さらに、ここに開示されるいずれかの金属部材を製造する方法が提供される。この製造方法は、トリアジンチオール誘導体と金属元素Mのイオンの塩とを含む混合溶液に前記基材の少なくとも前記表面を上記混合溶液に浸漬させることを包含する。かかる方法によると、上述のように優れた耐腐食性を有する保護層が付与された金属部材を容易に製造することができる。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図1のII−II線における断面図である。 本発明のリチウムイオン二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。 一実施形態に係る金属部材の保護層と基材表面との界面における化学結合を示す概念図である。 サンプル1に係る保護層表面のTOF−SIMSスペクトルである。 サンプル2に係る保護層表面のTOF−SIMSスペクトルである。 サンプル1に係る保護層表面の耐腐食性試験前の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。 サンプル1の耐腐食性試験後の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。 サンプル2の耐腐食性試験前の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。 サンプル2の耐腐食性試験後の表面状態を示す走査顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
ここに開示される技術は、酸が発生または存在し得る環境に配置される金属部材に好ましく適用することができる。ここに開示される金属部材の外形は用途に応じて選択することが可能であり、特に制限されない。例えば、板状、棒状、ワイヤ状等の外形であり得る。また、その表面形状は、平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。上記金属部材において、その保護層は、基材の表面全体に付与されていてもよく、部分的に付与されていてもよい。例えば、基材表面のうち酸による影響を受けやすい部分のみに上記保護層が付与された態様の金属部材であってもよい。
上記保護層は、金属元素Mのイオンによって架橋された複数のトリアジンチオール誘導体から形成されたネットワーク構造を有している。それらトリアジンチオール誘導体の少なくとも一部が基材に含まれる金属元素Lと化学結合(典型的にはメルカプチド結合)を形成することによって、該基材表面に上記保護層が固定されている。メルカプチド結合は、一般式(I);RSZ(Sは硫黄);で表される官能基である。ここに開示される技術において、上記トリアジンチオール誘導体と上記基材中の金属元素Lとのメルカプチド結合は、上記一般式(I)におけるRがトリアジンチオール基であり、Zが上記金属元素Lである官能基として表される。
上記保護層において、Mイオンは、トリアジンチオール誘導体を架橋する態様で存在し得る。例えば、Mイオンは、2個以上のトリアジンチオール基に配位された態様で存在し得る。Mイオンが配位する元素は、トリアジンチオール誘導体に含まれる硫黄(S)および窒素(N)の一方または両方であり得る。金属元素Mとしては、SおよびNの少なくとも一方による配位が可能な金属元素を特に制限なく採用することができる。少なくともSによる配位が可能な金属元素(典型的には、SおよびNのいずれにも配位可能な金属元素)が好ましい。これら金属元素は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい一態様では、Mとして、実質的に一種の金属元素のみを使用する。例えば、金属元素Mとして、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。好ましい金属元素Mとして、銅が例示される。Mイオンとしては、二価の銅イオン(CuII)であることが好ましい。Mとして銅を用いた態様は、例えば、リチウムイオン二次電池の構成部材(例えば、負極端子、負極集電体等の負極側構成部材)に適用した場合に特に有意義である。
一態様において、上記保護層は、その表面を斜め切削して得られた面(切削面)をXPS(X線光電子分光)元素分析に供して測定される窒素Nと金属元素Mとの原子数比の値(N/M)が0.15〜0.45程度(例えば、0.25〜0.35程度)の範囲であり得る。N/Mがかかる範囲にある保護層は、基材の表面に付与されて、HF等の酸に対して優れた耐腐食性を発揮し得る。なお、上記XPS元素分析は、本明細書の実施例中に記載された条件またはそれと同等の条件で行うものとする。
上記基材は、少なくともその表面の一部が金属材料により形成されている(すなわち金属製である。)。基材表面の全部(全範囲)が金属製であってもよい。さらに基材の表面から内部に至る全体が金属製であってもよい。上記金属製表面は、チオール基(−SH)と反応してメルカプチド結合を形成可能な金属元素Lを含む。Lは、一種または二種以上の金属元素であり得る。すなわち、上記基材の少なくとも表面(保護層が設けられる表面)を構成する金属材料は、実質的に一種類(不可避的不純物の含有は許容され得る。)の金属であってもよく、二種類以上の金属の合金であってもよい。Lとして採用し得る他の金属元素としては、Cu,Fe,Cr,Ni,Au等が例示される。特に好ましい金属元素として、銅が例示される。Lとして銅を用いた態様は、例えば、リチウムイオン二次電池の構成部材に適用した場合に特に有意義である。Lは、Mと異なる金属元素であってもよく、Mと同じ金属元素であってもよい。好ましい一態様では、LおよびMがいずれも銅である。かかる態様の金属部材は、例えば、リチウムイオン二次電池の構成部材(典型的には負極端子)として用いられるのに好適である。
ここに開示される金属部材の典型的な態様では、その保護層(Mイオンに架橋されたトリアジンチオール誘導体のネットワーク)が、基材表面に化学的に接着されている。典型的には、図4に概念的に示されるように、トリアジンチオール誘導体・Mイオン錯体のネットワークが、基材表面に含まれる金属元素Lとのメルカプチド結合によって、該基材表面に化学的に接着されている。かかるネットワークは、隣り合うトリアジンチオール基がMイオンによって架橋された構造を有するので、このような架橋構造を有しない被膜(例えば、単にトリアジンチオール誘導体の個々の分子が基材表面に化学結合しただけの被膜や、トリアジンチオール誘導体を有機ポリマー(バインダ)により基材表面に単に付着させただけの被膜)と比べて、原子レベルの膜孔がより小さく、より緻密な被膜を形成し得る。したがって、酸に対する透過性がより低く、より優れた耐腐食性を金属表面に付与し得る。
なお、上記のように基材中の金属元素Lに保護層がメルカプチド結合した態様において、該保護層は、金属元素Lに直接的にメルカプチド結合したトリアジンチオール誘導体に加えて、金属元素Lと直接的にはメルカプチド結合していないトリアジンチオール誘導体(例えば、金属元素Lとメルカプチド結合したトリアジンチオール誘導体にMイオンによって架橋されたトリアジンチオール誘導体、かかるトリアジンチオール誘導体にさらに架橋されたトリアジンチオール誘導体等)を含んでもよい。
ここに開示される技術における保護層が上述のようなネットワーク構造を有することは、例えば、該保護層の表面をTOF−SIMS(飛行時間二次イオン質量分析計)により分析することによって把握することができる。例えば、上記金属部材において金属元素Mが銅である態様では、その保護層表面のTOF−SIMSスペクトルに、241(m/Z)(Cu(CN) )、154(m/Z)(CuCN)等のピークが存在し得る。
ここに開示される金属部材は、例えば、必要に応じて表面に脱脂処理(例えば、アルカリ性溶液や有機溶媒による洗浄処理等)を施した基材を、トリアジンチオール誘導体とMイオンの塩(以下、M塩と称することもある。)とを溶媒に溶解してなる混合溶液(表面保護処理溶液)に所定時間浸漬させた後、洗浄(適宜の温度の溶媒(典型的には水)に浸漬させる等)、乾燥(空気乾燥、加熱乾燥等)等の後処理に適宜供することによって形成することができる。
該基材表面の一部(被保護面)のみに保護層を付与する場合は、上記混合溶液への浸漬前に、該被保護面以外の表面を上記混合溶液に対して不透過性の材料(樹脂等)で被覆しておけばよい。あるいは、被保護面以外の表面を上記混合溶液に浸漬させない等の工夫をすればよい。
上記混合溶液は、所定量のトリアジンチオール誘導体およびM塩を溶媒に溶解して調製することができる。該溶媒は、使用するトリアジンチオール誘導体やM塩の溶解度に応じて適宜選択すればよい。好ましい溶媒として、水または水性溶媒(水と水に相溶性の溶媒(アルコール類等)との混合溶媒等)が例示される。かかる態様では、上記M塩(錯体であり得る。)として、例えば、Mの強酸塩(硫酸塩、塩酸塩等;水和物であり得る。)等のように水への溶解性が高いものを適宜選択して用いることができる。例えば、Mが銅である場合、硫酸銅(水和物であり得る。)を好ましく使用することができる。
トリアジンチオール誘導体としては、下記一般式(II)で表される化合物を好ましく用いることができる。
ここで、R,Rは、チオレート基(−S−1)またはチオール基(−SH)である。R,Rは、互いに同じであってもよく、異なってもよい。典型的には、R,Rが同じ基である。Xは、チオレート基、チオール基、アルコキシル基、アミド基、アミノ基等から選択される官能基である。これら官能基は、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、またはシクロアルキル基等の置換基を有し得る。上記化合物がチオレート基を含む場合、その対イオンは、アルカリ金属(Na,K等)のカチオン;アルカリ土類金属(Ca,Ba等)のカチオン;一級脂肪族アミン、二級脂肪族アミン、または三級脂肪族アミンのカチオン;アンモニウムイオン;等であり得る。上記化合物が二個以上のチオレート基を含む場合、それらの対イオンは、互いに同じであってもよく、異なってもよい。典型的には、これら対イオンが同じものが使用される。特に好ましく使用され得るトリアジンチオール誘導体として、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールおよびそのモノナトリウム塩が例示される。
上記混合溶液のトリアジンチオール誘導体濃度は、基材の被保護面の面積や所望の保護層厚等に応じて適宜選択すればよい。例えば、該トリアジンチオール誘導体の濃度が9〜13質量%程度の混合溶液を好ましく使用することができる。かかる濃度範囲は、例えば、トリアジンチオール誘導体として1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノナトリウム(またはそれと化学式量が同程度のトリアジンチオール誘導体)を用いた態様に好適に採用され得る。
上記混合溶液を調製する際に添加するM塩の量は、トリアジンチオール誘導体の濃度および所望の架橋度に応じて適宜選択すればよい。例えば、保護層の斜め切削面をXPS元素分析に供して測定されるN(窒素)と金属元素Mとの原子数比の値(N/M)が0.15〜0.45程度(例えば、0.25〜0.35程度)となるよう、M塩の添加量を調整することが好ましい。これによって、より耐腐食性に優れた保護層が形成され得る。
M塩の添加量は、混合溶液の全体を100質量%として、Mイオン基準で例えば0.001〜0.01質量%程度とすることができる。M塩の添加量が少なすぎると、上記錯体ネットワークの架橋度が不足して、充分な耐腐食性が付与され難くなる場合があり得る。M塩の添加量が多すぎると、上記保護層と上記基材表面との接合が不十分となったり、保護層の厚みが大きくなり過ぎて基材から保護層が剥がれやすくなったりする場合があり得る。金属元素Mが銅である態様では、銅塩の添加量を銅イオン(CuII)基準で0.001〜0.01質量%程度とすることが好ましい。この銅塩添加量の範囲は、例えば、上記トリアジンチオール誘導体として1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノナトリウム(またはそれと化学式量が同程度のトリアジンチオール誘導体)を上記所定量(9〜13質量%)用いる態様において、好ましく採用され得る。
上記基材を上記混合溶液に浸漬させる際の温度(溶液温度)は、トリアジンチオール誘導体と基材表面に含まれる金属元素Lとの結合反応(メルカプチド結合反応)の速度や所望する保護層の厚み等に応じて適宜選択すればよい。浸漬時の上記混合溶液の温度は、例えば、凡そ25〜45℃(より好ましくは凡そ30〜40℃)とすることができる。かかる態様は、金属元素Mが銅である場合に特に好ましく採用され得る。上記混合溶液の温度が高すぎると、トリアジンチオール誘導体のMイオンによる架橋が不足気味となり、保護層の緻密性が低減されて、耐腐蝕性の向上効果が充分に発揮され難くなる場合がある。
上記基材を上記混合溶液に浸漬させる時間は、同様に、トリアジンチオール誘導体と基材表面に含まれる金属元素Lとの結合反応速度や所望の保護層の厚み等に応じて適宜選択すればよい。浸漬時間が長すぎると、保護層が厚くなり過ぎて基材から剥がれやすくなる場合がある。浸漬時間が短すぎると、トリアジンチオール誘導体と金属元素Lとの結合反応時間が短くなるため保護層の基材表面への接合が不十分となったり、保護層の厚みが不足したりする場合ある。具体的な浸漬時間は、混合溶液の組成や温度等によっても異なり得るが、例えば、90秒〜140秒程度(より好ましくは100〜130秒程度;例えば100〜120秒程度)とすることができる。かかる態様は、金属元素Mが銅である場合に特に好ましく採用され得る。
上記保護層は、上記混合溶液に浸漬した基材に通電して形成してもよく(かかる形成態様は、電解メッキとして把握され得る。)、該基材に通電することなく形成してもよい(かかる形成態様は、浸漬メッキとして把握され得る。)。好ましい一態様では、上記保護層の形成を浸漬メッキにより行う。かかる態様によると、ここに開示される技術の適用効果が特によく発揮され得る。すなわち、該保護層をMイオンにより架橋された構造とすることにより、特に顕著な耐腐蝕性向上効果が実現され得る。また、浸漬メッキにより保護層を形成する形態は、電解メッキによる形態に比べて、金属部材の製造(特に、保護層の形成)に係るエネルギーコストの節減、装置構成の簡略化等の観点でも有利である。
ここに開示される金属部材は、表面積11.2cmの試験片を、温度80℃にて、HFを2質量%の割合で含む濃度1MのLiPF溶液200mLに浸漬させて該溶液中に3時間保持する耐腐食性評価試験において、試験開始から3時間経過時点において上記LiPF溶液中に溶出した金属元素Lのイオン(典型的にはCuII)の濃度が0.0001質量%以下(典型的には0.0001質量%未満)である、という特性を有し得る。また、例えば、Lイオンの測定限界が0.0001質量%の測定装置を使用する場合、該装置においてLイオンが検出されない、という特性を有し得る。かかる金属部材は、HF濃度が2質量%と、一般的なリチウムイオン二次電池内部で発生し得るHFの濃度よりも高い濃度の非水電解液(一般的なリチウムイオン二次電池内部の酸性度よりも著しく高い酸性度の非水電解液)に対しても、金属の溶出(金属部材の腐食)が進行し難いものであり得る。したがって、かかる金属部材は、リチウムイオン二次電池の構成部材として好ましく使用され得る。該構成部材は、例えば、電極端子部(典型的には負極端子部)等であり得る。リチウムイオン二次電池のような密閉型電池の電池ケース内で発生した酸性蒸気(例えばHF蒸気)は、該ケース内の上部に溜まりやすいことから、電極端子部のうち少なくとも電池ケース内上部に配置される部分に保護層が形成された態様とすることが効果的である。
本明細書によると、さらに他の側面として、ここに開示されるいずれかの金属部材を製造する方法が提供される。この製造方法は、上記トリアジンチオール誘導体と上記M塩とを含む混合溶液に、上記基材の表面のうち少なくとも保護層を形成しようとする部分(被保護面)を浸漬させることを包含する。かかる方法によると、上述のようなトリアジンチオール誘導体ネットワークの形成と、該ネットワークからなる保護層の基材表面への接合とを、簡便に行うことができる。また、保護層と基材表面との界面(すなわち、該保護層の最深部)においてもMイオンによる架橋が緻密な構造(すなわち、金属表面に高い耐腐食性を付与し得る構造)が実現され得る。
上記製造方法の好ましい一態様では、以下の工程:
(A)トリアジンチオール誘導体と金属元素Mのイオンの塩とを所定の濃度で含む混合溶液を用意すること;および、
(B)上記混合溶液に、金属元素Lを主体とする基材を浸漬させて該基材の表面に保護層を形成すること;
を包含する。ここで、上記保護層は、上記基材の表面に含まれる金属元素Lに化学結合したトリアジンチオール誘導体を含み、該トリアジンチオール誘導体は、さらに金属元素Mのイオンにより架橋されたネットワーク構造を形成している。
ここに開示される技術によると、さらに、ここに開示される金属部材を構成部材(電極端子部を構成する部材等)として含むリチウムイオン二次電池が提供される。上記保護層の厚みは特に制限されず、適用される構成部材の機能や使用態様等に適した厚みとすることができる。一態様では、上記リチウムイオン二次電池が上記金属部材を、該電池の負極端子部を構成する部材として含む。かかる態様では、ここに開示される技術を適用して耐腐蝕性を高めることが特に有意義である。かかる態様では、M,Lのいずれもが銅であることが好ましい。上記負極端子部が負極端子であって該負極端子の一端が負極集電体に接合された態様では、上記保護層の厚みは、通常凡そ300nm以下(例えば、凡そ200nm以下)であることが好ましい。上記保護層が厚すぎると、負極集電体と負極端子との接合(例えば溶接)が困難になることがあり得る。上記保護層の厚みの下限値は特に制限されないが、通常は50nm程度(例えば100nm程度)であり得る。なお、上記保護層の厚みは、例えば、当該金属部材の断面を透過型または走査型の電子顕微鏡で観察することにより把握することができる。観察時の倍率は、通常、10k倍〜100k倍程度とすることが適当である。
上記負極端子部は、負極集電体と一体の金属部材により構成されていてもよい。かかる態様では、該金属部材のうち集電体として用いられる部分(典型的には、該部材上に活物質が保持される部分)には保護層が付与されていないことが好ましい。かかる態様の端子部付き負極集電体は、例えば、その端子部に相当する部分のみを上記混合溶液に浸漬させることにより容易に形成することができる。
ここに開示される金属部材は、リチウムイオン二次電池のうち、負極端子部以外の部分を構成する部材にも適用され得る。具体的には、例えば、正極端子部を構成する部材(典型的には正極端子)、電池ケースを構成する部材、電池ケースの開口部を塞ぐ蓋体を構成する部材、等に適用することができる。
以下、図面を参照しつつ、ここに開示される金属部材の適用対象たるリチウムイオン二次電池について、電極体と非水電解液とが角型形状の電池ケースに収容された態様のリチウムイオン二次電池100(図1)を例にして更に詳しく説明するが、本発明の適用対象をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。すなわち、本発明に係るリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、その電池ケース、電極体等は、用途や容量に応じて、素材、形状、大きさ等を適宜選択することができる。例えば、電池ケースの形状は、直方体状、扁平形状、円筒形状等であり得る。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
本実施形態に係る電池100は、図1,2に示されるように、捲回電極体20を、図示しない電解液とともに、該電極体20の形状に対応した扁平な箱状の電池ケース10の開口部12より内部に収容し、該ケース10の開口部12を蓋体14で塞ぐことによって構築することができる。また、蓋体14には、外部接続用の正極端子38および負極端子48が、それら端子の一部が蓋体14の表面側に突出するように設けられている。
上記電解液としては、典型的には、非水溶媒中に支持塩を含む形態の非水電解液が用いられる。上記支持塩としては、一般的なリチウムイオン二次電池の支持塩として用いられるリチウム塩を、適宜選択して使用することができる。かかるリチウム塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等が例示される。このような支持塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術の好ましい適用対象として、フッ素を構成元素として含むリチウム塩を上記支持塩に用いたリチウムイオン二次電池が挙げられる。特に好ましい例として、LiPFが挙げられる。上記非水電解液は、例えば、上記支持塩の濃度が0.7〜1.6mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
上記非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる非プロトン性の有機溶媒を適宜選択して使用することができる。特に好ましい非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。これら非水溶媒は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記電極体20は、長尺シート状の正極集電体32の各面に正極活物質層34が形成された正極シート30と、長尺シート状の負極集電体42の各面に負極活物質層44が形成された負極シート40とを、2枚の長尺シート状のセパレータ50と共に重ね合わせて捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。
正極シート30は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極集電体32が露出するように形成されている。すなわち、該端部には、正極活物質層34が形成されていないか、形成後に除去されている。同様に、捲回される負極シート40は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極集電体42が露出するように形成されている。そして、正極集電体32の該露出端部には正極端子38が、負極集電体42の該露出端部には負極端子48がそれぞれ接合されている。このことによって、上記扁平形状に形成された捲回電極体20の正極シート30と正極端子38、および負極シート40と負極端子48が、それぞれ電気的に接続されている。正負極端子38,48と正負極集電体32,42とは、例えば超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合することができる。
正極端子38および負極端子48としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金製の負極端子48(すなわち、上記Lが銅である負極端子48)が好ましい。また、正極端子38の材質としては、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を好ましく用いることができる。
好ましい一態様では、ここに開示されるいずれかの金属部材が負極端子48として用いられている。かかる態様では、上記保護層に含まれるMイオンが銅イオンであることが特に好ましい。
正極活物質層34は、例えば、正極活物質を、必要に応じて導電材、結着剤(バインダ)等とともに適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(正極合材)を正極集電体32に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。
正極活物質としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な材料が用いられ、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質(例えば層状構造の酸化物やスピネル構造の酸化物)の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムマグネシウム系複合酸化物等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
ここで、リチウムニッケル系複合酸化物とは、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする酸化物のほか、リチウムおよびニッケル以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、LiとNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を、原子数換算でニッケルと同程度またはニッケルよりも少ない割合(典型的にはニッケルよりも少ない割合)で構成金属元素として含む酸化物をも包含する意味である。上記LiおよびNi以外の金属元素は、例えば、コバルト(Co),アルミニウム(Al),マンガン(Mn),クロム(Cr),鉄(Fe),バナジウム(V),マグネシウム(Mg),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ニオブ(Nb),モリブデン(Mo),タングステン(W),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga),インジウム(In),スズ(Sn),ランタン(La)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される一種または二種以上の金属元素であり得る。リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物およびリチウムマグネシウム系複合酸化物についても同様の意味である。ここに開示される技術における好ましい正極活物質として、少なくともNi,CoおよびMnを構成金属元素として含む(例えば、Ni,CoおよびMnの三元素を原子数換算で概ね同量づつ含む)リチウム遷移金属複合酸化物が例示される。
正極活物質として使用し得る材料の他の好適例として、オリビン型リン酸リチウムその他のポリアニオン系材料が挙げられる。上記オリビン酸リチウムは、例えば、一般式LiMPO(MはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種以上の元素)で表されるオリビン型リン酸リチウム(例えばLiFePO、LiMnPO)であり得る。
導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等の導電性粉末材料が好ましく用いられる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末等が好ましい。導電材は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
結着剤としては、例えば、水に溶解する水溶性ポリマーや、水に分散するポリマー、非水溶媒(有機溶媒)に溶解するポリマー等から適宜選択して用いることができる。また、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極集電体32には、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。正極集電体32の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態ではシート状のアルミニウム製の正極集電体32が用いられ、捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100に好ましく使用され得る。かかる実施形態では、例えば、厚みが10μm〜30μm程度のアルミニウムシートが好ましく使用され得る。
また、負極活物質層44は、例えば、負極活物質を、結着剤(バインダ)等ともに適当な溶媒に分散させたペーストまたはスラリー状の組成物(負極合材)を負極集電体42に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。
負極集電体42としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金を好ましく用いることができる。負極集電体42の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態ではシート状の銅製の負極集電体42が用いられ、捲回電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100に好ましく使用され得る。該銅製シートの厚みは、例えば、6μm〜30μm程度が好ましい。
セパレータ50は、正極シート30および負極シート40の間に介在するシートであって、正極活物質層34と負極活物質層44とを隔てるように配置される。そして、両電極活物質層34,44の接触に伴う短絡防止や、セパレータ50の空孔内に上記電解液を含浸させることにより電極間の伝導パス(導電経路)を形成する役割を担っている。かかるセパレータ50としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等の多孔質ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。特に、PEシート、PPシート、PE層とPP層とが積層された多層構造シート、等を好適に使用し得る。セパレータの厚みは、例えば、凡そ10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実験例1>
(サンプル1の作製)
1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノナトリウム(TTN)を水に加えて溶解し、さらに硫酸銅(II)・五水和物(CuSO・5HO)を添加して、TTNを10質量%、CuSO・5HO(CuIIイオン基準)を0.001質量%の割合で含む混合溶液を調製した。予めアルカリ洗浄した後に流水洗浄および浸漬水洗を施した厚さ1mmの銅箔(銅板)を、30℃にて、上記混合溶液中に120秒間浸漬した(トリアジン処理)。次いで、該銅箔を該混合溶液から取り出し、浸漬水洗(3回)および湯洗浄(温度70℃)を施し、エアブロー乾燥した後、75℃で5分間の加熱乾燥を行った。このようにして、サンプル1に係る金属部材を作製した。このサンプル1の断面を、走査型電子顕微鏡(日立社製、型式「S−5200」)を用いて観察したところ、保護層の厚みは約100nmであった。
(サンプル2の作製)
上記混合溶液の調製においてCuSO・5HOを添加しなかった他はサンプル1の作製と同様にして、サンプル2に係る金属部材を作製した。
[保護層表面のTOF−SIMS分析]
サンプル1,2に係る金属部材の表面を、TOF−SIMS装置を用いて分析した。サンプル1の質量スペクトルを図5に、サンプル2の質量スペクトルを図6に示す。
図5に示されるように、CuIIイオンを含む混合溶液を用いてなるサンプル1では、CuIIイオンとトリアジン環のC=N基の両方に起因する241(m/Z)(Cu(CN) )および154(m/Z)(CuCN)のピークが認められた。これは、サンプル1の表面に、CuIIイオンによって架橋されたTTNのネットワークが形成されていることを示す。一方、図6に示されるように、CuIIイオンを含まない混合溶液を用いてなるサンプル2では、かかるピークはいずれも認められなかった。この結果は、サンプル2の表面が、架橋したCuIIイオンを実質的に含まないことを示すものである。
<実験例2>
以下の手順で金属部材(保護層付き銅箔)を作製した。
すなわち、TTNを水に加えて溶解し、さらにCuSO・5HOを添加して、TTNをX質量%、CuSO・5HO(CuIIイオン基準)をY質量%の割合で含む混合溶液を調製した。予めアルカリ洗浄した後に流水洗浄および浸漬水洗を施した厚さ1mmの銅箔を、所定の温度(T℃)にて、上記混合溶液中に所定時間(t秒間)浸漬した(トリアジン処理)。次いで、該銅箔を該混合溶液から取り出し、浸漬水洗(2回)および湯洗浄(温度70℃)を施し、エアブロー乾燥した後、75℃で5分間の加熱乾燥を行った。
上記手順に従って、混合溶液のTTN濃度(X質量%、ここでXは7.5〜15)、CuIIイオン濃度(Y質量%、ここでYは0.005〜0.020)、トリアジン処理時における混合溶液の温度(T℃、ここでTは30〜50)または該混合溶液への浸漬時間(t秒、ここでtは80〜150)を異ならせた複数種類の金属部材(保護層付き銅箔)サンプルを作製した。
[耐腐食性評価試験]
各金属部材サンプルを1cm×5cmのサイズに切り出して試験片を作製した。温度80℃にて、HFを2%(質量基準)の割合で含む濃度1MのLiPF溶液(体積比3:3:3のEC/EMC/DEC混合溶媒)200mLに上記試験片を3時間浸漬させた。3時間経過後、上記LiPF溶液から上記試験片を引き上げ、該LiPF溶液中のCuIIイオンの濃度を、東興化学研究所製の銅イオンメータ、型式「TiN−5202」を用いて測定した。得られた測定データを各変数(X,Y,T,t)との関係として整理した結果を表1〜4に示す。
なお、実験例1で作製したサンプル2(CuIIイオンを含まない混合溶液を使用)について同様に耐腐食性評価試験を行ったところ、LiPF溶液中のCuIIイオン濃度が3.0×10−3質量%であった。すなわち、保護膜を形成する際にCuIIイオンを含まない(CuIIイオン濃度が0質量%の)混合溶液を用いた場合には銅箔(基材)がHFに侵されて該銅箔から多くのCuIIが溶出した。
一方、実験例1で作製したサンプル1(CuIIイオン濃度0.001質量%の混合溶液を使用)について同様に耐腐食性評価試験を行ったところ、LiPF溶液中にCuIIイオンは検出されなかった。このサンプル1の耐腐食性評価試験結果および表1は、CuIIイオンを含む混合溶液を用いることにより耐腐蝕性が向上し(換言すれば、CuIIの溶出が抑制され)、あるいは該溶出が実質的に生じなかったことを示している。特に、CuIIイオン濃度が0.001〜0.010質量%の範囲にある混合溶液を用いた場合には、上記のような厳しい酸性条件で実施された耐腐食性評価試験においても銅箔から上記電解液へのCuII溶出が認められなかった(すなわち、保護層によって銅箔が十分に保護され、HFによる腐食が実質的に起こらなかった)。
表2には、サンプル2の耐腐蝕性評価結果と比較して、いずれの浸漬時間においても耐腐蝕性が向上したこと、特に浸漬時間が90秒〜140秒の範囲では銅箔から上記電解液へのCuII溶出が認められなかったことが示されている。すなわち、銅箔が保護層によって十分に保護され、HFによる腐食が実質的に起こらなかった。浸漬時間が80秒または150秒では、サンプル2に比べて耐腐蝕性が大幅に改善されてはいるものの、若干のCuII溶出が認められた。
表3には、サンプル2の耐腐蝕性評価結果と比較して、いずれの混合溶液温度においても耐腐蝕性が向上したこと、特に浸漬時の溶液温度が25〜45℃の範囲では銅箔から上記電解液へのCuII溶出が実質的に起こらなかったことが示されている。一方、浸漬時の温度が50℃という比較的高温であると、サンプル2に比べて耐腐蝕性が大幅に改善されてはいるものの、若干のCuII溶出が認められた。
表4には、サンプル2の耐腐蝕性評価結果と比較して、いずれのTTN濃度においても耐腐蝕性が向上したこと、特に混合溶液のTTN濃度が9〜13質量%の範囲では銅箔から上記電解液へのCuII溶出が実質的に起こらなかったことが示されている。一方、TTN濃度が7.5質量%および15質量%では、サンプル2に比べて耐腐蝕性が大幅に改善されてはいるものの、若干のCuII溶出が認められた。
[耐腐食性評価試験前後における保護層表面状態の評価]
サンプル1およびサンプル2の表面を、上記耐腐食性評価試験の前後において、走査型電子顕微鏡(日立社製、型式「S−5200」)を用い、×10000の倍率にて観察した。サンプル1の結果を、図7(試験前)および図8(試験後)に、サンプル2の結果を図9(試験前)および図10(試験後)に示す。
図7および図8に示されるとおり、サンプル1の保護層(CuIIによって架橋されたTTNのネットワークを有する。)は、耐腐食性評価試験の前後において、その表面状態にほとんど変化は認められなかった。すなわち、その保護層が2質量%という高濃度のHFを含むリチウムイオン電池用非水電解液の中でも高い耐久性を有し、安定して存在し得ることが確認された。これに対し、図9および図10に示されるとおり、サンプル2の保護層(金属イオンによる架橋が実質的に存在しない。)は、上記耐腐食性評価試験のように厳しい評価条件下では、該保護層がほぼ完全に消失しており、銅箔の表面が酸に侵されてしまうことがわかった。
[保護層中のXPS元素分析]
サンプル1の保護層を、その表面から0.2°〜0.4°の角度で切削刃により斜めに切削して分析試料を切り出した。その切り出された試料の切削面を、XPS分析装置を用いて、下記条件で元素分析した(n=2)。その元素分析結果と、NとCuとの原子数比の値(N/Cu)とを併せて表5に示す。
[分析条件]
XPS装置:アルバックファイ株式会社製 型式「ESCA−PHI5700」
X線源:Alモノクロ7mm,14kV−350W
中和銃:ON
アパーチャー:No.4(直径800μm)
HRES Mode(Depth)
PE:46.5eV,STEP:0.1eV,Time/Step:50ms
SUV.Mode(定性)
PE:187.85eV,STEP:0.4eV,Time/Step:20ms
上記分析結果から、サンプル1の保護層が、トリアジンチオール誘導体に起因する窒素を含み、さらに銅イオンを含む構成を有することが確認された。
1 車両
10 電池ケース
20 捲回電極体
30 正極シート
32 正極集電体
34 正極活物質層
38 正極端子
40 負極シート
42 負極集電体
44 負極活物質層
48 負極端子
50 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池
200 金属部材
210 基材
220 保護層

Claims (5)

  1. 金属製の表面を有する基材と、該基材の前記表面に設けられた保護層と、を備えた金属部材であって、
    前記保護層は、トリアジンチオール誘導体と、金属元素Mのイオンと、を含み、
    前記トリアジンチオール誘導体は、前記基材表面に含まれる金属元素Lと化学結合しており、
    前記保護層は、複数の前記トリアジンチオール誘導体が前記金属元素Mのイオンによって架橋されたネットワーク構造を形成している、
    金属部材。
  2. 前記金属元素Mが銅である、請求項1記載の金属部材。
  3. 前記金属元素Lが銅である、請求項1または2に記載の金属部材。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の金属部材を備える、リチウムイオン二次電池。
  5. 請求項1から3のいずれか一項に記載の金属部材を製造する方法であって、トリアジンチオール誘導体と金属元素Mのイオンの塩とを含む混合溶液に前記基材の少なくとも前記表面を浸漬させることを特徴とする、金属部材製造方法。
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