JP2012169021A - 磁気記録用軟磁性合金及びスパッタリングターゲット材ならびに磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録用軟磁性合金及びスパッタリングターゲット材ならびに磁気記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 アモルファス性、硬さ、耐食性に優れた垂直磁気記録媒体用軟磁性合金及び、この合金の薄膜を作製するためのスパッタリングターゲット材を提供する。
【解決手段】 at.%で、Fe:Coの比を10:90〜70:30とし、かつ下記(A)群から(C)群の各種元素を、(A)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(B)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(C)群元素の1種又は2種以上を0〜5%含有し、かつ(A)群元素から(C)群元素との和を10〜30%、残部Co及び不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用軟磁性合金。
(A)Ta,Nb,V、(B)Cr,Mo,W、(C)Ti,Zr,Hf
【選択図】 なし

Description

本発明は、垂直磁気記録媒体における軟磁性層として用いるCo系磁気記録用軟磁性合金及びスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体にある。
近年、垂直磁気記録の進歩は著しく、ドライブの大容量化のために、磁気記録密度化が進められており、従来普及していた面内磁気記録方式により、更に高密度が実現できる、垂直磁気記録方式が実用化されている。ここで、垂直磁気記録方式とは、垂直磁気記録媒体の磁性膜中の媒体面に対して磁化容易軸が垂直方向に配向するように形成したものであり、高密度化に適した方法である。この磁気記録方式においては、記録密度を高めた磁気記録層と軟磁性層及び中間層を有する多層記録媒体として開発されている。しかも、この磁気記録層には一般的に、CoCrPt−SiO2系合金が用いられている。
一方、軟磁性膜層は、CoやFeの軟磁性元素をベースに非晶質性を改善するZr、Hf,Ta、Nb、Bを添加した合金が特開2008−299905号公報(特許文献1)や特開2008−189996号公報(特許文献2)に提案されている。そこでこの垂直磁気記録媒体の軟磁性膜層には高飽和磁束密度、高非晶質性、高耐食性が求められる。
また、2層記録媒体の軟磁性層として、Fe−Co−B系化合物の軟磁性膜が提案されており、例えば、特開2004−346423号公報(特許文献3)に開示されるように、断面ミクロ組織においてホウ化物層の存在しない領域に描ける最大内接円の直径が30μm以下であるFe−Co−Bターゲットが提案されている。
特開2008−299905号公報 特開2008−189996号公報 特開2004−346423号公報 特開2007−284741号公報
上述した軟磁性膜の成膜には、一般にマグネトロンスパッタリング法が用いられている。このマグネトロンスパッタリング法とは、ターゲット材の背後に磁石を配置し、ターゲット材の表面に、磁束を漏洩させて、その漏洩磁束領域にプラズマを収束させることにより拘束成膜を可能とするスパッタリング法である。このマグネトロンスパッタリング法はターゲット材のスパッタ表面に磁束を漏洩させることに特徴があるため、ターゲット材自体の透磁率が高い場合にはターゲット材のスパッタ表面にマグネトロンスパッタリング法に必要十分な漏洩磁束を形成するのが難しくなる。そこで、ターゲット材自身の透磁率を極力低減しなければならないという要求から特許文献3が提案されている。
しかしながら、上述したターゲット製品の厚みの限界は5mm程度で、それ以上厚くすると十分な漏洩磁束が出ないため、正常なマグネトロンスパッタリングが行えないという問題がある。また、このターゲット材は成膜した時に高磁束密度であることが求められていることから、Feベースとした材料が望ましいが、その場合、耐食性に課題があり、また、ターゲット材の酸化により膜の品質が劣化したり、スパッタ時に酸化部に異常放電を起こしてスパッタ不良となる場合があった。
それを解決するため、特開2007−284741号公報(特許文献4)にて、磁気特性を劣化させることなく、耐食性を向上させた軟磁性ターゲットの作製が報告されているが、優れたアモルファス性については記載されていない。
上述の問題を解決するため、発明者らは鋭意開発を進めるべく、各種元素の影響について調査した結果、(A)群Ta、Nb、Vの添加によりアモルファス性が向上し、また、(B)群Cr、Mo、Wの添加により硬さが向上し、さらに(C)群Ti,Zr,Hfの添加によりアモルファス性を確保し、かつこれら(A)群、(B)群および(C)群の元素は耐食性改善にも効果的であることを見出した。これよって、アモルファス性、耐食性、硬さに優れた磁気記録用軟磁性合金を提供するものである。なお、アモルファス性はノイズ低減、硬さは耐衝撃性、耐食性はカーボン膜の薄膜化に効果的である。
その発明の要旨とするところは、
(1)at.%で、Fe:Coの比を10:90〜70:30とし、かつ下記(A)群から(C)群の各種元素を、(A)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(B)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(C)群元素の1種又は2種以上を0〜5%含有し、かつ(A)群元素から(C)群元素との和を10〜30%、残部Co及び不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用軟磁性合金。
(A)Ta,Nb,V
(B)Cr,Mo,W
(C)Ti,Zr,Hf
(2)前記(1)に記載した合金に、さらに、下記(D)群から(F)群の各種元素の(D)群元素の1種又は2種を0〜30%、(E)群元素の1種又は2種を0〜5%、(F)群元素の1種又は2種以上を0〜10%含有することを特徴とする磁気記録用軟磁性合金。
(D)Ni,Mn
(E)Al,Cu
(F)Si,Ge,P,B,C
(3)前記(1)又は(2)に記載の磁気記録用軟磁性合金を用いたスパッタリングターゲット材。
(4)前記(1)又は(2)に記載の磁気記録用軟磁性合金を用いた磁気記録媒体にある。
以上述べたように、本発明により、アモルファス性、硬さ、耐食性に優れた垂直磁気記録媒体用軟磁性合金及び、この合金の薄膜を作製するためのスパッタリングターゲット材が提供できる。
以下、本発明に係る発明の限定理由を説明する。
Fe:Coの比を10:90〜70:30
FeやCoは、軟磁性元素構成するもので、FeとCoとの比を定めたのは、軟磁性を確保し、かつ飽和磁束密度、アモルファス性、硬さ、および耐食性に大きく影響するパラメータであり、特にFe:Coの比を10未満では飽和磁束密度が十分ではなく、また70を超えると耐食性が劣化する。したがって、その比を10:90〜70:30とした。
(A)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上
Ta,Nb,Vは、いずれもアモルファス性と硬さを改善する元素である。しかし、0.5at.%未満ではその改善効果が十分ではない。したがって、その下限を0.5at.%とした。好ましくは2〜20at.%とする。さらに好ましくは、4〜15at.%とする。
(B)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上
Cr,Mo,Wは、いずれもアモルファス性と耐食性を改善する元素である。しかし、0.5at.%未満ではその改善効果が十分ではない。したがって、その下限を0.5at.%とした。好ましくは1〜20at.%とする。さらに好ましくは、2〜10at.%とする。
(C)群元素の1種又は2種以上を0〜5%
Ti,Zr,Hfは、いずれもアモルファス性を改善する元素である。しかし、5at.%を超えると飽和磁束密度が十分に得られなくなる。したがって、その範囲を0〜5at.%とした。好ましくは2〜4at.%とする。
(A)群元素から(C)群元素との和を10〜30%
(A)群元素から(C)群元素との和を10〜30%とした理由は、いずれもアモルファス性と耐食性を改善する元素である。しかし、(A)群元素から(C)群元素との和が10at.%未満ではその効果が十分でなく、また、30%を超えると飽和磁束密度が十分に得られなくなる。したがって、その範囲を10〜30at.%とした。
(D)群元素の1種又は2種を0〜30%
Ni,Mnは、いずれも飽和磁束密度を調整する元素である。しかし、30at.%を超えると飽和磁束密度が十分に得られなくなる。したがって、その範囲を0〜30at.%とした。好ましくは、10at.%以下とする。さらに好ましくは、5at.%以下とする。
(E)群元素の1種又は2種を0〜5%
Al,Cuは、いずれも耐食性を向上させる元素である。しかし、5%を超えるとアモルファス性が低下する。したがって、その上限を5at.%とした。好ましくは1〜4at.%とする。
(F)群元素の1種又は2種以上を0〜10%
Si,Ge,P,B,Cは、いずれもアモルファス性を改善する元素である。しかし、10at.%を超えるとその改善効果が飽和するとともに、飽和磁束密度が低下する。したがって、その範囲を0〜10at.%とした。好ましくは1〜8at.%とする。
以下、本発明に係る合金について実施例によって具体的に説明する。
通常、垂直磁気記録媒体におけるシード層はその成分と同じ成分のスパッタリングターゲット材をスパッタし、ガラス基板などの上に成膜し得られる。ここでスパッタにより成膜された薄膜は急冷されている。本発明での供試材としては、単ロール式の急冷装置にて作製した急冷薄帯を用いる。これは実際にスパッタにより成膜された薄帯の、成分による諸特性への影響を、簡易的に液体急冷薄帯により評価したものである。
[急冷薄帯の作製条件]
急冷薄帯の作製条件としては、表1及び表2に示す各成分に秤量した原料20gを径40mm程度の水冷銅鋳型にて減圧して、Ar中でアーク溶解し、急冷薄帯の溶解母材とした。急冷薄帯の作成条件は、単ロール方式で径15mmの石英管中にて、この溶解母材をセットし、出湯ノズル径を1mmとし、雰囲気気圧61kPa、噴霧差圧69kPa、銅ロール(径300mm)の回転数3000rpm、銅ロールと出湯ノズルのギャップ0.3mmにて出湯した。出湯温度は各溶解母材の溶け落ち直後とした。このようにして作製した急冷薄帯を供試材とし、以下の項目を評価した。
[急冷薄帯の構造]
通常、アモルファス材料のX線回折パターンを測定すると、回折ピークが見られず、アモルファス特有のハローパターンとなる。また、完全なアモルファスでない場合は、回折ピークは見られるものの、結晶材料と比較してピーク高さが低くなり、かつハローパターンも見られる。そこで下記の方法にてアモルファス性の評価とした。
アモルファス性の評価として、ガラス板に両面テープで試材を貼り付け、X線回折装置にて回折パターンを得た。このとき、測定面は急冷薄帯の銅ロール接触面となるように供試材をガラス板に貼り付けた。X線源はCu−Kα線で、スキャンスピード4°/minで測定した。この回折パターンにハローパターンが確認できるものを○、全くハローパターンが見られないものを×としてアモルファス性を評価した。
[急冷薄帯の耐食性(NaCl)]
ガラス板に両面テープで供試材を貼り付け、5%NaCl−35℃−16hの塩水噴霧試験を行い、全面発銹:×、一部発銹:○として評価した。
[急冷薄帯の耐食性(HNO3)]
50mgの供試材を秤量し、3at.%HNO3水溶液を10ml滴下した後、室温にて1hr放置後、3%HNO3水溶液中へのCo溶出量を分析。Co溶出量が500ppm未満を○、500以上1000ppm未満を△、1000ppm以上を×した。
[急冷薄帯の硬さ]
急冷薄帯を縦に樹脂埋め研磨し、ビッカース硬度計にて測定。測定荷重は50gでn=10平均で評価した。1000HV以上を◎、760〜1000HV未満を○、760HV未満を△とする。
[急冷薄帯の飽和磁束密度]
VSM装置(振動試料型磁力計)にて、印加磁場1200kA/mで測定した。供試材の重量は15mg程度、0.3T以上1.0T未満の飽和磁束密度のものは○、1.0T以上のものは◎とした。0.3%未満のものは×とした。
以下、表1及び表2に本発明による成分組成を、また、表3、4にその効果としての飽和磁束密度、アモルファス性、耐食性、硬さを示す。
Figure 2012169021
Figure 2012169021
Figure 2012169021
Figure 2012169021
まず、表1及び表2に示す成分組成について説明する。表1に示すNo.1〜32は本発明例であり、表2に示すNo.33〜41は比較例である。
なお、成分組成の記載は、表1各列に記載したNo.3を例にとると、(A)〜(F)群元素である(A)群のTaが8at.%、(B)群のCrが2at.%、(C)群のZrが4at.%、(E)群のAlが1at.%、(F)群のBが6at.%の含有量である。これらの合計量は21at.%である。(A)群〜(F)群の残部がCoとFeであり、その量は、100から21at.%を差し引いた79at.%である。次に、CoとFeの比は、Co:Fe=90:10なので、at.%で言えば、Coの含有量は0.79×90=71.1at.%、Feの含有量は0.79×10=7.9at.%であることを意味している。
比較例No.33、No.34は、(A)群元素と(B)群元素の含有量の和が高いため、飽和磁束密度が低い。No.35は、(A)群元素の含有量が低い為、アモルファス性が不足し、また硬さも低い。No.36は、(B)群元素の含有量が低い為、アモルファス性が不足し、また耐食性も十分でない。No.37は、(C)群元素の含有量が高く飽和磁束密度が低い。No.38は、(E)群元素の含有量が高く飽和磁束密度が低い。No.39は、(F)群元素の含有量が高く飽和磁束密度が低く、また、耐食性も十分でない。No.40は、Fe比が低いため、飽和磁束密度が十分でない。
No.41は、Fe比が高いため、耐食性、特にNaClへの耐食性が不足する。No.42は、(D)群元素の含有量が高く、飽和磁束密度が低い。これに対し、本発明例No.1〜No.32はいずれも本発明の条件を満たしていることから、アモルファス性、硬さ、耐食性および飽和磁束密度に優れていることがわかる。
以上述べたように、本発明によりアモルファス性、硬さ、耐食性および飽和磁束密度に優れた垂直磁気記録用軟磁性合金及びスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体を提供するものである。
次に、スパッタリングターゲット材の製造方法を示す。表1のNo.3、No.11、No.12、No.13、No.24及び表2のNo.35、No.38に示す7種類の成分組成について、溶解原料を秤量し、減圧Arガス雰囲気の耐火物坩堝内で誘導加熱溶解したあと、坩堝下部の直径8mmのノズルより出湯し、Arガスによりアトマイズした。このガスアトマイズ粉末を原料として、外径220mm、内径210mm、長さ200mmのSC製の缶に脱気装入した。脱気時の真空到達度は約1.3×10-2Paとした。上記の粉末充填ビレットを1150℃に加熱したあと、径230mmの拘束型コンテナ内に装入し、500MPaの加圧にて成形した。上記の方法で作製した固化成形体を、ワイヤーカット、旋盤加工、平面研磨により、直径180mm、厚さ7mmの円盤状に加工し、スパッタリングターゲット材とした。
これら7種類の成分組成についてスパッタリングターゲット材を用い、ガラス基板上にスパッタ膜を成膜した。X線回折パターンは、No.3、No.11、No.12、No.13、No.24はいずれにおいてもハローパターンが見られ、No.35、No.38は結晶ピークが見られた。また、急冷薄帯と同様に耐食性試験(塩水噴霧試験)をおこなったところ、No.3、No.11、No.12、No.13、No.24はいずれも発銹がなく、No.35、No.38では一部発銹が見られた。以上総括すると、急冷薄帯にて評価した結果とスパッタリングターゲット材を用いて成膜したスパッタ膜の評価とが同等の傾向であることを確認した。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊

Claims (4)

  1. at.%で、Fe:Coの比を10:90〜70:30とし、かつ下記(A)群から(C)群の各種元素を、(A)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(B)群元素の1種又は2種以上を0.5%以上、(C)群元素の1種又は2種以上を0〜5%含有し、かつ(A)群元素から(C)群元素との和を10〜30%、残部Co及び不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用軟磁性合金。
    (A)Ta,Nb,V
    (B)Cr,Mo,W
    (C)Ti,Zr,Hf
  2. 請求項1に記載した合金に、さらに、下記(D)群から(F)群の各種元素の(D)群元素の1種又は2種を0〜30%、(E)群元素の1種又は2種を0〜5%、(F)群元素の1種又は2種以上を0〜10%含有することを特徴とする磁気記録用軟磁性合金。
    (D)Ni,Mn
    (E)Al,Cu
    (F)Si,Ge,P,B,C
  3. 請求項1又は請求項2に記載の磁気記録用軟磁性合金を用いたスパッタリングターゲット材。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の磁気記録用軟磁性合金を用いた磁気記録媒体。
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