JP2012154427A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関が冷えすぎることを抑制しつつ、摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因した駆動抵抗を低減する。
【解決手段】自動変速機3は、複数のギヤが設けられて予め定められた複数の変速段のうちのいずれか一つを形成可能な変速部5と、その変速部5にて一つの変速段を形成すべく係合されたり解放されたりする摩擦係合要素とを備える。自動変速機3の各所はオイルにより潤滑される。冷間時には、変速段を切り換えるべく摩擦係合要素を係合させる際、同要素を目標値に向けて昇温すべくスリップさせる昇温スリップ制御が実行される。同制御の実行中には摩擦係合要素の温度が推定され、その温度が目標値に到達するまでは内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が禁止される。摩擦係合要素の温度が目標値に到達した後には、内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が行われる。
【選択図】図1
【解決手段】自動変速機3は、複数のギヤが設けられて予め定められた複数の変速段のうちのいずれか一つを形成可能な変速部5と、その変速部5にて一つの変速段を形成すべく係合されたり解放されたりする摩擦係合要素とを備える。自動変速機3の各所はオイルにより潤滑される。冷間時には、変速段を切り換えるべく摩擦係合要素を係合させる際、同要素を目標値に向けて昇温すべくスリップさせる昇温スリップ制御が実行される。同制御の実行中には摩擦係合要素の温度が推定され、その温度が目標値に到達するまでは内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が禁止される。摩擦係合要素の温度が目標値に到達した後には、内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が行われる。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動変速機の制御装置に関する。
自動車等の車両としては、オイルによる各所の潤滑が行われるとともに内燃機関の回転入力に基づき回転動作する自動変速機を搭載したものがある。こうした自動変速機は、複数のギヤが設けられて予め定められた複数の変速段のうちのいずれか一つを形成可能な変速部、及び、その変速部にて所定の変速段を形成すべく係合されたり解放されたりする摩擦係合要素(例えばクラッチやブレーキ)を備えている。上記車両においては、内燃機関の燃費改善を図るうえで、自動変速機の駆動効率を改善すること、言い換えれば自動変速機の駆動抵抗を低減することが重要視されている。
自動変速器における駆動抵抗増大の原因としては、例えば、摩擦係合要素周りに存在するオイルの冷間時での粘度増大や、変速部のギヤ周りに存在するオイルの冷間時での粘度増大があげられる。ちなみに、摩擦係合要素周りに存在するオイルの粘度が高い場合、自動変速機の回転動作時に摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(以下、引き摺りトルクという)が増大し、その引き摺りトルクの増大に伴って自動変速機の駆動抵抗が増大する。また、変速部のギヤ周りに存在するオイルの粘度が高い場合、同オイルに起因する自動変速機の回転動作時の上記ギヤの回転抵抗(以下、攪拌抵抗という)が増大し、その攪拌抵抗の増大に伴って自動変速機の駆動抵抗が増大する。
上述した原因により、自動変速機の駆動抵抗が増大すると、それが自動変速機の駆動効率の改善にとっての妨げとなり、ひいては内燃機関の燃費改善の妨げとなる。このため、車両の始動開始直後などの冷間時に、例えば特許文献1に示されるように内燃機関の冷却水と自動変速機のオイルとの熱交換を行い、それによって内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与することが考えられる。このように内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与して同オイルを昇温させ、それによって自動変速機の各所に存在するオイルの粘度を低下させることができれば、自動変速機の駆動抵抗を低減させることができる。
上述したように、冷間時に内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与すれば、自動変速機における変速部のギヤ周りに存在するオイルを昇温させて同オイルの粘度低下を実現することができ、そのオイルによる上記ギヤの回転抵抗(攪拌抵抗)を低減することができるようにはなる。
ただし、上述したように内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与したとしても、自動変速機における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させることはできない。これは、摩擦係合要素周りに存在するオイルは自動変速機における他の部位に存在するオイルと入れ替わりにくく、内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与したとしても、それに基づいて摩擦係合要素周りに存在するオイルが昇温して粘度低下するために多大な時間を要することが原因である。
従って、冷間時に内燃機関の熱を自動変速機のオイルに付与しても、自動変速機における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させて同オイルの粘度を低下させることはできない。このため、自動変速機の回転動作時に摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(引き摺りトルク)を速やかに低減させることができず、その引き摺りトルクに起因する自動変速機の駆動抵抗を速やかに低減させることも困難である。
なお、内燃機関の熱の自動変速機のオイルへの付与により摩擦係合要素周りに存在するオイルの昇温を実現しようとして上記熱の付与を続けると、内燃機関の熱が過度に奪われることは避けられず、同機関の冷えすぎによる燃費改善への悪影響も無視できない問題となる。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関が冷えすぎることを抑制しつつ、摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因した駆動抵抗を低減することのできる自動変速機の制御装置を提供することにある。
請求項1記載の発明によれば、自動変速機の変速部にて形成される変速段の切り換えを実現すべく摩擦係合要素を係合させる際、冷間時には摩擦係合要素を目標値に向けて昇温すべくスリップさせる昇温スリップ制御が実行される。この昇温スリップ制御が実行されると、摩擦係合要素がスリップ時の摩擦によって速やかに昇温するため、摩擦係合要素周りに存在するオイルも昇温して同オイルの粘度が速やかに低下する。その結果、自動変速機の回転動作時に摩擦係合要素周りのオイルの粘度に起因して同摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(引き摺りトルク)を速やかに低減させることができ、その引き摺りトルクに起因する自動変速機の駆動抵抗も速やかに低減させることができる。
また、昇温スリップ制御の実行中における摩擦係合要素の温度は温度推定手段によって推定されており、その温度が目標値に達するまでは内燃機関の熱が自動変速機のオイルに付与されることは禁止される。このように熱の付与が禁止されている期間中には、内燃機関の熱が自動変速機のオイルへと渡されることがないため、同機関が自身の発熱によって効果的に暖められるようになる。そして、推定された摩擦係合要素の温度が目標値に到達した後、内燃機関が十分に暖まった状態で同機関の熱が自動変速機のオイルに付与される。こうした熱の付与に関しては同機関が十分に暖まった状態で行われるため、上記熱の付与に伴って内燃機関から熱が奪われる際に同機関が冷えすぎた状態となることを抑制でき、内燃機関の冷えすぎによる燃費悪化を招くことを抑制できる。なお、自動変速機のオイルが内燃機関から渡される熱により昇温して同オイルの粘度が低下すると、それに伴い自動変速機における変速部のギヤ周りに存在するオイルの粘度も低下する。その結果、変速部のギヤ周りに存在するオイルの粘度に起因する同ギヤの回転抵抗(攪拌抵抗)が低減されることから、その攪拌抵抗に起因する自動変速機の駆動抵抗も低減される。
以上により、内燃機関が冷えすぎることを抑制しつつ、自動変速機における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因して摩擦係合要素で生じる引き摺りトルクを低減して、その引き摺りトルクによる自動変速機の駆動抵抗を低減することができる。また、自動変速機のオイルへの内燃機関の熱の付与により、変速部のギヤ周りに存在するオイルを昇温させて同オイルの粘度を低下させることができるため、そのオイルの粘度に起因する上記ギヤ周りでの攪拌抵抗を低減して、その攪拌抵抗による自動変速機の駆動抵抗を低減することができる。
請求項2記載の発明によれば、冷間時に開始される昇温スリップ制御における摩擦係合要素の昇温のための同摩擦係合要素のスリップは、温度推定手段により推定された摩擦係合要素の温度が目標値まで上昇した時点で終了される。このため、昇温スリップ制御の実行によって摩擦係合要素の温度が目標値に対し過度に上昇することを抑制でき、そうした摩擦係合要素の過昇温に起因する同摩擦係合要素の摩耗を抑制することができる。
なお、温度推定手段による上記摩擦係合要素の温度の推定としては、請求項3記載の発明のように、摩擦係合要素に対応したトルク分担率ε、及び、同摩擦係合要素の相対角速度ωrに基づき、昇温スリップ制御での摩擦係合要素のスリップによる同摩擦係合要素の発熱量Eを算出し、その算出した発熱量Eを用いて行うことが可能である。より詳しくは、請求項4記載の発明のように、上記発熱量E、摩擦係合要素の比熱Cp、及び摩擦係合要素の質量Mに基づき、上記発熱量Eによる摩擦係合要素の温度上昇量ΔTを算出し、その算出した温度上昇量ΔT、及び自動変速機に設けられた油温センサによって検出されるオイルの温度Tを用いて摩擦係合要素の温度を推定することが可能である。
昇温スリップ制御においては、変速段の切り換え時における摩擦係合要素の係合の際のスリップ時間が長くなるほど、摩擦係合要素のスリップによる発熱が多くなって、同摩擦係合要素が目標値まで昇温し易くなる傾向がある。請求項5記載の発明では、昇温スリップ制御において、摩擦係合要素の温度が目標値まで上昇しにくい状態であるときほど上記スリップ時間を長くしたり、一方で摩擦係合要素の温度が目標値まで上昇しやすい状態であるときほど上記スリップ時間を短くしたりすることができる。このように、昇温スリップ制御で摩擦係合要素をスリップさせる際に上記スリップ時間を調節することにより、摩擦係合要素の温度を速やかに目標値まで上昇させつつ、同温度が目標値に対し過上昇することを抑制できる。
以下、本発明を自動車に搭載される自動変速機の制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
自動車においては、図1に示される内燃機関2の回転が自動変速機3等を介して車輪4に伝達される。自動変速機3は内燃機関2の回転入力に基づき回転動作する。自動変速機3の回転動作時には、その自動変速機3の各所がオイルによって潤滑される。
自動車においては、図1に示される内燃機関2の回転が自動変速機3等を介して車輪4に伝達される。自動変速機3は内燃機関2の回転入力に基づき回転動作する。自動変速機3の回転動作時には、その自動変速機3の各所がオイルによって潤滑される。
自動変速機3には、上記オイルに対し内燃機関2の熱を付与して昇温させるためのオイルウォーマ11が設けられている。このオイルウォーマ11には内燃機関2の冷却水が導入通路12を介して導入される。オイルウォーマ11は、導入通路12から導入された冷却水と自動変速機3のオイルとの間での熱交換を通じて同オイルを昇温させる。そして、熱交換後の冷却水は、オイルウォーマ11から導出通路13を介して内燃機関2側に戻される。なお、上記導入通路12には、オイルウォーマ11への冷却水の導入を許容したり禁止したりすべく開閉するバルブ14が設けられている。
また、自動変速機3は、予め定められた複数の変速段のうちのいずれか一つを形成することの可能な変速部5を備えている。この変速部5には、所定の変速段を形成すべく係合されたり解放されたりする複数の摩擦係合要素が設けられている。そして、変速部5は、複数のギヤ等からなる動力伝達経路を、上記複数の摩擦係合要素の選択的な係合を通じて切り換えることで、ギヤ比の異なる上記複数の変速段のうちのいずれか一つを成立させる。
図2は、自動変速機3における変速部5の構成を説明するための骨子図である。なお、この変速部5は中心線に対してほぼ上下対称に構成されており、図2では中心線よりも下側の半分が省略されている。
この変速部5においては、内燃機関2側からの回転がトルクコンバータ6を介してタービンシャフト7に入力され、この回転が、ダブルピニオン式のプラネタリギヤ8、及びラビニオ式のプラネタリギヤ9等を介して、アウトプットシャフト10に伝達される。そして、アウトプットシャフト10から出力された回転は車輪4(図1)に伝達される。この変速部5は、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2の選択的な摩擦係合やワンウェイクラッチFの係合により、同変速部5での動力伝達経路を切り換えてギヤ比の異なる複数の変速段のうちのいずれかを成立させる。上記クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2はいずれも、油圧によって作動される多板式の摩擦係合要素であり、上記油圧の調整を通じて同摩擦係合要素を構成する係合プレートと摩擦材とを係合したり解放したりする。
図3は、上記クラッチC1〜C4及び上記ブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素、並びに上記ワンウェイクラッチFにおける作動状態と、成立する変速段(1〜8速、リバース等)との関係を示す作動表である。同図において、「○」はトルク伝達のある係合を表している。
次に、本実施形態における自動変速機3の制御装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
自動車1には、内燃機関2及び自動変速機3等に関する各種制御を実行する電子制御装置21が搭載されている。この電子制御装置21は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
自動車1には、内燃機関2及び自動変速機3等に関する各種制御を実行する電子制御装置21が搭載されている。この電子制御装置21は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・自動変速機3における変速部5の入力軸であるタービンシャフト7の回転速度を検出する入力回転速度センサ22。
・自動変速機3における変速部5の入力軸であるタービンシャフト7の回転速度を検出する入力回転速度センサ22。
・同変速部5のアウトプットシャフト10の回転速度を検出する出力回転速度センサ23。
・自動車の運転者によって操作されるシフトレバー15の位置に対応した信号を出力するシフトポジションセンサ24。
・自動車の運転者によって操作されるシフトレバー15の位置に対応した信号を出力するシフトポジションセンサ24。
・内燃機関2の出力調整のために運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル16の操作量(アクセル操作量)を検出するアクセルポジションセンサ25。
・内燃機関2の冷却水の温度を検出する水温センサ26。
・内燃機関2の冷却水の温度を検出する水温センサ26。
・自動変速機3の変速部5におけるオイルの温度を検出する油温センサ27。
電子制御装置21の出力ポートには、バルブ14の駆動回路や、自動変速機3の変速段を切り換えるための油圧制御回路28に設けられたソレノイドバルブ31〜36の駆動回路といった各種の駆動回路等が接続されている。
電子制御装置21の出力ポートには、バルブ14の駆動回路や、自動変速機3の変速段を切り換えるための油圧制御回路28に設けられたソレノイドバルブ31〜36の駆動回路といった各種の駆動回路等が接続されている。
上記油圧制御回路28は、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2(図2)といった摩擦係合要素に作動油を供給するためのものである。また、油圧制御回路28に設けられたソレノイドバルブ31〜36はそれぞれ対応する摩擦係合要素、すなわちクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2に作用する油圧を調整し、それら摩擦係合要素を個別に作動させるためのものである。
そして、電子制御装置21は、上記各センサから入力した検出信号に基づき把握される内燃機関2及び自動車1の運転状態を検知し、上記出力ポートに接続された各種駆動回路の指令信号を出力する。こうしてバルブ14の開閉制御、及び自動変速機3の変速段の切り換え制御(変速制御)等が電子制御装置21を通じて実施される。
自動変速機3の変速は、自動車1の運転状態に適した変速段である指示段に基づいて行われる。この指示段は、アクセル操作量、及び車速等に基づき設定される。なお、ここで用いられる車速については、出力回転速度センサ23からの検出信号、或いは、入力回転速度センサ22からの検出信号及び現在の変速段に基づき求めることが可能である。そして、上記のように指示段が設定されると、自動変速機3の変速段が上記指示段となるよう、各摩擦係合要素を係合状態または解放状態とすべくソレノイドバルブ31〜36が個別に作動される。
ところで、自動変速機3においては、自動車の始動開始直後などの冷間時、摩擦係合要素周りに存在するオイルが冷えた状態にあって同オイルの粘度が増大するとともに、変速部5のギヤ周りに存在するオイルが冷えた状態にあって同オイルの粘度が増大する。ここで、摩擦係合要素周りに存在するオイルの粘度が高い場合、自動変速機3の回転動作時に摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(以下、引き摺りトルクという)が増大し、その引き摺りトルクの増大に伴って自動変速機3の駆動抵抗が増大する。また、変速部5のギヤ周りに存在するオイルの粘度が高い場合、同オイルに起因する自動変速機3の回転動作時の上記ギヤの回転抵抗(以下、攪拌抵抗という)が増大し、その攪拌抵抗の増大に伴って自動変速機3の駆動抵抗が増大する。
以上のように自動変速機3の駆動抵抗が増大すると、それが自動変速機3の駆動効率の悪化に繋がり、ひいては自動変速機3を回転動作させる内燃機関2の燃費改善の妨げになる。このため、内燃機関2の燃費改善を意図して、冷間時には、自動変速機3における摩擦係合要素周りに存在するオイルの昇温、及び変速部5のギヤ周りに存在するオイルの昇温が行われる。以下、この実施形態にける摩擦係合要素周りに存在するオイルの昇温の仕方の概要、及び変速部5のギヤ周りに存在するオイルの昇温の仕方の概要について説明する。
この実施形態では、冷間時に自動変速機3の変速段を切り換えるべく摩擦係合要素を係合させる際、その摩擦係合要素を目標値に向けて昇温すべくスリップさせる昇温スリップ制御を実行する。同制御によって昇温のためのスリップを行う摩擦係合要素は、切り換えの行われる変速段に応じてクラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2(図2)のうちのいずれかとなる。具体的には、図3から分かるように、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった角係合要素はそれぞれ、例えば以下の変速段の切り換えのときに昇温のための係合プレートと摩擦材とのスリップが行われる。
クラッチC1:6速→5速
クラッチC2:4速→5速
クラッチC3:2速→3速
クラッチC4:3速→4速
ブレーキB1:1速→2速
ブレーキB2:2速→1速
上記昇温スリップ制御が実行されると、摩擦係合要素における係合プレートと摩擦材のスリップ時の摩擦によって同係合プレートが速やかに昇温するため、それによって摩擦係合要素(係合プレート)周りに存在するオイルも昇温して同オイルの粘度が速やかに低下する。その結果、自動変速機3の回転動作時に摩擦係合要素周りのオイルの粘度に起因して同摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(引き摺りトルク)を速やかに低減させることができ、その引き摺りトルクに起因する自動変速機3の駆動抵抗も速やかに低減させることができる。
クラッチC2:4速→5速
クラッチC3:2速→3速
クラッチC4:3速→4速
ブレーキB1:1速→2速
ブレーキB2:2速→1速
上記昇温スリップ制御が実行されると、摩擦係合要素における係合プレートと摩擦材のスリップ時の摩擦によって同係合プレートが速やかに昇温するため、それによって摩擦係合要素(係合プレート)周りに存在するオイルも昇温して同オイルの粘度が速やかに低下する。その結果、自動変速機3の回転動作時に摩擦係合要素周りのオイルの粘度に起因して同摩擦係合要素に作用する回転方向と逆方向のトルク(引き摺りトルク)を速やかに低減させることができ、その引き摺りトルクに起因する自動変速機3の駆動抵抗も速やかに低減させることができる。
また、上記昇温スリップ制御の実行中には、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートの温度が推定される。そして、推定される各摩擦係合要素の係合プレートの温度がそれぞれ予め定められた目標値(例えば上記引き摺りトルクを許容レベル未満に低減可能な値)に到達するまでは、図1のバルブ14が閉弁状態とされることで、内燃機関2の冷却水がオイルウォーマ11を通過することは禁止される。これにより、内燃機関2の熱が上記冷却水を介してオイルウォーマ11から自動変速機3のオイルに付与されることが禁止される。このように熱の付与が禁止されている期間中には、内燃機関2の熱が自動変速機3のオイルへと渡されることがないため、同機関2が自身の発熱によって効果的に暖められる。
そして、上記推定される各摩擦係合要素の係合プレートの温度がそれぞれ予め定められた目標値に到達した後、バルブ14が閉弁状態とされることで、内燃機関2の冷却水がオイルウォーマ11を通過することは許容される。この状態にあっては、内燃機関2の熱が上記冷却水を介してオイルウォーマ11から自動変速機3のオイルに付与される。こうした熱の付与に関しては同機関2が十分に暖まった状態で行われるため、上記熱の付与に伴って内燃機関2から熱が奪われる際に同機関2が冷えすぎた状態となることを抑制でき、内燃機関2の冷えすぎによる燃費悪化を招くことを抑制できる。
なお、自動変速機3のオイルが内燃機関2から渡される熱により昇温して同オイルの粘度が低下すると、それに伴い自動変速機3における変速部5のギヤ周りに存在するオイルの粘度も低下する。その結果、変速部5のギヤ周りに存在するオイルの粘度に起因する同ギヤの回転抵抗(攪拌抵抗)が低減されることから、その攪拌抵抗に起因する自動変速機3の駆動抵抗も低減される。
以上により、内燃機関2が冷えすぎることを抑制しつつ、自動変速機3における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因して摩擦係合要素で生じる引き摺りトルクを低減して、その引き摺りトルクによる自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。また、自動変速機3のオイルへの内燃機関2の熱の付与により、変速部5のギヤ周りに存在するオイルを昇温させて同オイルの粘度を低下させることができるため、そのオイルの粘度に起因する上記ギヤ周りでの攪拌抵抗を低減して、その攪拌抵抗による自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。
次に、上述した昇温スリップ制御の詳細な実行手順、及び内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱付与の詳細な実行手順について、変速機暖機ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。この変速機暖機ルーチンは、電子制御装置21を通じて、所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、まず自動変速機3の暖機の実行中であるか否かを判断するための暖機フラグF1が「0(非実行中)」であるか否かの判断が行われる(S101)。暖機フラグF1が「0」であれば、自動車が冷間状態にあるか否かの判断が行われる(S102)。詳しくは、内燃機関2の冷却水の温度が暖機判定値未満であるとき、あるいは自動変速機3のオイルの温度が予め定められた目標値(例えば上記攪拌抵抗を許容レベル未満に低減可能な値)未満であるとき、自動車が冷間状態にある旨判断される。そして、自動車が冷間状態にある旨判断されると、昇温スリップ制御が実行される(S103)。昇温スリップ制御が実行されると、暖機フラグF1が「1(実行中)」に設定され(S104)、その後にバルブ14の閉弁によって内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が禁止される(S105)。
上記昇温スリップ制御により、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートがそれぞれ目標値まで昇温される。詳しくは、昇温スリップ制御の実行中、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートの温度が推定される。そして、推定された摩擦係合要素の係合プレートの温度と目標値との差や、同温度の目標値に向けての変化速度等に応じて、上記摩擦係合要素の係合プレートが速やかに目標値まで昇温するよう、同摩擦係合要素の係合プレートと摩擦材との係合に基づく変速段の切り換えを行う際の係合プレートと摩擦材とのスリップ時間を調節する。
ここで、昇温スリップ制御においては、変速段を切り換える際の摩擦係合要素における係合プレートと摩擦材とのスリップ時間が長くなるほど、摩擦係合要素のスリップによる発熱が多くなって、同摩擦係合要素が目標値まで昇温し易くなる傾向がある。このため、昇温スリップ制御においては、推定された摩擦係合要素の係合プレートの温度と目標値との差や、同温度の目標値に向けての変化速度等に基づき、上記係合プレートの温度が目標値まで上昇しにくい状態であると判断されるときには、係合プレートと摩擦材とのスリップ時間が長くされる。一方、上記摩擦係合要素の温度が目標値まで上昇しやすい状態であると判断されるときには、係合プレートと摩擦材とのスリップ時間が短くされる。
このように、昇温スリップ制御で摩擦係合要素の係合プレートと摩擦材とをスリップさせる際にスリップ時間を調節することにより、摩擦係合要素における係合プレートの温度を速やかに目標値まで上昇させつつ、同温度が目標値に対し過上昇することを抑制できるようになる。
ちなみに、昇温スリップ制御の実行中、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートの温度については、例えば次のように推定することが考えられる。すなわち、昇温スリップ制御での係合プレートと摩擦材とのスリップによる摩擦係合要素の発熱量E、同発熱量Eにおける摩擦係合要素の昇温に寄与する割合を表す係数α、摩擦係合要素の比熱Cp、及び摩擦係合要素の質量Mに基づき、上記発熱量Eによる摩擦係合要素の温度上昇量ΔTが、次の式「ΔT=E/(α・Cp・M)」 …(1)」を用いて算出される。そして、油温センサ27によって検出される自動変速機3のオイルの温度T、及び上記式(1)によって算出された温度上昇量ΔTに基づき、上記摩擦係合要素における係合プレートの温度が推定される。
なお、昇温スリップ制御での係合プレートと摩擦材とのスリップによる摩擦係合要素の発熱量Eは、同摩擦係合要素に対応したトルク分担率ε、同摩擦係合要素の係合プレートと摩擦材との相対角速度ωr、及び変速部5の入力トルクTinに基づき、次の式「E=ε・Tin・ωr (2)」を用いて算出される。
変速部5の入力トルクTinは、タービンシャフト7に作用するトルクであって、機関負荷や機関回転速度などの機関運転状態から算出される内燃機関2の出力トルク、及び、機関回転速度やタービンシャフト7の回転速度等から算出されるトルクコンバータ6のスリップ率等を用いて求めることが可能である。
トルク分担率εは、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった摩擦係合要素にて伝達されるトルクの大きさを変速部5の入力トルクTinに対する倍率で表した値であって、上記摩擦係合要素にて伝達されるトルクを入力トルクTinで除算した値に相当する。このトルク分担率εは、摩擦係合要素毎に異なる値をとる。そして、トルク分担率εは、対応する摩擦係合要素の解放状態時に「0」となり、同摩擦係合要素の係合に合わせて「0」から徐々に大きくなってゆき、同摩擦係合要素の係合完了時に最大値となる。この係合完了時のトルク分担率εの最大値は、摩擦係合要素によって定まる固定値であって、各摩擦係合要素毎に異なるものとなる。トルク分担率εは、昇温スリップ制御の実行中での変速段の切り換え過程において、切り換え前後の各変速段のギヤ比、タービンシャフト7の回転速度、及びアウトプットシャフト10の回転速度等から求めることが可能である。
摩擦係合要素の係合プレートと摩擦材との相対角速度ωrは、変速段の切り換え過程において、切り換え予定の変速段のギヤ比を「G」とし、タービンシャフト7の回転角速度を「ωt」とし、アウトプットシャフト10の回転角速度を「ωo」とすると、次の式「ωr=ωt−G・ωo …(3)」を用いて求めることができる。なお、タービンシャフト7の回転角速度ωtについては入力回転速度センサ22の出力信号に基づいて求めることが可能であり、アウトプットシャフト10の回転角速度ωoについては出力回転速度センサ23の出力信号に基づいて求めることが可能である。
昇温スリップ制御が実行されて暖機フラグF1が「1(実行中)」に設定されると、次回のS101の処理で否定判定がなされることから、S102〜S105の処理がスキップされてS106に進む。このS106の処理では、内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が行われているか否かを判断するための熱付与フラグF2が「0(非実行中)」であるか否かの判断が行われる。そして、熱付与フラグF2が「0」であるときには、昇温スリップ制御による摩擦係合要素の係合プレートの昇温が完了したか否かが判断される(S107)。詳しくは、上記昇温スリップ制御により、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートの温度(推定値)すべてがそれぞれの目標値まで上昇したか否かが判断される。
そして、S107で肯定判定がなされると、昇温スリップ制御が終了される(S108)。このように昇温スリップ制御が終了すると、自動変速機3の変速段の切り換えを実現するための各摩擦係合要素の係合がすべて通常の態様で行われるようになる。なお、昇温スリップ制御が終了する前の同制御の実行中、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートの温度(推定値)のいずれかが目標値まで上昇すると、その時点で上記係合プレートを有する摩擦係合要素における係合プレートの昇温のための同係合プレートと摩擦材とのスリップが終了される。このため、上記係合プレートを有する摩擦係合要素では、以後、昇温スリップ制御の実行中であっても、同摩擦係合要素の係合が通常の態様で行われる。
昇温スリップ制御が終了すると、バルブ14の開弁によって内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が行われる(S109)。その後、熱付与フラグF2が「1(実行中)」に設定される(S110)。内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が行われて熱付与フラグF2が「1」に設定されると、次回のS106の処理で否定判定がなされることから、S108〜S110の処理がスキップされてS111に進む。このS111の処理では、自動変速機3のオイルの昇温が完了したか否か、言い換えれば油温センサ27によって検出される自動変速機3のオイルの温度が目標値まで上昇したか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、バルブ14の閉弁によって内燃機関2から自動変速機3のオイルへの熱の付与が終了される(S112)。その後、暖機フラグF1及び熱付与フラグF2が共に「0(非実行中)」に設定される(S113)。
最後に、昇温スリップ制御の実行中における変速段の切り換えに際しての摩擦係合要素の係合プレートの温度の推移、及び、その係合プレートの温度の推定に用いられる入力トルクTin、変速部5の入力回転速度(タービンシャフト7の回転速度)、トルク分担率ε、相対角速度ωr、及び発熱量Eといったパラメータの推移について説明する。
昇温スリップ制御の実行中に例えば1速から2速への変速段の切り換えが行われる場合に、変速部5の入力トルクTin、タービンシャフト7の回転速度、摩擦係合要素(この例ではブレーキB1)の係合プレートの温度はそれぞれ、例えば図5(a)〜(c)に示すように推移する。また、ブレーキB1に対応するトルク分担率ε、ブレーキB1の係合プレートと摩擦材との相対角速度ωr、及び同係合プレートの発熱量Eはそれぞれ、例えば図5(d)〜(f)に示すように推移する。
なお、図5において、タイミングT1までは変速段が1速に設定されており、タイミングT1からタイミングT2までは1速から2速への変速段の切り換え過程であって、タイミングT2以降は変速段が2速に設定されている。このため、タイミングT1は1速から2速への変速段の切り換えの開始タイミングとなり、タイミングT2は同切り換えの完了タイミングとなる。そして、タイミングT1からタイミングT2までの期間中におけるブレーキB1の係合プレートと摩擦材とのスリップにより、ブレーキB1の係合プレートが発熱して同係合プレートが昇温される。
図5(c)のタイミングT1〜T2の期間でのブレーキB1の係合プレートの温度は、油温センサ27によって検出される自動変速機3のオイルの温度T、及び、上記係合プレートの発熱量E(図5(f))による温度上昇量ΔTに基づき推定される。なお、油温センサ27によって検出される自動変速機3のオイルの温度Tは、タイミングT1時点でのブレーキB1の係合プレートの温度を推定するために用いられる。そして、この温度に対し上記温度上昇量ΔTを加算することで、タイミングT1〜T2の期間における上記係合プレートの温度(推定値)が算出される。
ここで、ブレーキB1に作用する油圧を調整してタイミングT1〜T2の期間、すなわち同ブレーキB1の係合プレートと摩擦材とをスリップさせる際のスリップ時間を調節すると、タイミングT1〜T2の期間中における発熱量Eの推移傾向が例えば図6(a)〜(c)に示されるように変化する。詳しくは、スリップ時間(T1〜T2)を短くすると、スリップ時間中の発熱量Eの最大値は大きくなるものの、その発熱量Eが「0」よりも大きくなる期間が短くなる傾向がある。逆に、スリップ時間(T1〜T2)を長くすると、スリップ時間中の発熱量Eの最大値は小さくなるものの、その発熱量Eが「0」よりも大きくなる期間が長くなる傾向がある。
図6(a)〜(c)から分かるように、上記スリップ時間が長くなるほど、ブレーキB1の係合プレートと摩擦材とのスリップによる同係合プレートの発熱(図6(a)〜(c)のハッチング部分の面積に対応)が多くなり、係合プレートを目標値まで昇温し易くなる。従って、推定される上記係合プレートの温度とその目標値との差や、同温度の目標値に向けての変化速度等に基づき、上記係合プレートの温度が目標値まで上昇しにくい状態であると判断されるときには上記スリップ時間(T1〜T2)が長くされる。一方、上記係合プレートの温度が目標値まで上昇しやすい状態であると判断されるときには、上記スリップ時間(T1〜T2)が短くされる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)冷間時、内燃機関2が冷えすぎることを抑制しつつ、自動変速機3における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因して摩擦係合要素で生じる引き摺りトルクを低減して、その引き摺りトルクによる自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。また、自動変速機3のオイルへの内燃機関2の熱の付与により、変速部5のギヤ周りに存在するオイルを昇温させて同オイルの粘度を低下させることができるため、そのオイルの粘度に起因する上記ギヤ周りでの攪拌抵抗を低減して、その攪拌抵抗による自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。
(1)冷間時、内燃機関2が冷えすぎることを抑制しつつ、自動変速機3における摩擦係合要素周りに存在するオイルを速やかに昇温させ、同オイルの粘度に起因して摩擦係合要素で生じる引き摺りトルクを低減して、その引き摺りトルクによる自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。また、自動変速機3のオイルへの内燃機関2の熱の付与により、変速部5のギヤ周りに存在するオイルを昇温させて同オイルの粘度を低下させることができるため、そのオイルの粘度に起因する上記ギヤ周りでの攪拌抵抗を低減して、その攪拌抵抗による自動変速機3の駆動抵抗を低減することができる。
(2)冷間時に開始される昇温スリップ制御における摩擦係合要素の係合プレートの昇温のための同係合プレートと摩擦材とのスリップは、上記係合プレートの温度の推定値が予め定められた目標値まで上昇した時点で終了される。このため、昇温スリップ制御の実行によって摩擦係合要素の係合プレートの温度が目標値に対し過度に上昇することを抑制でき、そうした係合プレートの過昇温に起因する同係合プレートの摩耗を抑制することができる。
(3)昇温スリップ制御の実行中における摩擦係合要素の係合プレートの温度を推定する際、その推定が油温センサ27によって検出される自動変速機3のオイルの温度T、及び上記式(1)によって算出される温度上昇量ΔTに基づいて行われる。更に、この温度上昇量ΔTは、式(1)から分かるように、上記式(2)によって算出される発熱量Eを用いて求められる。従って、推定された上記係合プレートの温度を正確なものとすることができる。
(4)昇温スリップ制御の実行中、摩擦係合要素の係合プレートを昇温させるための同係合プレートと摩擦材とのスリップを行う際、上記係合プレートの温度が目標値まで上昇しにくい状態であると判断されるときには、スリップ時間が長くされる。一方、上記係合プレートの温度が目標値まで上昇しやすい状態であると判断されるときには、スリップ時間が短くされる。このように、昇温スリップ制御で摩擦係合要素における係合プレートの昇温のために同係合プレートと摩擦材とをスリップさせる際にスリップ時間を調節することで、上記係合プレートの温度を速やかに目標値まで上昇させつつ、同温度が目標値に対し過上昇することを抑制できる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートすべてがそれぞれ目標値まで昇温した後に内燃機関2から自動変速機3のオイルに熱を付与する代わりに、各摩擦係合要素のうちのいずれかの係合プレートが目標値まで昇温したときに上記熱の付与を行うようにしてもよい。
・クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2といった各摩擦係合要素の係合プレートすべてがそれぞれ目標値まで昇温した後に内燃機関2から自動変速機3のオイルに熱を付与する代わりに、各摩擦係合要素のうちのいずれかの係合プレートが目標値まで昇温したときに上記熱の付与を行うようにしてもよい。
・8段の変速段を有する自動変速機3に本発明を適用したが、8段以外の変速段(例えば4段、5段、6段の変速段など)を有する自動変速機に本発明を適用してもよい。
2…内燃機関、3…自動変速機、4…車輪、5…変速部、6…トルクコンバータ、7…タービンシャフト、8…プラネタリギヤ、9…プラネタリギヤ、10…アウトプットシャフト、11…オイルウォーマ(熱付与手段)、12…導入通路(熱付与手段)、13…導出通路、14…バルブ(熱付与手段)、15…シフトレバー、16…アクセルペダル、21…電子制御装置(制御手段、温度推定手段、熱付与手段)、22…入力回転速度センサ、23…出力回転速度センサ、24…シフトポジションセンサ、25…アクセルポジションセンサ、26…水温センサ、27…油温センサ、28…油圧制御回路、31〜36…ソレノイドバルブ(制御手段)。
Claims (5)
- 複数のギヤが設けられて予め定められた複数の変速段のうちのいずれか一つを形成可能な変速部と、その変速部にて一つの変速段を形成すべく係合されたり解放されたりする摩擦係合要素とを備え、オイルによる各所の潤滑が行われるとともに内燃機関からの回転入力に基づき動作する自動変速機に適用され、冷間時に内燃機関の熱を前記オイルに付与する自動変速機の制御装置において、
冷間時に前記変速段を切り換えるべく前記摩擦係合要素を係合させる際、その摩擦係合要素を目標値に向けて昇温すべくスリップさせる昇温スリップ制御を実行する制御手段と、
前記昇温スリップ制御の実行中における前記摩擦係合要素の温度を推定する温度推定手段と、
前記温度推定手段によって推定される前記摩擦係合要素の温度が前記目標値に到達するまでは内燃機関から自動変速機の前記オイルへの熱の付与を禁止し、前記摩擦係合要素の温度が前記目標値に到達した後に内燃機関から自動変速機の前記オイルへの熱の付与を行う熱付与手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記昇温スリップ制御を開始した後、前記温度推定手段により推定された前記摩擦係合要素の温度が前記目標値まで上昇した時点で、同昇温スリップ制御による前記摩擦係合要素の昇温のための同摩擦係合要素のスリップを終了する
請求項1記載の自動変速機の制御装置。 - 前記温度推定手段は、前記昇温スリップ制御での前記摩擦係合要素のスリップによる同摩擦係合要素の発熱量Eを、同摩擦係合要素に対応したトルク分担率ε、及び、同摩擦係合要素の相対角速度ωrに基づき算出し、その算出した発熱量Eを用いて前記摩擦係合要素の温度を推定する
請求項2記載の自動変速機の制御装置。 - 前記温度推定手段は、前記算出した発熱量Eによる前記摩擦係合要素の温度上昇量ΔTを、前記発熱量Eの他、前記摩擦係合要素の比熱Cp、及び前記摩擦係合要素の質量Mに基づき算出し、その算出した温度上昇量ΔT、及び自動変速機に設けられた油温センサによって検出される前記オイルの温度Tを用いて前記摩擦係合要素の温度を推定する
請求項3記載の自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記昇温スリップ制御を実行中、前記温度推定手段により推定された前記摩擦係合要素の温度に基づいて、前記変速段の切り換え時における前記摩擦係合要素の係合の際のスリップ時間を調節する
請求項2記載の自動変速機の制御装置。
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- 2011-01-26 JP JP2011014201A patent/JP2012154427A/ja active Pending
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