JP2004036822A - 自動クラッチシステムの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この装置は、アクチュエータ57を備える自動クラッチシステムに適用される。自動クラッチシステムは、アクチュエータ57の駆動を通じて、エンジン11及び変速機15の間に介在されたクラッチ14の継合及び非継合を自動操作する。アクチュエータ57の駆動を通じたクラッチ14の継合操作に際して、クラッチディスク18の継合回転速度を、クラッチ14の温度の上昇に伴って低下するように補正しつつ、その継合操作を実行する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クラッチの継合をアクチュエータを介して自動操作する自動クラッチシステムにあって、クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
変速機が搭載された車両にあっては、エンジン等の原動機から変速機への動力伝達を断続するために、それら原動機と変速機との間にクラッチが介在されている。
【0003】
このクラッチは一般に、原動機の出力軸に取り付けられるフライホイールと、変速機の入力軸に取り付けられるクラッチディスクとを有して構成される。そして、原動機から変速機へと動力を伝達させる際には、上記クラッチディスクがフライホイールに押し付けられる。この押し付け力により、上記クラッチディスクとフライホイールとの間に摩擦力を生じさせ、その摩擦力によってクラッチがいわゆる接続された状態(継合状態)となり、原動機から変速機へと動力が伝達される。
【0004】
一方、原動機から変速機への動力伝達を遮断する際には、上記押し付け力が開放される。これにより、上記摩擦力が減少し、クラッチディスクとフライホイールとが離れる。従って、このときクラッチがいわゆる切断された状態(非継合状態)となり、原動機から変速機への動力伝達が遮断される。
【0005】
ところで、こうしたクラッチにあっては、その機構上、非継合状態から継合状態へと移行させる過程において、上記クラッチディスクとフライホイールとの間にいわゆるすべりが生じた状態(半クラッチ状態)となる。このとき、それらクラッチディスクとフライホイールとの間には摩擦熱が生じ、この摩擦熱によってクラッチディスクの温度が上昇することとなる。そして、こうしたクラッチディスクの温度が過度に上昇するようになると、同クラッチディスクの摩耗が早急に進み、クラッチとしての信頼性の低下を招くようになる。
【0006】
そこで従来は、こうしたクラッチディスクの摩耗を抑制すべく、例えば特開平08−230503号公報にみられるように、クラッチディスクの温度が高くなったときにはクラッチの継合態様を変更するようにした装置なども提案されている。
【0007】
ちなみにこの装置では、上記クラッチの継合をアクチュエータを介して自動操作する自動クラッチシステムとして、上記半クラッチ状態に起因してクラッチディスクの温度が高くなったときには、クラッチを介して伝達されるトルクを断続的に増減させるなどのシグナリングを実行する。そしてこれにより、クラッチディスクの過剰な温度上昇を運転者に認識させるようにしている。このようなシグナリングの実行により、大きなトルクでのすべりの継続が緩和されるとともに、運転者自身による無理なクラッチ操作の自重も併せて図られるようになり、クラッチディスクの温度上昇、並びに摩耗の進行等も抑制されるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の装置では、上記シグナリングの実行を通じてクラッチディスクの摩耗抑制効果が見込めるとはいえ、同シグナリングの実行に伴う以下のような不都合も無視できない。
【0009】
すなわち、上記シグナリングとして、例えばクラッチでの伝達トルクを継続的に変化させることは、これが搭載される車両の挙動を不安定なものとし、ひいてはドライバビリティの悪化を招くようになる。しかも、このシグナリングとしてより大きな認識効果を得るためには、上記断続的に変化させるトルク差についてもこれを大きく設定せざるをえず、この場合には該ドライバビリティの悪化もより顕著なものとなる。
【0010】
他方、上記シグナリングとして音響信号あるいは光学信号等が用いられる場合であれ、その頻度が高くなれば、運転者にとっては煩わしく感じられるようになり、やはりドライバビリティの悪化が避けられない。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シグナリングに頼ることなく、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスクの摩耗をより好適に抑制することのできる自動クラッチシステムの制御装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合回転速度を当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記クラッチディスクの継合回転速度を、前記原動機の出力トルクと前記クラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度としてその対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、それら原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度が前記クラッチの温度の上昇に伴い低下するように、前記記憶されているクラッチの伝達トルクの基本値を増大補正するものであることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量を当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇に対応して前記クラッチディスクの継合開始時期を定めるための基準となる同原動機の回転速度を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記クラッチディスクの継合開始が前記原動機の回転速度の上昇量のより少ない値に対応してなされるように、前記記憶されている基準となる原動機の回転速度を低減補正するものであることをその要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記制御手段は、前記クラッチの温度が過度に高いとき、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う上昇量を強制的に「0」とみなす制御を更に行うことをその要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの前記原動機側のトルクを当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記原動機の加速操作子の操作量と同原動機の出力トルクとの対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記記憶されている前記原動機の加速操作子の操作量に対応する前記原動機の出力トルクの基準値を低減補正するものであることをその要旨とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記原動機が車載エンジンであるとともに、前記原動機の加速操作子がアクセルペダルであり、前記制御手段は、このアクセルペダルの操作量に対応する前記原動機の出力トルクとして、前記車載エンジンの燃料噴射量及びスロットル開度の少なくとも一方を低減補正することをその要旨とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合回転速度を当該クラッチの温度に基づき補正すること、及び前記クラッチディスクの前記原動機側のトルクを同クラッチの温度に基づき補正すること、及び前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う前記クラッチの継合操作に際し、前記クラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量を当該クラッチの温度に基づき補正すること、の少なくとも1つを行って前記継合操作を実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記クラッチディスクの継合回転速度を、前記原動機の出力トルクと前記クラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度としてその対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの継合回転速度の補正に際し、それら原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度が前記クラッチの温度の上昇に伴い低下するように、前記記憶されているクラッチの伝達トルクの基本値を増大補正することをその要旨とする。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記原動機の加速操作子の操作量と同原動機の出力トルクとの対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの前記原動機側のトルクの補正に際し、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記記憶されている前記原動機の加速操作子の操作量に対応する前記原動機の出力トルクの基準値を低減補正することをその要旨とする。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記原動機が車載エンジンであるとともに、前記原動機の加速操作子がアクセルペダルであり、前記制御手段は、このアクセルペダルの操作量に対応する前記原動機の出力トルクとして、前記車載エンジンの燃料噴射量及びスロットル開度の少なくとも一方を低減補正することをその要旨とする。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記自動クラッチシステムは、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇に対応して前記クラッチディスクの継合開始時期を定めるための基準となる同原動機の回転速度を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量の補正に際し、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記クラッチディスクの継合開始が前記原動機の回転速度の上昇量のより少ない値に対応してなされるように、前記記憶されている基準となる原動機の回転速度を低減補正することをその要旨とする。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項13記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記制御手段は、前記クラッチの温度が過度に高いとき、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う上昇量を強制的に「0」とみなす制御を更に行うことをその要旨とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれかに記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記制御手段は、前記クラッチの温度が所定の温度以上にあることを条件に、同クラッチの温度に基づく前記補正を実行することをその要旨とする。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれかに記載の自動クラッチシステムの制御装置において、前記制御手段は、前記クラッチの温度を、前記原動機の出力軸と前記変速機の入力軸との回転速度差、及び前記クラッチディスクを介しての伝達トルク、及び前記クラッチの熱伝達率に基づき推定することをその要旨とする。
(作用効果)
先ず、前記「継合回転速度」は、クラッチが半クラッチ状態である期間にあって、原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとがつり合ったときにおける原動機の回転速度に相当する値である。自動クラッチシステムにあっては通常、この継合回転速度を所望の特性をもって推移させるべく、アクチュエータが操作される。
【0028】
さて、こうした継合回転速度をクラッチの温度に基づき補正する上記請求項1に記載の発明の構成によれば、クラッチの温度が高いときに、その温度が低いときと比べて、同クラッチを非継合状態から継合状態へと速やかに移行させることが可能になる。これにより、クラッチの温度が高いときには半クラッチ状態が継続される時間を短縮することができるようになり、このときクラッチディスクで発生する摩擦熱を低減することができるようになる。従って、シグナリングに頼ることなく、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスクの摩耗をより好適に抑制することができるようになる。
【0029】
なお、上記自動クラッチシステムが搭載される車両にあってクラッチディスクで発生する摩擦熱が極めて多い同車両の発進時に上記補正が実行される場合には、その効果もより顕著なものとなる。
【0030】
また、請求項2あるいは10に記載の発明の構成によれば、予め記憶されている原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとの関係に基づき上記継合回転速度が規定される構成にあって、「継合回転速度を補正する」といった構成が同クラッチの伝達トルクの基本値を増大補正するといった手法によって実現されるようになる。しかも、こうした補正を、上記摩耗の発生の可能性が高いときほど、あるいは同摩耗が早急に進むおそれがあるときほど、上記伝達トルクの基本値が大きくなるように実行することができるようになる。従って、上記摩耗を適切に抑制するとともに、上記補正の実行に伴う上記伝達トルクの上昇速度の低下についてもこれを好適に抑えることができるようになる。
【0031】
一方、車載原動機に自動クラッチシステムが適用される構成にあっては、車両についての急発進要求がなされた場合に、同車両を速やかに発進させるべく、原動機の回転速度を一時的に急上昇させた後、クラッチの継合を開始するといった制御が行われるものがある。こうした制御では、半クラッチ状態にあるときにおける原動機の回転速度とクラッチ出力軸の回転速度との速度差、いわゆる「すべり」が大きくなるために、自ずとクラッチの温度条件が厳しいものとなる。このため、こうした制御をクラッチの温度が高いときに実行することは好ましくない。
【0032】
この点、上記請求項3に記載の発明の構成によれば、こうした制御に際してクラッチの温度が高いときには、原動機の回転速度についての上記上昇量を低減させることが可能になる。これにより、クラッチの温度が高いときにおける上記すべりを好適に低減させることができるようになり、このときクラッチディスクで発生する摩擦熱を低減することができるようになる。従って、シグナリングに頼ることなく、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスクの摩耗をより好適に抑制することができるようになる。
【0033】
また、上記請求項4あるいは13に記載の発明の構成によれば、上記摩耗の発生の可能性が高いときほど、あるいは同摩耗が早急に進むおそれがあるときほど、原動機の回転速度の一時的な急上昇を低減させることが可能になる。従って、上記摩耗を適切に抑制しつつ、上記クラッチディスクの継合開始時期に対応する原動機の回転速度の上昇量の低下についてもこれを極力抑えることができるようになる。
【0034】
また、請求項5あるいは14に記載の発明の構成によれば、クラッチの温度が過度に高いとき、換言すれば、上記摩耗が生じるおそれが極めて高いときには、原動機の回転速度を一時的に急上昇させる制御自体を禁止することができるようになる。従って、このとき上記制御に伴うクラッチディスクの温度上昇を防止することができるようになり、ひいては上記摩耗の進行を防止することができるようになる。
【0035】
また一方、クラッチによって伝達可能なトルクの上限値は、アクチュエータによる押し付け力により定まる。そして、原動機の出力軸に付与されているトルクのうちの上記上限値を超える分のトルクがクラッチのすべりとなって現われる。
【0036】
この点、クラッチの温度に基づき原動機のトルクを補正する上記請求項6に記載の発明の構成によれば、クラッチの温度が高いときにおいて、そうした上限値を超える分のトルクを好適に低減することが可能になる。これにより、半クラッチ状態であるときにおける上記すべりを好適に低減させることができるようになり、このときクラッチディスクで発生する摩擦熱を低減することができるようになる。従って、シグナリングに頼ることなく、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスクの摩耗をより好適に抑制することができるようになる。
【0037】
また、請求項7あるいは11に記載の発明の構成によれば、上記摩耗の発生の可能性が高いときほど、あるいは同摩耗が早急に進むおそれがあるときほど、加速操作子に対する原動機の出力トルクを低減することができるようになる。従って、上記摩耗を適切に抑制しつつ、上記出力トルクの上昇速度の低下についてもこれを極力抑えることができるようになる。
【0038】
また、請求項8あるいは12に記載の発明の構成によれば、アクセルペダルの操作量に基づいて車載エンジンの出力トルクの基本値を求め、この求められた基本値に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を調節する装置にあって、クラッチの温度が高いときにエンジンの出力トルクを低減するといった構成が好適に実現される。
【0039】
他方、上記請求項9に記載の発明の構成によれば、上記摩耗の低減を図るべく、上記請求項1、上記請求項3、及び上記請求項6に記載した各補正を適宜組み合わせて実行することができるようになり、制御態様の設定についての自由度も大幅に高まるようになる。
【0040】
また、上記請求項15に記載の発明の構成によれば、クラッチの温度がさほど高くないとき、換言すれば、上記摩耗を招くおそれがないときには上記補正の実行が禁止されるようになり、同補正を効率的に実行することができるようになる。
【0041】
なお、上記補正に用いるクラッチの温度としては、クラッチディスクの温度を直接検出した値を用いることが考えられる。ただし、回転及び摺動しているクラッチディスクの温度を直接検出するセンサを設けることは困難である。
【0042】
これに対し、上記請求項16に記載の発明の構成によれば、原動機の出力軸と変速機の入力軸との回転速度差や、クラッチディスクを介しての伝達トルク、同クラッチの熱伝達率に基づいて、クラッチの温度を精度よく推定することができるようになる。
【0043】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる自動クラッチシステムの制御装置を具体化した第1の実施の形態について説明する。
【0044】
ここでは先ず、図1を参照して、本実施の形態が適用される車両の概略構成について説明する。
同図1に示されるように、車両10には原動機としてエンジン11が搭載されている。エンジン11の出力軸であるクランク軸12には、フライホイール13が一体回転可能に取付けられている。フライホイール13には、クラッチ14を介して変速機15が接続されている。このクラッチ14は、クランク軸12の回転トルクを変速機15に伝達したり、そのトルク伝達を遮断したりするためのものである。なお、このクラッチ14の具体的な構造は後に詳述する。
【0045】
また、上記変速機15は、例えば前進5段、後進1段の平行歯車式といった一般的な手動変速機と同様の構成を有している。変速機15は入力軸17及び出力軸(図示略)を備えている。入力軸17は、前述したようにクラッチディスク18に連結されている。出力軸は、ドライブシャフト19、ディファレンシャルギヤ20、車軸21等を介して駆動輪22に接続されている。そして、上記出力軸の回転は、それら各部材19,20,21を通じて駆動輪22に伝達される。
【0046】
変速機15は、上記入力軸17及び出力軸に加え、複数対の変速ギヤ列(変速段)と複数個のスリーブとを備えている。また、変速機15の変速段を切替えるために、電動モータ等により構成される変速機用アクチュエータ23が設けられている。そして、このアクチュエータ23の作動により、変速機15ではスリーブが出力軸の軸方向に移動される。この移動によりギヤが噛合い、特定の変速ギヤ列における動力伝達が可能となる。また、各スリーブが対の変速ギヤ列における中間(ニュートラル)位置に移動されると、各変速ギヤ列での動力伝達が遮断される。
【0047】
また、車両10の運転席の近傍にはシフト装置24が組み付けられている。シフト装置24には、シフトレバー25がシフトゲート(図示略)に沿って変位可能に設けられている。シフトゲートには、例えばリバース(R)位置、ニュートラル(N)位置、シーケンシャル(S)位置、ドライブ(D)位置等の変速位置が設定されており、運転者が所望の変速位置へシフトレバー25を変位させることが可能となっている。
【0048】
以下、それら変速位置が選択される状況、及びそのときの変速機15の動作態様について各別に説明する。
・「N位置」は、変速機15の入力軸17と出力軸との連結を遮断する際に選択される位置である。すなわち、シフトレバー25がN位置に操作されると、変速機15は動力伝達を遮断する状態に切り替えられる。
【0049】
・「R位置」は、車両10を後退させる際に選択される位置である。すなわち、シフトレバー25がR位置に操作されると、変速機15は後進変速段に切替えられる。
【0050】
・「S位置」は、複数の前進変速段についての変速動作を運転者が手動によって行う際に選択される位置である。S位置の両側には「+」位置及び「−」位置が設けられている。「+」位置はシフトアップに際しシフトレバー25が操作される位置であり、「−」位置は、シフトダウンに際しシフトレバー25が操作される位置である。なお、シフト装置24には、「+」位置や、「−」位置へ操作されたシフトレバー25をシーケンシャル位置に復帰させるための復帰機構(図示略)が設けられている。そして、シフトレバー25がS位置に操作されているときに、同レバー25がS位置を中立位置として「+」位置または「−」位置へ操作されると、変速機15の複数の前進変速段がアップまたはダウンされる。「+」位置はアップ位置であり、1回の操作毎に変速段はアップすなわち変速比の小さい高速段側へ1段ずつ変速される。一方、「−」位置はダウン位置であり、1回の操作毎に変速段はダウンすなわち変速比の大きい低速段側へ1段ずつ変速される。
【0051】
・「D位置」は、上記変速動作を、運転者によるシフトレバー25の操作によらず、車両10の運転状態やアクセルペダル26の踏み込み量等に応じて自動的に行わせる場合に選択される位置である。すなわち、D位置が選択された場合には、上記変速機15は、いわゆる自動変速機として機能する。
【0052】
また、車両10の運転席には上記アクセルペダル26が設けられている。更に、エンジン11の吸気通路11aには、スロットルバルブ27が設けられている。このスロットルバルブ27は、同バルブ27に連結されたモータ28の駆動を通じて開閉されるもので、その開度に応じてエンジン11に供給される空気量を調量する。
【0053】
一方、車両10には、その運転状態やエンジン11の運転状態を検出するために各種のセンサやスイッチが設けられている。例えば、シフト装置24にはシフトレバー25の位置を検出するシフト位置センサ31が設けられている。また、変速機15には、ギヤのシフト方向及びセレクト方向をそれぞれ検出する2つのストロークセンサ32,33が設けられている。これらストロークセンサ32,33は、選択されている変速機15の変速段を検出している。更に、車両10の走行速度(車速SPD)を検出するための車速センサ34や、上記クランク軸12の回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するための回転速度センサ35がそれぞれ設けられている。加えて、エンジン11には、その冷却水の温度(THW)を検出するための水温センサ36が設けられている。併せて、上記アクセルペダル26の近傍には、同ペダル26の踏み込み量(アクセル開度ACC)を検出するためのアクセルセンサ37が設けられている。
【0054】
その他にも、上記スロットルバルブ27の開度(スロットル開度TA)を検出するためのスロットルセンサ38や、変速機15の入力軸17の回転速度(インプット回転速度NI)を検出するための回転速度センサ39等が設けられている。併せて、車両10の運転席に設けられたブレーキペダル(図示略)の近傍には、同ペダルについての踏み込みの有無を検出するためのブレーキスイッチ40が設けられている。
【0055】
他方、本実施の形態の装置は、電子制御装置41を備えて構成されている。電子制御装置41はマイクロコンピュータを中心として構成されており、この電子制御装置41には上記各センサ31〜39及びブレーキスイッチ40の検出信号がそれぞれ取り込まれている。そして、それら信号に基づいて上記電子制御装置41の中央処理装置(CPU)が、記憶手段としての読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、及び制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。上記CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0056】
なお、上記各種制御としては、クラッチ用アクチュエータ57の制御を通じたクラッチ14の制御(クラッチ制御)や、変速機用アクチュエータ23の制御を通じた変速機15の変速段についての切り替え制御、モータ28の制御を通じたスロットルバルブ27の開度制御(スロットル制御)等が挙げられる。
【0057】
ここで、本実施の形態では、上記クラッチ14として、周知の乾式単板式摩擦クラッチが用いられている。
以下、このクラッチ14の具体的な構造について、図2を参照して説明する。
【0058】
図2に示されるように、上記クランク軸12に取り付けられたフライホイール13にはクラッチカバー51が一体回転可能に取付けられている。一方、変速機15の入力軸17にはクラッチディスク18がスプライン結合されている。このため、クラッチディスク18は入力軸17と一体回転しつつ、軸方向(図2の左右方向)にスライド可能である。
【0059】
クラッチディスク18とクラッチカバー51との間にはプレッシャプレート52が配置されている。プレッシャプレート52は、ダイヤフラムスプリング53の外端部によってフライホイール13側へ押し付けられている。この押し付けにより、クラッチディスク18とプレッシャプレート52との間、及びフライホイール13とクラッチディスク18との間でそれぞれ摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、クラッチ14がいわゆる接続(継合)された状態となり、フライホイール13、クラッチディスク18及びプレッシャプレート52が一体となって回転する。このようにして、エンジン11から変速機15への動力伝達が行われる。この動力伝達にともない、エンジン11からクラッチ14を介して変速機15に伝達されるトルクは、「クラッチトルク」と呼ばれる。従って、このクラッチトルクの大きさによって、動力伝達の程度を表すことができる。
【0060】
一方、このクラッチ14は、車両10の発進動作や変速機15の変速動作に際して、クラッチ14の非継合状態と継合状態との切り替え操作がエンジン回転速度NE等に基づいて自動的に行われるようになっている。
【0061】
すなわち先ず、上記入力軸17には、前記動力伝達の程度を調整したり、動力伝達を遮断したりするものとして機能するレリーズベアリング54が軸方向へのスライド可能に装着されている。また、レリーズベアリング54の近傍にはレリーズフォーク55が軸56により回動可能に支持されており、その一端部(図2の下端部)がレリーズベアリング54に当接している。レリーズフォーク55の他端部(図2の上端部)には、例えば電動モータ等からなるクラッチ用アクチュエータ57がギヤ機構(図示略)等を介して連結されている。
【0062】
そして、このクラッチ用アクチュエータ57が駆動されて、レリーズフォーク55が時計周り方向へ回動されると、レリーズベアリング54がフライホイール13側へ押される。そして、同方向にレリーズベアリング54が移動することにより、ダイヤフラムスプリング53の内端部が同方向へ弾性変形する。その結果、ダイヤフラムスプリング53のプレッシャプレート52を押し付ける力が弱まり、上記摩擦力が減少する。
【0063】
このように本実施の形態にかかるクラッチ14にあっては、クラッチ用アクチュエータ57の駆動量に応じて上記摩擦力が変化するようになっている。そして、このクラッチ用アクチュエータ57の駆動量は、後に詳述するクラッチ制御を通じて、エンジン回転速度NE等に基づいて調節されるようになっている。
【0064】
このクラッチ用アクチュエータ57のストロークは、便宜的に継合領域、半クラッチ領域及び非継合領域の3つに分けられる。継合領域では、摩擦力が「大」となってクラッチ14が接続(継合)され、プレッシャプレート52、クラッチディスク18及びフライホイール13が一体となって回転し、エンジン11から変速機15への動力伝達が行われる。このときにはクラッチトルクが最大となる。
【0065】
上記半クラッチ領域では、摩擦力が「中程度」となって、クラッチ14が半クラッチ状態となり、フライホイール13、クラッチディスク18及びプレッシャプレート52が滑りながら接続された状態となる。このときには、クラッチトルクは前記継合領域での値よりも小さくなる。
【0066】
非継合領域では、摩擦力が「小」となってクラッチ14が切断され、フライホイール13の回転がクラッチディスク18に伝わらず、エンジン11から変速機15への動力伝達が遮断される。このときにはクラッチトルクが前記半クラッチ領域での値よりもさらに小さくなる。
【0067】
そして、車両10の発進時における前記クラッチ制御に際して、上記クラッチ用アクチュエータ57は、基本的には、以下のようにその駆動が制御される。
本実施の形態の装置では、クラッチ14が半クラッチ状態である期間にあって、エンジン11の出力トルクとクラッチトルクとがつり合うエンジン回転速度NE(継合回転速度)を所望の特性をもって推移させるべく、上記アクチュエータ57の駆動が制御される。
【0068】
すなわち先ず、そのときどきのエンジン回転速度NEに基づいて図3に実線で示すAマップから目標クラッチトルクTTcが算出される。なお、上記Aマップは、図3に示すように、エンジン回転速度NEに基づき上記目標クラッチトルクTTcを算出するためのマップであり、エンジン回転速度NEと同速度NEにおいて適切な上記目標クラッチトルクTTcとの関係が実験などにより求められた上で、電子制御装置41に予め記憶されている。この「適切な目標クラッチトルクTTc」とは、例えばクラッチ14の非継合状態から継合状態への移行を、効率よく、且つ所望の特性をもって行うことの可能なクラッチトルクを意味する。
【0069】
次に、こうして算出された目標クラッチトルクTTcに基づいて図4に示すBマップから上記クラッチ用アクチュエータ57の目標ストローク量Tstが算出される。なお、上記Bマップは、図4に示すように、目標クラッチトルクTTcに基づき上記目標ストローク量Tstを算出するためのマップであり、目標クラッチトルクTTcと目標ストローク量Tstとの関係が実験などにより求められた上で、これも電子制御装置41に予め記憶されている。
【0070】
その後、上記算出された目標ストローク量Tstに基づいて、クラッチ用アクチュエータ57の駆動が制御される。すなわち、クラッチ用アクチュエータ57が、そのストローク量stを上記目標ストローク量Tstとするべく駆動される。
【0071】
本実施の形態の装置では、こうしたクラッチ制御を通じてクラッチ用アクチュエータ57の駆動を制御することで、前記継合回転速度が所望の特性で推移するように調節される。
【0072】
ここで、エンジン回転速度NEに対する上記目標ストローク量Tstを大きな値に設定することで、少なくとも半クラッチ状態である期間においてクラッチディスク18で発生する摩擦熱を低減することが可能になることが発明者によって確認されている。エンジン回転速度NEに対する目標ストローク量Tstを大きな値に設定すると、クラッチ14の非継合状態から継合状態へと移行がエンジン回転速度NEが相対的に低い環境下で行われるようになる。すなわち、その移行が速やかに行われるようになって、半クラッチ状態が継続される時間が短縮されるようになり、クラッチディスク18で発生する摩擦熱が低減されるようになる。
【0073】
また、このようにエンジン回転速度NEに対する目標ストローク量Tstを大きな値に設定すると、上記摩擦熱を低減することが可能になるとはいえ、車両10の加速性能の低下やクラッチ14の継合過程におけるショックの増大等といった不都合を招くおそれがある。そして、こうした不都合は、極力抑えられることが望ましい。
【0074】
そこで、本実施の形態の装置では、上記不都合の発生を極力抑制しつつ上記摩擦熱を低減するべく、前記算出された目標クラッチトルクTTcを下式(1)に従って補正する補正処理を実行するようにしている。
TTc←TTc×補正係数K1 …(1)
なお、上記補正係数K1は、クラッチ14の温度に基づいて図5に示すCマップから、以下に記載する態様で算出される値である。このCマップは、図5に示すように、推定クラッチ温度Tcに基づき補正係数K1を算出するためのマップであり、推定クラッチ温度Tcと同温度Tcにおいて適切な補正係数K1との関係が実験などにより求められた上で、これも電子制御装置41に予め記憶されている。また、本実施の形態では、上記関係式(1)により補正される以前の目標クラッチトルクTTcが、クラッチの伝達トルクの基本値に相当する。
【0075】
クラッチ14の温度が所定温度Tx以下であるときには、補正係数K1として「1.0」が算出される。なお、所定温度Txとしては、クラッチ14の温度が同温度Txよりも高くなったときに、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を招くおそれのある温度(例えば250℃)が設定される。
【0076】
従って、このとき、すなわち上記摩耗を招くおそれのないときには、目標クラッチトルクTTcの補正が行われず、上記Aマップから算出された目標クラッチトルクTTcがそのまま前記クラッチ制御に用いられる。すなわち、このときには上記クラッチ14が非継合状態から継合状態へと、効率よく、且つ所望の特性をもって移行される。
【0077】
一方、クラッチ14の温度が所定温度Txよりも高く且つ所定温度Tyよりも低いときには、補正係数K1として、「1.0」よりも大きい値であって同クラッチ14の温度が高くなるほど大きな値が算出される。なお、所定温度Tyとしては、クラッチ14の温度が同温度Ty以上の温度になったときに、上記摩耗を招く可能性が極めて高くなる温度(例えば300℃)が設定される。
【0078】
このときには、図3中にその一例を一点鎖線で示すように、エンジン回転速度NEに対する目標クラッチトルクTTcが、クラッチ14の温度が高くなるほど、換言すれば、上記摩耗を招く可能性が高くなるほど大きくなるように補正される。すなわち、上記摩耗を招く可能性が高くなるほど、前記継合回転速度が低い速度となるようにアクチュエータ57のストローク量が調節される。
【0079】
これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果が発揮されるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、上記摩耗の適切な抑制が図られた上で、上記補正の実行に伴うクラッチ14の継合ショックの増大や車両10の加速性能の低下等といった不都合の発生についてもこれが極力抑えられるようになる。
【0080】
他方、クラッチ14の温度が所定温度Ty以上の温度であるときには、補正係数K1として所定値βが算出される。なお、所定値βとしては、この所定値βを用いて上記関係式(1)から目標クラッチトルクTTcが算出された場合に、上記不都合の若干の発生が見込まれるとはいえ、クラッチディスク18の温度上昇が効果的に抑制される値(例えば「1.2」)が設定されている。すなわち、このときには、上記クラッチディスク18で発生する摩擦熱を可能な限り低減させるように上記クラッチ制御が実行される。
【0081】
なお、本実施の形態の装置では、こうした補正係数K1の算出に用いるクラッチ14の温度を、エンジン回転速度NEとインプット回転速度NIとの回転速度差や、上記クラッチトルク、熱伝達率等に基づいて推定するようにしている。これは以下の理由による。
【0082】
前述したクラッチディスク18の摩耗は、同クラッチ14内部における摺動面(図2)、すなわちクラッチディスク18とプレッシャプレート52とが接している面や、フライホイール13とクラッチディスク18とが接している面の温度が過度に上昇することによって生じる。このため、そうした過剰な温度上昇を的確に抑制するためには、上記補正係数K1の算出に用いるクラッチ14の温度として、上記摺動面の温度を直接検出することが好ましい。しかしながら、回転及び摺動している部分にその温度を直接検出するセンサを設けることは困難である。こうした実情をふまえ、本実施の形態の装置では、クラッチ14(詳しくはクラッチディスク18)の温度を推定し、その推定した温度(推定クラッチ温度Tc)を上記補正係数K1の算出に用いるようにしている。
【0083】
以下、こうした推定クラッチ温度Tcを算出する処理及び上記補正処理を含むクラッチ制御処理の処理手順について、図6及び図7を参照して説明する。
なお、図6は推定クラッチ温度Tcを算出する処理の処理手順を示すフローチャートであり、図7はクラッチ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図6に示される処理は、図7に示される処理の一環(ステップS203)として実行される処理である。更に、図7のフローチャートに示される一連の処理は、所定時間毎の割り込み処理として、上記電子制御装置41により実行される。本実施の形態では、上記電子制御装置41が、クラッチ14の継合操作を実行する制御手段として機能する。
【0084】
ここでは先ず、上記推定クラッチ温度Tcを算出する処理の一例についてその処理手順を、図6を参照して説明する。
図6に示されるように、この処理では先ず、ステップS101〜S105の処理を通じて、本処理の実行周期あたりのクラッチ14の上昇温度ΔT(in)が算出される。
【0085】
すなわち先ず、エンジン回転速度NEとインプット回転速度NIとに基づいて、下式(2)から回転速度差Nsが算出される(ステップS101)。
Ns=NE−NI …(2)
その後、この回転速度差Nsが、下式(3)に従って角速度変換され、相対角速度ωsが算出される(ステップS102)。
ωs=Ns×2×π/60 …(3)
そしてその後、この相対角速度ωsと前記クラッチトルクとに基づいて下式(4)から、このときクラッチ14にて生じている摩擦エネルギーEn(in)が算出される(ステップS103)。
En(in)=ωs×クラッチトルク …(4)
なお、上記クラッチトルクとしては、クラッチ用アクチュエータ57のストローク量stに基づいてBマップ(図4)から算出される目標クラッチトルクTTcが用いられる。
【0086】
その後、上記摩擦エネルギーEn(in)、クラッチカバー51を形成する材料の比熱(例えば「鉄」:465(J/kg・℃))、同カバー51の重量及び補正係数U1に基づいて下式(5)から、クラッチ14の1秒あたりの上昇温度ΔTb(in)が算出される(ステップS104)。
ΔTb(in)=(En(in)×1/2)/(比熱×クラッチカバー重量)×U1 …(5)
なお、本処理では、上記摩擦エネルギーEn(in)のうちの半分がプレッシャプレート52(クラッチカバー51)側に、また残りの半分がフライホイール13側にそれぞれ流出すると仮定している。
【0087】
ここで、上記フライホイール13はその熱容量が十分に大きいために、同フライホイール13側に流出する分の上記摩擦エネルギー(in)は、その流出が滞りなく進む。このため、クラッチ14の温度上昇にはさほど寄与しない。一方、上記クラッチカバー51の熱容量はさほど大きくないために、同カバー51側に流出する分の上記摩擦エネルギー(in)は、一時的にクラッチディスク18に滞り、これがクラッチ14の温度上昇に寄与することとなる。こうした実情をふまえ、上記関係式(5)では、クラッチ14の温度上昇に寄与する摩擦エネルギーとして、上記En(in)の半分のみを考慮するようにしている。また、上記補正係数U1は、実験等により求められる適合値であって、これも予め電子制御装置41に記憶されている。
【0088】
そしてその後、上記「1秒あたりの上昇温度ΔTb(in)」に基づいて下式(6)から、本処理の実行周期あたりの上昇温度ΔT(in)が算出される(ステップS105)。
ΔT(in)=ΔTb(in)/実行周期 …(6)
こうして上記上昇温度ΔT(in)が算出された後、以下のステップS106〜S110の処理を通じて、本処理の実行周期あたりのクラッチディスク18の下降温度ΔT(out)が算出される。
【0089】
すなわち先ず、前回の処理において算出された推定クラッチ温度Tc’と、冷却水温度THWとに基づいて下式(7)から、クラッチ14の温度と同クラッチ14が有する熱を奪う雰囲気の温度との温度差Tdifが算出される(ステップS106)。
Tdif=Tc’−THW …(7)
なお、この関係式(7)にあっては、上記冷却水温度THWを、クラッチ14周辺の雰囲気の温度に代わる温度として用いている。
【0090】
その後、エンジン回転速度NEや車速SPDに基づいて下式(8)から、このときクラッチ14が有する熱伝達率αが算出される(ステップS107)。
α=自然対流熱伝達率+基準熱伝達率((回転速度係数×NE)+(車速係数×SPD)) …(8)
なお、上記「自然対流熱伝達率」は、エンジン11及び車両10が運転されていない状況下、すなわちクラッチ14の雰囲気が自然対流のみによって対流している状況下において、同クラッチ14が有する表面熱伝達率である。また、上記「基準熱伝達率(回転速度係数×NE)」はエンジン回転速度NEの上昇によって生じる上記雰囲気の対流に伴って増大する上記表面熱伝達率に相当し、「基準熱伝達率(車速係数×SPD)」は車両10の走行によって生じる走行風の影響により増大する上記表面熱伝達率に相当する。更に、これら自然対流熱伝達率、基準熱伝達率、回転速度係数、及び車速係数についても、それぞれ実験などにより求められた上で、予め電子制御装置41に記憶されている。
【0091】
その後、上記熱伝達率α、クラッチカバー51の表面にあって同カバー51からの放熱が行われる面積(放熱面積)、及び上記温度差Tdifに基づいて下式(9)から、このときクラッチカバー51から放射されている放熱エネルギーEn(out)が算出される(ステップS108)。
En(out)=α×放熱面積×Tdif …(9)
そしてその後、上記放熱エネルギーEn(out)、クラッチカバー51の比熱、同クラッチカバー51の重量、及び補正係数U2に基づいて下式(10)から、クラッチ14の1秒あたりの下降温度ΔTb(out)が算出される(ステップS109)。
ΔTb(out)=En(out)
/(比熱×クラッチカバー重量)×U2 …(10)
なお、上記補正係数U2は、実験等により求められる適合値であって、これも予め電子制御装置41に記憶されている。
【0092】
その後、上記「1秒あたりの下降温度ΔTb(out)」に基づいて下式(11)から、本処理の実行周期あたりの下降温度ΔT(out)が算出される(ステップS110)。
ΔT(out)=ΔTb(out)/実行周期 …(11)
こうして下降温度ΔT(out)が算出された後、そのΔT(out)、上昇温度ΔT(in)、及び前回の推定クラッチ温度Tc’に基づいて下式(12)から、推定クラッチ温度Tcが算出される(ステップS111)。
Tc=Tc’+T(in)−T(out) …(12)
次に、前記クラッチ制御処理の具体的な処理手順について、図7を参照して説明する。
【0093】
図7に示されるように、この処理では先ず、車両10が発進中であるか否かが判断される(ステップS201)。この判断は、例えば変速機15において1速、2速等の前進段が変速段として選択されていること、アクセル開度ACCが「0」でないこと、車速SPDが所定速度以下であること等の条件が満たされているか否かによって判断される。
【0094】
そして、車両10が発進中ではないと判断される場合には(ステップS201:NO)、以下の処理を実行することなく、本処理が一旦終了される。
一方、車両10が発進中であると判断される場合には(ステップS201:YES)、エンジン回転速度NEに基づきAマップ(図3)から、前記目標クラッチトルクTTcが算出される(ステップS202)。
【0095】
その後、例えば前述したような態様で推定クラッチ温度Tcが算出され(ステップS203)、その推定クラッチ温度Tcに基づいてCマップ(図5)から、これも前述した態様で補正係数K1が算出される(ステップS204)。
【0096】
その後、先のステップS202の処理において算出された目標クラッチトルクTTcが、上記補正係数K1に基づき前記関係式(1)のように補正される(ステップS205)。
【0097】
そしてその後、上記補正後の目標クラッチトルクTTcに基づいてBマップ(図4)から目標ストローク量Tstが算出され、その目標ストローク量Tstに基づきクラッチ用アクチュエータ57が駆動される(ステップS206)。その後、本処理は一旦終了される。
【0098】
以下、上記クラッチ制御処理による作用について、図8に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
なお、図8は上記クラッチ制御処理の処理態様の一例を示したものであり、同図8において、(a)にはアクセル開度ACCの推移を、(b)にはエンジン回転速度NEの推移を、(c)にはインプット回転速度NIの推移をそれぞれ示している。
【0099】
また、同図8に示す例にあってそのタイミングt11では、以下の各条件が満たされている。
・変速機15の変速段として、1速が選択されている。
・アクセル開度ACCが「0」である。
・車速SPDが「0」である。
・推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高い温度である。
【0100】
特に、図8(c)にあって、実線には上記補正処理が実行される本実施の形態の装置におけるインプット回転速度NIの推移を示し、一点鎖線には同補正処理が行われない従来の装置におけるインプット回転速度NIの推移を示している。
【0101】
さて、そうしたタイミングt11において、図8(a)に示されるように、アクセルペダル26が踏み込まれると、このときクラッチ制御を通じてクラッチ用アクチュエータ57の駆動が開始される。すなわち、クラッチ14の非継合状態から継合状態への移行が開始される。
【0102】
本実施の形態の装置では、上記補正処理を通じて推定クラッチ温度Tcに応じたかたちで目標クラッチトルクTTcが補正された上で、この補正された目標クラッチトルクTTcに基づいてクラッチ用アクチュエータ57についての目標ストローク量Tstが算出される。この補正は、具体的には、エンジン回転速度NEに対する目標クラッチトルクTTcが大きな値となるように実行される。
【0103】
このため、図8(c)に実線で示す本実施の形態の装置では、同図8(c)に一点鎖線で示す従来の装置と比べて、クラッチ用アクチュエータ57のストローク量が速やかに増大されるようになり、ひいては半クラッチ状態の継続時間が短縮されるようになる。ちなみに、図8にあって、上記継続時間とは、本実施の形態の装置ではタイミングt11〜t12であり、従来の装置ではタイミングt11〜t13である。
【0104】
ここで、図8にあっては、エンジン回転速度NE(図8(b))とインプット回転速度NI(図8(b))とにより挟まれる部分の面積がクラッチディスク18で発生する摩擦熱の量に相当する。すなわち、本例では、上記従来の装置と比べて、図8中に領域Aで示される分だけ上記摩擦熱が低減されるようになる。
【0105】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)クラッチ14の温度に応じたかたちで目標クラッチトルクTTcを補正するとともに、この補正された目標クラッチトルクTTcに基づいてクラッチ用アクチュエータ57についての目標ストローク量Tstを算出するようにした。これにより、クラッチ14の温度が高いときに、同温度が低いときと比べて、同クラッチ14を非継合状態から継合状態へと速やかに移行させることが可能になる。従って、半クラッチ状態が継続される時間を短縮することができるようになって、クラッチディスク18で発生する摩擦熱を好適に低減させることができるようになり、ひいては過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を好適に抑制することができるようになる。
【0106】
(2)また、回転速度差Nsやクラッチトルク、熱伝達率等に基づいてクラッチ14の温度を推定するとともに、この推定した温度(推定クラッチ温度Tc)を上記補正に用いるようにした。これにより、直接検出することの困難なクラッチディスク18の温度を精度よく推定するとともに、上記補正をクラッチディスク18の温度に応じたかたちで精度よく実行することができるようになる。
【0107】
(3)また、上記補正を、推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高いときに限って実行するようにした。これにより、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗が生じるおそれがないときには上記補正の実行を禁止することができ、同補正を効率的に実行することができるようになる。
【0108】
(4)推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く、且つ所定温度Tyよりも低いときには、同推定クラッチ温度Tcが高いときほどクラッチトルクに対する継合回転速度が低い速度になるように、目標クラッチトルクTTcを補正するようにした。これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果を発揮させることができるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、同摩耗の好適な抑制を図りつつ、上記補正の実行に伴う不都合の発生についてもこれを極力抑えることができるようになる。
【0109】
(5)上記実施の形態では、上記補正を、車両10の発進時において実行するようにした。このため、クラッチディスク18で発生する摩擦熱の量が極めて大きくなる車両10の発進に際して、同クラッチディスク18の温度上昇を好適に抑制することができるようになる。
【0110】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる自動クラッチシステムの制御装置を具体化した第2の実施の形態について、先の第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0111】
この第2の実施の形態も、そのシステム構成自体は、図1及び図2に例示した第1の実施の形態で説明したものと同様のものを想定しており、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0112】
なお、第2の実施の形態にかかるシステムにあっては、車両10の急発進要求がなされたときに、同車両10を速やかに発進させるべく、エンジン回転速度NEを所定速度だけ上昇させた後、クラッチ14の継合を開始するといった制御(急発進制御)が実行されるといった点において、第1の実施の形態と異なる。
【0113】
さて、この第2の実施の形態にあって、そうした急発進制御が実行されると、クラッチ14が半クラッチ状態であるときにおけるエンジン回転速度NEとインプット回転速度NIとの回転速度差Ns、いわゆるすべりが極めて大きくなる。このとき、クラッチディスク18で多量の摩擦熱が発生することとなり、これはクラッチディスク18の過剰な温度上昇を招く一因となっている。
【0114】
そこで、本実施の形態では、第1の実施の形態にかかる補正処理に代えて、上記急発進制御に際して、上記所定速度を推定クラッチ温度Tc応じたかたちで補正するといった補正処理を実行するようにしている。
【0115】
以下、こうした補正処理を含む本実施の形態にかかる急発進制御処理の処理手順について、図9を参照して説明する。
なお、図9のフローチャートに示される一連の処理は、その処理手順を概念的に示したものであり、実際には、所定時間毎の割り込み処理として、前記電子制御装置41により実行される。また、図9におけるステップS303の処理は先の図7におけるステップS203の処理と同様の処理であるため、その処理についての詳細な説明は省略する。本実施の形態では、前記電子制御装置41が、急発進制御に際し、エンジン回転速度NEの上昇量をクラッチ14の温度に基づき補正しつつ同クラッチ14の継合操作を実行する制御手段として機能する。
【0116】
図9に示されるように、この処理では先ず、急発進要求がなされたか否かが判断される(ステップS301)。ここでは、例えば車両10が停止されていること(車速SPDが「0」であること)、アクセルペダル26がほぼ全開に踏み込まれていること(アクセル開度ACCがほぼ「全開」であること)といった両条件が共に満たされるときに、急発進要求有りと判断される。
【0117】
そして、急発進要求がなされていないと判断される場合には(ステップS301:NO)、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
一方、急発進要求有りと判断される場合には(ステップS301:YES)、「エンジン回転速度NEを所定速度だけ上昇させる」といった構成を実現すべく、同所定速度の制御目標値についてその基準となる値(基本吹き上げ回転速度ΔNEtb)が設定される(ステップS302)。本実施の形態では、この基本吹き上げ回転速度ΔNEtbとして、一定の値(例えば、2000回転/分)が設定されている。
【0118】
その後、前述した態様で、推定クラッチ温度Tcが算出される(ステップS303)。そして、その推定クラッチ温度Tcに基づいて図10に示すDマップから補正係数K2が算出された後(ステップS304)、その補正係数K2と上記基本吹き上げ回転速度ΔNEtbとに基づいて下式(13)から、上記制御目標値(目標吹き上げ回転速度ΔNEt)が算出される(ステップS305)。
ΔNEt=ΔNEtb×K2 …(13)
なお、上記Dマップは、図10に示すように、推定クラッチ温度Tcに基づき補正係数K2を算出するためのマップであり、推定クラッチ温度Tcと同温度Tcにおいて適切な補正係数K2との関係が実験などにより求められた上で、電子制御装置41に予め記憶されている。
【0119】
また、上記補正係数K2は、以下に記載する態様で算出される値である。
推定クラッチ温度Tcが前記所定温度Tx以下であるときには、補正係数K2として「1.0」が算出される。これにより、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を招くおそれのないときには、目標吹き上げ回転速度ΔNEtとして、上記設定された基本吹き上げ回転速度ΔNEtbがそのまま用いられるようになる。すなわち、このときには上記推定クラッチ温度Tcに基づく上記所定速度についての補正が行われず、車両10の十分な急発進性能が得られる。
【0120】
一方、推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く且つ前記所定温度Tyよりも低いときには、補正係数K2として、「1.0」よりも小さい値であって同推定クラッチ温度Tcが高くなるほど小さな値が算出される。このときには、上記目標吹き上げ回転速度ΔNEtが、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど小さな値として算出される。これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果が発揮されるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、上記摩耗の好適な抑制が図られた上で、上記補正の実行に伴う急発進性能の低下が極力抑えられるようにもなる。
【0121】
他方、推定クラッチ温度Tcが所定温度Ty以上の温度であるときには、補正係数K2として「0」が設定される。従って、このとき、すなわち上記摩耗が発生する可能性が極めて高いときには、上記関係式(13)を通じて算出される目標吹き上げ回転速度ΔNEtについても「0」となり、上記「エンジン回転速度NEを所定速度だけ上昇させる」といった制御自体がなされなくなる。すなわち、このときには車両の急発進性能が得られなくなるとはいえ、急発進制御の実行に起因してクラッチディスク18の温度が上昇することが防止される。
【0122】
このように目標吹き上げ回転速度ΔNEtが算出された後、急発進要求がなされたときのエンジン回転速度NEとこのときのエンジン回転速度NEとの速度差(実吹き上げ回転速度)ΔNEが算出される。そして、これに併せて、この実吹き上げ回転速度ΔNEが上記目標吹き上げ回転速度ΔNEt以上になったか否かが判断される(図9のステップS306)。
【0123】
そして、実吹き上げ回転速度ΔNEが目標吹き上げ回転速度ΔNEt未満であると判断される場合には(ステップS306:NO)、実吹き上げ回転速度ΔNEが目標吹き上げ回転速度ΔNEt以上になるまで、この判断(ステップS306)が繰り返し行われる。
【0124】
その後、実吹き上げ回転速度ΔNEが目標吹き上げ回転速度ΔNEt以上になると(ステップS306:YES)、クラッチ14を継合させる処理が開始されるとともに実行される(ステップS307)。なお、この処理にあっては、上記目標吹き上げ回転速度ΔNEtに応じたかたちで、クラッチ14を非継合状態から継合状態へと効率よく且つ所望の特性をもって移行させるべく、前記クラッチ用アクチュエータ57の駆動が制御される。そして、クラッチ14が継合状態に移行したと判断されることをもって、本処理が一旦終了される。
【0125】
以下、本実施の形態にかかる急発進制御処理による作用について、図11に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
なお、図11は上記急発進制御処理の処理態様の一例を示したものであり、同図11において、(a)にはアクセル開度ACCの推移を、(b)にはエンジン回転速度NEの推移を、(c)にはインプット回転速度NIの推移をそれぞれ示している。
【0126】
また、同図11に示す例にあってそのタイミングt21では、以下の各条件が満たされている。
・変速機15の変速段として、1速が選択されている。
・アクセル開度ACCが「0」である。
・車速SPDが「0」である。
・推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高い温度である。
【0127】
特に、図11(b)にあって、実線には上記補正処理が実行される本実施の形態の装置におけるエンジン回転速度NEの推移を示し、一点鎖線には同補正処理が行われない従来の装置におけるエンジン回転速度NEの推移を示している。
【0128】
さて、そうしたタイミングt21において、図11(a)に示されるように、アクセルペダル26が全開まで踏み込まれると、その後において先ず、クラッチ14が非継合状態に維持された上で、図11(b)に示されるように、エンジン回転速度NEが上昇される。
【0129】
その後、エンジン回転速度NEが上記目標吹き上げ回転速度ΔNEtだけ上昇したタイミングで、上記クラッチ用アクチュエータ57の駆動が開始されて、クラッチ14の非継合状態から継合状態への移行が開始される(タイミングt22)。そしてその後、クラッチ14が継合状態となる(タイミングt23)。
【0130】
ここで、本例では、推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高い温度であるために、上記補正処理を通じて目標吹き上げ回転速度ΔNEtが小さな値となるように補正される。このため、図11(b)に実線で示す本実施の形態の装置では、その上記実吹き上げ回転速度ΔNEが、同図8(b)に一点鎖線で示す従来の装置における実吹き上げ回転速度ΔNE’と比較して、低減されるようになる。
【0131】
ところで、図11では、クラッチ14が半クラッチ状態である期間にあって、エンジン回転速度NEとインプット回転速度NIとにより挟まれる部分の面積が上記クラッチディスク18で発生する摩擦熱の量に相当する。すなわち、本例では、上記従来の装置と比べて、図11中に領域Bで示される分だけ上記摩擦熱が低減されるようになる。
【0132】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果とともに、先の第1の実施の形態の前記(2)及び(3)の効果に準じた効果が得られるようになる。
【0133】
(1)基本吹き上げ回転速度ΔNEtbをクラッチ14の温度に応じたかたちで補正し、その補正した値を目標吹き上げ回転速度ΔNEtとして算出するようにした。そして、この目標吹き上げ回転速度ΔNEtに基づき急発進制御を実行するようにした。これにより、急発進制御の実行に際して、クラッチ14の温度が高いときには、目標吹き上げ回転速度ΔNEtを小さな値に補正することができるようになる。すなわち、急発進制御における実吹き上げ回転速度ΔNEを減少させて、回転速度差Nsを低減させることができるようになり、クラッチディスク18で発生する摩擦熱を低減することができるようになる。従って、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を好適に抑制することができるようになる。
【0134】
(2)推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く、且つ所定温度Tyよりも低いときには、同推定クラッチ温度Tcが高いときほど目標吹き上げ回転速度ΔNEtを小さな値として算出するようにした。これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果を発揮させることができるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、同摩耗の好適な抑制を図りつつ、上記補正の実行に伴う急発進性能の低下についてもこれを極力抑えることができるようになる。
【0135】
(3)推定クラッチ温度Tcが所定温度Ty以上であるときには、補正係数K2として「0」を設定するようにした。これにより、上記摩耗が発生する可能性が極めて高いときにおける目標吹き上げ回転速度ΔNEtを「0」とすることができ、このとき「エンジン回転速度NEを所定速度だけ上昇させる」といった制御自体が実行されなくなる。従って、このとき車両10の急発進性能が得られなくなるとはいえ、急発進制御の実行に起因してクラッチディスク18の温度が上昇することを防止することができるようになる。
【0136】
(第3の実施の形態)
以下、本発明にかかる自動クラッチシステムの制御装置を具体化した第3の実施の形態について、上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0137】
この第3の実施の形態も、そのシステム構成自体は、図1及び図2に例示した第1の実施の形態で説明したものと同様のものを想定しており、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0138】
なお、この第3の実施の形態にかかるシステムでは、そのエンジン11の出力トルクの調節に際して先ず、アクセル開度ACCに基づいて目標スロットル開度TTAが算出される。そして、スロットル開度TAをこの目標スロットル開度TTAに近づけるべく、前記スロットル制御が実行される。また、このスロットル開度TAに基づいてエンジン11に噴射供給される燃料の量が調量される。すなわち、本実施の形態にかかるエンジン11では、先ずスロットル開度TAが調節され、そのスロットル開度TAに基づいて噴射燃料量の調節制御等、その他必要とされる種々の制御が実行されるようになっている。
【0139】
ここで、前記クラッチ14によって伝達可能なトルクの上限値は、クラッチ用アクチュエータ57が発生する前記プレッシャプレート52を押し付ける力、換言すれば同アクチュエータ57のストローク量stにより定まる。そして、エンジン11のクランク軸12に付与されているトルクのうちの上記上限値を超える分のトルクが、クラッチ14のすべりとなって現われる。従って、エンジン11のクランク軸12に付与されるトルクを減少させれば、その分だけ上記「上限値を超える分のトルク」が低減され、上記クラッチ14のすべり、ひいてはクラッチディスク18で発生する摩擦熱の量も低減されるようになる。
【0140】
そこで、本実施の形態では、第1の実施の形態にかかる補正処理に代えて、クラッチ14の継合操作に際して、推定クラッチ温度Tcに基づきエンジン11の出力トルクを補正する補正処理を実行するようにしている。具体的には、推定クラッチ温度Tcが高いときに、図12に示すように、アクセル開度ACCに対するスロットル開度TAが小さな開度となるように、上記目標スロットル開度TTAを低減補正するようにしている。なお、図12はアクセル開度ACCとスロットル開度TAとの関係の一例を示しており、上記補正処理が実行されない場合の同関係を実線にて示し、また上記補正処理が実行される場合の同関係を一点鎖線にて示している。
【0141】
以下、こうした補正処理を含む本実施の形態にかかるスロットル制御処理の処理手順について、図13を参照して説明する。
なお、図13のフローチャートに示される一連の処理は、所定時間毎の割り込み処理として、前記電子制御装置41により実行される。また、図13におけるステップS402の処理は先の図7におけるステップS201の処理と同様の処理であり、ステップS403の処理は同図7におけるステップS203の処理と同様の処理であるため、それら処理についての詳細な説明は省略する。本実施の形態では、上記電子制御装置41が、クラッチ14の継合操作を実行する制御手段として機能する。
【0142】
図13に示されるように、この処理では先ず、アクセル開度ACCに基づいて、スロットル開度TAの制御目標値についてその基準となる値(基本スロットル開度TTAb)が算出される(ステップS401)。
【0143】
その後、前記車両10が発進中であるか否かが判断され(ステップS402)、同車両10が発進中であると判断される場合には(ステップS402:YES)、前述した態様で、推定クラッチ温度Tcが算出される(ステップS403)。
【0144】
その後、この推定クラッチ温度Tcに基づいて図14に示すEマップから、補正係数K3が算出される(ステップS404)。そして、この補正係数K3と上記基本スロットル開度TTAbとに基づいて下式(14)から、上記制御目標値(目標スロットル開度TTA)が算出される(ステップS405)。
TTA=TTAb×K3 …(14)
なお、上記Eマップは、図14に示すように、推定クラッチ温度Tcに基づき補正係数K3を算出するためのマップであり、推定クラッチ温度Tcと同温度Tcにおいて適切な補正係数K3との関係が実験などにより求められた上で、上記電子制御装置41に予め記憶されている。
【0145】
また、上記補正係数K3は、以下に記載する態様で算出される値である。
推定クラッチ温度Tcが前記所定温度Tx以下であるときには、補正係数K3として「1.0」が算出される。これにより、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を招くおそれのないときには、目標スロットル開度TTAとして、上記算出された基本スロットル開度TTAbがそのまま用いられるようになる。すなわち、このときには上記推定クラッチ温度Tcに基づく上記目標スロットル開度TTAについての補正が行われず、車両10の十分な発進性能が得られる。
【0146】
一方、推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く且つ前記所定温度Tyよりも低いときには、補正係数K3として、「1.0」よりも小さい値であって同推定クラッチ温度Tcが高くなるほど小さな値が算出される。
【0147】
このときには、アクセル開度ACCに対する目標スロットル開度TTAが、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど小さな値として算出される。これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果が発揮されるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、同摩耗の好適な抑制が図られた上で、上記補正の実行に伴う発進性能の低下が極力抑えられるようにもなる。
【0148】
他方、推定クラッチ温度Tcが所定温度Ty以上の温度であるときには、補正係数K3として所定値γが設定される。なお、所定値γとしては、この所定値γを用いて上記関係式(14)から目標スロットル開度TTAが算出された場合に、車両10の発進性能の若干の低下が見込まれるとはいえ、クラッチディスク18の温度上昇が効果的に抑制される値(例えば「0.8」)が設定されている。すなわち、このときには、上記クラッチディスク18で発生する摩擦熱を可能な限り低減させるように上記スロットル制御が実行される。
【0149】
このように推定クラッチ温度Tcに応じたかたちで目標スロットル開度TTAを算出した後、この目標スロットル開度TTAに基づき上記モータ28が駆動される(図13のステップS406)。そしてその後、本処理は一旦終了される。
【0150】
一方、車両10が発進中ではないと判断される場合には(ステップS402:NO)、上記摩耗が生じるおそれのある状況下ではないとして、上記基本スロットル開度TTAbがそのまま目標スロットル開度TTAに設定される(ステップS407)。そして、この場合にも、そうして設定された目標スロットル開度TTAに基づいて上記モータ28が駆動された後(ステップS406)、本処理は一旦終了される。すなわち、この場合には、推定クラッチ温度Tcにかかわらず、このときにおいて必要とされるトルクを出力可能な開度にスロットルバルブ27の開度が調節される。
【0151】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果とともに、先の第1の実施の形態の前記(2),(3)及び(5)の効果に準じた効果が得られるようになる。
【0152】
(1)上記実施の形態では、アクセル開度ACCに基づき算出した基本スロットル開度TTAbをクラッチ14の温度に応じたかたちで補正し、その補正した値を目標スロットル開度TTAとして算出するようにした。そして、スロットル開度TAを上記目標スロットル開度TTAとすべく、モータ28の駆動を制御するようにした。これにより、スロットル制御に際して、クラッチ14の温度が高くなったときには、アクセル開度ACCに対する上記スロットル開度TAを小さな開度に制御することができるようになる。しかも、これに伴って上記噴射燃料量を減量させることもできるようになる。すなわち、このときエンジン11の出力トルクを低減させることができ、上記クラッチ14のすべりを好適に低減させることができる。従って、過剰な温度上昇に起因するクラッチディスク18の摩耗を好適に抑制することができるようになる。
【0153】
(2)推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く、且つ所定温度Tyよりも低いときには、同推定クラッチ温度Tcが高いときほど目標スロットル開度TTAを小さな値として算出するようにした。これにより、上記摩耗が生じる可能性が高いときほど、同摩耗についての高い抑制効果を発揮させることができるようになる。しかも、これとは逆に、上記摩耗が生じる可能性が低いときには、同摩耗の好適な抑制を図りつつ、上記補正の実行に伴う発進性能の低下についてもこれを極力抑えることができるようになる。
【0154】
(その他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施の形態において、推定クラッチ温度Tcが高くなったときに、エンジン回転速度NEに対するアクチュエータ57のストローク量stを小さくすることが可能であれば、補正処理の処理態様は適宜変更可能である。例えば、目標クラッチトルクTTcの算出に用いるエンジン回転速度NEを推定クラッチ温度Tcに基づいて予め補正する構成や、目標ストローク量Tstを推定クラッチ温度Tcに基づいて補正する構成等によっても、上記ストローク量stを小さくすることはできる。
【0155】
・上記第3の実施の形態では、クラッチ14が半クラッチ状態であるときにおけるエンジン11の出力トルクを減少させるべく、目標スロットル開度TTAを補正するようにしたが、これに限られない。例えば、目標スロットル開度TTAの算出に用いるアクセル開度ACCを推定クラッチ温度Tcに基づいて予め補正する等してもよい。
【0156】
また、エンジンによっては、アクセル開度ACCに基づいて燃料噴射量を調節し、その燃料噴射量に基づいてスロットル制御など、必要とされる種々の制御を実行するものもある。こうしたエンジンにあって、上記燃料噴射量を推定クラッチ温度Tcに基づいて補正するようにしてもよい。こうした構成にあっても、エンジンの出力トルクを好適に減少させることが可能になる。なお、こうしたエンジンとしては、例えば気筒内に直接燃料を噴射供給するエンジン、いわゆる直噴式のエンジンが挙げられる。
【0157】
・上記第1及び第3の実施の形態では、補正処理を車両の発進時に実行する構成を例示したが、これに限られない。この補正処理は、例えば変速機15の変速動作が行われる時など、クラッチ14が非継合状態から継合状態に移行されるときであれば、その構成を適宜変更した上で、実行することが可能である。
【0158】
・上記各実施の形態では、本発明をアクセルペダル26が設けられた車両に適用するようにしたが、本発明は、同ペダル26に代えて、アクセルレバー等の他の加速操作子が設けられた車両にも適用可能である。
【0159】
・上記各実施の形態では推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高く所定温度Tyよりも低いときに、同温度Tcが高いときほど補正処理にかかる補正量を大きな値に設定するようにした。この補正量と推定クラッチ温度Tcとの関係は、同温度Tcの変化に応じて連続的に変化する関係であってもよいし、断続的、あるいは段階的に変化する関係であってもよい。
【0160】
・また、推定クラッチ温度Tcが所定温度Tx以下であるときには上記補正量を「0」に設定するとともに、同温度Tcが所定温度Txよりも高いときには一定量だけ補正対象となる値を補正するといったように補正処理を実行することも可能である。
【0161】
・上記各実施の形態では、補正処理を、推定クラッチ温度Tcが所定温度Txよりも高い温度領域に限って実行するようにした。これに限らず、補正処理は、その処理態様を適宜変更した上で、全温度領域にわたって実行することもできる。
【0162】
・上記各実施の形態では、補正処理に用いるクラッチ14の温度を、エンジン回転速度NEとインプット回転速度NIとの回転速度差Nsや、クラッチトルク、熱伝達率等に基づいて推定するようにした。クラッチ14の温度を推定する手法は、精度のよい推定が可能であれば、任意に変更可能である。そうした手法としては、例えば車両10の発進動作や変速機15の変速動作が行われた回数に基づき推定する手法や、クラッチ14の雰囲気の温度を検出し、その検出温度に基づいて推定する手法などが考えられる。また、可能であれば、クラッチ14の温度を推定することに代えて、センサを設けて同温度を直接検出することも可能である。
【0163】
・上記各実施の形態は、第1の実施の形態を(A)、第2の実施の形態を(B)、第3の実施の形態を(C)とすると、(A)+(B)、(A)+(C)、(B)+(C)、あるいは(A)+(B)+(C)といったように適宜組み合わせて実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態が適用される車両についてその概略構成を示すブロック図。
【図2】同車両に搭載されるクラッチについてその側面断面構造を示す側面断面図。
【図3】目標クラッチトルクの算出に用いられるAマップのマップ構造を示す略図。
【図4】目標ストローク量の算出に用いられるBマップのマップ構造を示す略図。
【図5】補正係数K1の算出に用いられるCマップのマップ構造を示す略図。
【図6】推定クラッチ温度を算出する際の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】第1の実施の形態にかかるクラッチ制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図8】同第1の実施の形態の作用を説明するためのタイミングチャート。
【図9】本発明の第2の実施の形態にかかる急発進制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図10】補正係数K2の算出に用いられるDマップのマップ構造を示す略図。
【図11】第2の実施の形態の作用を説明するためのタイミングチャート。
【図12】アクセル開度とスロットル開度との関係の一例を示すグラフ。
【図13】本発明の第3の実施の形態にかかるスロットル制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図14】補正係数K3の算出に用いられるEマップのマップ構造を示す略図。
【符号の説明】
10…車両、11…エンジン、11a…吸気通路、12…クランク軸、13…フライホイール、14…クラッチ、15…変速機、17…入力軸、18…クラッチディスク、19…ドライブシャフト、20…ディファレンシャルギア、21…車軸、22…駆動輪、23…変速機用アクチュエータ、24…シフト装置、25…シフトレバー、26…アクセルペダル、27…スロットルバルブ、28…モータ、31…シフト位置センサ、32,33…ストロークセンサ、34…車速センサ、35,39…回転速度センサ、36…水温センサ、37…アクセルセンサ、38…スロットルセンサ、40…ブレーキスイッチ、41…電子制御装置、51…クラッチカバー、52…プレッシャプレート、53…ダイヤフラムスプリング、54…レリーズベアリング、55…レリーズフォーク、56…軸、57…クラッチ用アクチュエータ。
Claims (16)
- 原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、
前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合回転速度を当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備える
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記クラッチディスクの継合回転速度を、前記原動機の出力トルクと前記クラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度としてその対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、それら原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度が前記クラッチの温度の上昇に伴い低下するように、前記記憶されているクラッチの伝達トルクの基本値を増大補正するものである
請求項1記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、
前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量を当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備える
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇に対応して前記クラッチディスクの継合開始時期を定めるための基準となる同原動機の回転速度を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記クラッチディスクの継合開始が前記原動機の回転速度の上昇量のより少ない値に対応してなされるように、前記記憶されている基準となる原動機の回転速度を低減補正するものである
請求項3記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 請求項4記載の自動クラッチシステムの制御装置において、
前記制御手段は、前記クラッチの温度が過度に高いとき、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う上昇量を強制的に「0」とみなす制御を更に行う
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、
前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの前記原動機側のトルクを当該クラッチの温度に基づき補正して前記継合操作を実行する制御手段を備える
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記原動機の加速操作子の操作量と同原動機の出力トルクとの対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記記憶されている前記原動機の加速操作子の操作量に対応する前記原動機の出力トルクの基準値を低減補正するものである
請求項6記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記原動機が車載エンジンであるとともに、前記原動機の加速操作子がアクセルペダルであり、前記制御手段は、このアクセルペダルの操作量に対応する前記原動機の出力トルクとして、前記車載エンジンの燃料噴射量及びスロットル開度の少なくとも一方を低減補正する
請求項7記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 原動機と変速機との間に介在されるクラッチの継合及び非継合がアクチュエータを介して自動操作される自動クラッチシステムにあって前記クラッチの継合態様を制御する自動クラッチシステムの制御装置であって、
前記アクチュエータによる前記クラッチの継合操作に際し、同クラッチを構成するクラッチディスクの継合回転速度を当該クラッチの温度に基づき補正すること、及び前記クラッチディスクの前記原動機側のトルクを同クラッチの温度に基づき補正すること、及び前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う前記クラッチの継合操作に際し、前記クラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量を当該クラッチの温度に基づき補正すること、の少なくとも1つを行って前記継合操作を実行する制御手段を備える
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記クラッチディスクの継合回転速度を、前記原動機の出力トルクと前記クラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度としてその対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの継合回転速度の補正に際し、それら原動機の出力トルクとクラッチの伝達トルクとがつり合う回転速度が前記クラッチの温度の上昇に伴い低下するように、前記記憶されているクラッチの伝達トルクの基本値を増大補正する
請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記原動機の加速操作子の操作量と同原動機の出力トルクとの対応関係を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの前記原動機側のトルクの補正に際し、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記記憶されている前記原動機の加速操作子の操作量に対応する前記原動機の出力トルクの基準値を低減補正する
請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記原動機が車載エンジンであるとともに、前記原動機の加速操作子がアクセルペダルであり、前記制御手段は、このアクセルペダルの操作量に対応する前記原動機の出力トルクとして、前記車載エンジンの燃料噴射量及びスロットル開度の少なくとも一方を低減補正する
請求項11記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記自動クラッチシステムは、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇に対応して前記クラッチディスクの継合開始時期を定めるための基準となる同原動機の回転速度を予め記憶しており、前記制御手段は、前記クラッチディスクの継合開始時期に対応する前記原動機の回転速度の上昇量の補正に際し、前記クラッチの温度の上昇に伴い前記クラッチディスクの継合開始が前記原動機の回転速度の上昇量のより少ない値に対応してなされるように、前記記憶されている基準となる原動機の回転速度を低減補正する
請求項9記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 請求項13記載の自動クラッチシステムの制御装置において、
前記制御手段は、前記クラッチの温度が過度に高いとき、前記原動機の回転速度の一時的な急上昇を伴う上昇量を強制的に「0」とみなす制御を更に行う
ことを特徴とする自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記制御手段は、前記クラッチの温度が所定の温度以上にあることを条件に、同クラッチの温度に基づく前記補正を実行する
請求項1〜14のいずれかに記載の自動クラッチシステムの制御装置。 - 前記制御手段は、前記クラッチの温度を、前記原動機の出力軸と前記変速機の入力軸との回転速度差、及び前記クラッチディスクを介しての伝達トルク、及び前記クラッチの熱伝達率に基づき推定する
請求項1〜15のいずれかに記載の自動クラッチシステムの制御装置。
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