JP2012122083A - 銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法、 - Google Patents
銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法、 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】銀を含む銀含有金属粉末と銅を含む銅含有酸化物粉末とを含有する粉末成分と、バインダーと、水とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下に示す構成を有するものである。
この構成の焼結体形成用の粘土状組成物においては、銀を含む銀含有金属粉末と、銅を含む銅含有酸化物粉末と、バインダーと、水とを含むものとされている。ここで、銅含有酸化物は、金属Cuに比べて化学的に安定していることから、大気雰囲気下において容易に変質(銅イオンの価数が変化)するおそれが少ない。このため、この焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができるのである。
さらに、銅含有酸化物中の酸素を利用することで、焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することが可能となり、焼結を促進することができる。
この構成の焼結体形成用の粘土状組成物においては、安定な化合物である酸化銅(II)の粉末を含有しているので、焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することができる。
また、CuOの酸素を利用することで、焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することができる。よって、厚さ5mm以上の比較的肉厚な成形体であっても、成形体の内部においてCuOの酸素を利用することでバインダーを燃焼させることができ、高品質な銀焼結体を製出することが可能となる。
CuO粉の含有量が4質量%未満であると、機械的強度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、CuO粉の含有量が35質量%を超えると、伸びが低下するとともに、銀粘土用粉末を用いてなる銀焼結体が研磨後においても美麗な銀色を呈しなくなるおそれがある。このため、CuO粉の含有量を4質量%以上35質量%以下の範囲とすることが好ましい。
CuO粉の含有量を12質量%以上とした場合、CuOの酸素を利用することにより、焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することができる。このため、バインダーを予め除去するための仮焼を行う必要がなく、成形後に乾燥処理を行い、その後本焼成を実施することが可能となる。
前記粉末成分中の金属Cuを前記粉末成分全体に対して2質量%以下とすることにより、焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することができる。なお、前記粉末成分中に含まれる金属Cuとしては、例えば金属Cu粉末、AgとCuの合金粉末に含まれる金属Cu等が挙げられる。
CuOやCu2Oなどの酸化物が多量に前記粉末成分中に含まれると、バインダー焼失及びCOによる還元がなされ難くなり、焼結体形成用の粘土状組成物の焼成時に、焼結性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、Cu2Oも徐々にCuOに変化していくが、金属Cu添加時ほどの急激な変色を伴うものではない。以上のことから、前記粉末成分中に酸化銅(I)が含まれる場合は、前記粉末成分中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が前記粉末成分全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。
この場合、焼結体形成用の粘土状組成物を焼成して得られる銀焼結体の機械的強度及び伸び等を向上させることが可能となる。
また、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物は、前記バインダーを、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉の内の、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成しても良い。また、上記の中でも、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースから構成することが最も好ましい。
前記界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤を使用することができる。
前記油脂としては、例えば、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)等を挙げることができる。
また、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、前記銅含有酸化物粉末として、少なくとも酸化銅(II)の粉末(CuO粉)を含有していることが好ましい。
さらに、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末全体に対してCuO粉を4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上96質量%以下とされていることが好ましい。
また、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末全体に対してCuO粉を12質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上88質量%以下とされていることが好ましい。
さらに、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末中の金属Cuの含有量が該粘土状組成物用粉末全体に対して2質量%以下とされていることが好ましい。
また、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が該粘土状組成物用粉末全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。
さらに、本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、前記銅含有酸化物粉末の粒径が1μm以上25μm以下とされていることが好ましい。
上記構成の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上述の焼結体形成用の粘土状組成物を構成することが可能となり、焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することが可能となる。
この構成の焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、銅を含む銅含有酸化物粉末を有し、変色し難い焼結体形成用の粘土状組成物を製造することが可能となる。
この構成の銀焼結体によれば、上述した構成の焼結体形成用の粘土状組成物を焼成したものであることから、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。すなわち、上述の焼結体形成用の粘土状組成物を加熱焼成して得られた銀焼結体は、優れた機械的強度や伸び等を備えることになる。
上記構成の銀焼結体の製造方法によれば、上述の焼結体形成用の粘土状組成物を成形した後、乾燥処理や加熱焼成処理を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀焼結体を製造することができる。
なお、上述のように、焼結体形成用の粘土状組成物において、CuO粉末の含有量を前記粉末成分全体に対して12質量%以上とした場合には、CuOの酸素を利用することにより、焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することが可能となるため、バインダーを除去するための仮焼工程を省略することができる。
この構成の銀焼結体の製造方法によれば、焼結体形成用の粘土状組成物の成形体の焼成条件を、上述のように限定していることから、バインダーを焼失させて焼結を確実に行うことができる。
なお、厚さが5mm以上とは、成形体の内部に位置する少なくとも1つの内接球の直径が5mm以上とされていることを意味する。
特に、銅含有酸化物粉末として酸化銅(II)(CuO)を含む場合には、酸素の含有量が比較的多くなることから、焼結を促進することができ、厚さが5mm以上と比較的厚くされた焼結体形成用の粘土状組成物の成形体を確実に焼結することが可能となる。
この構成の銀焼結体の製造方法によれば、活性炭による還元により、成形体の焼結を促進することができる。
本発明の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上記構成及び作用により、この焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を用いた焼結体形成用の粘土状組成物を構成することで、焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができる。
本発明の焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、上述の焼結体形成用の粘土状組成物を確実に製造することが可能となる。
本発明の銀焼結体によれば、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。
また、本発明の銀焼結体の製造方法によれば、上記構成の焼結体形成用の粘土状組成物を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀焼結体を製造することができる。
なお、本実施形態では、焼結体形成用の粘土状組成物を銀粘土と、焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を銀粘土用粉末と称して説明する。
本実施形態に係る銀粘土用粉末は、銀を含む銀含有金属粉末と、銅を含む銅含有酸化物粉末を含むものである。
このような銀粘土用粉末を用いて、後述する添加物を加えて混練して銀粘土を構成することにより、加熱焼成して得られた銀焼結体において、機械的強度や伸び等が向上するとともに、銀粘土の変色を抑制できるといった効果が得られるものである。
そして、CuO粉を銀粘土用粉末全体に対して4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、銀粘土用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上96質量%以下とされていることが好ましい。
ここで、Cuは、焼結中において銀焼結体のAgの中に拡散することにより強度向上効果を有する元素である。CuO粉の含有量が4質量%以上35質量%以下である場合、銀焼結体中のCuの含有量に換算すると3質量%以上30質量%以下となる。銀焼結体中のCuの含有量が3質量%未満だと、銀粘土を焼成して得られる銀焼結体の機械的強度を向上させる効果が得られ難くなるおそれがある。また、Cuの含有量が30質量%を超えると、伸びが低下するおそれがある。このため、銀焼結体中のCuの含有量が3質量%以上30質量%以下となるように、銀粘土用粉末中のCuO粉の含有量が4質量%以上35質量%以下の範囲内に設定することが好ましいのである。なお、銀粘土を焼成して得られる銀焼結体の色調を考慮した場合、CuO粉の含有量は35質量%以下とすることが好ましい。
すなわち、銀焼結体中に含有されるCu量が上記範囲となるように、銀を含む銀含有金属粉末の成分、銅含有酸化物粉末の成分を考慮し、これら銀含有金属粉末と銅含有酸化物粉末との混合比率を調整して、銀粘土を構成することが好ましい。
以下、本実施形態に係る銀粘土用粉末に含有される、Ag粉およびCuO粉の粒径について説明する。
本実施形態においては、Ag粉およびCuO粉の粒径については、特に限定されるものではないが、添加物としてのバインダー剤を加えて混練することで銀粘土とした場合の、成形性等の諸特性を考慮し、以下に示す範囲の粒径とすることが好適である。
Ag粉の平均粒径が25μmを超えると、銀焼結体の色調が劣化したり、機械的強度を向上させる効果が小さくなるおそれがある。また、Ag粉の平均粒径が25μm超だと、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、平均粒径の下限については特に定めないが、Ag粉の平均粒径を1μm以下とすることは工業生産的にコスト高となるおそれがあり、また、装置の限界等も考慮し、これを下限とすることが好ましい。
また、Ag粉の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
CuO粉の平均粒径が25μmを超えると、銀焼結体の機械的強度を向上させる効果が得られ難くなるおそれがある。また、CuO粉の平均粒径が25μmを超えると、上記Ag粉の場合と同様、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、上記Ag粉と同様、平均粒径の下限は特に定めないが、装置の限界や工業生産的なコストの観点から、CuO粉の平均粒径は1μmを下限とすることが好ましい。
また、CuO粉の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
次に、本実施形態の銀粘土について説明する。
本実施形態に係る銀粘土は、上記構成の銀粘土用粉末と、バインダー(本実施形態では有機バインダー)と、水とを含む。
例えば、本実施形態に係る銀粘土は、上記構成の銀粘土用粉末を70質量%以上95質量%以下の範囲で含有し、さらに、有機バインダーと水とを含むバインダー剤を5質量%以上30質量%以下の範囲で含有するものである。ここで、バインダー剤には、有機バインダーおよび水の他に、必要に応じて界面活性剤や油脂が添加されていてもよい。
この銀粘土は、化学的に安定なCuO粉と、Ag粉とを含有した粉末成分を含む銀粘土であることから、大気雰囲気下において変色が抑制されることになる。
前記界面活性剤は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤(例えばポリエチレングリコール等)を使用することができる。
本実施形態に係る銀粘土5の製造方法は、上記の銀粘土用粉末1を70質量%以上95質量%以下、有機バインダーと水とを含むバインダー剤2を5質量%以上30質量%以下として混練する方法である。
そして、混合装置50内で、上記各材料粉末を混合することにより、銀粘土用粉末1が得られる。
ここで、バインダー剤2は、有機バインダーを11質量%以上17質量%以下、油脂を5質量%以下、界面活性剤を2質量%以下、残部を水とした配合で混合したものとされている。
本実施形態に係る銀焼結体は、上記構成の銀粘土5を任意の形状に造形、成形した後、後述の条件で焼成することによって得られるものである。
この銀焼結体は、優れた機械的強度を有しているので、例えば、大きな外力が加えられた場合であっても、割れや破断が生じたりするのを抑制することが可能となる。また、本実施形態に係る銀焼結体は、優れた機械的強度とともに高い伸びを有しているので、例えば、焼成後の銀焼結体に対して曲げを伴う追加加工を施した場合でも、亀裂や破断等が生じるのを抑制することが可能となる。
本実施形態に係る銀焼結体10の製造方法は、上記構成の銀粘土5を任意の形状に成形することで成形体51とし、次いで、この成形体51を、例えば、室温〜150℃の温度で、30分〜24時間で乾燥処理し、次いで、成形体51を、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において、650〜830℃の温度で、15〜120分の時間で焼成を行うことによって銀焼結体10とする方法である。ここで、上記焼成を行う方法としては、例えば、乾燥処理した成形体51を活性炭中に埋め込んだ状態とした後、650〜830℃の温度で、15〜120分の時間で還元雰囲気で焼成を行う方法を採用することができる。
次いで、図2(b)に示すように、電気炉80に成形体51を投入して乾燥処理を行うことにより、水分等を除去する。
この際の乾燥温度としては、効果的に乾燥処理を行う観点から、例えば、室温あるいは80℃程度の温度から150℃までの範囲の温度とすることが好ましい。また、同様の観点から、乾燥処理を行う時間は、例えば、30〜720分、より好ましくは30〜90分の範囲の時間とし、一例として、乾燥温度:100℃程度で、乾燥時間:60分程度とした条件で乾燥処理を行うことができる。
ここで、「CuOの酸素を利用する」とは、CuOが焼成中に熱分解することにより酸素を放出し、この酸素が有機バインダーの燃焼に寄与することを示す。
また、本実施形態においては、図示例のような装置を用いることにより、成形体51に対して焼成を施すことで銀焼結体10を製造する方法を採用することができる。
そして、内部において成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、上述したように、650〜830℃の範囲の温度で、15〜120分の時間で加熱することで、焼成を行う。
また、本実施形態においては、乾燥処理や焼成の各工程において、電気炉を用いる例を説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガス加熱装置等、安定した加熱条件管理が可能なものであれば、何ら制限無く採用することができる。
また、本実施形態である銀粘土5によれば、上記構成の銀粘土用粉末1を用いて混練して得られるものであることから、上記同様、成形後に加熱焼成して得られる銀焼結体10の機械的強度や伸び等を向上させることができる。さらに、CuをCuOとして含んでいるので、銀粘土5の変色を抑制することができる。
さらに、本実施形態である銀焼結体10の製造方法によれば、上記構成の銀粘土5を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀焼結体10を製造することが可能となる。
例えば、Ag粉とCuO粉とからなる銀粘土用粉末として説明したが、これに限定されることはなく、Ag−Cu合金粉末等と、銅含有酸化物粉末とを含む銀粘土用粉末としてもよい。あるいは、Ag粉末と銅含有酸化物粉末の他にCu粉末やAg−Cu合金粉末を加えたものであってもよい。この場合、Cu粉末、Ag−Cu合金粉末に含まれる金属Cuの含有量は、銀粘土用粉末全体に対して2質量%以下とすることが好ましい。これにより、銀粘土の変色を確実に抑制することができる。
また、Ag粉、CuO粉以外に、Cu2O粉を加えても良い。この場合、銀粘土用粉末中の酸化銅(II)(CuO)の含有量と酸化銅(I)(Cu2O)の含有量の合計を銀粘土用粉末全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。これにより、銅含有酸化物中の酸素を利用して確実に焼結を促進することができる。
まず、以下の手順で焼結体形成用の粘土状組成物用粉末(以下、銀粘土用粉末と称す)を作製した。銀粘土用粉末の作製にあたっては、Ag粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)と、CuO粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;キシダ化学株式会社製試薬・純度97%以上)と、を用いて、図1に示すような混合装置によって混合することによって、Ag−4質量%CuO(本発明例1)、Ag−9.2質量%CuO(本発明例2及び9)、Ag−12.2質量%CuO(本発明例3、7及び8)、Ag−35質量%CuO(本発明例4)、Ag−3質量%CuO(本発明例5)、Ag−40質量%CuO(本発明例6)、とされた銀粘土用粉末を得た。
ここで、金属Cu粉を酸化処理した銅含有酸化物粉末について、株式会社リガク製X線回折装置RINT Ultimaを用いてX線回折分析を実施した結果を図3に示す。X線回折分析の結果、CuO、Cu2Oのピークが明確に確認される。また、金属Cu粉を酸化処理した銅含有酸化物粉末は、目視において表面全体が黒色を呈していた。このことから、金属Cu粉を酸化処理した銅含有酸化物粉末の少なくとも表面部分には、CuOが形成されていることが確認された。
そして、銀粘土用粉末を85質量%、上述のバインダー剤を15質量%として混練し、銀粘土とした。
そして、銀粘土用粉末を85質量%、上述のバインダー剤を15質量%として混練し、銀粘土とした。
次いで、図2(b)に示すように、前記ワイヤー状成形体および角柱状成形体の各成形体51を発明例毎に同時に電気炉(Orton:evenheat kiln inc.)80に投入し、乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を60分とした条件で乾燥処理を行うことにより、前記各成形体51に含まれる水分等を除去した。
なお、図2においては、成形体51として1個の角柱状成形体のみを図示しており、ワイヤー状成形体の図示は省略している。
なお、本発明例3、4、6、8、9、17については、上述の仮焼工程を省略した。
具体的には、図2(c)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、全ての発明例共通で加熱温度:760℃、加熱時間:30分として本焼成を行うことにより、ワイヤー状および角柱状の銀焼結体10を作製した。
比較例1、2においては、銀粘土用粉末としてAg−7.5質量%Cuの合金粉末(平均粒径33μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
また、比較例3においては、銀粘土用粉末として、Ag粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)と、Cu粉末(平均粒径20μm:マイクロトラック法;福田金属箔粉工業社製還元粉)とを、用いて、Ag−7.5質量%Cuとなるように配合した銀粘土用粉末を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
さらに、比較例4においては、銀粘土用粉末として粒径1μm以上15μm以下であって純度99.9%の銀粉末を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
次いで、図2(b)に示すように、前記ワイヤー状成形体および角柱状成形体の各成形体51を比較例毎に同時に電気炉(Orton:evenheat kiln inc.)80に投入し、乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を60分とした条件で乾燥処理を行うことにより、前記各成形体51に含まれる水分等を除去した。
なお、比較例2、4については、上述の仮焼工程を省略した。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、比較例1〜3の場合には、加熱温度:800℃、加熱時間:60分とし、比較例4の場合には、加熱温度:700℃、加熱時間:10分として本焼成を行うことにより、ワイヤー状および角柱状の銀焼結体10を作製した。
作製した銀粘土及び銀焼結体について、以下のような評価試験を行った。
まず、銀粘土の変色については、所定量(10g)の銀粘土を採取し、この銀粘土を透明なポリエチレンフィルムで包んだ板材で挟み、厚さ3mmとなるように押し潰した。そして、室温、大気雰囲気下で保管して変色の有無を目視によって観察して評価した。
曲げ強度については、島津製作所製オートグラフ:AG−Xを用い、押し込み速度0.5mm/minで応力曲線を測定し、弾性領域の最大点応力を測定することで求めた。
また、引張強度については、上記同様、島津製作所製オートグラフAG−Xを用い、引張速度5mm/minで応力曲線を測定し、試験片が破断した瞬間の応力を測定することで求めた。
また、表面の硬さは、試験片の表面を研磨した後、アカシ微小硬度計を用い、荷重100g、荷重保持時間10秒という条件にてビッカース硬度を測定することによって求めた。
また、伸びは、島津製作所製オートグラフAG−Xを用い、引張速度5mm/minで応力曲線を測定し、試験片が破断した瞬間の試験片の伸びを測定することで求めた。
表1、2に示すように、本発明例1〜9、17,18の銀粘土は、室温、大気雰囲気下で1ヶ月保管した後であっても、変色は認められなかった。
また、本発明例1〜8、18の銀粘土を成形、焼成した銀焼結体においては、機械的強度の指標となる曲げ強度、引張強度、表面の硬さ、密度の何れも、純Agを用いた比較例4に比べて高い値を示し、また、伸びも同等以上であることが明らかとなった。
なお、Ag−9.2質量%CuOとされ、仮焼工程を実施しなかった本発明例9においては、焼成が不十分であり、引張試験等を実施できなかった。同様に、金属Cuを酸化処理した銅含有酸化物粉末を使用し、仮焼工程を実施しなかった本発明例17についても、焼成が不十分であり、引張試験等を実施できなかった。
ここで、本発明例3、7について、銀焼結体の炭素濃度、酸素濃度を測定した。なお、炭素濃度は、インパルス炉加熱−赤外線吸収法で測定した。また、酸素濃度は高周波炉加熱−赤外線吸収法で測定した。その結果を表3に示す。表2及び表3において、本発明例3と7とを比較することにより、仮焼工程を省略しても有機バインダーは燃焼して除去され、十分な銀焼結体強度が得られることがわかる。
さらに、水溶性セルロースエステルと馬鈴薯澱粉の混合物を有機バインダーとして使用した本発明例8についても、本発明例3、7と比較して、特性等に相違は認められなかった。
また、純銀を使用した比較例4については、変色はないものの、本発明例1〜8に比べて、機械的強度の指標となる曲げ強度、引張強度、表面の硬さ、密度当が低い傾向であり、変形しやすいものであることが確認された。
また、銀粘土用粉末として粒径1μm以上15μm以下であって純度99.9%の銀粉末を準備した。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入して本焼成を実施した。
また、比較例5においては、焼成温度:900℃、加熱時間:120分とし室温から焼成温度(900℃)までの昇温速度を30℃/minとして、本焼成を実施した。
評価結果を表4に示す。
一方、比較例5の銀粘土を使用したものでは、焼成温度を高く、かつ、加熱時間を長く設定したにもかかわらず、密度が8.6g/cm3程度であって、本発明例10に比べて焼成が不十分であった。
また、金属Cu粉(平均粒径20μm:マイクロトラック法;福田金属箔粉工業社製還元粉)を大気雰囲気において340℃で3時間加熱して酸化処理した銅含有酸化物粉末と、Ag粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)と、Cu粉末を混合して、表5の本発明例19、20に示す組成の銀粘土用粉末を得た。
この分析の結果、本発明例11〜16の銀粘土用粉末におけるCuO粉末、Cu2O粉末の混合比と、銀粘土におけるCuO粉末、Cu2O粉末の含有比が一致することを確認した。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、加熱温度:760℃、加熱時間:30分として本焼成を行うことにより、角柱状の銀焼結体10を作製した。
作製した銀粘土及び銀焼結体について、以下のような評価試験を行った。
本発明例11〜16、19、20においては、銀粘土の変色について次のように評価した。所定量(10g)の銀粘土を採取し、この銀粘土を透明なポリエチレンフィルムで包んだ板材で挟み、厚さ3mmとなるように押し潰した。そして、室温、大気雰囲気下で保管して変色の有無を目視によって観察して評価した。
評価結果を表5に示す。
評価結果を表6に示す。
表5に示すように、本発明例11〜16、19、20の銀粘土は、室温、大気雰囲気下で5日間保管した後であっても、ほとんど変色は認められず、表1に示した比較例1〜3に比べて変色が抑制されていることが確認された。
ただし、金属Cuの含有量が3質量%を超えた本発明例12、14、20においては、2週間経過後に変色が認められた。このことから、銀粘土の変色を確実に防止するためには、金属Cuの含有量を2質量%以下に設定することが好ましい。
1A Ag粉末
1B CuO粉末
5 銀粘土(焼結体形成用の粘土状組成物)
51 成形体
10 銀焼結体
この構成の焼結体形成用の粘土状組成物においては、銀粉末と、酸化銅粉末と、バインダーと、水とを含むものとされている。ここで、酸化銅は、金属Cuに比べて化学的に安定していることから、大気雰囲気下において容易に変質(銅イオンの価数が変化)するおそれが少ない。このため、この銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができるのである。
さらに、酸化銅中の酸素を利用することで、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することが可能となり、焼結を促進することができる。
また、CuOの酸素を利用することで、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することができる。よって、厚さ5mm以上の比較的肉厚な成形体であっても、成形体の内部においてCuOの酸素を利用することでバインダーを燃焼させることができ、高品質な銀合金焼結体を製出することが可能となる。
CuO粉の含有量が4質量%未満であると、機械的強度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、CuO粉の含有量が35質量%を超えると、伸びが低下するとともに、銀合金焼結体が研磨後においても美麗な銀色を呈しなくなるおそれがある。このため、CuO粉の含有量を4質量%以上35質量%以下の範囲とすることが好ましい。
CuO粉の含有量を12質量%以上とした場合、CuOの酸素を利用することにより、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することができる。このため、バインダーを予め除去するための仮焼を行う必要がなく、成形後に乾燥処理を行い、その後本焼成を実施することが可能となる。
前記粉末成分中の金属Cuを前記粉末成分全体に対して2質量%以下とすることにより、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することができる。なお、前記粉末成分中に含まれる金属Cuとしては、例えば金属Cu粉末、AgとCuの合金粉末に含まれる金属Cu等が挙げられる。
CuOやCu2Oなどの酸化物が多量に前記粉末成分中に含まれると、バインダー焼失及びCOによる還元がなされ難くなり、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の焼成時に、焼結性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、Cu2Oも徐々にCuOに変化していくが、金属Cu添加時ほどの急激な変色を伴うものではない。以上のことから、前記粉末成分中に酸化銅(I)が含まれる場合は、前記粉末成分中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が前記粉末成分全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。
この場合、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成して得られる銀合金焼結体の機械的強度及び伸び等を向上させることが可能となる。
また、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物は、前記バインダーを、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉の内の、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成しても良い。また、上記の中でも、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースから構成することが最も好ましい。
前記界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤を使用することができる。
前記油脂としては、例えば、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)等を挙げることができる。
さらに、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、CuO粉からなる前記酸化銅粉末を該粘土状組成物用粉末全体に対して4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上97質量%以下とされていることが好ましい。
また、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、CuO粉からなる前記酸化銅粉末を該粘土状組成物用粉末全体に対して12質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上90質量%以下とされていることが好ましい。
さらに、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末が、さらに金属Cuを含有し、該粘土状組成物用粉末中の前記金属Cuの含有量が該粘土状組成物用粉末全体に対して2質量%以下とされていてもよい。
また、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末が、さらに酸化銅(I)を含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が該粘土状組成物用粉末全体に対して54質量%以下とされていてもよい。
さらに、本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、前記酸化銅粉末の平均粒径が1μm以上25μm以下とされていることが好ましい。
上記構成の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上述の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を構成することが可能となり、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することが可能となる。
この構成の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、酸化銅粉末を有し、変色し難い銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を製造することが可能となる。
この構成の銀合金焼結体によれば、上述した構成の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成したものであることから、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。すなわち、上述の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を加熱焼成して得られた銀合金焼結体は、優れた機械的強度や伸び等を備えることになる。
上記構成の銀合金焼結体の製造方法によれば、上述の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を成形した後、乾燥処理や加熱焼成処理を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀合金焼結体を製造することができる。
なお、上述のように、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物において、CuO粉末の含有量を前記粉末成分全体に対して12質量%以上とした場合には、CuOの酸素を利用することにより、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することが可能となるため、バインダーを除去するための仮焼工程を省略することができる。
この構成の銀合金焼結体の製造方法によれば、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の成形体の焼成条件を、上述のように限定していることから、バインダーを焼失させて焼結を確実に行うことができる。
特に、酸化銅粉末として酸化銅(II)(CuO)を含む場合には、酸素の含有量が比較的多くなることから、焼結を促進することができ、厚さが5mm以上と比較的厚くされた銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の成形体を確実に焼結することが可能となる。
この構成の銀合金焼結体の製造方法によれば、活性炭による還元により、成形体の焼結を促進することができる。
本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上記構成及び作用により、この銀合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を用いた銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を構成することで、銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができる。
本発明の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、上述の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を確実に製造することが可能となる。
本発明の銀合金焼結体によれば、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。
また、本発明の銀合金焼結体の製造方法によれば、上記構成の銀合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀合金焼結体を製造することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下に示す構成を有するものである。
この構成の焼結体形成用の粘土状組成物においては、銀粉末と、酸化銅粉末と、バインダーと、水とを含むものとされている。ここで、酸化銅は、金属Cuに比べて化学的に安定していることから、大気雰囲気下において容易に変質(銅イオンの価数が変化)するおそれが少ない。このため、この銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができるのである。
さらに、酸化銅中の酸素を利用することで、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することが可能となり、焼結を促進することができる。
また、CuOの酸素を利用することで、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物中のバインダーを燃焼させて除去することができる。よって、厚さ5mm以上の比較的肉厚な成形体であっても、成形体の内部においてCuOの酸素を利用することでバインダーを燃焼させることができ、高品質な銀銅合金焼結体を製出することが可能となる。
CuO粉の含有量が4質量%未満であると、機械的強度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、CuO粉の含有量が35質量%を超えると、伸びが低下するとともに、銀銅合金焼結体が研磨後においても美麗な銀色を呈しなくなるおそれがある。このため、CuO粉の含有量を4質量%以上35質量%以下の範囲とすることが好ましい。
CuO粉の含有量を12質量%以上とした場合、CuOの酸素を利用することにより、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することができる。このため、バインダーを予め除去するための仮焼を行う必要がなく、成形後に乾燥処理を行い、その後本焼成を実施することが可能となる。
前記粉末成分中の金属Cuを前記粉末成分全体に対して2質量%以下とすることにより
、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することができる。なお、前記粉末成分中に含まれる金属Cuとしては、例えば金属Cu粉末、AgとCuの合金粉末に含まれる金属Cu等が挙げられる。
CuOやCu2Oなどの酸化物が多量に前記粉末成分中に含まれると、バインダー焼失及びCOによる還元がなされ難くなり、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の焼成時に、焼結性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、Cu2Oも徐々にCuOに変化していくが、金属Cu添加時ほどの急激な変色を伴うものではない。以上のことから、前記粉末成分中に酸化銅(I)が含まれる場合は、前記粉末成分中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が前記粉末成分全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。
この場合、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成して得られる銀銅合金焼結体の機械的強度及び伸び等を向上させることが可能となる。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物は、前記バインダーを、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉の内の、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成しても良い。また、上記の中でも、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースから構成することが最も好ましい。
前記界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤を使用することができる。
前記油脂としては、例えば、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)等を挙げることができる。
さらに、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、CuO粉からなる前記酸化銅粉末を該粘土状組成物用粉末全体に対して4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上97質量%以下とされていることが好ましい。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、CuO粉からなる前記酸化銅粉末を該粘土状組成物用粉末全体に対して12質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上90質量%以下とされていることが好ましい。
さらに、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、該粘土状組成物用粉末が、さらに酸化銅(I)を含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が該粘土状組成物用粉末全体に対して54質量%以下とされていてもよい。
さらに、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、前記酸化銅粉末の粒径が1μm以上25μm以下とされていることが好ましい。
上記構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を構成することが可能となり、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することが可能となる。
この構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、酸化銅粉末を有し、変色し難い銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を製造することが可能となる。
この構成の銀銅合金焼結体によれば、上述した構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成したものであることから、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。すなわち、上述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を加熱焼成して得られた銀銅合金焼結体は、優れた機械的強度や伸び等を備えることになる。
上記構成の銀銅合金焼結体の製造方法によれば、上述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を成形した後、乾燥処理や加熱焼成処理を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀銅合金焼結体を製造することができる。
なお、上述のように、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物において、CuO粉末の含有量を前記粉末成分全体に対して12質量%以上とした場合には、CuOの酸素を利用することにより、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物に含まれるバインダーを燃焼させて除去することが可能となるため、バインダーを除去するための仮焼工程を省略することができる。
この構成の銀銅合金焼結体の製造方法によれば、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の成形体の焼成条件を、上述のように限定していることから、バインダーを焼失させて焼結を確実に行うことができる。
なお、厚さが5mm以上とは、成形体の内部に位置する少なくとも1つの内接球の直径が5mm以上とされていることを意味する。
特に、酸化銅粉末として酸化銅(II)(CuO)を含む場合には、酸素の含有量が比較的多くなることから、焼結を促進することができ、厚さが5mm以上と比較的厚くされた銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の成形体を確実に焼結することが可能となる。
この構成の銀銅合金焼結体の製造方法によれば、活性炭による還元により、成形体の焼結を促進することができる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、上記構成及び作用により、この銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を用いた焼結体形成用の粘土状組成物を構成することで、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、上述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を確実に製造することが可能となる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いた銀銅合金焼結体によれば、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いた銀銅合金焼結体の製造方法によれば、上記構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀銅合金焼結体を製造することができる。
なお、本実施形態では、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を銀粘土と、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を銀粘土用粉末と称して説明する。
本実施形態に係る銀粘土用粉末は、銀を含む銀含有金属粉末と、銅を含む銅含有酸化物粉末を含むものである。
このような銀粘土用粉末を用いて、後述する添加物を加えて混練して銀粘土を構成することにより、加熱焼成して得られた銀銅合金焼結体において、機械的強度や伸び等が向上するとともに、銀粘土の変色を抑制できるといった効果が得られるものである。
そして、CuO粉を銀粘土用粉末全体に対して4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、銀粘土用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上97質量%以下とされていることが好ましい。
ここで、Cuは、焼結中において銀銅合金焼結体のAgの中に拡散することにより強度向上効果を有する元素である。CuO粉の含有量が4質量%以上35質量%以下である場合、銀銅合金焼結体中のCuの含有量に換算すると3質量%以上30質量%以下となる。銀銅合金焼結体中のCuの含有量が3質量%未満だと、銀粘土を焼成して得られる銀銅合金焼結体の機械的強度を向上させる効果が得られ難くなるおそれがある。また、Cuの含有量が30質量%を超えると、伸びが低下するおそれがある。このため、銀銅合金焼結体中のCuの含有量が3質量%以上30質量%以下となるように、銀粘土用粉末中のCuO粉の含有量が4質量%以上35質量%以下の範囲内に設定することが好ましいのである。なお、銀粘土を焼成して得られる銀銅合金焼結体の色調を考慮した場合、CuO粉の含有量は35質量%以下とすることが好ましい。
すなわち、銀銅合金焼結体中に含有されるCu量が上記範囲となるように、銀を含む銀含有金属粉末の成分、銅含有酸化物粉末の成分を考慮し、これら銀含有金属粉末と銅含有酸化物粉末との混合比率を調整して、銀粘土を構成することが好ましい。
以下、本実施形態に係る銀粘土用粉末に含有される、Ag粉およびCuO粉の粒径について説明する。
本実施形態においては、Ag粉およびCuO粉の粒径については、特に限定されるものではないが、添加物としてのバインダー剤を加えて混練することで銀粘土とした場合の、成形性等の諸特性を考慮し、以下に示す範囲の粒径とすることが好適である。
Ag粉の平均粒径が25μmを超えると、銀銅合金焼結体の色調が劣化したり、機械的強度を向上させる効果が小さくなるおそれがある。また、Ag粉の平均粒径が25μm超だと、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀銅合金焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、平均粒径の下限については特に定めないが、Ag粉の平均粒径を1μm以下とすることは工業生産的にコスト高となるおそれがあり、また、装置の限界等も考慮し、これを下限とすることが好ましい。
また、Ag粉の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
CuO粉の平均粒径が25μmを超えると、銀銅合金焼結体の機械的強度を向上させる効果が得られ難くなるおそれがある。また、CuO粉の平均粒径が25μmを超えると、上記Ag粉の場合と同様、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀銅合金焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、上記Ag粉と同様、平均粒径の下限は特に定めないが、装置の限界や工業生産的なコストの観点から、CuO粉の平均粒径は1μmを下限とすることが好ましい。
また、CuO粉の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
次に、本実施形態の銀粘土について説明する。
本実施形態に係る銀粘土は、上記構成の銀粘土用粉末と、バインダー(本実施形態では有機バインダー)と、水とを含む。
例えば、本実施形態に係る銀粘土は、上記構成の銀粘土用粉末を70質量%以上95質量%以下の範囲で含有し、さらに、有機バインダーと水とを含むバインダー剤を5質量%以上30質量%以下の範囲で含有するものである。ここで、バインダー剤には、有機バインダーおよび水の他に、必要に応じて界面活性剤や油脂が添加されていてもよい。
この銀粘土は、化学的に安定なCuO粉と、Ag粉とを含有した粉末成分を含む銀粘土であることから、大気雰囲気下において変色が抑制されることになる。
前記界面活性剤は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤(例えばポリエチレングリコール等)を使用することができる。
本実施形態に係る銀粘土5の製造方法は、上記の銀粘土用粉末1を70質量%以上95
質量%以下、有機バインダーと水とを含むバインダー剤2を5質量%以上30質量%以下として混練する方法である。
そして、混合装置50内で、上記各材料粉末を混合することにより、銀粘土用粉末1が得られる。
ここで、バインダー剤2は、有機バインダーを11質量%以上17質量%以下、油脂を5質量%以下、界面活性剤を2質量%以下、残部を水とした配合で混合したものとされている。
本実施形態に係る銀銅合金焼結体は、上記構成の銀粘土5を任意の形状に造形、成形した後、後述の条件で焼成することによって得られるものである。
この銀銅合金焼結体は、優れた機械的強度を有しているので、例えば、大きな外力が加えられた場合であっても、割れや破断が生じたりするのを抑制することが可能となる。また、本実施形態に係る銀銅合金焼結体は、優れた機械的強度とともに高い伸びを有しているので、例えば、焼成後の銀銅合金焼結体に対して曲げを伴う追加加工を施した場合でも、亀裂や破断等が生じるのを抑制することが可能となる。
本実施形態に係る銀銅合金焼結体10の製造方法は、上記構成の銀粘土5を任意の形状に成形することで成形体51とし、次いで、この成形体51を、例えば、室温〜150℃の温度で、30分〜24時間で乾燥処理し、次いで、成形体51を、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において、650〜830℃の温度で、15〜120分の時間で焼成を行うことによって銀銅合金焼結体10とする方法である。ここで、上記焼成を行う方法としては、例えば、乾燥処理した成形体51を活性炭中に埋め込んだ状態とした後、650〜830℃の温度で、15〜120分の時間で、還元雰囲気において焼成を行う方法を採用することができる。
次いで、図2(b)に示すように、電気炉80に成形体51を投入して乾燥処理を行うことにより、水分等を除去する。
この際の乾燥温度としては、効果的に乾燥処理を行う観点から、例えば、室温あるいは80℃程度の温度から150℃までの範囲の温度とすることが好ましい。また、同様の観点から、乾燥処理を行う時間は、例えば、30〜720分、より好ましくは30〜90分の範囲の時間とし、一例として、乾燥温度:100℃程度で、乾燥時間:60分程度とした条件で乾燥処理を行うことができる。
ここで、「CuOの酸素を利用する」とは、CuOが焼成中に熱分解することにより酸素を放出し、この酸素が有機バインダーの燃焼に寄与することを示す。
また、本実施形態においては、図示例のような装置を用いることにより、成形体51に対して焼成を施すことで銀銅合金焼結体10を製造する方法を採用することができる。
そして、内部において成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、上述したように、650〜830℃の範囲の温度で、15〜120分の時間で加熱することで、焼成を行う。
また、本実施形態においては、乾燥処理や焼成の各工程において、電気炉を用いる例を説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガス加熱装置等、安定した加熱条件管理が可能なものであれば、何ら制限無く採用することができる。
また、本実施形態である銀粘土5によれば、上記構成の銀粘土用粉末1を用いて混練して得られるものであることから、上記同様、成形後に加熱焼成して得られる銀銅合金焼結体10の機械的強度や伸び等を向上させることができる。さらに、CuをCuOとして含んでいるので、銀粘土5の変色を抑制することができる。
さらに、本実施形態である銀銅合金焼結体10の製造方法によれば、上記構成の銀粘土5を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等に優れた銀銅合金焼結体10を製造することが可能となる。
例えば、Ag粉とCuO粉とからなる銀粘土用粉末として説明したが、これに限定されることはなく、Ag−Cu合金粉末等と、銅含有酸化物粉末とを含む銀粘土用粉末としてもよい。あるいは、Ag粉末と銅含有酸化物粉末の他にCu粉末やAg−Cu合金粉末を加えたものであってもよい。この場合、Cu粉末、Ag−Cu合金粉末に含まれる金属Cuの含有量は、銀粘土用粉末全体に対して2質量%以下とすることが好ましい。これにより、銀粘土の変色を確実に抑制することができる。
また、Ag粉、CuO粉以外に、Cu2O粉を加えても良い。この場合、銀粘土用粉末
中の酸化銅(II)(CuO)の含有量と酸化銅(I)(Cu2O)の含有量の合計を銀粘土用粉末全体に対して54質量%以下とされていることが好ましい。これにより、銅含有酸化物中の酸素を利用して確実に焼結を促進することができる。
まず、以下の手順で銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末(以下、銀粘土用粉末と称す)を作製した。銀粘土用粉末の作製にあたっては、Ag粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)と、CuO粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;キシダ化学株式会社製試薬・純度97%以上)と、を用いて、図1に示すような混合装置によって混合することによって、Ag−4質量%CuO(本発明例1)、Ag−9.2質量%CuO(本発明例2及び9)、Ag−12.2質量%CuO(本発明例3、7及び8)、Ag−35質量%CuO(本発明例4)、Ag−3質量%CuO(本発明例5)、Ag−40質量%CuO(本発明例6)、とされた銀粘土用粉末を得た。
そして、銀粘土用粉末を85質量%、上述のバインダー剤を15質量%として混練し、銀粘土とした。
そして、銀粘土用粉末を85質量%、上述のバインダー剤を15質量%として混練し、銀粘土とした。
次いで、図2(b)に示すように、前記ワイヤー状成形体および角柱状成形体の各成形体51を発明例毎に同時に電気炉(Orton:evenheat kiln inc.)80に投入し、乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を60分とした条件で乾燥処理を行うことにより、前記各成形体51に含まれる水分等を除去した。
なお、図2においては、成形体51として1個の角柱状成形体のみを図示しており、ワイヤー状成形体の図示は省略している。
なお、本発明例3、4、6、8、9については、上述の仮焼工程を省略した。
具体的には、図2(c)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、全ての発明例共通で加熱温度:760℃、加熱時間:30分として本焼成を行うことにより、ワイヤー状および角柱状の銀銅合金焼結体10を作製した。
比較例1、2においては、銀粘土用粉末としてAg−7.5質量%Cuの合金粉末(平均粒径33μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
また、比較例3においては、銀粘土用粉末として、Ag粉末(平均粒径5μm:マイクロトラック法;アトマイズ粉)と、Cu粉末(平均粒径20μm:マイクロトラック法;福田金属箔粉工業社製還元粉)とを、用いて、Ag−7.5質量%Cuとなるように配合した銀粘土用粉末を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
さらに、比較例4においては、銀粘土用粉末として粒径1μm以上15μm以下であって純度99.9%の銀粉末を使用して、上述の本発明例1〜7と同様に銀粘土を製出した。
次いで、図2(b)に示すように、前記ワイヤー状成形体および角柱状成形体の各成形体51を比較例毎に同時に電気炉(Orton:evenheat kiln inc.)80に投入し、乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を60分とした条件で乾燥処理を行うことにより、前記各成形体51に含まれる水分等を除去した。
なお、比較例2、4については、上述の仮焼工程を省略した。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、比較例1〜3の場合には、加熱温度:800℃、加熱時間:60分とし、比較例4の場合には、加熱温度:700℃、加熱時間:10分として本焼成を行うことにより、ワイヤー状および角柱状の銀銅合金焼結体10を作製した。
作製した銀粘土及び銀銅合金焼結体について、以下のような評価試験を行った。
まず、銀粘土の変色については、所定量(10g)の銀粘土を採取し、この銀粘土を透明なポリエチレンフィルムで包んだ板材で挟み、厚さ3mmとなるように押し潰した。そして、室温、大気雰囲気下で保管して変色の有無を目視によって観察して評価した。
曲げ強度については、島津製作所製オートグラフ:AG−Xを用い、押し込み速度0.5mm/minで応力曲線を測定し、弾性領域の最大点応力を測定することで求めた。
また、引張強度については、上記同様、島津製作所製オートグラフAG−Xを用い、引張速度5mm/minで応力曲線を測定し、試験片が破断した瞬間の応力を測定することで求めた。
また、表面の硬さは、試験片の表面を研磨した後、アカシ微小硬度計を用い、荷重100g、荷重保持時間10秒という条件にてビッカース硬度を測定することによって求めた。
また、伸びは、島津製作所製オートグラフAG−Xを用い、引張速度5mm/minで応力曲線を測定し、試験片が破断した瞬間の試験片の伸びを測定することで求めた。
表1、2に示すように、本発明例1〜9の銀粘土は、室温、大気雰囲気下で1ヶ月保管した後であっても、変色は認められなかった。
また、本発明例1〜8の銀粘土を成形、焼成した銀銅合金焼結体においては、機械的強度の指標となる曲げ強度、引張強度、表面の硬さ、密度の何れも、純Agを用いた比較例4に比べて高い値を示し、また、伸びも同等以上であることが明らかとなった。
なお、Ag−9.2質量%CuOとされ、仮焼工程を実施しなかった本発明例9においては、焼成が不十分であり、引張試験等を実施できなかった。
の銀銅合金焼結体が得られることが確認された。これは、本焼成工程において、CuO粉の酸素によって有機バインダーが燃焼して除去されるためであると推測される。
ここで、本発明例3、7について、銀銅合金焼結体の炭素濃度、酸素濃度を測定した。なお、炭素濃度は、インパルス炉加熱−赤外線吸収法で測定した。また、酸素濃度は高周波炉加熱−赤外線吸収法で測定した。その結果を表3に示す。表2及び表3において、本発明例3と7とを比較することにより、仮焼工程を省略しても有機バインダーは燃焼して除去され、十分な銀銅合金焼結体強度が得られることがわかる。
さらに、水溶性セルロースエステルと馬鈴薯澱粉の混合物を有機バインダーとして使用した本発明例8についても、本発明例3、7と比較して、特性等に相違は認められなかった。
また、純銀を使用した比較例4については、変色はないものの、本発明例1〜8に比べて、機械的強度の指標となる曲げ強度、引張強度、表面の硬さ、密度当が低い傾向であり、変形しやすいものであることが確認された。
また、銀粘土用粉末として粒径1μm以上15μm以下であって純度99.9%の銀粉末を準備した。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入して本焼成を実施した。
内、具体的には、30℃/minとして、本焼成を実施した。
また、比較例5においては、焼成温度:900℃、加熱時間:120分とし室温から焼成温度(900℃)までの昇温速度を30℃/minとして、本焼成を実施した。
評価結果を表4に示す。
一方、比較例5の銀粘土を使用したものでは、焼成温度を高く、かつ、加熱時間を長く設定したにもかかわらず、密度が8.6g/cm3程度であって、本発明例10に比べて
焼成が不十分であった。
具体的には、図2(d)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
作製した銀粘土及び銀銅合金焼結体について、以下のような評価試験を行った。
本発明例11〜16においては、銀粘土の変色について次のように評価した。所定量(10g)の銀粘土を採取し、この銀粘土を透明なポリエチレンフィルムで包んだ板材で挟み、厚さ3mmとなるように押し潰した。そして、室温、大気雰囲気下で保管して変色の有無を目視によって観察して評価した。
評価結果を表5に示す。
評価結果を表6に示す。
表5に示すように、本発明例11〜16の銀粘土は、室温、大気雰囲気下で5日間保管した後であっても、ほとんど変色は認められず、表1に示した比較例1〜3に比べて変色が抑制されていることが確認された。
ただし、金属Cuの含有量が3質量%を超えた本発明例12、14においては、2週間経過後に変色が認められた。このことから、銀粘土の変色を確実に防止するためには、金属Cuの含有量を2質量%以下に設定することが好ましい。
1A Ag粉末
1B CuO粉末
5 銀粘土(銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物)
51 成形体
10 銀銅合金焼結体
Claims (22)
- 銀を含む銀含有金属粉末と銅を含む銅含有酸化物粉末とを含有する粉末成分と、バインダーと、水とを含むことを特徴とする焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記銅含有酸化物粉末として、少なくとも酸化銅(II)の粉末(CuO粉)を含有していることを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記粉末成分が、CuO粉を前記粉末成分全体に対して4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、前記粉末成分中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上96質量%以下とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記粉末成分が、CuO粉を前記粉末成分全体に対して12質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、前記粉末成分中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上88質量%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記粉末成分中の金属Cuの含有量が前記粉末成分全体に対して2質量%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記粉末成分中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が前記粉末成分全体に対して54質量%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記銅含有酸化物粉末の粒径が1μm以上25μm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- さらに、油脂および界面活性剤のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記バインダーが、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉の内の、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物。
- 銀を含む銀含有金属粉末と、銅を含む銅含有酸化物粉末とを含むことを特徴とする焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 前記銅含有酸化物粉末として、酸化銅(II)の粉末(CuO粉)を含有していることを特徴とする請求項10に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 該粘土状組成物用粉末全体に対してCuO粉を4質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上96質量%以下とされていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 該粘土状組成物用粉末全体に対してCuO粉を12質量%以上35質量%以下の範囲で含有し、該粘土状組成物用粉末中の酸素を除く全金属成分に対するAg元素の含有量が46質量%以上88質量%以下とされていることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 該粘土状組成物用粉末中の金属Cuの含有量が該粘土状組成物用粉末全体に対して2質量%以下とされていることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 該粘土状組成物用粉末中の酸化銅(II)の含有量と酸化銅(I)の含有量の合計が該粘土状組成物用粉末全体に対して54質量%以下とされていることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 前記銅含有酸化物粉末の平均粒径が1μm以上25μm以下とされていることを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
- 銀を含む銀含有金属粉末と、銅を含む銅含有酸化物粉末と、バインダーと、水とを混合することを特徴とする焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法。
- 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物を焼成することで得られることを特徴とする銀焼結体。
- 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の焼結体形成用の粘土状組成物を任意の形状に成形することで成形体とし、
この成形体を乾燥させた後に、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において、焼成を行うことにより、銀焼結体とすることを特徴とする銀焼結体の製造方法。 - 前記成形体を乾燥させた後に、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において、650℃以上830℃以下の範囲の焼成温度で、15分以上120分以下の時間で焼成を行うことにより、銀焼結体とすることを特徴とする請求項19に記載の銀焼結体の製造方法。
- 前記成形体は、厚さが5mm以上の部分を有しており、この成形体を乾燥させた後に、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において焼成する際に、室温から前記焼成温度までの昇温速度を15℃/min以上80℃/min以下の範囲内とすることを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の銀焼結体の製造方法。
- 前記成形体を活性炭中に埋め込んだ状態で焼成を行うことを特徴とする請求項19から請求項21のいずれか一項に記載の銀焼結体の製造方法。
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