JP2007113106A - 金属成形体及びその製造方法 - Google Patents

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晃裕 樋上
Reiko Ogawa
怜子 小川
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寿一 平澤
Yasuo Ido
康夫 井戸
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Abstract

【課題】 脱脂及び焼成時間を短縮するとともに、脱脂及び焼成工程を含む熱処理工程を単純化し、更に金属密度を高くすることにより焼成時の線収縮率を低減する。
【解決手段】 金属成形体は、金属粒子を主材とし、残部に有機バインダを含む。また有機バインダは、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであり、有機バインダは金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%含まれる。更に金属粒子の平均粒径は0.5〜25μmである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、彫刻や切削等の細工を容易に行うことのできる金属成形体と、その金属成形体の製造方法に関するものである。
従来、この種の金属成形体として、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉄等の単体或いは2種以上の混合物又はそれらの合金よりなる平均粒径5〜40μmの金属粉92〜96重量%を主材とし、これに少なくとも接着剤として高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニール共重合体を混練し、可塑剤としてマイクロクリスタリンワックス及びパラフィンワックスを混練し、更に必要に応じてポロプロピレン、カルナバワックス、ステアリン酸などを混練した数種の有機バインダ8〜4重量%を混練し、更に適宜の形状に成形して混練成形体とする美術工芸用の金属材料(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。
このように構成された美術工芸用の金属材料は、上記金属粉92〜96重量%を主材とし、これに上記数種の有機バインダ8〜4重量%を混練し、更に適宜の形状に成形して混練成形体とすることにより製造される。この美術工芸用の金属材料には、任意の彫刻や切削等の細工が施された後、線収縮率を10%に抑える条件で脱脂と焼結をする熱処理を施して仕上げられる。ここで脱脂とは、230〜300℃程度で4〜6時間大気中で加熱処理することであり、焼結とは、700〜1000℃の高温で2〜3時間加熱処理することである。
特公平6−37642号公報(請求項1及び2、明細書第3頁左欄第14行目〜第18行目)
しかし、上記従来の特許文献1に示された美術工芸用の金属材料では、主材以外の揮発成分が4〜8重量%と多いため、脱脂時間が4〜6時間と長く、また焼成時間も2〜3時間と比較的長くなる不具合があった。
また、上記従来の特許文献1に示された美術工芸用の金属材料では、脱脂温度が230〜300℃と低く、焼成工程が700〜1000℃と高いため、熱処理温度を2段階に変更しなければならず、熱処理工程が煩わしい問題点もあった。
本発明の第1の目的は、脱脂及び焼成時間を短縮できるとともに、脱脂及び焼成工程を含む熱処理工程を単純化できる、金属成形体の製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度を有する、金属成形体及びその製造方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、金属粒子を主材とし、残部に有機バインダを含む金属成形体の改良である。
その特徴ある構成は、有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであるところにある。
この請求項1に記載された金属成形体では、有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであるので、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度(硬度及び可塑性)を有する。これにより金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。ここで、金属成形体が金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度(硬度及び可塑性)を有するのは、この金属成形体に含まれるウレタン樹脂の持つ柔軟性及び高接着性によるものと考えられる。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に有機バインダに、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤が添加されたところにある。
この請求項2に記載された金属成形体では、有機バインダに可塑剤が添加されたので、金属成形体の切削性能を向上させることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に有機バインダが金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%含まれることを特徴とする。
この請求項3に記載された金属成形体では、ウレタン樹脂バインダからなる有機バインダの含有量が少ないので、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成したときに、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
請求項5に係る発明は、アトマイズ法により平均粒径0.5〜25μmの金属粒子を作製する工程と、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機バインダと金属粒子とを混合する工程と、混合物を50〜200MPaの圧力で0.5〜120秒間プレス成形する工程と、このプレス成形物を大気中で5〜120℃の温度に1〜48時間保持して乾燥する工程とを含む金属成形体の製造方法である。
この請求項5に記載された金属成形体の製造方法では、有機バインダとして、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダを用いたので、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度を有する金属成形体が得られる。これにより金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。また混合物をプレス成形したので、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、更に有機バインダに、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加したところにある。
この請求項6に記載された金属成形体では、有機バインダに可塑剤を添加したので、金属成形体の切削性能を向上させることができる。
請求項7に係る発明は、請求項5に係る発明であって、更に有機バインダを金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%混合することを特徴とする。
この請求項7に記載された金属成形体の製造方法では、有機バインダの含有量が少ないので、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
以上述べたように、本発明によれば、金属粒子を主材とし、残部に有機バインダを含む金属成形体の有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであるので、金属成形体は金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度を有する。この結果、金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。
また有機バインダに、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加すれば、金属成形体の切削性能を向上させることができる。
また有機バインダを金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%含めば、有機バインダの含有量が少ないので、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成したときに、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
またアトマイズ法により平均粒径0.5〜25μmの金属粒子を作製し、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機バインダと金属粒子とを混合し、この混合物をプレス成形した後に乾燥させれば、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度を有する金属成形体が得られる。この結果、金属成形体に所望のデザインを容易に切削でき、金属成形体を比較的容易に取扱うことができるとともに、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成したときに、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
更に有機バインダを金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%混合すれば、有機バインダの含有量が少なくので、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を短縮できる。
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
金属成形体は、金属粒子を主材とし、残部に有機バインダを含む。この実施の形態では、金属粒子は銀粒子であり、有機バインダは、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダである。この有機バインダには、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加することが好ましい。フタル酸エステルとしては、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられ、リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリス(ブトキシエチル)、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸-2-エチルヘキシルジフェニル等が挙げられる。アジピン酸エステルとしては、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等が挙げられ、セバシン酸エステルとしては、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等が挙げられる。また上記有機バインダは、金属粒子99.7〜97重量%、好ましくは99.5〜98重量%に対して、0.3〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%含まれ、上記可塑剤は、有機バインダ100重量%に対して、0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%含まれる。ここで、有機バインダとしてウレタン樹脂を用いれば、ウレタン樹脂の柔軟性及び高接着性を金属成形体に付与でき、有機バインダとしてウレタン樹脂以外の樹脂を用いれば、金属成形体の柔軟性が乏しくなって切削性能が低下するけれども少量の使用で高接着性を金属成形体に付与でき、更に可塑剤を添加すれば、金属成形体に柔軟性を付与できるとともに金属成形体の切削性能を向上できる。なお、有機バインダの含有割合を0.5〜2重量%の範囲に限定したのは、柔軟性及び高接着性の双方、或いは高接着性を金属成形体に付与するためである。また可塑剤の添加割合を0.5〜30重量%の範囲に限定したのは、0.5重量%未満では金属成形体の切削性能を向上できず、30重量%を越えると金属成形体が脆くなり切削時に容易に折れたり或いは割れてしまうからである。
金属粒子は、平均粒径3〜8μm、好ましくは4〜7μmの第1金属粒子と、平均粒径15〜25μmの第2金属粒子との混合粒子からなるか、或いは上記第1金属粒子のみからなり、第1金属粒子は25〜100重量%、好ましくは50〜85重量%含まれ、第2金属粒子は75〜0重量%、好ましくは50〜15重量%含まれる。ここで、第1金属粒子の平均粒径を3〜8μmの範囲に限定したのは、3μm未満では金属成形体の密度を高くすることができず焼成時の線収縮率が大きくなってしまい、8μmを越えると低温で焼結できなくなって低温焼結性が低下してしまうからである。また第2金属粒子の平均粒径を15〜25μmの範囲に限定したのは、15μm未満では平均粒径の異なる2種類の金属粒子を混合することによる高密度化の効果が発現せず、25μmを越えるとデザインを施すための切削時にカッター等の刃が金属成形体に引っ掛かったり金属成形体の表面を滑らかにすることが難しいからである。更に第1金属粒子の含有量を25〜100重量%の範囲に限定し、第2金属粒子の含有量を75〜0重量%の範囲に限定したのは、第1金属粒子が25重量%未満でありかつ第2金属粒子が75重量%を越えると、低温で焼結できなくなって低温焼結性が低下してしまうからである。一方、上記金属成形体は、加圧成形により、表面に位置し真球度が95%を越える金属粒子のうち、真球度が80〜95%に変化した金属粒子を5〜20%、好ましくは8〜15%含む。ここで、真球度が80〜95%に変化した金属粒子の含有量を5〜20%の範囲に限定したのは、5%未満では低温焼結化の効果が小さく、20%を越えるとデザインを施すための切削時にカッター等の刃が金属成形体に引っ掛かったり表面の焼結が速く進行し過ぎて金属成形体に膨れが発生してしまうからである。
このように構成された金属成形体を製造する方法を説明する。
(a) 金属粒子が第1金属粒子のみからなる場合
先ず水アトマイズ法、ガスアトマイズ法等のアトマイズ法により、平均粒径3〜8μm、好ましくは4〜7μmの第1金属粒子を作製する。ここで、第1金属粒子をアトマイズ法で作製するのは、第1金属粒子の表面に付着する不純物が少なく、焼結し易いからである。次いで第1金属粒子と有機バインダとを混合する。この混合には、乳鉢、転動造粒機、プラネタリミキサ等が用いられるが、粉末の湿式混合に適するものであればどのような混合手段を用いてもよい。有機バインダとしては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダを用い、第1金属粒子99.7〜97重量%、好ましくは99.5〜98重量%に対して、0.3〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%混合する。また有機バインダには、金属成形体の切削性能を向上させるために、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加してもよい。ここで、有機バインダとして、ウレタン樹脂バインダを用いる場合、セランダーDB−17、セランダーDB−19、セランダーDB−20((株)ユケン工業製)などを用いることが好ましい。また上記有機バインダは、水、アルコール、ケトン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解していても、或いはエマルジョンとなっていてもよい。
上記有機バインダの混合割合は溶剤を含まない正味の混合割合である。また上記第1金属粒子と有機バインダとの混合物は、有機バインダで第1金属粒子が接着された比較的粒径の大きな粉末状であり、必要に応じて開口径0.5〜1.2mmのふるいを通して再造粒することが好ましい。この再造粒により、プレス成形時に上記粉末状の混合物を取扱い易くなる。次に上記混合物を、50〜200MPa、好ましくは75〜150MPaの圧力で、0.5〜120秒間、好ましくは5〜60秒間、更に好ましくは10〜30秒間プレス成形する。ここで、混合物のプレス成形圧力を50〜200MPaの範囲に限定したのは、50MPa未満では金属成形体の強度が十分に得られず、200MPaを越えると硬すぎてデザインするためのカッター等による切削性が低下するからである。また混合物のプレス成形時間を0.5〜120秒間の範囲に限定したのは、0.5秒未満では加圧時間が短すぎてロータリ打錠機を用いても十分な金属成形体の強度が得られず、120秒間で十分に均一化され、120秒間を越えると性能が向上しないからである。なお、金属成形体内部まで均一な密度とするためには、好ましくは5秒間以上の加圧が必要である。更にこのプレス成形物を、大気中で5〜120℃、好ましくは25〜80℃の温度に、1〜48時間、好ましくは2〜24時間保持して乾燥する。ここで、プレス成形物の乾燥温度を5〜120℃の範囲に限定したのは、5℃未満では乾燥に時間が掛かりすぎ、120℃を越えるとバインダが熱劣化して金属成形体の強度が低下するからである。またプレス成形物の乾燥時間を1〜48時間の範囲に限定したのは、1時間未満では乾燥が不十分で金属成形体が折れ易くなり、48時間で十分に乾燥し、48時間を越えても性能が向上しないからである。なお、上記第1金属粒子と有機バインダとの混合物に離型剤を添加してもよく、或いはプレス成形型に離型剤を塗布してもよい。
このように製造された金属成形体では、有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであるので、銀粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度(硬度及び可塑性)を有する。この結果、銀粘土の乾燥体では、カッタ等による切削時に刃が銀粘土の乾燥体に引っ掛かる場合があるけれども、この実施の形態の金属成形体では、カッタ等が金属成形体に滑らかに食い込みかつ滑るので、金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体の取扱いにそれほど注意を払う必要がなく、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。
また金属成形体に含まれる有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであり、この有機バインダの含有量が少なく、かつ金属成形体をプレス成形しているため、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を短縮できるとともに、焼成時の線収縮率を低減できる。具体的には、上記所定のデザインが施された金属成形体を、大気中で500〜930℃、好ましくは550〜900℃の温度に、5〜30分間という短い時間保持することにより、脱脂及び焼成が完了し、金属成形体の焼成時の線収縮率は−2〜8%である。なお、上記脱脂及び熱処理時間のうちの脱脂時間は0.5〜2分間である。
(b) 金属粒子が第1及び第2金属粒子の混合粒子からなる場合
先ず水アトマイズ法、ガスアトマイズ法等のアトマイズ法により、平均粒径3〜8μm、好ましくは4〜7μmの第1金属粒子と、平均粒径15〜25μmの第2金属粒子を作製する。ここで、第1及び第2金属粒子をアトマイズ法で作製するのは、第1及び第2金属粒子の表面に付着する不純物が少なく、焼結し易いからである。次いで25重量%以上かつ100重量%未満、好ましくは50〜85重量%の第1金属粒子と、75重量%以下かつ0重量%を越え、好ましくは50〜15重量%の第2金属粒子とを混合する。第1及び第2金属粒子の混合には、乳鉢、ボールミル、ロッキングミキサ、Vブレンダー、シェーカーなどが用いられるが、粉末の乾式混合に適するものであればどのような混合手段を用いてもよい。上記第1及び第2金属粒子の混合粉末と有機バインダとを混合する。有機バインダは、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであり、第1及び第2金属粒子の合計量99.7〜97重量%、好ましくは99.5〜98重量%に対して、0.3〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%混合する。また有機バインダには、金属成形体の切削性能を向上させるために、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加してもよい。
ここで、上記有機バインダは、水、アルコール(エタノール)、ケトン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解していても、或いはエマルジョンとなっていてもよい。上記有機バインダの混合割合は溶剤を含まない正味の混合割合である。また上記第1及び第2金属粒子の混合粉末と有機バインダとの混合物は、有機バインダで第1及び第2金属粒子が接着された比較的粒径の大きな粉末状であり、必要に応じて開口径0.5〜1.2mmのふるいを通して再造粒することが好ましい。この再造粒により、プレス成形時に上記粉末状の混合物を取扱い易くなる。次に上記混合物を、50〜200MPa、好ましくは75〜150MPaの圧力で、0.5〜120秒間、好ましくは5〜60秒間、更に好ましくは10〜30秒間プレス成形する。ここで、混合物のプレス成形時の圧力を50〜200MPaの範囲に限定し、混合物のプレス成形時間を0.5〜120秒間の範囲に限定したのは、上記(a)の記載と同様の理由による。更にこのプレス成形物を、大気中で5〜120℃、好ましくは25〜80℃の温度に、1〜48時間、好ましくは2〜24時間保持して乾燥する。ここで、プレス成形物の乾燥温度を5〜120℃の範囲に限定したのは、上記(a)の記載と同様の理由による。またプレス成形物の乾燥時間を1〜48時間の範囲に限定したのは、上記(a)の記載と同様の理由による。なお、上記第1及び第2金属粒子の混合粉末と有機バインダとの混合物に離型剤を添加してもよく、或いはプレス成形型に離型剤を塗布してもよい。
このように製造された金属成形体では、有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであるので、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度(硬度及び可塑性)を有する。この結果、金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。
また金属成形体に含まれる有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであり、第1金属粒子が、この第1金属粒子より平均粒径の大きい第2金属粒子間に入り込むことにより、金属粒子の充填密度が高くなって、有機バインダの含有量が少なくなり、かつ金属成形体をプレス成形しているため、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を更に短縮できるとともに、焼成時の線収縮率を更に低減できる。
更に金属成形体を焼成して得られた焼成体の密度も高いため、金属単体としての性質、例えば金属特有の重量感や光沢を容易に出すことができる。
<第2の実施の形態>
金属粒子は、平均粒径3〜8μm、好ましくは4〜7μmの第1金属粒子と、平均粒径15〜25μmの第2金属粒子と、平均粒径0.5〜1μmの第3金属粒子の混合粒子からなり、第1金属粒子は25〜75重量%、好ましくは40〜60重量%含まれ、第2金属粒子は50〜20重量%、好ましくは45〜30重量%含まれ、第3金属粒子は25〜5重量%、好ましくは15〜10重量%含まれる。この第1〜第3金属粒子の混合には、乳鉢、ボールミル、ロッキングミキサ、Vブレンダー、シェーカーなどが用いられるが、粉末の乾式混合に適するものであればどのような混合手段を用いてもよい。また第3金属粒子の平均粒径を0.5〜1μmの範囲に限定したのは、0.5μm未満では第3金属粒子の表面積が大きくなって多くのバインダを必要とし高密度化できず、1μmを越えると第1金属粒子の平均粒径と大差がなくなって添加効果を期待できないからである。更に第3金属粒子の含有量を25〜5重量%の範囲に限定したのは、この範囲外では金属粒子の充填密度が低下するからである。一方、上記金属成形体は、加圧成形により、表面に位置し真球度が95%を越える金属粒子のうち、真球度が80〜95%に変化した金属粒子を5〜20%、好ましくは8〜15%含む。ここで、真球度が80〜95%に変化した金属粒子の含有量を5〜20%の範囲に限定したのは、上記第1の実施の形態と同様の理由による。
このように構成された金属成形体を製造する方法を説明する。
先ず水アトマイズ法、ガスアトマイズ法等のアトマイズ法により、平均粒径3〜8μm、好ましくは4〜7μmの第1金属粒子と、平均粒径15〜25μmの第2金属粒子を作製する。ここで、第1及び第2金属粒子をアトマイズ法で作製するのは、第1の実施の形態の(b)と同様の理由による。一方、アトマイズ法又は湿式還元法により平均粒径0.5〜1μmの第3金属粒子を作製する。ここで、第3金属粒子を湿式還元法で作製した場合、このサイズの金属粒子を作り易く、焼結性もアトマイズ法により作製された金属粒子と遜色のない金属粒子を作製できるという利点がある。次いで第1金属粒子25〜75重量%、好ましくは40〜60重量%と、第2金属粒子50〜20重量%、好ましくは45〜30重量%と、第3金属粒子25〜5重量%、好ましくは15〜10重量%とを混合する。この第1〜第3金属粒子の混合には、乳鉢、ボールミル、ロッキングミキサ、Vブレンダー、シェーカーなどが用いられるが、粉末の乾式混合に適するものであればどのような混合手段を用いてもよい。上記第1〜第3金属粒子の混合粉末と有機バインダとを混合する。有機バインダは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであり、第1〜第3金属粒子の合計量99.7〜97重量%、好ましくは99.25〜97.5重量%に対して、0.3〜3重量%、好ましくは0.75〜2.5重量%混合する。また有機バインダには、金属成形体の切削性能を向上させるために、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加してもよい。
ここで、上記有機バインダは、溶剤に溶解していても、或いはエマルジョンとなっていてもよい。上記有機バインダの混合割合は溶剤を含まない正味の混合割合である。また上記第1〜第3金属粒子の混合粉末と有機バインダとの混合物は、有機バインダで第1〜第3金属粒子が接着された比較的粒径の大きな粉末状であり、必要に応じて開口径0.5〜1.2mmのふるいを通して再造粒することが好ましい。この再造粒により、プレス成形時に上記粉末状の混合物を取扱い易くなる。次に上記混合物を、50〜200MPa、好ましくは75〜150MPaの圧力で、0.5〜120秒間、好ましくは5〜60秒間、更に好ましくは10〜30秒間プレス成形する。ここで、混合物のプレス成形圧力を50〜200MPaの範囲に限定し、混合物のプレス成形時間を0.5〜120秒間の範囲に限定したのは、第1の実施の形態の記載と同様の理由による。更にこのプレス成形物を、大気中で5〜120℃、好ましくは25〜80℃の温度に、1〜48時間、好ましくは2〜24時間保持して乾燥する。ここで、プレス成形物の乾燥温度を5〜120℃の範囲に限定し、プレス成形物の乾燥時間を1〜48時間の範囲に限定したのは、第1の実施の形態の記載と同様の理由による。なお、上記第1〜第3金属粒子の混合粉末と有機バインダとの混合物に離型剤を添加してもよく、或いはプレス成形型に離型剤を塗布してもよい。
このように製造された金属成形体では、有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであるので、金属粘土の乾燥体と同等か或いはそれ以上の切削性及び強度(硬度及び可塑性)を有する。この結果、金属成形体に所望のデザインを容易に切削できるとともに、金属成形体を比較的容易に取扱うことができる。
また金属成形体に含まれる有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダであり、第1金属粒子が、この第1金属粒子より平均粒径の大きい第2金属粒子間に入り込み、第1及び第2金属粒子間に、第1金属粒子より平均粒径の小さい第3金属粒子が入り込むことにより、金属粒子の充填密度が更に高くなって、有機バインダの含有量が更に少なくなり、かつ金属成形体をプレス成形しているため、所定のデザインを切削した金属成形体を脱脂及び焼成すると、その脱脂及び焼成時間を更に短縮できるとともに、焼成時の線収縮率を更に低減できる。
更に金属成形体を焼成して得られた焼成体の密度も更に高いため、金属単体としての性質、例えば金属特有の重量感や光沢を容易に出すことができる。
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、金属粒子として銀粒子を挙げたが、金粒子、白金粒子、銅粒子、ニッケル粒子などでもよい。
また、上記第1及び第2の実施の形態では、銀粒子を含む金属成形体の脱脂及び焼成温度を500〜930℃、好ましくは550〜900℃の範囲内の温度に設定したが、金粒子を含む金属成形体では、脱脂及び焼成温度を500〜950℃、好ましくは550〜920℃の範囲内の温度に設定し、白金粒子を含む金属成形体では、脱脂及び焼成温度を600〜1700℃、好ましくは800〜1000℃の範囲内の温度に設定する。また銅粒子を含む金属成形体では、脱脂及び焼成温度を500〜980℃、好ましくは550〜920℃の範囲内の温度に設定し、ニッケル粒子を含む金属成形体では、脱脂及び焼成温度を500〜1300℃、好ましくは550〜1000℃の範囲内の温度に設定する。
更に、上記第1及び第2の実施の形態では、脱脂温度を焼成温度と同一とし、脱脂時間を0.5〜2分間、好ましくは1〜1.5分間としたが、脱脂温度を焼成温度より低い300〜700℃、好ましくは350〜450℃とし、脱脂時間は0.5〜2分間、好ましくは1〜1.5分間としてもよい。一方、金属粒子として金粒子、銅粒子又はニッケル粒子を用いる場合には、脱脂温度を焼成温度より低い300〜700℃、好ましくは350〜450℃とし、脱脂時間は0.5〜2分間、好ましくは1〜1.5分間としてもよく、金属粒子として白金粒子を用いる場合には、脱脂温度を焼成温度より低い300〜900℃、好ましくは350〜450℃とし、脱脂時間は0.5〜2分間、好ましくは1〜1.5分間としてもよい。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
平均粒径5μmの第1銀粒子75重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子25重量%とをロッキングミキサで10分間混合し、ウレタン樹脂バインダ((株)ユケン工業製:セランダーDB−17)を第1及び第2金属粒子の合計量99.25重量%に対して0.75重量%添加し、乳鉢にて10分間混合した。この混合物を開口径0.85mmのふるいにかけ、粒径が0.85mm以下の混合物を所定の形状の金型に充填して、100MPaのプレス圧にて30秒間成形し、この成形体を大気中60℃で24時間乾燥させて金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例1とした。
<実施例2>
平均粒径5μmの第1銀粒子のみを用い、平均粒径20μmの第2銀粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例2とした。
<実施例3>
平均粒径5μmの第1銀粒子50重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子50重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例3とした。
<実施例4>
平均粒径5μmの第1銀粒子25重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子75重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例4とした。
<実施例5>
平均粒径5μmの第1銀粒子25重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子50重量%と、平均粒径0.8μmの第3銀粒子25重量%を混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例5とした。
<実施例6>
平均粒径5μmの第1銀粒子75重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子20重量%と、平均粒径0.8μmの第3銀粒子5重量%を混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例6とした。
<実施例7>
ウレタン樹脂バインダを第1及び第2金属粒子の合計量99.7重量%に対して0.3重量%添加したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例7とした。
<実施例8>
ウレタン樹脂バインダを第1及び第2金属粒子の合計量97重量%に対して3重量%添加したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例8とした。
<実施例9>
粒径0.85mm以下の混合物を所定の形状の金型に充填して、50MPaのプレス圧にて30秒間成形したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例9とした。
<実施例10>
粒径0.85mm以下の混合物を所定の形状の金型に充填して、200MPaのプレス圧にて30秒間成形したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例10とした。
<実施例11>
第1銀粒子の替えて第1金粒子を用い、第2銀粒子に替えて第2金粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例11とした。
<実施例12>
第1銀粒子の替えて第1白金粒子を用い、第2銀粒子に替えて第2白金粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例12とした。
<実施例13>
バインダとしてフェノール樹脂を用い、更にフェノール樹脂100重量%に対しリン酸トリフェニルを15重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例13とした。
<実施例14>
バインダとしてエポキシ樹脂を用い、更にエポキシ樹脂100重量%に対しリン酸トリキシレニルを15重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例14とした。
<実施例15>
バインダとしてスチレン樹脂を用い、更にスチレン樹脂100重量%に対しフタル酸ジ-2-エチルヘキシルを10重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例15とした。
<実施例16>
バインダとしてアクリル樹脂を用い、更にアクリル樹脂100重量%に対しフタル酸ジイソノニルを10重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例16とした。
<実施例17>
バインダとしてポリビニルアルコールを用い、更にポリビニルアルコール100重量%に対しセバシン酸ジオクチルを8重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例17とした。
<実施例18>
バインダとしてデキストリン及びカゼイン等量混合物を用い、更にこの等量混合物100重量%に対しアジピン酸ジオクチルを15重量%加えたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例18とした。
<実施例19>
第1銀粒子に替えて第1銅粒子を用い、第2銀粒子に替えて第2銅粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例19とした。
<実施例20>
第1銀粒子に替えて第1ニッケル粒子を用い、第2銀粒子に替えて第2ニッケル粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を実施例20とした。
<比較例1>
平均粒径5μmの第1銀粒子20重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子80重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例1とした。
<比較例2>
平均粒径5μmの第1銀粒子30重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子40重量%と、平均粒径0.8μmの第3銀粒子30重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例2とした。
<比較例3>
平均粒径5μmの第1銀粒子85重量%と、平均粒径20μmの第2銀粒子10重量%と、平均粒径0.8μmの第3銀粒子5重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例3とした。
<比較例4>
ウレタン樹脂バインダを第1及び第2金属粒子の合計量99.8重量%に対して0.2重量%添加したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例4とした。
<比較例5>
ウレタン樹脂バインダを第1及び第2金属粒子の合計量96重量%に対して4重量%添加したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例5とした。
<比較例6>
粒径0.85mm以下の混合物を所定の形状の金型に充填して、40MPaのプレス圧にて30秒間成形したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例6とした。
<比較例7>
粒径0.85mm以下の混合物を所定の形状の金型に充填して、250MPaのプレス圧にて30秒間成形したこと以外は、実施例1と同様にして金属成形体を作製した。この金属成形体を比較例7とした。
<比較試験1及び評価>
実施例1〜20及び比較例1〜7の金属成形体の彫刻刀、カッタ、ルータ等による切削性を試験した。具体的には、項目Aとして刃を金属成形体に入れるときの入り易さを、項目Bとして切削中の刃の運び易さを、項目Cとして切削面の美しさをそれぞれ評価し、その結果を表1に示した。なお、表1の項目Aにおいて、『◎』は軽い力で切削できたことを示し、『○』は軽くはないが切削できることを示し、『×』は成形体が硬く切削が難しかったことを示す。また表1の項目Bにおいて、『◎』は滑らかで削り心地が良かったことを示し、『○』は滑らかだが少し力を要したことを示し、『×』は切削中に刃が引っ掛かったことを示す。更に表1の項目CAにおいて、『◎』は刃の入った通りに切削できたことを示し、『○』は多少乱れるが気にならない程度であったことを示し、『×』は必要以上に削れてしまいイメージが崩れたことを示す。
一方、実施例1〜20及び比較例1〜7の金属成形体から縦×横×長さが2mm×4.8mm×44mmの棒状成形体をそれぞれ作製し、棒状成形体の両端を支持して中央部に荷重を加える3点曲げ試験を行い、棒状成形体が破壊したときの荷重を測定した。この破壊荷重から破壊時の曲げモーメントを算出し、この破壊時の曲げモーメントを断面係数で割って得られた曲げ強さを表1に示した。
また、実施例1〜20及び比較例1〜7の金属成形体を800℃の電気炉に入れて10分間焼成した。これらの焼成体の線収縮率、密度、変形及び焼結状態をそれぞれ測定して表1に示した。但し、実施例19及び20においては電気炉内に窒素若しくはアルゴンガスを導入し不活性雰囲気で焼成することにより焼成体の酸化を防止した。なお、真密度に近いほど完成度が高いため、密度は、(実測密度/真密度)×100(%)から算出した密度比(%)として表1に示した。また等方的に収縮しないとイメージを損ねるため、真球の金属成形体を焼成し、変形は、[(焼成後の最大径−焼成後の最小径)/焼成後の最大径]×100(%)から算出した変形率(%)として表1に示した。更に焼結状態は、電子顕微鏡で観察して焼結の可否を表1に示した。この表1の焼結の可否において、『○』は焼結が確認されたことを示し、『×』は焼結が不十分であったことを示す。
Figure 2007113106
表1から明らかなように、切削性能の項目Aについては、比較例5及び7が『×』であり、項目Bについては、比較例1、2及び7が『×』であり、項目Cについては、比較例2、4及び6が『×』であったのに対し、実施例1〜20は項目A〜Cについて、全て『◎』又は『○』であった。
また、抗折強度については、比較例2、4及び6が0.19〜0.33MPaと低かったのに対し、実施例1〜20は0.38〜0.53MPaと高かった。
また、線収縮率については、比較例2及び6が7.6%及び8.0%と大きかったのに対し、実施例1〜20は3.1〜6.8%と小さかった。
また、密度比については、比較例1及び5が83%及び84%と低かったのに対し、実施例1〜20は85〜93%と高かった。
また変形率については、比較例2、3、5及び6が3.5〜4.2%と大きかったのに対し、実施例1〜20は0.6〜1.8%と小さかった。
更に焼結の可否については、比較例1、3、5及び7が『×』であったのに対し、実施例1〜20は全て『○』であった。

Claims (7)

  1. 金属粒子を主材とし、残部に有機バインダを含む金属成形体において、
    前記有機バインダが、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上のバインダであることを特徴とする金属成形体。
  2. 有機バインダに、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤が添加された請求項1記載の金属成形体。
  3. 有機バインダが金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%含まれる請求項1記載の金属成形体。
  4. 金属粒子の平均粒径が0.5〜25μmである請求項1記載の金属成形体。
  5. アトマイズ法により平均粒径0.5〜25μmの金属粒子を作製する工程と、
    ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、デキストリン及びカゼインからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機バインダと前記第1金属粒子とを混合する工程と、
    前記混合物を50〜200MPaの圧力で0.5〜120秒間プレス成形する工程と、
    前記プレス成形物を大気中で5〜120℃の温度に1〜48時間保持して乾燥する工程と
    を含む金属成形体の製造方法。
  6. 有機バインダに、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル及びセバシン酸エステルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の可塑剤を添加した請求項5記載の金属成形体の製造方法。
  7. 有機バインダを金属粒子99.7〜97重量%に対して0.3〜3重量%混合する請求項5記載の金属成形体の製造方法。
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