JP2010059456A - チタン焼結体およびチタン焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チタン焼結体1は、チタン基合金で構成されたチタン粉末2と、窒化ホウ素粉末3との集合体が焼結してなるものである。このようなチタン焼結体1は、チタン粉末2および窒化ホウ素粉末3を混合して混合粉末を得る工程と、混合粉末を成形して成形体を得る工程と、成形体を脱脂して脱脂体を得る工程と、脱脂体を焼成して焼結体を得る工程とを有する方法により製造することができる。窒化ホウ素は、潤滑性の高い物質であり、チタン焼結体1の表面に窒化ホウ素粉末3が露出していることにより、表面の潤滑性が高いものとなる。なお、かかる観点から、窒化ホウ素は、六方晶系の窒化ホウ素であるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
ところが、チタン合金は、表面の摩擦係数が大きいため、潤滑性が低いことが問題になっている。このため、チタン合金を軸受やシールリング等の摺動部材として用いた場合、摺動面に摩擦が生じ、円滑な摺動を阻害するばかりか、摩擦熱に伴って摺動面の固着等の不具合を招いていた。
しかしながら、摺動面に潤滑層を形成したとしても、長時間の摺動に伴ってこの潤滑層が剥離することが問題となっている。このため、従来は摺動部材の耐久性が十分でなかった。また、潤滑層を形成した後は、部材に対して加工を施すことができないため、製造工程に制約があった。
本発明のチタン焼結体は、チタンまたはチタン基合金を主材料とし、該主材料中に分散した窒化ホウ素粉末を含むことを特徴とする。
これにより、表面の優れた潤滑性および耐摩耗性を長期にわたって維持することができるチタン焼結体が得られる。
これにより、所望の形状で均質なチタン焼結体が得られる。
本発明のチタン焼結体では、前記窒化ホウ素粉末の平均粒径は、前記チタン粉末の平均粒径より小さいことが好ましい。
これにより、窒化ホウ素粉末の各粒子が低強度である影響が、チタン焼結体全体の強度に波及するのを抑制しつつ、表面の潤滑性を十分に高めることができる。
本発明のチタン焼結体では、前記チタン粉末の平均粒径は、1〜50μmであることが好ましい。
これにより、十分な機械的特性と表面の潤滑性とを併せ持つチタン焼結体が得られる。
六方晶系の窒化ホウ素は、層状結晶が積層された結晶構造になっており、各層の表面が滑り易いという特徴を有する。このため、六方晶系の窒化ホウ素は、固体であるにもかかわらず優れた潤滑性を示し、これによりチタン焼結体の表面に優れた潤滑性を付与することができる。
これにより、窒化ホウ素粉末の各粒子がチタン焼結体の破壊の起点になる確率を十分に低下させることができるため、チタン焼結体の機械的特性が著しく低下するのを防止することができる。
本発明のチタン焼結体では、表面に前記窒化ホウ素粉末の一部の粒子が露出していることが好ましい。
これにより、窒化ホウ素粉末がチタン焼結体の表面に潤滑性を付与する。
これらの窒化物およびホウ化物は、硬度が特に高いものであるため、これらが窒化ホウ素粉末の粒界付近に存在していることにより、チタン焼結体全体の硬度を高め、耐摩耗性を高めることができる。
これにより、十分な潤滑性を有し、長期にわたって摺動したとしても固着等することなく、潤滑性および耐摩耗性を維持し得るチタン焼結体が得られる。
混合粉末を所定の形状に成形して成形体を得る成形工程と、
成形体を焼成してチタン焼結体を得る焼成工程とを有することを特徴とする。
これにより、表面の優れた潤滑性および耐摩耗性を長期にわたって維持することができるチタン焼結体を効率よく製造することができる。
これにより、焼結が進み過ぎて過焼結となるのを防止し、窒化ホウ素粉末の粒子全体がチタンと反応してしまうのを防止することができる。その結果、窒化ホウ素特有の潤滑性が消失してしまうのを防止することができる。
本発明のチタン焼結体の製造方法では、前記焼成工程における雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気であることが好ましい。
これにより、焼成工程において、高温下であっても窒化ホウ素の分解を抑制することができる。
これにより、比較的小型のものや、複雑で微細な形状の成形体をニアネットで製造することができる。このため、脱脂後または焼成後の後加工を不要にする(または加工量を抑制する)ことができる。
本発明のチタン焼結体は、チタン基合金で構成されたチタン粉末と、窒化ホウ素粉末とを含む混合粉末を、所定の形状に成形し、焼成して得られたものである。
このような本発明によれば、表面の潤滑性が高く、表面に膜等を形成しなくても、長期にわたって高い潤滑性を発揮し得るチタン焼結体が得られる。
図1は、本発明のチタン焼結体の実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すチタン焼結体1は、チタン粉末2中に窒化ホウ素粉末3の各粒子が点在し、隣接する各粒子間が焼結したものである。
チタン粉末2は、チタン単体またはチタン基合金で構成された粉末である。
具体的には、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−7Nb等が挙げられる。
また、チタン基合金は、これらの金属元素の他に、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)等の非金属元素を含んでいてもよい。
このうち、チタン粉末2は、アトマイズ法により製造されたものであるのが好ましい。アトマイズ法によれば、微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末の各粒子の形状が比較的球形状に近くなるため、粉末の流動性および充填性を高めることができる。さらに、粒度分布が狭くなるので、焼結体を得たときに表面の平滑性が均一になり、表面の潤滑性を均一にすることができる。
窒化ホウ素粉末3は、窒化ホウ素(BN)で構成された粉末である。窒化ホウ素は、一般に表面の潤滑性が高い。このため、チタン粉末2とともに焼結されることにより、チタン焼結体1に散在し、表面に露出した窒化ホウ素粉末3が潤滑性を発揮する。
また、この窒化ホウ素粉末3は、チタン焼結体1の全体に散在しているため、仮にチタン焼結体1が摩耗したとしても、摩耗面には次々と別の窒化ホウ素粉末3が露出することとなる。このため、従来のように、チタン焼結体1の表面にDLC膜のような潤滑性に優れた潤滑層を設ける場合と比べて、潤滑層が剥離するおそれがなく、長期にわたって潤滑性を維持することができる。
なお、特にホウ化チタンは、チタン基合金よりも硬度が高く、一般的に高硬度とされる窒化チタンや炭化チタン等に比べても硬度が高いため、他の材料との摺動に伴うチタン焼結体1の摩耗を、確実に抑制することができる。
具体的には、窒化ホウ素粉末3の平均粒径は、チタン粉末2の平均粒径の0.1〜0.8倍程度であるのが好ましく、0.2〜0.5倍程度であるのがより好ましい。窒化ホウ素粉末3の平均粒径をこのような範囲に設定することにより、チタン焼結体1の機械的特性の低下を最小限に抑えることができる。
また、窒化ホウ素は、チタンよりも高い熱伝導率(チタンの約2〜3倍程度)を有する。このため、チタン焼結体1が窒化ホウ素粉末3を含むことにより、チタン焼結体1全体の熱伝導率の向上が図られることとなる。
本発明のチタン焼結体の製造方法は、[1]原材料を混合して混合粉末を得る混合工程と、[2]混合粉末を成形して成形体を得る成形工程と、[3]成形体を脱脂して脱脂体を得る脱脂工程と、[4]脱脂体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
まず、チタン粉末および窒化ホウ素粉末(以下、これらを「原料粉末」とも言う。)と、バインダとを用意し、これらを混練機にて混練し、混練物を得る。
この混練物(コンパウンド)中では、チタン粉末、窒化ホウ素粉末およびバインダが均一に分散している。
さらに、混練物中には、原料粉末、バインダ、可塑剤の他に、例えば、焼結助剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜15mm程度とされる。
なお、混練に代えて、造粒を行うようにしてもよい。
次に、混練物を所望の形状に成形して成形体を製造する。
成形体の製造方法(成形方法)としては、特に限定されず、例えば、圧粉成形(圧縮成形)法、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法、押出成形法等の各種成形法を用いることができるが、本実施形態では、前述したように金属粉末射出成形法について詳述する。金属粉末射出成形法によれば、比較的小型のものや、複雑で微細な形状の成形体をニアネット(最終形状に近い形状)で製造することができる。このため、脱脂後または焼成後の後加工を不要にする(または加工量を抑制する)ことができる。
このようにして得られた成形体は、原料粉末の各粒子の隙間にバインダが一様に分布し、各粒子間を繋ぐことにより、その保形性が維持される。
また、混練物中に窒化ホウ素粉末を含んでいることにより、混練物と成形型の内壁面との反応性を抑制することができ、成形体の離型性が高められる。これにより、離型時の成形体の変形が防止され、寸法精度の高い成形体を得ることができる。
次に、得られた成形体に脱脂処理(脱バインダ処理)を施し、脱脂体を得る。
具体的には、成形体を加熱して、バインダを分解することにより、成形体中からバインダを除去して、脱脂処理がなされる。
この脱脂処理は、例えば、成形体を加熱する方法、バインダを分解するガスに成形体を曝す方法等が挙げられる。
また、成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、大気のような酸化性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
なお、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて行うことにより、成形体中のバインダをより速やかに、そして、成形体に残存させないように分解・除去することができる。
また、得られた脱脂体に対して、必要に応じ、切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにしてもよい。脱脂体は、硬度が比較的低く、かつ比較的可塑性に富んでいるため、脱脂体の形状が崩れるのを防止しつつ、容易に機械加工を施すことができる。このような機械加工によれば、最終的に寸法精度の高い焼結体を容易に得ることができる。
前記脱脂工程で得られた脱脂体を、焼成炉で焼成して焼結体を得る。
この焼結により、粉末冶金用金属粉末は、粒子同士の界面で拡散が生じ、焼結に至る。この際、前述したようなメカニズムによって、脱脂体が速やかに焼結される。その結果、全体的に緻密な高密度の焼結体が得られる。
なお、得られたチタン焼結体1に対して、必要に応じ、切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにしてもよい。このような機械加工を施しても、窒化ホウ素粉末3が全体に分散して含まれていることから、加工によって新たな窒化ホウ素粉末3が現れ、チタン焼結体1の加工面は、優れた潤滑性を維持することができる。
例えば、チタン焼結体の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することができる。
また、前記実施形態では、成形・脱脂・焼成の各工程を経て焼結体を得る場合について説明したが、本発明のチタン焼結体は、プラズマの作用を利用してこれらを同時に行う放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)法により製造されたものでもよい。
1.チタン焼結体の製造
(実施例1)
<1>まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径23μmのチタン粉末と、平均粒径8μmの六方晶窒化ホウ素粉末とを混合して原料粉末を得た。なお、原料粉末中の窒化ホウ素粉末の含有率は、0.1質量%とした。
次いで、ポリプロピレンとワックスの混合物(バインダ)を用意し、原料粉末とバインダとの質量比が9:1になるように秤量して、チタン焼結体製造用組成物を得た。
次いで、得られたチタン焼結体製造用組成物を混練機で混練し、コンパウンドを得た。そして、コンパウンドをペレットに加工した。
<成形条件>
・成形方法:金属粉末射出成形法
・材料温度:150℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm2)
<脱脂条件>
・脱脂温度 :520℃
・脱脂時間 :5時間
・脱脂雰囲気:窒素ガス雰囲気
<焼成条件>
・焼成温度 :1200℃
・焼成時間 :2.5時間
・焼成雰囲気:Ar雰囲気
・雰囲気圧力:大気圧(100kPa)
原料粉末中の窒化ホウ素粉末の含有率を、それぞれ表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして焼結体(チタン焼結体)を得た。
(実施例9)
焼成条件を以下のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして焼結体(チタン焼結体)を得た。
<焼成条件>
・焼成温度 :1200℃
・焼成時間 :2.5時間
・焼成雰囲気:減圧雰囲気
・雰囲気圧力:1Pa
(実施例10〜16)
原料粉末中を窒化ホウ素粉末の含有率を、それぞれ表1に示すようにした以外は、前記実施例9と同様にして焼結体(チタン焼結体)を得た。
原料粉末中への窒化ホウ素粉末の混合を省略した以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(比較例2)
原料粉末中への窒化ホウ素粉末の混合を省略した以外は、前記実施例9と同様にして焼結体を得た。
窒化ホウ素粉末に代えて、平均粒径5μmのグラファイト粉末(炭素粉末)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を得た。
(比較例4)
窒化ホウ素粉末に代えて、平均粒径5μmのグラファイト粉末(炭素粉末)を用いた以外は、前記実施例9と同様にして焼結体を得た。
まず、比較例1と同様にして焼結体を得た。
次いで、得られた焼結体の表面にDLC膜(平均厚さ0.5μm)を成膜した。
(比較例6)
まず、比較例2と同様にして焼結体を得た。
次いで、得られた焼結体の表面にDLC膜(平均厚さ0.5μm)を成膜した。
2.1 相対密度
まず、各実施例および各比較例で得られた焼結体について、アルキメデス法により比重を測定した。そして、原料粉末の組成から導出される真密度に対し、測定された比重から各焼結体の相対密度を算出した。
次に、各実施例および各比較例で得られた焼結体について、JIS Z 2244に規定の方法により、ビッカース硬度を測定した。
2.3 引張強度
次に、各実施例および各比較例で得られた焼結体について、JIS Z 2241に規定の金属材料引張試験方法により、引張強度を測定した。
次に、各実施例および各比較例で得られた焼結体について、JIS K 7218Bに規定の滑り摩耗試験方法のB法(ピン・オン・ディスク法)に準じて、表面の摩擦係数を測定した。なお、摩擦係数の測定は、滑り摩耗試験開始直後と、試験開始から1時間経過後の2回行った。
また、滑り摩耗試験における相手材料には、チタンの熱間圧延材を用いた。また、2.3の引張試験において、手の力で容易に折れてしまった焼結体については、摩擦係数の測定を省略した。
以上、2.1〜2.4の測定結果を表1に示す。
また、各比較例の焼結体について、2.4の滑り摩耗試験を1時間連続して行ったところ、試験後における摩擦係数は、試験開始直後における摩擦係数に比べて大幅に上昇したのに対し、各実施例の焼結体については、そのような摩擦係数の上昇は認められなかった。このことから、各実施例の焼結体は、潤滑性の長期耐久性に優れていることが明らかとなった。
さらに、各実施例の焼結体は、比較例1〜4の焼結体に比べていずれも高硬度であった。したがって、各実施例の焼結体は、耐摩耗性に優れていると言える。
Claims (13)
- チタンまたはチタン基合金を主材料とし、該主材料中に分散した窒化ホウ素粉末を含むことを特徴とするチタン焼結体。
- チタンまたはチタン基合金で構成されたチタン粉末と、窒化ホウ素粉末とを含む混合粉末を、所定の形状に成形し、焼成して得られたものである請求項1に記載のチタン焼結体。
- 前記窒化ホウ素粉末の平均粒径は、前記チタン粉末の平均粒径より小さい請求項2に記載のチタン焼結体。
- 前記チタン粉末の平均粒径は、1〜50μmである請求項2または3に記載のチタン焼結体。
- 前記窒化ホウ素粉末は、主として六方晶窒化ホウ素で構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のチタン焼結体。
- 当該チタン焼結体中の前記窒化ホウ素粉末の含有率は、0.1〜6.8質量%である請求項1ないし5のいずれかに記載のチタン焼結体。
- 表面に前記窒化ホウ素粉末の一部の粒子が露出している請求項1ないし6のいずれかに記載のチタン焼結体。
- 前記主材料と前記窒化ホウ素粉末の粒子との界面付近に、窒化チタンおよびホウ化チタンの少なくとも一方を含む請求項1ないし7のいずれかに記載のチタン焼結体。
- JIS K 7218Bに規定の滑り摩耗試験方法のB法に準じて測定され、該滑り摩耗試験方法における相手材料としてチタンの熱間圧延材を用いたとき、当該チタン焼結体の表面の摩擦係数は、0.6以下である請求項1ないし8のいずれかに記載のチタン焼結体。
- チタンまたはチタン基合金で構成されたチタン粉末と、窒化ホウ素粉末とを混合して混合粉末を得る混合工程と、
混合粉末を所定の形状に成形して成形体を得る成形工程と、
成形体を焼成してチタン焼結体を得る焼成工程とを有することを特徴とするチタン焼結体の製造方法。 - 前記焼成工程における焼成条件は、温度1000〜1600℃×0.2〜12時間である請求項10に記載のチタン焼結体の製造方法。
- 前記焼成工程における雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気である請求項10または11に記載のチタン焼結体の製造方法。
- 前記成形工程における成形体は、金属粉末射出成形法により成形される請求項10ないし12のいずれかに記載のチタン焼結体の製造方法。
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