JP6232610B2 - 金属焼結体の製造方法及び金属焼結体 - Google Patents
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従来、この種の金属焼結体の製造方法は、粉末状の金属材料に樹脂やワックスなどの流動性を持たせるバインダ(結合材)を添加し、加熱・混練して可塑性を持たせ、プラスチックと同様に射出成形し、その後、バインダを除去(脱脂)し、焼結して所望の金属焼結体を得ている。また、MIM法を用いてセラミックスを製造する方法も知られている。このセラミックスを製造する際には、必要に応じて、ホウ素,ベリリウム,炭素,酸化イットリウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化リチウム等の焼結助剤を添加し、緻密化を図ることも行われている(例えば、特開平4−83752号公報参照)。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、高硬度化,高剛性化,高耐摩耗性,高寸法安定性等の品質向上を確実に達成できるようにした金属焼結体の製造方法及び金属焼結体を提供することを目的とする。
即ち、上記の目的を達成するため本発明の金属焼結体の製造方法は、粉末状の金属材料とバインダとを混合して混合物を得る混合工程と、混合工程で得られた混合物を金属射出成形機において所要の形状の成形体に成形する射出成形工程と、射出成形工程で得られた成形体の脱脂処理を行う脱脂工程と、脱脂工程によって脱脂処理された成形体を焼結して金属焼結体を得る焼結工程とを備えた金属焼結体の製造方法において、
上記混合工程において、金属材料及びバインダに、平均粒径φwが、φw=10nm〜300nm、最大粒径φmが、φm≦350nmの酸化マグネシウム粉末を、0.1〜10重量%混合する構成としている。
好ましくは、φw=25nm〜250nm、φm≦300nm、より好ましくは、φw=40nm〜210nm、φm≦260nmである。
酸化マグネシウム(MgO)は、融点2800℃、沸点3600℃、密度3.65g/cm3 であり、白色または灰色で水に難溶の固体である。また、酸化マグネシウムは、耐熱性,耐食性に優れ、絶縁性が高く、熱伝導性も高い。
より詳しくは、本発明においては、上記金属材料は、ステンレス鋼(SUS)からなり、上記混合工程において、用いる金属材料の粉末は、平均粒径φxが、φx=2μm〜60μm、最大粒径φyが、φy≦120μmのものを用いた。
そして、上記混合工程において、金属材料及びバインダに、平均粒径φwが、φw=200nm、最大粒径φmが、φm≦250nm、純度が99.98質量%以上であり、一次粒子が単結晶である、酸化マグネシウム粉末を、0.1〜10重量%混合する構成としている。
本発明に用いるバインダとしては、例えば、アタクチック、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス、ステアリン酸、鉱油、天然ワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートエチレン、ジオクチルフタート、脂肪酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール(POM)、アクリル系樹脂、ナフタリンまたはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
本発明においては、必要に応じ、バインダとして、パラフィンワックスを1〜12重量%、ポリアセタールを1〜12重量%混合する構成としている。
これにより、酸化マグネシウムは微粒子(ナノ粒子)なので酸素の悪影響を受け易いが、非酸素雰囲気において酸化マグネシウムの混合を行うので、酸素の悪影響を抑止することができ、焼結時に金属材料粉末間に確実に介在させて、一体化させることができるようになる。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る金属焼結体の製造方法は、(1)混合工程、(2)射出成形工程、(3)脱脂工程、(4)焼結工程からなる金属射出成形法(所謂「MIM」法)により金属焼結体を製造する。以下、各工程について説明する。
粉末状の金属材料、バインダ及び酸化マグネシウム粉末を混合して混合物を得る。
金属材料は、どのような金属あるいは合金であっても良い。実施の形態では、金属材料は、例えば、鉄系金属であるステンレス鋼(SUS)で構成されている。金属粉末は、例えば、平均粒径φxが、φx=2μm〜60μm、最大粒径φyが、φy≦120μmである。実施の形態では、例えば、平均粒径25μm程度のものを用いた。
バインダとしては、どのようなものを用いても良い。実施の形態では、パラフィンワックスとポリアセタール(POM)との混合物を用いた。
これにより、酸化マグネシウムは微粒子(ナノ粒子)なので酸素の悪影響を受け易いが、非酸素雰囲気において酸化マグネシウムの混合を行うので、酸素の悪影響を抑止することができ、後述の焼結時に金属材料粉末間に確実に介在させて、一体化させることができるようになる。
金属射出成形機において、ペレット化した混合物を混練して射出成形し、所要の形状の成形体に成形する。この射出成形工程において、成形金型温度Tjを、Tj=30℃〜125℃にした。実施の形態では、例えば、成形金型温度Tjを、Tj=45℃にした。これにより、混合物であるペレット状に固化した金属粉末、バインダが軟化し、射出成形が可能になる。
脱脂焼結炉に入れ、先ず、真空条件下で脱脂を行う。これにより成形体の結合材の脱脂処理が行われる。この脱脂工程において、最高脱脂温度Tdを、Td=300℃〜800℃にした。これにより、真空条件下において段階を踏まえて昇温することにより、バインダが溶解、気化し脱脂される。
次に、脱脂焼結炉において、脱脂処理された成形体を焼結して金属焼結体を得る。この場合、1つの脱脂焼結炉で脱脂工程と連続して行うので、脱脂炉に入れて脱脂し、それから成形品を取り出して、焼結炉に入れて焼結する場合に比較し、作業工数が減り、短時間で焼結が完成するので、製造効率が大幅に向上させられる。
バインダのパラフィンワックスとして、「SP_0145」(日本精鑞株式会社製)を用いた。バインダのポリアセタール(POM)として、「FA−02」(ポリプラスチック株式会社製)を用いた。
また、実施例1,2において、酸化マグネシウム粉末として、「気相法高純度超微粉マグネシア2000A」(宇部マテリアルズ株式会社製)を用いた。平均粒径φwが、φw=200nm、最大粒径φmが、φm≦250nmである。
<実施例1>
SUS316L: 92 重量%
パラフィンワックス: 3.85重量%
ポリアセタール(POM): 3.15重量%
酸化マグネシウム粉末:1重量%
SUS316L: 89.76重量%
パラフィンワックス: 3.41重量%
ポリアセタール(POM): 2.93重量%
酸化マグネシウム粉末:3.9重量%
SUS316L: 92重量%
パラフィンワックス: 4.4重量%
ポリアセタール(POM): 3.6重量%
酸化マグネシウム粉末:0重量%(無添加)
各工程の温度条件は、混合工程において、混合温度Tkを、Tk=175℃にした。また、混合工程は大気中で行った。射出成形工程において、成形金型温度Tjを、Tj=45℃にした。脱脂工程において、最高脱脂温度Tdを、Td=700℃にした。700℃までに至る時間を15.5時間にし、700℃で3.5時間保持した。焼結工程において、焼結温度Tsを、Ts=1395℃にした。700℃から1395℃に至る時間を4時間20分にし、1395℃で2時間保持した。
結果を図4に示す。この結果から、酸化マグネシウムの微細粉末の添加により、硬度が増し、また、製品の収縮率が小さくなって、寸法安定性が増したことが分かる。
(2)射出成形工程
(3)脱脂工程
(4)焼結工程
Claims (6)
- 粉末状の金属材料とバインダとを混合して混合物を得る混合工程と、
混合工程で得られた混合物を金属射出成形機において所要の形状の成形体に成形する射出成形工程と、
射出成形工程で得られた成形体の脱脂処理を行う脱脂工程と、
脱脂工程によって脱脂処理された成形体を焼結して金属焼結体を得る焼結工程とを備えた金属焼結体の製造方法において、
上記金属材料は、ステンレス鋼(SUS)からなり、上記混合工程において、用いる金属材料の粉末は、平均粒径φxが、φx=2μm〜60μm、最大粒径φyが、φy≦120μmであり、
上記混合工程において、金属材料及びバインダに、平均粒径φwが、φw=200nm、最大粒径φmが、φm≦250nm、純度が99.98質量%以上であり、一次粒子が単結晶である、酸化マグネシウム粉末を、0.1〜10重量%混合することを特徴とする金属焼結体の製造方法。 - 上記混合工程を、非酸素雰囲気中において行うことを特徴とする請求項1記載の金属焼結体の製造方法。
- 上記混合工程において、混合温度Tkを、Tk=120℃〜200℃にし、
上記射出成形工程において、成形金型温度Tjを、Tj=30℃〜125℃にし、
上記脱脂工程において、最高脱脂温度Tdを、Td=300℃〜800℃にしたことを特徴とする請求項1または2記載の金属焼結体の製造方法。 - バインダとして、パラフィンワックスを1〜12重量%、ポリアセタールを1〜12重量%混合したことを特徴とする請求項3記載の金属焼結体の製造方法。
- 上記焼結工程において、ステンレス鋼(SUS)の融点温度をTm(1350℃〜1550℃)としたときに、焼結温度Ts(℃)を、Ts=(0.80〜0.99)Tmにしたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の金属焼結体の製造方法。
- 上記請求項1乃至5何れかに記載の金属焼結体の製造方法によって製造されることを特徴とする金属焼結体。
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