JP2014189896A - 貴金属焼結体用の粘土状組成物 - Google Patents

貴金属焼結体用の粘土状組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】貴金属粘土が造形途中において乾燥した後であっても、すぐれた曲げ加工性を有し、その結果、曲げるなどの加工をする際の時間的制約が少ない貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を提供する。
【解決手段】貴金属粉末および/または貴金属合金粉末、有機系バインダー、有機添加剤および水を少なくとも含有する貴金属焼結体形成用の粘土状組成物であって、前記有機添加剤が0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールであることによって前記の課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、貴金属焼結体形成用の粘土状組成物に関するものである。
従来から、例えば、指輪等に代表される貴金属製の宝飾品や美術工芸品等は、一般に、銀や金などの貴金属含有材料を鋳造又は鍛造することによって製造されている。
しかしながら、近年、銀や金などの貴金属粉末を含んだ貴金属粘土(焼結体形成用の粘土状組成物)が市販されており、この貴金属粘土を任意の形状に成形した後に焼成することにより、任意の形状を有する貴金属の宝飾品や美術工芸品を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至3を参照)。
このような方法によれば、貴金属粘土を通常の粘土細工と同様に自由に造形を行うことができ、造形して得られた成形体を乾燥させた後、加熱炉を用いて焼成することにより、極めて簡単に貴金属製の宝飾品や美術工芸品等を製造することが可能となる。
特許第4265127号公報 特開平4−26707号公報 特開2005−187858号公報
この貴金属製焼結体を製造する場合には、まず、純Agの銀粉末を用いた銀粘土を造形する必要があるが、このような造形は主に手作業で行なわれることから、その途中において、粘土が乾燥してしまい、曲げる等の加工をすることが困難になる場合があった。特に、デザイン性や嗜好性の多様化から貴金属焼結体の形状が複雑化し、その造形にかかる時間が長くなってしまう傾向がある。具体的には、粘土の乾燥体を曲げようとすると従来品では表面に亀裂が入り、さらに曲げると折れてしまう。そのため、指輪(リング)等を作るときは限られた時間で造形を行なう必要があり、そのデザインに限りがあった。
本発明は、このような状況にかんがみて、次のような目的の下に鋭意研究を重ねた結果完成するに至ったものである。
本発明は、貴金属粘土の造形途中において、貴金属粘土が乾燥した後であっても、すぐれた柔軟性及び曲げ加工性を有し、その結果、曲げるなどの造形時間を長くすることができる貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を提供することを目的とする。
本発明者らが前記課題を解決するために、貴金属粘土(貴金属焼結体形成用の粘土状組成物)中に、各種の有機物を添加することを試み、添加成分の種類および最適添加量について鋭意研究を重ねた結果、所定量のプロピレングリコールを添加することで、貴金属粘土の造形途中において、貴金属粘土が乾燥した後であっても、十分な柔軟性及び曲げ加工性を有することができることを見出した。
さらに、詳細な実験を重ねた結果、プロピレングリコール単体を添加するよりも、グリセリン、ポリエチレングリコールのいずれか一方又は両方を添加した方がよりすぐれた効果が得られるということを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、以下にその構成と本発明に想到するに至った経緯について説明する。
本発明の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物(以下、「貴金属粘土」という)は、例えば、貴金属として金または銀若しくは銀合金を含有する粉末に、少なくとも、メチルセルロースなどの有機バインダー、水を含有し、且つ、添加成分として、少なくとも所定量のプロピレングリコールを含有することを特徴とする。
前述のようにプロピレングリコールは、溶剤として広く知られている他に溶液に添加して粘度を調整したり、食品や化粧品に添加して保水性を持たせたりする用途として使用されている。しかしながら、貴金属焼結用粘土に添加して、造形途中での乾燥にどのような特性が呈されるかなどについては、全く知られていなかった。
本発明者らは、前述の課題を解決すべく、貴金属焼結体形成用の粘土状組成物に添加する添加剤の種類および添加量と、粘土状組成物の特性について、造形による乾燥後の柔軟性、曲げ加工性及び造形性の観点から評価を行った。
前記評価結果に基づき、鋭意研究を続けた結果、本発明者らは、次のような本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は、
「(1) 貴金属粉末および/または貴金属合金粉末、有機系バインダー、有機添加剤および水を少なくとも含有する貴金属焼結体形成用の粘土状組成物であって、
前記有機添加剤が0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールであることを特徴とする貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。
(2) 前記有機添加剤として、さらに、グリセリンを含むことを特徴とする(1)に記載の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。
(3) 前記有機添加剤として、さらに、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。」
という特徴を有するものである。
次に、本発明の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物について、詳細に説明する。
(a)貴金属粉末、貴金属合金粉末
本発明に用いる貴金属粉末、貴金属合金粉末としては、金粉末、銀粉末、銅粉末、白金粉末、およびそれらの合金粉末を用いることができる。また、銀粉末と銅粉末との混合粉末を用いることもできる。銀合金粉末としては、銀銅合金が好適に用いられる。これらの貴金属粉末および/または貴金属合金粉末は、貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を構成する主成分である。本発明における効果を奏する上で、その含有量が支配的条件となるわけではないが、より実用的な粘土状組成物を構成する上で、その含有量は、50質量%以上95質量%以下とすることが好ましい。すなわち、含有量が50質量%未満では、貴金属が有する風合いや光沢が出ず、一方、95質量%を超えると粘土状組成物の伸びおよび強度が低下するようになるので好ましくない。
(b)有機バインダー
本発明に用いる有機バインダーとしては、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉のうち、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成しても良い。また、前記の中でも、セルロース系バインダー、特にメチルセルロース等の水溶性セルロースから構成することが最も好ましい。
(c)有機添加剤
本発明に用いる有機添加剤としては、プロピレングリコールが用いられる。但し、その含有量が0.1質量%未満であると、粘土状組成物を乾燥すると柔軟性が低下し、本発明が期待している効果が十分に奏されない。一方、含有量が3.0質量%を超えると粘土状組成物としての造形性が悪くなり、成形することが困難になる。そこで、プロピレングリコールの含有量は、0.1〜3.0質量%に定めた。
さらに、プロピレングリコールに加えて、グリセリン、および/またはポリエチレングリコールを添加することにより、粘土状組成物の乾燥後の柔軟性は一層向上する。
グリセリン及びポリエチレングリコールを添加する場合には、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコールの合計含有量が0.1〜3.0質量%となるように調整することが望ましい。グリセリンやポリエチレングリコールは、親水性と親油性の両方の性質を有する液状物質であって、粘土状組成物に含有させることにより粘性を与えることが知られているが、ここでは、プロピレングリコールと共存させて粘土状組成物に添加することによって、粘土状組成物を乾燥させても柔軟性が低下しにくいという効果がプロピレングリコールを単独で加えたときと比べて、より増大するという本発明者らが知得した新規な知見に基づくものである。
さらに、本発明の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物は、必要に応じてさらに油脂、オリーブ油および界面活性剤のうち少なくとも一方が添加されていても良い。
前記油脂としては、例えば、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)等を挙げることができる。
前記界面活性剤は粘土状組成物に添加して混合することにより、バインダーと水の反応により生じた固形物を粉砕し、また貴金属粉末とバインダーとの混合性をよくする作用を有する。界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称であるが、この定義に従えば、前述した本発明におけるポリエチレングリコールも界面活性剤に含まれる。しかしながら、ここで言う、界面活性剤とは、本発明特有の作用を期待して添加したポリエチレングリコールを除いたものであって、分散・凝集作用、起泡・消泡作用、ぬれ性向上、柔軟・平滑作用、帯電防止作用などのために所定量添加されるラウリル硫酸ナトリウムやポリオキシエチレンアルキルエーテルなどを挙げることができる。
貴金属焼結体は、前述の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を混練し、所定の形状に成形した後、焼成することによって製造することができる。
本発明の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物によれば、貴金属粉末および/または貴金属合金粉末、有機系バインダー、有機添加剤および水を少なくとも含有する貴金属焼結体形成用の粘土状組成物であって、前記有機添加剤が0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールであることにより、貴金属粘土が造形途中において乾燥した後であっても、すぐれた柔軟性及び曲げ加工性を有し、その結果、曲げるなどの加工をする際の時間的制約が少ない貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を提供することができる。
全体的に厚さ3mmの板状に成形できた本発明例3に係る貴金属粘土の写真。 伸展しても一部が復元してしまい全体的に厚さ3mmの板状に成形できなかった比較例2に係る貴金属粘土の写真
以下に、本発明に係る貴金属焼結体形成用の粘土状組成物の一実施形態について説明する。
本発明に係る粘土状組成物は、貴金属粉末および/または貴金属合金粉末、有機系バインダー、有機添加剤および水を少なくとも含有し、特に有機添加剤として0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールを含有するものである。さらに、有機添加剤として、グリセリン又はポリエチレングリコールを含有することが望ましい。
ここで、有機系バインダー、有機添加剤及び水の他に、必要に応じて、界面活性剤、油脂及びオリーブ油が添加されていても良い。
本実施形態で説明する粘土状組成物の製造方法を説明する。まず、有機系バインダーとしてメチルセルロース、界面活性剤、オリーブ油、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール及び水を撹拌容器内で撹拌混合する。このバインダー混合溶液を銀粉末とともに混練装置内に導入する。
なお、本実施形態では、バインダー混合溶液の撹拌混合時にプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングルコールを添加したが、有機バインダー、銀粉末及び水を混練装置内での混練時に添加することもできる。
また、本実施形態においては、混練装置のステンレス製の混練容器は、内壁にCrNのコーティングを施したものを用いた。CrNのコーティングは耐摩耗性にすぐれる上に潤滑性にもすぐれているため、Feの混入を抑えることができる。
混練装置内において、銀粉末、バインダー混合溶液及び水を混練することにより、表1に示す組成の粘土状組成物を用意した。
なお、本実施形態では、貴金属粉末として銀粉末を用いたものについて説明しているが、プロピレングリコールの作用は、銀粉末に特有に作用するものではないため、貴金属粉末としては金粉末、銀合金粉末など通常、貴金属焼結体形成用の粘土状組成物に使用される他の貴金属粉末であっても何ら構わない。
[評価方法]
表1に示す粘土状組成物に対して、マイヤー硬度、曲げ加工性、造形性の評価を行った。
(マイヤー硬度)
マイヤー硬度測定は、ある一定量乾燥させた粘土の上に鋼球を載せて、加えた荷重をその凹んだ部分の断面積で割った値を求める。この値が低いほど柔らかい、すなわち、貴金属粘土が乾燥した場合でも柔軟性が高いことを意味している。
本実施例においては、サンプルサイズ:φ20mm、厚み:3mm、鋼球の質量:140g、すなわち、荷重[N]:0.14×9.8(重力加速度)として、測定を行った。
質量減少量が0質量%、2.0質量%、3.2質量%の3つの乾燥状態に対して、評価した結果を表2に示す。
(曲げ加工性)
表1に示す粘土状組成物を長さ60mm、幅5mm、厚さ2mmの板状に成形後、室温、湿度40%の恒温恒湿槽内で表1記載の時間保管したのち、φ17mmの円筒型に巻きつけて、表面に発生するクラックを評価した。評価した結果を表1に示す。貴金属粘土の表面に1mm以上のクラックが発生しなかった場合を「○」と評価し、1mm以上のクラックが発生した場合を「×」と評価した。評価した結果を表2に示す。
(造形性)
表1に示す粘土状組成物10gを厚さ3mmの板状に成形するため、貴金属粘土を で展伸したとき、板状に塑性できるかについて評価した。全体的に厚さ3mmの板状に成形できた場合を「○」と評価し、伸展しても一部が復元してしまい全体的に厚さ3mmの板状に成形できなかった場合を「×」と評価した。図1に全体的に厚さ3mmの板状に成形できた本発明例3の貴金属粘土の写真を示し、図2に伸展しても一部が復元してしまい全体的に厚さ3mmの板状に成形できなかった比較例2の貴金属粘土の写真を示す。この評価した結果を表2に示す。
表2の結果から粘土状組成物に0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールを添加した本発明例1〜7については、粘土状組成物質量減少後もマイヤー硬度が低くなり、造形作業で乾燥しても柔軟性を維持することができた。また、恒温恒湿槽での長期保管後でも曲げ加工性が劣ることはなく、造形性も十分あることが判った。一方、プロピレングリコールを添加しなかった比較例1では、質量減少後にマイヤー硬度が高くなり、曲げ性が劣化する結果となった。また、プロピレングリコールを3.8質量%添加した比較例2では、弾力性があり過ぎるため、造形性で劣る結果となった。
本発明は、貴金属粘土が造形途中において乾燥した場合であっても、すぐれた柔軟性及び曲げ加工性を有し、その結果、曲げるなどの加工をする際の時間的制約が少なく造形性にもすぐれた貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を提供する。また、貴金属焼結体は、本発明の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物を混練し、所定の形状に成形した後、焼成することによって製造することができる。

Claims (3)

  1. 貴金属粉末および/または貴金属合金粉末、有機系バインダー、有機添加剤および水を少なくとも含有する貴金属焼結体形成用の粘土状組成物であって、
    前記有機添加剤が0.1〜3.0質量%のプロピレングリコールであることを特徴とする貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。
  2. 前記有機添加剤として、さらに、グリセリンを含むことを特徴とする請求項1に記載の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。
  3. 前記有機添加剤として、さらに、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貴金属焼結体形成用の粘土状組成物。
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