JP2018024926A - 装飾用の銀含有可塑性組成物および銀焼結物品の製造方法 - Google Patents
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Description
前記特許文献2は、少なくとも銀(Ag)、銅(Cu)、及び酸化ゲルマニウム(GeO2)を含有する組成物を成形し、大気中で400〜600℃で15分以上の仮焼成を行い、還元雰囲気又は非酸化雰囲気において750〜780℃で30〜120分焼成するものである。
前記特許文献3は、鋳造するための装飾用の銀合金を提案するものであって、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ベリリウム銅(Be−Cu)を含み、銅(Cu)又はインジウム(In)を含む組成が提案されている。
前記特許文献4は、銀含有粉末と酸素含有銅粉末とを含有する粘土状組成物、該粘土状組成物を用いて成形した成形体を大気雰囲気において仮焼成を行った後、還元雰囲気において本焼成を行う製造方法が提案されている。
前記特許文献5は、少なくとも銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ベリリウム(Be)を含有して更に金(Au)、又は金(Au)及び白金(Pt)を含有する五元合金組成、若しくは六元合金組成の粉末を有機系バインダと混練して成形後に焼結する方法が提案されている。
そもそも銀は、耐腐食性(耐酸化性)の性質を有する貴金属に属するため、他金属を混合するよりも純度が高い、即ち高品位の銀製品を作成することが望ましいが、高品位の銀製品では柔らかいため、アクセサリーなど身につけた際に容易にキズがついてしまう。そこで、キズなどがつき難い硬さを有するため、貴金属品位を下げるなどの手法が希求されていた。
この銀含有可塑性組成物は、一次焼成に限らず二次焼成においても大気中で焼成することを前提とするものであって、汎用の加熱炉などにて容易に成形品を焼結することができる。
そのため、従来のように還元雰囲気による焼成を行わないので、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを焼成中に流し続けなければならない煩雑な手間や炭素等の還元剤と一緒に密封容器に入れて外部から加熱するなどの煩雑な手間などが、回避でき、カルチャースクールなどで気軽に適用できるようになる。
step1:Ag粉末とCu粉末を混合し、可塑性組成物の造形体を作製した。
→焼成後、折り曲げ強度を測定したところ、割れが生じ、十分な強度を有してはいなかった。(焼結が不十分であった)また、外観も斑模様であった。
step2:Ag・Cu単体金属粉末で混合せず、Ag−Cu合金粉末を用いることとし、既製品の合金粉末の調査を行い、平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)と、平均粒径10μmのAg−Cu合金粉末(Ag85%Cu15%)とを入手した。
step3:入手した2種のAg−Cu合金粉末とAg粉末で、焼成後のAg含有率が92.5%又は95.0%となるように配合を調整し、可塑性組成物を作製した。
→この結果を後述する実施例に示したが、焼成後に割れや折り曲げ強度を測定したところ、平均粒径10μmのAg−Cu合金粉末(Ag85%Cu15%)では成分組成に関わらず割れが生じ、十分な強度を有していないのに対し、平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)では僅かな例においても割れが生じ難かった。この結果より銀−銅合金粉末は、平均粒径10μmのAg−Cu合金粉末(Ag85%Cu15%)のように平均粒径が大きいと十分に焼結が進まず、割れが発生し易いことが解ったので、銀−銅合金粉末を平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)に固定して他の成分や焼成温度等の条件を検討する。
→この結果を後述する実施例に示したが、前記銀−銅合金粉末に第一銀粉末を混合した可塑性組成物では2次焼成が900℃であれば割れが発生することがない焼結体が得られ、前記銀−銅合金粉末に第二銀粉末を混合した可塑性組成物では2次焼成が800℃であれば割れが発生することない焼結体が得られた。
また、(A)銀−銅合金粉末と(B2)第二銀粉末とを用いる二成分系の銀含有可塑性組成物を焼成する場合には、大気焼成としては800℃×30分で二次焼成することが望ましい。
即ち(B1)第一銀粉末を用いた場合には、それ自体のコストは低く抑えられるという利点があるものの、焼成温度が900℃を必要とするため、例えば造形体が微細形状を含む場合には当該微細形状部分が融けてしまったり破損する恐れがあり、またこのような高温条件では操作が困難と判断されたため、できるだけ低い焼成温度を検討する。一方、平均粒径が細かい(B2)第二銀粉末を用いた場合には、焼成温度を低くできるという利点があるため、三成分系の二次焼成温度は900℃より低く800℃より高いことが予測されるものの、それ自体のコストが高いので、混合割合を低減することを検討する。
→室温から500℃まで温度を上げ、30分保持し、さらに830〜900℃まで温度を上げ、30〜60分保持後、200℃以下まで徐冷する焼成条件にて、後述する実施例にて示す多くの配合割合において、割れが発生せず、制作したものが融けない装飾品が得られた。
なお、本発明に係わる平均粒径とは、中位径、中径、メディアン径、メジアン径または50%粒子径とも言い、通常D50で表示されるもので、累積曲線の50%に対応する粒径を意味する。具体的には3本のレーザー散乱光検出機構を持つレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製)を用い、測定条件を[粒子透過性:反射]と[真球/非球形:非球形]としたときに測定される粒度分布のD50の値とする。
なお、この合金粉末に代えて銅粉末を用いた場合には、製品表面上でシミ状になってしまうため、美的価値が損なわれる。
この(B1)成分の三成分系における全金属成分中の割合は、後述する実験例では59.05〜77.15重量%としたが、前述の利点が発揮される範囲であれば特に限定するものではない。
この(B2)成分の三成分系における全金属成分中の割合は、後述する実験例では14.9重量%としたが、前述の利点が発揮される範囲であれば特に限定するものではない。
なお、この銀微細粉末を用いない場合には、密度が低く、収縮率も高い銀焼結体となってしまう。
これらの造形物は、造形物が破壊されることがないように乾燥した後、大気中で焼成して各種の装飾用の物品とする。
一次焼成では、銀含有可塑性組成物の造形体中に含まれる微量の水分やバインダー成分が消失し、二次焼成では金属粉末同士の焼結が起こるが、焼成温度が低すぎても高すぎても割れを生じてしまい、特に過剰なエネルギーを与えると融解も生ずることがある。
さらに添加物として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、銀粉末や合金粉末と有機系バインダとの混合性が良くなるという作用や保水性を向上させる作用を果たす。
水溶性のセルロース系バインダについては、前述のように可塑性を付与する作用を果たすが、水溶性のセルロース系バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等が用いられ、水に溶解して用いる。
ポリエチレンオキサイドを用いる場合には、分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドを0.1〜3wt%の範囲内のものを用いることが望ましい。
また、界面活性剤を用いる場合には、0.03〜3wt%の範囲内であることが望ましく、油脂を用いる場合には、0.1〜3重量%の範囲内であることが望ましい。
前記好適な組成では、何れの可塑性組成物においても金属粉末は75〜99wt%であるが、少なすぎると、収縮が大きくなり、焼結にも支障を生じ、多すぎると、その分、有機系バインダ及び水の割合が少なくなって、造形に支障を生ずる。
さらに、密着性向上剤として、極微量の炭酸鉛、炭酸リチウム、酸化亜鉛、リン酸、炭酸ナトリウム、酸化バナジウム、珪酸ナトリウム、リン酸塩等から選ばれる金属化合物粉末又はガラス粉末を加えても良い。
また、可塑性を改善する目的で、リグニンの如きフェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,3ブチレングリコール、流動パラフィン、アルコール類、油脂、フタル酸、フタル酸−n−ジオクチル、フタル酸−n−ジブチル、ポリビニルアルコールを加え、必要に応じて界面活性剤、表面活性剤を加えても良い。
例えば金属粉末90重量%と有機系バインダ10重量%とを含有する銀含有可塑性組成物を用いて造形、乾燥、焼成を行った場合、バインダー焼失してしまうため、焼成体の重量割合は、銀96%、銅4%となる筈である。
しかし、大気焼成中に銅が酸化し、酸化銅(II)(CuO)となるため、酸素分の重量が約1%増えるために、重量割合で銀95%、銅4%、酸素約1%の構成になる。
このように銀割合を96重量%以上とすることにより、950シルバーの銀焼結物品を得ることができる。
前記step3に示すように入手した2種のAg−Cu合金粉末について評価した。
前記(A)成分である平均粒径が5μmおよび10μmである銀−銅合金粉末を用い、それに前記(B1)成分や前記(B2)成分を適宜に加えた銀含有可塑性組成物を作成した。
なお、使用した原材料は、(A)成分として『SFR−AgCu(72−28)』平均粒径5μmおよび『SFR−AgCu(85−15)』平均粒径10μmを、(B2)成分として『HXR−Ag』平均粒径2.5μmを、(B1)成分として『HXR−Ag(MIX)』平均粒径5μm+分級残(いづれも日本アトマイズ加工株式会社製)を、それぞれ用いた。
表1〜3に示す組成物をそれぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
表1〜3に示す組成物を、前記金属粉末92重量%と、有機系バインダ8%と水とを十分に混合して粘土状にし、長さ50mm幅10mm厚さ1.5mmの試験片を作り、80℃×30分にて乾燥し、長さを測定し、電気炉を用いて800〜900℃で30〜60分で大気(酸化雰囲気)中で焼成し、得られた銀焼成体の表面を磨いてテストピースとし、それぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
収縮率は、先ず、乾燥体の試験片の長さをノギスで計測し、所定の条件で焼成した後、焼結体の試験片・の長さをノギスで計測し、以下の式より求めた。
収縮率=((L1・L2)/L1)×100
L1:乾燥体の試験片の長さ
L2:焼結体の試験片の長さ
折り曲げ強度は、三点曲げ試験法に基づいて行い、具体的には、試験片の中央部を、圧子でスピード(50mm/min)10mmの深さまで押し曲げ、その際の荷重値を測定し、以下の式より求めた。
折り曲げ強度=3Pl/2bd2
P:荷重値,
l:支点間距離
b:試験片幅
d:試験片厚さ
割れは、前記折り曲げ強度試験(三点曲げ試験法)において、割れが発生したか否かを評価した。
前記表1〜3より、平均粒径10μmのAg−Cu合金粉末(Ag85%Cu15%)では(B1)成分と(B2)成分との組成に関わらず、良好な結果が得られなかったが、平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)を用いることにより、900℃30分で行った条件で良好な結果が得られた。
この結果より、銀−銅合金粉末は、平均粒径が大きいと割れが発生し易いことが解ったので、銀−銅合金粉末を平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)に固定して他の成分や焼成温度等の条件を検討する。
(A)成分として平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)を用い、それに前記(B1)第一銀粉末、又は前記(B2)第二銀粉末を加えた組成物を作成し、表4に示す組成物をそれぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
なお、試験方法については、前述のとおりである。
前記表4より、前記銀−銅合金粉末に第一銀粉末を混合した可塑性組成物では2次焼成が900℃であれば割れが発生することない焼結体が得られた。
また、前記銀−銅合金粉末に第二銀粉末を混合した可塑性組成物では2次焼成が800℃であれば割れが発生することない焼結体が得られた。
(A)成分として平均粒径5μmのAg−Cu合金粉末(Ag72%Cu28%)を用い、それに前記(B1)第一銀粉末、及び前記(B2)第二銀粉末を加え、表5にI〜VIの実験No.にて銀含有可塑性組成物を作成し、同表に示すそれぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
なお、試験方法については、前述のとおりである。
前記表5より、以下の結果が得られた。
実験No.Iは、(B1)第一銀粉末を最も含む条件にて、低収縮で割れのない成形品を得ることができた。
実験No.II〜IVは、(A)〜(B2)については同一配合であるが、二次焼成条件にて割れが発生したもの、割れが発生しなかったものと結果が分かれた。
実験No.V,VIは、(B2)第二銀粉末を多く含む条件にて、低収縮で割れのない成形品を得ることができた。当該例では、他の実験No.I〜IVに比べて高価な(B2)第二銀粉末を2倍量又は3倍量含む組成であるため、生産コスト面で望ましくないものと判断した。
当該結果は、900℃の二次焼成温度にて行ったものであるから、殆どの組成において、良好な結果が得られているが、前述のように例えば造形体が微細形状を含む場合には融けてしまったり破損する恐れがあり、更にはこのような高温条件では操作が困難と判断されたため、以後の実験ではできるだけ低い温度で焼成することを併せて検討する。
前記実験において一次焼成を500℃30分で行い、二次焼成を900℃30分,60分,90分で行った後、徐冷しており、合計1〜3時間を要していたが、以後は一次焼成については変更なく、二次焼成については850℃又は870℃で30分又は60分とする。
前記表5の結果に基づいて、表6に示すA〜Lの実験にて銀含有可塑性組成物を作成し、同表に示すそれぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
なお、試験方法については、前述のとおりである。
前記表6より、以下の結果が得られた。
実験A〜Cは、前記表5における実験No.II〜IVの再現試験であり、その際の実験結果と全く同様に焼成を900℃×60分、90分で行った場合には割れが発生していないが、30分では割れが発生してしまった。
実験D〜Fは、前記実験A〜Cにおける組成の(A)成分を減じて、(B)成分を増量した試験であるが、焼成を900℃×30〜90分にて割れが生じなかった。
前記実験D〜Fと全く同じ配合組成にて二次焼成条件を代えて行った実験G〜Lでは、温度850℃では60分の実験Oにて、低収縮で割れのない成形品を得ることができた。温度870℃では45分,60分にて低収縮で割れのない成形品を得ることができた。
〈使用した原材料〉
前記表6の結果に基づいて、銀品位960、(A)成分を12.85%、(C)成分を14.90%、(B)成分を62.25%含有し、バインダー10%を含有する組成物に限定し、表7に示すイ〜チの実験にて銀含有可塑性組成物を作成し、同表に示すそれぞれの焼成条件にて焼成し、焼成後の収縮率、強度、割れを評価した。
前記表7より、以下の結果が得られた。
実験ハに示すように500℃30分にて一次焼成を行った後、二次焼成を850℃で行っても60分で低収縮で割れのない成形品を得ることができ、実験ニに示すように860℃では50分以上で、実験ホに示すように870℃では40分以上で、そして実験ヘ〜チに示すように880℃以上では30分以上で低収縮で割れのない成形品を得ることができた。
なお、実験ハにおける30分、60分の結果は、前記表3における実験G、実験Iに相当し、実験ホにおける30分、60分の結果は、前記表3における実験J、実験Lに相当し、良好な再現性が確かめられている。
前述の銀品位960、(A)成分を12.85%、(C)成分を14.90%、(B)成分を62.25%含有し、バインダー10%を含有する銀含有可塑性組成物組成物に限定した結果を前記表8にまとめた。
前記表8より明らかなように実験No.1〜8では500℃30分にて一次焼成を行った後の二次焼成の温度が840℃以下であったため、焼成時間を長くとっても割れが発生してしまったが、850℃以上では時間によっては十分な焼成結果が得られ、特に870℃では40分以上で、880℃以上では30分以上で、低収縮で割れのない成形品を得ることができることが確認された。
したがって、造形した形状によっては融解等を生ずる恐れがある高温の使用を避けたいのは当然のことであるが、実験No.24,25のように二次焼成の温度を900℃まで上げなくても、実験No.12、15、17〜23のように二次焼成の温度を850〜890℃に設定することにより汎用の加熱設備を用いて大気焼成することができるので、高品位の950シルバーの美麗な銀焼結体として装飾品を得ることができる。
Claims (5)
- 平均粒径が4〜6μmである銀−銅合金粉末と、
平均粒径が1.5〜9μmである銀粉末からなり、
これらの金属粉末と有機系バインダとを含有することを特徴とする装飾用の銀含有可塑性組成物。 - 銀−銅合金粉末は、平均粒径が5μmであり、
銀粉末は、平均粒径が5〜9μmの第一銀粉末と、平均粒径が1.5〜3.5μmの第二銀粉末からなることを特徴とする請求項1に記載の装飾用の銀含有可塑性組成物。 - 銀割合が96重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾用の銀含有可塑性組成物。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の銀含有可塑性組成物にて銀造形体を形成した後、この銀造形体を焼成して銀焼成体を得る装飾用の銀焼結物品の製造方法であって、
前記銀造形体を大気焼成することにより銀焼成体を得ることを特徴とする装飾用の銀焼結物品の製造方法。 - 請求項2又は3に記載の銀含有可塑性組成物にて銀造形体を形成した後、この銀造形体を焼成して銀焼成体を得る装飾用の銀焼結物品の製造方法であって、
前記銀造形体を大気焼成する二次焼成の条件が850℃×60分以上、もしくは860℃×50分以上、もしくは870℃×40分以上、もしくは880℃×30分以上であることを特徴とする装飾用の銀焼結物品の製造方法。
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