JP2013049875A - 銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法、銀銅合金焼結体の製造方法および銀銅合金焼結体 - Google Patents
銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法、銀銅合金焼結体の製造方法および銀銅合金焼結体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】銀含有粉末と酸素含有銅粉末とを含有する粉末成分と、バインダーと、水とを含む銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物であって、前記酸素含有銅粉末は粒子の中央部に純Cuが存在し該純Cuの表層部に酸化銅とが形成されているとともに、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上80質量%以下の範囲とされており、また、酸化銅の合計は、酸素含有銅粉末全体に対して20質量%以上とされていることを特徴とする銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成することで前記の課題を解決する。
【選択図】なし
Description
さらに、このような銀粘土を用いて銀銅合金焼結体を製造した場合、焼結時の体積収縮が大きく密度の高い銀銅合金焼結体が得られることを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、以下に示す構成を有するものである。
(2) 前記酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上50質量%以下の範囲とされおり、酸素含有銅粉末全体に対する酸化銅中のCuOの割合が2質量%以上95質量%以下の範囲とされていることを特徴とする(1)に記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
(3) 前記酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上20質量%以下の範囲とされていることを特徴とする(1)に記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
(4) 前記CuOを酸素含有銅粉末全体に対して2質量%以上85質量%以下の範囲で含有していることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
(5) 前記CuOを酸素含有銅粉末全体に対して40質量%以上85質量%以下の範囲で含有していることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
(6) 前記酸素含有銅粉末の平均粒径が1μm以上25μm以下とされていることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
(7) (1)乃至(6)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物に用いられる粘土状組成物用粉末であって、
前記粘土状組成物用粉末は、銀粉末と酸素含有銅粉末とを含み、前記酸素含有銅粉末は、粒子の中央部に純Cuが存在し該純Cuの表層部に酸化銅が形成されているとともに、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上80質量%以下の範囲とされており、また、酸素含有銅粉末全体に対する酸化銅中のCuOの割合が2質量%以上95質量%以下の範囲とされており、酸化銅の合計は、酸素含有銅粉末全体に対して20質量%以上とされていることを特徴とする銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。
(8) (7)の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末と、バインダー及び水を混合したバインダー剤とを混合して混練することを特徴とする銀銅合金焼結体用の粘土状組成物の製造方法。
(9) (1)乃至(6)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を任意の形状に成形体とし該成形体を乾燥させた後に、還元雰囲気において、焼成を行うことにより、銀銅合金焼結体とすることを特徴とする銀銅合金焼結体の製造方法。
(10) 前記成形体を乾燥させた後に、大気雰囲気において480〜600℃の範囲の焼成温度で15分以上45分以下の時間で仮焼成を行った後、還元雰囲気において700〜820℃の範囲の焼成温度で、15分以上45分以下の時間で本焼成を行うことにより、銀銅合金焼結体とすることを特徴とする(9)に記載の銀銅合金焼結体の製造方法。
(11) 前記成形体を活性炭に埋め込んだ状態で本焼成を行うことを特徴とする(9)または(10)に記載の銀銅合金焼結体の製造方法。
(12) (9)乃至(11)のいずれかに記載の銀銅合金焼結体の製造方法を用いて製造された銀銅合金焼結体。」
に特徴を有するものである。
すなわち、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%未満であると、焼結体を焼成した際の密度・強度が小さくなるため、密度・強度維持の観点から0.7質量%以上とすることが好ましい。一方、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が80質量%を超えると純Cuの表面部のすべてを酸化銅で覆うことが出来ず、粘土状組成物の変色抑制効果が十分でないため、変色抑制効果の観点から80質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、50質量%以下とすることによって、純Cuの表面が十分に酸化銅で覆われるため、一層すぐれた変色抑制効果を発揮させることができる。
この場合、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成して得られる銀銅合金焼結体の機械的強度及び伸び等を向上させることが可能となる。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物は、前記バインダーを、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉の内の、少なくとも1種又は2種以上の組み合わせで構成しても良い。また、前記の中でも、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースから構成することが最も好ましい。
前記界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤を使用することができる。
前記油脂としては、例えば、有機酸(オレイン酸、ステアリン酸、フタル酸、パルミチン酸、セパシン酸、アセチルクエン酸、ヒドロキシ安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプロン酸、エナント酸、酪酸、カプリン酸)、有機酸エステル(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキシル基、ジメチル基、ジエチル基、イソプロピル基、イソブチル基を有する有機酸エステル)、高級アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール)、多価アルコール(グリセリン、アラビット、ソルビタン)、エーテル(ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル)等を挙げることができる。
さらに、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、中央部に純Cuが存在し表層部に酸化銅が形成されている酸素含有銅粉末と銀含有粉末の合量に占める酸素含有銅粉末の割合(質量%)が5〜20wt%であることが変色抑制・強度特性・色調などの観点から好ましい。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末は、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が焼結体の密度・強度維持の観点(下限)および粘土状組成物の変色抑制の観点(上限)から0.7質量%以上80質量%以下の範囲とされており、また、酸素含有銅粉末全体に対する酸化銅中のCuOの割合が変色抑制の観点(下限)および密度・強度維持の観点(上限)から2質量%以上95質量%以下の範囲とされており、酸化銅(CuO、Cu2O)の合計は、変色抑制の観点、すなわち、純Cuの表面部が酸化銅によって覆われるという条件から酸素含有銅粉末全体に対して20質量%以上とされていることが好ましい。
前記構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、前記の課題を克服した銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を構成することが可能となり、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を確実に防止することが可能となる。
この構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、酸素含有銅粉末を有し、変色し難い銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を製造することが可能となる。
この構成の銀銅合金焼結体によれば、前述した構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を焼成したものであることから、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。すなわち、前述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を加熱焼成して得られた銀銅合金焼結体は、すぐれた機械的強度や伸び等を備えることになる。
前記構成の銀銅合金焼結体の製造方法によれば、前述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を成形した後、乾燥処理や加熱焼成処理を行うことにより、機械的強度や伸び等にすぐれた銀銅合金焼結体を製造することができる。
特に、酸素含有銅粉末として酸化銅(II)(CuO)を含む場合には、酸素の含有量が比較的多くなることから、焼結を促進することができる。
この構成の銀銅合金焼結体の製造方法によれば、活性炭による還元により、成形体の焼結を促進することができる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末によれば、前記構成及び作用により、この銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を用いた焼結体形成用の粘土状組成物を構成することで、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の変色を抑制することができる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物の製造方法によれば、前述の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を確実に製造することが可能となる。
本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いた銀銅合金焼結体によれば、純Ag粉末からなる銀粘土を焼成したものに比べて、機械的強度を向上させることができる。
また、本発明の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いた銀銅合金焼結体の製造方法によれば、前記構成の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等にすぐれた銀銅合金焼結体を製造することができる。また、焼成前後において体積収縮が大きく、密度が大きくなり、強度も大きくなるという本発明に特有の効果が得られる。
なお、本実施形態では、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を銀粘土と、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末を銀粘土用粉末と称して説明する。
本実施形態に係る銀粘土用粉末は、銀を含む銀含有粉末と、銅を含む酸素含有銅粉末を含むものである。
そして酸素含有銅粉末は粒子の中央部に純Cuが存在し、その純Cuの表層部には酸化銅(Cu2O、CuO)が形成されている。
このような銀粘土用粉末を用いて、後述する添加物を加えて混練して銀粘土を構成することにより、加熱焼成して得られた銀銅合金焼結体において、銀と銅が合金化することによって、機械的強度や伸び等が向上するとともに、純Cuの表層部が化学的に安定な酸化銅で覆われていることから銀粘土の変色を抑制できるといった効果が得られるものである。
そして、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの含有割合は0.7質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、また、0.7質量%以上50質量%以下の範囲であることが更に好ましく、また、0.7質量%以上20質量%以下であることがより一層好ましい。
また、酸素含有銅粉末全体に対して、CuOの割合は2質量%以上95質量%以下の範囲で含有し、酸化銅(Cu2O、CuO)の合計は、20質量%以上とされていることが好ましい。更に好ましくは、CuOの割合は40質量%以上85質量%以下の範囲で含有していることが望ましい。
ここで、Cuは、焼結中において銀銅合金焼結体のAgと合金化することにより強度向上効果を有する元素である。また、前述のスターリングシルバーとよばれる銀銅合金と同組成の銀銅合金焼結体を得るためには、銀含有粉末と酸素含有銅粉末との混合比率を質量比で9:1とする。こうして得られた銀粘土を焼成して得られる銀銅合金焼成体は、機械的強度が銀焼結体に比べ格段に優れており伸び特性にも優れている。また、前述したような銀粘土を用いて銀銅合金焼結体を製造した場合、銀粘土を成形して得られる成形体を焼成する過程で、成形体が大きく体積収縮するため、密度の高い焼結体が得られ、機械的強度が向上する。
すなわち、銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物中に含有される純Cu、Cu2O、CuO量が前記範囲となるように、銀を含む銀含有粉末の成分、酸素含有銅粉末の成分を考慮し、これら銀含有粉末と酸素含有銅粉末との混合比率を調整して、銀粘土を構成することが好ましい。
酸素含有銅粉末は、球状の純Cuを大気雰囲気下で後述するような所定温度、所定時間で熱処理することによって得ることが出来る。
以下、本実施形態に係る銀粘土用粉末に含有される、Ag粉および酸素含有銅粉末の粒径について説明する。
本実施形態においては、Ag粉および酸素含有銅酸化物の粒径については、特に限定されるものではないが、添加物としてのバインダー剤を加えて混練することで銀粘土とした場合の、成形性等の諸特性を考慮し、以下に示す範囲の粒径とすることが好適である。
Ag粉の平均粒径が25μmを超えると、銀銅合金焼結体の色調が劣化したり、機械的強度を向上させる効果が小さくなったりするおそれがある。また、Ag粉の平均粒径が25μmを超えると、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀銅合金焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、平均粒径の下限については特に定めないが、Ag粉の平均粒径を1μm以下とすることは工業生産的にコスト高となるおそれがあり、また、装置の限界等も考慮し、これを下限とすることが好ましい。
また、同様の観点から、Ag粉の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
酸素含有銅粉末の平均粒径が25μmを超えると、銀銅合金焼結体の機械的強度を向上させる効果が得られ難くなるおそれがある。また、酸素含有銅粉末の平均粒径が25μmを超えると、前記Ag粉の場合と同様、粉末の焼結性が低下することから、長時間にわたる焼成時間を要してしまうとともに、銀銅合金焼結体の加工性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
なお、前記Ag粉と同様、平均粒径の下限は特に定めないが、装置の限界や工業生産的なコストの観点から、酸素含有銅粉末の平均粒径は1μmを下限とすることが好ましい。
また、同様の観点から、酸素含有銅粉末の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
次に、本実施形態の銀粘土について説明する。
本実施形態に係る銀粘土は、前記構成の銀粘土用粉末と、バインダー(本実施形態では有機バインダー)と、水とを含む。
例えば、本実施形態に係る銀粘土は、前記構成の銀粘土用粉末を70質量%以上95質量%以下の範囲で含有し、さらに、有機バインダーと水とを含むバインダー剤を5質量%以上30質量%以下の範囲で含有するものである。ここで、バインダー剤には、有機バインダーおよび水の他に、必要に応じて界面活性剤や油脂が添加されていてもよい。
この銀粘土は、化学的に安定な酸素含有銅粉末と、Ag粉とを含有した粉末成分を含む銀粘土であることから、大気雰囲気下において変色が抑制されることになる。
前記界面活性剤は特に限定されるものではなく、通常の界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール等)を使用することができる。
本実施形態に係る銀粘土5の製造方法は、前記の銀粘土用粉末1を70質量%以上95質量%以下、有機バインダーと水とを含むバインダー剤2を5質量%以上30質量%以下として混練する方法である。
また、比較のために、純Cuを大気雰囲気中で300℃1時間→340℃3時間→500℃12時間の条件で熱処理したものを作成した。この場合、酸素含有銅粉末全体に対して質量にして、4.9%のCu2Oと95.1%のCuOが生成された(比較例1)。前述した実施例1〜5および比較例1の粉末の平均粒径は、いずれもマイクロトラック法で計測して5μmであった。
次に、粒径が銀銅合金焼結体の機械的特性などに与える影響を調べるため、比較のために粒径0.5μmの純Cuを300℃1時間の条件で熱処理したものを作成した。この場合、酸素含有銅粉末全体に対して質量にして1.7%のCu2Oと98.3%のCuOが生成される(比較例2)。また、粒径100μmの純Cuを300℃1時間→340℃3時間→500℃3時間の条件で熱処理したものを作成した。この場合、酸素含有銅粉末全体に対して質量にして20.8%のCuが残存し、39.5%のCu2Oと39.7%のCuOが生成される(比較例3)。さらに、粒径5μmの純Cuを300℃1時間→340℃3時間→500℃6時間の条件で熱処理したものを製造した。この場合、酸素含有銅粉末全体に対して質量にして、16.3%のCu2Oと83.7%のCuOが生成される(比較例4)。
そして、混合装置50内で、前記各材料粉末を混合することにより、銀粘土用粉末1が得られる。
ここで、バインダー剤2は、有機バインダーを11質量%以上17質量%以下、油脂を5質量%以下、界面活性剤を2質量%以下、残部を水とした配合で混合したものとされている。
そして、混合装置50内において、銀粘土用粉末1とバインダー剤2と混合して混練することにより、銀粘土5が得られる。
本実施形態に係る銀銅合金焼結体は、前記構成の銀粘土5を任意の形状に造形、成形した後、後述の条件で焼成することによって得られるものである。
この銀銅合金焼結体は、すぐれた機械的強度を有しているので、例えば、大きな外力が加えられた場合であっても、割れや破断が生じたりするのを抑制することが可能となる。また、本実施形態に係る銀銅合金焼結体は、すぐれた機械的強度とともに高い伸びを有しているので、例えば、焼成後の銀銅合金焼結体に対して曲げを伴う追加加工を施した場合でも、亀裂や破断等が生じるのを抑制することが可能となる。
本実施形態に係る銀銅合金焼結体10の製造方法は、前記構成の銀粘土5を任意の形状に成形することで成形体51とし、次いで、この成形体51を、例えば、室温〜150℃の温度で、30分〜24時間で乾燥処理し、次いで、必要に応じて、大気雰囲気において480〜600℃の範囲の仮焼成を行った後、成形体51を、還元雰囲気において、720〜820℃の温度で、15〜45分の時間で焼成を行うことによって銀銅合金焼結体10とする方法である。ここで、前記焼成を行う方法としては、例えば、乾燥処理した成形体51を活性炭中に埋め込んだ状態とした後、720〜820℃の温度で、15〜45分の時間で、還元雰囲気において焼成を行う方法を採用することができる。
次いで、図2(b)に示すように、電気炉80に成形体51を投入して乾燥処理を行うことにより、水分等を除去する。
この際の乾燥温度としては、効果的に乾燥処理を行う観点から、例えば、室温あるいは80℃程度の温度から150℃までの範囲の温度とすることが好ましい。また、同様の観点から、乾燥処理を行う時間は、例えば、30〜720分、より好ましくは30〜90分の範囲の時間とし、一例として、乾燥温度:100℃程度で、乾燥時間:60分程度とした条件で乾燥処理を行うことができる。
ここで、「酸化銅の酸素を利用する」とは、CuOまたはCu2Oが焼成中に熱分解することにより酸素を放出し、この酸素が有機バインダーの燃焼に寄与することを示す。
また、本実施形態においては、図示例のような装置を用いることにより、成形体51に対して焼成を施すことで銀銅合金焼結体10を製造する方法を採用することができる。
そして、内部において成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、前述したように、720〜820℃の範囲の温度で、15〜45分の時間で加熱することで、焼成を行う。
また、本実施形態においては、乾燥処理や焼成の各工程において、電気炉を用いる例を説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガス加熱装置等、安定した加熱条件管理が可能なものであれば、何ら制限無く採用することができる。
また、本実施形態である銀粘土5によれば、前記構成の銀粘土用粉末1を用いて混練して得られるものであることから、前記同様、成形後に加熱焼成して得られる銀銅合金焼結体10の機械的強度や伸び等を向上させることができる。さらに、Cuを酸化銅(CuO、Cu2O)によって表面を覆った状態で銀粘土5中に含んでいるので、銀粘土5の変色を抑制することができる。
さらに、本実施形態である銀銅合金焼結体10の製造方法によれば、前記構成の銀粘土5を用いて成形した後、規定条件で乾燥処理や焼成を行うことにより、機械的強度や伸び等にすぐれた銀銅合金焼結体10を製造することが可能となる。
例えば、Ag粉と酸素含有銅粉末とからなる銀粘土用粉末として説明したが、これに限定されることはなく、Ag−Cu合金粉末等と、酸素含有銅粉末とを含む銀粘土用粉末としてもよい。あるいは、Ag粉末と酸素含有銅粉末の他にCu粉末やAg−Cu合金粉末を加えたものであってもよい。この場合、Ag粉末に加えるCu粉末、Ag−Cu合金粉末に含まれる金属Cuの含有量は、銀粘土用粉末全体に対して2質量%以下とすることが好ましい。これにより、銀粘土の変色を確実に抑制することができる。
そして、銀粘土用粉末を85質量%、前述のバインダー剤を15質量%として混練し、銀粘土とした。
次いで、図2(b)に示すように、前記ワイヤー状成形体および角柱状成形体の各成形体51を発明例毎に同時に電気炉(Orton:evenheat kiln inc.)80に投入し、乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を60分とした条件で乾燥処理を行うことにより、前記各成形体51に含まれる水分等を除去した。
なお、図2においては、成形体51として1個の角柱状成形体のみを図示しており、ワイヤー状成形体の図示は省略している。
具体的には、図2(c)に示すように、内部に活性炭61が充填された陶器製の焼成容器60を用意し、各成形体51を活性炭61中に埋め込んだ。この際、活性炭61の表面から各成形体51までの距離を約10mmとした。
そして、各成形体51が活性炭61中に埋め込まれた状態の焼成容器60を電気炉80に投入し、全てのサンプル共通で加熱温度:760℃、加熱時間:30分として本焼成を行うことにより、ワイヤー状および角柱状の銀銅合金焼結体10を作製した。
作製した銀粘土及び銀銅合金焼結体について、以下のような評価試験を行った。
まず、銀粘土の変色については、所定量(10g)の銀粘土を採取し、この銀粘土を透明なポリエチレンフィルムで包んだ板材で挟み、厚さ3mmとなるように押し潰した。そして、室温、大気雰囲気下で保管して変色の有無を目視によって観察して評価した。
表1に示すように、本発明例1〜5の銀粘土は、室温、大気雰囲気下で保管した場合であっても、純銅を銀粘土中に混合した従来例とは異なり、銀粘土の通常の保管期間の間、変色は認められなかった。
また、機械的強度の指標となる密度も、純Agを用いた銀焼結体(8.6g/cm3)と同等またはそれ以上の値を示すことが明らかとなった。
さらに、本発明の実施例のうち、本焼成後の密度が最も低かった実施例5について焼結体中の酸素濃度を高周波炉加熱−赤外線吸収法で測定した。その結果、860ppmであり、酸化銅が十分に還元していることが裏付けられた。実施例5よりも密度の高い実施例1〜5に関しては、酸素濃度の計測は行っていないが、実施例5以上に酸化銅が還元していることは明らかである。
すなわち、本発明の銀銅合金焼結体用の粘土状組成物は、焼成前の保管時に高い変色抑制効果を奏するとともに、焼成時に酸化銅が完全に還元することにより、高密度で機械的強度にすぐれた焼結体が得られるという効果を奏するものである。
1A Ag粉末
1B 酸素含有銅粉末
5 銀粘土(銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物)
51 成形体
10 銀銅合金焼結体
Claims (12)
- 銀含有粉末と酸素含有銅粉末とを含有する粉末成分と、バインダーと、水とを含む銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物であって、前記酸素含有銅粉末は粒子の中央部に純Cuが存在し該純Cuの表層部に酸化銅が形成されているとともに、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上80質量%以下の範囲とされており、また、酸化銅の合計は、酸素含有銅粉末全体に対して20質量%以上とされていることを特徴とする銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上50質量%以下の範囲とされており、また、酸素含有銅粉末全体に対する酸化銅中のCuOの割合が2質量%以上95質量%以下の範囲とされていることを特徴とする請求項1に記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上20質量%以下の範囲とされていることを特徴とする請求項1に記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記CuOを酸素含有銅粉末全体に対して2質量%以上85質量%以下の範囲で含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記CuOを酸素含有銅粉末全体に対して40質量%以上85質量%以下の範囲で含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 前記酸素含有銅粉末の平均粒径が1μm以上25μm以下とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物に用いられる粘土状組成物用粉末であって、
前記粘土状組成物用粉末は、銀含有粉末と酸素含有銅粉末とを含み、前記酸素含有銅粉末は、粒子の中央部に純Cuが存在し該純Cuの表層部に酸化銅が形成されているとともに、酸素含有銅粉末全体に対する純Cuの割合が0.7質量%以上80質量%以下の範囲とされており、また、酸素含有銅粉末全体に対する酸化銅中のCuOの割合が2質量%以上95質量%以下の範囲とされており、酸化銅の合計は、酸素含有銅粉末全体に対して20質量%以上とされていることを特徴とする銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末。 - 請求項7の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物用粉末と、バインダー及び水を混合したバインダー剤とを混合して混練することを特徴とする銀銅合金焼結体用の粘土状組成物の製造方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の銀銅合金焼結体形成用の粘土状組成物を任意の形状に成形体とし該成形体を乾燥させた後に、還元雰囲気において、焼成を行うことにより、銀銅合金焼結体とすることを特徴とする銀銅合金焼結体の製造方法。
- 前記成形体を乾燥させた後に、大気雰囲気において480〜600℃の範囲の焼成温度で15分以上45分以下の時間で仮焼成を行った後、還元雰囲気において700〜820℃の範囲の焼成温度で、15分以上45分以下の時間で本焼成を行うことにより、銀銅合金焼結体とすることを特徴とする請求項9に記載の銀銅合金焼結体の製造方法。
- 前記成形体を活性炭に埋め込んだ状態で本焼成を行うことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の銀銅合金焼結体の製造方法。
- 請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の銀銅合金焼結体の製造方法を用いて製造した銀銅合金焼結体。
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