JP2012084300A - 光電変換素子および太陽電池 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、光電変換素子および太陽電池に関するものである。
石油や原子力に依らず、無限でかつ有害物質を発生しない太陽光の有効な利用は人類全体が精力的に取り組まなければならい課題である。例えば太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子はこの代表的な例である。
太陽光利用を光電変換素子で利用する試みは、現在、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンおよびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。しかしながら、これらの太陽電池に主に用いられているシリコンは、高度な精製過程が必要な高純度品が求められ、かつ、多層pn接合による構造の為に製造工程は複雑でプロセス数も多く、高いコストで、太陽光等を利用した光電変換素子の普及にはより簡易的で製造工程の簡素な素子の開発が待たれている。
無機材料を用いた光電変換素子の改良が進められている一方、より簡素な素子として有機材料を用いた光電変換素子の研究も地道ではあるが進められている。例えば、1986年にはTangらによってn型の有機色素であるペリレンテトラカルボン酸誘導体とp型の有機色素である銅フタロシアニンを接合させた、pn接合型の有機光電変換素子が報告されている(非特許文献1参照)。
有機光電変換素子において、弱点であると考えられている励起子拡散長の短さと空間電荷層の薄さを改良する為に、単に有機薄膜を積層するpn接合部の面積を大きく増大させ、電荷分離に関与する有機色素数を充分に確保しようという試みがその結果を出しつつある。一つは例えばn型の電子伝導性の有機材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合させることによりpn接合部分を飛躍的に増大させて、膜中全体で電荷分離を行う手法である。Heergerらは1995年に共役高分子をp型の導電性ポリマーとし、電子伝導材料としてフラーレンを混合させた光電変換素子を提案した。(非特許文献2参照)これらの光電変換素子は次第にその特性を向上させてはいるが、高い変換効率のまま安定して挙動するところまでには至っていない。
しかし、1991年にGratzelは、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する光電変換素子の作製に成功した。(非特許文献3参照)この光電変換素子では正孔移動剤はヨウ素が用いられており、従って電解液が必要である。この光電変換素子は酸化チタンの安定と相まって、優れた再現性を有しており、研究開発の裾野も大きく広がり、この光電変換素子も色素増感型太陽電池と呼ばれて、大きな期待と注目を浴びている。
太陽光を有効に利用しようとする当初の目的には、受光部の大面積化や屋外用モジュールの作製が不可欠であるが、色素増感型太陽電池は先述のとおり電解液を用いて動作するために、電解液やヨウ素の保持や流出・散逸を防ぐ別の機構が必要となる。電解液を有する他の電気化学素子の代表例としては、鉛蓄電池やリチウム電池などが代表的ではあるが、コンパクトにモジュール化されたこれらの電気化学素子でさえ100%回収され、リサイクルされている訳ではなく、散逸した化学種が新たに環境に蓄積された場合に、二次的な問題を誘起するのは自明である。
このような電解液の問題を回避し、さらに色素増感型太陽電池の良さを引き継いだ、全固体色素増感型太陽電池の開発も進んでいる。この分野ではアモルファス性有機正孔移動剤を用いたもの(非特許文献4参照)や正孔移動剤にヨウ化銅を用いたもの(非特許文献5)などが知られているが、未だ充分な光電変換効率や安定的に動作するレベルに至っていない。更には、全固体型色素増感太陽電池の課題である電極−正孔輸送材層間の電荷再結合について、電極−正孔輸送材層間にバリヤ層を設けた全固体型色素増感太陽電池(特許文献1参照)等も知られているが、電荷再結合のもう一つのルートである酸化チタン−正孔輸送材層間の電荷再結合を抑制するには至らず、効率は低いものであった。
C.W.Tang:Applied Physics Letters,48,183(1986)
G.Yu,J.Gao,J.C.Humelen,F.Wudland A.J.Heerger:Science,270,1789(1996)
B.O’Regan and M.Gratzel:Natuer,353,737(1991)
U.Bach,D.Lupo,P.Comte,J.E.Moser,F.Weissortel,J.Salbeck,H.Spreitzer and M.Gratzel:Nature,395,584(1989)
G.R.A.Kumara,S.Kaneko,M.Okuya,A.Konno and K.Tennakone:Key Engineering Materials,119,228(2002)
本発明の目的は、上記課題に鑑みなされたものであり、安価に製造ができるとともに、酸化チタン−正孔輸送材層間の電荷再結合を有効に抑制出来、光電変換効率に優れる固体型色素増感型光電変換素子及び太陽電池を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
1.
少なくとも色素を半導体に担持してなる半導体層と、正孔輸送化合物を含有してなる正孔輸送層とが設けられている全固体型色素増感型光電変換素子において、前記色素が、下記一般式(1)で表され、正孔輸送化合物が3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体であることを特徴とする光電変換素子。
1.
少なくとも色素を半導体に担持してなる半導体層と、正孔輸送化合物を含有してなる正孔輸送層とが設けられている全固体型色素増感型光電変換素子において、前記色素が、下記一般式(1)で表され、正孔輸送化合物が3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体であることを特徴とする光電変換素子。
(式中、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R5はXで置換した、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
2.
前記一般式(1)において、R1またはR2の少なくとも一つは、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする前記1に記載の光電変換素子。
2.
前記一般式(1)において、R1またはR2の少なくとも一つは、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする前記1に記載の光電変換素子。
(式中、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R5はXで置換した、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
3.
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1または前記2に記載の光電変換素子。
3.
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1または前記2に記載の光電変換素子。
(式中、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Yは硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を表し、Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
4.
前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記3に記載の光電変換素子。
4.
前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記3に記載の光電変換素子。
(式中、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
5.
前記一般式(4)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする前記4に記載の光電変換素子。
5.
前記一般式(4)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする前記4に記載の光電変換素子。
(式中、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
6.
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする前記5に記載の光電変換素子。
6.
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする前記5に記載の光電変換素子。
(式中、R8、R9はハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アリール基または複素環基を表し、n8、n9は1〜5の整数を表す。n8、n9≧2の場合は、R8、R9は同じでも異なってもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
7.
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする前記5に記載の光電変換素子。
7.
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする前記5に記載の光電変換素子。
(式中、R9、R10はハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アリール基または複素環基を表し、n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜8の整数を表す。n9、n10≧2の場合、R9、R10は同じでも異なってもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
8.
前記半導体層を形成する半導体が酸化チタンであることを特徴とする前記1から前記7のいずれかに記載の光電変換素子。
9.
前記1から前記8のいずれかに記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
8.
前記半導体層を形成する半導体が酸化チタンであることを特徴とする前記1から前記7のいずれかに記載の光電変換素子。
9.
前記1から前記8のいずれかに記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
本発明により、電荷再結合が少ない光電変換効率に優れた光電変換素子及び太陽電池を提供することができる。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、全固体型色素増感太陽電池において、電荷再結合の抑制による光電変換効率の更なる改善が求められている。本発明者らは、イミダゾロン骨格を含有したアミン構造を有する化合物を検討したところ、これを用いた光電変換素子は光電変換効率が高いことが分かった。この新しい色素は、色素分子中の電子アクセプター部分(イミダゾロン骨格部分)の電気陰性度が高いため、色素分子の酸性基(X)の求核性が強まり、酸化チタン表面の金属分子に結合または配位しやすくなると考えられる。また、色素分子は分子間相互作用により凝集が発達して吸収波長が長波シフトすると共に、酸化チタン表面を緻密に被覆することができ、酸化チタン−正孔輸送材層間の電荷再結合を抑制できるため、光電変換効率が向上したと推定している。更に、本発明においては増感色素としてイミダゾロン骨格を有するアミン構造を含有する化合物を用い、正孔輸送材として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体を用いることによって、酸化チタン−正孔輸送材層間の電荷再結合を抑制し光電変換効率を大幅に向上させることが出来ることを見出したものである。
本願発明の光電変換素子は、少なくとも色素を半導体に担持してなる半導体層と、正孔輸送化合物を含有してなる正孔輸送層とが設けられている全固体型色素増感型光電変換素子において、前記色素が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。また、前記正孔輸送性化合物が3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体であることを特徴とする。
(光電変換素子)
以下、本発明の光電変換素子について、図1により説明する。
以下、本発明の光電変換素子について、図1により説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、光電変換層6、正孔輸送層7および第二電極8、隔壁9等より構成されている。光電変換層6は、半導体5および色素4を含有する。第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリヤ層3を有することが好ましい。太陽光は、図下方の矢印の方向から入る。
本発明の光電変換素子の製造例を以下に示す。
第一電極2を付けた基板1上に、バリヤ層3を付着して形成した後、バリヤ層3上に、半導体からなる半導体層を形成し、その半導体表面に色素を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に、正孔輸送層7を形成する。
正孔輸送層7は、色素を担持した半導体からなる光電変換層に侵入し、且つ、その上に存在し、該正孔輸送層の上に第二電極8が付着している。第一電極2および第二電極8に端子を付けて電流を取り出すことができる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、光吸収して電子を半導体に注入した後の色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層である。
正孔輸送層は、光吸収して電子を半導体に注入した後の色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層である。
本発明の光電変換素子を構成する正孔輸送層は、本発明の正孔輸送化合物である、3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体を含有する。重合体の繰り返し単位に対応する3,4−エチレンジオキチオフェンは重合の前に、二量体或いは三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物)を用いることが好ましい。尚、二量体等の多量体を用いることにより、モノマーを用いる場合に比し、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。
(本願発明に係わる重合体の重合法)
重合方法としては、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等があるが、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
重合方法としては、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等があるが、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。
3,4−エチレンジオキシチオフェン或いはその二量体を、をアセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解し、これに支持電解質として過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3SO2)2N]などの塩類を添加して、電解重合用液を作製する。
溶媒としては、支持電解質および前記モノマー或いはその二量体を溶解できるものであれば特に限定されない。支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されない。溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。次いで、第一電極2、バリヤ層3および光電変換層6を形成した基板1をこの電解重合用液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合用液中の前記モノマー或いはその二量体の濃度は、0.1〜1000mmol/l程度が好適であり、支持電解質濃度は、0.1〜2mol/l程度が好適である。また、印加電流密度としては、0.0mA・cm−2〜1000mA・cm−2の範囲であることが望ましく、特に1mA・cm−2〜500mA・cm−2の範囲であることがより望ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、3,4−エチレンジオキシチオフェン或いはその二量体等を以下のような重合触媒を用いて重合する。即ち、塩化鉄(III)(iron(III)chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
化学重合において用いられる重合速度調整剤としては、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤であり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はないが、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられ、また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、正孔輸送層を形成することが好ましい態様である。
その場合、重合体を重合して合成するために、3,4−エチレンジオキシチオフェン或いはその二量体等を、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤を含有する正孔輸送層形成用溶液が用いられる。正孔輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる3,4−エチレンジオキシチオフェン或いはその二量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度は、1〜50%の範囲である。
前記正孔輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電変換層を前記正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま重合反応を行う。
重合反応の条件は、3,4−エチレンジオキシチオフェン或いはその二量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
正孔輸送層を、塗布により形成する場合は、前記正孔輸送層形成用溶液を用いるが、この塗布液の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
正孔輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)3SbCl6、Li[(CF3SO2)2N]等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
塗布する方法としては、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。
正孔輸送層中の3,4−エチレンジオキシチオフェン繰り返し単位を有する重合体の含有量は、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90から100質量%であることが好ましい。
本願発明の正孔輸送層の伝導度を高めるために、正孔ドープされている必要があり、3,4−エチレンジオキシチオフェン繰り返し単位あたりの正孔ドープ量が0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、3,4−エチレンジオキシチオフェン繰り返し単位を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープを行うことができる。
電界重合の場合には光を照射して重合することが好ましい。酸化チタン表面に緻密に重合体を形成できるためである。
また、光電変換層の色素の酸化体を還元するためには、本願発明に係わる重合体が色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要であり、そのため使用する色素によって本願発明に係わる重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
(基板)
基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
光透過率とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。
可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
(第一電極)
第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。
第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。
第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上のものが好まし用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。
第一電極を形成する材料の例としては、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは金属酸化物を用いることが好ましく、例えば、SnO2、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO3、Cd2SnO4、CdSnO4)、In2O3、CdIn2O4等が挙げられる。
金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。
金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。
中でも好ましいのは、SnをドープしたIn2O3(ITO)、SbをドープしたSnO2、FをドープしたSnO2(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
第一電極を基板上に有するものを、ここでは導電性支持体と呼ぶ。
導電性支持体の膜厚としては、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。
また、導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm2以下である。
導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(バリヤ層)
本発明の光電変換素子は、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第一電極と半導体層との間に位置するバリヤ層を有することが好ましい。
本発明の光電変換素子は、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第一電極と半導体層との間に位置するバリヤ層を有することが好ましい。
バリヤ層、光電変換層は、下述するように多孔質であることが好ましい態様であるが、この場合、バリヤ層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。
これにより、バリヤ層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。より具体的には、バリヤ層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
バリヤ層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
このバリヤ層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si3N4、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。
特に正孔輸送層がp型半導体の場合、バリヤ層に金属を使用する場合には正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものが用いられる。またバリヤ層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が多孔質半導体層4よりも低いところにあるものが好ましい。
このとき、酸化物を選択することで多孔質半導体層(光電変換層)からバリヤ層への電子移動効率を向上させることもできる。
この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
(光電変換層)
光電変換層は、半導体および色素を含有し、当該色素を担持した当該半導体を含有する半導体層からなる。
光電変換層は、半導体および色素を含有し、当該色素を担持した当該半導体を含有する半導体層からなる。
(半導体)
半導体層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
半導体層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbSであり、好ましく用いられるのは、TiO2またはNb2O5であるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO2(酸化チタン)である。
半導体層に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。
例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti3N4)を混合して使用してもよい。
また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
上記の有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明に係る半導体を液体有機塩基または有機塩基溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
(半導体層の作製)
半導体層の作製方法について説明する。
半導体層の作製方法について説明する。
半導体層の半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の好ましい態様としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体微粒子層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするため前記半導体微粒子層の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
半導体層が、多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分は、この空隙にも存在することが好ましい態様である。
ここで、半導体層の空隙率は1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500〜30000nmである。
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、200℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。
また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(色素)
本発明に係る色素は、下記一般式(1)で表される化合物で、下述するような半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものである。
本発明に係る色素は、下記一般式(1)で表される化合物で、下述するような半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものである。
《一般式(1)で表される化合物》
以下に、下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
以下に、下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)において、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R5はXで置換した、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
Arで表されるアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
R1、R2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等が挙げられ、アルキニル基としては、プロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
R3で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロポエンチルアミノ基等が挙げられる。
R3、R4、R5で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基としては、R1、R2で挙げた基と同義である。
R5で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アルキルチオ基としては、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオイソプロピル基、チオブチル基、チオ−tert−ブチル基、チオヘキシル基等が挙げられ、アルキルセレノ基としては、セレノメチル基、セレノエチル基、セレノプロピル基、セレノブチル基、セレノヘキシル基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、メチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロポエンチルアミノ基等が挙げられる。上記アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基のアルキル上にXが置換する。
Xは酸性基を表し、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホニル基、スルホニル基、及び、それらの塩等が挙げられ、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。
置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、水酸基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基等)が挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
《一般式(2)で表される構造単位》
前記一般式(1)において、R1または、R2の少なくとも一つは、下記一般式(2)で表わされる化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
前記一般式(1)において、R1または、R2の少なくとも一つは、下記一般式(2)で表わされる化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
式中、Ar、R3、R4、R5、Xは、一般式(1)におけるAr、R3、R4、R5、Xと同義であり、mは1以上の整数を表す。
《一般式(3)で表される化合物》
前記一般式(1)で表される化合物の中で、下記一般式(3)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の中で、下記一般式(3)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(3)において、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Yは硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を表し、Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
R6、R7で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基または複素環基としては、一般式(1)におけるアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基または複素環基と同義である。
一般式(3)において、Ar、R1、R2、R3、R4、Xは、一般式(1)におけるAr、R1、R2、R3、R4、Xと同義である。
《一般式(4)で表される化合物》
前記一般式(3)で表される化合物のYが硫黄原子、すなわち下記一般式(4)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
前記一般式(3)で表される化合物のYが硫黄原子、すなわち下記一般式(4)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(4)において、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3、R4は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
一般式(4)において、Ar、R1、R2、R3、R4、R6、R7、Xは、一般式(3)におけるAr、R1、R2、R3、R4、R6、R7、Xと同義である。
《一般式(5)で表される化合物》
前記一般式(4)で表される化合物のR4が水素原子、すなわち下記一般式(5)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
前記一般式(4)で表される化合物のR4が水素原子、すなわち下記一般式(5)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(5)において、Arは置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1、R2は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
一般式(5)において、Ar、R1、R2、R3、R6、R7、Xは、一般式(4)におけるAr、R1、R2、R3、R6、R7、Xと同義である。
《一般式(6)で表される化合物》
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(6)において、R8、R9はハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アリール基または複素環基を表し、n8、n9は1〜5の整数を表す。n8、n9≧2の場合、R8、R9は同じでも異なってもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
R8、R9で表される、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基または複素環基としては、一般式(5)におけるハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基または複素環基と同義である。
《一般式(7)で表される化合物》
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることが好ましい。
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(7)において、R9、R10はハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アリール基または複素環基を表し、n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜8の整数を表す。n9、n10≧2の場合、R9、R10は同じでも異なってもよい。また、R3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。R6、R7は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R6、R7は同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
R9、R10で表される、ハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基または複素環基としては、一般式(6)におけるハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基または複素環基と同義である。R9、R10で表される、アルキルチオ基、アルキルセレノ基としては、一般式(1)におけるアルキルチオ基、アルキルセレノ基と同義である。
一般式(1)〜(7)で表される本発明の化合物の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。後述の一覧において、部分構造の波線がついている部分は、化学式で結合している部分を表わす。
一般式(1)〜(7)で表される化合物(以下、本発明の色素ともいう)は、一般的な合成法により合成することができるが、中でも、特開平7−5709号公報、同7−5706号公報等に記載の方法を用いて合成することができる。
《合成例》
合成例1(色素1の合成)
アルデヒド(下記構造式の化合物A)を、2.5当量のdiethyl benzhydrylphosphonate、3当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し下記構造式の化合物Bを得た。
合成例1(色素1の合成)
アルデヒド(下記構造式の化合物A)を、2.5当量のdiethyl benzhydrylphosphonate、3当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し下記構造式の化合物Bを得た。
化合物Bのトルエン溶液に、1.5当量のオキシ塩化リン、3当量のDMFを加え、60℃で1時間攪拌した。反応液に冷水を加え、室温にて1時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し下記構造式の化合物Cを得た。
化合物C、チオヒダントイン1.2当量、酢酸アンモニウム3当量を加えた酢酸溶液を120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し下記構造式の化合物Dを得た。
化合物Dのエタノール溶液に、1.05当量のブロモ酢酸、3当量の水酸化カリウムを加え、70℃で1時間攪拌した。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後、水、酢酸エチルを加え分液ロート酢酸にて有機層を除去した。水槽に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し、下記構造式で表される例示化合物の色素1を得た。
色素1は、核磁気共鳴スペクトル及びマススペクトルで構造を確認した。
他の化合物も同様にして合成することができる。
(半導体の増感処理)
半導体層1m2当たりの本発明の色素の総担持量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
半導体層1m2当たりの本発明の色素の総担持量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
増感処理を行う場合、色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体に色素を担持させるには、適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。
各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。
また、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理は、前述のように色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。
その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
色素を溶解するのに用いる溶媒は、色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。
しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。
色素の溶解において、好ましく用いられる溶媒はアセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、複数の溶媒を混合してもよい。特に好ましくはアセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。
半導体を焼成した基板を色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。
また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃条件下では3〜48時間が好ましく、さらに好ましくは4〜24時間である。
この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。
ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
(第二電極)
第二電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。
第二電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。
正孔輸送層との接触性が良いことが好ましい。また正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料として金、銀、銅、アルミ、白金等の金属薄膜やカーボンブラック、導電性高分子等の有機導電体を用いることも出来る。
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、上記本発明の光電変換素子を有する。
本発明の太陽電池は、上記本発明の光電変換素子を有する。
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。
即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、正孔輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。
励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の正孔輸送性材料に供給される。
一方、半導体に電子を移動させた色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体Aを経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体Aは酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。
このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例
〔光電変換素子1の作製(本発明)〕
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板を第一電極とした。この基板上にテトラキスイソポロポキシチタン1.2mlおよびアセチルアセトン0.8mlをエタノール18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリヤ層を形成した。
〔光電変換素子1の作製(本発明)〕
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板を第一電極とした。この基板上にテトラキスイソポロポキシチタン1.2mlおよびアセチルアセトン0.8mlをエタノール18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリヤ層を形成した。
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロース分散)を、上記バリヤ層を形成したFTOガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積25mm2)により塗布した。200℃で10分間および500℃で15分間焼成を行い、厚さ3.5μmの酸化チタン薄膜を得た。色素1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、光電変換層を形成し、半導体電極を得た。
前記半導体電極を、3,4−エチレンジオキシチオフェンの二量体を1×10−3(mol/l)の割合で含有し、Li[(CF3SO2)2N]を0.1(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。作用極を前記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag+(AgNO3 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm2、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、正孔輸送層を前記半導体電極表面に形成した。得られた半導体電極/正孔輸送層をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
なお、ここで得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
その後、Li[(CF3SO2)2N]を15×10−3(mol/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。
その後、半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第二電極を作製し、光電変換素子1を得た。
〔光電変換素子2〜14の作製(本発明)〕
光電変換素子1の作製において、色素として表1に記載の色素を用いたこと以外は同様にして、光電変換素子2〜14を作製した。
光電変換素子1の作製において、色素として表1に記載の色素を用いたこと以外は同様にして、光電変換素子2〜14を作製した。
〔光電変換素子15の作製(比較例)〕
光電変換素子1の作製において、色素として下記構造式の色素801を用いたこと以外は同様にして、光電変換素子15を作製した。
光電変換素子1の作製において、色素として下記構造式の色素801を用いたこと以外は同様にして、光電変換素子15を作製した。
〔光電変換素子の評価〕
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW・cm−2の擬似太陽光を照射することにより行った。
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW・cm−2の擬似太陽光を照射することにより行った。
即ち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、光電変換素子の変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P・・・(A)
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
(光劣化試験後の光電変換効率の測定)
開回路状態で強度100mW・cm−2のキセノンランプ光を3時間照射した後、光電変換効率(η(%))を求め、初期光電変換効率に対する比(%)を算出した。
開回路状態で強度100mW・cm−2のキセノンランプ光を3時間照射した後、光電変換効率(η(%))を求め、初期光電変換効率に対する比(%)を算出した。
表1に各光電変換素子の特性評価結果を示す。
表1から、本願発明の一般式(1)で表わされる色素を用いた本発明の光電変換素子1〜14は、光電変換効率が高く、その安定性にも優れている。一方、比較例の光電変換素子15は、光電変換効率が低く、その安定性も劣っている。
1 基板
2 第一電極
3 バリヤ層
4 色素
5 半導体
6 光電変換層
7 正孔輸送層
8 第二電極
9 隔壁
10 光電変換素子
2 第一電極
3 バリヤ層
4 色素
5 半導体
6 光電変換層
7 正孔輸送層
8 第二電極
9 隔壁
10 光電変換素子
Claims (9)
- 少なくとも色素を半導体に担持してなる半導体層と、正孔輸送化合物を含有してなる正孔輸送層とが設けられている全固体型色素増感型光電変換素子において、前記色素が、下記一般式(1)で表され、正孔輸送化合物が3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応して得られる重合体であることを特徴とする光電変換素子。
- 前記一般式(1)において、R1またはR2の少なくとも一つは、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換素子。
- 前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
- 前記一般式(4)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
- 前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子。
- 前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子。
- 前記半導体層を形成する半導体が酸化チタンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
- 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
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