JP5712873B2 - 光電変換素子およびそれを含む太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子およびそれを含む太陽電池に関する。
近年、環境問題などから、エネルギー源として、太陽光エネルギーが注目されており、太陽光エネルギーの光、熱を活用して、利用し易いエネルギー形態である電気エネルギーに変換する方法が実用化されている。中でも、太陽光を電気エネルギーに変換する方法が代表的なものであり、この方法には、光電変換素子が用いられる。光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウムおよびセレン化インジウム銅等の無機系の材料を用いた光電変換素子が広く用いられ、いわゆる太陽電池に広く利用されている。これらの無機系の材料を用いた光電変換素子を用いた太陽電池は、材料として用いるシリコンなどが高度な精製過程を経た高純度品である必要があり、多層pn接合構造を有するため、製造工程が複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いなどの問題点があった。
一方、より簡素な素子として有機材料を用いた光電変換素子の研究も進められている。例えば、非特許文献1に記載のような、n型の有機色素であるペリレンテトラカルボン酸誘導体とp型の有機色素である銅フタロシアニンを接合させた、pn接合型の有機光電変換素子が報告されている。有機光電変換素子において、弱点であると考えられている励起子拡散長の短さと空間電荷層の薄さを改良するために、単に有機薄膜を積層するpn接合部の面積を大きく増大させ、電荷分離に関与する有機色素数を充分に確保しようという試みがその結果を出しつつある。
また、例えば、非特許文献2に記載のような、n型の電子伝導性の有機材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合させることによりpn接合部分を飛躍的に増大させて、膜中全体で電荷分離を行う手法がある。Heegerらは、1995年に、p型の導電性ポリマーとしての共役高分子と、電子伝導材料としてのフラーレンとを混合させた光電変換素子を提案している。
これらの光電変換素子は次第にその特性を向上させてはいるが、高い変換効率のまま安定して挙動するまでには至っていない。
しかし、1991年にGratzelは、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する光電変換素子の作製に成功した(例えば、非特許文献3参照)。
この光電変換素子では、多孔質酸化チタン表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子注入され色素カチオンとなり、対極から正孔輸送層を通じて色素が電子を受け取るというサイクルを繰り返す。正孔輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この光電変換素子は酸化チタンの安定と相まって、優れた再現性を有しており、研究開発の裾野も大きく広がり、この光電変換素子も色素増感型太陽電池と呼ばれて、大きな期待と注目を浴びている。この方式は、酸化チタン等の安価な金属化合物半導体を高純度まで精製する必要がなく、半導体としては安価なものを使用することができ、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できるという利点を有する。しかし、色素増感型太陽電池は先述のとおり電解液を用いて動作するために、電解液やヨウ素の保持や流出・散逸を防ぐ別の機構が必要となるなどの問題点を有していた。
電解液を有する他の電気化学素子の代表例としては、鉛蓄電池やリチウム電池などが代表的ではあるが、コンパクトにモジュール化されたこれらの電気化学素子でさえ100%回収され、リサイクルされている訳ではなく、散逸した化学種が新たに環境に蓄積された場合に、二次的な問題を誘起するのは自明である。
このような電解液の問題を回避し、さらに色素増感型太陽電池の良さを引き継いだ、全固体色素増感型太陽電池の開発も進んでいる。
この分野では、非特許文献4に記載の、アモルファス性有機正孔移動剤を用いたものや、非特許文献5に記載の正孔移動剤にヨウ化銅を用いたものなどが知られているが、正孔移動剤の伝導度が低いため未だ充分な光電変換効率を与えるには至っていない。
さらに、伝導度の比較的高い正孔移動剤としてはポリチオフェン系材料が代表例としてあげられ、PEDOTを正孔移動剤として用いた全固体色素増感型太陽電池が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献6参照)。また、1,3−ジチエニルイソチアナフテン由来の繰り返し単位を有する高分子を正孔輸送剤として電荷輸送層に用いた光電変換素子を太陽電池に利用することが報告されている(例えば、特許文献2)。
特開2003−317814号公報 特開2009−40903号公報
C.W.Tang:Applied Physics Letters, 48, 183(1986) G.Yu, J.Gao, J.C.Humelen, F.Wudl and A.J.Heeger: Science, 270, 1789(1996) B.O'Regan and M.Gratzel: Nature, 353, 737(1991) U.Bach, D.Lupo, P.Comte, J.E.Moser, F.Weissortel, J.Salbeck, H.Spreitzer and M.Gratzel, Nature, 395, 583(1998) G.R.A.Kumara, S.Kaneko, M.kuya,A.Konno and K.Tennakone: Key Engineering Materals, 119, 228(2002) J.Xia, N.Masaki, M.Lira−Cantu, Y.Kim, K.Jiang and S. Yanagida: Journal of the American Chemical Society, 130, 1258(2008)
しかしながら、特許文献1、非特許文献6に記載されるPEDOTは、可視光領域(400〜700nm)に吸収を有するため、色素の光吸収に対して損失を生じ、光電変換効率はまだ充分なものではなかった。また、PEDOTは光照射による劣化も起こるため、耐久性もまだ充分なものではなかった。
さらに、特許文献2に記載の1,3−ジチエニル−イソチアナフテンの単独重合体は、比較的可視光を吸収しにくいと考えられる。しかし、正孔輸送材料は、通常、正孔輸送層だけでなく、それに隣接する多孔質の半導体層の空隙内部にも含まれるが、この単独重合体が空隙内部に保持された多孔質の半導体層は、可視光の透過性が低く、素子内部の色素に可視光が到達しにくいという問題があった。また、光電変換機能の安定性に対しては、未だ充分なものとはいえなかった。
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、可視光の透過性が優れ、かつ充分な導電性を有する光電変換素子、特に全固体色素増感型の光電変換素子および太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の繰り返し単位を有する導電性高分子を正孔輸送層に使用した光電変換素子は、従来の正孔輸送層と比べて可視光の透過性に優れ、かつ充分な導電性を発揮できることを知得して、本発明を完成した。
すなわち、本願発明の上記目的は、基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、該正孔輸送層は、下記一般式(1):
で表される繰り返し単位(1)または下記一般式(2):
一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Ra(ただし、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、rは、0以上の整数である)または−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rb(ただし、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、sは0以上の整数である)を表し、この際、R1およびR2が全て水素原子の場合は除く、
で表される繰り返し単位(2)を有する重合体を含有することを特徴とする、光電変換素子により達成される。
本発明によれば、可視光の透過性が優れ、かつ充分な導電性を有する光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
本願発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
本願発明は、基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、該正孔輸送層は、下記一般式(1):
で表される繰り返し単位(1)(以下、単に「繰り返し単位(1)」とも称する)または下記一般式(2):
で表される繰り返し単位(2)(以下、単に「繰り返し単位(2)」とも称する)を有する重合体を含有することを特徴とする、光電変換素子を提供する。本願発明は、正孔輸送層に特定の繰り返し単位を有する重合体を用いることを特徴とする。当該重合体を用いた正孔輸送層は、従来の正孔輸送層と比べて、可視光の透過性に優れ、かつ充分な導電性を発揮する。また、上記重合体を構成する繰り返し単位中のエチレンジオキシ基(−O−CH(R1)−CH(R2)−O−)またはトリメチレンジオキシ基(−O−CH2−C(R1)(R2)−CH2−O−)が半導体(例えば、酸化チタン)との界面に作用し形状因子(F.F)を向上する。このため、本発明の光電変換素子は光電変換効率に優れるため、太陽電池に好適に使用できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
1.光電変換素子
本発明の光電変換素子は、第一電極と、それと対向する第二電極と、第一電極と第二電極との間に、色素を担持した半導体層(好ましくは多孔質の半導体層)と、正孔輸送層とが配置されている。
図1は、本発明の光電変換素子の一実施形態を示す模式図である。図1に示されるように、光電変換素子10は、基板12と、第一電極14と、それと対向する第二電極16とを有し、第一電極14と第二電極16との間に、バリア層18と、色素20Aを担持した半導体層20Bと、正孔輸送層22とが配置されている。光電変換素子10の側面は、封止樹脂24などで封止されている。そして、正孔輸送層22が、後述する一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする。
(基板12について)
基板側が光の入射面となる場合には、光電変換素子内部の色素に十分な光を到達させるために、基板は、波長(400〜700nm)の可視光の透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80〜100%であることがさらに好ましい。
可視光の透過率は、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法において、可視光領域における全光線透過率として測定される。
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については、公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い可視光透過性を有していることが好ましい。
基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。前者の剛性を有する基板のうち、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本願発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
(第一電極14について)
第一電極14は、基板12と後述する半導体層20Bとの間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極としては、その波長(400〜700nm)の可視光の透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO2、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO3、Cd2SnO4、CdSnO4)、In23、CdIn24等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上をドープした複合材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn23(ITO)、SbをドープしたSnO2、FをドープしたSnO2(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m2当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、第一電極を基板上に有するものを、ここでは導電性支持体とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1〜5mmの範囲が好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm2以下である。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm2以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(バリア層18について)
本発明の光電変換素子は、受光により発生し、正孔輸送層に注入されたホールと、第一電極の電子との再結合である短絡を防止する観点などから、必要に応じてバリア層をさらに含んでもよい。バリア層18は、第一電極14と後述する半導体層20Bとの間に、膜状(層状)に配置されうる。
バリヤ層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物;CdS、CdSe、TiC、Si34、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。
特に正孔輸送層がp型半導体の場合、バリヤ層に金属を使用する場合には正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリヤ層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで多孔質半導体層(光電変換層)からバリヤ層への電子移動効率を向上させることもできる。この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリヤ層、光電変換層は、多孔質であることが好ましい態様である。この場合、バリヤ層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バリヤ層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、バリヤ層の空孔率Cは、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層は、緻密層(緻密な多孔質状)であるのが好ましい。これにより、短絡防止効果をより向上することができる。ここで、バリヤ層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
バリヤ層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、短絡防止効果をより向上することができる。
(色素20Aを担持した半導体層20Bについて)
増感色素(本明細書では、単に「色素」とも称する)を担持した多孔質の半導体層は、光電変換層として機能する。
半導体層を構成する半導体材料の例には、シリコン、ゲルマニウムのような単体;周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物;金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等);金属窒化物などが含まれる。
金属のカルコゲニドの好ましい例には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブまたはタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物;カドミウムまたは鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物などが含まれる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
半導体材料の具体例としては、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti34などが挙げられる。好ましくは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe23、WO3、Nb25、CdS、PbSであり、より好ましくは、TiO2またはNb25であり、特に好ましくはTiO2(酸化チタン)である。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の1種または数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti34)を混合して使用してもよい。または、半導体として、J. Chem. Soc. Chem. Commun., 15(1999)に記載のように、酸化亜鉛/酸化錫複合の形態で使用してもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。なお、上記半導体層に用いる半導体は、単独で使用されてもまたは2種以上の半導体を併用して用いてもよい。
また、半導体層に用いられる半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、半導体層に用いられる半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、半導体層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。なお、上記半導体層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
半導体層の表面は、有機塩基によって表面処理されていてもよい。有機塩基の例には、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジンなどが挙げられる。好ましくはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンである。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、半導体層を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
半導体層は、色素の単位体積当たりの担持量を高めるためなどから、多孔質構造を有する。そして、多孔質の半導体層の空隙には、後述する正孔輸送層の一部(一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体など)が存在することが好ましい。一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体から色素へ電子を供給しやすいからである。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空隙にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空隙率は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
また、多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも10nm以上が好ましく、より好ましくは0.3〜30μmであり、さらにより好ましくは0.5〜25μmであり、特に好ましくは1〜10μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
半導体層に担持される色素は、光の照射によって励起され、起電力を生じさせうる。色素は、光電変換素子に用いられる公知の色素であってよいが、半導体層への電子の注入を効率的に行うためには、スルホ基またはカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基を有する色素であることが好ましく、一般式(3)で表される構造を有する色素であることがより好ましい。これらの色素は、光電変換素子の製造過程における電解重合を行う際に、分解しにくいからである。
上記一般式(3)中、R6は、水素原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を示す。アルキル基は、特に制限されないが、炭素原子数1〜12のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。また、アルケニル基は、特に制限されないが、炭素原子数2〜4のアルケニル基であることが好ましい。具体的には、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。これらのうち、ビニル基、1−プロペニル基が好ましい。アルキニル基は、特に制限されないが、炭素原子数2〜5のアルキニル基であることが好ましい。具体的には、エチニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。アリール基は、特に制限されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。複素環基は、特に制限されないが、例えば、フラニル基、チエニル基、モルホニル基などが挙げられる。これらのうち、フラニル基、チエニル基が好ましい。
また、上記一般式(3)中、R7およびR8は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を示す。ここで、R7およびR8は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、R7およびR8は、互いに連結して環を形成してもよい。ハロゲン原子の例には、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子などが含まれる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基は、前述のR6と同様に定義されうる。アルコキシ基は、特に制限されないが、炭素原子数1〜12のアルコキシ基であることが好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
上記一般式(3)中、Xは酸性基を示す。酸性基は、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホニル基、スルホニル基、およびそれらの塩などが挙げられる。これらのうち、Xは、カルボキシル基またはスルホ基であることが好ましい。
上記一般式(3)中、Yは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を示す。また、nは、0以上の整数を表し、好ましくは1〜4である。なお、nが2以上の場合、各(−C(R7)(R8)−)は、同一であってもまたは異なるものであってもよい。
上記一般式(3)で表される構造を有する色素に含まれうる置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など);アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基など);アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など);水酸基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基など)が挙げられる。
色素の具体例を以下に示す。まず、一般式(3)で表される構造を有する化合物以外の具体例を示す。また、下記実施例において、増感色素を下記記号にて規定する。
次に、一般式(3)で表される構造を有する化合物の具体例を示す。また、下記実施例において、増感色素を下記記号にて規定する。
上記増感色素は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。好ましくは、吸収波長の異なる二種類以上の色素を組み合わせて使用する。これにより、広い波長域の光によっても光電変換を行うことが可能である。
半導体層1m2当たりの増感色素の担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
(正孔輸送層22について)
正孔輸送層は、光励起によって酸化された増感色素に電子を供給して還元させ、増感色素との界面で生じた正孔を第二電極へ輸送する機能を有する。本発明における正孔輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空隙内部に充填された部分も含む。正孔輸送層は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)または下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)を有する重合体を含有する。上記繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体を用いて形成された固体正孔輸送層は、波長(400〜700nm)の可視光の透過性および導電性に優れる。
ここで、一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体が、高い可視光透過性を有する理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体では、3,4−エチレンジオキシチオフェン[繰り返し単位(1)]または2,6−ジオキサ−9−チアビシクロ[5.3.0]デカ−1(10),7−ジエン[繰り返し単位(2)]の炭素原子に、R1およびR2として式:−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Raまたは式:−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rbの特定の基が置換している。
一般に導電性高分子における可視・赤外域(波長400nm以上)の吸収は、以下の3つに起因する。
[1]中性共役ポリマーのπ−π*遷移(400〜700nm)
[2]ポーラロンによる吸収(500〜1500nm)
[3]バイポーラロンによる吸収(1000nm以上)
可視域(波長400〜700nm)において透明であるためには、上記[1]及び[2]の吸収を抑え、上記[3]のみを許容する設計にすればよい。単位ユニットあたりの正孔ドープ量が0.15〜0.66であるとき、本願発明に係わる重合体の中性共役部分やポーラロンの存在割合が減少し、ポリマー鎖を構成する主成分がバイポーラロンとなる。重合体が一般式(1)或いは一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると、バイポーラロンの形成が促進され、中性共役部分やポーラロンがさらに減少するので、より可視光透過性が向上する。その結果、重合体の吸収による可視光の損失が減少するため、増感色素に作用する可視光が増加し、結果として光電変換効率の向上につながるものと推定される。また、本発明に係る重合体の可視光透過性が高い他の理由としては、重合体の繰り返し単位末端にあるエチレンオキサイド部位の酸素部分が、ドープ材を保持しやすく、よりドープされているためであると、推定される。なお、本発明は、上記推定に限定されるものではない。
加えて、繰り返し単位(1)または(2)中のエチレンジオキシ基(−O−CH(R1)−CH(R2)−O−)またはトリメチレンジオキシ基(−O−CH2−C(R1)(R2)−CH2−O−)が半導体(例えば、酸化チタン)との界面に作用し形状因子(F.F)を向上する。したがって、本発明の光電変換素子は光電変換効率に優れるため、太陽電池に好適に使用できる。
上記一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、水素原子、−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Raまたは−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rbを表す。ここで、R1およびR2は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ただし、全ての繰り返し単位において、R1およびR2が双方とも水素原子であることはない、即ち、本発明に係る重合体は、R1およびR2の少なくとも一方が−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Raまたは−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rbを表す繰り返し単位(1)または(2)を必須に有する。
上記式:−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Raの基中、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基である。ここで、無置換のアルキル基は、炭素原子数1〜13の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。また、Raが炭素原子数1〜13の置換のアルキル基である場合の、置換基は、特に制限されないが、例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基など);アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など);水酸基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基など)などが挙げられる。また、rは、エチレンオキシド基(−CH2CH2−O−)の付加モル数を示し、0以上の整数である。可視光領域(400〜700nm)での吸光度および光電変換効率などを考慮すると、rは、好ましくは0〜8の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。なお、rが0である場合には、上記式:−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Raの基は、−CH2−O−Raとなる。
また、式:−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rbの基中、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基である。ここで、無置換のアルキル基は、炭素原子数1〜13の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、具体的には、上記置換基「Ra」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、炭素原子数1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。また、Rbが炭素原子数1〜13の置換のアルキル基である場合の、置換基は、特に制限されず、上記置換基「Ra」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、sは、エチレンオキシド基(−CH2CH2−O−)の付加モル数を示し、0以上の整数である。可視光領域(400〜700nm)での吸光度および光電変換効率などを考慮すると、sは、好ましくは0〜7の整数であり、より好ましくは0〜4の整数である。なお、sが0である場合には、上記式:式:−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)s−Rbの基は、−CH2−O−(CO−CH2−O)−Rbとなる。
上記重合体は、上記繰り返し単位(1)および(2)の少なくとも一方の繰り返し単位を有するものであればよい。このため、上記重合体は、繰り返し単位(1)のみからなる重合体、繰り返し単位(2)のみからなる重合体、ならびに繰り返し単位(1)及び(2)からなる共重合体を包含する。ここで、上記重合体が繰り返し単位(1)のみからなる重合体である場合であっても、当該重合体を構成する繰り返し単位は、単一の繰り返し単位(1)(即ち、単独重合体の形態)であってもあるいは2種以上の繰り返し単位(1)の組み合わせ(即ち、共重合体の形態)であってもよい。上記重合体が繰り返し単位(2)のみからなる重合体である場合も、同様にして、当該重合体を構成する繰り返し単位は、単一の繰り返し単位(2)(即ち、単独重合体の形態)であってもあるいは2種以上の繰り返し単位(2)の組み合わせ(即ち、共重合体の形態)であってもよい。同様にして、上記重合体が繰り返し単位(1)及び(2)からなる共重合体である場合にも、各繰り返し単位は、単一の繰り返し単位であってもあるいは2種以上の繰り返し単位の組み合わせであってもよい。なお、上記重合体が異なる繰り返し単位からなる共重合体である場合には、その繰り返し単位は、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい
または、上記重合体は、さらに他の単量体由来の繰り返し単位を有してもよい。ここで、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、チアジアゾール等の単量体やπ共役構造を有する単量体などが挙げられる。または、併有する繰り返し単位としては、下記一般式(4)のようなπ共役構造を有する2価の有機基もまた好ましい。
上記一般式(4)中、Arは、π共役構造を有する2価の有機基を表わす。ここで、「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。高分子中にこのようなπ共役構造を有する有機基が存在することによって、高分子のπ共役平面が広がり、一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)骨格の電子供与性がより高くなり、p型半導体としての特性がより向上する。具体的には、このような一般式(4)の繰り返し単位に対応するモノマーとしては、チアジアゾール、イソチアナフテンなどが挙げられる。重合体が他の単量体由来の繰り返し単位を有する場合の、他の単量体の含有量は、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されないが、重合体を構成する全単量体を100モルとした場合に、好ましくは0〜50モル程度である。なお、上記重合体が異なる繰り返し単位からなる共重合体である場合には、その繰り返し単位は、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。また、上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられる。このため、半導体層の空隙の内部に保持される正孔輸送材料の光吸収を少なくする観点から、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる正孔輸送層の厚み1μmにおける吸光度は、1.3(/μm)以下であることが好ましく、1.1(/μm)以下であることがより好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2(/μm)以上、より好ましくは0.25(/μm)以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での50nm間隔で測定した吸光度の平均値)が0.2〜1.3(/μm)であることが好ましく、0.25〜1.1(/μm)であることがより好ましい。
なお、本明細書において、正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。具体的には、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体の可視光透過率の測定は、例えば、以下の方法で測定されうる。
1)シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)のスパッタリング膜からなる透明導電層(FTO)を有する導電性ガラス基板(有効面積10×10mm2)を準備する。そして、導電性ガラス基板の波長400〜700nmの範囲の吸光度を、分光光度計(JASCO V−530)で測定する;
2)次いで、導電性ガラス基板を、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体を構成する単量体を1×10-3(モル/l)の割合で含有し、Li[(CF3SO22N]を0.1(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬する。そして、導電性ガラス基板を作用極とし;白金線を対極とし;Ag/Ag+(AgNO3 0.01M)を参照電極とし、保持電圧を+0.60Vとし、暗所にて通算電荷量が25mCに達するまで通電させる。それにより、導電性ガラス基板上に、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる層を形成し、測定用試料とする;
3)得られた測定用試料の波長400〜700nmの範囲の吸光度を、前記1)と同様にして測定する。そして、測定用試料の吸光度から、前記1)で得られた導電性ガラス基板の吸光度を差し引いて、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる層の吸光度を算出する。
正孔輸送層中の繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
正孔輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)3SbCl6、NOPF6、SbCl5、I2、Br2、HClO4、過塩素酸リチウム(LiClO4)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3SO22N]、(n−C494ClO4、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl3、AuCl3、NOSbF6、AsF5、NOBF4、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、H3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。特にアクセプタードーピング剤で正孔ドープされた一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体は、高い導電性を有する。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
アクセプタードーピング剤による、一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体へのドープ量(正孔ドープ量)は、特に制限されないが、アクセプタードーピング剤を、1〜1000ミリモル/lの濃度の溶液の形態で使用することが好ましい。
ドープされた一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体が、色素に電子を注入しやすくするためには、ドープされた重合体のイオン化ポテンシャルが、色素(色素吸着電極)のイオン化ポテンシャルよりも低いことが好ましい。本願発明に係わる重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なってくるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
本願発明における正孔輸送層を用いることで、光電変換効率、光電変換機能の安定性に優れる光電変換素子得られる理由は、明確ではないが以下のように推定される。なお、本発明は、下記推論によって限定されるものではない。すなわち、一般的に導電性高分子における可視・赤外域(波長400nm以上)の吸収は、以下の3つに起因する:[1]中性共役ポリマーのπ−π*遷移(400〜700nm);[2]ポーラロンによる吸収(500〜1500nm);および[3]バイポーラロンによる吸収(1000nm以上)。可視域(波長400〜700nm)において透明であるためには、上記[1]及び[2]の吸収を抑え、上記[3]のみを許容する設計にすればよい。単位ユニットあたりの正孔ドープ量が重合体の繰り返し単位1モルに対して0.15〜0.66モルである際には、本願発明に係わる重合体の中性共役部分やポーラロンの存在割合が減少し、ポリマー鎖を構成する主成分がバイポーラロンとなる。重合体が繰り返し単位(1)または(2)を有するとき、バイポーラロンの形成が促進され中性共役部分やポーラロンがさらに減少するので、より可視光透過性が向上する。その結果、重合体の吸収による可視光の損失が減少するため、増感色素に作用する可視光が増加し、結果として光電変換効率の向上につながるものと推定される。
(第二電極16について)
第二電極16は、正孔輸送層22と接して配置され、任意の導電性材料で構成されうる。
第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。第二電極は、素子の電気抵抗を低減する観点などから、正孔輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。好ましくは金などの金属薄膜である。また、第二電極の厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは20Ω/cm2以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm2以上であれば十分である。
このように構成された光電変換素子10では、基板12の外側から光が照射されると、素子内部の多孔質の半導体層20Bに担持された色素20Aが励起されて電子を放出する。励起された電子は、多孔質の半導体層20Bに注入され、バリア層18を通じて第一電極14に移動する。第一電極14に移動した電子は、外部回路を通じて第二電極16に移動し、正孔輸送層22に含まれる一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された色素20Aは、一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光が電気に変換される。
本発明では、多孔質の半導体層20Bの空隙の内部には、正孔輸送材料である一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体が充填されている。一般繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体は、十分な導電性を有しつつ、高い可視光の透過性を有するため、それを含む多孔質の半導体層20Bの可視光の透過性も高い。それにより、照射された光が、素子内部の色素まで十分に到達するので、素子の光電変換効率が高められる。
2.光電変換素子の製造方法
本発明の光電変換素子の製造方法は、特に制限されず、正孔輸送層に繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体を使用する以外は、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、本発明の光電変換素子は、1)基板上に第一電極を形成して導電性基板を得るステップ;2)導電性基板の第一電極上に、色素を担持した多孔質の半導体層を形成するステップ;3)多孔質の半導体層上に正孔輸送層を形成するステップ;4)正孔輸送層上に第二電極を形成するステップ、を経て製造することができる。
1)導電性基板を得るステップについて
導電性基板は、基板上に、第一電極を構成する材料(SnO2やITOなど)を塗布または蒸着などして形成することができる。
2)色素を担持した多孔質の半導体層を形成するステップについて
半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けた後、焼成して、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行ってもよい(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本願発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。すなわち、半導体層は、導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
塗布液に含まれる半導体微粒子の粒子径は小さいほど好ましく、その一次粒子径は1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。半導体微粒子を含む塗布液は、半導体微粒子を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒中に分散された半導体微粒子は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粒子を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体などが用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。半導体微粒子を含む塗布液における半導体微粒子の含有量は、0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性支持体上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粒子の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いも。このため、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。焼成処理によって、半導体層に含まれる半導体微粒子同士の結合力が高められるだけでなく、導電性基板の第一電極と半導体層との結合力も高められる。
焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、200℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体微粒子同士および半導体微粒子と基板との間を固着させてもよい。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
また、半導体層の実表面積および半導体層の見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。
焼成処理後、半導体層の実表面積を増大させたり、半導体層の純度を高めたりして色素から半導体層への電子の注入効率を高めるために、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理をさらに行ってもよい。
その後、半導体層に色素を吸着または担持させる(増感処理)。色素の吸着処理は、例えば色素を溶媒(例えばエタノール)に溶解させた溶液中に、焼成して得られた半導体層を長時間浸漬させることによって行うことができる。色素の吸着処理は、空隙の内部に水分などが吸着される前に行うことが好ましい。
ここで、増感色素は、単独で用いられてもよいし、複数を併用されてもよく、または、他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。特に、本願発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体への増感色素の担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に増感色素を担持させるには、増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。ここで、増感色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。また、各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空隙に吸着する前に、増感色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理は、前述のように増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。アセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどがより好ましい。
増感処理の条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、半導体層の、色素を含む溶液への浸漬温度(増感処理温度)は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、色素を含む溶液への浸漬時間(増感処理時間)は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で3〜48時間、特に4〜24時間、増感処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり、色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
3)正孔輸送層を形成するステップについて
正孔輸送層の形成方法(重合方法)としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、本発明に係る重合体を構成する単量体、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)に対応する単量体(1)または(2)または該単量体の多量体(例えば、二量体)を、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質(アクセプタードーピング剤)を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、tert−ブチルピリジンなどが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3SO22N]、(n−C494NBF4、(n−C494NPF4、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。電解重合溶液における前記単量体またはその多量体(例えば、二量体)の濃度は0.1〜1000mmol/L程度であることが好ましく、支持電解質の濃度は0.1〜2mol/L程度であることが好ましい。
得られた電解重合溶液中に、色素を担持した多孔質の半導体層を有する基板(半導体電極)を浸漬する。そして、半導体電極を作用極とし;白金線や白金板を対極とし;Ag/AgClやAg/AgNO3を参照極として、直流電解させる。電流密度は、0.01〜1000μA/cm2の範囲であることが好ましく、1〜500μA/cm2の範囲であることがより好ましい。保持電圧は、−0.50〜+0.20Vであることが好ましく、−0.30〜0.00Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度は、溶媒が固化または突沸しない範囲であればよく、通常−30〜80℃程度としうる。印加電圧、電流密度および電解時間、温度などの条件は、用いる単量体や溶媒の種類、形成する半導体層の厚さなどに応じて設定されうる。
なお、重合後形成された正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体の重合度把握は電解重合で得られた重合体では、通常、困難である。このため、得られる重合体の重合度は、例えば正孔輸送層を有する基板を、一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)を含む重合体を構成する単量体を溶解する溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))に浸漬させたときの溶解度によって確認されうる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に、正孔輸送層を構成する重合体10mgを採取し、THF 10mlに投入して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射する。得られた溶液中に溶解した重合体の量が5mg以下であれば、重合体は十分な重合度を有していると判断することができる。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と、tert−ブチルピリジンなどを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、前記一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)に対応する単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。なお、本発明は下記に限定されるものではない。即ち、重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。ここで、化学重合において用いられる重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、正孔輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体(1)、単量体(2)またはこれらの多量体の電解重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
その場合、重合して重合体を合成するためには、前記一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤を含有する正孔輸送層形成用溶液が用いられる。正孔輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる前記一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度は、1〜50質量%の範囲である。
前記正孔輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電反感層を前記正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる前記一般式(1)または一般式(2)の繰り返し単位(1)または(2)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
または、上記(2)の方法において、正孔輸送層を、塗布により形成する場合は、前記正孔輸送層形成用溶液を用いるが、この塗布液の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒等が挙げられる。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
4)第二電極を形成するステップについて
第二電極の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、第二電極は、正孔輸送層上に、金などの薄膜を、蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷などによって形成してもよいし、カーボンブラックなどの導電性化合物を含む塗布液を、塗布形成してもよい。
3.太陽電池および太陽電池モジュール
本願発明の光電変換素子は、太陽電池および太陽電池モジュールに特に好適に使用できる。したがって、本願発明は、本願発明の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池および太陽電池モジュールをも提供する。
本発明の光電変換素子は、色素増感型の太陽電池(セル)として用いられうる。即ち、本発明の太陽電池モジュールは、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(本発明の光電変換素子)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうち一方は、前述の光電変換素子の基板となる。一対の保護部材の両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明の太陽電池モジュールの構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に、複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基板に複数の正孔輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および正孔輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本願発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本願発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
1.材料の準備
1)正孔輸送材料
下記式(M1)で表される単量体M1−1〜M1−10、および下記式(M2)で表される単量体M2−1〜M2−8を準備した。
また、下記式で表される単量体M−R1、M−R2およびM−R3を準備した。
2)色素
前述した色素の例示化合物D−22およびD−38〜D−44を準備した。
2.重合体の可視光透過率の測定
上記単量体を電解重合して得られる重合体の可視光透過率を、以下の方法で測定した。
1)ガラス基板上に、シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)のスパッタリング膜である透明導電層(FTO)を有する導電性ガラス基板(有効面積10×10mm2)を準備した。そして、導電性ガラス基板の波長400〜700nmの範囲の吸光度を、分光光度計(JASCO V−530)で測定した。
2)準備した導電性ガラス基板を、上記各単量体を1×10-3(モル/l)の割合で含有し、Li[(CF3SO22N]を0.1(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。そして、導電性ガラス基板を作用極とし;白金線を対極とし;Ag/Ag+(AgNO3 0.01M)を参照電極とし、保持電圧を+0.60Vとして、暗所にて通算電荷量が25mCに達するまで通電させた。それにより、導電性ガラス基板上に、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる層を形成した。これにより、導電性ガラス基板と、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる層とを有する測定用試料を得た。
3)得られた測定用試料の波長400〜700nmの範囲の吸光度を、前記1)と同様にして測定した。そして、測定用試料の吸光度から、前記1)で得られた導電性ガラス基板の吸光度を差し引いて、繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体からなる層の吸光度を算出した。
得られた測定用試料における重合体からなる層の厚みは、単量体の種類によっては0.15〜0.30μmの範囲でばらついた。そのため、波長400〜700nmの範囲における吸光度の平均値をとり;その平均値を、重合体からなる層の平均厚み(μm)で除して得られる値(μm当たりの吸光度)を「吸光度(/μm)」とした。重合体からなる層の厚みは、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)で測定した。
3.光電変換素子の作製
(実施例1)
ガラス基板上に、第一電極として、シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)をスパッタリングして透明導電層(FTO)を形成し、導電性ガラス基板(第一電極)を得た。ガラス基板の厚みは1.0mm、導電性ガラス基板(第一電極)の厚みは1.1mmであった。得られた導電性ガラス基板の透明導電層(FTO)上に、テトラキスイソポロポキシチタン 1.2mlと、アセチルアセトン 0.8mlとをエタノール 18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により塗布した後、450℃で8分間加熱した。それにより、透明導電膜(FTO)上に、厚み50nmの酸化チタンの薄層からなるバリア層を形成した。
上記バリア層上に、酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を、スクリーン印刷法(塗布面積:25mm2)により塗布した。得られた塗膜を、200℃で10分間、および500℃で15分間焼成して、厚さが2.5μmで空隙率が60体積%の酸化チタンの多孔質層(多孔質の半導体層)を得た。
増感色素D−38を、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10-4mol/lの溶液を調製した。この溶液に、上記酸化チタンの多孔質膜を形成したFTOガラス基板を、室温(25℃)で3時間浸漬して色素を吸着させた。これにより、色素を担持する多孔質の半導体層(光電変換層)を有する半導体電極を得た。なお、この際の半導体層1m2当たりの増感色素D−38の総担持量は、1ミリモルであった。
一方、得られた半導体電極を、上記単量体M1−1を1×10-3(モル/l)の割合で含有し、Li[(CF3SO22N]を0.1(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。半導体電極を作用極とし;白金線を対極とし;Ag/Ag+(AgNO3 0.01M)を参照電極とし、保持電圧を−0.16Vとした。電解開始時の電流密度は150μA/cm2であり、終了時の電流密度は10μA/cm2であった。そして、半導体電極の外側から、キセノンランプで光を照射しながら30分間電圧を保持して、正孔輸送層を半導体電極表面に形成した(半導体電極/正孔輸送層)。光照射の条件は、光強度22mW/cm2とし、430nm以下の波長をカットした。正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
次いで、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を、Li[(CF3SO22N]を15×10-3(モル/l)、tert−ブチルピリジンを50×10-3(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬させた。得られた半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥させた後、さらに真空蒸着法で金を60nm蒸着して、第二電極を形成した。これにより、光電変換素子SC−1を得た。
(実施例2〜1
正孔輸送層の形成において、単量体の種類および色素の種類を表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子SC−2〜SC−1を得た。
(比較例1〜3)
正孔輸送層の形成において、単量体の種類を表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子SC−1〜SC−21を得た。
得られた光電変換素子SC−1〜SC−21の、初期および光劣化試験後の光電変換効率を、以下の方法で測定した。
[初期の光電変換効率の測定]
ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用いて、得られた光電変換素子に、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cm2の擬似太陽光を照射した。そして、I−Vテスターを用いて、光電変換素子の室温での電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を測定した。これらの値を、下記式(A)に当てはめて光電変換効率η(%)を求めた。
ここで、Pは入射光強度[mW/cm-2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm-2]、F.F.は形状因子を示す。
[光劣化試験後の光電変換効率の測定]
開回路状態で、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cm2の擬似太陽光を3時間照射した後、前述と同様にして光電変換素子の光電変換効率η1(%)を求めた。そして、初期の光電変換効率ηに対する光劣化後の光電変換効率η1の比率η1/ηを求めた。
実施例1〜1および比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
上記表1に示されるように、実施例1〜1で用いられた繰り返し単位(1)または(2)を有する重合体は、可視光の吸光度が低く、それを含む素子の初期および光劣化試験後の光電変換効率はいずれも高いことがわかる。一方、比較例1〜3で用いられた正孔輸送材料は、可視光の吸光度が高く、それを含む素子の初期および光劣化試験後の光電変換効率は低いことがわかる。
本発明の光電変換素子は、十分な電導性を有し、かつ可視光の透過性に優れている。そのため、変換効率の高い太陽電池を提供することができる。
10…光電変換素子、
12…基板、
14…第一電極、
16…第二電極、
18…バリア層、
20A…色素、
20B…半導体層、
22…正孔輸送層、
24…封止樹脂。

Claims (3)

  1. 基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、正孔輸送層ならびに第
    二電極を有する光電変換素子において、
    該正孔輸送層は、下記一般式(1):
    で表される繰り返し単位(1)または下記一般式(2):
    で表される繰り返し単位(2)を有する重合体を含有することを特徴とする、光電変換素子。
    (一般式(1)および(2)において、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立して、水素原子、−CH 2 −O−(CH 2 CH 2 −O) r −Ra(ただし、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、rは、1〜8の整数である)または−CH 2 −O−(CO−CH 2 −O)−(CH 2 CH 2 −O) s −Rb(ただし、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、sは0以上の整数である)を表し、この際、R 1 およびR 2 が全て水素原子の場合は除く。)
  2. 上記一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、−CH2−O−(CH2CH2−O)r−Ra(ただし、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、rは、〜8の整数である)または−CH2−O−(CO−CH2−O)−(CH2CH2−O)−Rb(ただし、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、sは0〜7の整数である)を表す、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 請求項1または2に記載の光電変換素子を含む、太陽電池。
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