JP2015119023A - 光電変換素子およびその製造方法、ならびにそれを用いた太陽電池 - Google Patents

光電変換素子およびその製造方法、ならびにそれを用いた太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、フレキシブルセルへ適用しても光電変換効率の維持率が高い光電変換素子を提供することを課題とする。【解決手段】 第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子であって、前記色素が、下記式(1):ただし、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R1〜R4が同時に水素原子になることはなく;X1〜X3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表し;前記電子輸送層が、有機チタンオリゴマー由来の塗膜である、光電変換素子。【選択図】なし

Description

本発明は、光電変素子およびその製造方法、ならびに該光電変換素子を用いて構成した太陽電池に関する。
近年、地球温暖化問題を解決する手段として、化石燃料を使用することなく再生可能エネルギーの一つである太陽エネルギーを使用する太陽光発電技術が注目されている。当該太陽光発電技術のなかでも、色素増感型太陽電池は、クロロフィル色素が行う光誘起電子移動と同様のメカニズムで発電するため、安価で高性能なルーフ・トップ型の次世代を担う太陽電池の一つとして脚光を浴びている。
このような色素増感型太陽電池の一般的な構成は、基板、第一電極、増感色素が担持された半導体層(光電変換層)、正孔輸送層、および第二電極が順次積層されたものである。
このような構成を有する光電変換素子に対して、基板の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は第一電極に移動し、当該電子は、外部回路を通じて第二電極に移動して、正孔輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、正孔輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光エネルギーが電気エネルギーに変換されるのである。
ところで、例えば、非特許文献1では、半導体を用いずにペロブスカイト結晶を用いた光電変換素子が報告されており、フレキシブルセルへの展開が期待されている(非特許文献1)。
また、色素増感太陽電池におけるバッファ層にチタンモノマーを適用した例も報告されている(特許文献1〜4)。
特開2011−198631号公報 特開2011−204438号公報 特開2012−059613号公報 特開2012−146631号公報
Michael M. Lee, Joel Teuscher, Tsutomu Miyasaka, Takurou N. Murakami, Henry J. Snaith, Science 2012, 338 (6107), 643−647)。
しかしながら、従来の光電変換素子では、フレキシブルセルへ適用すると光電変換効率が低いという問題があった。
そこで、本発明は、フレキシブルセルへ適用しても光電変換効率の維持率が高い光電変換素子を提供することを課題とする。
上記課題は、第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子であって、
前記色素が、下記式(1):
ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表し;前記電子輸送層が、有機チタンオリゴマー由来の塗膜である、光電変換素子を提供することにより、解決する。
本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。 工程(1)、(2−1)〜(2−3)、(3)を説明するための模式断面図である。 工程(1)、(2−1)〜(2−3)、(3)を説明するための模式上面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。また、図面の比率は説明のために誇張されている場合もある。
本発明の第一は、第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子であって、前記色素が、下記式(1):
ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表し;前記電子輸送層が、有機チタンオリゴマー由来の塗膜である、光電変換素子に関する。
また、本発明の第二は、第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子の製造方法であって、前記第一電極を表面に備えた基板上に、電子輸送層として、有機チタンオリゴマー由来の塗膜を形成する工程と;前記電子輸送層上に、下記式(1):
ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表す、で示される色素を含む前記光電変換層を形成する工程と;前記光電変換層上に、正孔輸送層を形成する工程と;前記第二電極を形成する工程と;を有する、光電変換素子の製造方法に関する。
上記のように、従来の光電変換素子では、フレキシブルセルへ適用すると光電変換効率が低いという問題があった。本発明者らは、かかる問題の原因を究明している過程の中で、電子輸送層に工夫の余地があるのではないかと考えた。そこで、本発明においては、電子輸送層として有機チタンオリゴマー由来の塗膜を使用した。すると驚くべきことに、折曲げ試験の耐性が上がり、フレキシブルセルへの適用も可能となった。
電子輸送層として有機チタンオリゴマー由来の塗膜をした際に、折曲げ試験の耐性が上がり、フレキシブルセルへの適用も可能となるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のとおりではないかと推測される。ただし、下記のメカニズムが本発明の技術的範囲を制限するものではない。
すなわち、チタンモノマー由来の電子輸送層が折り曲げられた場合、クラックが生じてしまい、そのクラックが光電変換層に含まれる色素(ペロブスカイト結晶)のクラックの原因ともなり、電子パスが断絶されて電荷分離が効率的に行われず(電荷分離しても電子を取り出せず)、結果、光電変換効率が低くなっていると考えられる。つまり、チタンモノマーを使用する場合は、チタンモノマー由来の電子輸送層の割れに影響され、ペロブスカイト結晶も割れやすくなり、曲げ耐性が低くなっていると考えられる。チタンモノマー由来の酸化チタンの割れがあると、その割れに起因して、色素(ペロブスカイト結晶)にクラックが生じ、それが曲げ耐性が悪いという現象として生じていると考えられる。
これに対し、本発明のように、有機チタンオリゴマーから作製した電子輸送層は、既にTiOユニットが部分的に形成されている有機チタンオリゴマーを材料として形成するため、製膜の際にTiOユニットの形成が容易となり、チタンモノマーを材料として形成する場合に比べ、より緻密な酸化チタン膜が形成されると考えられる。そのため、チタンモノマーから形成する場合に比べ、曲げ耐性が向上する。さらにその緻密膜に追従する形で、ペロブスカイト結晶が形成されるため、電子輸送層と光電変換層との密着性が向上し、ペロブスカイト結晶にクラックが生じにくくなり、セルの曲げ耐性が向上する。
また、折り曲げ耐久試験後は、多孔質酸化チタンが徐々に剥離してくる可能性があり、通常の色素増感太陽電池(例えばD131色素使用)ではセル性能が低下するが、本発明のペロブスカイト結晶を適用した太陽電池の場合は、密着性の高い、電子輸送層−色素界面で電荷分離が行われるため、性能低下を克服することが出来る。
上記のような、色素(ペロブスカイト結晶)は無機結晶であるため割れやすく、また、チタンモノマー由来の電子輸送層も割れやすいという問題を本発明は解決し、つまり、チタンオリゴマーから作製した電子輸送層(チタン膜)は割れにくく、この電子輸送層(チタン膜)が割れにくいため、色素(ペロブスカイト結晶)の割れも抑制することができ、密着性の高い、電子輸送層−色素界面で、効率よく電荷分離を行うため、フレキシブルセルへの適用可能な光電変換効率の高い太陽電池を提供することができ、本発明が完成した。
また、本発明のもう一つの特徴は、上記式(1)の色素を光電変換層に使用することである。ここで、上記式(1)の色素はペロブスカイト構造を有する(ペロブスカイト化合物)であり、半導体(例えば、酸化チタン)より高く正孔輸送物質(重合体)より低いエネルギーレベルを有する。このようなペロブスカイト化合物は、光を吸収して、電子正孔対を生成する。このうち、電子は半導体に移動し、基板を経由して対向電極に移動して、正孔輸送層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた色素は酸化体となっているが、対向電極から正孔輸送層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。ここで、ペロブスカイト化合物は、半導体の接合型に応じてn型及びp型導体として作用すると共に、正孔輸送剤としても作用できる。このため、光吸収によって生成した電荷がよりスムーズに光電変換層(色素)から正孔輸送層(正孔輸送物質)へと流れる。したがって、本発明の光電変換素子は、高い光電変換効率を発揮できる。また、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合するため、重合を光電変換層上で均一に行うことができる。このため、正孔輸送層が均一でかつ強固な重合膜として得られるため、光や熱などの刺激に対する安定性を向上できる。
{光電変換素子}
本発明に係る光電変換素子の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、電子輸送層3、光電変換層6、正孔輸送層7および対極である第二電極8により構成されている。好ましい形態によれば、正孔輸送層7は、導電性重合体を含む。また、光電変換層6は、色素としての式(1)のペロブスカイト化合物4を含有する。好ましい形態によれば、光電変換層6は、半導体5を含有する。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
以下、本発明に係る光電変換素子の各構成要素および本発明に係る光電変換素子の製造方法について説明する。
(基板)
本発明に係る基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、透明基板が好ましく、表面に第一電極が形成された透明導電性基板がより好ましい。基板は、光透過率が10%以上であることがさらに好ましく、更により好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。当該光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
当該基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。当該基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。
前者の剛性を有する基板では、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜250μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、ポリエチレンナフタレート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、ポリエチレンナフタレート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。なお本発明の実施例ではポリエチレンナフタレートを使用している。これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
(第一電極)
本発明に係る第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられると好ましい。第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、導電性の点からITOが好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、本発明に係る第一電極は、基板である透明基板の表面に設けられた透明導電性基板が好ましく、第一電極が表面に形成された基板を、ここでは透明導電性基板(または第一電極基板)とも称する。
透明導電性基板の平均厚さ(フィルム厚み)としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、透明導電性基板の表面抵抗(「シート抵抗」とも称する)は、50Ω/□(square)以下であることが好ましく、20Ω/□(square)以下であることがより好ましく、更に好ましくは、10Ω/□(square)以下である。なお、透明導電性基板の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。透明導電性基板の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(第二電極)
本発明に係る第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第二電極は、正孔輸送層との接触性が良いことが好ましい。第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。また、第二電極の平均厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい。具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/□(square)以下であり、さらに好ましくは20Ω/□(square)以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。
(電子輸送層)
本発明に係る光電変換素子において、電子輸送層が、短絡防止手段、封止手段及び整流作用として、膜状(層状)をなし、第一電極と光電変換層との間に配置される。また、電子輸送層は、光照射時に光電変換層との界面での電荷分離が起こると考えられる。これが従来の色素増感型とは違うところの一つである。なお、本明細書では、電子輸送層が基板上に形成された第一電極(透明導電性基板)上に形成されたものを、導電性基板とも称する。
当該電子輸送層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.001〜10μm程度であるのが好ましく、0.005〜1μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
本発明に係る電子輸送層は、有機チタンオリゴマー由来の塗膜であることに特徴の一つを有する。
オリゴマーとは、一般的に、中程度の大きさの相対分子質量をもつ分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回の繰返しで構成された構造をもつものをいい、一般的に、2〜10ユニット、10〜100ユニット程度である。
本発明の有機チタンオリゴマーは、好ましくは2〜100ユニット、より好ましくは2〜50ユニット、さらに好ましくは3〜10程度、特に好ましくは6〜8ユニットのTiOユニットをもつ有機チタン化合物であることが好ましい。無論、この範囲を逸脱するものであってもよい。
よって、有機チタンオリゴマーの具体的な構造も、特に制限されないが、好ましい形態では、下記式(A)で表される有機チタンオリゴマーであると好ましい。
上記式(A)中、R、R、R及びRは、相互に同一又は異なって、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜12個のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは2以上の実数を示す。
また、有機チタンオリゴマーの準備方法にも特に制限はなく、市販品を購入してきてもよいし、従来公知の方法で合成してもよい。市販品としては、マツモトファインケミカル社製のPC600、PC605、PC200、PC620などが好適である。
また、製造のための従来公知の方法としては、例えば、下記式(B)で表されるテトラアルコキシチタンを実質的に溶媒で希釈することなく、そこに、水又は水と水溶性溶媒との混合液を添加して加水分解を行わせればよい。
式中、R、R、R及びRは、相互に同一又は異なって、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜12個のアルキル基又はアルケニル基を示す。
上記のような有機チタンオリゴマーは、加水分解に対して安定であるので取り扱いが容易であるが、ひとたび反応系中に配合されると優れた触媒性能を発揮する。
上記式(A)中、R、R、R及びRは、相互に同一又は異なって、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜12個のアルキル基又はアルケニル基を示す。ここで、「アルキル基又はアルケニル基」は、直鎖のものであっても、分岐を有しているものであってもよい。また、アルキル基が好ましい。特に好ましくはターシャリー(tert−)アルキル基を有しているものである。このようなR、R、R及びRによって、加水分解性が適度に緩和されて保存安定性が良好となるが、同時に触媒としての能力も維持できる。
、R、R及びRの炭素数は1〜12個であることが好ましいが、有機チタンオリゴマーの加水分解性を考慮すると、1〜10個がより好ましく、2〜8個がさらに好ましく、3〜6個が特に好ましい。
上記式(A)中のR、R、R及びRとしては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。このうち、特に好ましくは、自身の加水分解性と触媒活性の両立の点から、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、沸点等の点から、最も好ましくは、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
上記式(A)中のR、R、R及びRは、置換基を含んでいてもよいが、その置換基としては、水酸基、エステル基、ケトン基、エーテル基、アミノ基等が挙げられる。R、R、R及びRは、相互に同一であっても異なっていてもよい。
上記式(A)中のn(nは繰り返し単位数の平均値を示す)は2以上の実数を示す。すなわち、式(1)で表される有機チタンオリゴマーは、平均組成としてnが2以上の実数である組成物であるとよい。より好ましくは2〜50の実数、さらに好ましくは3〜20の実数、特に好ましくは4〜12の実数である。また上記式(A)の分子量は500〜4000が好ましく、さらに好ましくは700〜2500が好ましい。
無論、この値を逸脱するものでも構わない。なお、nの値は、後述する製造方法により自由に調節できる。
上記のように、本発明の有機チタンオリゴマーの製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法で製造されたものが、加水分解に対して安定で、優れた触媒性能を発揮し、また、コスト低減、環境負荷低減等の点で好ましい。
すなわち、下記式(B)で表されるテトラアルコキシチタンを実質的に溶媒で希釈することなく、そこに、水又は水と水溶性溶媒との混合液を添加して加水分解を行わせる。
式中、R、R、R及びRは、相互に同一又は異なって、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜12個のアルキル基又はアルケニル基を示す。
上記式(B)において、R、R、R及びRとしては、式(A)中のR、R、R及びRとして、前記したものが挙げられる。好ましい範囲、好ましい置換基等も同様である。また、好ましい理由も同様である。R、R、R及びRは、相互に同一であっても異なっていてもよい。
上記式で表される化合物の好適な具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−(sec−ブトキシ)チタン、テトラ−(tert−ブトキシ)チタン、テトラペンチルオキシチタン、テトラ(ペンチル−2−オキシ)チタン、テトラ(ペンチル−3−オキシ)チタン、テトラ−(tert−ペンチルオキシ)チタン等のアルコキシチタン類;ジオクチルオキシチタンビスオクチレングリコレート等のチタングリコレート類等が挙げられる。
上記式で表されるテトラアルコキシチタンを実質的に溶媒で希釈することなく、そこに、「水」又は「水と水溶性溶媒との混合液」を添加して加水分解を行わせることが好ましい。かかる式で表されるテトラアルコキシチタンに水を加えることによってオリゴマー化を行うが、そのときのテトラアルコキシチタン側を実質的に溶媒で希釈しておかないことによって、製造工程における最後に溶媒の留去をする場合でも、オリゴマー化によって生じたアルコールの留去だけになり、コストダウン、環境負荷の低減に資するだけでなく、加水分解に対して安定であるが触媒活性は低下しない有機チタンオリゴマーを得ることができる。
上記式で表されるテトラアルコキシチタンに水を加えることによってオリゴマー化を行うが、そのときの水側は「水単独」であっても、「水と水溶性溶媒との混合液」であってもよい。「水と水溶性溶媒との混合液」における水溶性溶媒としては、使用する水が全て相溶できる溶媒であれば特に限定はないが、アルコール類、ケトン類、エーテル類等が挙げられ、特に好ましくはアルコール類である。かかる水溶性溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いられる。
かかるアルコール類としては特に限定はないが、分岐を有するアルキル基に水酸基が結合したアルコール類が好ましく、分岐を有する炭素数3〜12個のアルキル基に水酸基が結合した構造のアルコール類がより好ましく、ターシャリー(tert−)アルキルアルコールが特に好ましい。
具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、2−ペンチルアルコール、3−ペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール等が挙げられる。このうち、特に好ましくは、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、3−ペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等が挙げられ、沸点、引火点等の点から、最も好ましくは、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等が挙げられる。
上記式におけるアルキル基に水酸基が結合したアルコール類、すなわち、ROH、ROH、ROH又はROHも、アルキル基部位がチタンに結合したアルキル基と同じになるため、加水分解後の組成物の安定性等の点で好ましい。かかるアルコール類は1種単独で又は2種以上混合して用いられる。
上記式で表されるテトラアルコキシチタンに対する水の使用量は特に限定はないが、テトラアルコキシチタン1モル部に対して、水0.5モル部以上が好ましく、0.5〜0.9モル部がより好ましく、0.5〜0.83モル部が特に好ましく、0.5〜0.75モル部が更に好ましい。水の量によって、式(A)における「n」の値を適宜制御することができるので、水の量は好適なnの値になるように決められる。水の使用量が多すぎる場合は、nが大きくなりすぎて加水分解性が低くなりすぎる場合があり、少なすぎる場合は、オリゴマー化が不十分になり、加水分解性が高くなりすぎる場合がある。
また、テトラアルコキシチタンに加える「水と水溶性溶媒との混合液」に対する水の割合(水の濃度)については特に限定はないが、水10質量%以下が好ましく、2〜7質量%がより好ましく、3〜5質量%が特に好ましい。水の濃度が低すぎると、留去する必要がある溶剤量が多量になってしまうため、コスト的、環境上好ましくない場合がある。一方、水の濃度が高すぎると、上記式で表されるテトラアルコキシチタンに滴下した時、沈殿が生成してしまう場合がある。
テトラアルコキシチタンに対する、「水」又は「水と水溶性溶媒との混合液」の添加方法は特に限定はないが、テトラアルコキシチタンを攪拌しながら、−10〜100℃で1〜300分で添加することが好ましく、20〜50℃で30〜180分で添加することが特に好ましい。また、添加中又は添加後、−10〜200℃で0〜120分間加熱することが好ましく、50〜150℃で30〜90分間加熱することが特に好ましい。
その後、要すれば、「反応で生成するアルコール」及び/又は「水を希釈するために使用した水溶性溶媒」を留去する。
また、有機チタンオリゴマーの構造は、上記のような線状的な構造を有するものに限らず、二次元的にユニットが繋がっていくものであってもよい。例えば、下記式(C):
上記式(C)中、RおよびR’は、それぞれ、独立して、R、R、R及びRと同じ定義であり、p、qおよびrを合計すると、式(A)中のnとなる。
また、式(C)の有機チタンオリゴマーも、上記と同様にして製造することができる。
(光電変換層)
本発明に係る光電変換層は、色素を含有する。そして、好ましい形態によれば、さらに半導体を含有する。ここで、色素は、式(1)の色素(ペロブスカイト化合物)を含む。また、光電変換層は、色素を担持した半導体を含有する半導体層からなることが好ましい。
(半導体)
半導体は、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等を使用することができる。
好ましい半導体として、チタンの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、鉄の酸化物、タングステンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ハフニウムの酸化物、ストロンチウムの酸化物、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブの酸化物、またはタンタルの酸化物、カドミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化物、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。また、他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。より詳細には、当該半導体の具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。なかでも、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSが好ましく用いられ、TiOまたはNbがより好ましく用いられ、色素の吸着性が優れていることから、酸化チタン(TiO)がさらに好ましく用いられる。上述した半導体を単独で使用してもよく、または複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。さらに、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
加えて、TiOを半導体層に使用する場合に、TiOはアナターゼ型酸化チタンおよび/また誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンのいずれであってもよいが、アナターゼ型が最も好ましい。
半導体の形状としては、フィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状、平板状などが挙げられ特に制限されることはない。また、半導体層として、これらフィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状等の形状の半導体が凝集して形成された膜状のものを使用してもよい。また、この場合、予め色素が表面に被覆した半導体を使用しても、半導体からなる層を形成した後に色素を被覆してもよい。なお本発明の実施例では多孔質粒子状の酸化チタンを用いている。
半導体の形状が粒子状の場合は、一次粒子であって、かつ平均粒子径が1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることが好ましい。なお、上記半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。なお、本発明の実施例1〜3では、正孔輸送材料に有機塩基を混合した溶液を塗布する形で、正孔輸送層を形成すると共に半導体を処理し、実施例5以降では、正孔輸送層形成後の基板を有機塩基の含まれる溶液に浸漬する事で半導体を処理している。
(色素)
色素は、下記式(1):
で示されるペロブスカイト化合物を含む。色素は、半導体に担持され、かつ光照射時、光励起され起電力を生じ得る。上記式(1)のペロブスカイト化合物は、有機アンモニウム分子層(R〜R)と無機ハライド層(X〜X)とが交互に積層した超格子構造を形成し、無機ハライド(X〜X)の種類により低次元半導体、磁性体、発光体としての物性を示す。なお、光電変換層は、1種単独の色素を含んでもあるいは2種以上の色素を含んでもよい。後者の場合、光電変換層は、色素として式(1)のペロブスカイト化合物以外の色素を含んでもよいが、式(1)のペロブスカイト化合物のみを含むことが好ましい。
上記式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環基を表す。ここで、R〜Rは、同じであっても、あるいは互いに異なるものであってもよいが、R〜Rが同時に水素原子になることはない。好ましくは、R〜Rのうち、2または3個が水素原子であり、3個が水素原子であることがより好ましい。
上記式(1)中におけるアルキル基は、炭素鎖長1〜6の直鎖若しくは分岐状のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基などが挙げられる。これらのうち、ペロブスカイト構造の取りやすさ([(R)(R)(R)(R)N]の分子サイズ)などを考慮すると、炭素鎖長1〜4の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長1〜3の直鎖のアルキル基がより好ましい。
また、上記式(1)中におけるシクロアルキル基は、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基である。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長5〜7のシクロアルキル基が好ましい。
炭素原子数2〜6のポリエチレンオキシド基は、式:−(CHCHO)Hまたは式:−(CHCHO)CHまたは式:−CH(OCHCHHで表わされる基であり、好ましくは式:−CH(OCHCHHで表わされる基である。上記式において、xは、1〜3の整数であり、1〜2であることが好ましい。
炭素原子数4〜10の芳香環基は、特に制限されないが、置換もしくは無置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジン、チオフェン、フラン等が挙げられる。これらのうち、フェニル基が好ましい。
また、上記式(1)における「置換の」とは、上記例示したアルキル基、シクロアルキル基、芳香環基のうち、少なくとも1個以上の水素原子が他の置換基に置換されていることをいう。この際、置換基は、ペロブスカイト構造を損なわない限り、特に制限されず、アルキル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)などが挙げられる。上記置換基は、色素の他の構成要素、例えば、上記式(1)中の「M」や「X〜X」の大きさに応じて、適宜選択される。例えば、Mが鉛である場合には、ペロブスカイト構造の高い維持性を考慮すると、[(R)(R)(R)(R)N]の分子サイズが小さいことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基が置換基としてより好ましい。なお、場合によって存在する置換基は、置換する基と同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
上記R〜Rが水素原子でない場合の残りのR〜Rは、アルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオキシド基、芳香環基であることが好ましく、アルキル基、芳香環基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、であることが特に好ましい。
具体的には、上記式(1)中の[(R)(R)(R)(R)N]部分は、メチルアンモニウム(CHNH)、エチルアンモニウム(CNH)、メチルエチルアンモニウム(CHNH)、プロピルアンモニウム(CNH)、イソプロピルアンモニウム((CHCHNH)、ブチルアンモニウム(CNH)、ペンチルアンモニウム(C11NH)、ヘキシルアンモニウム(C13NH);シクロヘキシルアンモニウム(CNH);シクロヘキセニルエチルアンモニウム(CNH);メトキシエチルアンモニウム(CHOCNH);エトキシメチルアンモニウム(COCHNH);フェネチルアンモニウム(CNH);ベンジルアンモニウム(CCHNH);ベンジルアミノアンモニウム(NHCHNH)、アニリニウム、ピリジルアンモニウムであることが好ましく、メチルアンモニウム(CHNH)、エチルアンモニウム(CNH)、メチルエチルアンモニウム(CHNH)、プロピルアンモニウム(CNH)、イソプロピルアンモニウム((CHCHNH)であることがより好ましい。
上記式(1)において、X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。ここで、X〜Xは、同じであっても、あるいは互いに異なるものであってもよい。ここで、ハロゲン原子としては、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子がある。これらのうち、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
上記式(1)において、Mは、周期表の第14族原子または遷移金属を表す。これらのうち、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ユウロピウム(Eu)が好ましく、鉛(Pb)、スズ(Sn)がより好ましい。
すなわち、上記式(1)の色素の好ましい例としては、(CHNH)PbI、(CNH)PbI、(CHNH)PbI、(CNH)PbI、((CHCHNH)PbI、[(シクロプロピル)NH]PbI、[H(CHCHO)CH]PbI、[CNH]PbI、[(ピリジル)NH]PbI、[(ベンジル)NH]PbI、[(ベンジルアミノ)NH]PbI、(CHNH)PbI2.7Br0.3、(CNH)PbI2.7Br0.3、(CHNH)PbI2.7Br0.3、(CNH)PbI2.7Br0.3、((CHCHNH)PbI2.7Br0.3、[(シクロプロピル)NH]PbI2.7Br0.3、[H(CHCHO)CH]PbI2.7Br0.3、[CNH]PbI2.7Br0.3、[(ピリジル)NH]PbI2.7Br0.3、[(ベンジル)NH]PbI、[(ベンジルアミノ)NH]PbI2.7Br0.3、(CHNH)PbBr、(CNH)PbBr、(CHNH)PbBr、(CNH)PbBr、((CHCHNH)PbBr、[(シクロプロピル)NH]PbBr、[H(CHCHO)CH]PbBr、[CNH]PbBr、[(ピリジル)NH]PbBr、[(ベンジル)NH]PbBr3、[(ベンジルアミノ)NH]PbBr、(CHNH)PbICl、(CNH)PbICl、(CHNH)PbICl、(CNH)PbICl、((CHCHNH)PbICl、[(シクロプロピル)NH]PbICl、[H(CHCHO)CH]PbICl、[CNH]PbPbICl、[(ピリジル)NH]PbICl、[(ベンジル)NH]PbICl、[(ベンジルアミノ)NH]PbIClが好ましく、(CHNH)PbI、(CHNH)PbI2.7Br0.3、(CHNH)PbBr、(CHNH)PbIClがより好ましい。
(正孔輸送層)
本発明に係る正孔輸送層は、低分子量の正孔輸送材料を使用してもよいし、重合体(導電性高分子)を使用してもよいが、好ましい形態によれば、重合体(導電性高分子)を含有する。このように、正孔輸送層を重合体(導電性高分子)から形成することによって、曲げ耐性が向上するだけでなく、導電性高分子は伝導度が高いことから、セル性能も向上する。
正孔輸送層は、光励起によって酸化された色素に電子を供給して還元し、光電変換層(色素)との界面で生じた正孔を第二電極へ輸送する機能を有する。正孔輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空孔内部に充填されうることが好ましい。
低分子量の正孔注入輸送材料としては、たとえば、2,2’,7,7’−テトラキス[N,N−ジ(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)、4,4’−ビス{N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ}ビフェニル(NPB)、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−TAD)、トリ(p−ターフェニル−4−イル)アミン(p−TTA)、1,3,5−トリス[4−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m−MTDAPB)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)などを含む。
低分子量の正孔注入輸送材料する場合は、それを溶媒等に溶解させて適用させることが好ましく、溶媒としては、特に制限されないが、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)などが好適である。
また、重合体(導電性高分子)を使用する場合における正孔輸送層は、(i)重合体を用いて形成してもあるいは(ii)光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することにより形成されてもよいが、後者が好ましい。すなわち、本発明に係る正孔輸送層は、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することにより形成されることが好ましい。このように、導電性高分子前駆体をモノマーの形態で光電変換層上で重合して、正孔輸送層を形成すると、導電性高分子前駆体(モノマー)はポリマーに比して小さく、光電変換層の小さな凹部に十分量侵入した後重合されるため、正孔輸送層が光電変換層の凹凸に沿って形成される。ゆえに、正孔輸送物質は色素(ペロブスカイト化合物)と十分密着しているため、電荷がスムーズに光電変換層(色素)から正孔輸送層(正孔輸送物質)へと流れる。
前者(i)の場合に使用できる重合体は、特に制限されないが、結晶性が低く、電導度が高いものが好ましい。このような重合体を含む正孔輸送層を有する光電変換素子(太陽電池)は、より高い光電変換効率を発揮できる。
具体的には、以下に制限されないが、ポリ(フェニレン)およびその誘導体、ポリ(フェニレンビニレン)およびその誘導体(例えば、ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン(MEH−PPV)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、(PPV))、PPV共重合体、ポリ(チオフェン)およびその誘導体(例えば、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5,−ジイル)、レジオレギュラー、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5,−ジイル)、レジオランダム、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、レジオレギュラー、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、レジオランダム)、ポリ(チエニレンビニレン)およびその誘導体、ならびにポリ(イソチアナフテン)およびその誘導体といった共役高分子;有機金属高分子、ペリレンユニットを含むポリマー、ポリ(スクアライン)およびその誘導体、ならびにディスコティック液晶を含むポリマー;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが挙げられる。
このような重合体を適用する場合は、それを溶媒等に溶解させて適用させることが好ましく、溶媒としては、特に制限されないが、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンなどが好適である。
また、後者(ii)の場合には、導電性高分子前駆体(モノマー)は重合体に比して小さく、光電変換層の内部または表面の小さな凹部に十分量侵入した後重合される。このため、光電変換層での電子輸送物質は色素(ペロブスカイト化合物)と十分密着しているため、電荷がよりスムーズに色素から正孔輸送層(正孔輸送物質)へと流れる。したがって、本発明の光電変換素子は、より高い光電変換効率を発揮できる。また、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合するため、重合を光電変換層上で均一に行うことができる。
加えて、好ましい形態によれば、正孔輸送層には熱安定性に優れる重合体(高分子)が用いられているため、正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料の流出・散逸を防ぐことも可能である。このため、正孔輸送層が均一でかつ強固な重合膜として得られるため、光や熱などの刺激に対する安定性を向上できる。したがって、本発明の光電変換素子は、耐久性(特に熱安定性)に優れる。しかしながら、本発明は上記メカニズムに拘泥されるものではない。
以下では、正孔輸送層を導電性前駆体の好ましい実施形態について説明する。なお、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することにより、正孔輸送層を形成する具体的な方法については、後述の光電素子の製造方法の欄で詳細に述べる。
本発明に係る導電性高分子前駆体は、特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体が比較的低分子の単量体であると、光電変換層(特に色素層)内部にまで侵入しやすく、かつ光電変換層の色素が開始剤となり重合反応の起点としての役割も担うため、重合化した導電性高分子が色素を覆う量は、電解重合で重合した導電性高分子が色素を覆う量より多いと考えられる。
導電性高分子前駆体は、特に制限さない。具体的には、ピロール、およびその誘導体、アニリン、およびその誘導体、チオフェン、3−ヘキシルチオフェン、アセチレン、2,5−ジブロモ−3,4−(エチレンジオキシ)チオフェン(DBEDOT)、下記式(2):
で示される化合物、上記式(2)に示される繰り返し単位を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、ピロール、アニリン、3−ヘキシルチオフェン、2,5−ジブロモ−3,4−(エチレンジオキシ)チオフェン(DBEDOT)、上記式(2)に示される化合物、上記式(2)に示される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
上記式(2)中、Yは、S、NR、Oを表し、この際、Rは、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す。この際、Z〜Zは、同じであってもあるいは相互に異なるものであってもよい。
上記ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子がある。
上記炭素原子数1〜30の直鎖または分岐状のアルキル基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長6〜18の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記炭素鎖長3〜10のシクロアルキル基もまた特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長3〜6のシクロアルキル基が好ましい。
上記炭素原子数1〜30のアルコキシ基もまた特に制限されない。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、n−ヘンエイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜18のアルコキシ基が好ましく、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基がより好ましい。
当該炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基は、式:−(CHCHO)Hまたは式:−(OCHCHH[この際、xは、1〜15の整数である]で表わされる基である。これらのうち、xが3〜9であるものが好ましく、−(OCHCHHがより好ましい。
当該炭素原子数4〜30の環式化合物含有基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、チオフェン環、ポリチオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等のうち水素元素を一つ除いた基から導かれるものである。
また、上記「置換または無置換の」とは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、環式化合物含有基のうち、少なくとも1個以上の水素原子が他の置換基に置換されていることをいう。上記したアルキル基、上記したアルコキシ基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基)、および複素環基(例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、イソベンゾフラニル、クロメニル基、チエニル基、チアントレニル基、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フェノキサチイニル基)が炭素数の数を超えない範囲で置換されてもよい。以下同様である。なお、場合によって存在する置換基は、置換する基と同じとなることはない。例えば、Z〜Zがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
本発明に係る式(2)中におけるより好ましいZ〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜15のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビフェニル基、チオフェン基、ビチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたビチオフェン基である。
導電性高分子前駆体は、上記式(2)を有してポリマー化する役割を担うものであることが好ましい。そのため、上記式(2)を単独または複数種類の繰り返し単位が結合した多量体を用いてもよい。さらに、予め上記繰り返し単位を有するモノマーを必要に応じて、単独あるいは複数種類のモノマーと共に重合したプレポリマー(二量体以上の多量体やいわゆるオリゴマーを含む)であってもよい。この場合は、導電性高分子前駆体がプレポリマーであり、後述の合成方法でも記載するが、光電変換層に導電性高分子前駆体をプレポリマーの形態で塗布して、光電変換層上で化学重合して導電性高分子を形成する方法が簡便でありうる。
すなわち、本発明の導電性高分子前駆体は、以下の式:
で表される。
ここで上記式中、YおよびZ〜Zは上記式(2)と同一であり、mが単量体の結合数を表し、例えばm=2の場合は二量体、m=3の場合は三量体を示す。ここではmは1以上10以下の整数が好ましい。
さらに、以下、本発明に係る導電性高分子前駆体の特に好ましい形態を以下に示す。
上記のうち、導電性高分子前駆体がM1−1、M1−4、M1−26であることが好ましく、導電性高分子前駆体がM1−1であることが特に好ましい。すなわち、導電性高分子前駆体は、下記式(3):
で示されることが好ましい。
本発明に係る重合体(導電性高分子)は、上記導電性高分子前駆体を重合して得られることが好ましい。したがって、本発明に係る導電性高分子は、下記式(4):
ただし、Yは、S、NR、Oを表し、この際、Rは、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表し;Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す、に示される繰り返し単位を有することが好ましい。上記式(4)における好ましい置換基(Z〜Z)およびYは、上記式(2)と同様の定義である。
本発明に係る導電性高分子の重合度は、その合成方法により得られた重合体から把握することは困難である。しかしながら、重合後に形成された正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認については、当該重合体の溶解が可能なテトラヒドロフラン(THF)に正孔輸送層を浸漬させることで、その溶解度により判断できる。具体的には、25mLのサンプル瓶に化合物(導電性高分子)60mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると判断する。あるいは、分光学的見地からそれを判断してもよい。
正孔輸送層は、必要により、電解質、および添加剤からなる群から選択される少なくとも一つを成分として含んでもよい。
電解質としては、酸化還元電解質の分散物や支持電解質が挙げられる。当該酸化還元電解質としては、I/I 系、Br/Br 系、およびキノン/ハイドロキノン系等が用いられうる。上記酸化還元電解質の分散物は、公知の方法によって得ることができる。例えば、I/I 系の電解質は、ヨウ化物イオンとヨウ素とを混合することによって得ることができる。上記酸化還元電解質の分散物は、液状の形態で用いられる場合には液体電解質、室温(25℃)で固体の高分子に分散させた場合には固体高分子電解質、そしてゲル状物質に分散された場合にはゲル電解質と呼ばれる。正孔輸送層として液体電解質が用いられる場合には、その溶媒として電気化学的に不活性なものが用いられる。当該溶媒としては、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、およびエチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質が用いられる場合としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質が用いられる場合としては「表面科学」21巻、第5号第288〜293頁に記載の電解質が、それぞれ参照されうる。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON](リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。また、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。上記支持電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
または、導電性高分子前駆体としてプレポリマーを用いて光電変換層上で重合により重合体を形成する場合に、プレポリマーとともに溶媒、および必要に応じて重合触媒や重合速度調整剤等の添加剤を含む混合物を用いて重合を行ってもよい。このため、正孔輸送層は、必要により、重合触媒および重合速度調整剤等の添加剤を含んでもよい。
重合触媒としては、特に制限されないが、塩化鉄(III)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物等が挙げられる。なお、本発明では、上述したように、色素が重合開始剤として作用するため、重合触媒は添加する必要はないが、より重合を促進して進行させることが望ましい場合には、必要に応じて、重合触媒を添加してもよい。
また、重合速度調整剤は、重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸のような芳香族オキシスルホン酸等が用いられうる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物である場合には、イミダゾール等が用いられうる。
本発明に係る正孔輸送層は、固体正孔輸送層である。そのため、当該固体正孔輸送層の材料としては、上述した固体高分子電解質が好適に使用される。
上記に代えてまたは上記に加えて、正孔輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。上記添加剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
正孔輸送層に含まれる材料は、色素による光吸収を妨げないように、大きいバンドギャップを持つことが好ましい。具体的には2eV以上のバンドキャップを有することが好ましく、2.5eV以上のバンドキャップを有することがさらに好ましい。また、正孔輸送層は、色素ホールを還元させるために低いイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。適用する色素に応じてイオン化ポテンシャルの値は異なるが、通常、4.5〜5.5eVであることが好ましく、4.7〜5.3eVであることがより好ましい。
本発明に係る正孔輸送層の平均厚みは、特に制限されないが、好ましくは5〜300nmであり、より好ましくは10〜150nmである。このような厚みであれば、光電変換層(色素)から電荷をよりスムーズに正孔輸送層(正孔輸送物質)へと流れる。また、上記したような厚みの正孔輸送層は十分な強度を有するため、光や熱などの刺激に対する安定性をより向上できる。
{光電変換素子の製造方法}
本発明の第二は、第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子の製造方法であって、前記第一電極を表面に備えた基板上に、電子輸送層として、有機チタンオリゴマー由来の塗膜を形成する工程と;前記電子輸送層上に、下記式(1):
ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表す、で示される色素を含む前記光電変換層を形成する工程と;前記光電変換層上に、正孔輸送層を形成する工程と;前記第二電極を形成する工程と;を有する、光電変換素子の製造方法である。
以下、本発明に係る光電変換素子の製造方法を各工程について詳説する。
(工程(1))
本工程では、基板上に第一電極を形成する工程(第一電極の形成工程)と、第一電極上に電子輸送層を形成する工程(電子輸送層の形成工程)と、電子輸送層上に光電変換層を形成する工程(光電変換層の形成工程)とに分けられる。以下、各工程について詳説する。
(第一電極の形成工程)
基材の上に第一電極を形成する方法としては、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。このような方法としては、例えば、スパッタ法やCVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法などが挙げられる。これらの方法により、ITO、FTO、SnOなどの酸化物半導体からなる薄膜を形成する。当該第一電極は、厚過ぎると光透過性が劣り、一方、薄過ぎると導電性が劣ってしまうことになる。このため、光透過性と導電性の機能を両立させることを考慮すると、第一電極は、0.03〜3μm程度の膜厚範囲であることが好ましい。
また、第一電極をスリット状に形成する場合は、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。具体例としては、エキシマレーザー、YAGレーザー、COレーザー、エアジェット、ウォータジェットによる加工、エッチング加工、機械的加工などが挙げられる。これにより、透明導電層は、複数の領域に分離することができる。スリットのピッチは、光電変換素子のセルのサイズに応じて、適宜設定することができる。
(電子輸送層の形成工程)
電子輸送層を形成する方法は、電子輸送層形成成分である電子輸送層前駆体を第一電極上に被覆させて必要により熱処理を行う方法が挙げられる。具体的には、第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上に電子輸送層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行して電子輸送層を形成する方法、電子輸送層形成用の塗布液を用いたインクジェット法やスピンコート法による塗布、原子層堆積(ALD)法が好ましい。なかでも、第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上に、電子輸送層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行して電子輸送層を形成する方法がより好ましい。ここで電子輸送層形成成分とは化学反応により電子輸送層となる化合物のことをいう。
本発明においては、上記のように、電子輸送層形成成分として、有機チタンオリゴマーを使用して塗膜を形成する。
なお、有機チタンオリゴマーを使用せずに電子輸送層を形成する場合、−Ti−O−結合を有しているが、未反応の酸化チタン前駆体等の有機物を含むことが多い。これに対し、本発明によれば、有機チタンオリゴマーを使用しているため、有機チタンオリゴマーから作製したチタン膜は既にTiOユニットが部分的に形成されているため、有機チタンモノマーから形成する場合に比べ、より緻密な酸化チタン膜が形成される。その結果、曲げ耐性が向上する。さらにその緻密膜に追従する形でペロブスカイト結晶が形成されるため、電子輸送層と光電変換層との密着性が向上し、ペロブスカイト結晶にクラックが生じにくくなり、セルの曲げ耐性が向上する。換言すれば、チタンモノマーを使用する場合は、チタンモノマー由来の電子輸送層の割れに影響され、ペロブスカイト結晶も割れやすくなり、曲げ耐性が低い。
有機チタンオリゴマーを溶解させる溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール)、THF、アセチルアセトンなどが好ましい。また、その場合は、前記溶媒に対して、0.5〜13モル濃度の電子輸送層形成成分(有機チタンオリゴマー)を含有させることが好ましい。なお、一般的には、電子輸送層形成用の塗布液を透明導電性基板上に塗布した後、直ちに、乾燥または/および焼結を行うのが、導電性向上の点から好ましい。これは、チタンモノマーの一種であるチタンアルコキシドは加水分解性が高く、溶液の安定性が悪いからである。これに対し、チタンオリゴマーの溶液の安定性は高いため、直ちに、乾燥または/および焼結を行う必要がなく、取扱い性も向上している。
上記電子輸送層形成用の塗布液を、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって塗布してもよい。
電子輸送層形成成分を焼成して電子輸送層を形成する焼成方法の条件は、使用する化合物の種類によって適宜選択するものであり、例えば焼成処理温度は100以上250℃未満が好ましく、120〜200℃がより好ましい。また、焼成処理時間は好ましくは0.5〜120分であり、より好ましくは1〜60分、さらに好ましくは5〜30分である。本発明ではフレキシビリティを求めるため、基板としてプラスチック等の耐熱性に劣るものを使用する場合であっても、有機チタンオリゴマーの焼結条件は、例えば、チタンキレート等と比較すると穏やかであるため、フレキシブルセルに容易に展開することができる。
上記は、あるいは、CVD法によって行ってもよく、CVD法は化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition)と呼ばれるもので、ガス状にした原料物質(気体、液体、固体)を装置内の反応室へ供給し、基板表面において化学反応(気相反応)を起こすことで、所望の酸化チタン層を基板上に堆積させて形成する方法である。CVD法では原料物質を化学的に活性させる(励起状態)にする必要があるために熱やプラズマ、光(レーザ光や紫外線等)が用いられ、各々熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法と呼ばれている。
あるいは、電子輸送層の形成する他の方法としてインクジェット法が挙げられる。電子輸送層形成用の塗布液を、インクジェット法により塗布する場合は、インクジェットヘッドは圧電素子方式であることが好ましく、吐出量や吐出回数は適宜選択される。
(光電変換層の形成工程)
光電変換層の作製方法は、好ましい形態によれば、電子輸送層上への半導体層の作製、および半導体の色素担持処理に大別される。以下、各工程を詳細に説明する。
[半導体層の作製方法]
以下、工程(1)における半導体層の作製方法について以下説明する。なお、本発明においては、半導体層を作製することは必須ではない。上述したように、本発明に係る好適な光電変換層は、表面に色素が担持された半導体を凝集したものである。
半導体層の作製方法は特に限定されず、当該半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性基板に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性基板上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性基板上に保持されていない場合には、半導体を導電性基板上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の作製方法の好ましい形態としては、上記導電性基板上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
半導体層が焼成により作製される場合、該半導体への色素担持処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
〈半導体含有塗布液の調製〉
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。この半導体微粉末はその平均粒子径が微細な程好ましく、その平均粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。ここで平均粒子径は顕微鏡観察により1000個の粒子を測定し、平均した値を採用する。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等などが用いられる。また、塗布液中には、増粘剤として、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体を含んでいてもよい。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。あるいは、半導体含有塗布液は、市販品を購入して準備してもよい。
〈半導体含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理〉
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性基板(電子輸送層;以下、同様)上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基板上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性基板上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の平均粒子径に対応するものである。
このようにして電子輸送層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性基板との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度が弱い。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空孔を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空孔にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空孔率(D)は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空孔率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空孔率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。また、多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも0.01μm以上が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
また、焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空孔率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、好ましくは100℃以上250℃未満の範囲であり、特に好ましくは120℃〜200℃の範囲である。得に、本発明ではフレキシビリティを求めるため、基板としてプラスチック等の耐熱性に劣るものを使用する場合、250℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。本発明の実施例では大気中で行っている。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
[色素の担持方法]
上記で形成された半導体層上に色素を担持することによって、半導体表面に色素が担持して、光電変換層を形成することができる。なお、本発明においては、半導体層は必須ではなく、電子輸送層上に色素を添加することによって適応することもできる。
ここで、色素は、上記式(1)の色素を単独で用いてもよいし、上記式(1)の色素を複数併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。好ましくは、上記に記載した式(1)の色素のみを使用する。
なお、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いてもよい。
上述した半導体層への色素の担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に色素を担持させるには、色素を適切な溶媒に溶解して色素溶液を調製し、当該色素溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法や、上記色素溶液をよく乾燥した半導体層上に塗布する方法が一般的である。後者の場合、塗布方法としては、特に制限されないが、滴下法、ディップ法、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法など公知の方法が挙げられる。ここで、色素を複数種併用したり、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬/塗布して作製することもできる。また、各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合等することにより作製してもよい。
また、空孔率の高い半導体の場合には、空孔に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空孔に吸着する前に、色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の処理は、前述のように色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行ってもよい。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入し、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特にそのようになる。
色素を溶解するのに用いる溶媒は、色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、色素の吸着等を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等が上げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド(DMF)ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
〈色素担持の条件〉
本発明に係る色素担持処理の条件は、特に制限されない。例えば、色素溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法の場合には、半導体を焼成した基板を色素含有溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制/防止する観点から、処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、処理時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
また、色素溶液をよく乾燥した半導体層上、あるいは、直接電子輸送層上に塗布する方法では、色素溶液を塗布し、熱処理した後、乾燥することが好ましい。ここで、熱処理条件は、特に制限されない。具体的には、熱処理を、好ましくは40〜500℃であり、より好ましくは60〜200℃に加熱した装置(例えば、ホットプレート)上に、好ましくは1〜300分間、より好ましくは5〜120分間、放置した後、乾燥する。このような熱処理/乾燥によって、半導体層上に塗布する場合は、色素が半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着・充填・担持等を充分に進行できる。また、上記条件であれば、色素の分解等により分解物が生成して、色素の吸着を妨害することを抑制/防止できる。
(工程(2))
本工程では、上記工程(1)で形成された光電変換層上に、低分子量の正孔輸送材料や、導電性高分子を塗布して正孔輸送層を形成する。あるいは、上記工程(1)で形成された光電変換層上で、導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。後述するように当該半導体層は多孔質体であることが好ましい。また、第一電極および第二電極に端子を付けて電流を取り出すことができる。
ここで、低分子量の正孔輸送材料や、導電性高分子を塗布して正孔輸送層を形成する方法は特に制限されない。上記工程(1)で形成された光電変換層上に、上記で説明した適当な溶媒に溶解させた低分子量の正孔輸送材料を、適宜、支持電解質等を組み合わせながら、従来公知の塗布手段(例えば、スピンコート)を用いて形成してもよい。また、上記工程(1)で形成された光電変換層上に、上記で説明した適当な溶媒に溶解させた重合体(導電性高分子)を、適宜、支持電解質等を組み合わせながら、従来公知の塗布手段(例えば、スピンコート)を用いて形成してもよい。
また、導電性高分子前駆体の重合方法も、特に制限されない。具体的には、(i)光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光化学重合法、(ii)化学重合法、(iii)少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法などが挙げられる。上記(i)の方法は、得られる光電変換素子の光電変換効率や耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性を向上)をより向上できる。また、上記(iii)の方法は、特に光照射と組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。得られる光電変換素子の光電変換効率、耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性)のさらなる向上を考慮すると、(i)の方法がより好ましく、酸化剤の存在下で光照射単独で導電性高分子前駆体を重合する光化学重合法が特に好ましい。
上記(i)において、正孔輸送層は、(i−1)導電性高分子前駆体は酸化剤と接触した状態で行う、即ち、酸化剤存在下において光電変換層に導電性高分子前駆体を接触した後、色素に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することによって、または(i−2)分離した状態で行う、即ち、第一電極と酸化剤を接触させ、かつ、光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、光電変換層に光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合する(機能分離型光化学重合)ことによって、形成されてもよい。このうち、得られる光電変換素子の光電変換効率、耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性を向上)、重合条件の設定の容易性を考慮すると、上記(i−1)が好ましい。すなわち、正孔輸送層は、酸化剤存在下で光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、色素に光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合することにより形成することが好ましい。
上記(i−1)の光化学重合法において、酸化剤の存在下で光照射単独で導電性高分子前駆体を重合する場合は、光照射により色素が励起され、励起された電子は酸化剤(例えば、過酸化水素)により消費される。これにより、色素はカチオン状態となり、カチオン状態の色素は導電性高分子前駆体より電子を抜き取り、導電性高分子前駆体がカチオン状態となる。カチオン状態となった導電性高分子前駆体は、それがトリガーとなることで重合が開始される。ここで、酸化剤が導電性高分子前駆体に対して高濃度で存在するような割合で酸化剤と導電性高分子前駆体とを混合することによって、カチオン状態の色素が効率よく導電性高分子前駆体から電子を抜き取るため、カチオン状態となった導電性高分子前駆体をトリガーとして重合をより速やかに開始することができる。以上のプロセスは電解重合のプロセスに比べ非常に早く進行するため重合時間を短くする事が可能であり、製造プロセスの簡略に非常に有利である。上記(i−1)のプロセスは、大面積の正孔輸送層をも容易に形成することが可能である。また、上記(i−1)の光化学重合法によると、色素が重合開始剤としての作用を奏しながら重合を進行して、導電性高分子を含む正孔輸送層を形成するため、外部電圧や溶媒和などの原因で色素が光電変換層から剥離しにくい。また、色素を劣化させないために低い電圧下での重合による十分量の導電性高分子を形成できない問題、低い電圧下での重合による長い重合時間による生産性の低下の問題、または大面積化の光電変換素子を製造する際に従来の電解重合では均一に電圧をかけることが困難になるため、素子全体に均一の導電性高分子を形成することが困難である問題を本発明では解決できる。したがって、光電変換効率及び耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性)の優れた光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
本工程(i−1)では、上記工程(1)で作製した光電変換層と、正孔輸送層を構成する導電性高分子前駆体と、を酸化剤存在下で接触させる。すなわち、光電変換層の半導体層が多孔質体でない場合は、酸化剤および導電性高分子前駆体と、必要により上記説明した電解質とを当該光電変換層上に形成する方法、または酸化剤および正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。また、光電変換層の半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の表面を正孔輸送層が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した色素と正孔輸送層とが酸化剤存在下で接触することが好ましく、具体的には、当該多孔質体の内部や隙間まで、前記正孔輸送層の前駆体および酸化剤と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布により導電性高分子を重合することが好ましい。
酸化剤としては、導電性高分子前駆体を重合できるものであれば特に限定されない。酸化剤の標準電極電位が励起した色素の酸化電位よりも高ければ電子を奪うことが可能である。一方、酸化剤の標準電極電位が高すぎると、導電性高分子前駆体(例えば、bis−EDOT)を直接酸化重合してしまい、色素近傍に均一な膜を形成することが困難になる可能性がある。このため、適度な標準電極電位を有する酸化剤で重合することが好ましい。
上記点を考慮すると、本発明に係る酸化剤は、−1.5〜+2.5Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することが好ましく、−0.5〜+2.0Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することがより好ましい。ここで、酸化剤の標準電極電位が上限以下であれば、重合をより効率的に進行させることができる。また、酸化剤の標準電極電位が下限以下であれば、反応(反応速度)の制御が容易であり、生産性に優れ、産業上好ましい。すなわち、このような標準電極電位(E (OX))(V)を有する酸化剤は、光照射時に色素で励起された電子をより効率よく消費できるため、導電性高分子前駆体の重合をより促進でき、また、色素近傍により均一な膜を形成することができる。本明細書において、「標準電極電位(E (OX))(V)」は、水溶液中における標準電極電位(25℃)を意味する。
本発明の正孔輸送層を形成させるために用いられる酸化剤としては、具体的には、過酸化水素(+1.763V)、金属塩、過酸化物、オゾン、酸素(+1.229V)、メタノール(+0.588V)などが挙げられる。なお、括弧内は、標準電極電位(E (OX))(V)を示す。中でも、材料自体の安定性の観点から、酸化剤が、過酸化水素、酸素、オゾン、金属塩、および過酸化物の少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、酸化剤は、光照射(自身が還元されること)により気体化合物または液体化合物となるような化合物であることがより好ましい。このように酸化剤が重合反応後に気体または液体になることによって、重合膜である正孔輸送層中に酸化剤が残らないため、得られる光電変換素子の耐久性をさらに向上できる。上記点を考慮すると、酸化剤は、過酸化水素、酸素、オゾンでありうる。なお、本明細書において、「気体化合物」とは、20℃、1atmの条件下で気体状である化合物を意味する。また、「液体化合物」とは、20℃、1atmの条件下で液体状である化合物を意味する。
酸化剤存在下で色素に光を照射すると、当該色素において励起された電子が酸化剤(例えば、過酸化水素/過酸化水素水など)により消費され、カチオン状態の色素がモノマーである導電性高分子前駆体の電子を引き抜き重合が開始されると考えられる。
上記過酸化物としては、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、硝酸類、硫酸類等が挙げられ、具体的には、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の無機過酸化物;クメンヒドロペルオキシド、ギ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ 2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシ イソプロピルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5,−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、二コハク酸ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。上記過酸化物は、合成してもあるいは市販品を使用してもよい。
上記金属塩としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、硝酸銀(AgNO)、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)等が挙げられる。
上記以外にも、−0.5〜+2.0(V)の標準電極電位(E (OX))を有する酸化剤を使用してもよく、このような例としては、メタノール(+0.588V)、酸素(+1.229V)などが使用できる。
上記酸化剤のうち、過酸化水素(+1.763V)、過マンガン酸カリウム、クメンヒドロペルオキシド、ギ酸(+0.034V)、塩化鉄(II)(−0.440V)、硝酸銀(AgNO)(+0.799V)、メタノール、酸素(+1.229V)、オゾンが好ましく、過酸化水素、メタノール、酸素(+1.229V)がより好ましく、過酸化水素が特に好ましい。すなわち、導電性高分子前駆体は、下記式(3):
で示され、かつ酸化剤は、過酸化水素であることが好ましい。
酸化剤の使用量は、光照射によりカチオン状態となった色素が効率よく導電性高分子前駆体から電子を抜き取り速やかに光重合反応が進行できる量であれば、特に制限されないが、光重合(仕込み)時の導電性高分子前駆体と酸化剤との混合比を下記数式(A)となるように調整することが好ましい。すなわち、正孔輸送層は、前記光電変換層を、導電性高分子前駆体と酸化剤とを下記数式(A):
上記数式(A)中、[Ox]は、酸化剤のモル濃度であり;[M]は、導電性高分子前駆体のモル濃度である、
の割合で含有する溶液に接触させた後、光を照射することによって形成されることが好ましい。このような導電性高分子前駆体に比して酸化剤を多く存在させると、光照射(導電性高分子前駆体の光化学重合)を行うことによって、光電解重合に比べて、均一な正孔輸送層を形成できるため、得られる光電変換素子は優れた耐久性を発揮できる。なお、[Ox]/[M]比が0.1以下であると、酸化剤が不足し、均一な正孔輸送層を形成することができない場合がある。[Ox]/[M]比は、好ましくは0.15〜300であり、より好ましくは0.2〜100である。
これらのうち、酸化剤および導電性高分子前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法、または前記正孔輸送層の前駆体および酸化剤と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布して導電性高分子前駆体を重合する方法がより好ましい。特に、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体であることが好ましいため、導電性高分子前駆体および酸化剤を含有する溶液を光電変換層に(例えば、浸漬により)塗布する方法、導電性高分子前駆体を含有する溶液および酸化剤を含有する溶液に光電変換層をいずれかの順番で光電変換層に塗布する方法が特に好ましい。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の組成は特に制限されない。具体的には、導電性高分子前駆体1モルに対して、支持電解質が1〜1000モル存在することが好ましい。
または、導電性高分子前駆体100質量部に対して、酸化剤が10〜10000質量部、支持電解質が100〜100000質量部、溶媒が5000〜200000質量部であることが好ましく、酸化剤が10〜1000質量部、支持電解質が500〜10000質量部、溶媒が10000〜1000000質量部であることがより好ましい。
また、前記溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、水、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、炭酸プロピレン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記溶液を光電変換層に塗布して正孔輸送層を形成する場合の塗布方法としては、具体的には、浸漬(ディッピング)、滴下、インクジェット、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
次に、酸化剤存在下で光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、酸化剤存在下で色素に光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。すなわち、酸化剤および正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマー(多量体)の形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液に光電変換層を含浸した状態で外部から色素に対して光を照射することが好ましい。また、当該溶液を光電変換層上に塗布した状態で外部から色素に対して光を照射してもよい。
本発明に係る製造方法において、光電変換層(特に光電変換層中の色素)に光を照射する条件は、特に制限されないが、照射する光の波長が色素の吸収波長を含むことが好ましい。具体的には、波長400nm以上、好ましくは400〜1100nm(または400nm超1100nm以下)、より好ましくは波長420nm超1100nm以下の光源を用いることが好ましい。また、光の強度は、10〜150mW/cmであることが好ましく、20〜80mW/cmであることがより好ましい。色素に光を照射する時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜15分間がより好ましい。400nm以上の波長の光を選択的に照射すると、それ以下の波長の光で生じるチタニア光触媒作用が抑制され、色素を分解の懸念が無くなり、厚い正孔輸送層を形成する為長時間の光照射する場合にも安定した特性の光電変換素子ができる。さらに、1100nmよりも長波の赤外光の照射を抑制する事は、過剰照射による加熱抑制を図れ、層間剥離を抑制でき、高い光電変換応率を得られると共に、上記式(2)を有する高分子を有する正孔輸送層を用いる場合には、1100nmを超える波長の光がこの高分子の吸収領域にかかることから生じる、高分子の分解などの副反応が抑制され、安定した特性が得られる事から好ましい。
色素に光を照射する波長を、400nm以下の波長を用いるとチタニアを励起してしまうため光触媒作用が働き色素を分解する。さらに、色素によって若干の差があるが長波長の光の方がよりチタニア細孔の奥まで光を透過するため、より均一に重合が進む。一方、光源の波長が長波長すぎてしまうと逆に色素の吸収が無くなり重合が進行しない。よって波長を上記範囲に設定している。また、光量については、上記と同様に光をチタニア細孔の奥まで透過させるために必要と思われる光の量として上記範囲に設定している。さらに照射時間については、この範囲内であれば十分に重合が進む時間を示している。
なお、本発明に係る光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、太陽光などが挙げられる。
以下の反応式で示すように、光電変換層に吸着している色素に光照射を行うと、光により色素が励起され、当該励起された電子は酸化剤により消費されるため色素がカチオン状態となる。このカチオン状態となった色素が導電性高分子前駆体から電子を抜き取ることで導電性高分子前駆体がカチオン化して重合開始剤としての役割を担うと考えられる。
これにより、光重合で導電性高分子を形成することができるため、電解重合に比べ重合時間を短縮することができ、容易に光電変換層(半導体層)の表面に十分量でかつ緻密に重合体の層を形成できる。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の塗布および/または含浸させる温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲に設定することが好ましく、一般的には、−10℃〜60℃である。
また、上記(i−2)の機能分離型光化学重合法は、上記工程(1)で形成した第一電極に酸化剤(電子受容体)を接触させる工程(2−1)と、導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(2−2)と、前記工程(1)、(2−1)及び(2−2)の後に、前記光電変換層に光を照射し前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(2−3)と、を含む。本形態により正孔輸送層を形成する場合には、導電性高分子前駆体と、酸化剤とが共存しないため、導電性高分子前駆体が重合した後に形成される導電性高分子を含む正孔輸送層中に酸化剤が残存しない。このため、光電変換素子の耐久性をより向上できる。
なお、上記(i−2)では、工程(2−3)で、導電性高分子前駆体が重合できる環境にあればよいため、工程(1)、および工程(2−1)/(2−2)の工程はどのような順序で行ってもよい。すなわち、工程(2−1)を先に行って、工程(1)を行ってもよいし、工程(1)を先に行って、工程(2−1)を行ってもよいし、両者を同時に行ってもよい。また、工程(1)は工程(2−1)の後、工程(2−2)の前に行っても、後に行っても、同時に行ってもよい。また、作製手順の簡便さの観点から、工程(2−1)/(2−2)の工程の前に工程(1)を行う事が好ましい。
図2Aおよび図2Bは、工程(1)〜(4)を説明するための模式断面図または模式上面図である。図2Aに示すように、工程(1)において、電子輸送層3上に光電変換層6を形成させる。工程(2−1)においては、酸化剤を第一電極2上に接触させる。これにより、第一電極2上に酸化剤が存在する状態になる。好適な形態では、図2AおよびBに示すように、酸化剤含有液は、素子の構成部材(電子輸送層、光電変換層)とは異なる位置の第一電極上に接触させる。このように素子の構成部分とは別に酸化剤を配置することによって、酸化剤の素子への影響を排除することができ、また、導電性高分子前駆体の重合後に、洗浄などによって酸化剤を容易に除去することができる。酸化剤の第一電極上への接触位置は特に限定されるものではないが、効率的に導電性高分子前駆体の重合が行われることから、素子の構成部材(電子輸送層または光電変換層)とある程度近い距離であることが好ましい。素子の構成部材と酸化剤との距離は、酸化剤含有溶液と第一電極との濡れ性、第一電極のシート抵抗などを考慮して適宜設定すればよい。なお、酸化剤溶液が素子の構成部材に接触しないように、第一電極上に両者の物理的接触を阻害する部材(例えば、テープ等)を設けてもよい(図2B参照)。
工程(2−1)
本工程では、上記工程(1)で形成された第一電極上に酸化剤を接触させる。基材と相対する第一電極上に電子輸送層が形成されている場合には、該電子輸送層上に酸化剤を接触させてもよい。
酸化剤の第一電極への接触は、特に限定されるものではないが、第一電極に塗布することが好ましい。塗布方法としては、具体的には、上記(i−1)と同様の塗布方法が使用できる。
酸化剤は、溶媒と混合して塗布することが好ましい。用いられる溶媒としては特に限定されず、水、アセトニトリル、キセノンランプ、エチレンカーボネート、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、アセトン、3−メトキシプロピオニトリル、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等が用いられる。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
酸化剤の溶媒中の含有量は特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体と酸化剤とを上記数式(A)の割合となるような酸化剤が含まれる溶液に接触させることが好ましい。[Ox]/[M]比は好ましくは0.15〜300であり、より好ましくは0.2〜100である。
工程(2−2)
工程(2−2)は、上記工程(1)で作製した光電変換層と、正孔輸送層を構成する導電性高分子の前駆体である導電性高分子前駆体と、を接触させる工程である。
導電性高分子前駆体を接触させる方法としては、特に限定されるものではないが、塗布で導電性高分子前駆体を含有する溶液を塗布する形態が好ましい。
導電性高分子前駆体を含有する溶液を光電変換層に塗布する場合の塗布方法としては、具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、インクジェット、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
導電性高分子前駆体を光電変換層と接触させる方法としては、光電変換層の半導体層が多孔質体でない場合は、導電性高分子前駆体と、必要により上記説明した電解質とを当該光電変換層上に形成する方法、または正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。光電変換層の半導体層が多孔質体でない場合は、光電変換層上に導電性高分子前駆体を含む層が形成されるが、かような形態であっても、導電性高分子前駆体の重合は問題なく進行する。
また、光電変換層の半導体層が多孔質体である場合は、多孔質体の表面を導電性高分子が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した色素と導電性高分子とが接触するように導電性高分子前駆体と光電変換層を接触させることが好ましい。具体的には、多孔質体の内部や隙間まで、導電性高分子前駆体と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透して、多孔質体の表面のほぼ全面を導電性高分子前駆体が被覆するように、含浸および/または塗布することが好ましい。したがって、導電性基板上の光電変換層を導電性高分子前駆体溶液に浸漬させる方法や、導電性高分子前駆体溶液を多孔質体が十分に被覆する量滴下する方法などが好ましい。
工程(2−2)において、導電性高分子前駆体は、色素を担持した半導体からなる光電変換層に侵入し、且つ、その上に存在していることが好ましいため、半導体層は多孔質体であることが好ましい。
これらのうち、導電性高分子の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法、または前記導電性高分子の前駆体と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布して導電性高分子前駆体を重合する方法がより好ましい。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の組成は特に制限されない。具体的には、導電性高分子前駆体1モルに対して、支持電解質が1〜1000モル存在することが好ましい。または、導電性高分子前駆体100質量部に対して、酸化剤が10〜10000質量部、支持電解質が100〜100000質量部、溶媒が5000〜200000質量部であることが好ましく、酸化剤が10〜1000質量部、支持電解質が500〜10000質量部、溶媒が10000〜1000000質量部であることがより好ましい。
また、溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
工程(2−3)
工程(2−3)は、工程(1)、(2−1)、(2−2)の後、色素に光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。具体的には、正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマー(多量体)の形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液に光溶液を光電変換層上に塗布した状態で外部から色素に対して光を照射することが好ましい。
この際、酸化剤存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させてもよいが、正孔輸送層中に酸化剤が残存しないと耐久性がより向上することを考慮すれば、酸化剤非存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させることが好ましい。ここで、酸化剤存在下とは、光電変換層に導電性高分子前駆体を接触させる際に導電性高分子前駆体と酸化剤とが物理的に接触している状態を意味し、具体的には、導電性高分子前駆体および酸化剤の混合物を光電変換層に接触させる形態を指し、酸化剤非存在下とは、導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させる際に導電性高分子前駆体と酸化剤とが物理的に接触していない状態を意味し、例えば、導電性高分子前駆体の塗布液に酸化剤を含有させない形態などが挙げられる。
本発明に係る製造方法において、光電変換層に光を照射する条件は、特に制限されず、光照射により光電変換層中に存在する色素や酸化チタンなどが励起される条件であればよく、紫外線、可視光線などを用いることができる。好ましくは、上記(i−1)と同様の照射条件が適用できる。照射する光の波長が色素の吸収波長を含むことが好ましい。具体的には、波長400nm以上、好ましくは波長420nm超の光源を用いることが好ましい。400nm以上の波長の光を選択的に照射すると、それ以下の波長の光で生じるチタニア光触媒作用が抑制され、色素分解の懸念が無くなり、厚い正孔輸送層を形成する為長時間の光照射する場合にも安定した特性の光電変換素子ができる。さらに、色素によって若干の差があるが長波長の光の方がよりチタニア細孔の奥まで光を透過するため、より均一に重合が進む。照射波長の上限としては特に限定されるものではないが、好ましくは1100nm以下の光源を用いることが好ましい。1100nmよりも長波の赤外光の照射を抑制する事は、過剰照射による加熱抑制を図れ、層間剥離を抑制でき、高い光電変換応率を得られると共に、式(2)の構成単位を有する高分子を有する正孔輸送層を用いる場合には、1100nmを超える波長の光がこの高分子の吸収領域にかかることから生じる、高分子の分解などの副反応が抑制され、安定した特性が得られる事から好ましい。また、光の強度は、1〜800mW/cmであることが好ましく、10〜200mW/cmであることがより好ましい。色素に光を照射する時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜20分間がより好ましい。また、光を照射する際、色素に対して光を照射するが、色素以外の部位に光が照射されても構わない。光量については、上記と同様に光をチタニア細孔の奥まで透過させるために必要と思われる光の量として上記範囲に設定している。さらに照射時間については、この範囲内であれば十分に重合が進む時間を示している。
なお、本発明に係る光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、太陽光などが挙げられる。
上記(ii)の化学重合法は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体を含む溶液を熱により重合することが好ましい。ここで、導電性高分子前駆体を溶解する溶媒としては、導電性高分子前駆体を溶解できるものであれば特に限定されないが、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、溶液中の導電性高分子前駆体の濃度は、特に制限されないが、重合のしやすさなどを考慮すると、好ましくは20〜0.01重量%、より好ましくは5〜0.1重量%である。
なお、上記溶液は、必要であれば、重合触媒をさらに含んでもよい。ここで、重合触媒は、特に制限されず、使用される導電性高分子前駆体の種類によって適宜選択されうる。例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
また、化学重合条件は、導電性高分子前駆体が重合できる条件であれば特に制限されず、使用される導電性高分子前駆体の種類によって適宜選択されうる。具体的には、化学重合温度は、好ましくは25〜120℃である。また、化学重合時間は、好ましくは1分〜24時間である。
上記(iii)の電解重合法は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体を、適当な溶媒に溶解し、これに必要に応じて上記した支持電解質、重合触媒、重合速度調整剤および添加剤の少なくとも一を添加して、電解重合溶液を作製する方法が好ましい。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体あるいはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極、電荷輸送層および光電変換層を形成した基板をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合溶液中の導電性高分子前駆体の濃度は、特に制限されないが、1×10−4〜1×10−2mol/L程度が好適である。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.1〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが望ましく、特に1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより望ましい。保持電圧は、−0.7〜+0.2Vであることが好ましく、−0.5〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
正孔輸送層中の導電性高分子前駆体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100重量%であることが好ましく、さらに90〜100重量%であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と有機塩基とを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。この際、支持電解質は、上記電解重合溶液の作製で使用されるのと同様の支持電解質が使用できる。支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、電解重合溶液中の支持電解質と、電荷再結合防止のための支持電解質とは、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶液中の支持電解質の濃度は、特に制限されないが、1×10−3〜20×10−3mol/L程度が好適である。また、有機塩基としては、特に制限されないが、tert−ブチルピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン等が挙げられる。有機塩基は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶液中の有機塩基の濃度は、特に制限されないが、20×10−3〜80×10−3mol/L程度が好適である。溶媒は、上記電解重合溶液の作製で使用されるのと同様の溶媒が使用できる。なお、電解重合溶液中の溶媒と、電荷再結合防止のための溶媒とは、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、正孔輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされてもよい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。電解重合では、導電性高分子前駆体由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、好ましい正孔輸送層としては吸光度が1.0以下であることが好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する正孔輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)(好ましくは、430nm以下の波長をカット)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に色素を吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、化学式(A)の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
また、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により上記溶媒を用いて公知の方法で洗浄する工程を行ってもよい。正孔輸送層を形成させた後、第二電極を形成させることから、正孔輸送層を形成させた半導体電極を洗浄することが好ましい。この際に用いられる洗浄溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
さらに、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により乾燥を行ってもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、一例を挙げると、25〜150℃、0.2〜24時間の条件である。
さらに、必要により、導電性高分子前駆体を光重合した導電性高分子を形成して正孔輸送層を光電変換層表面に設けた後、上記光電変換層を含浸および/または塗布するために使用する溶媒と、上記支持電解質および上記有機塩からなる群から選択される少なくとも一つと、を混合させた溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極を導電性高分子のドープ率向上とチタニアから正孔輸送層への逆電子移動防止の目的で−10〜70℃、0.1〜24時間浸漬させてもよい。その場合、浸漬させた後、自然乾燥で0.01〜24時間静置させて、後述の工程(3)を行うことが好ましい。
(工程(3))
本発明に係る光電変換素子の製造方法における工程(3)は、上記工程(2)の後、前記正孔輸送層上に第二電極を形成する工程である。
本発明に係る第二電極形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第二電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
上記したようにして得られる、正孔輸送層として重合体を用いた場合(具体的には、実施例4〜17)における本発明の光電変換素子は、効率よく光を吸収することができる。具体的には、光電変換素子の1000nmにおける吸光度(A1000)が、下記数式(B):
を満たす。上記数式(B)中、A1000は、1000nmにおける光電変換素子の吸光度であり;FTSCは、半導体層の膜厚(μm)である。
(太陽電池)
本発明の光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本発明の光電変換素子または本発明の方法によって製造される光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池、またその製造方法をも提供する。
本発明の太陽電池は、上記本発明の光電変換素子を有する。本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計ならびに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。本発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、正孔輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起し、励起子(正孔・電子対)を生成する。励起によって発生した一部の励起子は色素と半導体の界面で電荷分離し、電子は半導体に移動し、次いで電子輸送層、導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の電荷輸送性材料に供給される。また一部の励起子は、電子輸送層と色素との界面で電荷分離し、電子は電子輸送層に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の電荷輸送性材料に供給される。一方、半導体または電子輸送層に電子を移動させた色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。
(合成例1:色素(CHNHPbI)の作製)
24mlのメチルアミン(33wt% エタノール溶液)と10mlのヨウ化水素酸(57wt%水溶液)とを100mlのエタノールに溶かし、窒素雰囲気下、室温(25℃)にて撹拌した後、エバポレータにて濃縮乾固させ、化合物(CHNHI)を得た。次に、この化合物(CHNHI)とPbIとを、1:1のモル比で、γ−ブチロラクトン(γ−butyrolactone)に溶かし、60℃で、12時間撹拌して、色素(CHNHPbI)溶液を作製した。
(合成例2:色素(CHNHPbBr)の作製)
44mlの臭化水素酸(48wt% 水溶液)と、27.86mlのメチルアミン(40wt% メタノール溶液)とを、丸底フラスコ中0℃で2時間撹拌した。次に、この混合液を、50℃で1時間濃縮し、エタノールに再度溶かし、エーテルにて再結晶し、ろ過後、残留物を60℃、24時間の条件で乾燥して、化合物(CHNHBr)を得た。さらに、この化合物(CHNHBr)とPbBrとを、1:1のモル比で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、60℃で、12時間撹拌して、色素(CHNHPbBr)溶液を作製した。
(合成例3:色素(CHNHPbICl)の作製)
24mlのメチルアミン(33wt% エタノール溶液)と10mlのヨウ化水素酸(57wt%水溶液)とを100mlのエタノールに溶かし、窒素雰囲気下、室温(25℃)にて撹拌した後、エバポレ―タにて濃縮乾固させ、化合物(CHNHI)の白色粉末状結晶を得た。その後、この化合物(CHNHI)とPbClとを、3:1のモル比で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、60℃で、12時間撹拌して、色素(CHNHPbICl)溶液を得た。
(実施例1:光電変換素子SC−1の製造)
〜光電変換層の作製〜
酸化インジウムスズ(ITO)をコート(塗布量:基板1m当たり、7g)したポリエチレンナフタレート(PEN)基板(ITO/PEN基板)(フィルム厚み:200μm(基板の厚さ:199.5μm、ITOの厚さ:0.5μm 可視光領域における透過率は約85%)、シート抵抗:15Ω/□)を1.5cm×2.5cmの大きさに切り取り、アセトンで洗浄後、チタンオリゴマー溶液としてn−ブタノールで5倍の濃度(モル濃度)に希釈したPC600(マツモトファインケミカル社製)を15μL滴下し、2000rpmで40秒間スピンコート製膜した後、150℃で10分間加熱した。それにより、透明導電膜(ITO)上に厚み100nmの酸化チタンの塗膜からなる電子輸送層を形成した。なお、電子輸送層の空孔率C[%]は1.0体積%であった。
上記電子輸送層上に、酸化チタンペースト(PECC−01−06、ペクセルテクノロジーズ社製 平均粒子径50nm)を、スキージ法(塗布面積:25mm)により塗布した。得られた塗膜を150℃で15分間焼成して厚さ0.5μmの空孔率(D)が60体積%の酸化チタンの多孔質層(多孔質の半導体層)を形成した。なお、他の実施例、比較例の酸化チタンの多孔質層の空孔率(D)も60体積%であった。
その後、合成例1のCHNHPbI溶液を多孔質層上に25μL滴下し、1500rpmで30秒間スピンコート製膜を行った。その後、基板を100度に加熱したホットプレート上に45分間放置し、乾燥させ、光電変換層を作製した。
なお、第一電極を表面に備えた基板と、電子輸送層と、光電変換層とを合わせて、半導体電極とも称する。
〜正孔輸送層の作製〜
1mlのクロロベンゼン中に、2,2’,7,7’−テトラキス[N,N−ジ(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)を180mg溶解し、さらに1mlのアセトニトリルにLi[(CFSON]を170mg溶解した溶液をそれぞれ準備した。
次に、Spiro−OMeTADを溶解した溶液に、Li[(CFSON]を溶解した溶液37.5μlと、4−tert−ブチルピリジン17.5μlとを混合した。この溶液を光電変換層上に、25μL滴下し、3000rpmで30秒間スピンコート製膜を行った後、自然乾燥を行った。なお、正孔輸送層(spiro)の膜厚は100nmであった。また4−tert−ブチルピリジンは逆電子移動を防止させるために使用している。以下同様である。
〜第二電極の作製〜
得られた半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥させた後、さらに真空蒸着法で金を60nm蒸着して、第二電極を形成した。これにより、光電変換素子SC−1を得た。なお、この際の第二電極の表面抵抗は0.5Ω/□であった。
(実施例2:光電変換素子SC−2の製造)
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、前記光電変換層上に、1,2−ジクロロベンゼン1mlにポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(東京化成社製)を15mg溶解した溶液に、アセトニトリル1mL中にLi[(CFSON]28.3mgを溶解した溶液を6.8μL、4−tert−ブチルピリジン3.4μLをそれぞれ混合し、重合体溶液を得た。
次に、前記光電変換層上に、前記重合体溶液を25μl滴下し3000rpmで30秒間スピンコート製膜を行った後、自然乾燥を行った以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−2を製造した。なお、正孔輸送層(3−ヘキシルチオフェン)の膜厚は80nmであった。
(実施例3:光電変換素子SC−3の製造)
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、重合体溶液を以下のように作製した以外は、同様にして光電変換素子SC−3を作製した。
PEDOT:PSS分散液(シグマ社製:Orgacon(登録商標)N−1005)1mL中にLi[(CFSON]28.3mgを溶解した溶液を6.8μL、4−tert−ブチルピリジン3.4μLをそれぞれ混合し、重合体溶液を作製した。なお、正孔輸送層(PEDOT:PSS)の膜厚は80nmであった。
(実施例4:光電変換素子SC−4の製造;熱重合)
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、2,5−ジブロモ−3,4−(エチレンジオキシ)チオフェンの濃度が1wt%のエタノール溶液と5wt%のエタノール溶液とをそれぞれ調製し、前記1wt%のエタノール溶液を光電変換層上にスポイトで滴下して風乾後、前記5wt%のエタノール溶液を滴下して風乾した後、60℃に設定した乾燥機へ投入し、8時間の熱重合を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−4を製造した。このように濃度の異なる溶液を、二度に分けて滴下することで、多孔質半導体の細孔内を浸透させている。なお正孔輸送層の膜厚は30nm、A1000は0.13であった。
(実施例5:光電変換素子SC−5の製造;光電解重合)
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、以下のように作製した以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−5を製造した。
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−3(mol/l)の割合で含有し、Li[(CFSON]を0.1(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に、前記半導体電極を浸漬した。作用極を前記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から、キセノンランプから420nm以下の波長をカットするシャープカットフィルター(HOYA製:S−L42)を通した光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、)30分間電圧を保持した。その結果、600〜1100nmに新たな吸収が現れ、導電性高分子前駆体が重合して導電性高分子を形成していることを確認した。その後、重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、自然乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
次いで、Li[(CFSON]を15×10−3(mol/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を10分間浸漬させた後、自然乾燥を行った。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm、A1000は0.18であった。
(実施例6:光電変換素子SC−6の製造;光化学重合(機能分離型))
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、以下のように作製した以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−6を製造した。
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−2(モル/l)、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の割合で炭酸プロピレンに溶解して導電性高分子前駆体含有液を作製した。そして、光電変換層を十分に被覆する量で該溶液を光電変換層に滴下した。
一方、35wt%の過酸化水素水を1v/v%となるように炭酸プロピレンに混合し、その溶液を、ITO基板上を全面被覆する量滴下した。炭酸プロピレンに溶解した過酸化水素のモル濃度は0.11mol/Lであった。また、この際、導電性高分子前駆体溶液と、過酸化水素水を含有する炭酸プロピレン溶液とが混ざらないように、光電変換層と第一電極間に幅1mmのニトフロンテープを張り付けた。半導体電極の外側(半導体層側)から、キセノンランプから420nm以下の波長をカットするシャープカットフィルター(HOYA製:S−L42)を通した光を15分間照射し、光重合を行った(光強度22mW/cm)。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm、A1000は0.15であった。
次いで、Li[(CFSON]を15×10−3(mol/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を10分間浸漬させた後、自然乾燥を行った。
(実施例7:光電変換素子SC−7の製造)
光電変換素子SC−1の正孔輸送層の作製において、以下のように作製した以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−7を製造した。
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−3(mol/l)、Li[(CFSON]を0.1(mol/l)の割合でアセトニトリルに溶解して溶液を調製した後、30wt%の過酸化水素水を1v/v%となるように当該溶液に加え、上記作製した半導体電極を浸漬させた。このとき、上記溶液の過酸化水素濃度は0.098mol/Lであった。そして、半導体電極の外側(半導体層側)から、キセノンランプから420nm以下の波長をカットするシャープカットフィルター(HOYA製:S−L42)を通した光を2分間照射し、光重合を行った(光強度22mW/cm)。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm、A1000は0.16であった。
次いで、Li[(CFSON]を15×10−3(mol/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を10分間浸漬させた後、自然乾燥を行った。
(実施例8〜9:光電変換素子SC−8、9の製造)
光電変換素子SC−7の作製において、酸化剤をKMnO、クメンヒドロペルオキシドにそれぞれ変更した以外は同様にし、光電変換素子SC−8、SC−9を作製した。なお、SC−8の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.19、SC−9の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.16であった。
(実施例10:光電変換素子SC−10の製造)
光電変換素子SC−7の作製において、酸化剤として酸素を十分にバブリングしている状態で光重合を行った以外は同様にし、光電変換素子SC−10を作製した。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.17であった。
(実施例11:光電変換素子SC−11の製造)
光電変換素子SC−7の作製において、酸化剤として酸素をオゾンに変更した以外は同様にし、光電変換素子SC−11を作製した。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.18であった。
(実施例12〜16:光電変換素子SC−12〜16の製造)
光電変換素子SC−7の作製において、導電性高分子前駆体を、M−4、M−26、ピロール、アニリン、3−ヘキシルチオフェンにそれぞれ変更した以外は同様にし、光電変換素子SC−12〜16を作製した。なお、SC−12の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.20、SC−13の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.15、SC−14の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.21、SC−15の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.16、SC−16の正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.18あった。
(実施例17:光電変換素子SC−17の製造)
光電変換素子SC−7の作製において、400nm以上の光をカットした光源を使用した以外は同様にし、光電変換素子SC−17を作製した。なお、正孔輸送層の膜厚は30nm・A1000は0.15であった。
(実施例18:光電変換素子SC−18の製造)
光電変換素子SC−1の作製において、増感色素溶液として、合成例2のCHNHPbBr溶液を用いた以外は同様にし、光電変換素子SC−18を作製した。
(実施例19:光電変換素子SC−19の製造)
光電変換素子SC−1の作製において、増感色素溶液として、合成例3のCHNHPbICl溶液を用いた以外は同様にし、光電変換素子SC−19を作製した。
(実施例20〜21:光電変換素子SC−20、21の製造)
光電変換素子SC−1の作製において、チタンオリゴマー溶液をPC605、PC200(マツモトファインケミカル社製)にそれぞれ変更した以外は、同様にして光電変換素子SC−20、21を作製した。なお、電子輸送層の空孔率C[%]は、それぞれ、0.9体積%、1.5体積%であった。
(実施例22:光電変換素子SC−22の製造)
光電変換素子SC−1の作製において、多孔質半導体層を形成しなかった事以外は同様にして、光電変換素子SC−22を作製した。
(比較例1:光電変換素子SC−23の製造)
光電変換素子SC−1の光電変換層の作製において、電子輸送層を形成する材料としてチタンイソプロポキシドを用いた以外は同様にして光電変換素子SC−23を作製した。
(比較例2:光電変換素子SC−24の製造)
光電変換素子SC−1の光電変換層の作製において、色素として、D131(三菱製紙社製)を0.5mMとなるようにAN:t−BuOH=1:1に溶解し、その溶液に基板を3時間浸漬し、その後自然乾燥して光電変換層を作製した以外は、同様にして光電変換素子SC−24を作製した。
(比較例3:光電変換素子SC−25の製造)
光電変換素子SC−1の光電変換層の作製において、電子輸送層を形成する材料としてチタンイソプロポキシドを用い、色素として、D131(三菱製紙社製)を0.5mMとなるようにAN:t−BuOH=1:1に溶解し、その溶液に基板を3時間浸漬し、その後自然乾燥して光電変換層を作製した以外は、同様にして光電変換素子SC−25を作製した。
[光電変換素子の評価]
上記光電変換素子SC−1〜SC−25について、下記評価を行い、結果を下記表2に示す。
(初期光電変換効率の測定)
上記実施例および比較例で作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用いて、得られた光電変換素子に、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cmの擬似太陽光を照射した。そして、I−Vテスターを用いて、光電変換素子の室温での電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を測定した。これらの値を、下記数式(C)に当てはめて光電変換効率ηa(%)を求めた。なお擬似太陽光の照射は基板側から行っている。
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は曲線因子を示す。
(折り曲げ試験後の光電変換効率(維持率)の測定)
直径60mmのアルミ缶上に、ポリイミドテープでセルを固定し、大気中で、25℃、1時間放置した後、前述と同様にして、光電変換素子の光電変換効率ηb(%)を求めた。そして、初期の光電変換効率ηaに対する光劣化後の光電変換効率ηbの比率(ηb/ηa*100)を求めた。
1 基板、
2 第一電極、
3 電子輸送層、
4 色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (18)

  1. 第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子であって、
    前記色素が、下記式(1):
    ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表し;
    前記電子輸送層が、有機チタンオリゴマー由来の塗膜である、光電変換素子。
  2. 前記正孔輸送層が、導電性高分子を含有する、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記正孔輸送層が、前記光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することによって形成される、請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記正孔輸送層が、酸化剤存在下で、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、前記色素に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成される、請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 前記酸化剤が、過酸化水素、酸素、オゾン、金属塩または過酸化物である、請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記導電性高分子前駆体が、下記式(2):
    ただし、Yは、S、NR、Oを表し、この際、Rは、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表し;Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す、
    に示される繰り返し単位を有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記光の波長が、前記色素の吸収波長を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記導電性高分子前駆体が、下記式(3):
    で示され、かつ
    前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 第一電極、電子輸送層、色素を含有する光電変換層、正孔輸送層および第二電極を有する光電変換素子の製造方法であって、
    前記第一電極を表面に備えた基板上に、電子輸送層として、有機チタンオリゴマー由来の塗膜を形成する工程と;
    前記電子輸送層上に、下記式(1):
    ただし、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜10の芳香環含有基を表し、この際、R〜Rが同時に水素原子になることはなく;X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、およびMは、周期表の第14族原子または遷移金属を表す、で示される色素を含む前記光電変換層を形成する工程と;
    前記光電変換層上に、正孔輸送層を形成する工程と;
    前記第二電極を形成する工程と;
    を有する、光電変換素子の製造方法。
  10. 前記正孔輸送層が、導電性高分子を含有する、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記正孔輸送層が、前記光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することによって形成される、請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記正孔輸送層が、酸化剤存在下で、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、前記色素に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成される、請求項9〜11に記載の製造方法。
  13. 前記酸化剤が、過酸化水素、酸素、オゾン、金属塩または過酸化物である、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記導電性高分子前駆体が、下記式(2):
    ただし、Yは、S、NR、Oを表し、この際、Rは、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表し;Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは無置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す、
    に示される繰り返し単位を有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 前記光の波長が、前記色素の吸収波長を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記導電性高分子前駆体が、下記式(3):
    で示され、かつ
    前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子、または、請求項9〜16のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されてなる光電変換素子を有する、太陽電池。
  18. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子、または、請求項9〜16のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されてなる光電変換素子を有する、太陽電池の製造方法。
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