JP2016189390A - 光電変換素子 - Google Patents

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秀和 川▲崎▼
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一賀 午菴
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恒雄 柏木
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洋一 藤枝
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Abstract

【課題】光電変換効率に優れる光電変換素子を提供する。
【解決手段】基板1、第一電極2、半導体5および半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドット4を含有する光電変換層6、正孔輸送層7、ならびに第二電極8を有する光電変換素子10。量子ドットとして、下記式(1)で示される半導体ナノ粒子を用いる。

ただし、Xは、前記半導体に吸着しうる基を表し、Yは、前記半導体ナノ粒子に配位しうる基を表し、nは、1〜5の整数である。
【選択図】図2

Description

本発明は、光電変換素子に関する。
近年、地球温暖化問題を解決する手段として、化石燃料を使用することなく再生可能エネルギーの一つである太陽エネルギーを使用する太陽光発電技術が注目されている。当該太陽光発電技術のなかでも、色素増感型太陽電池は、クロロフィル色素が行う光誘起電子移動と同様のメカニズムで発電するため、安価で高性能なルーフ・トップ型の次世代を担う太陽電池の一つとして脚光を浴びている。
このような色素増感型太陽電池の一般的な構成は、基板、第一電極、増感色素が担持された半導体層(光電変換層)、正孔輸送層、および第二電極が順次積層されたものである。
このような構成を有する光電変換素子に対して、基板の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は第一電極に移動し、当該電子は、外部回路を通じて第二電極に移動して、正孔輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、正孔輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光エネルギーが電気エネルギーに変換されるのである。
例えば、特許文献1では、量子ドットがチタン酸化物で被覆されてなる量子ドット含有チタン化合物を増感色素として用いる光電変換素子が報告されている。
特開2013−136498号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の光電変換素子は光電変換効率が低いという問題がある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の量子ドットを増感色素として光電変換層に用いることによって、光電変換素子の光電変換効率を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、基板、第一電極、半導体および半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドットを含有する光電変換層、正孔輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子によって達成できる。
本発明によれば、光電変換素子の光電変換効率を向上できる。
図1Aは本発明に係る被覆量子ドットを示す概略図であり、図1Bは従来の量子ドット含有チタン化合物を示す概略図である。 本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。 工程(1)、(2−1)〜(2−3)、(3)を説明するための模式断面図である。 工程(1)、(2−1)〜(2−3)、(3)を説明するための模式上面図である。
本発明は、基板、第一電極、半導体および半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドットを含有する光電変換層、正孔輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子に関する。特に上記量子ドットは、半導体ナノ粒子が下記式(1)で示される化合物により被覆されてなる被覆量子ドットであることが好ましい。上記構成によって、光電変換素子の光電変換効率を向上できる。
上記特許文献1に記載の光電変換素子では、量子ドットをチタン酸化物で被覆した量子ドット含有チタン化合物を使用している。しかしながら、被覆に使用されたチタン酸化物は導電性を有するため、電子移動性が高い。このため、上記量子ドット含有チタン化合物を含む光電変換層に増感色素として酸化チタン層(半導体)に担持された場合には、図1Bに示されるように、電子が、半導体へのみならず、望ましくない場所、例えば、正孔輸送層にも移動する逆電子移動が起きてしまう。このため、上述したように、上記特許文献1に記載の光電変換素子(太陽電池)では、光電変換効率が低下するという問題がある。
これに対して、本発明は、光電変換層が半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドット、特に半導体ナノ粒子が下記式(1):
ただし、Xは、前記半導体に吸着しうる基を表し、Yは、前記半導体ナノ粒子に配位しうる基を表し、nは、1〜5の整数である、
で示される化合物により被覆されてなる被覆量子ドットを増感色素として含むことを特徴とする。なお、本明細書では、半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドットを単に「本発明に係る量子ドット」とも称する。同様にして、半導体ナノ粒子が上記式(1)の化合物により被覆されてなる被覆量子ドットを単に「本発明に係る被覆量子ドット」または「被覆量子ドット」とも称する。
本発明に係る量子ドットは、半導体として機能しかつ量子効果を有する。詳細には、本発明に係る量子ドットは、半導体に吸着(配位)できる官能基を有するため、光電変換層では増感色素および半導体双方として機能する。特に半導体ナノ粒子が上記式(1)の化合物により被覆されてなる被覆量子ドットを増感色素と使用する場合には、本発明に係る被覆量子ドットは、光電変換層中では図1Aに示されるような構造をとる。すなわち、被覆量子ドットの置換基「Y」は、半導体ナノ粒子(例えば、CdSe/ZnS)と相互作用して、半導体ナノ粒子に配位(吸着)(図1A中の「−Y’・・・」部分)して、本発明に係る被覆量子ドットを形成する。また、被覆量子ドットの置換基「X」は、半導体(例えば、酸化チタン)の官能基(例えば、水酸基)と相互作用して、半導体に配位(吸着)(図1A中の「−X’・・・」部分)して、半導体として機能すると同時に量子効果を発揮する。また、上記式(1)中の配位子(置換基「X」及び「Y」)が導電性の低いまたは絶縁性の基である場合には、上記式(1)の化合物は導電性が低くなる。このため、上記構成をとる量子ドットは、導電性の低さゆえに電子が正孔輸送層側には流れにくく、逆電子移動を抑制できる。なお、上記特許文献1によるように、配位子の変換の際にTi(OEt)等を前駆体として用いる場合には、励起電子が配位子を介して電荷輸送層に電荷移動してしまう(逆電子移動が起きてしまう)。また、上記式(1)中のnにより、被覆量子ドットと半導体との距離が規定されるが、nが1〜5と小さいため、被覆量子ドットは半導体と近接して存在する。このように、半導体ナノ粒子と正孔輸送層の間には式(1)の化合物(配位子)の層が存在するが、配位子が小分子であるため、トンネル効果により電子は効率よく半導体に移動するため、このような光電変換層を有する光電変換素子は、高い光電変換効率を発揮できる。
なお、本発明は、上記メカニズムに拘泥されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
{光電変換素子}
本発明に係る光電変換素子の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図2に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、電子輸送層3、光電変換層6、正孔輸送層7および対極である第二電極8により構成されている。ここで、正孔輸送層7は、固相であることが好ましく、重合体(導電性高分子)を含むことがより好ましい。また、光電変換層6は、半導体5および増感色素としての本発明に係る量子ドット(特に被覆量子ドット)4を含有する。なお、図2中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。なお、本発明の光電変換素子は、基板、第一電極、光電変換層、正孔輸送層および対極である第二電極が必須の構成要素として順次積層された構造である。このため、上記電子輸送層3は、存在しなくても、あるいは必要により図2に示されるように基板と第一電極との間、および/または第二電極の表面に形成されてもよい。
以下、本発明に係る光電変換素子の各構成要素および本発明に係る光電変換素子の製造方法について説明する。
(基板)
本発明に係る基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、透明基板が好ましく、表面に第一電極が形成された透明導電性基板がより好ましい。基板は、光透過率が10%以上であることがさらに好ましく、更により好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
当該光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
当該基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
当該基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。前者の剛性を有する基板では、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に特に好ましく適用することができる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
(第一電極)
本発明に係る第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、本発明に係る第一電極は、基板である透明基板の表面に設けられた透明導電性基板が好ましく、第一電極が表面に形成された基板を、ここでは透明導電性基板(または第一電極基板)とも称する。
透明導電性基板の平均厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜5μmの範囲が好ましい。また、透明導電性基板の表面抵抗は、50Ω/cm以下であることが好ましく、20Ω/cm以下であることがより好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm以下である。なお、透明導電性基板の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。透明導電性基板の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(第二電極)
本発明に係る第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第二電極は、正孔輸送層との接触性が良いことが好ましい。第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。また、第二電極の平均厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい。具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/□(square)以下であり、さらに好ましくは20Ω/□(square)以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。
(電子輸送層)
本発明に係る光電変換素子において、電子輸送層が、短絡防止手段、封止手段及び整流作用として、膜状(層状)をなし、第一電極と光電変換層(半導体層)との間に配置される。また、電子輸送層は、光照射時に光電変換層との界面での電荷分離が起こると考えられる。なお、本明細書では、電子輸送層が基板上に形成された第一電極(透明導電性基板)上に形成されたものを、導電性基板とも称する。
本発明に係る電子輸送層、光電変換層は、下述するように多孔質であることが好ましい態様であるが、この場合、電子輸送層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、電子輸送層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、電子輸送層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、電子輸送層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、短絡防止や整流作用といった効果をより向上することができる。ここで、電子輸送層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
当該電子輸送層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.001〜10μm程度であるのが好ましく、0.005〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
本発明に係る電子輸送層の構成材料としては、特に限定されないが、n型半導体が使用できる。例えば、無機物の場合、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。また、有機物の場合、フラーレンもしくはその誘導体(例えば、フェニル−C61−酪酸メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C61−酪酸n−ブチルエステル([60]PCBnB)、フェニル−C61−酪酸イソブチルエステル([60]PCBiB)、フェニル−C61−酪酸n−ヘキシルエステル([60]PCBH)、フェニル−C61−酪酸n−オクチルエステル([60]PCBO)、ジフェニル−C62−ビス(酪酸メチルエステル)(ビス[60]PCBM)、フェニル−C71−酪酸メチルエステル([70]PCBM)、フェニル−C85−酪酸メチルエステル([84]PCBM)、チエニル−C61−酪酸メチルエステル([60]ThCBM)、C60ピロリジントリス酸、C60ピロリジントリス酸エチルエステル、N−メチルフラロピロリジン(MP−C60)、(1,2−メタノフラーレンC60)−61−カルボン酸、(1,2−メタノフラーレンC60)−61−カルボン酸t−ブチルエステル)、オクタアザポルフィリン等、p型有機半導体化合物の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
特に正孔輸送層がp型半導体の場合、電子輸送層に金属を使用する場合には正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、電子輸送層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が多孔質半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで多孔質半導体層(光電変換層)から電子輸送層への電子移動効率を向上させることもできる。この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
この場合、当該酸化チタン層は、アナターゼ型酸化チタンおよび誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンのいずれであってもよい。
(光電変換層)
本発明に係る光電変換層は、半導体および本発明に係る量子ドット、特に本発明に係る被覆量子ドットを含有する。ここで、本発明に係る量子ドットは、増感色素として機能する。また、光電変換層は、量子ドットを担持した半導体を含有する半導体層からなることが好ましい。
(半導体)
半導体は、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等を使用することができる。
好ましい半導体として、チタンの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、鉄の酸化物、タングステンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ハフニウムの酸化物、ストロンチウムの酸化物、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブの酸化物、またはタンタルの酸化物、カドミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化物、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。また、他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。より詳細には、当該半導体の具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。なかでも、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSが好ましく用いられ、TiOまたはNbがより好ましく用いられ、本発明に係る量子ドット(色素;以下、同様)の吸着性が優れていることから、酸化チタン(TiO)がさらに好ましく用いられる。上述した半導体を単独で使用してもよく、または複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また、酸化チタン半導体に窒化チタン(Ti)(例えば、20質量%の窒化チタン)を混合して使用してもよい。さらに、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
加えて、TiOを半導体層に使用する場合に、TiOはアナターゼ型酸化チタンおよび/また誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンのいずれであってもよい。
半導体の形状としては、フィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状、平板状などが挙げられ特に制限されることはない。また、半導体層として、これらフィラー状、粒子状、粉末状、円錐状、柱状、管状等の形状の半導体が凝集して形成された膜状のものを使用してもよい。また、この場合、予め色素が表面に被覆した半導体を使用しても、半導体からなる層を形成した後に色素を被覆してもよい
半導体の形状が粒子状の場合は、一次粒子であって、かつ平均粒子径が1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることが好ましい。なお、上記半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
(量子ドット)
本発明に係る量子ドットは、半導体として機能しかつ量子効果を有する。好ましくは、本発明に係る量子は、半導体ナノ粒子が下記式(1):
で示される化合物により被覆されてなる被覆量子ドットである。本発明に係る被覆量子ドットは、光電変換層中では図1Aに示されるように、式(1)の化合物由来の置換基「X」が半導体(例えば、酸化チタン)の官能基(例えば、水酸基)と相互作用して、半導体に配位(吸着)(図1A中の「−X’・・・」部分)する。このため、本発明に係る被覆量子ドットは、半導体として機能すると同時に量子効果を発揮する。また、nが1〜5と小さいため、被覆量子ドットは半導体と近接して存在するため、トンネル効果により電子は効率よく半導体に移動するため、このような光電変換層を有する光電変換素子は、高い光電変換効率を発揮できる。また、本発明に係る被覆量子ドットは、蛍光強度の低下が少ない。
ここで、本発明に係る被覆量子ドットを構成する半導体ナノ粒子は、単一構造を有するものであってもあるいはコア/シェルの2層構造を有するものであってもよいが、コア/シェルの2層構造(コア/シェル構造)を有するものが好ましい。コア/シェル構造を有することにより、量子井戸が形成され量子閉じ込め効果により輝度が向上する。
なお、本明細書中、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子を、単に「コアシェル半導体ナノ粒子」とも称する。また、本明細書中、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子の表記法として、例えば、コア部がCdSe、シェル部がZnSの場合、「CdSe/ZnS」と表記する場合があり、このようなコアシェル半導体ナノ粒子を、「CdSe/ZnSコアシェル半導体ナノ粒子」と称する場合がある。
コアシェル半導体ナノ粒子のコア部の構成材料としては、以下のものを使用することができる。例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の長周期型周期表第14族元素の単体;リン(黒リン)等の長周期型周期表第15族元素の単体;セレン、テルル等の長周期型周期表第16族元素の単体;炭化ケイ素(SiC)等の複数の長周期型周期表第14族元素からなる化合物;酸化スズ(IV)(SnO)、硫化スズ(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S)、硫化スズ(IV)(SnS)、硫化スズ(II)(SnS)、セレン化スズ(II)(SnSe)、テルル化スズ(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の長周期型周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);硫化アルミニウム(Al)、セレン化アルミニウム(AlSe)、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム(GaSe)、テルル化ガリウム(GaTe)、酸化インジウム(In)、硫化インジウム(In)、セレン化インジウム(InSe)、テルル化インジウム(InTe)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の長周期型周期表第12族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化ヒ素(III)(As)、セレン化ヒ素(III)(AsSe)、テルル化ヒ素(III)(AsTe)、硫化アンチモン(III)(Sb)、セレン化アンチモン(III)(SbSe)、テルル化アンチモン(III)(SbTe)、硫化ビスマス(III)(Bi)、セレン化ビスマス(III)(BiSe)、テルル化ビスマス(III)(BiTe)等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化銅(I)(CuO)、セレン化銅(I)(CuSe)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化ニッケル(II)(NiO)等の長周期型周期表第10族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の長周期型周期表第9族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe)、硫化鉄(II)(FeS)等の長周期型周期表第8族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化マンガン(II)(MnO)等の長周期型周期表第7族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化モリブデン(IV)(MoS)、酸化タングステン(IV)(WO)等の長周期型周期表第6族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO)、酸化タンタル(V)(Ta)等の長周期型周期表第5族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化チタン(TiO、Ti、Ti、Ti等)等の長周期型周期表第4族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCrSe)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCrSe)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO)等が挙げられる。これらコア部の構成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、SnS、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As、As、AsSe、AsTe、Sb、Sb、SbSe、SbTe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;MgS、MgSe等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物が好ましい。さらに、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、ZnSe、CdO、CdS、CdSeがより好ましい。これらの物質は、毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性に優れている。これらの材料のうち、InP、CdSe、ZnSe、CdSは、発光の安定性の点で特に好ましい。なお、半導体ナノ粒子が単一構造を有する場合には、半導体ナノ粒子が上記コア部で構成されることが好ましい。
コア部の大きさは、特に限定されないが、コア部平均体積粒径が、0.1〜10nmであることが好ましく、0.1〜5nmであることがより好しい。
シェル部としては、コア部の保護膜として機能する材料であれば、特に制限はなく使用できる。シェル部は、バンドギャップ(禁制帯幅)が、コア部のバンドギャップよりも大きな半導体を含むことが好ましい。シェル部にこのような半導体を用いることによって、半導体ナノ粒子にエネルギー的な障壁が形成され、良好な発光性能を得ることができる。
シェルに好ましく用いられる半導体材料は、用いられるコアのバンドギャップにも依存するが、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaAs、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AlN、AlP、AlSbからなる群から選択される1種またはそれ以上の半導体、またはそれらの合金もしくは混晶が好ましく用いられる。これらシェル部の材料の中でも、輝度向上の観点から、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSeが好ましい。
なお、シェル部は、コア部が部分的に露出することによる弊害が生じない限り、コア部の全表面を完全に被覆するものでなくてもよく、コア部の少なくとも一部を被覆していればよい。また、コア/シェル構造は、少なくとも2種類の化合物で形成されていることが好ましく、2種類以上の化合物でグラジエント構造(傾斜構造)を形成していてもよい。
シェル部の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nmであることが好ましく、0.1〜5nmであることがより好ましい。
一般に、半導体ナノ粒子の平均粒径により発光色を制御することができ、被膜の厚さが上記範囲内の値であれば、被膜の厚さが原子数個分に相当する厚さから半導体ナノ粒子1個に満たない厚さであり、半導体ナノ粒子を高密度で充填することができ、十分な発光量が得られる。また、被膜の存在により、お互いのコア粒子の粒子表面に存在する欠陥、ダングリングボンドへの電子トラップによる非発光の電子エネルギーの転移を抑制でき、量子効率の低下を抑えることができる。
コアシェル半導体ナノ粒子の平均粒径の測定方法としては、公知の方法、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により半導体ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒径分布の数平均粒径として求める方法、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒径を求める方法、動的光散乱法による粒径測定装置(例えば、Malvern社製ZETASIZERNano Series Nano−ZS)を用いて測定する方法、X線小角散乱法により得られたスペクトルから半導体ナノ粒子の粒径分布シミュレーション計算を用いて粒径分布を導出する方法などを用いることができるが、本明細書においては、ランダムに抽出した所定数の半導体ナノ粒子をTEMで観察し、体積換算した粒径の平均値をとることで算出した平均体積粒径で表している。本実施形態で用いるコアシェル半導体ナノ粒子の平均体積粒径としては、具体的には1〜20nmの範囲内であることが好ましく、1〜10nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上述した半導体ナノ粒子の構成材料には、必要に応じて微量の各種元素を不純物としてドープすることができる。このようなドープ物質を添加することにより発光特性をより向上させることができる。
コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法、気相法等、従来行われている公知の任意の方法を用いることができる。
液相法の製造方法としては、沈殿法である、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法、ホットソープ法などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照)。
気相法の製造方法としては、対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照)、電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(例えば特表2003−515459号公報参照)、レーザーアブレーション法(例えば特開2004−356163号参照)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も好ましく用いられる。
コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法による製造方法が好ましい。
また、本実施形態で用いるコアシェル半導体ナノ粒子は、蛍光体としての機能を損なわない限り、合成過程で用いうる安定剤、界面活性剤、溶媒等、他の成分を含んでいてもよい。
また、本発明に係る被覆量子ドットでは、上記半導体ナノ粒子が下記式(1):
で示される化合物で被覆されてなる。
上記式(1)において、Xは、光電変換層を構成する半導体に吸着しうる基を表す。ここで、半導体に吸着しうる基は、半導体に吸着できる基であれば特に制限されず、半導体の種類などに応じて適宜選択できる。具体的には、Xは、トリアルコキシシリル基(−Si(R):Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルコキシ基である)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基(−OPO(OH))、シアノ酸基(−CH=C(CN)(COOH))またはスルホン酸基(−SOH)がありうる。これらのうち、導電性の低さ(絶縁性、ゆえに逆電子移動の抑制効果)、半導体への吸着向上効果などを考慮すると、Xは、トリアルコキシシリル基(−Si(R):Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルコキシ基である)であることが好ましい。ここで、トリアルコキシシリル基を表す式:−Si(R)において、Rは、炭素原子数1〜18のアルコキシ基である。この際、各Rは、同じであってもまたは相互に異なるものであってもよい。炭素原子数1〜18のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が挙げられる。これらのうち、導電性の低さ(絶縁性、ゆえに逆電子移動の抑制効果)、半導体への吸着向上効果などを考慮すると、Rは、炭素原子数1〜8のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
上記式(1)において、Yは、半導体ナノ粒子に配位しうる基を表す。ここで、半導体ナノ粒子に配位しうる基は、半導体ナノ粒子に配位できる基であれは特に制限されず、半導体ナノ粒子の種類などに応じて適宜選択できる。具体的には、Yは、スルフィド基(−SR’:R’は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、ホスホン酸基(−PO(OH))、またはホスフィニル基(−PH(O))である。これらのうち、導電性の低さ(絶縁性、ゆえに逆電子移動の抑制効果)、半導体ナノ粒子への配位向上効果などを考慮すると、Yは、スルフィド基(−SR’:R’は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である)、カルボキシル基であることが好ましく、スルフィド基(−SR’:R’は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である)であることが特に好ましい。ここで、スルフィド基を表す式:SR’において、R’は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。これらのうち、導電性の低さ(絶縁性、ゆえに逆電子移動の抑制効果)、半導体ナノ粒子への配位向上効果などを考慮すると、R’は、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましい。
上記式(1)において、nは、1〜5の整数である。ここで、被覆量子ドットと半導体との電子の受け渡し易さ(被覆量子ドットから半導体への電子の移動のしやすさ、ゆえに光電変換効率の向上効果)などを考慮すると、nは、1〜4の整数であることが好ましく、2〜3の整数であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
具体的には、上記式(1)の化合物の好ましい例としては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、(CHO)SiCSH)、カルボキシプロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCCOOH)、リン酸プロピルトリメトキシシラン(APS、(CHO)SiCOPO(OH))、シアノ酸プロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCCH=C(CN)(COOH)、スルホン酸プロピルトリメトキシシラン((CHO)SiCSOH)、カルボキシエチルシラントリオールのナトリウム塩などが挙げられる。半導体への吸着向上効果、半導体ナノ粒子に配位向上効果、導電性の低さ(絶縁性)などを考慮すると、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、(CHO)SiCSH)、メルカプトエチルトリメトキシシラン(MES、(CHO)SiCSH)、メルカプトメチルトリメトキシシラン(MMS、(CHO)SiCHSH)がより好ましく、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、(CHO)SiCSH)、メルカプトエチルトリメトキシシラン(MES、(CHO)SiCSH)がさらにより好ましく、メルカプトエチルトリメトキシシラン(MES、(CHO)SiCSH)が特に好ましい。
被覆量子ドットの製造方法(半導体ナノ粒子の上記式(1)の化合物による被覆方法)は、特に制限されないが、半導体ナノ粒子を溶媒に分散させ半導体ナノ粒子分散液を得、この半導体ナノ粒子分散液に上記式(1)の化合物を添加した後、反応させる方法が好ましい。以下、上記好ましい方法を説明するが、本発明は下記形態に限定されるものではない。
まず、半導体ナノ粒子を溶媒に分散させて、半導体ナノ粒子分散液を調製する。ここで、溶媒としては、特に制限されないが、疎水性溶媒であることが好ましい。疎水性溶媒としては、以下に制限されないが、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。または、例えば、Xがトリアルコキシシリル基(−Si(R))である式(1)の化合物を使用する場合には、半導体ナノ粒子を水などの水性溶媒に分散させてもよい。このような場合には、上記式(1)中の置換基「X」が加水分解して、隣接する式(1)の化合物の置換基「X」と連結して、ネットワークを形成する。このため、半導体ナノ粒子と半導体とをより強固に連結することができる。ここで、溶媒の使用量は、特に制限されないが、次工程の半導体ナノ粒子と上記式(1)の化合物の反応のしやすさなどを考慮すると、半導体ナノ粒子分散液における半導体ナノ粒子の濃度が0.01〜1質量%程度になるような量であることが好ましい。
次に、上記で調製された半導体ナノ粒子分散液に上記式(1)の化合物を添加するが、この際の半導体ナノ粒子分散液と、上記式(1)の化合物と、の混合比は、特に制限されない。半導体ナノ粒子分散液と、上記式(1)の化合物と、の混合比(=半導体ナノ粒子分散液:上記式(1)の化合物の混合体積比)は、好ましくは10〜500:1、より好ましくは50〜200:1である。このような混合比であれば、上記式(1)の化合物が適度に半導体ナノ粒子を被覆して、蛍光強度が高くかつ適切に半導体に吸着できる被覆量子ドットが得られる。
また、半導体ナノ粒子分散液と、上記式(1)の化合物と、の反応条件は、特に制限されない。例えば、反応温度は、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは10〜50℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1〜48時間であり、より好ましくは15〜24時間である。このような条件であれば、上記式(1)の化合物が適度に半導体ナノ粒子を被覆して、蛍光強度が高くかつ適切に半導体に吸着できる被覆量子ドットが得られる。なお、上記反応は、半導体ナノ粒子分散液と上記式(1)の化合物との混合物を撹拌しながら行ってもよい。
上記のようにして得られる、被覆量子ドットは、増感色素としての機能を損なわない限り、合成過程で用いうる安定剤、界面活性剤、溶媒、触媒等、他の成分を含んでいてもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、光励起によって酸化された量子ドット(色素)に電子を供給して還元し、光電変換層(量子ドット)との界面で生じた正孔を第二電極へ輸送する機能を有する。正孔輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空隙内部に充填されうることが好ましい。
本発明に係る正孔輸送層は、正孔輸送材料としてp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主成分として含む。ここで、p型化合物としては、芳香族アミン誘導体、ピリジン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、およびスチルベン誘導体等のモノマー、並びに前記モノマーを含むオリゴマー(特に、ダイマーおよびトリマー)、およびポリマーが用いられうる。前記モノマーおよびオリゴマーは比較的に低分子量であることから有機溶媒等の溶媒への溶解性が高く、光電変換層への塗布が簡便となりうる。一方、ポリマーについては、光電変換層にプレポリマーの形態で塗布して、光電変換層上で重合してポリマーを形成する方法が簡便でありうる。当該重合方法としては、特に制限はなく、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法などの公知の重合方法が適用できる。具体的には、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、重合触媒を用いる化学重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いることが好ましい。電解重合によって得られたp型化合物を含む光電変換素子は、特に高い開放電圧(Voc)を有しうる。
上記p型化合物としてのモノマーおよびオリゴマーは、特に制限されず、公知の化合物が使用できる。例えば、芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール;2,2’,7,7’−テトラキス(N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)アミン)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)等が挙げられる。また、米国特許第5,061,569号明細書に記載の2つの縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載のトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)等を用いてもよい。これらのうち、正孔輸送能に優れる芳香族アミン誘導体モノマー、特にトリフェニルジアミン誘導体を用いることが好ましい。なお、上述の化合物を高分子鎖に導入した、または高分子の主鎖とした高分子材料を用いてもよい。
電荷輸送剤としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体、導電性高分子が好ましい。このため、正孔輸送層を主として芳香族アミン誘導体、導電性高分子で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、正孔輸送層を塗布法により形成する場合に、正孔輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
上述したように、電荷輸送剤としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体、導電性高分子が好ましいが、導電性高分子が特に好ましい。すなわち、本発明に係る正孔輸送層は、導電性高分子を含有することが好ましい。具体的には、正孔輸送層は、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することにより形成されうる。導電性高分子前駆体(モノマー)はポリマーに比して小さく、光電変換層の小さな凹部に十分量侵入した後重合されるため、本発明によると、正孔輸送層が光電変換層の凹凸に沿って形成される。このため、正孔輸送物質は量子ドット(色素)と十分密着しているため、電荷がスムーズに光電変換層(色素)から正孔輸送層(正孔輸送物質)へと流れる。したがって、本発明の光電変換素子は、高い光電変換効率を発揮できる。また、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合するため、重合を光電変換層上で均一に行うことができる。このため、正孔輸送層が均一でかつ強固な重合膜として得られるため、光や熱などの刺激に対する安定性を向上できる。したがって、本発明の光電変換素子は、耐久性に優れる。しかしながら、本発明は上記メカニズムに拘泥されるものではない。
ここで、正孔輸送層は、導電性前駆体の重合によって光電変換層上に形成される。なお、光電変換層上で導電性高分子前駆体を重合することにより、正孔輸送層を形成する具体的な方法については、後述の光電素子の製造方法の欄で詳細に述べる。
本発明に係る導電性高分子前駆体は、特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体が比較的低分子の単量体であると、多孔質体の光電変換層内部にまで侵入しやすく、かつ光電変換層の量子ドット(色素)が開始剤となり重合反応の起点としての役割も担うため、重合化した導電性高分子が色素を覆う量は、電解重合で重合した導電性高分子が色素を覆う量より多いと考えられる。
導電性高分子前駆体は、特に制限されない。具体的には、ピロール、アニリン、チオフェン、3−ヘキシルチオフェン、アセチレン、下記式(2):
で示される化合物、上記式(2)に示される繰り返し単位を有する化合物などが挙げられる。これらのうち、ピロール、アニリン、3−ヘキシルチオフェン、上記式(2)に示される化合物(例えば、2,5−ジブロモ−3,4−(エチレンジオキシ)チオフェン))、上記式(2)に示される繰り返し単位を有する化合物が好ましく、上記式(2)に示される繰り返し単位を有する化合物がより好ましい。すなわち、導電性高分子前駆体は、上記式(2)に示される繰り返し単位を有することが好ましい。
上記式(2)中、Zは、硫黄原子(S)、NQ、または酸素原子(O)を表し、この際、Qは、水素原子または置換もしくは未置換のアルキル基を表す。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す。この際、R〜Rは、同じであってもあるいは相互に異なるものであってもよい。
上記ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子がある。
上記炭素原子数1〜30の直鎖または分岐状のアルキル基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長6〜18の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記炭素鎖長3〜10のシクロアルキル基もまた特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長3〜6のシクロアルキル基が好ましい。
上記炭素原子数1〜30のアルコキシ基もまた特に制限されない。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、n−ヘンエイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜18のアルコキシ基が好ましく、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基がより好ましい。
当該炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基は、式:−(CHCHO)Hまたは式:−(OCHCHH[この際、xは、1〜15の整数である]で表わされる基である。これらのうち、xが3〜9であるものが好ましく、−(OCHCHHがより好ましい。
当該炭素原子数4〜30の環式化合物基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、チオフェン環、ポリチオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等のうち水素元素を一つ除いた基から導かれるものである。
また、上記「置換または未置換の」とは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、環式化合物含有基のうち、少なくとも1個以上の水素原子が他の置換基に置換されていることをいう。上記したアルキル基、上記したアルコキシ基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基)、および複素環基(例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、イソベンゾフラニル、クロメニル基、チエニル基、チアントレニル基、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フェノキサチイニル基)が炭素数の数を超えない範囲で置換されてもよい。以下同様である。なお、場合によって存在する置換基は、置換する基と同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
本発明に係る式(2)中におけるより好ましいR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜15のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビフェニル基、チオフェン基、ビチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたビチオフェン基である。
導電性高分子前駆体は、上記式(2)を有してポリマー化する役割を担うものであることが好ましい。そのため、上記式(2)を単独または複数種類の繰り返し単位が結合した多量体を用いてもよい。さらに、予め上記繰り返し単位を有するモノマーを必要に応じて、単独あるいは複数種類のモノマーと共に重合したプレポリマー(二量体以上の多量体やいわゆるオリゴマーを含む)であってもよい。この場合は、導電性高分子前駆体がプレポリマーであり、後述の合成方法でも記載するが、光電変換層に導電性高分子前駆体をプレポリマーの形態で塗布して、光電変換層上で化学重合して導電性高分子を形成する方法が簡便でありうる。
すなわち、本発明の導電性高分子前駆体は、以下の式:
で表される。
ここで上記式中、ZおよびR〜Rは上記式(2)と同一であり、mが単量体の結合数を表し、例えばm=2の場合は二量体、m=3の場合は三量体を示す。ここではmは1以上10以下の整数が好ましい。
さらに、以下、本発明に係る導電性高分子前駆体の特に好ましい形態を表1に示す。
上記のうち、導電性高分子前駆体がM1−1、M1−4、M1−26であることが好ましく、導電性高分子前駆体がM1−1であることが特に好ましい。すなわち、導電性高分子前駆体は、下記式(3):
で示されることが好ましい。
本発明に係る重合体(導電性高分子)は、上記導電性高分子前駆体を重合して得られることが好ましい。したがって、本発明に係る導電性高分子は、下記式(4):
ただし、Zは、硫黄原子(S)、NQ、または酸素原子(O)を表し、この際、Qは水素原子またはアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す、
に示される繰り返し単位を有することが好ましい。上記式(4)における好ましい置換基(R〜RおよびZ)は、上記式(2)と同様である。
本発明に係る導電性高分子の重合度は、その合成方法により得られた重合体から把握することは困難である。しかしながら、重合後に形成された正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認については、当該重合体の溶解が可能なテトラヒドロフラン(THF)に正孔輸送層を浸漬させることで、その溶解度により判断できる。具体的には、25mLのサンプル瓶に化合物(導電性高分子)60mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると判断する。
正孔輸送層は、必要により、電解質、および添加剤からなる群から選択される少なくとも一つを成分として含んでもよい。
電解質としては、酸化還元電解質の分散物や支持電解質が挙げられる。当該酸化還元電解質としては、I/I 系、Br/Br 系、およびキノン/ハイドロキノン系等が用いられうる。上記酸化還元電解質の分散物は、公知の方法によって得ることができる。例えば、I/I 系の電解質は、ヨウ化物イオンとヨウ素とを混合することによって得ることができる。上記酸化還元電解質の分散物は、液状の形態で用いられる場合には液体電解質、室温(25℃)で固体の高分子に分散させた場合には固体高分子電解質、そしてゲル状物質に分散された場合にはゲル電解質と呼ばれる。正孔輸送層として液体電解質が用いられる場合には、その溶媒として電気化学的に不活性なものが用いられる。当該溶媒としては、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、およびエチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質が用いられる場合としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質が用いられる場合としては「表面科学」21巻、第5号第288〜293頁に記載の電解質が、それぞれ参照されうる。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON](リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。また、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。上記支持電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。上記支持電解質は電荷が高いため、光電変換層側に優先して存在するため、逆電子移動をさらに有効に抑制・防止できるため、好ましい。
または、導電性高分子前駆体としてプレポリマーを用いて光電変換層上で重合により重合体を形成する場合に、プレポリマーとともに溶媒、および必要に応じて重合触媒や重合速度調整剤等の添加剤を含む混合物を用いて重合を行ってもよい。このため、正孔輸送層は、必要により、重合触媒および重合速度調整剤等の添加剤を含んでもよい。
重合触媒としては、特に制限されないが、塩化鉄(III)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物等が挙げられる。なお、本発明では、上述したように、色素が重合開始剤として作用するため、重合触媒は添加する必要はないが、より重合を促進して進行させることが望ましい場合には、必要に応じて、重合触媒を添加してもよい。
また、重合速度調整剤は、重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸のような芳香族オキシスルホン酸等が用いられうる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物である場合には、イミダゾール等が用いられうる。
本発明に係る正孔輸送層は、固体正孔輸送層であることが好ましい。そのため、当該固体正孔輸送層の材料としては、上述した固体高分子電解質が好適に使用される。
上記に代えてまたは上記に加えて、正孔輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。上記添加剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
正孔輸送層に含まれる材料は、色素による光吸収を妨げないように、大きいバンドギャップを持つことが好ましい。具体的には2eV以上のバンドキャップを有することが好ましく、2.5eV以上のバンドキャップを有することがさらに好ましい。また、正孔輸送層は、色素ホールを還元させるために低いイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。適用する色素に応じてイオン化ポテンシャルの値は異なるが、通常、4.5〜5.5eVであることが好ましく、4.7〜5.3eVであることがより好ましい。
本発明に係る正孔輸送層の平均厚みは、半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の内部や隙間にも浸透しているため測定が容易ではない。
ここで、本発明の光電変換素子の製造方法は、特に制限されず、増感色素として本発明に係る量子ドットを使用する以外は公知の方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。以下、本発明の光電変換素子の製造方法の好ましい形態を説明する。なお、本発明は、下記形態に限定されない。
すなわち、第一電極を表面に備えた基板上に、半導体および本発明に係る量子ドットを含む前記光電変換層を形成する工程(1)と;前記光電変換層上に、導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(2)と;第二電極を形成する工程(3)と、を有する光電変換素子の製造方法である。
以下、本発明に係る光電変換素子の製造方法を各工程について詳説する。
(工程(1))
本工程では、第一電極を表面に備えた基板上に、半導体および上記式(1)の色素を含む前記光電変換層を形成する。当該工程(1)は、基板上に第一電極を形成する工程(第一電極の形成工程)と、第一電極上に電子輸送層を形成する工程(電子輸送層の形成工程)と、電子輸送層上に光電変換層を形成する工程(光電変換層の形成工程)とに分けられる。以下、各工程について詳説する。
(第一電極の形成工程)
基材の上に第一電極を形成する方法としては、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。このような方法としては、例えば、スパッタ法やCVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法などが挙げられる。これらの方法により、ITO、FTO、SnOなどの酸化物半導体からなる薄膜を形成する。当該第一電極は、厚過ぎると光透過性が劣り、一方、薄過ぎると導電性が劣ってしまうことになる。このため、光透過性と導電性の機能を両立させることを考慮すると、第一電極は、0.03〜3μm程度の膜厚範囲であることが好ましい。
また、第一電極をスリット状に形成する場合は、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。具体例としては、エキシマレーザー、YAGレーザー、COレーザー、エアジェット、ウォータジェットによる加工、エッチング加工、機械的加工などが挙げられる。これにより、透明導電層は、複数の領域に分離することができる。スリットのピッチは、光電変換素子のセルのサイズに応じて、適宜設定することができる。
(電子輸送層の形成工程)
本工程は、第一電極を表面に備えた基板上に電子輸送層を形成する工程であるが、省略することが可能である。電子輸送層を形成する方法は、電子輸送層形成成分である電子輸送層前駆体を第一電極上に被覆させて必要により熱処理を行う方法が挙げられる。具体的には、第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上に電子輸送層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行して電子輸送層を形成する方法、電子輸送層形成用の塗布液を用いたインクジェット法やスピンコート法による塗布、原子層堆積(ALD)法が好ましい。なかでも、第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上に、電子輸送層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行して電子輸送層を形成する方法がより好ましい。ここで電子輸送層形成成分とは化学反応により電子輸送層となる化合物のことをいう。
電子輸送層形成成分としては酸化チタン前駆体が好ましく、当該酸化チタン前駆体としては、加水分解により酸化チタンを生ずるものであることがより好ましい。具体的には、ハロゲン化チタン(三塩化チタン、四塩化チタンなど)、オルトチタン酸エステル(オルトチタン酸メチル、オルトチタン酸エチル、オルトチタン酸イソプロピル、オルトチタン酸ブチルなど)、チタンブトキシドダイマー、チタニウムステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ポリヒドロキシチタンステアレートタンアシレート;チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、テトラキスイソポロポキシチタンなどの有機チタン化合物等が挙げられる。このうちオルトチタン酸エステルが好ましい。これらの酸化チタン前駆体は、加水分解に先だって各種の配位子(例えばアセチルアセトン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、その他のアミン、ピリジンカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、その他のヒドロキシカルボン酸など)と混合し、酸化チタン前駆体の錯体を形成し、該錯体を加水分解に用いてもよい。また、これら焼成法に使用される酸化チタン前駆体は、溶媒に溶解させて溶液として使用することが好ましい。
酸化チタン前駆体を溶解させる溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール)、THF、アセチルアセトンなどが好ましい。
また、電子輸送層形成成分が溶液である場合は、前記溶媒に対して、0.5〜13モル濃度の電子輸送層形成成分を含有させることが好ましい。
なお、CVD法は化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition)と呼ばれるもので、ガス状にした原料物質(気体、液体、固体)を装置内の反応室へ供給し、基板表面において化学反応(気相反応)を起こすことで、所望の酸化チタン層を基板上に堆積させて形成する方法である。CVD法では原料物質を化学的に活性させる励起状態にする必要があるために熱やプラズマ、光(レーザ光や紫外線等)が用いられ、各々熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法と呼ばれている。
また、電子輸送層の形成する他の方法としてインクジェット法が挙げられる。電子輸送層形成用の塗布液を、インクジェット法により塗布する場合は、インクジェットヘッドは圧電素子方式であることが好ましく、吐出量や吐出回数は適宜選択される。または、上記電子輸送層形成用の塗布液を、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって塗布してもよい。
電子輸送層は、上記のように、電子輸送層形成用の塗布液を、透明導電性基板上に塗布した後、乾燥または/および焼結することで得られる。また、一般的には、電子輸送層形成用の塗布液を透明導電性基板上に塗布した後、直ちに、乾燥または/および焼結を行うのが、導電性向上の点から好ましい。なお、電子輸送層が酸化チタンを含むとは、電子輸送層が、−Ti−O−結合を有していればよく、本発明の光電変換素子の電子輸送層は、結合未反応の電子輸送層前駆体を含んでいてもよく、たとえば、未反応の酸化チタン前駆体等の有機物を含んでいてもよい。
電子輸送層形成成分を焼成して電子輸送層を形成する焼成方法の条件は、使用する化合物の種類によって適宜選択するものであり、例えば焼成処理温度は200〜700℃が好ましく、300〜600℃がより好ましい。また、焼成処理時間は好ましくは0.5〜120分であり、より好ましくは5〜30分である。
(光電変換層の形成工程)
光電変換層の作製方法は、通常、電子輸送層上への半導体層の作製、および半導体への本発明に係る量子ドットの担持処理に大別される。以下、各工程を詳細に説明する。
[半導体層の作製方法]
以下、工程(1)における半導体層の作製方法について以下説明する。上述したように、本発明に係る好適な光電変換層は、表面に色素が担持された半導体を凝集したものである。
半導体層の作製方法は特に限定されず、当該半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性基板に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性基板上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性基板上に保持されていない場合には、半導体を導電性基板上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の作製方法の好ましい形態としては、上記導電性基板上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
半導体層が焼成により作製される場合、該半導体への色素担持処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
〈半導体含有塗布液の調製〉
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。ここで1次粒子径は顕微鏡観察により1000個の粒子を測定し、平均した値を採用する。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等などが用いられる。また、塗布液中には、増粘剤として、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体を含んでいてもよい。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
〈半導体含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理〉
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性基板(電子輸送層;以下、同様)上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基板上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性基板上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして電子輸送層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性基板との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度が弱い。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空隙にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空孔率(D)は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空孔率(空隙率)は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。また、多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも0.01μm以上が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
また、焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、900℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200℃〜850℃の範囲であり、特に好ましくは450℃〜800℃の範囲である。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、250℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
上記で形成された半導体層上に本発明に係る量子ドットを担持することによって、半導体表面に量子ドットが担持して、光電変換層を形成する。なお、本発明に係る量子ドットは、上記にて説明したので、ここでは説明を省略する。
なお、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の量子ドットを混合して用いてもよい。
上述した半導体層への本発明に係る量子ドットの担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に本発明に係る量子ドットを担持させるには、本発明に係る量子ドットを適切な溶媒に溶解して本発明に係る量子ドット溶液を調製し、当該本発明に係る量子ドット溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法や上記本発明に係る量子ドット溶液をよく乾燥した半導体層上に塗布する方法が一般的である。後者の場合、塗布方法としては、特に制限されないが、滴下法、ディップ法、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法など公知の方法が挙げられる。ここで、本発明に係る量子ドットを複数種併用したり、各々の本発明に係る量子ドットの混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの本発明に係る量子ドットについて別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬/塗布して作製することもできる。また、各本発明に係る量子ドットについて別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に本発明に係る量子ドット等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記本発明に係る量子ドットを単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空隙に吸着する前に、本発明に係る量子ドット等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の処理は、前述のように本発明に係る量子ドットを適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、本発明に係る量子ドットが半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
本発明に係る量子ドットを溶解するのに用いる溶媒は、本発明に係る量子ドットを溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、本発明に係る量子ドットの吸着等を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。本発明に係る量子ドットの溶解において好ましく用いられる溶媒としては、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、プロピオニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等が上げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。なお、上述したように、本発明に係る被覆量子ドットは溶媒中に分散した形態で製造されうるが、このような場合には、前記半導体を焼成した基板をこの分散液に浸漬してもよい。
本発明に係る本発明に係る量子ドット担持処理の条件は、特に制限されない。例えば、本発明に係る量子ドット溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法の場合には、半導体を焼成した基板を本発明に係る量子ドット含有溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させることが好ましい。また、溶液中での本発明に係る量子ドットの分解等により生成して分解物が本発明に係る量子ドットの吸着を妨害することを抑制/防止する観点から、処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、処理時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
また、本発明に係る量子ドット溶液をよく乾燥した半導体層上に塗布する方法では、本発明に係る量子ドット溶液を塗布し、熱処理した後、乾燥してもよい。ここで、熱処理条件は、特に制限されない。具体的には、熱処理を、好ましくは40〜500℃、より好ましくは60〜200℃に加熱した装置(例えば、ホットプレート)上に、好ましくは1〜300分間、より好ましくは5〜120分間、放置した後、乾燥する。このような熱処理/乾燥によって、本発明に係る量子ドットが半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着・充填・担持等を充分に進行できる。また、上記条件であれば、本発明に係る量子ドットの分解等により分解物が生成して、本発明に係る量子ドットの吸着を妨害することを抑制/防止できる。
(工程(2))
本工程では、上記工程(1)で形成された光電変換層上に、導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。なお、下記工程(3)において、正孔輸送層は、本発明に係る量子ドットを担持した半導体からなる光電変換層に侵入し、且つ、その上に存在し、該正孔輸送層の上に第二電極が付着していることが好ましい。そのため、後述するように当該半導体層は多孔質体であることが好ましい。また、第一電極および第二電極に端子を付けて電流を取り出すことができる。
ここで、導電性高分子前駆体の重合方法は、特に制限されない。具体的には、(i)光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光化学重合法、(ii)化学重合法、(iii)少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法などが挙げられる。これらのうち、(i)、(iii)の方法が好ましい。当該方法によれば、半導体への結合に関与していない量子ドットの配位子(例えば、上記式(1)中の置換基「X」)近傍を起点にして導電性高分子前駆体の重合(正孔輸送層の形成)が行われる。このため、量子ドットおよび正孔輸送層の間に配位子分の層が存在するが、特に式(1)の量子ドットでは、配位子に小分子を用いているためトンネル効果により電荷輸送をさらに効率的に行うことが可能であり、発電電極としてより有効に作用できる。また、上記(i)の方法によれば、得られる光電変換素子の光電変換効率や耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性を向上)をより向上できる。また、上記(iii)の方法によると、特に光照射と組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。得られる光電変換素子の光電変換効率、耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性)のさらなる向上を考慮すると、(i)の方法がより好ましく、酸化剤の存在下で光照射単独で導電性高分子前駆体を重合する光化学重合法が特に好ましい。
上記(i)において、正孔輸送層は、(i−1)導電性高分子前駆体は酸化剤と接触した状態で行う、即ち、酸化剤存在下において光電変換層に導電性高分子前駆体を接触した後、本発明に係る量子ドットに光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することによって、または(i−2)分離した状態で行う、即ち、第一電極と酸化剤を接触させ、かつ、光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、光電変換層に光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合する(機能分離型光化学重合)ことによって、形成されてもよい。このうち、得られる光電変換素子の光電変換効率、耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性を向上)を考慮すると、上記(i−1)が好ましい。すなわち、正孔輸送層は、酸化剤存在下で光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、本発明に係る量子ドットに光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合することにより形成されることが好ましい。
上記(i−1)の光化学重合法において、酸化剤の存在下で光照射単独で導電性高分子前駆体を重合する場合は、光照射により本発明に係る量子ドットが励起され、励起された電子は酸化剤(例えば、過酸化水素)により消費される。これにより、本発明に係る量子ドットはカチオン状態となり、カチオン状態の本発明に係る量子ドットは導電性高分子前駆体より電子を抜き取り、導電性高分子前駆体がカチオン状態となる。カチオン状態となった導電性高分子前駆体は、それがトリガーとなることで重合が開始される。ここで、酸化剤が導電性高分子前駆体に対して高濃度で存在するような割合で酸化剤と導電性高分子前駆体とを混合することによって、カチオン状態の本発明に係る量子ドットが効率よく導電性高分子前駆体から電子を抜き取るため、カチオン状態となった導電性高分子前駆体をトリガーとして重合をより速やかに開始することができる。以上のプロセスは電解重合のプロセスに比べ非常に早く進行するため重合時間を短くする事が可能であり、製造プロセスの簡略に非常に有利である。上記(i−1)のプロセスは、大面積の正孔輸送層をも容易に形成することが可能である。また、上記(i−1)の光化学重合法によると、本発明に係る量子ドットが重合開始剤としての作用を奏しながら重合を進行して、導電性高分子を含む正孔輸送層を形成するため、外部電圧や溶媒和などの原因で本発明に係る量子ドットが光電変換層から剥離しにくい。また、本発明に係る量子ドットを劣化させないために低い電圧下での重合による十分量の導電性高分子を形成できない問題、低い電圧下での重合による長い重合時間による生産性の低下の問題、または大面積化の光電変換素子を製造する際に従来の電解重合では均一に電圧をかけることが困難になるため、素子全体に均一の導電性高分子を形成することが困難である問題を本発明では解決できる。したがって、光電変換効率及び耐久性(光や熱などの刺激に対する安定性)の優れた光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
本工程(i−1)では、上記工程(1)で作製した光電変換層と、正孔輸送層を構成する導電性高分子前駆体と、を酸化剤存在下で接触させる。すなわち、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、酸化剤および導電性高分子前駆体と、必要により上記説明した電解質とを当該光電変換層上に形成する方法、または酸化剤および正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。また、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の表面を正孔輸送層が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した本発明に係る量子ドットと正孔輸送層とが酸化剤存在下で接触することが好ましく、具体的には、当該多孔質体の内部や隙間まで、前記正孔輸送層の前駆体および酸化剤と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布により導電性高分子を重合することが好ましい。
酸化剤としては、導電性高分子前駆体を重合できるものであれば特に限定されない。酸化剤の準位が励起した本発明に係る量子ドットの順位よりも高ければ電子を奪うことが可能である。一方、酸化剤の準位が高すぎると、導電性高分子前駆体(例えば、bis−EDOT)を直接酸化重合してしまい、本発明に係る量子ドット近傍に均一な膜を形成することが困難になる可能性がある。このため、適度な標準電極電位を有する酸化剤で重合することが好ましい。
上記点を考慮すると、本発明に係る酸化剤は、−1.5〜+2.5Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することが好ましく、−0.5〜+2.0Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することがより好ましい。ここで、酸化剤の標準電極電位が上限以上であれば、重合をより効率的に進行させることができる。また、酸化剤の標準電極電位が下限以下であれば、反応(反応速度)の制御が容易であり、生産性に優れ、産業上好ましい。すなわち、このような標準電極電位(E (OX))(V)を有する酸化剤は、光照射時に本発明に係る量子ドットで励起された電子をより効率よく消費できるため、導電性高分子前駆体の重合をより促進でき、また、本発明に係る量子ドット近傍により均一な膜を形成することができる。本明細書において、「標準電極電位(E (OX))(V)」は、水溶液中における標準電極電位(25℃)を意味する。
本発明の正孔輸送層を形成させるために用いられる酸化剤としては、具体的には、過酸化水素(+1.763V)、金属塩、過酸化物、オゾン、酸素(+1.229V)、メタノール(+0.588V)などが挙げられる。なお、括弧内は、標準電極電位(E (OX))(V)を示す。中でも、材料自体の安定性の観点から、酸化剤が、過酸化水素、酸素、オゾン、メタノール、金属塩、および有機過酸化物の少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、酸化剤は、過酸化水素、酸素、メタノール、金属塩または有機過酸化物であることが好ましい。
ここで、酸化剤は、光照射(自身が還元されること)により気体化合物または液体化合物となるような化合物であることがより好ましい。このように酸化剤が重合反応後に気体または液体になることによって、重合膜である正孔輸送層中に酸化剤が残らないため、得られる光電変換素子の耐久性をさらに向上できる。上記点を考慮すると、酸化剤は、過酸化水素、酸素、オゾンでありうる。なお、本明細書において、「気体化合物」とは、20℃、1atmの条件下で気体状である化合物を意味する。また、「液体化合物」とは、20℃、1atmの条件下で液体状である化合物を意味する。
酸化剤存在下で本発明に係る量子ドットに光を照射すると、当該本発明に係る量子ドットにおいて励起された電子が酸化剤(例えば、過酸化水素/過酸化水素水など)により消費され、カチオン状態の本発明に係る量子ドットがモノマーである導電性高分子前駆体の電子を引き抜き重合が開始されると考えられる。
上記過酸化物としては、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、硝酸類、硫酸類等が挙げられ、具体的には、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の無機過酸化物;クメンヒドロペルオキシド、ギ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ 2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシ イソプロピルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5,−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、二コハク酸ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。上記過酸化物は、合成してもあるいは市販品を使用してもよい。
上記金属塩としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、硝酸銀(AgNO)、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)等が挙げられる。
上記以外にも、−0.5〜+2.0(V)の標準電極電位(E (OX))を有する酸化剤を使用してもよく、このような例としては、メタノール(+0.588V)、酸素(+1.229V)などが使用できる。
上記酸化剤のうち、過酸化水素(+1.763V)、過マンガン酸カリウム、クメンヒドロペルオキシド、ギ酸(+0.034V)、塩化鉄(II)(−0.440V)、硝酸銀(AgNO)(+0.799V)、メタノール、酸素(+1.229V)、オゾンが好ましく、過酸化水素、メタノール、酸素(+1.229V)がより好ましく、過酸化水素または酸素が特に好ましい。すなわち、導電性高分子前駆体は、下記式(3):
で示され、かつ酸化剤は、過酸化水素または酸素であることが好ましい。
酸化剤の使用量は、光照射によりカチオン状態となった本発明に係る量子ドットが効率よく導電性高分子前駆体から電子を抜き取り速やかに光重合反応が進行できる量であれば、特に制限されないが、光重合(仕込み)時の導電性高分子前駆体と酸化剤との混合比を下記数式(A)となるように調整することが好ましい。すなわち、正孔輸送層は、前記光電変換層を、導電性高分子前駆体と酸化剤とを下記数式(A):
上記数式(A)中、[Ox]は、酸化剤のモル濃度であり;[M]は、導電性高分子前駆体のモル濃度である、
の割合で含有する溶液に接触させた後、光を照射することによって形成されることが好ましい。このような導電性高分子前駆体に比して酸化剤を多く存在させると、光照射(導電性高分子前駆体の光化学重合)を行うことによって、光電解重合に比べて、均一な正孔輸送層を形成できるため、得られる光電変換素子は優れた耐久性を発揮できる。なお、[Ox]/[M]比が0.1以下であると、酸化剤が不足し、均一な正孔輸送層を形成することができない場合がある。[Ox]/[M]比は、好ましくは0.15〜300であり、より好ましくは0.2〜100である。
これらのうち、酸化剤および導電性高分子前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法、または前記正孔輸送層の前駆体および酸化剤と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布して導電性高分子前駆体を重合する方法がより好ましい。特に、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体であることが好ましいため、導電性高分子前駆体および酸化剤を含有する溶液を光電変換層に(例えば、浸漬により)塗布する方法、導電性高分子前駆体を含有する溶液および酸化剤を含有する溶液に光電変換層をいずれかの順番で光電変換層に塗布する方法が特に好ましい。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の組成は特に制限されない。具体的には、導電性高分子前駆体1モルに対して、支持電解質が1〜1000モル存在することが好ましい。または、導電性高分子前駆体100質量部に対して、酸化剤が10〜10000質量部、支持電解質が100〜100000質量部、溶媒が5000〜200000質量部であることが好ましく、酸化剤が10〜1000質量部、支持電解質が500〜10000質量部、溶媒が10000〜1000000質量部であることがより好ましい。
また、前記溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、水、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記溶液を光電変換層に塗布して正孔輸送層を形成する場合の塗布方法としては、具体的には、浸漬(ディッピング)、滴下、インクジェット、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
次に、酸化剤存在下で光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、酸化剤存在下で本発明に係る量子ドットに光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。すなわち、酸化剤および正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマー(多量体)の形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液に光電変換層を含浸した状態で外部から本発明に係る量子ドットに対して光を照射することが好ましい。また、当該溶液を光電変換層上に塗布した状態で外部から本発明に係る量子ドットに対して光を照射してもよい。
本発明に係る製造方法において、光電変換層(特に光電変換層中の本発明に係る量子ドット)に光を照射する条件は、特に制限されないが、照射する光の波長が本発明に係る量子ドットの吸収波長を含むことが好ましい。具体的には、波長400nm以上、好ましくは400〜1100nm(または400nm超1100nm以下)、より好ましくは波長420nm超1100nm以下の光源を用いることが好ましい。また、光の強度は、10〜150mW/cmであることが好ましく、20〜80mW/cmであることがより好ましい。本発明に係る量子ドットに光を照射する時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜15分間がより好ましい。400nm以上の波長の光を選択的に照射すると、それ以下の波長の光で生じるチタニア光触媒作用が抑制され、本発明に係る量子ドットを分解の懸念が無くなり、厚い正孔輸送層を形成する為長時間の光照射する場合にも安定した特性の光電変換素子ができる。さらに、1100nmよりも長波の赤外光の照射を抑制する事は、過剰照射による加熱抑制を図れ、層間剥離を抑制でき、高い光電変換応率を得られると共に、上記式(2)を有する高分子を有する正孔輸送層を用いる場合には、1100nmを超える波長の光がこの高分子の吸収領域にかかることから生じる、高分子の分解などの副反応が抑制され、安定した特性が得られる事から好ましい。
本発明に係る量子ドットに光を照射する波長を、520nm以下の波長を用いるとチタニアを励起してしまうため光触媒作用が働き本発明に係る量子ドットを分解する。さらに、本発明に係る量子ドットによって若干の差があるが長波長の光の方がよりチタニア細孔の奥まで光を透過するため、より均一に重合が進む。一方、光源の波長が長波長すぎてしまうと逆に本発明に係る量子ドットの吸収が無くなり重合が進行しない。よって波長を上記範囲に設定している。また、光量については、上記と同様に光をチタニア細孔の奥まで透過させるために必要と思われる光の量として上記範囲に設定している。さらに照射時間については、この範囲内であれば十分に重合が進む時間を示している。
なお、本発明に係る光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、LEDなどが挙げられる。
以下の反応式で示すように、光電変換層に吸着している本発明に係る量子ドット(下記反応式中の「色素」)に光照射を行うと、光により本発明に係る量子ドットが励起され、当該励起された電子は酸化剤により消費されるため本発明に係る量子ドットがカチオン状態となる。このカチオン状態となった本発明に係る量子ドットが導電性高分子前駆体から電子を抜き取ることで導電性高分子前駆体がカチオン化して重合開始剤としての役割を担うと考えられる。
これにより、光重合で導電性高分子を形成することができるため、電解重合に比べ重合時間を短縮することができ、容易に光電変換層(半導体層)の表面に十分量でかつ緻密に重合体の層を形成できる。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の塗布および/または含浸させる温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲に設定することが好ましく、一般的には、−10℃〜60℃である。
また、上記(i−2)の機能分離型光化学重合法は、上記工程(1)で形成した第一電極に酸化剤(電子受容体)を接触させる工程(2−1)と、導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(2−2)と、前記工程(1)、(2−1)及び(2−2)の後に、前記光電変換層に光を照射し前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(2−3)と、を含む。本形態により正孔輸送層を形成する場合には、導電性高分子前駆体と、酸化剤とが共存しないため、導電性高分子前駆体が重合した後に形成される導電性高分子を含む正孔輸送層中に酸化剤が残存しない。このため、光電変換素子の耐久性をより向上できる。
なお、上記(i−2)では、工程(2−3)で、導電性高分子前駆体が重合できる環境にあればよいため、工程(1)、および工程(2−1)/(2−2)の工程はどのような順序で行ってもよい。すなわち、工程(2−1)を先に行って、工程(1)を行ってもよいし、工程(1)を先に行って、工程(2−1)を行ってもよいし、両者を同時に行ってもよい。また、工程(1)は工程(2−1)の後、工程(2−2)の前に行っても、後に行っても、同時に行ってもよい。また、作製手順の簡便さの観点から、工程(2−1)/(2−2)の工程の前に工程(1)を行うことが好ましい。
図3Aおよび図3Bは、工程(1)〜(4)を説明するための模式断面図または模式上面図である。図3Aに示すように、工程(1)において、電子輸送層3上に光電変換層6を形成させる。工程(2−1)においては、酸化剤を第一電極2上に接触させる。これにより、第一電極2上に酸化剤が存在する状態になる。好適な形態では、図3AおよびBに示すように、酸化剤含有液は、素子の構成部材(電子輸送層、光電変換層)とは異なる位置の第一電極上に接触させる。このように素子の構成部分とは別に酸化剤を配置することによって、酸化剤の素子への影響を排除することができ、また、導電性高分子前駆体の重合後に、洗浄などによって酸化剤を容易に除去することができる。酸化剤の第一電極上への接触位置は特に限定されるものではないが、効率的に導電性高分子前駆体の重合が行われることから、素子の構成部材(電子輸送層または光電変換層)とある程度近い距離であることが好ましい。素子の構成部材と酸化剤との距離は、酸化剤含有溶液と第一電極との濡れ性、第一電極のシート抵抗などを考慮して適宜設定すればよい。なお、酸化剤溶液が素子の構成部材に接触しないように、第一電極上に両者の物理的接触を阻害する部材(例えば、テープ等)を設けてもよい(図3B参照)。
工程(2−1)
本工程では、上記工程(1)で形成された第一電極上に酸化剤を接触させる。基材と相対する第一電極上に電子輸送層が形成されている場合には、該電子輸送層上に酸化剤を接触させてもよい。
酸化剤の第一電極への接触は、特に限定されるものではないが、第一電極に塗布することが好ましい。塗布方法としては、具体的には、上記(i−1)と同様の塗布方法が使用できる。
酸化剤は、溶媒と混合して塗布することが好ましい。用いられる溶媒としては特に限定されず、水、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、アセトン、3−メトキシプロピオニトリル、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等が用いられる。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
酸化剤の溶媒中の含有量は特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体と酸化剤とを上記数式(A)の割合となるような酸化剤が含まれる溶液に接触させることが好ましい。[Ox]/[M]比は好ましくは0.15〜300であり、より好ましくは0.2〜100である。
工程(2−2)
工程(2−2)は、上記工程(1)で作製した光電変換層と、正孔輸送層を構成する導電性高分子の前駆体である導電性高分子前駆体と、を接触させる工程である。
導電性高分子前駆体を接触させる方法としては、特に限定されるものではないが、塗布で導電性高分子前駆体を含有する溶液を塗布する形態が好ましい。
導電性高分子前駆体を含有する溶液を光電変換層に塗布する場合の塗布方法としては、具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、インクジェット、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
導電性高分子前駆体を光電変換層と接触させる方法としては、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、導電性高分子前駆体と、必要により上記説明した電解質とを当該光電変換層上に形成する方法、または正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、光電変換層上に導電性高分子前駆体を含む層が形成されるが、かような形態であっても、導電性高分子前駆体の重合は問題なく進行する。
また、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体である場合は、多孔質体の表面を導電性高分子が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した本発明に係る量子ドットと導電性高分子とが接触するように導電性高分子前駆体と光電変換層を接触させることが好ましい。具体的には、多孔質体の内部や隙間まで、導電性高分子前駆体と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透して、多孔質体の表面のほぼ全面を導電性高分子前駆体が被覆するように、含浸および/または塗布することが好ましい。したがって、導電性基板上の光電変換層を導電性高分子前駆体溶液に浸漬させる方法や、導電性高分子前駆体溶液を多孔質体が十分に被覆する量滴下する方法などが好ましい。
工程(2−2)において、導電性高分子前駆体は、本発明に係る量子ドットを担持した半導体からなる光電変換層に侵入し、且つ、その上に存在していることが好ましいため、半導体層は多孔質体であることが好ましい。
これらのうち、導電性高分子の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法、または前記導電性高分子の前駆体と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布して導電性高分子前駆体を重合する方法がより好ましい。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の組成は特に制限されない。具体的には、導電性高分子前駆体1モルに対して、支持電解質が1〜1000モル存在することが好ましい。または、導電性高分子前駆体100質量部に対して、酸化剤が10〜10000質量部、支持電解質が100〜100000質量部、溶媒が5000〜200000質量部であることが好ましく、酸化剤が10〜1000質量部、支持電解質が500〜10000質量部、溶媒が10000〜1000000質量部であることがより好ましい。
また、溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
工程(2−3)
工程(2−3)は、工程(1)、(2−1)、(2−2)の後、本発明に係る量子ドットに光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。具体的には、正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマー(多量体)の形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液に光溶液を光電変換層上に塗布した状態で外部から本発明に係る量子ドットに対して光を照射することが好ましい。
この際、酸化剤存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させてもよいが、正孔輸送層中に酸化剤が残存しないと耐久性がより向上することを考慮すれば、酸化剤非存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させることが好ましい。ここで、酸化剤存在下とは、光電変換層に導電性高分子前駆体を接触させる際に導電性高分子前駆体と酸化剤とが物理的に接触している状態を意味し、具体的には、導電性高分子前駆体および酸化剤の混合物を光電変換層に接触させる形態を指し、酸化剤非存在下とは、導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させる際に導電性高分子前駆体と酸化剤とが物理的に接触していない状態を意味し、例えば、導電性高分子前駆体の塗布液に酸化剤を含有させない形態などが挙げられる。
本発明に係る製造方法において、光電変換層に光を照射する条件は、特に制限されず、光照射により光電変換層中に存在する本発明に係る量子ドットや酸化チタンなどが励起される条件であればよく、紫外線、可視光線などを用いることができる。好ましくは、上記(i−1)と同様の照射条件が適用できる。照射する光の波長が本発明に係る量子ドットの吸収波長を含むことが好ましい。具体的には、波長400nm以上、好ましくは波長420nm超の光源を用いることが好ましい。400nm以上の波長の光を選択的に照射すると、それ以下の波長の光で生じるチタニア光触媒作用が抑制され、本発明に係る量子ドット分解の懸念が無くなり、厚い正孔輸送層を形成する為長時間の光照射する場合にも安定した特性の光電変換素子ができる。さらに、本発明に係る量子ドットによって若干の差があるが長波長の光の方がよりチタニア細孔の奥まで光を透過するため、より均一に重合が進む。照射波長の上限としては特に限定されるものではないが、好ましくは1100nm以下の光源を用いることが好ましい。1100nmよりも長波の赤外光の照射を抑制する事は、過剰照射による加熱抑制を図れ、層間剥離を抑制でき、高い光電変換応率を得られると共に、式(2)の構成単位を有する高分子を有する正孔輸送層を用いる場合には、1100nmを超える波長の光がこの高分子の吸収領域にかかることから生じる、高分子の分解などの副反応が抑制され、安定した特性が得られる事から好ましい。また、光の強度は、1〜800mW/cmであることが好ましく、10〜200mW/cmであることがより好ましい。本発明に係る量子ドットに光を照射する時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜20分間がより好ましい。また、光を照射する際、本発明に係る量子ドットに対して光を照射するが、本発明に係る量子ドット以外の部位に光が照射されても構わない。光量については、上記と同様に光をチタニア細孔の奥まで透過させるために必要と思われる光の量として上記範囲に設定している。さらに照射時間については、この範囲内であれば十分に重合が進む時間を示している。
なお、本発明に係る光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、などが挙げられる。
上記(ii)の化学重合法は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体を含む溶液を熱により重合することが好ましい。ここで、導電性高分子前駆体を溶解する溶媒としては、導電性高分子前駆体を溶解できるものであれば特に限定されないが、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、溶液中の導電性高分子前駆体の濃度は、特に制限されないが、重合のしやすさなどを考慮すると、好ましくは20〜0.01質量%、より好ましくは5〜0.1質量%である。
なお、上記溶液は、必要であれば、重合触媒をさらに含んでもよい。ここで、重合触媒は、特に制限されず、使用される導電性高分子前駆体の種類によって適宜選択されうる。例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
また、化学重合条件は、導電性高分子前駆体が重合できる条件であれば特に制限されず、使用される導電性高分子前駆体の種類によって適宜選択されうる。具体的には、化学重合温度は、好ましくは25〜120℃である。また、化学重合時間は、好ましくは1分〜24時間である。
上記(iii)の電解重合法は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体を、適当な溶媒に溶解し、これに必要に応じて上記した支持電解質、重合触媒、重合速度調整剤および添加剤の少なくとも一を添加して、電解重合溶液を作製する方法が好ましい。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体あるいはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極、電荷輸送層および光電変換層を形成した基板をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合溶液中の導電性高分子前駆体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、0.5〜100mmol/L程度がより好ましく、1〜20mmol/L程度が特に好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.1〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが望ましく、特に1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより望ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
正孔輸送層中の導電性高分子前駆体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と有機塩基とを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。この際、支持電解質は、上記電解重合溶液の作製で使用されるのと同様の支持電解質が使用できる。支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、電解重合溶液中の支持電解質と、電荷再結合防止のための支持電解質と、は、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶液中の支持電解質の濃度は、特に制限されないが、0.1〜200mmol/L程度が好適であり、1〜50mmol/L程度がより好ましい。また、有機塩基としては、特に制限されないが、tert−ブチルピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン等が挙げられる。有機塩基は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶液中の有機塩基の濃度は、特に制限されないが、0.1〜200mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましい。溶媒は、上記電解重合溶液の作製で使用されるのと同様の溶媒が使用できる。なお、電解重合溶液中の溶媒と、電荷再結合防止のための溶媒と、は、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、正孔輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、導電性高分子前駆体あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、導電性高分子前駆体由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、好ましい正孔輸送層としては吸光度が1.0以下が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する正孔輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)(好ましくは、430nm以下の波長をカット)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、FTO導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に本発明に係る量子ドットを吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、化学式(A)の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
また、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により上記溶媒を用いて公知の方法で洗浄する工程を行ってもよい。正孔輸送層を形成させた後、第二電極を形成させることから、正孔輸送層を形成させた半導体電極を洗浄することが好ましい。この際に用いられる洗浄溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
さらに、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により乾燥を行ってもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、一例を挙げると、25〜150℃、0.2〜24時間の条件である。
さらに、必要により、導電性高分子前駆体を光重合した導電性高分子を形成して正孔輸送層を光電変換層表面に設けた後、上記光電変換層を含浸および/または塗布するために使用する溶媒と、上記支持電解質および上記有機塩からなる群から選択される少なくとも一つと、を混合させた溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極を導電性高分子のドープ率向上とチタニアから正孔輸送層への逆電子移動防止の目的で−10〜70℃、0.1〜24時間浸漬させてもよい。その場合、浸漬させた後、自然乾燥で0.01〜24時間静置させて、後述の工程(3)を行うことが好ましい。
(工程(3))
本発明に係る光電変換素子の製造方法における工程(3)は、上記工程(2)の後、前記正孔輸送層上に第二電極を形成する工程である。
本発明に係る第二電極形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第二電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
上記したようにして得られる、本発明の光電変換素子は、効率よく光を吸収することができる。具体的には、光電変換素子の1000nmにおける吸光度(A1000)が、下記数式(B):
を満たすことが好ましい。上記数式(B)中、A1000は、1000nmにおける光電変換素子の吸光度であり;FTSCは、半導体層の膜厚(μm)である。
(太陽電池)
本発明の光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本発明の光電変換素子または本発明の方法によって製造される光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本発明の太陽電池は、上記本発明の光電変換素子を有する。本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計ならびに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。本発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、正孔輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された本発明に係る量子ドットは照射された光もしくは電磁波を吸収して励起し、励起子(正孔・電子対)を生成する。励起によって発生した一部の励起子は本発明に係る量子ドットと半導体の界面で電荷分離し、電子は半導体に移動し、次いで電子輸送層、導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の電荷輸送性材料に供給される。また一部の励起子は、電子輸送層と本発明に係る量子ドットとの界面で電荷分離し、電子は電子輸送層に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の電荷輸送性材料に供給される。一方、半導体または電子輸送層に電子を移動させた本発明に係る量子ドットは酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
合成例1
CdSe/ZnS半導体ナノ粒子をトルエンに0.6質量%の濃度になるように分散させたCdSe/ZnS量子ドットのトルエン溶液(NN−LABS,LLC;平均体積粒径=4nm)300μlに、トリメトキシシリルプロピルスルフィド(MPS)を3μl加えて、22℃で24時間撹拌して反応を行うことによって、被覆量子ドット1を得た。得られた被覆量子ドット1について蛍光強度測定を行ったところ、3250であった。
なお、蛍光強度の測定は、蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「F−4500」)を用いて行った。測定する被覆量子ドット1の分散液は、トルエンを用いて、粒子モル濃度が133nmol/Lになるように調製した。励起波長450nm、フォトマル700Vとして、試料の蛍光極大波長550nmにおける蛍光強度を測定した。
合成例2
CdSe/ZnS半導体ナノ粒子をトルエンに0.6質量%の濃度になるように分散させたCdSe/ZnS量子ドットのトルエン溶液(NN−LABS,LLC;平均体積粒径=4nm)300μlに、トリメトキシシリルエチルスルフィド(MES)を3μl加えて、22℃で24時間撹拌して反応を行うことによって、被覆量子ドット1を得た。得られた被覆量子ドット2について、蛍光強度測定を行ったところ、3460であった。
合成例3
InP/ZnS半導体ナノ粒子をトルエンに0.6質量%の濃度になるように分散させたInP/ZnS量子ドットのトルエン溶液(NN−LABS,LLC;平均体積粒径=2nm)300μlに、トリメトキシシリルプロピルスルフィド(MPS)を3μl加えて、22℃で24時間撹拌して反応を行うことによって、被覆量子ドット3を得た。得られた被覆量子ドット3について蛍光強度測定を行ったところ、1150であった。
合成例4
上記合成例1において、トリメトキシシリルプロピルスルフィド(MPS)をテトラエトキシチタンに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、被覆量子ドット4を得た。得られた被覆量子ドット4について、蛍光強度測定を行ったところ、3050であった。
実施例1
基体としてガラス基板(光透過率:10%以上、厚さ:1.1mm)上に、第一電極としてフッ素ドープ酸化スズ(FTO)(光透過率:10%以上)をスパッタリングして透明導電層(FTO)(FTOの塗布量:7g/m基板、膜厚:1.1μm)を形成し、導電性ガラス基板(第一電極基板)を得た。得られた導電性ガラス基板の透明電極層(FTO)上に、半導体として酸化チタン(アナターゼ型(粉末状)、1次平均粒径:18nm(電子顕微鏡により観察した平均値))を用い、ポリエチレングリコールの分散液(酸化チタンの濃度:10質量%)である酸化チタンペーストをスクリーン印刷法により塗布(塗布面積:5mm×5mm)及び乾燥(120℃で3分間)して塗膜を形成した。この塗膜を、200℃で10分間、次いで500℃で15分間、空気中で焼成して、厚さ2μmの酸化チタンの半導体層(空孔率:60体積%)を透明導電膜(FTO)上に形成した(積層体1)。
上記積層体1を、上記合成例1の溶液中に室温(25℃)で3時間浸漬して、被覆量子ドット1(増感色素)の半導体への吸着処理を行い、光電変換層を形成して、半導体電極を作製した。
この半導体電極を、正孔輸送材料の原料となるモノマー(導電性高分子前駆体)である2,2’−ビス−3,4−エチレンジオキシチオフェン(M1−1)を1×10−3(mol/l)、及びLi[(CFSON]を0.1(mol/l)の割合でそれぞれ含有するアセトニトリル溶液に浸漬した。作用極を上記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.15Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度32mW/cm、520nm以下の波長をカット)、15分間電圧を保持して、重合(光電解重合)を行い、正孔輸送層を半導体電極表面に形成した。ここで、モノマー(導電性高分子前駆体)が重合して導電性高分子を形成していることを確認した。その後、重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
次いで、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を、Li[(CFSON]を15×10−3(mol/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/l)の割合で含有するクロロベンゼンとアセトニトリルとの混合溶液(クロロベンゼン:アセトニトリルの混合比=19:1(体積比)に10分間浸漬させた。
得られた半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥させた後、さらに真空蒸着法で金(Au)を90nm蒸着して、第二電極を形成した。これにより、光電変換素子1を得た。
実施例2
上記実施例1において、光電変換層を形成する際に合成例1の溶液の代わりに上記合成例2の溶液を用い、光電変換層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法に従って、光電変換素子2を作製した。
実施例3
上記実施例2において、以下のようにして、正孔輸送層を作製したこと以外は、実施例2と同様の方法に従って、光電変換素子3を作製した。
(正孔輸送層の作製)
導電性高分子前駆体M1−1(2,2’−ビス[3,4−(エチレンビスオキシ)チオフェン])を1×10-2(モル/l)、Li[(CF3SO22N]を0.1(モル/l)の割合で炭酸プロピレンに溶解して、導電性高分子前駆体含有液を調製した。光電変換層を十分に被覆する量のこの導電性高分子前駆体含有液を光電変換層に滴下した。一方、35wt%の過酸化水素水を1v/v%となるように炭酸プロピレンに混合し、その溶液をFTO基板上を全面被覆する量滴下した。また、この時導電性高分子前駆体溶液と過酸化水素水を含有する炭酸プロピレン溶液が混ざらないように、光電変換層と第一電極間に幅1mmのニトフロンテープを張り付けた。半導体電極の外側から、キセノンランプから420nm以下の波長をカットするシャープカットフィルター(HOYA製:S−L42)を通した光を3分間、光電変換層に照射し、重合(機能分離型光化学重合)を行った(光強度22mW/cm2)。 この条件で、光を照射したところ、600〜1100nmに新たな吸収が現れ、導電性高分子前駆体が重合していることを確認した。重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
実施例4
上記実施例2において、以下のようにして、正孔輸送層を作製したこと以外は、実施例2と同様の方法に従って、光電変換素子4を作製した。
(正孔輸送層の作製)
導電性高分子前駆体M1−1(2,2’−ビス[3,4−(エチレンビスオキシ)チオフェン])を1×10-3(mol/l)、Li[(CF3SO22N] を0.1(mol/l)の割合でアセトニトリルに溶解して溶液を調製した後、30wt%の過酸化水素水を1v/v%となるように当該溶液に加え、上記作製した半導体電極を浸漬させた。そして、半導体電極の外側から、キセノンランプから420nm以下の波長をカットするシャープカットフィルター(HOYA製:S−L42)を通した光を1分間照射し、重合(光化学重合)を行った。当該光照射の条件は、光強度22mW/cm2とした。こ の条件で、光を照射したところ、600〜1100nmに新たな吸収が現れ、導電性高分子前駆体が重合して導電性高分子を形成していることを確認した。その後、重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
実施例5
上記実施例4において、過酸化水素を添加する代わりに、導電性高分子前駆体M1−1及びLi[(CF3SO22N]を含むアセトニトリル溶液に、十分量の酸素(酸化剤)をバブリングさせながら光重合を行ったこと以外は、実施例4と同様の方法に従って、光電変換素子5を作製した。
実施例6
上記実施例5において、光電変換層を形成する際に合成例1の溶液の代わりに上記合成例3の溶液を用い、光電変換層を形成したこと以外は、実施例5と同様の方法に従って、光電変換素子6を作製した。
比較例1
上記実施例1において、被覆量子ドット1の代わりに被覆量子ドット4を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、光電変換素子7を得た。
比較例2
上記実施例6において、光電変換層を形成する際に合成例2の溶液の代わりに上記合成例4の溶液を用い、光電変換層を形成したこと以外は、実施例6と同様の方法に従って、光電変換素子8を作製した。
「色素増感光電変換素子の評価」
上記光電変換素子1〜8について、下記評価を行い、結果を下記表2に示す。
(初期光電変換効率の測定)
各光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用いて、得られた光電変換素子に、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度10mW/cmの擬似太陽光を照射した。そして、I−Vテスターを用いて、光電変換素子の室温での電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)を測定した。
上記表2の結果から、実施例の光電変換素子は、比較例の光電変換素子と比較して、光電変換効率に優れることが分かる。
1 基板、
2 第一電極、
3 電子輸送層、
4 量子ドット、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (9)

  1. 基板、第一電極、半導体および半導体として機能しかつ量子効果を有する量子ドットを含有する光電変換層、正孔輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子。
  2. 前記量子ドットは、半導体ナノ粒子が下記式(1):
    ただし、Xは、前記半導体に吸着しうる基を表し、Yは、前記半導体ナノ粒子に配位しうる基を表し、nは、1〜5の整数である、
    で示される化合物により被覆されてなる被覆量子ドットである、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記式(1)において、Xは、トリアルコキシシリル基(−Si(R):Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルコキシ基である)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基(−OPO(OH))、シアノ酸基(−CH=C(CN)(COOH))またはスルホン酸基(−SOH)である、請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 前記式(1)において、Yは、スルフィド基(−SR’:R’は、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、ホスホン酸基(−PO(OH))、またはホスフィニル基(−PH(O))である、請求項2または3に記載の光電変換素子。
  5. 前記正孔輸送層は、固相である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記正孔輸送層は、導電性高分子を含有する、請求項5に記載の光電変換素子。
  7. 前記正孔輸送層は、酸化剤存在下で前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触した後、前記量子ドットに光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成される、請求項6に記載の光電変換素子。
  8. 前記酸化剤は、過酸化水素、酸素、メタノール、金属塩または有機過酸化物である、請求項7に記載の光電変換素子。
  9. 前記導電性高分子前駆体は、下記式(2):
    ただし、Zは、硫黄原子(S)、NQ、または酸素原子(O)を表し、この際、Qは水素原子またはアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基を表す、
    に示される繰り返し単位を有する、請求項7または8に記載の光電変換素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109448999A (zh) * 2018-10-31 2019-03-08 湖北文理学院 基于ⅱ型核壳量子点的高效光阳极及其制备方法
WO2022143566A1 (zh) * 2020-12-31 2022-07-07 Tcl科技集团股份有限公司 发光器件及其制备方法
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