JP2014207257A - 光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

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貴之 石川
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和也 磯部
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Kenichi Onaka
賢一 尾中
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Abstract

【課題】光電変換効率に優れ、かつ、より高い耐久性を有する光電変換素子を提供する。
【解決手段】基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を有する正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、前記正孔輸送層は、第一電極と電子受容体を接触させ、かつ、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、前記光電変換層に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成することを特徴とする光電変換素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子およびその製造方法に関する。
近年、地球温暖化問題を解決する手段として、化石燃料を使用することなく再生可能エネルギーの一つである太陽エネルギーを使用する太陽光発電技術が注目されている。当該太陽光発電技術のなかでも、色素増感型太陽電池は、クロロフィル色素が行う光誘起電子移動と同様のメカニズムで発電するため、安価で高性能なルーフ・トップ型の次世代を担う太陽電池の一つとして脚光を浴びている。
このような色素増感型太陽電池の一般的な構成は、基板、第一電極、増感色素が担持された半導体層(光電変換層)、正孔輸送層、および第二電極が順次積層されたものである。
このような構成を有する光電変換素子に対して、基板の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は第一電極に移動し、当該電子は、外部回路を通じて第二電極に移動して、正孔輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、正孔輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光エネルギーが電気エネルギーに変換されるのである。
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料の流出・散逸を防ぐという観点から、正孔輸送層には高分子を用いることが好ましい。
例えば、特許文献1では、光電変換層であるメゾポーラス二酸化チタン多孔質層を、ピロールおよびLiClOを溶解したアセトニトリル溶液に浸漬し、保持電圧を250mV、対電極を白金、参照電極をAg/Agとし、光照射して、重合電荷量が所定値になるまで電圧を保持すること、および正孔輸送層としてのポリピロール層を前記光電変換層表面に形成した光電変換素子やその製造方法が開示されている。
特開2003−142168号公報
上記特許文献1では、光電解重合法と呼ばれる方法を利用して正孔輸送層を形成している。当該光電解重合法は、導電性高分子前駆体(モノマー等)が溶解した溶液に電極対を浸して電圧を印加することにより、導電性高分子前駆体を重合させて導電性高分子を得る方法である。ここで、特許文献1のように、半導体に担持された増感色素を含む光電変換層上に光電解重合により正孔輸送層を形成する場合には、電圧印加による増感色素の分解(劣化)を防止するために、低電圧下で重合を行う必要がある。しかしながら、低電圧下で重合を行うと、モノマーの重合により形成される導電性高分子の析出に伴い電圧降下が生じるため、重合が不十分となり、色素の周りに十分な量の導電性高分子を生成させることが困難となっていた。また、光電変換素子の大面積化を考えた場合には、FTO等の電極自体の抵抗が高いため、光電解重合では均一に電位をかけることが困難であり、光電変換素子全体へ均一に正孔輸送層を形成することが困難であった。このため、光電変換素子の光耐久性が低いという問題があった。
そこで、本発明は、光電変換効率に優れ、高い耐久性を有する光電変換素子を提供することを目的とする。
基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を有する正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、前記正孔輸送層は、第一電極と電子受容体を接触させ、かつ、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、前記光電変換層に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成することを特徴とする光電変換素子により上記目的を達成できる。
本発明に係る光電変換素子は、導電性高分子前駆体の重合において、電子受容体が該前駆体と別途配置されるため、光耐久性の高い光電変換素子が提供される。
本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。 工程(1)〜(4)を説明するための模式断面図である。 工程(1)〜(4)を説明するための模式上面図である。
本発明の第一は、基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を有する正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、前記正孔輸送層は、第一電極と電子受容体を接触させ、かつ、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、前記光電変換層に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成することを特徴とする光電変換素子である。
また、当該光電変換素子の製造方法は、基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を含有する正孔輸送層、ならびに第二電極をこの順に有する光電変換素子の製造方法であって、第一電極上に光電変換層を形成させる工程(1)と、第一電極に電子受容体を接触させる工程(2)と、導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(3)と、前記工程(1)〜(3)の後に、前記光電変換層に光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(4)と、
を含む、光電変換素子の製造方法である。
すなわち、本発明の光電変換素子は、導電性高分子を有する正孔輸送層の形成方法に特徴を有し、より具体的には、導電性高分子前駆体を重合させる際の重合方法に特徴を有する。
上記したように、正孔輸送層の形成方法としては、光電解重合法が広く用いられている。しかしながら、当該方法は、光電変換素子の耐久性(耐光性)が低いという問題点があった。
かような問題点に鑑み、本発明者らは、耐久性を向上させうる正孔輸送層の形成方法を検討した。ここで、本発明者らは、酸化剤及び光増感剤を用いた酸化重合性モノマーの光化学重合(例えば、特開平1−123228号公報、特開2009−16582号公報)を用いれば、上記問題点を克服した光電変換素子の形成が可能であるのではないかと考え、光化学重合に着目した。実際、光化学重合法を用いると、均一な層形成が可能となった。
しかしながら、光化学重合法、すなわち酸化剤存在下で導電性高分子前駆体を重合させても、得られる光電変換素子の耐久性の向上が十分なものではないことがわかった。これは、重合後の正孔輸送層に酸化剤が残存することとなり、正孔輸送層中に電子移動に寄与しない不純物が存在すると、不純物に起因したトラップ準位ができるため、素子の耐久性が低下するものと考えられる。
本発明者らが鋭意検討した結果、光化学重合は、電子受容体とモノマーとを共存させることが必要であるという従来の概念を覆して、電子受容体と導電性高分子前駆体とを物理的に異なる部分に配置して、光照射を行っても導電性高分子前駆体の重合が進行するという驚くべき知見を得た。さらに、電子受容体と導電性高分子前駆体とが共存しなくとも重合が進行するため、光電変換素子の耐久性向上が図れる。
本発明の構成により、導電性高分子前駆体の重合が進むメカニズムは不明である。考えられうるメカニズムとしては、以下が考えられる。以下の反応式で示すように、光電変換層に対する光照射により、光電変換層に含有される増感色素が励起される(下記反応式(1))。ここで、励起されるのは半導体、例えば酸化チタンであってもよい。励起された電子は電子受容体(例えば、過酸化水素)により消費される(下記反応式(2))。これにより、増感色素はカチオン状態となり(下記反応式(2))、カチオン状態の増感色素は導電性高分子前駆体より電子を抜き取り、導電性高分子前駆体がカチオン状態となる(下記反応式(3))。カチオン状態となった導電性高分子前駆体は、それがトリガーとなることで重合が開始される(下記反応式(4))。
なお、本発明は、上記メカニズムに拘泥されるものではなく、他のメカニズムによって導電性高分子前駆体が重合されても本発明の範囲内であることは言うまでもない。
光重合で導電性高分子を形成することができるため、電解重合に比べ重合時間を短縮することができ、容易に光電変換層(半導体層)の表面に十分量でかつ緻密に重合体の層を形成できる。また、上記方法によると、増感色素の分解の問題を解決することができ、カルボン酸を有する色素を好適に使用することができる。
光化学重合は電解重合のプロセスに比べ非常に早く進行するため重合時間を短くする事が可能であり、製造プロセスの簡略に非常に有利である。また、光化学重合によるプロセスは、大面積の正孔輸送層をも容易に形成することが可能である。
また、本発明によると、増感色素が重合開始剤としての作用を奏しながら重合を進行させて、導電性高分子を含む正孔輸送層を形成するため、外部電圧や溶媒和などの原因で増感色素が光電変換層から剥離しにくく、光電変換効率の優れた光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
[光電変換素子]
本発明に係る光電変換素子の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本願発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、バッファ層3、光電変換層6、正孔輸送層7および対極である第二電極8により構成されている。ここで、光電変換層6は、半導体5および増感色素4を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、必要によりバッファ層3を有してもよい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本願発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
本願発明に係る光電変換素子は、基板、第一電極、光電変換層、正孔輸送層および対極である第二電極が必須の構成要素として順次積層された構造であり、必要により基板と第一電極との間にバッファ層、および/または第二電極の表面にバッファ層を形成してもよい。以下、本発明に係る光電変換素子の各構成要素および本発明に係る光電変換素子の製造方法について説明する。
(基板)
本発明に係る基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、透明基板が好ましい。基板は、光透過率が10%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
当該光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
当該基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
当該基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。
前者の剛性を有する基板では、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本願発明に特に好ましく適用することができる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
(第一電極)
本発明に係る第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、本発明に係る第一電極は、基板である透明基板の表面に設けられた透明導電性基板が好ましく、第一電極が表面に形成された基板を、ここでは透明導電性基板(または第一電極基板)とも称する。
透明導電性基板の平均厚さとしては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、透明導電性基板の表面抵抗は、50Ω/□(square)以下であることが好ましく、20Ω/□(square)以下であることがより好ましく、更に好ましくは、10Ω/□(square)以下である。なお、透明導電性基板の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。透明導電性基板の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(第二電極)
本発明に係る第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第二電極は、正孔輸送層との接触性が良いことが好ましい。第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。また、第二電極の平均厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい。具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/□(square)以下であり、さらに好ましくは20Ω/□(square)以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。
(バッファ層)
本願発明に係る光電変換素子において、短絡防止手段や整流作用として、膜状(層状)をなし、第一電極と半導体層との間に位置するバッファ層を有することが好ましい。
本発明に係るバッファ層、光電変換層は、下述するように多孔質であることが好ましい態様であるが、この場合、バッファ層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バッファ層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、バッファ層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バッファ層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、短絡防止や整流作用といった効果をより向上することができる。ここで、バッファ層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
当該バッファ層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
本発明に係るバッファ層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。
特に正孔輸送層がp型半導体の場合、バッファ層に金属を使用する場合には正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バッファ層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が多孔質半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで多孔質半導体層(光電変換層)からバッファ層への電子移動効率を向上させることもできる。この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
この場合、当該酸化チタン層は、アナターゼ型酸化チタンおよび誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンのいずれであってもよい。
(光電変換層)
本発明に係る光電変換層は、半導体および増感色素を含有し、当該増感色素を担持した当該半導体を含有する半導体層からなることが好ましい。
当該光電変換層1mあたりの色素の総含有量は0.01〜100mmol/mが好ましく、0.1〜50mmol/mがより好ましく、特に好ましくは、0.5〜20mmol/mである。
(半導体)
半導体は、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等を使用することができる。
好ましい半導体として、チタンの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、鉄の酸化物、タングステンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ハフニウムの酸化物、ストロンチウムの酸化物、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブの酸化物、またはタンタルの酸化物、カドミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化物、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。また、他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。より詳細には、当該半導体の具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。なかでも、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSが好ましく用いられ、TiOまたはNbがより好ましく用いられ、色素の吸着性が優れていることから、酸化チタン(TiO)がさらに好ましく用いられる。上述した半導体を単独で使用してもよく、または複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。さらに、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
加えて、TiOを半導体層に使用する場合に、TiOはアナターゼ型酸化チタンおよび/また誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンのいずれであってもよい。
半導体の形状としては、フィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状、平板状などが挙げられ特に制限されることはない。また、半導体層として、これらフィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状等の形状の半導体が凝集して形成された膜状のものを使用してもよい。また、この場合、予め増感色素が表面に被覆した半導体を使用しても、半導体からなる層を形成した後に増感色素を被覆してもよい。
半導体の形状が粒子状の場合は、一次粒子であって、かつ平均粒子径が1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることが好ましい。なお、上記半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本願発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
(増感色素)
増感色素は、上記の半導体の増感処理により、半導体に担持され、かつ光照射時、光励起され起電力を生じ得るものである。増感色素としては、アリールアミン系色素が好ましく、下記一般式(I)で示される化合物がより好ましい。
上記一般式(I)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアリール基、アミノ基(−NH)、シアノ基(−CN)、または置換もしくは未置換の複素環基を表す。nが1のとき、2つのRは互いに異なるものであってもよく、また、Rは他の置換基と連結して環構造を形成したものであってもよい。同様にして、nが2または3である場合の、式:−Ar(A−(A−Zの部分(上記一般式(I)中の窒素原子に連結した右側部分)は、それぞれ、同じであってもあるいは互いに異なるものであってもよい。Arは、二価の環式化合物基を表す。AおよびAは、それぞれ独立して、単結合、2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換もしくは未置換のアルキレン基、アリーレン基、または2価の複素環基を表す。Zは、酸性基、アルコキシシランまたはハロゲン化シランを有する有機基であり、好ましくは少なくとも1つのカルボキシル基を含む有機基である。nが2以上のとき、複数のA、A、Zは互いに異なるものであってもよい。p、qは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数である。ここで、pおよびqは、同じであってもあるいは互いに異なるものであってもよい。pが2以上である場合の、各Aは、それぞれ、同じであってもあるいは互いに異なるものであってもよい。同様にして、qが2以上である場合の、各Aは、それぞれ、同じであってもあるいは互いに異なるものであってもよい。nは、1以上3以下の整数であり、2であることが好ましい。
上記一般式(I)中のArは、特に制限されなく、例えば2価〜4価の環式化合物基が好ましい。当該環式化合物基の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、チオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等の芳香族環から導かれるものである。これらの芳香族環を複数組み合わせて用いても良く、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ビチオフェン基、4−チエニルフェニル基、ジフェニルスチリル基等、さらには、スチルベン、4−フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン、トリフェニルエテン(例えば、1,1,2−トリフェニルエテン)、フェニルピリジン(例えば、4−フェニルピリジン)、スチリルチオフェン(例えば、2−スチリルチオフェン)、2−(9H−フルオレン−2−イル)チオフェン、2−フェニルベンゾ[b]チオフェン、フェニルビチオフェン環、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン、フェニルジチエノチオフェン環由来の基などがある。これらの芳香族環は置換基を有していても良く、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、各々置換もしくは未置換の、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、オクタデシル基、3−エチルペンチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシエチル基等)、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基)、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基等)等がある。また、上述した芳香族基から水素原子を2個または3個除いた2価または3価の芳香族基であることが好ましい。
本発明に係る一般式(I)中のArとしては、以下の化学式(1−A)〜(1−G)が好適な基として挙げられる。
また、上記一般式(I)中におけるアルキル基は、炭素鎖長1〜30の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素鎖長3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素鎖長3〜9のシクロアルキル基であることがより好ましい。このうち、炭素鎖長1〜30の直鎖若しくは分岐状のアルキル基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長6〜18の直鎖のアルキル基が好ましい。
また、上記炭素鎖長3〜10のシクロアルキル基もまた特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長3〜6のシクロアルキル基が好ましい。
これらのうち、炭素鎖長1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、ならびに炭素鎖長3〜7のシクロアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素鎖長1〜6の直鎖アルキル基およびイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素鎖長3〜6の分岐アルキル基、ならびにシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素鎖長5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。
上記一般式(I)中におけるアルコキシ基は特に制限されず、炭素鎖長1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、n−ヘンエイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜18のアルコキシ基が好ましく、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基がより好ましい。
上記一般式(I)中におけるアルケニル基は特に制限されず、アルケニル基は、直鎖であっても、分枝であっても、環状であってもよい。また、アルケニル基の有する炭素数は、好ましくは2〜18個である。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などが挙げられる。これら以外のアルケニル基が用いられてもよい。
上記一般式(I)中におけるアルキニル基は特に制限されず、直鎖であっても、分枝であっても、環状であってもよい。また、アルキニル基の有する炭素数は、好ましくは2〜18個である。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基などが挙げられる。これら以外のアルキニル基が用いられてもよい。
上記一般式(I)中におけるアリール基は特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましい。
上記一般式(I)中における複素環基は特に制限されず、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む複素環基が好ましく、単環式複素環基に限らず、複数の複素環が縮合した縮合複素環基(例えば、3個のチオフェン環が縮合したジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン由来の基)、複素環と炭化水素環(非芳香族性炭化水素環又は芳香族炭化水素環)とが縮合(オルソ縮合、オルソアンドペリ縮合など)した縮合複素環基であってもよい。また、当該複素環基は、非芳香族性または芳香族性のいずれであってもよい。さらに、複素環と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基においては、複素環又は炭化水素環のいずれかが結合手を有していてもよい。一般式(I)中における複素環基の具体例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、イソベンゾフラニル、クロメニル基、チエニル基、チアントレニル基、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フェノキサチイニル基などが挙げられる。好ましい複素環基には、ピロリル基、インドリル基、カルバゾリル基である。
また、本発明に係る一般式(I)における「置換または未置換の」とは、上記例示したアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、および複素環基のうち、少なくとも1個以上の水素原子が他の置換基に置換されていることをいい、この置換基は、上記したアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、および複素環基が炭素数の数を超えない範囲で置換されてもよい。以下同様である。なお、場合によって存在する置換基は、置換する基と同じとなることはない。例えば、Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
本発明に係る一般式(I)中のRとしては、以下の化学式(2−A)〜(2−S)が好適な基として挙げられる。
また、上記化学式(2−S)において、hは重合度であって、1以上17以下の整数である。
上記化学式(2−A)および(2−G)において、Yは、水素原子、上記したアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基である。また、上記化学式(2−M)〜(2−S)において、波線部は他の基と連結する位置を示す。当該破線部が他の基と連結することにより、例えばRがArとともに縮合環構造を形成する。
上記一般式(I)中におけるアルキレン基は特に制限されず、直鎖状または分岐鎖状であって、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、iso−ペンチレン基、へキシレン基などを挙げることができる。
上記一般式(I)中におけるアリーレン基は特に制限されず、フェニレン基、ビフェニル−ジイル基、ターフェニル−ジイル基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、テトラセン−ジイル基、フルオレン−ジイル基、フェナントレン−ジイル基などが挙げられる。
本発明に係る一般式(I)中のAおよびAとしては、以下の化学式(3−A)〜(3−Z)および化学式(3−a)〜(3−b)が好適な基として挙げられる。
また上記化学式(3−I)において、iは重合度であって、1以上17以下の整数である。さらに、上記化学式(3−P)、(3−R)、(3−X)、および(3−Z)において、Yは、水素原子、上記したアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基である。
また、上記一般式(I)中、Zは、酸性基、アルコキシシランまたはハロゲン化シランを有する有機基であり、好ましくは酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有するArのいずれかの部分構造を有する有機基であり、より好ましくは少なくとも1つのカルボキシル基を含む有機基である。なお、この部分構造Zは、一般式(1)中のAr、Ar及びAr、ならびにR中に存在するいずれかの少なくとも1個の水素原子(H)に置換され、好ましくは少なくともArの末端の水素原子(H)に置換される。この際、部分構造Z中の酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基[−SOH]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、アルコキシシラン基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。また、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基が好ましく、シアノ基、ニトロ基がより好ましい。電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環がより好ましい。これらのZは、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入できる。また、部分構造Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、部分構造Zは、電荷、特に正の電荷を帯びてもよく、この際、Cl、Br、I、ClO 、NO−、SO 2−、HPO 等の対イオンを有していてもよい。
すなわち、上記一般式(I)中のZの好ましい例は、下記化学式(4−A)〜(4−N)がある。
上記化学式(4−H)において、gは重合度を表し、1以上17以下の整数である。
本発明では、カルボキシル基が存在しても印加電圧によりCOが脱離(コルベ電解)して色素が劣化することがないため、カルボキシル基を有する増感色素を好適に使用することができる。
また、本発明に係る増感色素の特に好ましい例を以下に示す。
上記好ましい増感色素のうち、Arが化学式(1−B)を有する、および/またはRが化学式(2−A)、化学式(2−G)、化学式(2−J)、化学式(2−K)のいずれかを有する、および/またはAおよびAが化学式(3−B)、化学式(3−D)、化学式(3−H)、化学式(3−I)、化学式(3−P)、化学式(3−Q)、化学式(3−R)を有するものが特に好ましい。
(正孔輸送層)
本発明に係る正孔輸送層は、光励起によって酸化された増感色素に電子を供給して還元し、増感色素との界面で生じた正孔を第二電極へ輸送する機能を有する。正孔輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空隙内部に充填されうることが好ましい。
本発明に係る正孔輸送層は、第一電極と電子受容体を接触させ、かつ、光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、光電変換層に光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合することにより形成されることを特徴とする。本発明においては、電子受容体により生成した増感色素カチオンが重合開始剤として作用し、導電性高分子前駆体を重合するものと考えられる。しかしながら、本発明は上記メカニズムに拘泥されるものではない。なお、基材と相対する第一電極上にバッファ層が形成されている場合には、該バッファ層上に電子受容体を接触させてもよい。
本発明の正孔輸送層を形成させるために用いられる電子受容体としては、導電性高分子前駆体を重合できるものであれば特に限定されない。
電子受容体の準位が励起した増感色素の順位よりも高ければ電子を奪うことが可能である。一方、電子受容体の準位が高すぎると、導電性高分子前駆体(例えば、bis−EDOT)を直接酸化重合してしまい、増感色素近傍に均一な膜を形成することが困難になる可能性がある。このため、適度な標準電極電位を有する電子受容体で重合することが好ましい。
上記点を考慮すると、本発明に係る電子受容体は、−1.5〜+2.5Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することが好ましく、−0.5〜+2.0Vの標準電極電位(E (OX))(V)を有することがより好ましい。ここで、電子受容体の標準電極電位が上限以上であれば、重合をより効率的に進行させることができる。また、電子受容体の標準電極電位が下限以下であれば、反応(反応速度)の制御が容易であり、生産性に優れ、産業上好ましい。すなわち、このような標準電極電位(E (OX))(V)を有する電子受容体は、光照射時に増感色素で励起された電子をより効率よく消費できるため、導電性高分子前駆体の重合をより促進でき、また、増感色素近傍により均一な膜を形成することができる。本明細書において、「標準電極電位(E (OX))(V)」は、水溶液中における標準電極電位(25℃)を意味する。
本発明の正孔輸送層を形成させるために用いられる(または、上記製造方法において工程(1)で用いられる)電子受容体としては、具体的には、過酸化水素(+1.763V)、金属塩、過酸化物、オゾン、酸素(+1.229V)、メタノール(+0.588V)などが挙げられる。なお、括弧内は、標準電極電位(E (OX))(V)を示す。中でも、材料自体の安定性の観点から、電子受容体が金属塩、オゾン、酸素および過酸化水素の少なくとも1種であることが好ましい。
上記過酸化物としては、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、硝酸類、硫酸類等が挙げられ、具体的には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の無機過酸化物;クメンヒドロペルオキシド、ギ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ 2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシ イソプロピルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5,−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、二コハク酸ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。
金属塩としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、硝酸銀(AgNO)(+0.799V)、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)、コバルトクロロペンタアミン等が挙げられる。
電子受容体存在下で増感色素に光を照射すると、当該色素において励起された電子が電子受容体(例えば、過酸化水素/過酸化水素水など)により消費され、カチオン状態の増感色素がモノマーである導電性高分子前駆体の電子を引き抜き重合が開始されると考えられる。
なお、第一電極と電子受容体を接触させる、光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させる、および光電変換層に光を照射することによって導電性高分子前駆体を重合する方法については、後述の光電素子の製造方法の欄で詳細に述べる。
本発明に係る導電性高分子前駆体は、特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体が比較的低分子の単量体であると、多孔質体の光電変換層内部にまで侵入しやすく、かつ光電変換層の増感色素が開始剤となり重合反応の起点としての役割も担うため、重合化した導電性高分子が増感色素を覆う量は、電解重合で重合した導電性高分子が増感色素を覆う量より多いと考えられる。
正孔輸送層は導電性高分子を有する。ここで、導電性高分子は導電性前駆体が重合することにより形成される。
導電性高分子前駆体は、以下の式(1)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
上記式(1)中、Xは、S、NR、Oを表し(この際、Rは水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である。)、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基である。
上記炭素原子数1〜30の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、および炭素原子数1〜30のアルコキシ基、ならびに必要に存在する置換基は、上記一般式(I)と同様であるのでここでは省略する。
また、ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子がある。
当該炭素原子数2〜30のポリエチレンオキシド基は、式:−(CHCHO)Hまたは式:−(OCHCHH[この際、xは、1〜9の整数である]で表わされる基である。これらのうち、xが3〜9であるものが好ましく、−(OCHCHHがより好ましい。
当該炭素原子数4〜30の環式化合物基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、チオフェン環、ポリチオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等のうち水素元素を一つ除いた基から導かれるものである。
本発明に係る一般式(1)中におけるより好ましいR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6〜24のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビフェニル基、チオフェン基、ビチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルキル基に置換されたビチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたチオフェン基、炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたビチオフェン基である。
また、本発明に係る導電性高分子前駆体は、上記式(1)を有してポリマー化する役割を担うものであればよい。そのため、上記式(1)を単独または複数種類の繰り返し単位が結合した多量体を用いてもよい。さらに、予め上記繰り返し単位を有するモノマーを必要に応じて、単独あるいは複数種類のモノマーと共に重合したプレポリマー(二量体以上の多量体やいわゆるオリゴマーを含む)であってもよい。この場合は、導電性高分子前駆体がプレポリマーであり、後述の合成方法でも記載するが、光電変換層に導電性高分子前駆体をプレポリマーの形態で塗布して、光電変換層上で化学重合して導電性高分子を形成する方法が簡便でありうる。
すなわち、本発明の導電性高分子前駆体は、以下の式:
で表される。
ここで上記式中、XおよびR〜Rは上記式(1)と同一であり、mが単量体の結合数を表し、例えばm=2の場合は二量体、m=3の場合は三量体を示す。ここではmは1以上10以下の整数が好ましい。
さらに、以下、本発明に係る導電性高分子前駆体の特に好ましい形態を表1に示す。
本発明に係る導電性高分子は、導電性高分子前駆体を重合して得られる。したがって、本発明に係る導電性高分子は、下記一般式(1):
上記式(1)中、Xは、S、NR、Oを表し(この際、Rは水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である。)、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基である、で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
本発明に係る導電性高分子の重合度は、その合成方法により得られた重合体から把握することは困難である。しかしながら、重合後に形成された正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認については、当該重合体の溶解が可能なテトラヒドロフラン(THF)に正孔輸送層を浸漬させることで、その溶解度により判断できる。具体的には、25mLのサンプル瓶に化合物(導電性高分子)60mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると判断する。
正孔輸送層は、必要により、電解質、および添加剤からなる群から選択される少なくとも一つを成分として含んでもよい。
電解質としては、酸化還元電解質の分散物や支持電解質が挙げられる。当該酸化還元電解質としては、I/I3−系、Br/Br3−系、およびキノン/ハイドロキノン系等が用いられうる。上記酸化還元電解質の分散物は、公知の方法によって得ることができる。例えば、I/I3−系の電解質は、ヨウ化物イオンとヨウ素とを混合することによって得ることができる。上記酸化還元電解質の分散物は、液状の形態で用いられる場合には液体電解質、室温(25℃)で固体の高分子に分散させた場合には固体高分子電解質、そしてゲル状物質に分散された場合にはゲル電解質と呼ばれる。正孔輸送層として液体電解質が用いられる場合には、その溶媒として電気化学的に不活性なものが用いられる。当該溶媒としては、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、およびエチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質が用いられる場合としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質が用いられる場合としては「表面科学」21巻、第5号第288〜293頁に記載の電解質が、それぞれ参照されうる。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON](リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。また、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。上記支持電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、上述したように、導電性高分子前駆体としてプレポリマーを用いて光電変換層上で重合によりポリマーを形成する場合には、プレポリマーとともに溶媒、および必要に応じて重合触媒や重合速度調整剤等の添加剤を含む混合物を用いて重合を行ってもよい。
重合触媒としては、特に制限されないが、塩化鉄(III)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物等が挙げられる。なお、本発明では、上述したように、増感色素が重合開始剤として作用するため、重合触媒は添加する必要はないが、より重合を促進して進行させることが望ましい場合には、必要に応じて、重合触媒を添加してもよい。
また、重合速度調整剤は、重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸のような芳香族オキシスルホン酸等が用いられうる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物である場合には、イミダゾール等が用いられうる。
上記化学重合の反応条件は、用いるプレポリマー、および必要に応じて添加される重合触媒、重合速度調整剤の種類、割合、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、所望の重合速度によって異なるが、好適な重合条件としては、空気中で加熱する場合には、加熱温度は25〜120℃、加熱時間は1分〜24時間であることが好ましい。好ましくは、下記に詳述するように、光照射により、化学重合を行う。
本発明に係る正孔輸送層は、固体正孔輸送層が好ましい。そのため、当該固体正孔輸送層の材料としては、上述した固体高分子電解質が好適に使用される。
本発明に係る正孔輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。上記添加剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
正孔輸送層に含まれる材料は、増感色素による光吸収を妨げないように、大きいバンドギャップを持つことが好ましい。具体的には2eV以上のバンドキャップを有することが好ましく、2.5eV以上のバンドキャップを有することがさらに好ましい。また、正孔輸送層は、増感色素ホールを還元させるために低いイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。適用する増感色素に応じてイオン化ポテンシャルの値は異なるが、通常、4.5〜5.5eVであることが好ましく、4.7〜5.3eVであることがより好ましい。
本発明に係る正孔輸送層の平均厚みは、半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の内部や隙間にも浸透しているため測定が容易ではない。
[光電変換素子の製造方法]
本発明の第二は、基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を含有する正孔輸送層、ならびに第二電極をこの順に有する光電変換素子の製造方法であって、第一電極上に光電変換層を形成させる工程(1)と、第一電極に電子受容体を接触させる工程(2)と、導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(3)と、前記工程(1)〜(3)の後に、前記光電変換層に光を照射し前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(4)と、を含む、光電変換素子の製造方法である。
上述したように、本発明に係る正孔輸送層は電解重合ではなく、化学重合で形成している。そのため、上述したように、増感色素を劣化させないために低い電圧下での重合による十分量の導電性高分子を形成できない問題、低い電圧下での重合による長い重合時間による生産性の低下の問題、または大面積化の光電変換素子を製造する際に従来の電解重合では均一に電圧をかけることが困難になるため、素子全体に均一の導電性高分子を形成することが困難である問題を本発明では解決できる。
さらに、本発明において正孔輸送層を形成する際に、導電性高分子前駆体と、酸化剤とが共存しないため、導電性高分子前駆体が重合した後に形成される導電性高分子を含む正孔輸送層中に酸化剤が残存しない。このため、光電変換素子の耐久性が向上する。
電解重合により正孔輸送層を形成する場合、増感色素には−COOH基が存在すると、印加電圧によりCOが脱離(コルベ電解)して色素が分解するという問題が報告されている(例えば、特開2011−065751号公報)。しかし、本発明では化学重合で正孔輸送層を形成するため、増感色素の分解の問題を解決することができ、カルボン酸(カルボキシル基)を有する色素を好適に使用することができる。
ここで、工程(4)の段階において、導電性高分子前駆体が重合できる環境にあればよいため、工程(1)、および工程(2)/(3)の工程はどのような順序で行ってもよい。すなわち、工程(2)を先に行って、工程(1)を行ってもよいし、工程(1)を先に行って、工程(2)を行ってもよいし、両者を同時に行ってもよい。また、工程(1)は工程(2)の後、工程(3)の前に行っても、後に行っても、同時に行ってもよい。また、作製手順の簡便さの観点から、工程(2)/(3)の工程の前に工程(1)を行う事が好ましい。
図2Aおよび図2Bは、工程(1)〜(4)を説明するための模式断面図または模式上面図である。図2Aに示すように、工程(1)において、第一電極2上に光電変換層6を形成させる。工程(2)においては、電子受容体を第一電極2上に接触させる。これにより、第一電極2上に電子受容体が存在する状態になる。ここで、「第一電極上」とは、第一電極に直接的に光電変換層6を形成させる形態のみならず、他の層(例えばバッファ層3)を介して第一電極上に形成させる形態も含む。好適な形態では、図2AおよびBに示すように、電子受容体含有液は、素子の構成部材(バッファ層、光電変換層)とは異なる位置の第一電極上に接触させる。このように素子の構成部分とは別に電子受容体を配置することによって、電子受容体の素子への影響を排除することができ、また、導電性高分子前駆体の重合後に、洗浄などによって電子受容体を容易に除去することができる。電子受容体の第一電極上への接触位置は特に限定されるものではないが、効率的に導電性高分子前駆体の重合が行われることから、素子の構成部材(バッファ層または光電変換層)とある程度近い距離であることが好ましい。素子の構成部材と電子受容体との距離は、電子受容体含有溶液と第一電極との濡れ性、第一電極のシート抵抗などを考慮して適宜設定すればよい。なお、電子受容体溶液が素子の構成部材に接触しないように、第一電極上に両者の物理的接触を阻害する部材(例えば、テープ等)を設けてもよい(図2B参照)。
以下、本発明に係る光電変換素子の製造方法を各工程について詳説する。
まず、準備段階として、第一電極の製造方法について述べる。
(第一電極の製造方法)
基材の上に第一電極を形成する方法としては、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。このような方法としては、例えば、スパッタ法やCVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法などが挙げられる。これらの方法により、ITO、FTO、SnOなどの酸化物半導体からなる薄膜を形成する。当該第一電極は、厚過ぎると光透過性が劣り、一方、薄過ぎると導電性が劣ってしまうことになる。このため、光透過性と導電性の機能を両立させることを考慮すると、第一電極は、0.03〜3μm程度の膜厚範囲であることが好ましい。
また、第一電極をスリット状に形成する場合は、第一電極の材料に応じて適当な方法を選択できる。具体例としては、エキシマレーザー、YAGレーザー、COレーザー、エアジェット、ウォータジェットによる加工、エッチング加工、機械的加工などが挙げられる。これにより、透明導電層は、複数の領域に分離することができる。スリットのピッチは、光電変換素子のセルのサイズに応じて、適宜設定することができる。
(バッファ層を形成する方法)
バッファ層を形成する方法は、バッファ層形成成分であるバッファ層前駆体を第一電極上に被覆させて必要により熱処理を行う方法が挙げられる。具体的には、本発明に係る第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上にバッファ層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行してバッファ層を形成する方法、バッファ層形成用の塗布液を用いたインクジェット法やスピンコート法による塗布、原子層堆積(ALD)法が好ましい。なかでも、第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板上に、バッファ層形成成分の(塗布)層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行してバッファ層を形成する方法がより好ましい。ここでバッファ層形成成分とは化学反応によりバッファ層となる化合物のことをいう。
バッファ層形成成分としては酸化チタン前駆体が好ましく、当該酸化チタン前駆体としては、加水分解により酸化チタンを生ずるものであることがより好ましい。具体的には、ハロゲン化チタン(三塩化チタン、四塩化チタンなど)、オルトチタン酸エステル(オルトチタン酸メチル、オルトチタン酸エチル、オルトチタン酸イソプロピル、オルトチタン酸ブチルなど)、チタンブトキシドダイマー、チタニウムステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ポリヒドロキシチタンステアレートタンアシレート;チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、テトラキスイソポロポキシチタンなどの有機チタン化合物等が挙げられる。このうちオルトチタン酸エステルが好ましい。これらの酸化チタン前駆体は、加水分解に先だって各種の配位子(例えばアセチルアセトン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、その他のアミン、ピリジンカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、その他のヒドロキシカルボン酸など)と混合し、酸化チタン前駆体の錯体を形成し、該錯体を加水分解に用いてもよい。また、これら焼成法に使用される酸化チタン前駆体は、溶媒に溶解させて溶液として使用することが好ましい。
酸化チタン前駆体を溶解させる溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール)、THF、アセチルアセトンなどが好ましい。
また、バッファ層形成成分が溶液である場合は、前記溶媒100質量部に対して、0.5〜13質量部のバッファ層形成成分を含有させることが好ましい。
なお、CVD法は化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition)と呼ばれるもので、ガス状にした原料物質(気体、液体、固体)を装置内の反応室へ供給し、基板表面において化学反応(気相反応)を起こすことで、所望の酸化チタン層を基板上に堆積させて形成する方法である。CVD法では原料物質を化学的に活性させる(励起状態)にする必要があるために熱やプラズマ、光(レーザ光や紫外線等)が用いられ、各々熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法と呼ばれている。
また、バッファ層の形成する他の方法としてインクジェット法が挙げられる。バッファ層形成用の塗布液を、インクジェット法により塗布する場合は、インクジェットヘッドは圧電素子方式であることが好ましく、吐出量や吐出回数は適宜選択される。または、上記バッファ層形成用の塗布液を、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって塗布してもよい。
バッファ層は、上記のように、バッファ層形成用の塗布液を、透明導電性基板上に塗布した後、乾燥または/および焼結することで得られる。また、一般的には、バッファ層形成用の塗布液を透明導電性基板上に塗布した後、直ちに、乾燥または/および焼結を行うのが、導電性向上の点から好ましい。なお、バッファ層が酸化チタンを含むとは、バッファ層が、−Ti−O−結合を有していればよく、本発明の光電変換素子のバッファ層は、結合未反応のバッファ層前駆体を含んでいてもよく、たとえば、未反応の酸化チタン前駆体等の有機物を含んでいてもよい。
バッファ層形成成分を焼成してバッファ層を形成する焼成方法の条件は、使用する化合物の種類によって適宜選択するものであり、例えば焼成処理温度は200〜700℃が好ましく、300〜600℃がより好ましい。また、焼成処理時間は好ましくは0.5〜120分であり、より好ましくは5〜30分である。
(第一電極上に光電変換層を形成させる工程(1))
[半導体層の作製方法]
以下、工程(1)における半導体層の作製方法について以下説明する。上述したように、本発明に係る好適な光電変換層は、表面に増感色素が担持された半導体を凝集したものである。
半導体層の作製方法は特に限定されず、当該半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性基板に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性基板上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性基板上に保持されていない場合には、半導体を導電性基板上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の作製方法の好ましい形態としては、上記導電性基板上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
半導体層が焼成により作製される場合、色素を用いた該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本願発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
〈半導体含有塗布液の調製〉
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。ここで1次粒子径は顕微鏡観察により1000個の粒子を測定し、平均した値を採用する。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等などが用いられる。また、塗布液中には、増粘剤として、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体を含んでいてもよい。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
〈半導体含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理〉
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性基板上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基板上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性基板上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性基板等の導電層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性基板との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度が弱い。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空隙にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空隙率は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空隙率(空孔率)は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。また、多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも1μm以上が好ましく、さらに好ましくは2〜30μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
また、焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、900℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200℃〜850℃の範囲であり、特に好ましくは450℃〜800℃の範囲である。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、250℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
[半導体層の増感処理方法]
本発明に係る増感処理を行う場合、上記に記載した増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本願発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
上述した半導体層への増感色素の担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に増感色素を担持させるには、増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。ここで、増感色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。また、各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空隙に吸着する前に、増感色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理は、前述のように増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが上げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
〈増感処理の条件〉
本発明に係る増感処理の条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を増感色素含有溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、増感処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、増感処理時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
(第一電極に電子受容体を接触させる工程(2))
上記で形成された第一電極上に電子受容体を接触させる。基材と相対する第一電極上にバッファ層が形成されている場合には、該バッファ層上に電子受容体を接触させてもよい。
電子受容体の第一電極への接触は、特に限定されるものではないが、第一電極に塗布することが好ましい。塗布方法としては、具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート等の各種塗布法を用いることができる。
電子受容体は、溶媒と混合して塗布することが好ましい。用いられる溶媒としては特に限定されず、水、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、アセトン、3−メトキシプロピオニトリル、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等が用いられる。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
電子受容体の溶媒中の含有量は特に限定されるものではないが、導電性高分子前駆体と酸化剤とを下記数式(A):
0.1<[Ox]/[M] (A)
上記数式(A)中、[Ox]は、酸化剤のモル濃度(mol/L)であり;[M]は、導電性高分子前駆体のモル濃度(mol/L)である、
の割合となるような電子受容体が含まれる溶液に接触させることが好ましい。[Ox]/[M]比は好ましくは0.15〜300であり、より好ましくは0.2〜100である。
(導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(3))
工程(3)は、上記工程(2)で作製した光電変換層と、正孔輸送層を構成する導電性高分子の前駆体である導電性高分子前駆体と、を接触させる工程である。
導電性高分子前駆体を接触させる方法としては、特に限定されるものではないが、塗布で導電性高分子前駆体を含有する溶液を塗布する形態が好ましい。
導電性高分子前駆体を含有する溶液を光電変換層に塗布する場合の塗布方法としては、具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
導電性高分子前駆体を光電変換層と接触させる方法としては、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、導電性高分子前駆体と、必要により上記説明した電解質とを当該光電変換層上に形成する方法、または正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、光電変換層上に導電性高分子前駆体を含む層が形成されるが、かような形態であっても、導電性高分子前駆体の重合は問題なく進行する。
また、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体である場合は、多孔質体の表面を導電性高分子が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した増感色素と導電性高分子とが接触するように導電性高分子前駆体と光電変換層を接触させることが好ましい。具体的には、多孔質体の内部や隙間まで、導電性高分子前駆体と、必要より添加される電解質とを含有する溶液が浸透して、多孔質体の表面のほぼ全面を導電性高分子前駆体が被覆するように、含浸および/または塗布することが好ましい。したがって、導電性基板上の光電変換層を導電性高分子前駆体溶液に浸漬させる方法や、導電性高分子前駆体溶液を多孔質体が十分に被覆する量滴下する方法などが好ましい。
工程(3)において、導電性高分子前駆体は、増感色素を担持した半導体からなる光電変換層に侵入し、且つ、その上に存在していることが好ましいため、半導体層は多孔質体であることが好ましい。
これらのうち、導電性高分子の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法、または前記導電性高分子の前駆体と、必要により添加される電解質とを含有する溶液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布して導電性高分子前駆体を重合する方法がより好ましい。
当該光電変換層に塗布するまたは含浸させる溶液の組成は、導電性高分子前駆体100質量部に対して、支持電解質が100〜100000質量部、溶媒が5000〜200000質量部であることが好ましく、支持電解質が500〜10000質量部、溶媒が10000〜1000000質量部であることがより好ましい。
また、溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメトキシエタン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(工程(1)〜(3)の後に、前記光電変換層に光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(4))
工程(4)は、工程(1)〜(3)の後、増感色素に光を照射して前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する。具体的には、正孔輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマー(多量体)の形態で必要により溶媒や電解質などを添加した溶液に光溶液を光電変換層上に塗布した状態で外部から増感色素に対して光を照射することが好ましい。
この際、電子受容体存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させてもよいが、正孔輸送層中に電子受容体が残存しないと耐久性がより向上することを考慮すれば、電子受容体非存在下で導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させることが好ましい。ここで、電子受容体存在下とは、光電変換層に導電性高分子前駆体を接触させる際に導電性高分子前駆体と電子受容体とが物理的に接触している状態を意味し、具体的には、導電性高分子前駆体および電子受容体の混合物を光電変換層に接触させる形態を指し、電子受容体非存在下とは、導電性高分子前駆体と光電変換層とを接触させる際に導電性高分子前駆体と電子受容体とが物理的に接触していない状態を意味し、例えば、導電性高分子前駆体の塗布液に電子受容体を含有させない形態などが挙げられる。
本発明に係る製造方法において、光電変換層に光を照射する条件は、特に制限されず、光照射により光電変換層中に存在する増感色素や酸化チタンなどが励起される条件であればよく、紫外線、可視光線などを用いることができる。好ましくは、照射する光の波長が増感色素の吸収波長を含むことが好ましい。具体的には、波長400nm以上、好ましくは波長430nm超(430nm以下の波長をカット)の光源を用いることが好ましい。400nm以上の波長の光を選択的に照射すると、それ以下の波長の光で生じるチタニア光触媒作用が抑制され、色素分解の懸念が無くなり、厚い正孔輸送層を形成する為長時間の光照射する場合にも安定した特性の光電変換素子ができる。さらに、色素によって若干の差があるが長波長の光の方がよりチタニア細孔の奥まで光を透過するため、より均一に重合が進む。照射波長の上限としては特に限定されるものではないが、好ましくは1100nm以下の光源を用いることが好ましい。1100nmよりも長波の赤外光の照射を抑制する事は、過剰照射による加熱抑制を図れ、層間剥離を抑制でき、高い光電変換応率を得られると共に、式(1)の構成単位を有する高分子を有する正孔輸送層を用いる場合には、1100nmを超える波長の光がこの高分子の吸収領域にかかることから生じる、高分子の分解などの副反応が抑制され、安定した特性が得られる事から好ましい。また、光の強度は、1〜800mW/cmであることが好ましく、10〜200mW/cmであることがより好ましい。増感色素に光を照射する時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜15分間がより好ましい。また、光を照射する際、増感色素に対して光を照射するが、増感色素以外の部位に光が照射されても構わない。光量については、上記と同様に光をチタニア細孔の奥まで透過させるために必要と思われる光の量として上記範囲に設定している。さらに照射時間については、この範囲内であれば十分に重合が進む時間を示している。
なお、本発明に係る光源としてはキセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、などが挙げられる。
また、工程(4)で、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により上記溶媒を用いて公知の方法で洗浄する工程を行ってもよい。正孔輸送層を形成させた後、第二電極を形成させることから、正孔輸送層を形成させた半導体電極を洗浄することが好ましい。この際に用いられる洗浄溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
さらに、工程(4)で、光電変換層上に正孔輸送層を形成させた後、必要により乾燥を行ってもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、一例を挙げると、25〜150℃、0.2〜24時間の条件である。
さらに、必要により工程(4)において、導電性高分子前駆体を光重合した導電性高分子を形成して正孔輸送層を光電変換層表面に設けた後、上記光電変換層を含浸および/または塗布するために使用する溶媒と、上記支持電解質および上記有機塩からなる群から選択される少なくとも一つと、を混合させた溶液に、正孔輸送層が形成された半導体電極を導電性高分子のドープ率向上とチタニアから正孔輸送層への逆電子移動防止の目的で−10〜70℃、0.1〜24時間浸漬させてもよい。その場合、浸漬させた後、自然乾燥で0.01〜24時間静置させて、後述の工程(5)を行うことが好ましい。
(工程(4)の後、正孔輸送層上に第二電極を形成する工程(5))
工程(5)は、上記工程(4)の後、正孔輸送層上に第二電極を形成する工程である。
第二電極形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第二電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
上記したようにして得られる、本発明の光電変換素子は、効率よく光を吸収することができる。具体的には、光電変換素子の1000nmにおける吸光度(A1000)が、下記数式(2):
を満たす。上記数式(2)中、A1000は、1000nmにおける光電変換素子の吸光度であり;FTSCは、半導体層の膜厚(μm)である。
(太陽電池)
光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本願発明の光電変換素子または本願発明の方法によって製造される光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本願発明の太陽電池は、上記本願発明の光電変換素子を有する。本願発明の太陽電池は、本願発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計ならびに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本願発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、正孔輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本願発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の電荷輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本願発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本願発明を詳細に説明するが、本願発明の範囲はこれらに限定されない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。
(実施例1)
(1)第一電極の作製
ガラス基板上に、第一電極として、シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)をスパッタリングして透明導電層(FTO)を形成し、透明導電性基板(第一電極基板)を得た。ガラス基板の厚みは1.1mm、第一電極の厚みは1μmであった。得られた透明導電性基板の第一電極(FTO)上に、テトラキスイソポロポキシチタン 1.2mlと、アセチルアセトン 0.8mlとをエタノール 18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により塗布した後、450℃で8分間加熱した。それにより、第一電極(FTO)上に、厚み50nmの酸化チタンの薄層(空孔率:1.0体積%)からなるバッファ層を形成した。
(2)光電変換層の作製(工程(1))
上記バッファ層上に、酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を、スクリーン印刷法を用い、塗布面積が0.25cmとなるように塗布した。得られた塗膜を、200℃で10分間、および500℃で15分間焼成して、厚さが2.5μmで空孔率が60体積%の酸化チタンの多孔質層(多孔質の半導体層)を得た。
増感色素であるA−11を、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。この溶液に、上記酸化チタンの多孔質膜を形成したFTOガラス基板を、室温(25℃)で3時間浸漬して色素を吸着させた。これにより、色素を担持する多孔質の半導体層(光電変換層)を有する半導体電極を得た。なお、この際の半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、1ミリモルであった。また、用いた増感色素は350〜590nmに吸収体を持つものであった。
(3)正孔輸送層の作製
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−2(モル/l)、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の割合で炭酸プロピレンに溶解して導電性高分子前駆体含有液を作製した。光電変換層を十分に被覆する量で該溶液を光電変換層に滴下した(工程(3))。一方、35wt%の過酸化水素水を1v/v%となるように炭酸プロピレンに混合し、その溶液をFTO基板上を全面被覆する量滴下した(工程(2))。また、この時導電性高分子前駆体溶液と過酸化水素水を含有する炭酸プロピレン溶液が混ざらないように、光電変換層と第一電極間に幅1mmのニトフロンテープを張り付けた。そして、光電変換層にキセノンランプで光を15分間照射し、重合を行った(工程(4))。光照射の条件は、光強度22mW/cmとし、430nm以下の波長をカットした(増感色素の吸収波長は含む)。この条件で、光を照射したところ、600〜1100nmに新たな吸収が現れ、導電性高分子前駆体が重合していることを確認した。重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
(4)第二電極の作製
次いで、正孔輸送層が形成された半導体電極(半導体電極/正孔輸送層)を、Li[(CFSON]を15×10−3(モル/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬させた。得られた半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥させた後、さらに真空蒸着法で金を60nm蒸着して、第二電極を形成した。これにより、光電変換素子SC−1を得た。
(実施例2〜7)
実施例1で使用した酸化剤の種類を表2に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜7の光電変換素子SC−2〜7を得た。
(実施例8〜10)
実施例1で使用した導電性高分子前駆体の種類を表2に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例8〜10の光電変換素子SC−8〜10を得た。
(実施例11)
実施例1で使用した照射光波長を表2に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例11の光電変換素子SC−11を得た。
(実施例12〜19)
実施例1で使用した色素の種類を表2に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして実施例12〜19の光電変換素子SC−12〜19を得た。なお、増感色素A−44は340〜640nmに、増感色素B−11は350〜590nmに、増感色素B−27は330〜660nmに、増感色素C−1は350〜660nmに、増感色素C−3は360〜740に、増感色素C−14は340〜640nmに、増感色素D−1は350〜600nmに、増感色素D−2は350〜580nmに、吸収帯を持つものであった。
(比較例1)(光電解重合)
光電変換素子SC−1の作製の(3)正孔輸送層の作製において、以下のようにしたこと以外は、同様にして光電変換素子SC−20を作製した。
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−3(モル/l)の割合で含有し、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に半導体電極を浸漬した。作用極を半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、正孔輸送層を半導体電極表面に形成した。
(比較例2)(光化学重合)
光電変換素子SC−1の作製の(3)正孔輸送層の作製において、以下のようにしたこと以外は、同様にして光電変換素子SC−21を作製した。
(3)正孔輸送層の作製
導電性高分子前駆体M1−1を1×10−2(モル/l)、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の割合で炭酸プロピレンに溶解した後、Co[(NH]Clを1×10−3(モル/l)となるように添加して、導電性高分子前駆体含有液を作製し、半導体電極を十分に被覆する量で該溶液を滴下した。そして、半導体電極にキセノンランプで光を15分間照射し、重合を行った。光照射の条件は、光強度22mW/cmとし、430nm以下の波長をカットした。この条件で、光を照射したところ、600〜1100nmに新たな吸収が現れ、導電性高分子前駆体が重合していることを確認した。重合により正孔輸送層が形成された半導体電極をアセトニトリルで洗浄した後、乾燥させた。得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜であった。
なお、上記実施例2〜19、比較例1〜2のいずれの正孔輸送層においても、導電性高分子前駆体が重合していることを確認した。
[評価]
1.初期の光電変換効率の測定
ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用いて、得られた光電変換素子に、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cmの擬似太陽光を照射した。そして、I−Vテスターを用いて、光電変換素子の室温での電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を測定した。これらの値を、下記式に当てはめて光電変換効率η(%)を求めた。
2.光劣化試験後の光電変換効率の測定
開回路状態で、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cmの擬似太陽光を6時間照射した後、前述と同様にして光電変換素子の光電変換効率η1(%)を求めた。そして、初期の光電変換効率ηに対する光劣化後の光電変換効率η1の比率η1/ηを求めた。
結果を表2に示す。
上記の結果より、光電変換素子SC−1〜19はSC−20および21と比較して、光劣化前後の効率の低下が顕著に抑制されることがわかった。
1 基板、
2 第一電極、
3 バッファ層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (12)

  1. 基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を有する正孔輸送層ならびに第二電極を有する光電変換素子において、
    前記正孔輸送層は、第一電極と電子受容体を接触させ、かつ、前記光電変換層と導電性高分子前駆体とを接触させた後、前記光電変換層に光を照射することによって前記導電性高分子前駆体を重合することにより形成することを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記電子受容体が金属塩、オゾン、酸素および過酸化水素の少なくとも1種である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記導電性高分子は、式(1):
    上記式(1)中、Xは、S、NR、Oを表し(この際、Rは水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である。)、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基である
    で表される繰り返し単位を有する、請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記光の照射波長が増感色素の吸収波長を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記増感色素がカルボキシル基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記半導体が酸化チタンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 基板、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、導電性高分子を含有する正孔輸送層、ならびに第二電極をこの順に有する光電変換素子の製造方法であって、
    第一電極上に光電変換層を形成させる工程(1)と、
    第一電極に電子受容体を接触させる工程(2)と、
    導電性高分子前駆体を前記光電変換層と接触させる工程(3)と、
    前記工程(1)〜(3)の後に、前記光電変換層に光を照射し前記導電性高分子前駆体を重合して正孔輸送層を形成する工程(4)と、
    を含む、光電変換素子の製造方法。
  8. 前記電子受容体が金属塩、オゾン、酸素および過酸化水素の少なくとも1種である、請求項7に記載の光電変換素子の製造方法。
  9. 前記導電性高分子は、式(1):
    上記一般式(1)中、Xは、S、NR、Oを表し(この際、Rは水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である。)、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数2〜30のポリエチレンオシキド基、または置換もしくは未置換の炭素原子数4〜30の環式化合物含有基である
    で表される繰り返し単位を有する、請求項7または8に記載の光電変換素子の製造方法。
  10. 前記光の照射波長が増感色素の吸収波長を含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
  11. 前記増感色素がカルボキシル基を有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
  12. 前記半導体が酸化チタンである、請求項7〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
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