JP6160069B2 - 色素増感型光電変換素子の製造方法 - Google Patents

色素増感型光電変換素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型光電変換素子、およびその製造方法、ならびにこれを用いた太陽電池に関する。
太陽電池に代表される光電変換素子とは、光のエネルギーを電気エネルギーに変換し、各種機器に電力を供給する素子である。
従来、例えば、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、またはセレン化インジウム銅などの無機系材料を用いて光電変換素子の開発が行われてきた。しかしながら、これらの無機系材料を用いた光電変換素子は、シリコンなどの原材料を高純度化するための精製工程が必要であり、または多層pn接合構造を有するため、製造工程が複雑でプロセス数も多いなどの生産性において問題点を抱えていた。また、例えばインジウムなどのレアメタルを用いる場合は、原材料の安定供給体制に対する課題も有していた。
これに対して、合成により安定供給を可能にする有機材料を用いた有機光電変換素子の研究も進められている。例えば、電子伝導性(n型)のペリレンテトラカルボン酸と正孔伝導性(p型)の銅フタロシアニンとを接合させた有機光電変換素子が報告されている。しかしながら、上記の有機光電変換素子は、無機系材料を用いた光電変換素子に比べて、光電変換効率が低い問題点を有している。
そこで、有機光電変換素子の光電変換効率を向上させる観点から、色素増感型の有機光電変換素子(以下、「色素増感型光電変換素子」とも称する)が注目されている。色素増感型光電変換素子は、通常、第1電極、光電変換層、電荷輸送層、ならびに第2電極を含む。具体的には、多孔質の半導体の表面積を増大させることにより、有機増感色素の吸着量を増やし、光電変換効率の向上を図ろうとするものである。このような色素増感型光電変換素子では、多孔質の半導体の表面に吸着させた有機増感色素が光励起され、色素から半導体に電子が注入され、色素カチオンが形成され、素子内において、電荷輸送層を経由し、対極から色素カチオンが電子を受け取るというサイクルを繰り返す。これにより、光電変換効率の向上が実現される。しかしながら、このような色素増感型光電変換素子では、電荷輸送層に電解質を有機溶媒に溶解させた電解液を使用しているので、液漏れによる化学種の散逸を防ぐ配慮が必要なものであった。
上記の問題点に対して、全固体の色素増感型光電変換素子に関する技術が提案された。例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等に代表される固体の導電性高分子を正孔輸送材料に使用し、電解重合法や塗布法により、色素を吸着させた半導体微粒子含有層の上に電荷輸送層を形成する技術が開示されている(特許文献1)。このような全固体の色素増感型光電変換素子が高い光電変換効率が得られると期待される。しかしながら、第1電極と正孔輸送材料との直接接触による短絡(リーク)が生じやすく、十分な光電変換効率が得られないという課題を抱えている。この課題を解決するために、短絡防止の手段が必要とされている。
例えば、特許文献2では、短絡を防止または抑制するために、第1電極と正孔輸送層との間に酸化チタン薄膜で構成されるバリヤ層(短絡防止層)を設ける手段が開示されている。
また、特許文献3では、第1電極と正孔輸送層との間にバリヤ層を設置するとともに、第1電極の表面に短絡防止層を形成する際の凹凸による短絡防止層の突出を防止するために、第1電極の表面を平滑化処理させる手段が開示されている。
特開2000−106223号公報 特開2003−163359号公報 特開2003−92417号公報
しかしながら、特許文献2および3によって提供される光電変換素子のいずれにおいても、第1電極と正孔輸送材料との直接接触による短絡をある程度抑制し、光電変換効率が向上したものの、いまだ光電変換効率は十分とはいえない。
そこで、本発明は、より優れた光電変換効率を有する色素増感型光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定のTi/C比を有する短絡防止層を用いることにより、色素増感型光電変換素子の光電変換効率が有意に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
1.第1電極、チタン元素(Ti)および炭素元素(C)を有する短絡防止層、半導体および増感色素を有する光電変換層、固体正孔輸送材料を有する電荷輸送層、ならびに第2電極を含む色素増感型光電変換素子であって、前記短絡防止層が、前記第1電極上に積層され、かつ、当該短絡防止層表面のTi/C比が10〜30であることを特徴とする、色素増感型光電変換素子;
2.前記第1電極の表面粗さRaが、8〜55nmである、前記1に記載の色素増感型光電変換素子;
3.前記短絡防止層の膜厚が、0.01〜10μmである、前記1または2に記載の色素増感型光電変換素子;
4.第1電極、短絡防止層、半導体および増感色素を有する光電変換層、固体正孔輸送材料を有する電荷輸送層、ならびに第2電極を含む色素増感型光電変換素子の製造方法であって、前記短絡防止層が、短絡防止層形成成分を含む塗膜を塗布法により形成する第1工程と、得られた塗膜に高エネルギー線を照射する第2工程と、によって形成されることを特徴とする、色素増感型光電変換素子の製造方法;
5.前記1〜3のいずれか1つに記載の色素増感型光電変換素子、または、前記4に記載の方法によって製造される色素増感型光電変換素子を備える、太陽電池。
本発明によれば、光電変換効率に優れる色素増感型光電変換素子、およびその製造方法、ならびにこれを用いた太陽電池が提供される。
本発明の一実施形態に係る色素増感型光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
本発明の一形態によれば、第1電極、チタン元素(Ti)および炭素元素(C)を有する短絡防止層、半導体および増感色素を有する光電変換層、固体正孔輸送材料を有する電荷輸送層、ならびに第2電極を含む色素増感型光電変換素子が提供される。この際、前記短絡防止層が、前記第1電極上に積層され、かつ、当該短絡防止層表面のTi/C比が10〜30である点に特徴を有する。
<色素増感型光電変換素子>
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の色素増感型光電変換素子の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(色素増感型光電変換素子の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係る色素増感型光電変換素子を模式的に表す断面図である。図1に示すように、色素増感型光電変換素子10は、基板1、第1電極2、短絡防止層3、光電変換層6、電荷輸送層7、および第2電極8が順次積層されてなる構成を有する。ここで、光電変換層6は、増感色素4および半導体5を含有する。図1に示されるように、第1電極2と光電変換層6との間には、短絡防止層3が配置されている。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入射しているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
(色素増感型光電変換素子の電流の流れる仕組み)
色素増感型光電変換素子10は、以下の手順に従い光電変換を行う。すなわち、(1)第1電極2に光が照射されると、光電変換層6に含有される増感色素4は、光を吸収して電子を放出する。この際、増感色素4は、電子を失った状態、つまり酸化状態となる。(2)増感色素4により放出された電子は、光電変換層6内の半導体5に移動し、その後、半導体5から第1電極2へ移動する。(3)第1電極2へ移動した電子は、対極である第2電極8へ回り、第2電極8で電荷輸送材料を還元する。(4)前記酸化状態の増感色素4は、還元された電荷輸送材料より電子を受け取り、元の状態(増感色素4)に戻る。(5)前記(1)〜(4)を繰り返すことにより、第1電極2から第2電極8へ電子の移動が繰り返し行われて、電流が流れることになる。
本発明の色素増感型光電変換素子は、短絡防止層を有し、かつ短絡防止層表面のTi/C比が10〜30である特徴を有するものである。以下、本発明に係る色素増感型光電変換素子の各部材について説明する。
[第1電極]
第1電極は、光電変換素子から電流を取り出すための機能を有する。光電変換層へ光を効率よく供給するために、第1電極としては、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の光透過率を有するものが用いられる。
第1電極を形成する材料は、特に制限されず、例えば、公知の金属材料や金属酸化物が使用できる。金属材料の具体例として、たとえば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。これらのうち、光透過性を発現し易い形状に加工したものが多く供給されていることから銀が好ましい。たとえば、開口部を有するグリッドパターン膜、微粒子やナノワイヤを分散させた膜などが多く供給されている。また、金属酸化物の具体例としては、たとえば、SnO、ZnO、CdO、CTO系(たとえば、CdSnO、CdSnO、またはCdSnO)、In、CdInなどが挙げられる。金属酸化物として好ましくは、上記金属酸化物にSn、Sb、F、Alから選ばれる1種または2種以上の原子をドープしたもの挙げられる。これらのうち、ITOと呼ばれるInにSnをドープしたもの、SnOにSbをドープしたもの、またはFTOと呼ばれるSnOにFをドープした導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の観点からFTOが特に好ましい。また、これらの形成材料は、市販のものとして入手してもよく、これらの形成材料の前駆体となる化合物から合成してもよい。
本発明に係る第1電極の表面粗さRaは、8〜55nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。Raが8nm以上の場合には、光閉じ込め効果が大きく、入射した光が散逸しにくいため、光電変換効率をより高く維持できる。また、Raが55nm以下の場合には、後述する短絡防止層を厚くする必要がなく、内部抵抗の上昇も防ぐことができるため、光電変換効率をより高く維持できる。なお、ここでいう第1電極の表面とは、後述する短絡防止層や電荷輸送層の配置されている側の表面のことを意味する。また「表面粗さRa」とは、JIS B 0633:2001において規定される算術平均粗さ(Ra)に基づくものであり、JIS B 0633:2001に規定される粗さ評価手順に従って評価される。より具体的に、Raは、10mm×10mmの表面積において、セル短辺に平行する直線部分の400μmの粗さ曲線を、2mm間隔の4箇所において測定し、これらを相加平均値である。また、本発明に係る第1電極の表面粗さRaは、第1電極を構成する材料の種類、第1電極を形成する方法や条件(塗布条件や蒸着条件など)、または形成後研磨などの処理により、その表面の粗さRaを調整することができる。
本発明に係る第1電極の厚さは、特に制限されないが、0.3〜3μmであることが好ましく、0.5〜2μmであることがより好ましい。
なお、本明細書において、各部材の「厚さ」は、触針式表面形状測定機にて試料表面の段差を測定し、各部材が隣接する場所の段差により求める。
[短絡防止層]
本発明に係る短絡防止層は、受光により発生し、電荷輸送層に注入されたホールと、第1電極の電子との再結合である短絡(リーク)の発生を防止または抑制する機能を有するものである。図1に示されるように、短絡防止層は、第1電極と電荷輸送層とが接触しないように、第1電極と光電変換層との間に配置される。
仮に、色素増感型光電変換素子に短絡防止層が設けられていない場合には、増感色素から第1電極に移動した電子は、第1電極と電荷輸送層との接触により、外部(第2電極)へ流れずに、直接電荷輸送層の正孔輸送材料へ移動してしまい、短絡(リーク)が生じうる。その結果、漏れ電流が多くなり、光電変換効率の低下を招く可能性がある。
また、従来、例えば、第1電極と電荷輸送層との間に酸化チタンから構成される短絡防止層を配置することで、前記短絡を防止していたが、酸化チタンの結晶性まで考慮していなかった。そのため、結晶化が不十分であり、十分な短絡防止機能が得られず、光電変換効率は十分なものではなかった。
これに対して、本発明に係る色素増感型光電変換素子は、短絡防止層を有する。そして、本発明に係る短絡防止層は、主に酸化チタン(TiO)から構成されるが、必須成分としてチタン元素(Ti)および炭素元素(C)を含有し、かつ、その表面のTi/C比を10〜30とすることにより、優れた光電変換効率を得ることができる。
前記短絡防止層に含有されるチタン元素は、酸化チタン結晶、酸化チタンのポリマー、または後述する酸化チタンの前駆体に由来する−Ti−O−R結合(この際、Rはアルキル基を表す。)を有する化合物(以下、単に「−Ti−O−R結合を有する化合物」とも称する。)から由来してもよく、または本発明の効果を損なわない限り、TiO、TiC、またはTiNのようなチタン化合物やチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイトから由来してもよい。これらのうち、酸化チタンのポリマーまたは−Ti−O−R結合を有する化合物に由来することが好ましい。
前記短絡防止層に含有される炭素元素は、−Ti−O−R結合を有する炭化物、または公知の短絡防止層を構成する炭素元素を含む材料から由来してもよく、好ましくは、−Ti−O−R結合を有する炭化物から由来する。
本発明に係る短絡防止層の表面に含まれるチタン元素(Ti)と、−Ti−O−R結合を有する化合物由来の炭素元素(C)と、の元素比(Ti/C)は、10〜30である。Ti/C比が10未満である場合は、短絡防止層の酸化チタン薄膜の結晶化が悪くなり、十分な短絡防止効果が達成できない。この理由は、短絡防止層中の炭素元素の比率が高く、すなわち、短絡防止層に含まれる炭化物の粒塊が多く、これらの炭化物の粒塊による隙間ができやすくなるためである。一方、Ti/C比が30より高い場合は、光電変換効率が低下する。この理由は、短絡防止層中のチタン元素の比率が高く、短絡防止層の酸化チタン薄膜が過剰に結晶化してしまい、短絡防止層の下地である第1電極との接触性(接着性)が劣るためである。
なお、本発明において、「短絡防止層表面のTi/C比」とは、短絡防止層の表面(第1電極と対向する面、すなわち、光電変換層および/または電荷輸送層と接する面)を、下記の条件および装置を用いてエッチングし、元素存在分布を測定して得られたTi元素およびC元素のそれぞれの存在強度比である。具体的な測定方法は以下の通りである。すなわち、短絡防止層表面を、Arイオンによるスパッタエッチングを行い、厚み方向におけるTiおよびCの元素存在分布についてXPS(X線光電子分光分析)デプスプロファイル測定を行い、Ti/C比の値を得る。この際、スパッタエッチングに使用される装置は、アルバックファイ製QuanteraSXMである。また、スパッタエッチングの条件としては、イオン種:Ar;加速電圧:1kV;エミッション電流:25mA;ビーム電流:2μA;およびラスターサイズ:2×2mmで1分間行った。なお、エッチングは、短絡防止層の成膜中または成膜後に付着されるごみなどを減らして、安定なTi/C比の値を得るために行われる。
また、前記短絡防止層は、本発明の効果を損なわない限り、主たる構成材料である酸化チタン以外の材料を使用してもよい。例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物;CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物などを用いることができる。これらのうち、光電変換層の半導体材料と同等の電気伝導性を有するものであることが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
本発明に係る短絡防止層は、後述する光電変換層中の半導体層とともに、多孔質であることが好ましい。この場合、短絡防止層の空孔率をC[体積%]とし、半導体層の空孔率をD[体積%]としたとき、D/C値が1.1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。当該D/C値を上記の値とするために、短絡防止層の空孔率Cは、20体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、2体積%以下であることがさらに好ましい。すなわち、短絡防止層は、緻密層(緻密な多孔質状)であることが好ましい。これにより、短絡防止層が短絡防止効果を有効に発揮することができる。
また、正孔輸送層にp型半導体を使用し、短絡防止層に金属を使用する場合には、当該短絡防止層には、正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、短絡防止層に金属酸化物を用いる場合には、当該短絡防止層には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ、伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。用いる酸化物を選択することにより、多孔質半導体層(光電変換層)から短絡防止層への電子移動効率を向上させることも可能である。
本発明に係る短絡防止層の厚さ(膜厚)としては、短絡防止効果を発揮することができる膜厚であれば、特に制限されない。具体的には、0.01〜10μmであるのが好ましく、0.02〜0.1μmであるのがより好ましく、0.03〜0.1μm程度であるのが特に好ましい。ここで、短絡防止層の厚さが、0.01μm以上であると、第1電極と電荷輸送層との短絡を十分に防止できる観点から好ましい。また、短絡防止層の厚さが10μm以下であると、半導体から第1電極への電子移動をスムーズに行うことができ、高い変換効率が得られる観点から好ましい。
[光電変換層]
次いで、本発明に係る光電変換層について説明する。
光電変換層は、起電力効果を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。本発明において、光電変換層は、半導体および増感色素を必須に含む。より詳しくは、本発明に係る光電変換層は、増感色素を担持した半導体を含有する半導体層から形成される。変換された電気エネルギーは、第1電極との間で電子の授受が行われる。また、光電変換層における光エネルギーの電気エネルギーへの変換は、以下のような手順で行われる。
まず、前述の第1電極を透過した光は、光電変換層に進入し、半導体と衝突する。半導体に衝突した光は、任意の方向に乱反射し、光電変換層内に拡散する。拡散した光は、増感色素と接触することにより、電子と正孔(ホール)が発生し、発生した電子が半導体を経て、第1電極に向かって移動する。このような仕組みにより、光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
本発明に係る光電変換層の厚さは、特に制限されないが、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜25μmがより好ましく、1〜10μmが特に好ましい。なお、光電変換層の厚さは、含有される半導体の厚さにほぼ一致するものであり、素子の小型化や製造コストの低減化を実現する観点から層状の形態を有する半導体を用いることが好ましい。
以下では、光電変換層に含有される半導体および増感色素のそれぞれについて詳細に説明する。
(半導体)
本発明において、光電変換層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムなどの単体、元素周期表の第3族(3A族)〜第5族(5A族)、第13族(3B族)〜第15族(5B族)に属する元素を有する化合物、金属カルコケニド、金属窒化物などを使用することができる。
ここで、金属カルコゲニドとは、カルコゲンと呼ばれる酸素や硫黄などの元素周期表の第16族(6B族)に属する元素と、金属と、で構成される化合物であり、例えば、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物などが挙げられる。
好ましい金属カルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウムなどのリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物などが挙げられる。
具体例としては、(1):金属酸化物TiO、TiO、Ti、SnO、Fe、WO、ZnO、Nbなど、(2):金属硫化物CdS、ZnS、PbS、Bi、CuInSなど、(3):金属セレン化物、金属テルル化物: CdSe、PbSe、CuInSe、CdTeなどが挙げられる。これらのうち、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、およびPbSが好ましく用いられ、TiOおよびNbがより好ましく用いられ、酸化チタン(TiO)が特に好ましく用いられる。酸化チタンは、良好な電子輸送性を有する他に、光に対して高い感受性を有しており、酸化チタン自体が光を受けて直接電子を発生するなど、高い光電変換効率が期待できることから特に好ましいとされる。また、酸化チタンは、安定した結晶構造を有するので、過酷な環境下で光照射が行われても経時による劣化が起こりにくく、所定性能を長期にわたり安定して発現可能である。
また、酸化チタンの結晶構造には、アナターゼ型とルチル型があり、色素増感型光電変換素子の半導体材料としては、アナターゼ型の結晶構造を主とするもの、ルチル型の結晶構造を主とするもの、両者の混合物を主とするもののいずれも使用することができる。これらのうち、アナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンは、効率のよい電子輸送を行うことができる。また、アナターゼ型とルチル型を混合して使用する場合、アナターゼ型のものとルチル型のものの混合比は特に限定されるものではなく、アナターゼ型:ルチル型=95:5〜5:95とすることが可能で、80:20〜20:80とすることが好ましい。
その他、本発明に係る半導体に使用可能な金属窒化物としては、たとえば、Tiが代表的なものであり、さらに、GaPやInPなどの金属リン化合物、GaAsなどの化合物も半導体として使用可能なものである。
本発明に係る半導体は、単独で使用されても、または2種以上の半導体を併用して使用されてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の1種または数種類を併用することもできるし、あるいは、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。あるいは、半導体として、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に開示されている酸化亜鉛/酸化錫複合の形態で使用してもよい。なお、半導体として、金属酸化物もしくは金属硫化物以外の成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
さらに、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジンなどが挙げられるが、なかでもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
本発明において、半導体材料は、衝突した光の乱反射および拡散を促進し光電変換効率を向上させる観点から、当該材料の表面に複数の微細な孔(細孔)を有するものが好ましく、前述の酸化チタンが表目に細孔を有するため、高い光電変換効率を期待できる。本発明に係る半導体材料の細孔は、例えば、空孔率と呼ばれる半導体粒子表面の単位面積あたりに占める孔の面積の比率で規定することができる。すなわち、適度な空孔率を有する半導体材料は、光の乱反射と拡散を促進させる他に、細孔による表面積の増大に伴って半導体材料の外面および細孔の内面に吸着している増感色素の吸着面積も増大しており、光電変換効率のさらなる向上が行える。本発明に係る半導体材料の空孔率は、特に限定されず、例えば、酸化チタンの場合、5〜90%が好ましく、15〜80%がより好ましく、25〜70%が特に好ましい。
本発明係る半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、本発明に係る半導体の大きさも特に制限されない。例えば、半導体層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。半導体材料の平均粒径を上記範囲内にすると、後述する製造方法における当該ゾル液を形成する際に、半導体材料の均一性を向上させ易くなり、均一性の向上により半導体材料の比表面積が揃い、各半導体材料へ増感色素が同等レベルで吸着することができ、発電効率の向上に寄与できる。なお、上記半導体層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察したときの1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
(増感色素)
本発明において、増感色素は、光照射時、光励起され、起電力を生じる機能を有する。より具体的には、光電変換層において、増感色素が存在している領域が、電子と正孔を発生する受光領域として機能する場であり、前述したように、増感色素は、半導体の外面または孔内面に沿って吸着しているため、増感色素による発生した電子は、当該増感色素と結合している半導体に移動し、その後、半導体より第1電極に向かって移動する。
本発明で用いられる増感色素は、特に制限されず、光電変換素子に用いられる公知の増感色素を用いることができる。本発明に係る増感色素は、後述する半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものである。また、増感色素が半導体に担持されている態様としては、半導体表面へ吸着されている態様、または半導体が多孔質のポーラスな構造を有する場合には、半導体の多孔質構造に色素が充填されている態様が挙げられる。より具体的に、本発明において、半導体材料と増感色素との間での吸着は、例えば、分子間引力や静電引力などの物理的作用によるもの、または共有結合や配位結合などの化学結合によって実現されるものである。
特に、本発明の光電変換素子の用途が、後述する色素増感型太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして、太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を併用することが好ましい。
本発明で用いられる増感色素としては、特に制限されないが、アリールアミン系色素であることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
上記一般式(1)中、Arは環式化合物基を表す。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のシクロアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のシクロアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアリール基、アミノ基、シアノ基、または置換もしくは未置換の複素環基を表す。この際、Rは他の基と連結して環構造を形成されていてもよい。AおよびAは、それぞれ独立して、単結合、2価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、または置換もしくは未置換の2価の複素環基を表す。Zは有機基を表す。nは1〜3の整数であり、この際、nが1のとき、2つのRは同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。また、nが2以上のとき、複数のA、A、Zは同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。pおよびqは0〜6の整数である。pおよび/またはqが2以上のとき、複数のA、Aは同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。
前記Arとしては、特に制限されないが、2価〜4価の環式化合物基が挙げられる。当該環式化合物基の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、チオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等の芳香族環から導かれるものである。これらの芳香族環を複数組み合わせて用いてもよい。例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ビチオフェン基、4−チエニルフェニル基、ジフェニルスチリル基等、さらには、スチルベン、4−フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン、トリフェニルエテン(例えば、1,1,2−トリフェニルエテン)、フェニルピリジン(例えば、4−フェニルピリジン)、スチリルチオフェン(例えば、2−スチリルチオフェン)、2−(9H−フルオレン−2−イル)チオフェン、2−フェニルベンゾ[b]チオフェン、フェニルビチオフェン、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン、フェニルジチエノチオフェン環由来の基等が用いられうる。
これらの芳香族環は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、C1〜C24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、オクタデシル基、3−エチルペンチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシエチル基等)、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基)、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基等)等が挙げられる。
これらのうち、Arは、上述した芳香族基から水素原子を2個または3個除いた2価または3価の芳香族基であることが好ましい。
前記アルキル基としては、特に制限されないが、C1〜C24の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のC1〜C6の直鎖アルキル基、およびイソプロピル基、t−ブチル基等のC3〜C6の分岐鎖アルキル基であることが好ましい。
前記シクロアルキル基としては、特に制限されないが、C3〜C9のシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等が挙げられる。これらのうち、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3〜C6のシクロアルキル基等が好ましい。
前記アルコキシ基としては、特に制限されないが、C1〜C18のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、C6〜C18のアルコキシ基であることが好ましく、デシルオキシ基であることがより好ましい。
前記アルケニル基としては、特に制限されないが、C2〜C18の直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基が挙げられる。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。これら以外のアルケニル基が用いられてもよい。
前記シクロアルケニル基としては、特に制限されないが、C3〜C18のシクロアルケニル基が挙げられる。具体的には、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、特に制限されないが、C2〜C18の直鎖もしくは分岐鎖アルキニル基が挙げられる。具体的には、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、特に制限されないが、C6〜C30のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基であることが好ましい。
前記複素環基としては、特に制限されないが、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環基が挙げられる。前記複素環基は、単環式複素環基に限られず、複数の複素環が縮合した縮合複素環基、複素環と炭化水素環(非芳香族性炭化水素環または芳香族炭化水素環)とが縮合(オルソ縮合、オルソアンドペリ縮合など)した縮合複素環基であってもよい。また、当該複素環基は、非芳香族性または芳香族性のいずれであってもよい。さらに、複素環と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基においては、複素環または炭化水素環のいずれかが結合手を有していてもよい。具体的には、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、イソベンゾフラニル、クロメニル基、チエニル基、チアントレニル基、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フェノキサチイニル基等が挙げられる。これらのうち、ピロリル基、インドリル基、カルバゾリル基であることが好ましい。
前記炭化水素基とは、炭素原子および水素原子からなる基であり、特に制限されないが、上述のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、およびアルキニル基から導かれる2価の基を意味する。前記炭化水素基は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキレン基としては、特に制限されないが、C1〜C24の直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、iso−ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられる。
前記アリーレン基としては、特に制限されないが、C6〜C30のアリーレン基が挙げられる。具体的には、フェニレン基、ビフェニル−ジイル基、ターフェニル−ジイル基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、テトラセン−ジイル基、フルオレン−ジイル基、フェナントレン−ジイル基等が挙げられる。
なお、一般式(1)における「置換または未置換の」における「置換」とは、R、A、およびAとして記載された基を構成する水素原子が置換基に置換されている場合をいう。また、「未置換」とは、前記水素原子が置換基に置換されていない場合をいう。前記置換基としては、特に制限されないが、上記で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、および複素環基でありうる。
好適なRとして、以下の化学式(2−A)〜(2−S)が例示される。
上記化学式(2−A)および(2−G)において、Yは、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基である。また、上記化学式(2−M)〜(2−S)において、波線部は他の基と連結する位置を示す。当該破線部が他の基と連結することにより、例えばRがArとともに縮合環構造を形成する。さらに、上記化学式(2−S)において、hは1〜17の整数である。
また、好適なAおよびAとして、以下の化学式(3−A)〜(3−b)が例示される。
上記化学式(3−P)、(3−R)、(3−X)、および(3−Z)において、Yは、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基である。また、上記化学式(3−I)において、hは1〜17の整数である。
前記Zとしては、酸性基、および/または電子吸引性基もしくは電子吸引性環構造を有するArのいずれかの部分構造を有する有機基が挙げられる。好ましくは少なくとも1つのカルボキシル基を含む有機基である。なお、前記Zは、一般式(1)において、Ar、A、またはA、好ましくはArと結合する。
前記酸性基としては、特に制限されないが、カルボキシ基、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基(−PO(OH))、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、アルコキシシラン基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
また、前記電子吸引性基としては、特に制限されないが、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基等が挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基であることが好ましく、シアノ基、ニトロ基であることがより好ましい。
さらに、電子吸引性環構造としては、特に制限されないが、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環であることが好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環であることがより好ましい。
当該Zは、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入することができる。また、部分構造Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、部分構造Zは、電荷、特に正の電荷を帯びていてもよく、この際、Cl、Br、I、ClO 、NO−、SO 2−、HPO 等の対イオンを有していてもよい。
好適なZとして、以下の化学式(4−A)〜(4−N)が例示される。
上記化学式(4−H)において、gは1〜17の整数である。
本発明に係る好適な増感色素の例を以下に示す。
上記増感色素のうち、A群、B群の色素を用いることが好ましい。
上記増感色素の他、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物を使用してもよい。
また、本発明に用いられるその他の増感色素としては、例えば、RuLCl、RuL(CN)、ルテニウム535−bisTBA(Solaronics社製)、〔Ru(NCS)Oなどの金属錯体色素がある。ここで、RuLClとRuL(CN)のLは、2,2−ビピリジン、またはその誘導体を表す。さらに、前記金属錯体色素の他に、シアン系色素、アゾ系色素などの有機色素や、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素などの天然物由来の有機色素を使用することも可能である。
[電荷輸送層]
本発明に係る電荷輸送層は、光励起によって、酸化された増感色素に電子を供給して還元し、増感色素との界面で生じた正孔を第2電極へ輸送する機能を有する。電荷輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層上部分だけなく、多孔質の半導体の空隙内部に充填されうる。
本発明において、電荷輸送層を構成する電荷輸送材料としては、固体正孔輸送材料が主機能成分として含有される。
本発明に係る電荷輸送層は、固体正孔輸送材料としての下記一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を、重合して形成される重合物(導電性高分子)から構成される。以下、当該重合物を「重合体」とも称する。
上記一般式(2)中、XおよびXは、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR、−SR、−SeR、または−TeRを表す。なお、XおよびXは、同一であってもまたは異なるものであってもよい。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。ここで、XおよびXは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記X、XおよびR〜Rとしての、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基は特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
これらのうち、XおよびXとしては、炭素数6〜18の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜18の直鎖のアルキル基がより好ましい。重合体が長鎖(例えば、炭素数6〜18の)アルキル基を有する場合には、当該アルキル基が自己凝集を阻害する官能基として作用して、自己凝集構造の形成を抑制できるため耐久性が向上できると推定される。
また、R〜Rとしては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記XおよびXとしての、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基は特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、1−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基などが挙げられる。
上記XおよびXとしての、炭素数6〜24のアリール基は特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、フルオレニル基がより好ましい。
、XおよびR〜Rにおいて、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基」、「炭素数6〜24のアリール基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。
、X、およびR〜Rにおいて、置換基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基など)、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、1−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基など)、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基など)、炭素数1〜18のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基など)、炭素数1〜24のアシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、t−ブチルアセチル基、ピバロイル基、カプロイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−メチルヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基など)、炭素数6〜24のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基など)、炭素数2〜24のヘテロアリール基(例えば、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリノ基、チオモルフォリノ基、ホモピペリジニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、クロメニル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フラザニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピラニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ベンゾキサジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェナントリジニル基など)、およびアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、からなる群から選択される。なお、上記において、同じ置換基で置換されることはない。すなわち、置換のアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
上記X、X、およびR〜Rの置換基は、好ましくは、炭素数6〜18の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは、n−オクチル基である。
上記一般式(2)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、本発明に係る電荷輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記一般式(2)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。ここで「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。他の単量体の含有量は、重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されないが、重合体を構成する全単量体を100molとした場合に、好ましくは0〜90molであり、さらに好ましくは0〜50molである。
本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される1種もしくは2種以上の化合物、またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記一般式(2)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記一般式(2)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用しできる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2〜7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマー(H2−1)の製造方法の好ましい例を記載する。ただし、本発明は、下記好ましい例に限定されるわけではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマーの合成
撹拌装置、温度計、および還流冷却管を装着した1000mLのガラス製三口フラスコに、無水テトラヒドロフラン750mL、および3,4−エチレンジオキシチオフェン25g(0.15mol)を添加し、窒素気流下で撹拌しながらアセトン/ドライアイス浴中で内温が−70℃となるまで冷却する。この後、1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液113mL(0.18mol)をシリンジで5分間かけて反応系に滴下する。25分後、無水塩化銅23.5g(0.17mol)を添加し、そのまま3時間程度撹拌しながら反応させる。反応液を水10Lに添加し、生成物を濾過した後、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:塩化メチレン)を用いて精製することにより、EDOTダイマー17.9g(収率:約72%)を黄白色結晶として得た。
本発明に係る電荷輸送層は、上記一般式(2)で表される化合物またはその化合物の多量体を含む固体正孔輸送材料を用いて、電解重合反応を行うことによって形成することができるが、その詳細については後述する。当該固体正孔輸送材料としての重合体は、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するために、そのイオン化ポテンシャルが色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが好ましい。すなわち、本発明で用いられる重合体のイオン化ポテンシャルの好適な範囲としては、使用される増感色素によって異なるが、当該重合体がドープされた状態で、4.5〜5.5eVであることが好ましく、4.7〜5.3eVであることがより好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、電荷輸送層の吸光度は1.0以下であることが好ましい。また、重合反応による電荷輸送層を形成する場合において、得られる固体正孔輸送材料としての重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい電荷輸送能を有する重合度を出すためには、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
なお、本明細書において、電荷輸送層(固体正孔輸送材料としての重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、FTO導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に色素を吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、前記一般式(2)の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
本発明に係る電荷輸送層は、前記固体正孔輸送材料の他に、添加剤を含んでもよく、例えば、N(PhBr)、SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBFH1−3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明に係る電荷輸送層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜2000nmである。
[第2電極]
次いで、本発明に係る第2電極について説明する。第2電極は、上述の第1電極とともに、光電変換素子から電流を取り出すための機能を有する。
第2電極の材料としては、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料または半導電性材料が用いられる。絶縁性の物質であっても、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。
本発明において、第2電極は、素子の電気抵抗を低減する観点などから、電荷輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第2電極は、電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。
第2電極が公知の導電性材料または半導電性材料を用いて形成される場合において、導電性材料として、例えば、各種イオン導電性材料、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属もしくはこれらを含む合金、または黒鉛等の各種炭素材料等が挙げられる。また、半導電性材料としては、例えば、トリフェニルジアミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物(たとえば、銅フタロシアニン等)等またはこれらの誘導体等のp型半導体材料が挙げられる。これらのうち、金などの金属薄膜が第2電極として好ましく用いられる。
本発明に係る第2電極の表面抵抗は、特に制限されず、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、80Ω/cm以下であることが好ましく、20Ω/cm以下であることがより好ましい。なお、第2電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
本発明に係る第2電極の厚さは、材料や用途等により適宜設定され、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。
以上の各構成部材を用いて、本発明の色素増感型光電変換素子を形成することができるが、必要に応じて、他の構成を加えることも可能である。例えば、本発明の色素増感型光電変換素子、または本発明の色素増感型光電変換素子を用いる色素増感型太陽電池の強度を付与するために、基板を用いることができる。
[基板]
一形態に係る色素増感型光電変換素子は、基板を有していてもよい。基板は、図1にも示すように、第1電極の短絡防止層と接する面と対向する面に配置されてもよい。
基板は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。基板側から光が入射する場合、基板はこの光を透過させることが可能な、すなわち、光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。具体的には、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
基板は、公知のものから適宜選択が可能であり、石英やガラス(実施例:ソーダガラス)などの透明無機材料や以下のような公知の透明樹脂材料が挙げられる。
透明樹脂材料の具体例としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、トリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミドイミド、シクロオレフィン重合体、スチレンブタジエン共重合体などが挙げられる。上記透明樹脂材料の中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)などは可撓性を有するものが市販され、フレキシブルな光電変換素子を製造する上で好ましい。
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度などについては公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。この中で、例えば、ガラスなどの透明無機材料のような硬質材料を基板として使用する場合は、その厚さは0.1〜1.5mmが好ましく、0.8〜1.2mmがより好ましい。また、透明樹脂材料を使用する場合も前記透明無機材料と同じ平均厚さとしてもよいが、可撓性を有する透明樹脂材料を使用する場合は0.5〜150μmが好ましく、10〜75μmがより好ましい。
また、本発明において、基板上に第1電極が設けられている積層体を使用してもよく、基板とその上に形成された第1電極の積層体を、「導電性支持体」とも称する。導電性支持体の表面抵抗は50Ω/cm以下であることが好ましく、10Ω/cm以下がより好ましい。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。また、導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。導電性支持体の厚さは、特に制限されないが、0.1〜5mmとすることが好ましい。
<色素増感型光電変換素子の製造方法>
本発明の他の形態では、第1電極、短絡防止層、半導体および増感色素を有する光電変換層、固体正孔輸送材料を有する電荷輸送層、ならびに第2電極を含む色素増感型光電変換素子の製造方法が提供され、この際、前記短絡防止層が、短絡防止層形成成分を含む塗膜を塗布法により形成する第1工程と、得られた塗膜に高エネルギー線を照射する第2工程と、によって形成されることを特徴とする。
以下では、本発明の色素増感型光電変換素子の製造方法について、詳細に説明する。
[第1電極の形成方法]
第1電極は、例えば、前述の基板などの上面に形成することができる。第1電極の形成方法として、スプレー熱分解法(Spray Pyrolysis Deposition:SPD)や、大気下気相化学成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)などを挙げることができる。中でも、SPD法は、成膜温度が低い(例えば、400℃)、出発原料の選択自由度が高い、成分組成の調整が容易で、または低温でも成膜速度が速いなどの利点を有しているため、より好ましく用いられる。
SPD法において、SPD薄膜形成装置を用いて、通常、あらかじめ基板などをSPD薄膜形成装置の反応器内に置き、成膜温度(例えば、350〜550℃)になるまでヒータで加熱し、第1電極を形成する材料となる塗布液を当該基板へスプレーすることにより、基板上に付着した塗布液中の溶媒が蒸発するとともに、導電性金属酸化物が残される、あるいは残った溶質が化学反応して導電性金属酸化物が生成されるというプロセスを、望ましい厚さになるまで繰り返しスプレーすることで、第1電極を形成することができる。
第1電極を形成する材料としては、市販の前述した材料を用いてもよく、当該材料の前駆体を用いてもよい。例えば、前述の好ましいFTO電極を形成する場合では、市販のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)を用いることができ、一方、塩化スズ(IV)五水和物などを適宜な溶媒(例えば、エタノール水溶液)に溶かし、フッ化アンモニウムの飽和水溶液と混合させたものをSPD法に用いることもできる。なお、ここでいう適宜な溶媒として、特に制限されず、アルコールなどの有機溶媒、水、またはアルコールと水の混合溶液などが挙げられる。
このようなSPD法により、表面粗さRaの低い電極から、表面粗さRaの大きい電極まで比較的高速で作成することができる。
また、第1電極の表面粗さRaを調整する方法としては、例えば、アルミナを主体とする超微粒子のスラリー研磨剤と繊維製の研磨パッドを用いて手動で研磨する方法が挙げられる。研磨時間に応じて、望ましい表面粗さRaを制御することができる。
なお、第1電極を形成した際に、その形成方法や形成条件などにより、上面の表面粗さRaが、望ましい範囲内であれば、前記研磨処理を省略することができる。
[短絡防止層の形成方法]
本発明に係る短絡防止層の形成方法は、塗布法により、塗膜を形成する第1工程と、得られた塗膜に高エネルギー線を照射する第2工程とを含む。
(第1工程)
ここで、第1工程の塗膜の形成方法としては、特に制限されず、インクジェット法、スピンコート法などの公知の手法が用いられるが、層の厚さの設定が幅広く行えるという観点から、インクジェット法が好ましい。
以下では、インクジェット法による短絡防止層の形成方法について説明する。
インクジェット法とは、本発明に係る短絡防止層形成用の塗布液を、上述で形成した第1電極の上面に液滴単位で吹き付けることにより塗膜を形成する方法である。インクジェットヘッドは圧電素子方式であるのが好ましく、吐出量としては、1滴あたり好ましくは4〜42ピコリットル、より好ましくは8〜30ピコリットルである。また、短絡防止層形成用の塗布液をインクジェット法で吐出する回数は、特に制限されず、所望の厚さになるよう適宜調整することができる。
本発明において、短絡防止層形成用の塗布液としては、短絡防止層形成成分と、溶媒とを含む。
短絡防止層形成成分
本発明に係る短絡防止層形成成分は、短絡防止層の形成材料(例えば、前記必須成分である酸化チタン)の前駆体(以下、「短絡防止層前駆体」とも称する)が挙げられる。本発明に用いられる酸化チタンの前駆体としては、有機または無機のチタン化合物などが挙げられ、特に、有機チタン化合物が好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、Ti−C型の有機チタン化合物、チタンアルコキシド類(Ti−O−C型)、チタンキレート(錯体)類、またはチタンアシレート類などを用いることができるが、チタンアルコキシド類がより好ましく用いられる。具体的には、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー等のチタンアルコキシド;チタニウムステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート;チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート;などの有機チタン化合物が挙げられる。
前記各種の有機チタン化合物は、例えば、アセチルアセトン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、その他のアミン、ピリジンカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、その他のヒドロキシカルボン酸等の配位子と混合し、酸化チタン前駆体の錯体を形成したものであってもよい。当該錯体としては、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
また、酸化チタンの前駆体として、三塩化チタン、四塩化チタンなどのハロゲン化チタンなどの無機系チタン化合物が挙げられる。この場合には、無機チタン化合物を、無水エタノール、2−ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノールなどの有機溶媒に溶解することにより、有機溶媒がチタンに配位した化合物となり、製造に用いられる。
溶媒
塗布液に用いられうる溶媒としては、特に制限されないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系有機溶剤;ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、二硫化炭素、水等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、これらの溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。
塗布液中の短絡防止層形成成分の含有量としては、特に制限されないが、塗布液中の溶媒100質量部に対して、0.1〜65質量部であることが好ましく、0.5〜50質量部であることがより好ましい。
(第2工程)
本発明の色素増感型光電変換素子の製造方法は、第1工程で得られた塗膜に高エネルギー線を照射する第2工程に特徴を有する。
従来の短絡防止層の形成方法は、前記の短絡防止層形成用塗布液を、透明導電性基板上に塗布した後、得られた塗膜を乾燥および/または焼結することで短絡防止層を形成するものである。前記乾燥および/または焼結は、一般的には、仮乾燥による加熱、および結晶化のための加熱を含む。
前記仮乾燥による加熱は、有機溶媒を揮発、除去するために行われる。仮乾燥による加熱は、好ましくは50〜250℃で1〜60分間程度、より好ましくは100〜200℃で5〜30分間程度の加熱処理が行われる。
前記結晶化のための加熱は、好ましくは300〜700℃で1〜70分間、より好ましくは400〜550℃で5〜45分間程度の加熱処理が10回程度繰り返される。
ところが、前記公知の方法では、十分な結晶性を有する酸化チタン膜を得るためには、高温および/または長時間の熱処理が必要となる。その結果、第1電極と短絡防止層との熱膨張係数の差によって、第1電極と短絡防止層との界面に隙間が生じ、これによって第1電極と短絡防止層との密着性が低下しうる。そうすると、内部抵抗が高くなり、高い光電変換効率が得られない場合がある。また、密着性を考慮して、短時間で熱処理を行うと、成膜される酸化チタン膜中に未反応の有機チタン化合物が残存しやすくなり、好適な短絡機能を果たせない。このような公知の方法で形成された短絡防止層表面のTi/C比を測定したところ、10未満であった。
これに対し、本発明の第2工程では、高エネルギー線を照射して、短絡防止層を形成する。これにより、前述した短絡防止層形成成分(特に、短絡防止層前駆体)を直接分解することができるため、従来の短絡防止層の形成方法に比べて、温度上昇が少なく、短時間での成膜が可能となる。その結果、電極/短絡防止層界面の隙間発生を抑制することができ、第1電極と短絡防止層との密着性がより好適なものとなりうる。また、未反応の有機チタン化合物が過度に残存することを防止することが可能となりうる。さらに、照射強度、または時間により、望ましいTi/C比率を制御することができる。すなわち、照射強度または照射時間を制御することにより、形成された短絡防止層表面のTi/C比を高い値、すなわち10〜30にすることができる。以下、本発明に係る高エネルギー線照射工程の詳細について説明する。
本発明に用いられる高エネルギー線としては、近紫外線、真空紫外線、極端紫外線、電子線、X線、γ線、シンクロトロン放射線などが挙げられる。特に、波長200nm以下の真空紫外線が好ましく用いられる。
真空紫外線光源としては、特に制限されず、公知のものが用いられる。例えば、低圧水銀ランプ、エキシマランプなどが挙げられる。これらのうち、エキシマランプ、特に、Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
エキシマ光とは、希ガスエキシマーまたはヘテロエキシマーを動作媒質とするレーザー光である。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、最外殻電子が閉殻となっているため、化学的に非常に不活性であることから、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は、他の原子と結合して分子を作ることができる。例えば、希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe +Xe
Xe →Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプは、前記エキシマ光を利用する。
エキシマランプは、放射が一つの波長に集中し必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高い。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
放電の形態は、誘電体バリア放電でも無電極電界放電でもいずれも使用できる。電極の形状は、ランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。Xeエキシマランプから放射される光は、172nmの短波長の光であって、エネルギーが高いことから、有機化合物の結合を切断する能力が高いことが知られている。また、この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でであっても効率よく活性酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、転化、結晶化、担持などを実現できる。したがって、例えば、波長185nm、254nmの真空紫外線を発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べると、Xeエキシマランプは、高い有機化合物の結合切断能を有し、活性酸素やオゾンを効率的に発生させることができ、低温かつ短時間で第1工程において得られた塗膜を結晶化することができる。また、Xeエキシマランプは、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは、光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、単一波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
真空紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基板がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定すべきである。例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基板表面における照射強度が好ましくは20〜300mW/cm、より好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定することができる。
また、真空紫外線の照射時間は、使用される基板や層の組成、濃度などによっても異なるが、通常、1.0秒〜10分間であり、好ましくは0.5秒〜10分間である。なお、本発明に係る短絡防止層表面のTi/C比を10〜30にするためには、照射強度または照射時間を調整することにより実現する。
真空紫外線の照射温度は、適用する基材によっても異なり、当業者によって適宜決定されうる。真空紫外線の照射温度は、好ましくは50〜200℃である。当該温度が前記範囲内であると、例えば、基板として透明樹脂材料を用いた場合には、基板の変形や強度の劣化等が生じにくく、基板の特性が損なわれないことから好ましい。
また、真空紫外線の照射雰囲気は、特に制限されず、空気、N、酸素、アンモニアなどの雰囲気を適宜に選択することができる。なお、活性酸素やオゾンを発生させて効率的に改質を行う観点から酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。真空紫外照射の酸素濃度は300〜10000ppm(1%)であることが好ましく、500〜5000ppmであることがより好ましい。真空紫外線の照射雰囲気中の酸素以外のガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、コストの観点から、乾燥窒素ガスであることがより好ましい。なお、酸素濃度は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガス等のガス流量を計測し、流量比を変えることで調整することができる。
また真空紫外線の照射は、バッチ処理にも連続処理にも適用可能であり、使用する基板の形状によって適宜選定されうる。
以上の第1工程および第2工程により、本発明に係る短絡防止層を形成することができる。
[光電変換層の形成方法]
次に、光電変換層の形成方法について説明する。
本発明の一実施形態によれば、上述のように、光電変換層は、半導体を含有する半導体層に増感色素が担持された構成を有する。したがって、上記で形成した短絡防止層上に半導体材料を用いて半導体層を形成した後、当該半導体層に増感色素を担持させること(増感処理)で、光電変換層を形成することができる。
半導体層は、半導体材料が粒子状の場合は、短絡防止層へ半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体を含む塗布液)を塗布、または吹き付けた後、焼成することによって形成することができる。また、半導体材料が膜状である場合は、短絡防止層上に膜状の半導体を貼り合わせることで半導体層を形成することができる。これらのうち、粒子状の半導体材料を用いて半導体層を形成する方法が好ましい。
増感処理は、半導体層に増感色素を吸着、充填等を行うことによって半導体層に担持することができる。
以下、本発明に好ましく用いられる光電変換層を形成する方法について詳細に説明する。本形態によれば、半導体層は、粒子状の半導体材料(以下、「半導体粒子」とも称する)を用いて形成される。前記方法は、以下の工程を含む。すなわち、(1)半導体粒子を含有する塗布液の調製、(2)半導体粒子を含む塗布液の塗布および焼成処理、(3)半導体層への増感色素担持(吸着)処理である。
(1)半導体粒子を含む塗布液の調製
この工程では、半導体粒子を公知の溶媒中へ投入、分散させることにより、塗布液を調製する。
前記半導体粒子としては、特に制限されないが、上述の半導体において使用される材料が用いられうることから、ここでは説明を省略する。
塗布液中の半導体粒子の濃度は、0.1〜70質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましい。
半導体粒子は、粒径の小さなものが好ましく、たとえば、平均1次粒径が1〜5000nmのものが好ましく用いられ、2〜100nmのものがより好ましく使用される。
また、半導体粒子を分散させる溶媒は、半導体粒子を凝集させずに分散させることが可能なものであれば特に限定されるものでなく、水や公知の有機溶媒、あるいは水と有機溶媒の混合液が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、またはアセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース類などが挙げられる。
また、塗布液中には、必要に応じて公知の界面活性剤、酸(例えば、酢酸、硝酸など)、粘度調整剤(例えば、ポリエチレングリコールなどの高アルコールなど)、キレート剤などを添加することも可能である。
(2)半導体粒子を含む塗布液の塗布と焼成処理
この工程では、上述の半導体粒子を含む塗布液を短絡防止層へ塗布、乾燥などを行った後、空気中または不活性ガス雰囲気下で焼成処理を行うことにより、層状に半導体を固着させる。この層状に形成された半導体が、半導体層(半導体膜ともいう)と呼ばれるものである。
ここで、前記半導体粒子を含む塗布液の塗布方法としては、特に制限されず、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法などの公知の方法が挙げられる。
得られた塗膜は、必要に応じて乾燥させてもよい。
次に、塗膜を焼成して半導体層を形成する。塗布によって形成された塗膜は、支持体との結合力や半導体粒子同士の結合力が弱いものであるが、焼成処理を行うことにより、支持体との結合力または半導体粒子同士の結合力を向上させることができる。その結果、得られた半導体層は、耐久性のある強固な層になる。
また、焼成処理により半導体層は強固な多孔質構造を形成しうる。半導体層が多孔質構造を構成する空隙を有することにより、当該空隙に電荷輸送物質を存在させることができる。その結果、半導体層と電荷輸送層との電子の授受を好適に行うことがで、光電変換効率が向上しうる。このように、多孔質構造の半導体層は、見かけの表面積に対して実際の表面積が大きなものになっているので、光電変換効率をはじめとする各種性能を向上させる上で非常に有効なものである。
焼成処理を行う際の温度としては、上記の空孔率を有する焼成膜を得る観点から、1000℃より低いことが好ましく、200〜800℃の温度範囲がより好ましく、300〜800℃の温度範囲が特に好ましい。また、例えば、樹脂製の基板上に焼成処理した半導体層を形成する場合は、200℃以上で焼成処理を行う必要はなく、代わりに加圧処理を施すことにより半導体粒子同士の固着や基板への固着が可能である。また、マイクロ波を使用して、基板を加熱させることなく半導体層のみを加熱し、焼成処理を行うことも可能である。上記の観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分間であることがより好ましく、10〜120分間であることが特に好ましい。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われてもよく、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返し行われてもよい。 また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度などにより制御することができる。
さらに、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりし、増感色素から半導体粒子への電子注入率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
半導体層の厚さは、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、500nm〜30μmであることがより好ましい。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。
半導体層の空孔率(D)は、例えば、1〜90体積%であることが好ましく、10〜80体積%であることがより好ましく、20〜70体積%であることが特に好ましい。半導体層内に形成される空孔は、層の厚み方向に対して貫通性を有しており、公知の方法による空孔率の測定が可能である。空孔率の代表的な測定手段としては、たとえば、市販の水銀ポロシメータ「島津ポアサイザー9220型(島津製作所社製)」等がある。
なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であってもよく、または平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む多層膜(層状構造)であってもよい。
(3)半導体層への増感色素担持(吸着)処理(半導体層の増感処理)
半導体層への増感色素の担持方法としては、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体層に増感色素を担持させる方法としては、増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥させた半導体層が設けられている基板を長時間浸漬する方法が一般的である。この際、半導体層を焼成により形成された基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして、膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層内部深くまで侵入できるようになり、半導体層が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
半導体層への増感色素の総担持量は、0.01〜100mmol/mであることが好ましく、0.1〜50mmol/mであることがより好ましく、0.5〜20mmol/mであることが特に好ましい。
増感処理は、単独の種類の増感色素を使用する方法および複数種類の増感色素を併用する方法のいずれの方法も可能である。特に、本発明の光電変換素子の一用途である後述の太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して使用することが好ましい。また、増感色素を複数種併用して増感処理を行う際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよく、それぞれの色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して製造してもよい。また、後者の場合において、半導体に増感色素などを含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合することなどにより製造してもよい。
また、空孔率の高い半導体層の場合には、空孔に水分、水蒸気などにより水が半導体層や半導体内部の空孔に吸着する前に、増感色素などの吸着処理を完了することが好ましい。
増感色素の溶解に用いられる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ、半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば、特に制限されない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
増感色素を含有する溶液への浸漬時間は、半導体層に溶液を深く進入させて半導体への吸着を十分に進行させて半導体を十分に増感させるため、たとえば、室温(25℃)の条件下で3時間から48時間行うことが好ましく、4時間から24時間行うことがより好ましい。また、含有する増感色素が分解しない限り溶液を加熱してもよく、たとえば、溶液の温度を25℃から80℃に設定して行うことも可能である。なお、前記溶液が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りではない。
[電荷輸送層の形成方法]
電荷輸送層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして、または適宜に修飾して適用できる。例えば、上述した固体正孔輸送材料を有機溶剤に溶解し、当該溶液に、光電変換層を有する基板を浸漬し、重合を行う方法が挙げられる。
以下、重合方法について詳細に説明する。重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射を組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記電荷輸送層の形成につながる。すなわち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、本発明に係る重合体を構成するモノマー、支持電解質(アクセプタードーピング剤)、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(2)で表される単量体および/または該単量体の多量体、ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質(アクセプタードーピング剤)を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
なお、支持電解質(アクセプタードーピング剤)は、単量体または多量体の電解重合の後に、得られた重合膜に塗布してもよい。塗布方法は特に制限されないが、支持電解質(アクセプタードーピング剤)を上記で例示した溶媒に溶解させ、この溶液に重合膜を浸漬させればよい。これにより、電荷輸送層の伝導度が上昇するので好ましい。
電解重合溶液中の前記単量体或いはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/Lが好ましく、1〜100mmol/Lがより好ましく、5〜20mmol/Lが特に好ましい。また、電解重合溶液中の支持電解質の濃度は、0.01〜10mol/L程度が好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましい。次いで、第1電極(透明導電膜)、短絡防止層および光電変換層を形成した基板をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照電極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。
印加電流密度としては、0.01〜1000μA/cmであることが好ましく、1〜500μA/cmであることがより好ましい。
保持電圧としては、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。
電解重合溶液の温度としては、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であり、一般的には、−30℃〜80℃である。
また、当該電解重合に光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用してもよい。照射する光の波長は380〜1200nmであることが好ましく、430〜800nmであることがより好ましく、光源としてはキセノンランプが好適である。
また、光の強度としては、5〜50mW/cmであることが好ましく、20〜40mW/cmであることがより好ましい。
このように光照射を行いながら電解重合を行うことにより、高い電位をかける必要がないため、色素を劣化させることなく重合することができる。かかる方法によると、光電変換層(半導体層)の表面に緻密に重合体の層を形成できる。
さらに、必要に応じて、導電性高分子のドープ率向上および半導体の酸化チタンから電荷輸送層への逆電子移動防止を目的として、電荷輸送層を有する半導体電極を、上述の溶媒、上述の電解質、および上述した半導体の説明における有機塩基からなる群から選択される少なくとも一種を含む混合液に、例えば、−10〜70℃、0.1〜2時間浸漬させてもよい。この場合、浸漬させた後、自然乾燥で0.01〜24時間静置させることが好ましい。
なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された電荷輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、単量体である一般式(2)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記一般式(2)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。ここで、化学重合において用いられる重合速度調整剤としては、重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、電荷輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、重合して重合体を合成するためには、上記一般式(2)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する電荷輸送層形成用溶液が用いられる。電荷輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤、およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記電荷輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電反感層を前記固体正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、化学重合反応を行う。
重合反応の条件は、用いる前記一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
電荷輸送層を塗布により形成する場合の電荷輸送層形成用溶液の溶媒としては、特に制限されないが、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒等が挙げられる。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体電荷輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
電荷輸送層中の一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。電荷輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
また、電荷輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、一般式(2)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。電解重合では、一般式(2)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
[第2電極の形成方法]
第2電極の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第2電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
<太陽電池>
本発明により提供される色素増感光電素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の色素増感型光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池が提供される。
本発明の色素増感型光電変換素子は、色素増感型の太陽電池(セル)として用いられうる。具体的には、本発明の一実施形態に係る太陽電池は、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(本発明の色素増感型光電変換素子)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうち一方は、前述の光電変換素子の基板となる。一対の保護部材の両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明の太陽電池の構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に、複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基板に複数の正孔輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および正孔輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第2電極に移動して、電荷輸送層の固体正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第2電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第2電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の色素増感型光電変換素子を用いた太陽電池を形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
<実施例1:色素増感型光電変換素子1の製造>
(1)基板の用意
縦25mm、横15mm、厚さ1.0mmの市販のソーダガラス基板を用意し、硫酸と過酸化水素水との混合液である洗浄液に浸漬し、85℃で洗浄処理を行った。
(2)第1電極の形成
0.701gの塩化スズ(IV)五水和物(SnCl・5HO、分子量:350.60)を10mlのエタノール30%水溶液に溶解させ、これに0.592gのフッ化アンモニウム飽和水溶液を加え、超音波にて反応混合物を約20分間溶解させて第1電極形成材料の溶液を調製した。
次いで、洗浄処理されたソーダガラス基板をSPD薄膜形成装置の反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が400℃になったところで、前記第1電極形成材料の溶液を、前記基板までの距離を600mmにし、口径0.3mmのノズルから、圧力0.06MPaで25分間、前記基板に噴霧し、第1電極を形成した。なお、SPD薄膜形成装置として、卓上SPD薄膜形成装置(MODEL:KM−25、株式会社SPD研究所製)を使用した。
前記形成された第1電極の表面粗さRaを、サーフコム1400D(株式会社東京精密製)を用いて測定したところ、52nmであった。そこで、前記形成された第1電極を、アルミナを主体とする超微粒子のスラリー研磨剤および繊維製の研磨パッドを用いて、手動で6min間研磨を行った。研磨後の第1電極の表面粗さRaは、23.2nmであった。また、研磨後の第1電極の厚さを触針式表面形状測定機(Deck Tak)を用いて測定したところ、1.0μmであった。
(3)短絡防止層の形成
短絡防止層前駆体としてのチタンテトライソプロポキシド1.2mlおよびアセチルアセトン0.8mlを、18mlのエタノールに溶解させた。得られた混合液を、上述で形成した第1電極の上にインクジェット法により塗布し、100℃で3分間加熱して仮乾燥させた。
次いで、エキシマ照射装置(MODEL:MECL−M−1−200、波長:172nm、ランプ封入ガス:Xe、株式会社エム・ディ・コム製)の稼働ステージ上に、前記仮乾燥した基板試料を固定した。試料と光源の距離を1mmとし、ステージ加熱温度を70℃に調節して、装置内の酸素濃度が1%に調整した。130mW/cmの強度のエキシマ光(172nm)を、25秒間照射することで、短絡防止層を形成した。形成された短絡防止層の厚さは、前記第1電極の場合と同様の方法により測定したところ、0.04μmであった。
また、形成された短絡防止層の表面を、QuanteraSXM装置(アルバックファイ製)により、Arイオンによるスパッタエッチング(イオン種:Ar;加速電圧:1kV;エミッション電流:25mA;ビーム電流:2μA;ラスターサイズ:2×2mm)を1分間行い、X線光電子分光分析を用いて、前記短絡防止層の厚み方向のチタン元素と炭素元素の存在比を求めたところ、短絡防止層表面のTi/C比は20.5であった。
(4)光電変換層の形成
まず、アナターゼ型酸化チタンペースト(平均1次粒径18nm(顕微鏡観察)、エチルセルロースに分散)を、前記形成された短絡防止層上に、塗布面積が25mmとなるようにスクリーン印刷法により塗布した。得られた塗膜を、200℃で10分間、および500℃で15分間焼成処理を行い、厚さが3.5μmの空隙を有する多孔質構造の酸化チタン膜(多孔質半導体層)を得た。
次いで、増感色素A−56を、濃度が5×10−4mol/Lとなるように、アセトニトリルおよびtert−ブチルアルコール(体積比1:1)の混合溶液に溶解させた。前記形成された酸化チタンの多孔質半導体層を有する基板を前記混合溶液に室温(25℃)で3時間浸漬し、下記化学式で示される増感色素A−56を吸着させることで増感処理を行った。このように光電変換層を形成した。また、増感色素は、400〜600nmに吸収を示した。
(5)電荷輸送層の形成
前記光電変換層が形成された基板を、一般式(2)に対応するモノマー:H1−1の二量体(H2−1)を0.01mol/Lの割合で含有し、Li[(CFSON]を0.1mol/Lの割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。この際、電解重合溶液の温度は25℃に調節した。作用極を前記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO、0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。電解開始時の電流密度は100μA/cmであり、終了時の電流密度2μA/cmであった。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)10分間電圧を保持して、電荷輸送層を前記光電変換層表面に形成した。得られた半導体電極/電荷輸送層はアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
なお、ここで得られた電荷輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
その後、導電性高分子のドープ率向上および逆電子移動防止を目的として、電荷輸送層が形成された半導体電極を、Li[(CFSON]を15×10−3mol/L、4−tert−ブチルピリジンを50×10−3mol/Lの割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した後、自然乾燥させた。
(6)第2電極の形成
前記形成された電荷輸送層上へ、真空蒸着法により、金を厚さが60nmとなるように蒸着させ、第2電極を形成した。
以上により、色素増感型光電変換素子1(「素子1」と略記)を製造した。
<実施例2〜9および参考例10〜15:色素増感型光電変換素子2〜15の製造>
前記実施例1で素子1の製造において、第1電極の研磨時間および短絡防止層の形成時のエキシマ照射時間を、下記表1に示す条件に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて、色素増感型光電変換素子2〜15(「素子2」〜「素子15」と略記)のそれぞれを製造した。また、得られた素子2〜15の第1電極の表面粗さRaおよび短絡防止層表面のTi/C比は、それぞれ表1に示される。
<比較例1〜2:素子16〜17の製造>
前記実施例1で素子1の製造において、第1電極の研磨時間および短絡防止層の形成時のエキシマ照射時間を、下記表1に示す条件に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて、素子16および17を製造し、それぞれの表面粗さRaおよび短絡防止層表面のTi/C比は、それぞれ表1に示される。
<比較例3〜4:素子18〜19の製造>
前記実施例1で素子1の製造において、第1電極を形成した後に研磨操作をせず、および短絡防止層を形成した際のエキシマ照射時間を、下記表1に示す条件に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて、素子18および19を製造し、それぞれの表面粗さRaおよび短絡防止層表面のTi/C比は、それぞれ表1に示される。
<比較例5:素子20の製造>
前記実施例1で素子1の製造において、短絡防止層を形成する際に、引用文献2に記載の焼成処理により短絡防止層を形成したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて、素子20を製造し、当該表面粗さRaおよび短絡防止層表面のTi/C比は、表1に示される。
<色素増感型光電変換素子の性能評価>
実施例1〜9、参考例10〜15および比較例1〜5で製造した色素増感型光電変換素子についての性能評価を行った。
評価試験は、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから強度100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。前記製造した各光電変換素子について、前記光を照射し、有効表面積を16mmにしたマスクを受光部に重ね、I−Vテスターを用いて、各光電変換素子の室温(25℃)での電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(曲線因子、フィルファクター)FFを測定した。これらの値に基づき、下記式1から光電変換効率η(%)を算出した。
これらの評価結果を下記表2に示す。
表2の結果から、Ti/C比が10〜30である色素増感型光電変換素子1〜15は、比較例の素子16〜20に比べて、より優れた光電変換効率を有することが分かった。さらに、Ti/C比が10〜30であり、かつ第1電極の表面粗さRaが10〜50nmである素子1〜9は、最も優れた光電変換効率を示している。また、特許文献2のようなエキシマ処理されていない短絡防止層を有する比較例の素子20は、そのTi/C比が低く、最も低い光電変換効率を示している。
1 基板、
2 第1電極、
3 短絡防止層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 電荷輸送層、
8 第2電極、
9 太陽光、
10 色素増感型光電変換素子。

Claims (1)

  1. 第1電極、短絡防止層、半導体および増感色素を有する光電変換層、固体正孔輸送材料を有する電荷輸送層、ならびに第2電極を含む色素増感型光電変換素子の製造方法であって、
    前記短絡防止層が、有機チタン化合物を含む塗膜を塗布法により形成する第1工程と、得られた塗膜に高エネルギー線を照射する第2工程と、によって形成され、
    前記短絡防止層が、前記第1電極上に積層され、かつ、当該短絡防止層表面のTi/C比が10〜30であり、
    前記第1電極の表面粗さRaが、10〜50nmであることを特徴とする、色素増感型光電変換素子の製造方法。
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