JP5842774B2 - 光電変換素子および太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は光電変換素子および太陽電池に関し、さらに詳細には光電変換効率の初期特性に優れるか、または光照射に対する耐久性の高い光電変換素子および太陽電池に関する。
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、およびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、第一電極、作用電極層および第二電極を順に有し、作用電極と第二電極との間に電解質液が満たされた構成になっている。ここで、作用電極層は、酸化チタンなどの半導体多孔質に色素を吸着させた層を用いている。
しかしながら、半導体多孔質に吸着している色素が半導体多孔質を完全に覆いきれず、電荷輸送層が色素層を介さずに半導体多孔質と接触し、部分的な短絡を生じるためか、光電変換効率が向上しないという問題があった。
短絡による逆電子移動を防止し、光電変換効率の経時劣化を改善するために、色素を半導体多孔質に吸着させた後、半導体多孔質に吸着する官能基(イミダゾリル基、カルボキシル基、ホスホン基等)を有する添加剤を吸着させ、色素の吸着していない半導体多孔質の表面を添加剤で覆う方法が提案されている(特許文献1参照)。
上記特許文献1において、半導体の表面に色素を吸着させた後、前記添加剤として、tert−ブチルピリジンを吸着させる例が記載されており、逆電子移動を防止しつつ光電変換効率の経時劣化を防止している。
特開2006−134631号公報
しかしながら、特許文献1には、単なる放置による耐久性の向上については記載されているが、光を照射し続けたときの耐久性は記載されておらず、本発明者らが光照射による耐久性を評価した結果は不満足なレベルであった。また、逆電子移動防止(短絡の防止)による光電変換効率の初期特性の向上も未だ不十分であり、大きな改善が望まれていた。
そこで本発明は、光電変換効率の初期特性に優れるか、または光照射に対する耐久性の高い光電変換素子ならびにそれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、増感色素とともに、多価酸のリチウム塩を担持させた半導体を色素増感型の光電変換素子に使用することで、上記課題が解決されうることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の手段により達成される。
1.基体、第一電極、光電変換層、正孔輸送層、および第二電極を有する光電変換素子であって、前記光電変換層は、増感色素および多価酸のリチウム塩が担持された半導体を有することを特徴とする、光電変換素子。
2.前記正孔輸送層は固体の正孔輸送材料を含むことを特徴とする、上記1.に記載の光電変換素子。
3.前記固体の正孔輸送材料は導電性高分子を含むことを特徴とする、上記2.に記載の光電変換素子。
4.前記多価酸のリチウム塩は多価カルボン酸のリチウム塩であることを特徴とする、上記1.〜3.のいずれか1つに記載の光電変換素子。
5.前記半導体は酸化チタンであることを特徴とする、上記1.〜4.のいずれか1つに記載の光電変換素子。
6.上記1.〜5.のいずれか1つに記載の光電変換素子を有することを特徴とする、太陽電池。
本発明によれば、光電変換効率の初期特性に優れるか、または光照射に対する耐久性の高い光電変換素子ならびにそれを用いた太陽電池が提供されうる。
本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に示す断面図である。
本発明は、基体、第一電極、光電変換層、正孔輸送層、および第二電極を有する光電変換素子であって、前記光電変換層は、増感色素および多価酸のリチウム塩が担持された半導体を有する、光電変換素子である。
本発明者らは、光電変換素子において、光電変換効率が低いのは、正孔輸送物質から半導体への電荷の逆電子移動の発生が一つの原因であることを突き止め、逆電子移動を防止するために、正孔輸送物質が半導体表面と接触して短絡することを防止する方法を検討してきた。その結果、本発明者らは、光電変換層に含まれる半導体に対して、増感色素とともに多価酸のリチウム塩を担持させ、半導体表面を被覆することにより、半導体中の電子と正孔輸送層のホールとの再結合を防止し、光電変換効率の初期特性に優れるか、または光照射に対する耐久性の高い光電変換素子が得られることを見出した。
多価酸のリチウム塩がなぜ良好な結果を示すのか、詳細な理由は不明であるが、半導体に吸着した色素に光があたると、色素が励起され半導体層に電子が流れる。そこにイオン対が存在すると、半導体層表面で電気2重層を構築する為に、半導体の未吸着サイトと電荷輸送層との接触が減り、リーク電流が抑制される。イオン対のアニオンが多価酸であることでアニオンのイオン強度が増し、より電荷再結合を抑制する。また、イオン対のカチオンがリチウムであることで、半導体層に特異吸着し半導体の導電性も向上させているためと推測される。なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基体1、第一電極2、バリア層3、光電変換層6、正孔輸送層7、および第二電極8が順次積層されてなる構成を有する。ここで、光電変換層6は、半導体5、増感色素4、および多価酸のリチウム塩11を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリア層3を有することが好ましい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図1の上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、第一電極2を形成した基体1上に、バリア層3を形成した後、バリア層3上に半導体5からなる半導体層を形成し、その半導体5の表面に増感色素4および多価酸のリチウム塩11を吸着させて光電変換層6を形成する。または、その半導体5の表面に増感色素4または多価酸のリチウム塩11のいずれか一方を吸着させた後、他方を吸着させて光電変換層6を形成してもよい。その後、光電変換層6の上に正孔輸送層7を形成する。この際、正孔輸送層7は、増感色素4および多価酸のリチウム塩11を担持した半導体5からなる光電変換層6に侵入し、かつ、その上に存在している。そして、正孔輸送層7の上に第二電極8を形成する。第一電極2および第二電極8に端子を付けることにより、電流を取り出すことができる。
また、他の好ましい実施形態によれば、第一電極2を形成した基体1上に、バリア層3を形成した後、バリア層3上に半導体5からなる半導体層を形成し、その半導体5の表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に正孔輸送層7を形成する。この際、正孔輸送層7を形成するための電解重合溶液に多価酸のリチウム塩11を含有させることにより、増感色素4および多価酸のリチウム塩11が担持した半導体5からなる光電変換層6を得ることができる。そして、正孔輸送層7の上に第二電極8を形成する。第一電極2および第二電極8に端子を付けることにより、電流を取り出すことができる。
以下、本発明の光電変換素子の各部材について説明する。
[基体]
基体は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。基体側から光が入射する場合、基体はこの光を透過させることが可能な、すなわち、光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。具体的には、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率を意味するものとする。
基体としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基体の材料としては、剛性を有する基体、および可撓性を有する基体を用いることができる。剛性を有する基体と可撓性を有する基体とを組み合わせて用いてもよい。
剛性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ガラス板およびアクリル板が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点からガラス板を用いることが好ましい。剛性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、0.1〜100mmが好ましく、0.5〜10mmがより好ましい。
一方、可撓性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム;ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム;ポリスルホン(PSF)樹脂フィルム;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂フィルム;ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルムなどが挙げられる。特に、太陽光エネルギーを利用することを考慮し、可視領域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムを基体として用いることが好ましい。当該樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、およびポリカーボネートフィルム等が挙げられ、これらのうち、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが好ましい。なお、可撓性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムが、本発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
上記基体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理や易接着層を設けてもよい。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理により表面処理を行うことができる。また、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、およびエポキシ系共重合体等を易接着層として使用することができる。
[第一電極]
第一電極は、基体と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基体の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極は、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上(上限:100%)であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。
第一電極を構成する材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、金属およびその酸化物、ならびにSn、Sb、FおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含む複合(ドープ)材料を用いることができる。前記金属としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、およびインジウム等が挙げられ、金属酸化物としては、SnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、およびCdIn等が挙げられ、複合(ドープ)材料としては、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等が挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
第一電極を形成する材料の基体への塗布量は、特に制限されないが、基体1m当たり1〜100g程度であることが好ましい。なお、本明細書では、基体とその上に形成された第一電極との積層体を「導電性支持体」とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。導電性支持体の表面抵抗値としては、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値が500Ω/□(square)以下であることが好ましく、20Ω/□(square)以下であることがより好ましい。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
[バリア層]
バリア層は、受光により発生し、正孔輸送層に注入されたホール(正孔)と、第一電極の電子との再結合である短絡を防止する観点などから、設けられる任意の構成要素である。バリア層は、第一電極と後述する光電変換層との間に、膜状(層状)に配置されうる。
バリア層の構成材料としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。なかでも光電変換層の半導体材料と同等の電気伝導性を有するものであることが好ましい。具体的には、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウム等の金属またはこれらの酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウム等のペロブスカイトまたはこれらの複合酸化物もしくは酸化物混合物;CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BN等の金属化合物が挙げられる。これらの材料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送層がp型半導体であり、バリア層に金属を使用する場合には、当該バリア層には、正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、当該バリア層には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ、伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。用いる酸化物を選択することにより、多孔質半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることも可能である。中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリア層は、後述する光電変換層中の半導体層とともに、多孔質であることが好ましい。この場合、バリア層の空孔率をC[体積%]とし、半導体層の空孔率をD[体積%]としたとき、D/C値が、1.1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。一方、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バリア層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
当該D/C値を上記の値とするために、バリア層の空孔率Cは、20体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、2体積%以下であることがさらに好ましい。すなわち、バリア層は、緻密層(緻密な多孔質状)であることが好ましい。これにより、バリア層が短絡防止効果を有効に発揮することができる。ここで、バリア層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05体積%以上程度である。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、短絡防止効果を発揮することができる膜厚であれば特に制限はない。具体的には、0.01〜10μmであることが好ましく、0.03〜0.5μmであることがより好ましい。
[光電変換層]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。本発明において、光電変換層は半導体、増感色素、および多価酸のリチウム塩を必須に含む。
(半導体)
光電変換層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等の粒子を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
さらに具体的な例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。好ましくは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、より好ましくは、TiOまたはNbであり、さらに好ましくはTiO(酸化チタン)である。
前記半導体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
光電変換層に用いられる半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、半導体層に用いられる半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、光電変換層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。なお、上記光電変換層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
(増感色素)
本発明では、半導体に増感色素を担持させている。電荷の半導体への効率的な注入の観点から、上記増感色素はカルボキシル基を有することが好ましい。以下に、好ましい増感色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、上記のカルボキシル基を有する増感色素と他の増感色素とを併用して用いることもできる。併用して用いることができる増感色素としては、本発明に係る半導体を分光増感しうるものならばいずれの増感色素であってもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ光電変換効率を上げるため2種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。目的とする光源の波長域と強度分布とに合わせるように、混合する増感色素とその割合を適宜選択することができる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。
併用して用いる増感色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
上記のカルボキシル基を有する増感色素と併用して用いることができる増感色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の増感色素を挙げることができる。
なお、上記増感色素は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
(多価酸のリチウム塩)
本発明で用いられる多価酸のリチウム塩は、半導体に担持され、正孔輸送物質から半導体への電荷の逆電子移動を抑制しうる。
前記多価酸としては、特に制限されず、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルコン酸、ムコン酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、サリチル酸、バニリン酸、マンデル酸、リンゴ酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、アコニット酸、トリカルナリル酸、エタントリカルボン酸、ヘキサトロカルボン酸等の1分子中にカルボキシル基を2個以上有する多価カルボン酸;メタンジスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、1,11−ウンデカンジスルホン酸、1,12−ドデカンジスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、4,4−ビフェニルジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジアミノ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、フェノール−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ベンシジンジスルホン酸、2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、2−ナフトール−6,8−ジスルホン酸、1,3,5−ベンゼントリスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の1分子中にスルホン酸基を2個以上有する多価スルホン酸;ピロリン酸、トリリン酸(三リン酸)、メタリン酸等の1分子中にリン酸基を2個以上有する多価リン酸;等が挙げられる。
上記多価酸のリチウム塩は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記多価酸のリチウム塩は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
これら多価酸のリチウム塩の中でも、チタニアとの吸着の観点から、多価カルボン酸のリチウム塩が好ましく、クエン酸リチウム、酒石酸リチウム、シュウ酸リチウムがより好ましい。
(光電変換層の作製方法)
光電変換層の作製方法は、(1)導電性支持体上への半導体層の形成、(2)半導体の増感処理、(3)多価酸のリチウム塩の担持(吸着)処理に大別される。(1)において、半導体の材料が粒子状の場合には、半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布或いは吹き付ける方法、および半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後に縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)等によって半導体層を形成することができる。上記(1)および(2)の工程によって得られた半導体層は焼成することが好ましい。この場合、焼成後、半導体に水分が吸着する前に素早く増感色素による増感処理を行うことが好ましい。また、(1)において、半導体の材料が膜状であり、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合することによって半導体層を形成することができる。(2)の増感処理方法は、増感色素の半導体層への吸着(担持)処理により行われる。(3)の多価酸のリチウム塩の担持(吸着)処理は、半導体層を多価酸のリチウム塩を含む溶液に浸漬させることにより行われる。このような方法により得られる光電変換層を有する光電変換素子は、光照射に対する耐久性がより向上する。
なお、正孔輸送層を電解重合により形成する場合、上記の(3)の工程を行わずに、電解重合溶液に多価酸のリチウム塩を含有させ電解重合を行い、多価酸のリチウム塩の半導体層へ担持(吸着)させてもよい。このような方法により得られる光電変換層を有する光電変換素子は、光電変換効率の初期特性がより向上する。
以下では、上記(1)〜(3)の工程を含む光電変換層の作製方法について詳細に説明する。電解重合溶液に多価酸のリチウム塩を含有させ電解重合を行う方法については、正孔輸送層の項で詳細に説明する。
(1)導電性支持体上への半導体層の形成
(1−1)半導体含有塗布液の調製
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。当該半導体微粉末はその1次粒子径が微細であることが好ましい。1次粒子径としては、1〜5000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜100nmであることが特に好ましい。半導体含有塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができ、溶媒中に分散された半導体微粉末は1次粒子状で分散する。溶媒中の半導体微粉末の濃度は0.1〜70重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましい。
半導体含有塗布液に用いられうる溶媒としては、半導体微粉末を分散できるものであれば特に制約されず、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が用いられうる。前記有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。塗布液中には、必要に応じて、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を添加してもよい。
(1−2)半導体含有塗布液の塗布
上記(1−1)によって調製した半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行うことにより、半導体層が形成される。当該塗布は、特に制限されず、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって行われる。上記塗布または吹き付け、および乾燥によって得られた半導体層は、半導体微粒子の集合体からなるものであり、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応する。なお、半導体含有塗布液は2種以上の半導体材料を含むものであってもよいし、2種以上の半導体材料を用いて塗布または吹き付けを行い、層状構造の半導体層を形成してもよい。
(1−3)半導体層の焼成処理
上記(1−2)によって形成された半導体層は、空気中または不活性ガス中で焼成することが好ましい。焼成を行うことにより、(1−2)で形成された半導体層と導電性支持体との結合力および半導体粒子どうしの結合力を高め、機械的強度が向上しうる。焼成条件は、所望の実表面積や空孔率を有する半導体層を形成することができれば特に制限されない。焼成温度は、特に制限されないが、1000℃以下であることが好ましく、100〜800℃であることがより好ましく、200〜600℃であることが特に好ましい。また、基体がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、加圧により半導体微粒子−基体間および半導体微粒子どうしを固着させてもよいし、マイクロ波を用いて半導体層のみを焼成してもよい。焼成時間も特に制限されないが、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、10〜120分であることが特に好ましい。また、焼成雰囲気も特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行ってもよいし、温度や時間を変化させて2回以上繰り返し行ってもよい。
焼成された半導体層の構造は、特に制限されないが、増感色素との吸着を効果的に行う観点から多孔質構造(空隙を有するポーラスな構造)であることが好ましい。よって、半導体層の空孔率(D)は、1〜90体積%であることが好ましく、10〜80体積%であることがさらに好ましく、20〜70体積%であることが特に好ましい。なお、半導体層の空孔率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空孔率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。なお、半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層を構成する材料がこの空隙にも存在するように光電変換素子を製造することが好ましい。
焼成された半導体層の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、500nm〜30μmであることがさらに好ましい。
得られた半導体層の見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積、ならびに焼成温度等により制御することができる。また、得られた半導体層は、焼成後、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行うことにより、半導体粒子の表面積および半導体粒子近傍の純度を制御し、色素から半導体粒子への電子注入効率を高めてもよい。
(2)増感色素による半導体の増感処理
増感色素による半導体の増感処理は、例えば、増感色素を適切な溶媒に溶解し、当該溶液中によく乾燥させた半導体層を長時間浸漬することによって行われる。当該増感処理によって、増感色素が半導体に吸着されうる。この際、半導体層が多孔質構造を有する場合には、浸漬前に減圧処理、加熱処理等の前処理を行い、膜中の気泡や空隙中の水分を除去することが好ましい。当該前処理によって、増感色素が半導体層内部にも吸着されうる。なお、増感処理は、増感色素含有溶液への半導体層の浸漬に限定されず、その他の公知の増感処理方法も適宜適用することができる。
増感処理条件は特に制限はないが、増感色素が半導体層に深く進入して吸着等が充分に進行できるような条件に設定することが好ましい。例えば、溶液中における増感色素の分解および分解物の半導体層への吸着を防止する観点から、増感処理の温度は、5〜100℃であることが好ましく、25〜80℃であることがより好ましい。また、増感処理の時間は、15分〜20時間であることが好ましく、3〜24時間であることがより好ましい。特に、室温(25℃)で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましいが、設定する温度によって増感処理の時間は適宜変更してもよい。また、増感処理の時間の短縮および半導体層の深部まで吸着させる観点から、減圧下または真空下で増感処理を行ってもよい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができかつ半導体を溶解させたり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、溶媒をあらかじめ脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒を用いることが好ましい。
増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の増感色素を用いる場合に、増感処理方法は、特に限定されず、各増感色素の混合溶液に半導体層を浸漬してもよいし、各増感色素を別々の溶液として準備し、順次に半導体層を浸漬してもよい。各増感色素について別々の溶液を用意し、半導体層を各溶液に順に浸漬させる場合は、半導体層に前記増感色素を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。
半導体層において、半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルであることが好ましく、0.1〜50ミリモルであることがさらに好ましく、0.5〜20ミリモルであることが特に好ましい。
(3)半導体への多価酸のリチウム塩の担持
半導体への多価酸のリチウム塩の担持は、前記多価酸のリチウム塩を適切な溶媒に溶解し、その溶液に増感色素が担持された半導体を含む半導体層を浸漬することによって行われることが好ましい。
多価酸のリチウム塩の溶解に用いる溶媒は、多価酸のリチウム塩を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、多価酸のリチウム塩の担持(吸着)を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。
好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、混合溶媒を用いてもよい。特に好ましくはエタノール、tert−ブチルアルコール、アセトニトリルである。
半導体層を、多価酸のリチウム塩を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に前記多価酸のリチウム塩が深く進入して吸着等を十分に進行させる観点から、25℃では1分〜3時間が好ましく、さらに好ましくは30分〜1時間である。ただし、この浸漬時間は25℃での範囲であり、温度条件を変化させた場合はこの限りではない。
浸漬するに当たり、多価酸のリチウム塩を含む溶液は、多価酸のリチウム塩が分解しない限り、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜100℃であり、より好ましくは25〜80℃であるが、溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、光吸収することにより電子を半導体に注入した後に生成する増感色素の酸化体を迅速に還元し、増感色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層である。
本発明に係る正孔輸送層の材料としては、特に制限されず、例えば、レドックス電解質の分散物:芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体等の固体の正孔輸送材料が挙げられる。ただし、正孔輸送材料の流出・散逸を防ぐという観点から、前記正孔輸送層は固体の正孔輸送材料を含むことが好ましい。さらに、可視光の透過性、十分な導電性などの観点から、前記固体の正孔輸送材料は、導電性高分子を含むことが好ましい。
以下、レドックス電解質の分散物、芳香族アミン誘導体、およびチオフェン誘導体を詳細に説明する。
レドックス電解質としては、I/I 系や、Br/Br 系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I 系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素とを混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。正孔輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
前記芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
前記チオフェン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物(以下、単に「重合体」とも称する)であることが好ましい。かような重合体は導電性高分子となり、可視光の透過性に優れ、かつ充分な導電性を有する。
上記一般式(1)中、
およびXは、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR基、−SR基、−SeR基、または−TeR基を表わす。なお、XおよびXは、同一であってもまたは異なるものであってもよい。R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。ここで、XおよびXは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基としては特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−エチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチルブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−エチル−2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−(n−ブチル)−2−プロペニル基、1−(2−プロペニル)−3−ブテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基、7−オクテニル基、1−メチル−2−ヘプテニル基、2,7−オクタジエニル基、1,1−ジ(2−プロペニル)エチル基、2−ノネニル基、2,6−ノナジエニル基、3,7−ジメチル−6−オクテニル基、1−デセニル基、2−デセニル基、9−デセニル基、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル基、2−ウンデセニル基、2,4−ウンデカジエニル基、7−テトラデセニル基、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル基、1,5,9−トリメチル1−ビニル−4,8−デカジエニル基、3,7,11,15−テトラメチル−2−ヘキサデセニル基、または3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14−ヘキサドデカテトラエニル基等が挙げられる。
〜Rとしては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記XおよびXとしての、炭素数6〜24のアリール基は特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、フルオレニル基がより好ましい。
、XおよびR〜Rにおいて、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアル
キル基」、「炭素数6〜24のアリール基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜32のアシル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、アミノ基、および炭素数2〜24のヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、正孔輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記一般式(1)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(1)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記一般式(1)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記一般式(1)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(1)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。ここで「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。
本発明に使用される重合体は、上記一般式(1)で表される一種または二種以上の化合物またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記一般式(1)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記一般式(1)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用できる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2−7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマー(H2−1)の製造方法の好ましい例を記載する。ただし、本発明は、下記好ましい例に限定されるわけではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
[3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマーの合成]
撹拌装置、温度計、および還流冷却管を装着した1000mLのガラス製三口フラスコに、無水テトラヒドロフラン 750mL、および3,4−エチレンジオキシチオフェン 25g(0.15mol)を添加し、窒素気流下で撹拌しながらアセトン/ドライアイス浴中で内温が−70℃となるまで冷却する。この後、1.6mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液 113mL(0.18mol)をシリンジで5分間かけて反応系に滴下する。25分後、無水塩化銅 23.5g(0.17mol)を添加し、そのまま3時間程度撹拌しながら反応させる。反応液を水10Lに添加し、生成物を濾過した後、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:塩化メチレン)により精製することにより、EDOTダイマー 17.9g(収率:約72%)を黄白色結晶として得た。
(重合体の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射とを組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま固体の正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(1)で表される単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
正孔輸送層に添加しうる他の添加剤としては、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
なお、この際、上記したように、多価酸のリチウム塩を電解重合溶液に含有させてもよい。多価酸のリチウム塩を含有する電解重合溶液を用いて電解重合を行うことにより、多価酸のリチウム塩が半導体に担持(吸着)される。このような製造方法により得られる光電変換素子は、初期の光電変換効率がより向上する。
電解重合溶液に多価酸のリチウム塩を含有させる場合の、電解重合溶液中の多価酸のリチウム塩の濃度は、特に制限されないが、飽和濃度であることが好ましい。
次いで、第一電極2、バリア層3および光電変換層6を形成した基体1をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合溶液中の前記単量体またはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.05〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが好ましく、1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより好ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された固体の正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、一般式(1)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体の正孔輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記一般式(1)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、固体の正孔輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、上記一般式(1)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する固体正孔輸送層形成用溶液が用いられる。固体正孔輸送層形成用溶液の溶媒としては、電解重合溶液の溶剤として例示したものを使用することができる。
固体正孔輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる一般式(1)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記固体正孔輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電変換層を前記固体正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる上記一般式(1)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
固体の正孔輸送層中の一般式(1)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と有機塩基とを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。この際、支持電解質は、上記電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の支持電解質が使用できる。支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、電解重合溶液中の支持電解質と、電荷再結合防止のための支持電解質とは、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶液中の支持電解質の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜30mmol/L程度がより好ましい。また、有機塩基としては、特に制限されないが、4−tert−ブチルピリジン、ルチジン等が挙げられる。有機塩基は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶液中の有機塩基の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜50mmol/L程度がより好ましい。溶媒は、上記電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の溶媒が使用できる。なお、電解重合溶液中の溶媒と、電荷再結合防止のための溶媒とは、同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体の正孔輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、一般式(1)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、一般式(1)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するためには、本発明に使用される重合体のイオン化ポテンシャルは、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルよりも小さいことが好ましい。重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、固体正孔輸送層としては1.0以下の吸光度が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する正孔輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、固体の正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、FTO導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に色素を吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、一般式(1)の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
[第二電極]
第二電極は、正孔輸送層と接して配置され、任意の導電性材料で構成されうる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用することができる。第二電極は、素子の電気抵抗を低減する等の観点から、正孔輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム、ロジウム、ルテニウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。好ましくは金などの金属薄膜である。また、第二電極の厚みは、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗値は、特に制限されず、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値は、80Ω/cm以下であることが好ましく、20Ω/cm以下であることがより好ましい。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
以上のような構成を有する光電変換素子は、基体の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の半導体層に担持された増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は、半導体に注入され、バリア層を通じて第一電極に移動する。第一電極に移動した電子は、外部回路を通じて第二電極に移動し、正孔輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、正孔輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光が電気に変換される。
<太陽電池>
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用することができる。したがって、本発明は、上述の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本発明に係る光電変換素子は、色素増感型の太陽電池(セル)として用いられうる。すなわち、本発明に係る太陽電池は、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(本発明に係る光電変換素子)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうちの一方は、前述の光電変換素子の基体となる。一対の保護部材は両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明に係る太陽電池の構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基体に複数の正孔輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および正孔輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本発明に係る太陽電池に、太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
(実施例1:光電変換素子 SC−1の作製)
次のようにして、太陽電池(光電変換素子)を製造した。
(バリア層の形成)
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(15mm×25mm)を第一電極とした。この基板上にテトラキスイソポロポキシチタン 1.2mlおよびアセチルアセトン 0.8mlをエタノール 18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリア層を形成した。
(光電変換層の形成)
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を、上記バリア層を形成したFTOガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積25mm(5mm×5mm))により塗布した。200℃で10分間および500℃で15分間焼成を行い、厚さ2.5μmの酸化チタン薄膜を得た。次に増感色素の例示化合物D−38をアセトニトリル:tert−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。酸化チタン付のFTOガラス基板を、この溶液に室温(25℃)で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、光電変換層を形成し、半導体電極1を得た。
(正孔輸送層の形成)
前記半導体電極1に、チオフェン系モノマーであるEDOT(エチレンジオキシチオフェン)の二量体(K192;KaironKem社製)を1×10−3(mol/L)の濃度で含有し、Li[(CFSON](LiTFSI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を0.05(mol/L)の濃度で含有し、クエン酸リチウムの飽和溶液(加える量は0.05(mol/L)の濃度で加え、その後ろ過)を含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。作用極を前記半導体電極1、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M(mol/L))、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面での光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)積算電荷量4mCになるまで保持してEDOTの二量体を重合し、正孔輸送材料であるPEDOTを有する正孔輸送層を前記半導体電極1の表面に形成した。得られた半導体電極/正孔輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっていた。その後、Li[(CFSON]を15×10−3(mol/L)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/L)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。その後、半導体電極/正孔輸送層の積層体を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第二電極を作製し、光電変換素子SC−2を得た。
(実施例2:光電変換素子 SC−2の作製)
クエン酸リチウムの代わりに酒石酸リチウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−2を作製した。
(実施例3:光電変換素子 SC−3の作製)
クエン酸リチウムの代わりにシュウ酸リチウムを用い、増感色素として上記例示化合物D−38の代わりに上記例示化合物D−39を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−3を作製した。
(実施例4:光電変換素子 SC−4の作製)
クエン酸リチウムの代わりにピロリン酸リチウムを用い、増感色素として上記例示化合物D−38の代わりに上記例示化合物D−41を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−4を作製した。
(実施例5:光電変換素子 SC−5の作製)
クエン酸リチウムの代わりに三リン酸リチウムを用い、増感色素として上記例示化合物D−38の代わりに上記例示化合物D−42を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−5を作製した。
(実施例6:光電変換素子 SC−6の作製)
次のようにして、太陽電池(光電変換素子)を製造した。
(バリア層の形成)
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(15mm×25mm)を第一電極とした。この基板上に、テトラキスイソポロポキシチタン1.2mlおよびアセチルアセトン0.8mlをエタノール18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリア層を形成した。
(光電変換層の形成)
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を、上記バリア層を形成したFTOガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積25mm(5mm×5mm))により塗布した。200℃で10分間および500℃で15分間焼成を行い、厚さ2.5μmの酸化チタン薄膜を得た。次に、増感色素として上記の例示化合物D−38をアセトニトリル:tert−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/Lの溶液を調製した。酸化チタン付のFTOガラス基板を、この溶液に室温(25℃)で3時間浸漬して色素の吸着処理を行った。
次に、クエン酸リチウムをアセトニトリル溶媒に溶解させ、飽和溶液(濃度5×10−4mol/L以下)を調製した。上記の増感色素を吸着させた酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温(25℃)で30分浸漬してクエン酸リチウム吸着処理を行い、光電変換層を形成し、半導体電極2を得た。
(正孔輸送層の形成)
前記半導体電極2に、チオフェン系モノマーであるEDOT(エチレンジオキシチオフェン)の二量体(K192;KaironKem社製)を1×10−3(mol/L)の濃度で含有し、Li[(CFSON]を0.05(mol/L)の濃度を含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。作用極を前記半導体電極2とし、対極を白金線とし、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M(mol/L))とし、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面での光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)、積算電荷量が4mCになるまで保持してEDOTの二量体を重合し、正孔輸送材料であるPEDOTを有する正孔輸送層を前記半導体電極2の表面に形成した。得られた半導体電極/正孔輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっていた。その後、Li[(CFSON]を15×10−3(モル/l)、およびtert−ブチルピリジンを50×10−3(mol/L)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。その後、半導体電極/正孔輸送層の積層体を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第二電極を作製し、光電変換素子SC−6を得た。
(実施例7:光電変換素子 SC−7の作製)
クエン酸リチウムの代わりに三リン酸リチウムを用い、増感色素として上記例示化合物D−38の代わりに上記例示化合物D−39を用いたこと以外は、実施例6と同様にして光電変換素子SC−7を作製した。
(比較例1:光電変換素子 SC−R1の作製)
クエン酸リチウムを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−R1を作製した。
(比較例2:光電変換素子 SC−R2の作製)
クエン酸リチウムの代わりにクエン酸ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子SC−R2を作製した。
(光電変換素子の評価)
得られた各光電変換素子について下記の評価を行った。
(光電変換効率の測定)
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルタ(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。半導体層上に5mm×5mmのマスクをかけた条件下で光電変換特性の測定を行った。即ち、I−Vテスターを用いて室温(25℃)にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(FF)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。
なお、光電変換素子の光電変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
式(A) η=100×(Voc×Jsc×FF)/P
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、FFは形状因子を示す。
(耐久性(光劣化後特性)評価)
上記により光電変換効率を測定した光電変換素子を短絡させた上で、120mW/cmの擬似太陽光を720時間照射した後に、上記と同様に電流−電圧特性を測定し、光劣化後の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η(%))を求め、下記式により耐久率を求めた。
耐久率=η/η
前記光電変換素子の評価結果を表1に示す。
上記表1の結果から明らかなように、半導体に増感色素および多価酸のリチウム塩を担持させた本発明の光電変換素子は、光電変換効率の初期特性に優れるか、または光照射に対する耐久性がより向上することが分かる。
1 基体、
2 第一電極、
3 バリア層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光、
10 光電変換素子、
11 多価酸のリチウム塩。

Claims (6)

  1. 基体、第一電極、光電変換層、正孔輸送層、および第二電極を有する光電変換素子であって、
    前記光電変換層は、増感色素ならびに多価カルボン酸、多価スルホン酸、および多価リン酸からなる群より選択される少なくとも1種の多価酸(ただし、クエン酸を除く)のリチウム塩が担持された半導体を有することを特徴とする、光電変換素子。
  2. 前記正孔輸送層は固体の正孔輸送材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記固体の正孔輸送材料は導電性高分子を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 前記多価酸のリチウム塩は、酒石酸リチウム、シュウ酸リチウム、ピロリン酸リチウム、または三リン酸リチウムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記半導体は酸化チタンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする、太陽電池。
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