本発明の第一は、少なくとも、基板、第一電極、バッファ層、半導体および増感色素を有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を設けてなる色素増感光電変換素子において、前記バッファ層は酸化チタン前駆体を前記基板上で反応して形成された酸化チタン層であり、前記酸化チタン層中の酸化チタンはアナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンを含むことを特徴とする、色素増感光電変換素子である。
これにより、漏れ電流を低く、光電変換効率の優れた光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
すなわち、アナターゼ型の酸化チタンは電子受容性が高く、電子を流す観点では優れている。一方、ルチル型の酸化チタンは電子を流すという観点でアナターゼ型に劣ることからバッファ層を構成する酸化チタン層には実質的に採用されてこなかった。しかし、バッファ層には、電子を流すだけではなく、必要に応じて電荷を蓄え電子の流れを遮るような整流作用も必要である。そこで、調整因子としてバッファ層の酸化チタンにルチル型も発現するようにした。すなわち、ルチル型の酸化チタンはアナターゼ型の酸化チタンと比較して誘電率が高いため、電荷を蓄えることができると考えられる。光照射時のように圧倒的な量の電子が発生した場合には、光電変換層からアノード側へスムーズに電子を流すが、光照射以外の理由で発生した電子はバッファ層で蓄えられ、漏れ電流を生じさせないと考えられる。以下、本発明に係る光電変換素子について詳細に説明する。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本願発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、バッファ層3、光電変換層6、電荷輸送層7および対極である第二電極8、バッファ層3より構成されている。ここで、光電変換層6は、半導体5および増感色素4を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バッファ層3を有する。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本願発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態を以下に示す。すなわち、本発明に係る光電変換素子の製造方法は、第一電極2を形成した基板1上に、酸化チタン前駆体を付着して酸化チタン層3を形成するバッファ層形成工程(1)と、前記酸化チタン層3上に半導体5からなる半導体層を形成し、当該半導体表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する光電変換層形成工程(2)と、前記光電変換層6を被覆するように電荷輸送層7を形成する電荷輸送層形成工程(3)と、前記光電変換層6と当接するように第二電極8を形成する第二電極形成工程(4)と、を有する。また、工程(2)において、電荷輸送層7は、増感色素4を担持した半導体5からなる光電変換層6に侵入し、且つ、その上に存在し、該電荷輸送層7の上に第二電極8が付着していることが好ましい。そのため、後述するように当該半導体層は多孔質体であることが好ましい。また、第一電極2および第二電極8に端子を付けて電流を取り出すことができる。
以下、本願発明の光電変換素子の各部材について説明する。
「バッファ層」
本願発明に係る光電変換素子は、逆電子移動の抑制手段、短絡防止手段、および電荷を蓄える手段として、膜状(層状)のバッファ層が第一電極と光電変換層との間に設けられている。また、本発明に係るバッファ層は、酸化チタン層であり、当該酸化チタン層はアナターゼ型酸化チタンおよび誘電率が比較的高いルチル型の酸化チタンを有する。したがって、バッファ層(酸化チタン層)は電荷を蓄えることが可能で、整流作用を備えている。
本発明に係るバッファ層の平均厚さ(膜厚)としては、1〜500nm程度であるのが好ましく、30〜150nm程度であるのがより好ましい。膜厚が30nm未満であると、高温使用時に漏れ電流が増加して効率が低下することがあり、500nm超となると電子の電極への排出が十分できず、低温動作時の効率が低下することがある。
本発明に係るバッファ層の構成材料は、酸化チタンを含み、かつ当該酸化チタンは、アナターゼ相と、ルチル相とが共存している。また、本発明に係るバッファ層は、二酸化チタンのみから形成されていることが好ましい。
前記酸化チタン層において、アナターゼ型酸化チタンのX線回折ピーク強度:前記ルチル型酸化チタンのX線回折ピーク強度が、90:10〜10:90であることが好ましく、より好ましくは60:40〜80:20、さらに好ましくは65:35〜75:25である。
アナターゼ型酸化チタンのX線回折ピーク強度とルチル型酸化チタンのX線回折ピーク強度の比率が前述の範囲であると、整流性の観点で好ましい。
アナターゼ型酸化チタンのX線回折ピークは2θ=25.28、ルチル型酸化チタンのX線回折ピークは2θ=27.44であり、各X線回折ピーク強度比が上記範囲になる。ここで、本明細書におけるX線回折ピーク測定には、RIGAKU社製のX線回折装置を用いて半径150mmのゴニオメータで反射法を採用して行われる。X線はモノクロメーターにより単色化してCuKα線とした。測定サンプルは、得られた多孔質半導体に内部標準としてX線回折標準用の高純度シリコン粉末を添加したものを用いた。上記で得られたX線回折プロファイルを強度補正し、回折角2θについては内部標準のシリコンの111回折ピークで補正した。ここでシリコンの111回折ピークの半価幅は0.15°以下であった。補正したX線回折プロファイルについて25.3°付近に現れる回折ピークを用いて、以下のScherrerの式によって結晶子サイズを算出した。2θ=24〜30°の範囲における酸化チタン、ならびにシリコンの回折ピークは、CuKα1、Kα2線由来で分離しておらず、全てCuKα、として取り扱った。
ここでβは光学系の拡がりを補正するため、25.3°付近に現れる酸化チタンの回折ピークの半値幅Bから内部標準のシリコン111回折ピークの半値幅bを差し引いたもの(β=B−b)を採用し、K=1、λ=0.15418nmとした。
一般に酸化チタン(TiO2)は、明瞭な転移点をもたないことが知られており、多くの場合600℃程度の温度でルチル型に転移が始まるとされている。本発明に係る酸化チタン層は上述したように、アナターゼ相と、ルチル相とか構成されているが、それぞれの相の量については現状の測定機器などで正確には定量することが困難なため、上述のように、アナターゼ相とルチル相とのX線回折ピーク強度比で規定している。また、本発明に係る酸化チタン層におけるアナターゼ相およびルチル相のX線回折ピーク強度比は、焼成法における条件(主に焼成温度および焼成時間)、またはCVD法における条件(主に、気化器温度、製膜時間、基板温度、反応圧力、およびO2ガス流量)でそれぞれのアナターゼ相やルチル相の割合を制御している。以下、本発明に係るバッファ層の作製方法(上記のバッファ層形成工程(1))を説明する。
《バッファ層形成工程(1)》
本発明に係る酸化チタン層は、酸化チタン前駆体を前記基板上でCVD法または焼成法により反応して形成されることが好ましい。すなわち、後述する本発明に係る第一電極が基板表面に形成された透明導電性基板の(第一電極)上に、酸化チタン前駆体の層を形成した後、CVD法または焼成法により反応が進行して酸化チタン層が形成されることが好ましい。ここで酸化チタン前駆体とは反応により酸化チタンとなる化合物のことをいうものである。
本発明に係る酸化チタン前駆体を焼成して酸化チタン層を形成する焼成方法の条件は、焼成処理温度は600〜850℃が好ましく、650〜800℃がより好ましい。また、焼成処理時間は好ましくは10分〜1時間であり、より好ましくは20〜40分焼成する方法である。
これにより、アナターゼ型:ルチル型の発現比率が好ましい範囲になるという利点がある。
また、本発明に係る焼成法に使用される酸化チタン前駆体としては、加水分解により酸化チタンを生ずるものであることが好ましい。具体的には、ハロゲン化チタン(三塩化チタン、四塩化チタンなど)、オルトチタン酸エステル(オルトチタン酸メチル、オルトチタン酸エチル、オルトチタン酸イソプロピル、オルトチタン酸ブチルなど)等が挙げられる。このうちオルトチタン酸エステルが好ましい。これらの酸化チタン前駆体は、加水分解に先だって各種の配位子(例えばアセチルアセトン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、その他のアミン、ピリジンカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、その他のヒドロキシカルボン酸など)と混合し、酸化チタン前駆体の錯体を形成し、該錯体を加水分解に用いてもよい。また、これら焼成法に使用される酸化チタン前駆体は、溶媒に溶解させて溶液として使用することが好ましい。
酸化チタン前駆体を溶解させる溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール)、THFなどが好ましい。
また、本発明に係る酸化チタン前駆体が溶液である場合は、前記溶媒100質量部に対して、0.5〜13質量部の酸化チタン前駆体を含有させることが好ましい。
なお、CVD法は化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition)と呼ばれるもので、ガス状にした原料物質(気体、液体、固体)を装置内の反応室へ供給し、基板表面において化学反応(気相反応)を起こすことで、所望の酸化チタン層を基板上に堆積させて形成する方法である。CVD法では原料物質を化学的に活性させる(励起状態)にする必要があるために熱やプラズマ、光(レーザ光や紫外線等)が用いられ、各々熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法と呼ばれている。
「光電変換層」
本発明に係る光電変換層は、半導体5および増感色素4を含有し、当該増感色素を担持した当該半導体を含有する半導体層からなることが好ましい。
当該光電変換層1m2あたりの色素の総含有量は0.01〜100ミリモル/m2が好ましく、0.1〜50ミリモル/m2がより好ましく、特に好ましくは、0.5〜20ミリモル/m2である。
また、本発明に係る光電変換層形成工程(2)は、半導体層を形成する工程と、半導体層を増感処理する工程と、を有し、各工程を後述で詳説する。
(半導体)
本発明に係る半導体は、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等を使用することができる。
好ましい半導体として、チタンの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、鉄の酸化物、タングステンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ハフニウムの酸化物、ストロンチウムの酸化物、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブの酸化物、またはタンタルの酸化物、カドミウムの硫化物、亜鉛の硫化物、鉛の硫化物、銀の硫化物、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられ、当該半導体の具体例としては、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbSであり、好ましく用いられるのは、これらのうち金属酸化物もしくは金属硫化物半導体である。これらのうちさらに好ましく用いられるのは、金属酸化物半導体であり、なかでもTiO2またはNb2O5であり、より好ましく用いられるのはTiO2である。
本発明の光電変換素子に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti3N4)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
本発明に係る半導体の形状は、フィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状、平板状など挙げられ特に制限されることはない。また、本発明に係る半導体層としては、これらフィラー状、粒子状、円錐状、柱状、管状等の形状の半導体が凝集して形成された膜状のものを使用してもよい。また、この場合、予め増感色素が表面に被覆した半導体を使用しても、半導体からなる層を形成した後に増感色素を被覆してもよい。
本発明に係る半導体の形状が粒子状の場合は、一次粒子であって、かつ平均粒子径が1〜5000nmが好ましく、2〜100nmが好ましい。なお、上記半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本願発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
《半導体層の作製方法》
以下、本発明に係る光電変換層形成工程(2)における半導体層の作製方法について以下説明する。
半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性基板に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性基板上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性基板上に保持されていない場合には、半導体を導電性基板上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の作製方法の好ましい形態としては、上記導電性基板上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本願発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
《半導体含有塗布液の調製》
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体などが用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
《半導体含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理》
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性基板上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基板上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性基板上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性基板等の導電層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性基板との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いも。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、電荷輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空隙にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空隙率は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。また、多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも1μm以上が好ましく、さらに好ましくは2〜30μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
また、焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、900℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは400℃〜850℃の範囲であり、特に好ましくは450℃〜800℃の範囲である。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。
また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
《半導体層の増感処理》
本発明に係る増感処理を行う場合、後述する増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本願発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体への増感色素の担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に増感色素を担持させるには、増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。ここで、増感色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。また、各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空隙に吸着する前に、増感色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理は、前述のように増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが上げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
《増感処理の温度、時間》
本発明に係る増感処理の条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を増感色素含有溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、増感処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、増感処理時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり本願発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
(増感色素)
本発明に係る増感色素は、上記の半導体の増感処理により、半導体に担持され、かつ光照射時、光励起され起電力を生じ得るものであり、下記一般式(1A)、一般式(1B)または一般式(1C)で表わされる化合物である。
上記一般式(1A)中、Ar1〜Ar3は、1価の芳香族基である。この際、Ar1〜Ar3のいずれか2つは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、Ar1〜Ar3は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、pは、1〜3の整数であり、好ましくは1または2が好ましい。また、上記一般式(1B)中、Ar4〜Ar7は、1価の芳香族基である。この際、Ar4およびAr5またはAr6およびAr7は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、Ar4〜Ar7は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Ar8は、2価の芳香族基である。また、qは、1〜4の整数であり、1または2が好ましい。さらに、上記一般式(1C)中、Ar9〜Ar10は、1価の芳香族基である。なお、Ar9〜Ar10は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。R1は、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素鎖長3〜9のシクロアルキル基である。この際、Ar9およびAr10、またはAr9若しくはAr10およびR1は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。rは、1〜2の整数であり、好ましくは1である。さらに、上記一般式(1A)〜(1C)中、Zは、酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有するAr1〜Ar10のいずれかの部分構造である。
ここで、Ar1〜Ar10で表わされる1価あるいは2価の芳香族基は、特に制限されない。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、チオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等の芳香族環から導かれるものである。これらの芳香族環を複数組み合わせて用いても良く、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ビチオフェン基、4−チエニルフェニル基、ジフェニルスチリル基等、さらには、スチルベン、4−フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン、トリフェニルエテン(例えば、1,1,2−トリフェニルエテン)、フェニルピリジン(例えば、4−フェニルピリジン)、スチリルチオフェン(例えば、2−スチリルチオフェン)、2−(9H−フルオレン−2−イル)チオフェン、2−フェニルベンゾ[b]チオフェン、フェニルビチオフェン環、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン、フェニルジチエノチオフェン環由来の基などがある。これらの芳香族環は置換基を有していても良く、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、各々置換もしくは未置換の、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、オクタデシル基、3−エチルペンチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシエチル基等)、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基)、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基等)等がある。
また、上記一般式(1C)中、R1は、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素鎖長3〜9のシクロアルキル基である。このうち、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長6〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長6〜18の直鎖のアルキル基が好ましい。
また、上記炭素鎖長3〜9のシクロアルキル基もまた特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長3〜6のシクロアルキル基が好ましい。
これらのうち、炭素鎖長1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、ならびに炭素鎖長3〜7のシクロアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素鎖長1〜6の直鎖アルキル基およびイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素鎖長3〜6の分岐アルキル基、ならびにシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素鎖長5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。
また、上記一般式(1A)〜(1C)中、Zは、酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有するAr1〜Ar10のいずれかの部分構造である。なお、この部分構造Zは、一般式(1A)中のAr1〜Ar3、一般式(1B)中のAr4〜Ar7、または一般式(1C)中のAr9〜Ar10およびR1(好ましくは、Ar9〜Ar10)中に存在するいずれかの水素原子(H)に置換され、好ましくは、上記Arの末端の水素原子(H)に置換される。この際、部分構造Z中の酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基[−SO3H]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)2]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基がより好ましい。また、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基が好ましく、シアノ基、ニトロ基がより好ましい。電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環がより好ましい。これらのZは、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入できる。また、部分構造Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、部分構造Zは、電荷、特に正の電荷を帯びてもよく、この際、Cl−、Br−、I−、ClO4 −、NO3−、SO4 2−、H2PO4 −等の対イオンを有していてもよい。
すなわち、上記一般式(1A)〜(1C)中のZの好ましい例は、下記がある。
また、本発明に係る増感色素の特に好ましい例を以下に示す。なお、本願発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、「Ph」は、フェニル基を表わす。また、下記実施例において、増感色素を下記記号にて規定する。
「電荷輸送層」
本発明に係る電荷輸送層は、光励起によって酸化された増感色素に電子を供給して還元し、増感色素との界面で生じた正孔を第二電極へ輸送する機能を有する。電荷輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空隙内部に充填されうる。
当該電荷輸送層は、酸化還元電解質の分散物またはp型化合物半導体等を主成分として構成されうる。
酸化還元電解質としては、I−/I3−系、Br−/Br3−系、およびキノン/ハイドロキノン系等が用いられうる。上記酸化還元電解質の分散物は、公知の方法によって得ることができる。例えば、I−/I3−系の電解質は、ヨウ化物イオンとヨウ素とを混合することによって得ることができる。上記酸化還元電解質の分散物は、液状の形態で用いられる場合には液体電解質、室温(25℃)で固体の高分子に分散させた場合には固体高分子電解質、そしてゲル状物質に分散された場合にはゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合には、その溶媒として電気化学的に不活性なものが用いられる。当該溶媒としては、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、およびエチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質が用いられる場合としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質が用いられる場合としては「表面科学」21巻、第5号第288〜293頁に記載の電解質が、それぞれ参照されうる。
p型化合物としては、芳香族アミン誘導体、ピリジン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、およびスチルベン誘導体等のモノマー、並びに前記モノマーを含むオリゴマー(特に、ダイマーおよびトリマー)、およびポリマーが用いられうる。前記モノマーおよびオリゴマーは比較的に低分子量であることから有機溶媒等の溶媒への溶解性が高く、光電変換層への塗布が簡便となりうる。一方、ポリマーについては、光電変換層にプレポリマーの形態で塗布して、光電変換層上で重合してポリマーを形成する方法が簡便でありうる。当該重合方法としては、特に制限はなく、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法などの公知の重合方法が適用できる。具体的には、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、重合触媒を用いる化学重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いることが好ましい。電解重合によって得られたp型化合物を含む光電変換素子は、特に高い開放電圧(Voc)を有しうる。
上記p型化合物としてのモノマーおよびオリゴマーは、特に制限されず、公知の化合物が使用できる。例えば、芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール;2,2’,7,7’−テトラキス(N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)アミン)−9,9’−スピロビフルオレン(OMeTAD)等が挙げられる。また、米国特許第5,061,569号明細書に記載の2つの縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載のトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)等を用いてもよい。これらのうち、正孔輸送能に優れる芳香族アミン誘導体モノマー、特にトリフェニルジアミン誘導体を用いることが好ましい。なお、上述の化合物を高分子鎖に導入した、または高分子の主鎖とした高分子材料を用いてもよい。
上記p型化合物としてのポリマーおよびポリマーの原料となるプレポリマーは、特に制限されず、公知の化合物が使用できる。
プレポリマーを用いて光電変換層上で電解重合によりポリマーを形成する場合には、プレポリマーとともに支持電解質、溶媒、および必要に応じて添加剤を含む混合物を用いて重合が行われうる。
前記支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3SO2)2N]、(n−C4H9)4NBF4、(n−C4H9)4NPF4、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。また、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。上記支持電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、前記溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン等が挙げられる。また、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
電解重合は、より詳細には、光電変換層を形成した基体を、プレポリマー等を含む電解重合溶液に浸し、光電変換層を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNO3等を用いて、直流電解することによって行われる。電解重合溶液中の前記単量体あるいはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/Lであることが好ましく、1〜100mmol/Lであることがより好ましく、5〜50mmol/Lであることが特に好ましい。また、支持電解質濃度は、0.001〜0.1mol/Lであることが好ましく、0.001〜0.08mol/Lであることがより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01μA/cm2〜1000μA/cm2であることが好ましく、1μA/cm2〜500μA/cm2であることがより好ましい。保持電圧については、−0.1〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲に設定することが好ましく、一般的には、−30℃〜80℃である。また、当該電解重合に光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用してもよい。照射する光の波長は350〜800nmであることが好ましい。なお、光源としてはキセノンランプを用いることが好ましい。また、光の強度は、1〜100mW/cm2であることが好ましく、1〜50mW/cm2であることがより好ましい。このように光照射を行いながら電解重合を行うことにより、光電変換層(半導体層)の表面に緻密に重合体の層を形成できる。上記方法によると、なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右され、また、所望の膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度は、電解重合で得られた重合体から把握することは困難である。しかしながら、重合後に形成された電荷輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認については、プレポリマーの溶解が可能なテトラヒドロフラン(THF)に電荷輸送層を浸漬させることで、その溶解度により判断できる。具体的には、25mLのサンプル瓶に化合物(重合体)60mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると判断する。
一方、プレポリマーを用いて光電変換層上で化学重合によりポリマーを形成する場合には、プレポリマーとともに重合触媒、および溶媒、ならびに必要に応じて重合速度調整剤等の添加剤を含む混合物を用いて重合が行われうる。
前記重合触媒としては、特に制限されないが、塩化鉄(III)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物等が挙げられる。
また、前記重合速度調整剤は、重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸のような芳香族オキシスルホン酸等が用いられうる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、およびこれらの水和物である場合には、イミダゾール等が用いられうる。
上記化学重合の反応条件は、用いるプレポリマー、重合触媒、および重合速度調整剤の種類、割合、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、所望の重合速度によって異なるが、好適な重合条件としては、空気中で加熱する場合には、加熱温度は25〜120℃、加熱時間は1分〜24時間であることが好ましい。
上述の電解重合および化学重合等の重合は、光電変換層上で行うことが好ましいが、あらかじめプレポリマーを重合し、得られたポリマーを光電変換層に塗布して電荷輸送層を形成してもよい。塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。
この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の電荷輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。この際、用いられうる溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒等が挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明に係る電荷輸送層は、固体電荷輸送層が好ましい。そのため、当該固体電荷輸送層の材料としては、上述した固体高分子電解質が好適に使用される。
本発明に係る電荷輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)3SbCl6、NOPF6、SbCl5、I2、Br2、HClO4、(n−C4H9)4ClO4、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl3、AuCl3、NOSbF6、AsF5、NOBF4、LiBF4、H3[PMo12O40]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。上記添加剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
電荷輸送層に含まれる材料は、増感色素による光吸収を妨げないように、大きいバンドギャップを持つことが好ましい。具体的には2eV以上のバンドキャップを有することが好ましく、2.5eV以上のバンドキャップを有することがさらに好ましい。また、電荷輸送層は、増感色素ホールを還元させるために低いイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。適用する増感色素に応じてイオン化ポテンシャルの値は異なるが、通常、4.5〜5.5eVであることが好ましく、4.7〜5.3eVであることがより好ましい。
本発明に係る電荷輸送層の平均厚みは、後述のように、半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の内部や隙間にも浸透してため測定が容易ではない。
《電荷輸送層形成工程(3)》
本発明に係る電荷輸送層形成工程(3)は、光電変換層を被覆するように電荷輸送層を形成する。そのため、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体でない場合は、当該光電変換層上に、上記説明した液体電解質、固体高分子電解質、もしくはゲル電解質を形成する方法、または電荷輸送層の前駆体であるモノマーもしくはプレポリマーの形態で必要により溶媒などを添加した塗布液を光電変換層上に塗布した後、重合してポリマーを形成する方法が好ましい。また、光電変換層の構成要素である半導体層が多孔質体である場合は、当該多孔質体の表面を電荷輸送層が被覆するよう、より詳細には半導体層の表面に吸着した増感色素と電荷輸送層とが接触することが好ましく、具体的には、当該多孔質体の内部や隙間まで液体電解質、固体高分子電解質、ゲル電解質、または前記電荷輸送層の前駆体含有塗布液が浸透し、かつ当該多孔質体の表面のほぼ全面を被覆するように含浸および/または塗布により電荷輸送層を形成することが好ましい。また、当該電荷輸送層は、第二電極とも接触することが好ましい。
(基板)
本発明に係る基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、透明基板が好ましく、表面に第一電極が形成された透明導電性基板がより好ましく、光透過率が10%以上であることがさらに好ましく、更により好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
当該光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
当該基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
当該基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。前者の剛性を有する基板のうち、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本願発明に特に好ましく適用することができる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
「第一電極」
本発明に係る第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO2、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO3、Cd2SnO4、CdSnO4)、In2O3、CdIn2O4等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn2O3(ITO)、SbをドープしたSnO2、FをドープしたSnO2(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m2当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、本発明に係る第一電極は、透明基板の表面に設けられた透明導電性基板が好ましく、第一電極を基板上に有するものを、ここでは透明導電性基板とも称する。
透明導電性基板の平均厚さとしては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、透明導電性基板の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm2以下である。なお、透明導電性基板の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm2以上であれば十分である。透明導電性基板の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
「第二電極」
本発明に係る第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第二電極は、電荷輸送層との接触性が良いことが好ましい。第二電極は、電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。また、第二電極の平均厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは20Ω/cm2以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm2以上であれば十分である。
《第二電極形成方法(4)》
本発明に係る第二電極形成方法(4)は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第二電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
(太陽電池)
本願発明の光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本願発明は、本願発明の光電変換素子または本願発明の方法によって製造される光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本願発明の太陽電池は、上記本願発明の光電変換素子を有する。本願発明の太陽電池は、本願発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本願発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、電荷輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本願発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、電荷輸送層の電荷輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から電荷輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本願発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本願発明を詳細に説明するが、本願発明の範囲はこれらに限定されない。
「色素増感光電変換素子の製造」
(実施例1)
(バッファ層)
チタンキレートT−50(チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート);日本曹達株式会社製)5質量部をn−プロパノール95質量部に溶解させた溶液を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(日本板硝子製)へスピンコート法により回転数を1000rpmに設定し塗布した後、650℃で30分間焼成を行い当該ガラス基板上に厚さ120nmのバッファ層を形成した。バッファ層のX線回折ピーク2θ=25.28°(アナターゼ型)、2θ=27.44°(ルチル型)の強度比は65:35であった。
(半導体層(多孔質層))
二酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察)18nm、ポリエチレングリコール分散)を、バッファ層の上へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm2)により塗布した。塗布後、200℃で10分間0よび500℃で15分間焼成を行い、厚さ5μmの二酸化チタン薄膜を得た。
(色素吸着)
下記の構造式A−4のコニカミノルタ製色素
をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、上記二酸化チタンを塗布焼成したFTOガラス基板をこの溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。
(電荷輸送層)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の二量体であるビス−EDOTと、Li[(CF3SO2)2N]、それぞれ0.01M、0.1Mになるよう溶解した。その後、前記色素を担持させた二酸化チタンを有する半導体電極を前記ビス−EDOLと、Li[(CF3SO2)2N]を溶解したアセトニトリル溶液に浸漬した。作用極を前記半導体電極、対極を白金線、参照極をAg/Ag+(AgNO3、0.01M)、保持電圧を−0.2Vとした。二酸化チタン層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm2、430nm以下の波長をカット)10分間電圧を保持して、EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子の電荷輸送層を前記二酸化チタン表面に形成した。得られた二酸化チタン層/EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子の電荷輸送層をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られたEDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子の電荷移動層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。その後、15mMのLi[(CF3SO2)2N]、50mMのt−ブチルピリジンを溶解したクロロベンゼン溶液に30分間浸漬した。その後、二酸化チタン層/EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子の導電性高分子を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、本発明の色素増感光電変換素子を得た。
(実施例2)
バッファ層の形成において焼成温度を600℃、30分間にした以外は実施例1と同様の方法でセルを形成し、本発明の色素増感光電変換素子T2を得た。バッファ層のX線回折ピーク2θ=25.28°(アナターゼ型)、2θ=27.44°(ルチル型)の強度比は90:10であった。
(実施例3)
バッファ層の形成において焼成温度を800℃、30分間にした以外は実施例1と同様の方法でセルを形成し、本発明の色素増感光電変換素子T3を得た。バッファ層のX線回折ピーク2θ=25.28°(アナターゼ型)、2θ=27.44°(ルチル型)の強度比は10:90であった。
(比較例1)
バッファ層の形成において焼成温度を500℃、30分間にした以外は実施例1と同様の方法でセルを形成し、本発明の太陽電池C1を得た。バッファ層のX線回折ピーク2θ=25.28°(アナターゼ型)、2θ=27.44°(ルチル型)の強度比は100:0であった。
(比較例2)
バッファ層の形成において焼成温度を900℃、30分間にした以外は実施例1と同様の方法でセルを形成し、本発明の太陽電池C2を得た。バッファ層のX線回折ピーク2θ=25.28°(アナターゼ型)、2θ=27.44°(ルチル型)の強度比は0:100であった。
「色素増感光電変換素子の評価」
上記実施例および比較例で作製した光電変換素子を、それぞれ、ソーラーシュミレータ(英弘精機製)を用い、相対湿度60%RHの条件で20℃、45℃、0℃の条件下において、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の擬似太陽光を照射することにより行った。即ち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、および曲線因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、光電変換素子の変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
ここで、Pは入射光強度[mW/cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は曲線因子を示す。