JP2013149446A - 光電変換素子およびこれを用いた太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れる光電変換素子及び該光電変換素子を有する太陽電池を提供する。
【解決手段】透明基板、第1の電極、光電変換層、電荷輸送層および第2の電極を有する有機光電変換素子であって、前記光電変換層は、増感色素及び共吸着剤に担持された、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンを含み、前記共吸着剤は、一般式(1):R−X−COOH(式中、Rは、無置換もしくは置換のシクロアルキル基、無置換もしくは置換のフェニル基、または無置換もしくは置換のピリジル基を表わし;およびXは、単結合、メチレン基またはエチレン基を表わす)で表される化合物を含むことを特徴とする、有機光電変換素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子およびこれを用いた太陽電池に関する。より詳しくは、本発明は、耐久性に優れる光電変換素子、特に色素増感型の光電変換素子および該光電変換素子を用いて構成してなる太陽電池に関する。
近年、環境問題などから、エネルギー源として、太陽光エネルギーが注目されており、太陽光エネルギーの光、熱を活用して、利用し易いエネルギー形態である電気エネルギーに変換する方法が実用化されている。中でも、太陽光を電気エネルギーに変換する方法が代表的なものであり、この方法には、光電変換素子が用いられる。光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウムおよびセレン化インジウム銅等の無機系の材料を用いた光電変換素子が広く用いられ、所謂太陽電池に広く利用されている。これらの無機系の材料を用いた光電変換素子を用いた太陽電池は、材料として用いるシリコンなどが高度な精製過程を経た高純度品である必要がある、多層pn接合構造を有するため、製造工程が複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いなどの問題点があった。
一方、より簡素な素子として有機材料を用いた光電変換素子の研究も進められている。例えば、非特許文献1に記載のような、n型の有機色素であるペリレンテトラカルボン酸誘導体とp型の有機色素である銅フタロシアニンを接合させた、pn接合型の有機光電変換素子が報告されている。有機光電変換素子において、弱点であると考えられている励起子拡散長の短さと空間電荷層の薄さを改良する為に、単に有機薄膜を積層するpn接合部の面積を大きく増大させ、電荷分離に関与する有機色素数を充分に確保しようという試みがその結果を出しつつある。
また、例えば、非特許文献2に記載のような、n型の電子伝導性の有機材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合させることによりpn接合部分を飛躍的に増大させて、膜中全体で電荷分離を行う手法がある。Heegerらは、1995年に、p型の導電性ポリマーとしての共役高分子と、電子伝導材料としてのフラーレンとを混合させた光電変換素子を提案している。
これらの光電変換素子は次第にその特性を向上させてはいるが、高い変換効率のまま安定して挙動するとこまでには至っていない。
しかし、1991年にGratzelは、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する光電変換素子の作製に成功した(例えば、非特許文献3参照)。
この光電変換素子では、酸化チタン等の半導体多孔質表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子注入され色素カチオンとなり、対極から電荷輸送層を通じて色素が電子を受け取るというサイクルを繰り返す。電荷輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この光電変換素子は酸化チタンの安定と相まって、優れた再現性を有しており、研究開発の裾野も大きく広がり、この光電変換素子も色素増感型太陽電池と呼ばれて、大きな期待と注目を浴びている。この方式は、酸化チタン等の安価な金属化合物半導体を高純度まで精製する必要がなく、半導体としては安価なものを使用することができ、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できるという利点を有する。しかしながら、酸化チタン等の半導体多孔質に吸着している色素が半導体多孔質を完全に被覆しきれず、電荷輸送層が色素層を介さずに半導体多孔質と接触し、部分的な短絡を生じるため、光電変換効率が向上しないという問題があった。
短絡による逆電子移動を防止し、光電変換効率の経時劣化を改善するために、色素を半導体多孔質に吸着させた後、半導体多孔質に吸着する官能基(イミダゾリル基、カルボキシル基、ホスホン基等)を有する添加剤を吸着させ、色素の吸着していない半導体多孔質の表面を添加剤で覆う方法が提案されている(特許文献1)。上記特許文献1に記載の方法では、半導体の表面に色素を吸着させた後、前記添加剤としてtert−ブチルピリジンを吸着させる例が記載されており、逆電子移動を防止しつつ光電変換効率の経時劣化を防止している。
一方、最表面が酸化チタンの伝導帯準位より高い伝導帯準位を有する金属酸化物粒子を色素増感型態様電池の半導体電極に使用することが報告されている(特許文献2、非特許文献4)。ここで、金属酸化物粒子の伝導帯準位と色素のLUMOのエネルギーレベルのマッチングを制御し、半導体電極の起電力及び開放電圧を向上させ、結果として光電変換効率を向上できることが記載される。また、このような金属酸化物粒子としては、酸化チタンより高い伝導帯準位を有する組成を均一にドーピングした金属酸化物を表面に被覆したコアシェル粒子が例示される。
特開2006−134631号公報 特開2009−252492号公報
C.W.Tang:Applied Physics Letters,48,183(1986) G.Yu, J.Gao, J.C.Humelen, F.Wudl and A.J.Heeger:Science,270,1789(1996) B.O’Regan and M.Gratzel: Nature, 353, 737(1991) Chem.Mater. 2001,13,4629−4634
しかしながら、特許文献1では、単なる放置による耐久性の向上については記載されているが、光を照射し続けた時の耐久性は記載されておらず、本発明者らが光照射による耐久性を評価した結果は不満足なレベルであった。また、逆電子移動防止(短絡の防止)による光電変換効率の初期特性の向上もいまだ不十分であり、大きな改善が望まれていた。
また、特許文献2、非特許文献4では、酸化チタン導電帯のバンド変化による電圧の向上や、それに伴う初期効率の改善については記載されている。しかしながら、色素自身の電気的反発のために色素の吸着密度を大きくできないため、逆電子移動防止(短絡の防止)の能力が不十分であり、耐久時の劣化が早いという問題がある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐久性に優れる光電変換素子および該光電変換素子を有する太陽電池を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性に優れる光電変換素子、特に全固体色素増感型の光電変換素子、および該光電変換素子を有する太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンに増感色素及び特定の共吸着剤を担持したものを光電変換層に使用することによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記諸目的は、透明基板、第1の電極、光電変換層、電荷輸送層および第2の電極を有する有機光電変換素子であって、前記光電変換層は、増感色素及び共吸着剤に担持された、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンを含み、前記共吸着剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする有機光電変換素子によって達成されうる。
上記一般式(1)中のRは、無置換もしくは置換のシクロアルキル基、無置換もしくは置換のフェニル基、または無置換もしくは置換のピリジル基を表し、Xは、単結合、メチレン基またはエチレン基を表わす。
本発明により、耐久性に優れる光電変換素子、ならびに当該光電変換素子を用いてなる太陽電池が提供できる。特に、電荷輸送層が導電性の高い固体である場合には、上記効果がより顕著に達成できる。
本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
本発明は、透明基板、第1の電極、光電変換層、電荷輸送層および第2の電極を有する有機光電変換素子に関し、前記光電変換層は、増感色素及び共吸着剤に担持された、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンを含み、前記共吸着剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含むものである。すなわち、
上記一般式(1)中のRは、無置換もしくは置換のシクロアルキル基、無置換もしくは置換のフェニル基、または無置換もしくは置換のピリジル基を表わし;およびXは、単結合、メチレン基またはエチレン基を表わすものである。
上記光電変換層を有する光電変換素子は、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性が高い。ここで、本発明の光電変換素子が上記効果を奏するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。ただし、本発明は下記推測に限定されるものではない。
すなわち、一般的に、太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体(金属酸化物)に吸着した増感色素は照射された太陽光または電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は金属酸化物に移動し、次いで透明基材を経由して対向電極に移動して、電荷輸送層のレドックス電解質を還元する。
一方、金属酸化物に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、対向電極から電荷輸送層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。しかし、通常、増感色素の担持(吸着)においては、色素分子同士の電気的反発などにより、半導体電極の材質に関係なく、色素のみを半導体電極の表面を完全に被覆するように担持(吸着)させることは非常に難しい。ゆえに、半導体電極表面には色素が吸着していない未吸着サイト(未吸着部位)が多く残存する。このように未吸着サイトが存在すると、電荷輸送層と半導体(半導体電極)表面との接触時に電荷輸送層から半導体への電荷の逆電子移動が発生し、光電変換効率を低下させてしまう。
これに対して、本発明では、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンを金属酸化物として使用し、かつこの金属酸化物に特定の構造を有する共吸着剤をさらに担持させている。ここで、ニオブは5価、チタンは4価であるため、酸化ニオブ(Nb)は酸化チタン(TiO)に比べて、表面に酸素原子が露出する割合が多い。また、カルボキシル基(−COOH)を有する共吸着剤分子は、分子内に電気的反発をもたらす主骨格をもたないので、色素に比べて高密度の吸着が可能である。
さらに、カルボキシル基を含有する分子の場合、酸素原子に対する親和性により吸着できるので、酸化チタン表面に対する場合に比べて、酸化ニオブ表面に対する場合のほうが、共吸着剤の吸着密度を大きくすることができる。ゆえに、半導体電極と電荷輸送層との接触を低減できるので、特に耐久過程で電荷輸送層の分子の配列が経時変化によって少し変化した場合においても、リークを防止し続けることができる。このため、酸化チタンを酸化ニオブで被覆し、さらに共吸着剤を担持することにより、それぞれを単独で用いる場合に比べて、耐久時の特性変動抑制の効果に優れ、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性を向上できると、推測される。
なお、半導体(金属酸化物)に価数が6価以上の金属を使用する場合には、金属酸化物自身の光吸収が可視光領域に増えてくるので、色素の増感効果が損なわれる問題がある。逆に、半導体(金属酸化物)に価数が3価以下の金属を使用する場合には、共吸着剤の吸着が相対的に減少するので、共吸着剤によるリーク防止効果が不十分になる問題がある。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第1の電極2、光電変換層4、電荷輸送層5および第2の電極6、バリア層3より構成されている。ここで、光電変換層4は、半導体(酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン)、増感色素および共吸着剤を含有する。図1に示されるように、第1の電極2と光電変換層4との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリア層3を有することが好ましい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明の光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態を以下に示す。
第1の電極2を形成した基板1上に、バリア層3を付着して形成した後、バリア層3上に、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン(半導体)からなる半導体層を形成し、その半導体表面に増感色素及び共吸着剤を吸着させて光電変換層4を形成する。その後、光電変換層4の上に、電荷輸送層5を形成する。また、電荷輸送層5は、増感色素及び共吸着剤を担持した半導体からなる光電変換層4に侵入し、且つ、その上に存在し、該電荷輸送層5の上に第2の電極6が付着している。第1の電極2および第2の電極8に端子を付けて電流を取り出すことができる。
以下、本発明の光電変換素子の各部材について説明する。
<光電変換層>
(半導体)
本発明に係る半導体は、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン(本明細書中では、単に「半導体」とも称する)を含む。なお、光電変換層は、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンのみを半導体として含むことが好ましいが、本発明による効果を阻害しない限り、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンに加えて、他の半導体を含んでもよい。ここで、他の半導体としては、特に制限されず、光電変換素子で一般的に使用される半導体が使用できる。例えば、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。これらのうち、好ましく用いられるのは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、より好ましく用いられるのは、TiOまたはNbであるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO(酸化チタン)である。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の1種または数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。または、半導体として、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載のように、酸化亜鉛/酸化錫複合の形態で使用してもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。なお、上記他の半導体は、単独で使用されてもまたは2種以上の半導体を併用して用いてもよい。また、他の半導体の配合量は、本発明による効果を阻害しない程度であれば特に制限されないが、通常、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン(酸化チタン及び酸化ニオブの合計質量)に対して、0質量%を超えて50質量%以下が好ましい。
また、半導体(特に、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン)の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよいが、球状(粒子、微粒子)であることが好ましい。また、半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。なお、上記半導体層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に0〜80℃で1分〜24時間浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
酸化チタンを酸化ニオブを含む被覆層で被覆する方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。具体的には、特開2009−252492号公報に記載されるような、金属酸化物粒子の分散液の段階で被覆を施しシェル形成して、次いで基材上に塗布し乾燥・焼成を行って半導体層を形成する方法(方法(i))、およびコア微粒子の分散液を基材上に塗布し乾燥・焼成を行って半導体層を形成し、次いで被覆用の金属酸化物またはその前駆体の分散液を半導体層上に塗布し乾燥・焼成を行ってシェル形成を行う方法(方法(ii));ならびに特開2010−506378号公報に記載されるような、原子層堆積方法(方法(iii))などが挙げられる。これらのうち、方法(ii)及び(iii)が好ましく、方法(ii)がより好ましい。
以下、上記方法(ii)及び(iii)について詳細に説明する。
方法(ii)では、酸化チタン粒子(コア粒子)を含有する分散液を調製し、この分散液を導電性基材に塗布し、乾燥を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基材上に酸化チタン層を形成する。
上記方法において、酸化チタン粒子(コア粒子)の大きさは特に制限されないが、その1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。酸化チタン粒子を含む塗布液は、酸化チタン粒子を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒中に分散された酸化チタン粒子は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては酸化チタン粒子を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体などが用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
上記のようにして得られた塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に酸化チタン層が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性支持体上に塗布液を塗布、乾燥して得られる被膜は、酸化チタン粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された酸化チタン層は、一般的に、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度も弱い。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、酸化チタン層の焼成処理を行うことが好ましい。
ここで、酸化チタン層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。ここで、酸化チタン層の空隙率は、0.1〜20体積%であることが好ましく、5〜20体積%であることが更に好ましい。なお、酸化チタン層の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。酸化チタン層の厚さは、少なくとも10nm以上であることが好ましく、100〜30000nmであることがより好ましく、500〜10000nmであることがさらに好ましい。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、酸化チタン層は、平均粒径がほぼ同じ酸化チタン粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
また、焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは100〜900℃の範囲であり、特に好ましくは200〜800℃の範囲である。このような条件であれば、半導体層の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する半導体層を得ることができる。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、200℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。このような条件であれば、半導体層の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する半導体層を得ることができる。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
次に、上記で形成された酸化チタンを酸化ニオブで被覆する。ここで、被覆方法としては、酸化ニオブ前駆体を溶媒に溶解して、酸化ニオブ前駆体溶液を調製する。次に、上記酸化チタン層をこの酸化ニオブ前駆体溶液に浸漬する、あるいは上記酸化チタン層にこの酸化ニオブ前駆体溶液を塗布し、更に焼成処理等を行うことにより、酸化チタンを酸化ニオブにより均一に被覆することができる。ここで、酸化ニオブ前駆体としては、溶液を形成できて、かつ、加熱によって均一な酸化ニオブを生成できるものであれば特に限定するものではないが、入手や取り扱いの容易性を考慮すると、塩化ニオブ(V)、ニオブ(V)エトキシド、ニオブ(V)イソプロポキシド、ニオブ(V)n−ブトキシドなどが挙げられる。また、酸化ニオブ前駆体を溶解する溶媒は、酸化ニオブ前駆体を溶解できるものであれば特に制限されないが、例えば、水分率100ppm未満の無水エタノール、無水2−プロパノール、無水1−ブタノールなどが挙げられる。なお、塩化ニオブ(V)を酸化ニオブ前駆体として使用する場合には、塩酸に溶解してもよい。酸化ニオブによる被覆層に不純物元素を取り込まない事が特に重要なので、99.9%以上の純度の原料を用いることが好適であり、99.99%以上の純度の原料を用いることがより好適である。酸化ニオブ前駆体溶液中の酸化ニオブ前駆体の濃度は、酸化チタンを酸化ニオブで十分被覆できる濃度であれば特に制限されない。具体的には、酸化ニオブ前駆体溶液中の酸化ニオブ前駆体の濃度は、1〜200mMであることが好ましく、10〜100mMであることがより好ましい。
上記で調製された酸化ニオブ前駆体溶液を用いて、これに酸化チタン層を浸漬する、またはこれを酸化チタン層に塗布する方法を用いることができる。浸漬する方法の場合、時間短縮の観点から、用いた溶媒が沸騰しないで均一性を維持できる温度の範囲で加温するのが望ましい。このため、浸漬条件は、使用する溶媒の種類によって異なるが、浸漬温度は、10〜200℃であることが好ましく、20〜100℃であることがより好ましい。また、浸漬時間は、酸化チタンを酸化ニオブで十分被覆できる時間であれば特に制限されないが、1〜200分であることが好ましく、3〜120分間であることがより好ましく、10〜90分であることが特に好ましい。一方、塗布する方法の場合の塗布方法は特に制限されないが、スピンコート、ディップ、インクジェットによる塗布方法を好ましく使用できる。
上記で被覆層を形成した後、被覆層の均一化や、酸化ニオブ前駆体の余剰成分を分解するための工程をさらに行うことが望ましい。このための工程例としては、焼成工程がある。ここで、焼成条件としては、被覆層を均一化し、酸化ニオブ前駆体の余剰成分を分解できる条件であれば特に制限されない。例えば、焼成温度は、300〜1000℃であることが好ましく、500〜800℃の範囲であることがより好ましい。また、焼成時間は、1〜120分間であることが好ましく、5〜100分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜80分の範囲である。
または、酸化チタン層と酸化ニオブを含む被覆層との間に別の金属酸化物層を形成してもよい。また、酸化チタン層と酸化ニオブを含む被覆層との間に別の金属酸化物層を形成する方法としては、導電性基材上に酸化チタン層を形成した後、中間層となる別の金属酸化物の前駆体の溶液を酸化チタン層に塗布し、もしくは酸化チタン層を別の金属酸化物の前駆体の溶液に浸漬し、更に必要に応じて焼成処理などを施すことにより、金属酸化物からなる中間層を形成することができる。次いで、上記と同様にして、酸化ニオブを含む被覆層を形成すればよい。ここで、別の金属酸化物としては、上記した他の半導体が使用できる。または、酸化チタンの前駆体である四塩化チタン水溶液またはチタンアルコキシドを用いた電気化学的処理や、チタン酸アルカリ金属やチタン酸アルカリ土類金属の前駆体でコア微粒子からなる半導体層の表面処理や焼成処理等を行うことによって、中間層を形成することができる。この際の焼成温度や焼成時間は特に制限は無く、任意に制御することができる。
方法(iii)において、原子層堆積方法としては、特に制限されず、原子層堆積装置(ALD)を用いて、または特開2010−506378号公報に記載される方法に従って、実施できる。ここで、原子層堆積方法は、水酸基などの反応性官能基を有する試料に対して、反応性官能基と反応するプリカーサー(前駆体)ガスを供給して、不可逆的に別の材質の薄膜層を形成する方法である。酸化ニオブのプリカーサー(前駆体)の種類としては、特に制限されないが、例えば、特表2010−506378号に記載されるような、Nb(OMe)、Nb(OEt)、Nb(NMe、Nb(NEt、Nb(NEt、Nb(OEt)(OCMeCH−OMe)(NBT−DMAE)等のNb(OY(O−C(Y)(Y)−CH−OY)(ここで、Y〜Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基である)のニオブ誘導体、Nb(OY[O−C(Y)(Y)−CH−N(Y)(Y)](ここで、Y〜Yは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基である)のニオブ誘導体、Nb(=NY10)(NY1112(ここで、Y10〜Y12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基である)のニオブ誘導体;ならびにtert−ブチルアミド−tris−(ジエチルアミド)−ニオブ(TBTDEN)、tert−アミルイミドトリス(ジメチルアミド)ニオブなどのアミド化合物などが挙げられる。これらのうち、成膜速度、プリカーサーガスの堆積前の分解しやすさ、堆積過程で発生するガスに由来する副反応などを考慮すると、tert−ブチルアミド−tris−(ジエチルアミド)−ニオブ(TBTDEN)、tert−アミルイミドトリス(ジメチルアミド)ニオブなどのアミド化合物、ニオブ(V)エトキシドなどのアルコキシド化合物が好ましい。また、試料表面を活性化させるために、水などを併用してもよい。また、原子層堆積条件は、酸化チタンを酸化ニオブで被覆できる条件であれば特に制限されないが、原子層堆積温度(成膜温度)は、200〜500℃であることが好ましく、250〜400℃であることがより好ましい。
上記方法により、酸化チタンを酸化ニオブを含む被覆層で被覆できる。ここで、酸化ニオブを含む被覆層の厚さは、酸化チタン表面を十分被覆できる厚さであれば特に制限されない。具体的には、酸化ニオブを含む被覆層の厚さは、0.1〜5nmが好ましく、0.2nm〜3nmであることがより好ましい。このような厚さであれば、均一に酸化チタンを被覆でき、また、半導体層の電気抵抗を低く抑えて、高い開放電圧(Voc)を達成できる。
(増感色素)
本発明に係る増感色素は、下述するような半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものである。
また、本発明に係る増感色素は、光電変換素子に用いられる公知の色素であってよいが、半導体層への電子の注入を効率的に行うためには、酸性基(吸着基)および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有することが好ましい。ここで、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基[−SOH]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基がより好ましく、電荷の半導体への効率的な注入の観点から、上記増感色素はカルボキシル基を有することが特に好ましい。また、増感色素中に存在する酸性基の数は、特に制限されないが、電荷の半導体への効率的な注入の観点から、増感色素は酸性基を2個有することが特に好ましい。
また、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基が好ましく、シアノ基、ニトロ基がより好ましい。電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環がより好ましい。これにより、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入できる。また、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、部分構造Zは、電荷、特に正の電荷を帯びてもよく、この際、Cl、Br、I、ClO 、NO 、SO 2−、HPO 等の対イオンを有していてもよい。
以下に、酸性基(吸着基)および電子吸引性基または電子吸引性環構造の好ましい組み合わせを示す。
また、本発明に係る増感色素の好ましい例を以下に示す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素と他の増感色素を併用して用いることもできる。併用して用いることのできる増感色素としては、本発明に係る半導体層を分光増感しうるものならばいずれの増感色素も用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ光電変換効率を上げるため2種類以上の増感色素を混合することも好ましい。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように混合する増感色素とその割合を選ぶことができる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の増感色素を混合して用いることも好ましい。
併用して用いる増感色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が他の増感色素として好ましく用いられる。また、本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素と併用して用いることのできる増感色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の増感色素を挙げることができる。
(共吸着剤)
本発明に係る共吸着剤は、増感色素が吸着されない半導体部位に吸着させるために、増感色素と共に半導体に担持されている。
ここで、共吸着剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
上記一般式(1)の共吸着剤は、カルボキシル基(−COOH)を有し、分子内に電気的反発をもたらす主骨格をもたないので、増感色素に比べて高密度の吸着が可能である。また、上記共吸着剤は、酸素原子に対する親和性により吸着できるので、酸素原子の割合が多い酸化ニオブ表面に対して、半導体表面に対する吸着の効果(共吸着剤の吸着密度)を高めることができる。共吸着剤の吸着密度が大きいので、半導体電極と電荷輸送層との接触を低減でき、特に耐久過程で電荷輸送層の分子の配列が経時変化によって少し動いた場合においても、リークを防止し続ける事ができる。このため、酸化ニオブで被覆した酸化チタンに、増感色素とともに共吸着剤を担持することにより、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性を向上できる。
また、本発明に係る共吸着剤は、シクロアルキル基、フェニル基またはピリジル基(R)を有する。このように、シクロアルカン環、ベンゼン環、ピリジン環の立体障害を有する共吸着剤に用いることで、増感色素の吸着の方が強くなり、増感色素と吸着が競合しない。また、本発明に係る共吸着剤は、増感色素の溶解度を低下させず、溶液中での凝集防止を図ることができるので、均一な色素吸着を行うことができる。このため、本発明の光電変換素子は、優れた光電変換効率を発揮できる。
上記一般式(1)において、Rは、無置換もしくは置換のシクロアルキル基、無置換もしくは置換のフェニル基、または無置換もしくは置換のピリジル基を表わす。ここで、無置換のシクロアルキル基としては、特に制限されないが、炭素鎖長3〜18のシクロアルキル基が好ましい。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基、トリシクロデシル基、デカヒドロナフチル基などが挙げられる。これらのうち、半導体表面に対して吸着特性、増感色素との吸着競合性、置換基同士の相互作用による凝集吸着、単層吸着の阻害性、溶解性などを考慮すると、炭素鎖長5〜15のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基、アダマンチル基がより好ましい。
また、シクロアルキル基、フェニル基またはピリジル基に存在してもよい置換基としては、特に制限されない。具体的には、置換基としては、ハロゲン原子、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、複素環基等がある。
このうち、ハロゲン原子としては、以下に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。また、炭素鎖長1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基としては、以下に制限されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、以下に制限されないが、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。アルコキシアルキル基としては、以下に制限されないが、メトキシエチル基などが挙げられる。炭素鎖長1〜18のアルコキシ基としては、以下に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。アリール基としては、以下に制限されないが、フェニル基、ナフチル基、トリル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。アルケニル基としては、以下に制限されないが、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基などが挙げられる。アミノ基としては、以下に制限されないが、アミノ基(−NH)、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。複素環基としては、以下に制限されないが、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基、フタラジニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、フラニル基などが挙げられる。
これらのうち、半導体表面に対して吸着特性、増感色素との吸着競合性、置換基同士の相互作用による凝集吸着、単層吸着の阻害性、溶解性などを考慮すると、置換基は、炭素鎖長1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素鎖長1〜4の直鎖のアルキル基がより好ましい。このような場合には、増感色素の未吸着部分への共吸着剤の吸着密度をより向上できる。また、一般式(1)において、Rが置換基を有するシクロアルキル基、フェニル基またはピリジル基である場合の、置換基の数は、特に制限されないが、置換基同士の相互作用による凝集吸着、単層吸着の阻害性、溶解性などを考慮すると、1〜3個程度が好ましく、1または2個がより好ましく、1個が特に好ましい。ここで、置換基のシクロアルキル基、フェニル基またはピリジル基への導入位置は、特に制限されないが、置換基同士の相互作用による凝集吸着、単層吸着の阻害性、溶解性などを考慮すると、カルボキシル基(−COOH)をなるべく遠位となるような位置が好ましい。したがって、例えば、1個の置換基がシクロヘキサンカルボン酸に導入される場合には、4位に置換基が導入されることが好ましい。このような場合には、増感色素の未吸着部分への共吸着剤の吸着密度をより向上できる。
すなわち、Rは、無置換もしくは置換のシクロヘキシル基、または無置換もしくは置換のアダマンチル基を表わすことが好ましく、無置換もしくは1〜3個の炭素鎖長1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基またはアダマンチル基を表わすことがより好ましく、無置換もしくは1個の炭素鎖長1〜4の直鎖のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基またはアダマンチル基を表わすことが特に好ましい。
また、上記一般式(1)において、Xは、単結合、メチレン基またはエチレン基を表わす。好ましくは、Xは、単結合またはメチレン基を表わし、より好ましくは、Xは、単結合を表わす。
すなわち、本発明に係る共吸着剤の好ましい例としては、下記がある。
なお、本発明に係る光電変換素子では、光電変換層に上記一般式(1)の共吸着剤を含むが、上記に加えて他の化合物(添加剤)を含んでもよい。ここで、他の化合物(添加剤)としては、特に制限されないが、特開2006−134631号に記載の添加剤、特表2006−525632号に記載の両親媒性緻密化用化合物などが挙げられる。この際、他の化合物(添加剤)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、この際、他の化合物(添加剤)の使用量は、本発明による効果を阻害しない限り特に制限されない。
(半導体への増感色素及び共吸着剤の担持処理)
本発明では、半導体に増感色素及び共吸着剤を担持させるが、担持方法は、特に制限されない。例えば、(a)増感色素及び共吸着剤を適当な溶媒に溶解した溶液に、半導体層を有する積層体(基板上に第1電極と半導体層を順に設けた積層体)を浸漬することによって、増感色素及び共吸着剤を半導体に吸着させる方法;(b)増感色素を適当な溶媒に溶解した溶液に、半導体層を有する積層体(基板上に第1電極と半導体層を順に設けた積層体)を浸漬した後、共吸着剤を適当な溶媒に溶解した溶液に浸漬することによって、増感色素及び共吸着剤を半導体に吸着させる方法;(c)共吸着剤を適当な溶媒に溶解した溶液に、半導体層を有する積層体(基板上に第1電極と半導体層を順に設けた積層体)を浸漬した後、増感色素を適当な溶媒に溶解した溶液に浸漬することによって、増感色素及び共吸着剤を半導体に吸着させる方法などがある。このうち、半導体表面に対して吸着特性、増感色素との吸着競合性、置換基同士の相互作用による凝集吸着、単層吸着の阻害性などを考慮すると、(c)が好ましい。なお、時間短縮という観点からは、(a)が好ましい。上記方法において、半導体層を焼成により形成し、基板を予め減圧処理や加熱処理して膜中の気泡を除去し、共吸着剤が半導体層の内部深くに進入できるようにしておくことが好ましく、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。好ましく用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。また、増感色素の溶媒中の濃度は、所望の量の増感色素が半導体と反応できる濃度であれば特に制限されないが、0.02〜5mmol/Lであることが好ましく、0.1〜2mmol/Lであることがより好ましい。なお、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、溶媒を予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。
増感処理の条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、増感処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、増感処理時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
半導体層1m当たりの本発明の色素の総担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
上記において、増感色素を用いて増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、または、他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる2種類以上の色素を混合して用いることも好ましい。
増感色素を複数種類併用したり、本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素以外の他の増感色素を併用したりして増感処理する際には、各々の増感色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの増感色素について溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に前記増感色素を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。また、増感色素を単独で吸着させた半導体微粒子を混合する等により作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体薄膜を有する半導体層の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、及び半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、前記増感色素の吸着処理(半導体層の増感処理)を完了することが好ましい。
また、半導体層に共吸着剤を吸着させるには、共吸着剤を適切な溶媒に溶解し、その溶液中に、酸化ニオブを含む被覆層で被覆した後の半導体層(素子)を浸漬する方法が一般的である。
ここで、共吸着剤を溶解するのに用いる溶媒は、共吸着剤を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。好ましく用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましく、エタノール、アセトニトリル及びt−ブチルアルコール、これらの混合溶媒、特にアセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒がより好ましい。なお、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記共吸着剤の吸着等を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。ここで、増感色素を溶解するのに用いる溶媒及び共吸着剤を溶解するのに用いる溶媒は、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。また、共吸着剤の溶媒中の濃度は、増感色素の未吸着部分に十分吸着できる濃度であれば特に制限されず、用いる色素との組み合わせや浸漬時間などを考慮して適宜選択できる。具体的には、共吸着剤の溶媒中の濃度は、0.1〜25mM(mmol/L)であることが好ましく、0.3〜5mM(mmol/L)であることがより好ましい。また、増感色素と共吸着剤を混合して使用する場合の混合比は、特に制限されないが、通常、1:0.01〜100(モル比)が好ましく、1:0.1〜20(モル比)がより好ましい。
共吸着剤を含む溶液に基板を浸漬する条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を共吸着剤を含む溶液に基板を浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、増感色素の未吸着部分に十分吸着させることが好ましい。また、共吸着剤が深く進入して吸着等を十分に進行させ、共吸着剤の分解等により生成した分解物が増感色素の吸着を妨害することを抑制するなど観点から、増感処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、同様の観点から、共吸着剤を含む溶液に基板を浸漬する時間は、1〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で30分〜48時間、特に3〜24時間、共吸着剤を含む溶液に基板を浸漬することが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり、共吸着剤を含む溶液は、前記共吸着剤が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。共吸着剤による処理を行う場合、共吸着剤を単独で用いてもよいし、複数を併用することもできる。
共吸着剤を複数種類併用する際には、各々の共吸着剤の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの共吸着剤について溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各共吸着剤について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に前記共吸着剤を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。また、共吸着剤を単独で吸着させた半導体微粒子を混合する等により作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体薄膜を有する半導体層の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、及び半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、前記共吸着剤の吸着処理を完了することが好ましい。
さらに、半導体の増感色素または共吸着剤による処理は、前述のように増感色素または共吸着剤を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、光吸収して電子を半導体(酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタン)に注入した後の増感色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を第2の電極(対極)に輸送する機能を担う層である。なお、電荷輸送層は、光励起によって酸化された増感色素に電子を供給して還元させ、増感色素との界面で生じた正孔を第2の電極へ輸送する機能を有する。電荷輸送層は、多孔質の半導体層上に形成された層状部分だけでなく、多孔質の半導体層の空隙内部に充填された部分も含む。
電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。電荷輸送層は、レドックス電解質の分散物や電荷輸送材料としてのp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主成分として構成されているが、電荷輸送層を固体化できることから、p型化合物半導体を含有することが好ましく、p型化合物半導体を主成分とすることがより好ましい。
このうち、レドックス電解質としては、I/I 系や、Br/Br 系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I 系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
また、p型化合物半導体としては、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つことが好ましい。本発明で使用するp型化合物半導体のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素のホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によって電荷輸送層に使用するp型化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
p型化合物半導体としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体が好ましい。このため、電荷輸送層を主として芳香族アミン誘導体で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルジアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルジアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、電荷輸送層を塗布法により形成する場合に、電荷輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
以下に、芳香族アミン誘導体のp型化合物半導体(電荷輸送剤)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
p型化合物半導体としては、芳香族アミン誘導体に加えて、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、スチルベン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体などもまた使用できる。これらのp型化合物半導体は、優れた正孔の輸送能力を有する。
電荷輸送層の形成方法は、特に制限されず、公知の製造方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記のような、低分子のp型化合物半導体を用いて電荷輸送層を形成する場合は、p型化合物半導体を多孔質半導体電極のすき間に十分浸透させて、かつ、多孔質半導体電極の表面を基準にして0.2〜10μmの厚さで被覆する方法が好ましく使用できる。ここで、電荷輸送層の形成過程で既に吸着させた材料を溶出させないことが好ましい。このため、最も簡単な方法としては、使用するp型化合物半導体にとって良溶媒で、かつ、増感色素および共吸着剤にとって貧溶媒であり、かつ、多孔質半導体電極に浸透する前に蒸発しないような適切な沸点(75〜160℃)を有する溶媒を用いて、p型化合物半導体の溶液を作製して、p型化合物半導体の溶液を用いてスピンコート法で塗布する方法が挙げられる。なお、電荷輸送層の効果をあげるために、必要に応じて、Li[(CFSON]などの塩類、N(PhBr)SbClなどのホールドーピング剤、tert−ブチルピリジン等の芳香族塩基を併用してもよい。
上記に加えて、高分子のp型化合物半導体を使用してもよい。ここで、高分子のp型化合物半導体としては、特に制限されないが、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つものが好ましく使用される。具体的には、バンドギャップが2eV以上であるp型化合物半導体が好ましく使用され、さらにバンドギャップが2.5eV以上であるp型化合物半導体がより好ましく使用される。また、p型化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。電荷輸送層に使用するp型化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は使用する増感色素によって異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
このような条件を満たす高分子のp型化合物半導体としては、例えば、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(A)または下記一般式(3)で表される繰り返し単位(B)を有する重合体が挙げられる。
上記一般式(2)および(3)において、RおよびRは、水素原子、−CH−O−(CHCH−O)−Ra(ただし、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、rは、0以上の整数である)または−CH−O−(CO−CH−O)−(CHCH−O)−Rb(ただし、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基であり、sは0以上の整数である)を表す。ここで、RおよびRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、p型化合物半導体が上記繰り返し単位(A)または(B)を複数有する場合は、各繰り返し単位は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。RおよびRは両方とも水素原子でもよい、即ち、3,4−エチレンジオキシチオフェン(一般式(2)中、R、R=H)および2,6−ジオキサ−9‐チアビシクロ[5.3.0]デカ−1(10),7−ジエン(一般式(3)中、R、R=H)は上記重合体を構成しうる。
上記式:−CH−O−(CHCH−O)−Raの基中、Raは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基である。ここで、無置換のアルキル基は、炭素原子数1〜13の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。また、Raが炭素原子数1〜13の置換のアルキル基である場合の、置換基は、特に制限されないが、例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基など);アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など);水酸基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基など)などが挙げられる。また、rは、エチレンオキシド基(−CHCH−O−)の付加モル数を示し、0以上の整数である。可視光領域(400〜700nm)での吸光度および光電変換効率などを考慮すると、rは、好ましくは0〜8の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。なお、rが0である場合には、上記式:−CH−O−(CHCH−O)−Raの基は、−CH−O−Raとなる。
また、式:−CH−O−(CO−CH−O)−(CHCH−O)−Rbの基中、Rbは、炭素原子数1〜13の置換または無置換のアルキル基である。ここで、無置換のアルキル基は、炭素原子数1〜13の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、具体的には、上記置換基「Ra」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、炭素原子数1〜8の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。また、Rbが炭素原子数1〜13の置換のアルキル基である場合の、置換基は、特に制限されず、上記置換基「Ra」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、sは、エチレンオキシド基(−CHCH−O−)の付加モル数を示し、0以上の整数である。可視光領域(400〜700nm)での吸光度および光電変換効率などを考慮すると、sは、好ましくは0〜7の整数であり、より好ましくは0〜4の整数である。なお、sが0である場合には、上記式:式:−CH−O−(CO−CH−O)−(CHCH−O)−Rbの基は、−CH−O−(CO−CH−O)−Rbとなる。
上記重合体は、上記繰り返し単位(A)および(B)の少なくとも一方の繰り返し単位を有するものであればよい。このため、上記重合体は、繰り返し単位(A)のみからなる重合体、繰り返し単位(B)のみからなる重合体、ならびに繰り返し単位(A)及び(B)からなる共重合体を包含する。ここで、上記重合体が繰り返し単位(A)のみからなる重合体である場合であっても、当該重合体を構成する繰り返し単位は、単一の繰り返し単位(A)(即ち、単独重合体の形態)であってもあるいは2種以上の繰り返し単位(A)の組み合わせ(即ち、共重合体の形態)であってもよい。上記重合体が繰り返し単位(B)のみからなる重合体である場合も、同様にして、当該重合体を構成する繰り返し単位は、単一の繰り返し単位(B)(即ち、単独重合体の形態)であってもあるいは2種以上の繰り返し単位(B)の組み合わせ(即ち、共重合体の形態)であってもよい。同様にして、上記重合体が繰り返し単位(A)及び(B)からなる共重合体である場合にも、各繰り返し単位は、単一の繰り返し単位であってもあるいは2種以上の繰り返し単位の組み合わせであってもよい。なお、上記重合体が異なる繰り返し単位からなる共重合体である場合には、その繰り返し単位は、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
または、上記重合体は、さらに他の単量体由来の繰り返し単位を有してもよい。ここで、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、チアジアゾール等の単量体やπ共役構造を有する単量体などが挙げられる。または、併有する繰り返し単位としては、下記一般式(4)のようなπ共役構造を有する2価の有機基もまた好ましい。
上記一般式(4)中、Arは、π共役構造を有する2価の有機基を表わす。ここで、「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。高分子中にこのようなπ共役構造を有する有機基が存在することによって、高分子のπ共役平面が広がり、一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)骨格の電子供与性がより高くなり、p型半導体としての特性がより向上する。具体的には、このような一般式(4)の繰り返し単位に対応するモノマーとしては、チアジアゾール、イソチアナフテンなどが挙げられる。重合体が他の単量体由来の繰り返し単位を有する場合の、他の単量体の含有量は、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されないが、重合体を構成する全単量体を100モルとした場合に、好ましくは0〜50モル程度である。なお、上記重合体が異なる繰り返し単位からなる共重合体である場合には、その繰り返し単位は、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。また、上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
電荷輸送層には、必要に応じて、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、過塩素酸リチウム(LiClO)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。特にアクセプタードーピング剤で正孔ドープされた一般繰り返し単位(A)または(B)を有する重合体は、高い導電性を有する。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
アクセプタードーピング剤による、一般繰り返し単位(A)または(B)を有する重合体へのドープ量(正孔ドープ量)は、特に制限されないが、アクセプタードーピング剤を、1〜1000ミリモル/lの濃度の溶液の形態で使用することが好ましい。
ドープされた一般繰り返し単位(A)または(B)を有する重合体が、色素に電子を注入しやすくするためには、ドープされた重合体のイオン化ポテンシャルが、色素(色素吸着電極)のイオン化ポテンシャルよりも低いことが好ましい。本発明に係わる重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なってくるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
高分子のp型化合物半導体を用いた電荷輸送層の形成方法(重合方法)としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記電荷輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、本発明に係る重合体を構成する単量体、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)に対応する単量体(1)または(2)または該単量体の多量体(例えば、二量体)を、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質(アクセプタードーピング剤)を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および前記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、炭酸プロピレン、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、tert−ブチルピリジンなどが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、Li[(CFSON]、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、(n−CNBF、(CNBF、(n−CNPF、(CN[(CFSON]などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。電解重合溶液における前記単量体またはその多量体(例えば、二量体)の濃度は0.1〜1000mmol/L程度であることが好ましく、支持電解質の濃度は0.05〜2mol/L程度であることが好ましい。
得られた電解重合溶液中に、色素を担持した多孔質の半導体層を有する基板(半導体電極)を浸漬する。そして、半導体電極を作用極とし;白金線や白金板を対極とし;Ag/AgClやAg/AgNOを参照極として、直流電解させる。電流密度は、0.01〜1000μA/cmの範囲であることが好ましく、1〜500μA/cmの範囲であることがより好ましい。保持電圧は、−0.50〜+0.20Vであることが好ましく、−0.30〜0.00Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度は、溶媒が固化または突沸しない範囲であればよく、通常−30〜80℃程度としうる。印加電圧、電流密度および電解時間、温度などの条件は、用いる単量体や溶媒の種類、形成する半導体層の厚さなどに応じて設定されうる。
なお、重合後形成された電荷輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体の重合度把握は電解重合で得られた重合体では、通常、困難である。このため、得られる重合体の重合度は、例えば電荷輸送層を有する基板を、一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)を含む重合体を構成する単量体を溶解する溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))に浸漬させたときの溶解度によって確認されうる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に、電荷輸送層を構成する重合体10mgを採取し、THF 10mlに投入して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射する。得られた溶液中に溶解した重合体の量が5mg以下であれば、重合体は十分な重合度を有していると判断することができる。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と、tert−ブチルピリジンなどを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、前記一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)に対応する単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。なお、本発明は下記に限定されるものではない。即ち、重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。ここで、化学重合において用いられる重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、電荷輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体(1)、単量体(2)またはこれらの多量体の電解重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
その場合、重合して重合体を合成するためには、前記一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤を含有する電荷輸送層形成用溶液が用いられる。電荷輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる前記一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度は、1〜50質量%の範囲である。
前記電荷輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電反感層を前記電荷輸送層形成用溶液に浸漬させたまま重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる前記一般式(2)または一般式(3)の繰り返し単位(A)または(B)に対応する単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
また、不純物をドープしたp性の高い電荷輸送材料を用いることもできる。一例を挙げると、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載された材料が挙げられる。それらの中でもPEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)、ポリアニリンが好ましい。なお、これらの電荷輸送材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電荷輸送層を構成することも可能である。
電荷輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
<基板>
基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基板は、ガラス板、アクリル板等の剛性を有する基板と、フィルム基板のような可撓性を有する基板に大別することができる。前者の剛性を有する基板のうち、耐熱性の点でガラス板が好ましく、特にガラスの種類は問わない。基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
後者の可撓性を有する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に特に好ましく適用することができる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
<第1の電極>
第1の電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第1の電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第1の電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第1の電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
なお、第1の電極を基板上に有するものを、ここでは導電性支持体とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm以下である。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
<バリア層>
本発明の光電変換素子は、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第1の電極と半導体層との間に位置するバリア層を有することが好ましい。
バリア層、光電変換層は、下述するように多孔質であることが好ましい態様であるが、この場合、バリア層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バリア層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、バリア層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリア層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。ここで、バリア層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
このバリア層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。
特に電荷輸送層がp型半導体の場合、バリア層に金属を使用する場合には電荷輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることもできる。中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
<第2の電極>
第2の電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第2の電極は、電荷輸送層との接触性が良いことが好ましい。第2の電極は、電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。また、第2の電極の厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nm、より好ましくは20〜500nmであることが好ましい。また、第2の電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい具体的には、第2の電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/cm以下であり、さらに好ましくは20Ω/cm以下である。なお、第2の電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
第2の電極の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第2の電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
<太陽電池>
本発明の光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本発明は、本発明の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本発明の太陽電池は、上記本発明の光電変換素子を有する。本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、電荷輸送層および第2の電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第2の電極に移動して、電荷輸送層の正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第2の電極から電荷輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層の重合体は酸化されて、再び第2の電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1:光電変換素子SC−1の作製(本発明)
(バリア層の形成)
表面抵抗10Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)透明導電膜付ガラス基板(導電性支持体の厚み:1mm)(日本板硝子社製)を導電性支持体とした。この基板について、半導体電極を作成する部分と、作用極取り出し部分以外について、YAGレーザーを連続的に照射することでエッチングした。次に、エッチング済み基板について、エタノール(特級)を用いて20分間、超音波(US)洗浄を2回行い、ただちに風乾した。これについて、50mMの四塩化チタンのエタノール溶液に浸漬して、65℃で30分間浸漬した。
浸漬終了後は、エタノールで洗浄した後、基板上に、チタンイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)の10wt%のエタノール溶液を、平均膜厚が100nmになるように、スピンコート法で塗布し、450℃に温度制御した電気炉を用いて10分間焼成を行い、透明導電膜(FTO)上に、厚み100nmの酸化チタン薄膜からなるバリア層を形成した。
(多孔質電極の作製)
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を用いて、上記バリア層を形成したFTOガラス基板へスクリーン印刷法で塗布した。30℃から200℃まで昇温を15分間、200℃で10分間、200℃から500℃まで昇温を15分間、および500℃で20分間焼成を行い、厚さが2.5μmの酸化チタン薄膜(多孔質電極1)を作製した。
(被覆層の形成)
次に、塩化ニオブ(V)無水物(純度99.99%以上)(アルドリッチ社試薬)を、脱水エタノール(関東化学社試薬)に溶解して、50mMの溶液を調製した。この溶液に、上記で作製した多孔質電極1を浸漬して、密閉して、70℃で50分間放置した。所定時間放置した後は、脱水エタノールで多孔質電極1を洗浄した後、550℃に保温した電気炉で20分間焼成を行い、酸化チタンを酸化ニオブで被覆した被覆層1(厚み:0.7nm)を作製した。
共吸着剤として下記式の化合物1−A(アダマンタンカルボン酸)を、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1(重量比)の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記被覆層1を、この溶液に室温(25℃)で3時間浸漬して、化合物1−Aの吸着処理を行い、半導体層1を作製した。
次に、増感色素として下記式の増感色素A−7を、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1(重量比)の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記の化合物1−Aを吸着させた素子(半導体層1)を、この溶液に室温(25℃)で3時間浸漬して、色素の吸着処理を行い、光電変換層を形成し、半導体電極1を得た。
(電荷輸送層の形成〜素子の完成)
前記半導体電極1を、下記式のbis−EDOTを10mM、Li[(CFSON]を0.1Mの濃度で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。この際、電解重合溶液の温度は、25℃に調節した。作用極を前記半導体電極1、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.30Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面での光強度30mW/cm、500nm以下の波長をカット)、20分間保持してbis−EDOTを重合し、電荷輸送剤であるPEDOTを有する電荷輸送層(厚み:30nm)を前記半導体電極1の表面に形成した。得られた半導体電極/電荷輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
なお、ここで得られた電荷輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
その後、Li[(CFSON]を15×10−3(モル/l)、4−tert−ブチルピリジンを50×10−3(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。
その後、半導体電極/電荷輸送層の積層体を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第2電極を作製し、光電変換素子SC−1を得た。
実施例2:光電変換素子SC−2の作製(本発明)
実施例1において、被覆層の形成で用いた原料化合物を、塩化ニオブ(V)から、ニオブ(V)エトキシド(99.95%)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−2を作製した。
実施例3:光電変換素子SC−3の作製(本発明)
実施例1において、被覆層の形成で用いた原料化合物を、塩化ニオブ(V)から、ニオブ(V)イソプロポキシド(99.9%)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−3を作製した。
実施例4:光電変換素子SC−4の作製(本発明)
実施例1において、塩化ニオブ(V)の溶液に浸漬する時間を、50分から5分に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−4を作製した。
実施例5:光電変換素子SC−5の作製(本発明)
実施例1において、塩化ニオブ(V)の溶液に浸漬する時間を、50分から100分に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−5を作製した。
実施例6:光電変換素子SC−6の作製(本発明)
実施例1において、被覆層の形成方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−6を作製した。
(被覆層の形成方法)
tert−ブチルアミド−tris−(ジエチルアミド)−ニオブ(TBTDEN)(H.C.Starck社試薬)及び水を原料に用いて、原子層堆積(Atomic Layer Deposition)装置であるサバンナ(Savannah)(ケンブリッジ ナノテック社(Cambridge Nanotech)製)を用いて、350℃の成膜温度で、10層の原子層堆積操作を行い、酸化ニオブの被覆層を形成した。
実施例7:光電変換素子SC−7の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−B(シクロヘキサンカルボン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−7を作製した。
実施例8:光電変換素子SC−8の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−C(4−メチルシクロヘキンカルボン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−8を作製した。
実施例9:光電変換素子SC−9の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−D(4−n−ブチルシクロヘキンカルボン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−9を作製した。
実施例10:光電変換素子SC−10の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−E(シクロヘキン酢酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−10を作製した。
実施例11:光電変換素子SC−11の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−F(シクロヘキンプロピオン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−11を作製した。
実施例12:光電変換素子SC−12の作製(本発明)
実施例1において、増感色素A−7を下記構造の増感色素A−8に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−12を作製した。
実施例13:光電変換素子SC−13の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−G(4−プロピル安息香酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−13を作製した。
実施例14:光電変換素子SC−14の作製(本発明)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物1−H(6−メチルニコチン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−14を作製した。
実施例15:光電変換素子SC−15の作製(本発明)
実施例1において、電荷輸送層の形成以降を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−15を作製した。
(電荷輸送層の形成〜素子の完成)
前記半導体電極1の光電変換層上に、電荷輸送剤の下記式の例示化合物(spiro−OMe−TAD)(150mM)、Li[(CFSON](12mM)、t−ブチルピリジン(30mM)のクロロベンゼン溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥膜厚5μmの電荷輸送層を設けた。なお、スピンコートは、回転数を500rpmで行った。
その後、半導体電極/電荷輸送層の積層体を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第2電極を作製し、光電変換素子SC−15を得た。
実施例16:光電変換素子SC−16の作製(本発明)
実施例1において、電荷輸送層の原料化合物を、bis−EDOTから、下記式の化合物に変更して、下記式の重合体(置換PEDOT)を電荷輸送剤として含む電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−16を作製した。
比較例1:光電変換素子SC−17の作製(比較)
実施例1において、被覆層を形成する工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−17を作製した。
比較例2:光電変換素子SC−18の作製(比較)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物2−A(ヘキサン酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−18を作製した。
比較例3:光電変換素子SC−19の作製(比較)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物2−B(トリメチル酢酸(t−ブチル酢酸))に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−19を作製した。
比較例4:光電変換素子SC−20の作製(比較)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物2−C(4−フェニル酪酸)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−20を作製した。
比較例5:光電変換素子SC−21の作製(比較)
実施例1において、化合物1−Aを、下記式の化合物2−D(4−メチルシクロヘキサノール)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−21を作製した。
比較例6:光電変換素子SC−22の作製(比較)
実施例1において、化合物(1−A)の吸着工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−22を作製した。
比較例7:光電変換素子SC−23の作製(比較)
実施例1において、被覆層の形成方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−23を作製した。
(被覆層の形成方法)
塩化アルミニウム(V)無水物(純度99.99%以上)(アルドリッチ社試薬)を、脱水エタノール(関東化学社試薬)に溶解して、50mMの溶液を調製した。この溶液に、上記で作製した多孔質電極1を浸漬して、密閉して、70℃で50分間放置した。所定時間放置した後は、脱水エタノールで多孔質電極1を洗浄した後、450℃に保温した電気炉で20分間焼成を行い、酸化チタンを酸化アルミニウムで被覆した被覆層2(厚み:0.5nm)を作製した。
比較例8:光電変換素子SC−24の作製(比較)
実施例1において、被覆層の形成方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、光電変換素子SC−24を作製した。
(被覆層の形成方法)
塩化タングステン(VI)無水物(純度99.99%以上)(アルドリッチ社試薬)を、脱水エタノール(関東化学社試薬)に溶解して、50mMの溶液を調製した。この溶液に、上記で作製した多孔質電極1を浸漬して、密閉して、70℃で50分間放置した。所定時間放置した後は、脱水エタノールで多孔質電極1を洗浄した後、550℃に保温した電気炉で40分間焼成を行い、酸化チタンを酸化タングステンで被覆した被覆層3(厚み:0.5nm)を作製した。
〔光電変換素子の評価〕
(光電変換特性の測定)
上記実施例および比較例で作製した光電変換素子を、それぞれ、ソーラーシュミレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。半導体層上に5mm×5mmのマスクをかけた条件下で光電変換特性の測定を行った。即ち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、光電変換素子の変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
(耐久性の評価)
上記(光電変換特性の測定)により光電変換効率を測定した光電変換素子を短絡させた上で、200mW/cmの擬似太陽光を720時間照射した後に、上記と同様に電流−電圧特性を測定し、光劣化後の短絡電流密度(Jsc1)、開放電圧(Voc1)、光電変換効率(η1(%))を求め、下記式(B)により耐久率(初期光電変換効率に対する比)を求めた。
表1に各光電変換素子の特性評価結果を示す。
表1から示されるように、本発明の実施例の光電変換素子SC−1〜SC−16は、耐久率に優れるが、比較例の光電変換素子SC−17〜SC−24は、初期特性こそ優れているものの、実施例に比して耐久性に劣る。
1 基板、
2 第1の電極、
3 バリア層、
4 光電変換層、
5 電荷輸送層、
6 第2の電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (6)

  1. 透明基板、第1の電極、光電変換層、電荷輸送層および第2の電極を有する有機光電変換素子であって、
    前記光電変換層は、増感色素及び共吸着剤に担持された、酸化ニオブを含む被覆層で被覆された酸化チタンを含み、
    前記共吸着剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、有機光電変換素子。
    (式中、Rは、無置換もしくは置換のシクロアルキル基、無置換もしくは置換のフェニル基、または無置換もしくは置換のピリジル基を表し、Xは、単結合、メチレン基またはエチレン基を表す。)
  2. 前記一般式(1)で表される化合物中のRが、無置換もしくは置換のシクロヘキシル基、または無置換もしくは置換のアダマンチル基を表わすものであることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
  3. 前記一般式(1)で表される化合物中のXが、単結合を表すものであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
  4. 前記増感色素は、酸性基を2個有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  5. 前記電荷輸送層は、p型化合物半導体を含有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
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