JP5772750B2 - 光電変換素子および太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、色素増感型の光電変換素子および該光電変換素子を用いて構成した太陽電池に関する。
近年、環境問題などから、エネルギー源として太陽光エネルギーが注目されており、太陽光エネルギーの光、熱を活用して、利用し易いエネルギー形態である電気エネルギーに変換する方法が実用化されている。中でも、太陽光を電気エネルギーに変換する方法がその代表的なものであり、この方法には光電変換素子が用いられる。光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウムおよびセレン化インジウム銅等の無機系の材料を用いた光電変換素子が広く用いられ、所謂太陽電池に広く利用されている。しかし、これらの無機系の材料を用いた光電変換素子を用いた太陽電池は、材料として用いるシリコンなどが高度な精製過程を経た高純度品である必要がある、多層pn接合構造を有するため、製造工程が複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いなどの問題点があった。
一方、より簡素な素子として有機材料を用いた光電変換素子の研究も進められている。例えば、n型の有機色素であるペリレンテトラカルボン酸誘導体とp型の有機色素である銅フタロシアニンを接合させた、pn接合型の有機光電変換素子が報告されている。有機光電変換素子において、弱点であると考えられている励起子拡散長の短さと空間電荷層の薄さを改良する為に、単に有機薄膜を積層するpn接合部の面積を大きく増大させ、電荷分離に関与する有機色素数を充分に確保しようという試みがその結果を出しつつある。
また、例えば、n型の電子伝導性の有機材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合させることによりpn接合部分を飛躍的に増大させて、膜中全体で電荷分離を行う手法がある。Heegerらは、1995年に、p型の導電性ポリマーとしての共役高分子と、電子伝導材料としてのフラーレンとを混合させた光電変換素子を提案している。
これらの光電変換素子は次第にその特性を向上させてはいるが、高い変換効率のまま安定して挙動するところまでには至っていない。
しかし、1991年にGratzelは、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する光電変換素子の作製に成功した(例えば、非特許文献1参照)。
この光電変換素子では、多孔質酸化チタン表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子注入され色素カチオンとなり、対極から正孔輸送層を通じて色素が電子を受け取るというサイクルを繰り返す。正孔輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この光電変換素子は酸化チタンの安定と相まって、優れた再現性を有しており、研究開発の裾野を大きく広げた。この光電変換素子は色素増感型太陽電池と呼ばれて、大きな期待と注目を浴びている。この方式は、酸化チタン等の安価な金属化合物半導体を高純度まで精製する必要がなく、半導体としては安価なものを使用することができ、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できるという利点を有する。
しかし、光電変換層の色素として資源的制約があるルテニウム錯体を用いるため、高価なルテニウム錯体を用いる必要がある、経時での安定性が充分でないなどの問題がある。また、更なる問題点として、色素増感型太陽電池は先述のとおり電解液を用いて動作するために、電解液やヨウ素の保持や流出・散逸を防ぐ別の機構が必要となるなどの問題点を有していた。
このような電解液の溶出問題を回避すべく、全固体色素増感型太陽電池の開発も進んでいる。例えば、アモルファス性有機正孔移動剤を用いたものや、正孔移動剤にヨウ化銅を用いたものなどが知られている。しかし、これらの正孔移動剤は伝導度が低いため未だ充分な光電変換効率を与えるには至っていない。
さらに、伝導度の比較的高い正孔移動剤としてはポリチオフェン系材料が代表例として挙げられ、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を正孔移動剤として用いた全固体色素増感型太陽電池が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。しかしながら、PEDOTは可視光領域(400〜700nm)に吸収を有するため、色素の光吸収に対して損失を生じ、光電変換効率はまだ充分なものではなかった。
これに対して、非特許文献3に記載のPEDOT置換体を用いると伝導度を保ちつつ可視光領域の吸収が低減したことが報告されており、これらのPEDOT置換体を正孔移動剤として用いた全固体色素増感型太陽電池も報告されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、太陽電池の低コスト化を図るべく、ルテニウム錯体に代えて有機色素を用いた色素増感型太陽電池の開発も進められている。例えば、チオフェン骨格を有するメチン系の有機色素(特許文献3)や、繰り返し数が5以上のポリチオフェン骨格を有する有機色素(特許文献4)などを用いたものが報告されている。
特開2003−317814号公報 特開2000−106223号公報 国際公開第04/082061号パンフレット 特開2005−135656号公報
B.O’Regan and M.Gratzel: Nature, 353, 737(1991) J.Xia, N.Masaki, M.Lira−Cantu, Y.Kim, K.Jiang and S. Yanagida: Journal of the American Chemical Society, 130, 1258(2008) L.Groenendaal, G.Zotti and F.Joans, Synthetic Metals, 118, 105(2001)
PEDOTやPEDOT置換体等を用いた固体正孔輸送層は、電気、光、熱等のエネルギーを加えることにより形成される。固体正孔輸送層を用いた光電変換素子において、特許文献3や特許文献4に記載されるような有機色素を用いた場合には、この固体正孔輸送層の形成の際に使用される電気、光、熱等のエネルギーにより色素の脱離が生じて、変換効率の低下や寿命の低下が生じるという問題があった。特に、正孔輸送層の伝導度が大きいほどこの傾向は顕著であり、特許文献2や非特許文献3に記載されるような伝導度が大きい正孔輸送層を用いた場合に特許文献3や特許文献4に記載されるような低コストの有機色素を用いることは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、固体正孔輸送層を使用することにより電解質の溶出を防止しつつ、色素の脱離が防止され、光電変換効率および光電変換機能の安定性に優れる全固体色素増感型の光電変換素子および太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を改善するために鋭意検討を行った結果、特定構造を有する有機色素を特定の構造を有する化合物と組み合わせることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、基板上に、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、ならびに第二電極、を有する光電変換素子において、該増感色素は、下記一般式(1):
上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族残基、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、炭素数2〜32のアルケニル基、炭素数2〜32のアルキニル基、炭素数1〜32のアルコキシ基、または炭素数1〜32のアルキルチオ基であり、この際、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく;
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、または炭素数7〜24のアラルキル基であり;
環b中の水素原子の少なくとも一つは、置換基で置換されていてもよく、この際、複数の置換基が互いに結合して置換基を有してもよい環を形成してもよく、または複数の環b1が縮環していてもよく;
Zは、酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有する有機残基であり;
mは、0〜4の整数であり、mが2以上の場合、それぞれの環が独立して置換基を有してもよい;
で表され;
前記固体正孔輸送層は、下記一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物を含有する、光電変換素子により達成される。
上記一般式(2)中、
およびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR基、−SR基、−SeR基、または−TeR基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であり、この際、XおよびXは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
本発明により、光電変換効率および光電変換機能の安定性に優れる光電変換素子、および太陽電池が提供できる。
本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
本発明は、基板上に、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、ならびに第二電極、を有する光電変換素子において、該増感色素は、上記一般式(1)で表され、該固体正孔輸送層は上記一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物を含有する、光電変換素子を提供する。本発明は、増感色素として上記特定の構造を有する色素を用い、かつ、固体正孔輸送層に特定の繰り返し単位を有する重合体を用いることを特徴とする。すなわち、増感色素として酸性基を2つ有するジ体色素を使用することで色素全体の吸着力を向上させ、これを特定の繰り返し単位を有する重合体を含有する固体正孔輸送層と組み合わせることで、増感色素の脱離が防止される。これにより、光電変換効率および光電変換機能の安定性に優れる光電変換素子および太陽電池を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基板1、第一電極2、光電変換層6、固体正孔輸送層7および第二電極8、バリア層3より構成されている。ここで、光電変換層6は、半導体5および増感色素4を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリア層3を有することが好ましい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明の光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態を以下に示す。
第一電極2を形成した基板1上に、バリア層3を付着して形成した後、バリア層3上に、半導体5からなる半導体層を形成し、その半導体表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に、固体正孔輸送層7を形成する。また、固体正孔輸送層7は、増感色素4を担持した半導体5からなる光電変換層6に侵入し、且つ、その上に存在し、該固体正孔輸送層7の上に第二電極8が付着している。第一電極2および第二電極8に端子を付けて電流を取り出すことができる。
以下、本発明の光電変換素子の各部材について説明する。
(基板)
基板は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
光透過率とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。中でも、可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムを、特に好ましく適用することができる。さらに好ましくは、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより一層好ましい。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
基板の厚さとしては、0.1〜100mmが好ましく、さらに0.5〜10mmであることが好ましい。
(第一電極)
第一電極は、基板と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基板の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極としては、その光透過率が80%以上、さらに90%以上(上限:100%)のものが好ましく用いられる。光透過率は、上記基板の説明の記載と同様のものである。
第一電極を形成する材料は、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の、金属;およびSnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等の、これらの金属酸化物などが挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。第一電極を形成する材料の基板への塗布量は、特に制限されないが、基板1m当たり、1〜100g程度であることが好ましい。
なお、第一電極を基板上に有するものを、ここでは導電性支持体とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は、500Ω/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm以下である。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
(光電変換層)
光電変換層は、半導体および増感色素を含有し、当該増感色素を担持した当該半導体を含有する半導体層からなる。
(増感色素)
本発明に使用される増感色素は、下述するような半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものであり、下記一般式(1)で表わされる化合物である。
上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族残基、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、炭素数2〜32のアルケニル基、炭素数2〜32のアルキニル基、炭素数1〜32のアルコキシ基、または炭素数1〜32のアルキルチオ基である。この際、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、RおよびRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
およびRとしての、芳香族残基は、特に制限されない。ここで、「芳香族残基」とは、芳香族炭化水素環、複素環型芳香環、縮合型芳香環等の芳香環から水素原子1個を除いた基を意味する。例えば、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜24のヘテロアリール基が挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、フルオレニル基がより好ましい。
炭素数2〜24のヘテロアリール基としては特に制限されず、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリノ基、チオモルフォリノ基、ホモピペリジニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、クロメニル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フラザニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピラニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル気、キナゾリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ベンゾキサジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェナントリジニル基などが挙げられる。これらのうち、チエニル基、イミダゾリル基が好ましく、イミダゾリル基がより好ましい。
およびRとしての、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基は、特に制限されない。例えば、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜32の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキニル基、炭素数3〜9のシクロアルキル基、炭素数3〜9のシクロアルケニル基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、ならびに炭素鎖長3〜7のシクロアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素鎖長1〜6の直鎖アルキル基およびイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素鎖長3〜6の分岐アルキル基、ならびにシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素鎖長5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。
炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
炭素数2〜32の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基としては特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、1−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基などが挙げられる。
炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキニル基としては特に制限されず、例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、5−ヘプチニル基、1−オクチニル基、3−オクチニル基、5−オクチニル基などが挙げられる
およびRとしての、炭素数1〜32のアルコキシ基は特に制限されず、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素数4〜32のアルコキシ基が好ましく、オクタデシルオキシ基がより好ましい。
中でも、RおよびRは、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数7〜24の直鎖もしくは分岐状のアリール基、炭素数1〜32のアルコキシ基、または炭素数2〜32の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基であることが好ましい。
さらに好ましい一実施形態において、Rが炭素数6〜18の直鎖のアルキル基であり、Rが水素原子である。増感色素が長鎖アルキル基を有する場合には、当該アルキル基により自己凝集が防止されて耐久性が向上できると推定される。
また、さらに好ましい他の一実施形態は、Rが炭素数2〜32の直鎖のアルケニル基であり、Rが水素原子である。特に、Rのアルケニル基中の水素原子がアリール基で置換された構造を有するものが好ましい。かような構造を有する場合には、増感色素の平面性が向上し、耐久性が向上できると推定される。
なお、上述したように、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。例えば、下記一般式(3)で表される化合物を増感色素として使用することが好ましい。かような構造を有する場合には、増感色素の平面性が向上し、耐久性が向上できる。
上記一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはハロゲン原子である。R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基である。
上記Rとしての炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基は、特に制限されず、具体的には上記一般式(1)におけるアルキル基、アリール基、アルコキシ基と同様である。
としての、炭素数7〜24のアラルキル基は特に制限されない。なお、「アラルキル基」とは、少なくとも一つのアリール基で置換されたアルキル基を意味する。これらのアルキル基、アリール基としては、上記一般式(1)におけるアルキル基、アリール基と同様の基を使用でき、一例をあげると、ベンジル基(すなわちフェニルメチル基)、2−フェニル基である。
としての、ハロゲン原子は、特に制限されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれでもよい。
上記のうち、Rは炭素数6〜24の直鎖のアルキル基、または、炭素数6〜24のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数6〜24のアルコキシ基であることがより好ましい。増感色素が長鎖アルキル基や長鎖アルコキシ基を有する場合には、自己凝集が防止されて耐久性が向上できると推定される。
上記R、R10としての炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基は、特に制限されず、具体的には上記一般式(1)におけるアルキル基、アリール基と同様である。
、R10としての、ハロゲン原子は、特に制限されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれでもよい。
上記一般式(1)または一般式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、または炭素数7〜24のアラルキル基である。Rとしてのハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、または炭素数7〜24のアラルキル基は特に制限されず、上記R、R、Rで例示したものと同様である。好ましくは、Rは水素原子、メチル基である。
上記一般式(1)または一般式(3)中、mは、0〜4の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2〜3である。mが1以上の場合に、環b中の水素原子の少なくとも一つは、置換基で置換されていてもよく、この際、複数の置換基が互いに結合して置換基を有してもよい環を形成してもよい。さらに、mが2以上の場合、それぞれの環が独立して置換基を有してもよく、かつ/または、複数の環bが縮環していてもよい。中でも、少なくとも1つの環bに置換基として炭素数6〜24の直鎖のアルキル基を有することは、溶液時の溶解度付与と、半導体表面に吸着する際の過剰凝集抑制効果を有しつつ、効率向上も図れる点で、特に好ましい。
、R、R、R、R10において、「芳香族残基」、「炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基」、「炭素数2〜32のアルケニル基」、「炭素数2〜32のアルキニル基」、「炭素数1〜32のアルコキシ基」、「炭素数1〜32のアルキルチオ基」、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素数6〜24のアリール基」、「炭素数7〜24のアラルキル基」、「炭素数1〜18のアルコキシ基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。
、R、R、R、R10およびbにおいて、置換基は、ハロゲン原子、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜32のアシル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、アミノ基、および炭素数2〜24のヘテロアリール基からなる群から選択される。
上記R、R、R、R、R10およびbの置換基としてのハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、炭素数2〜24のヘテロアリール基は、特に制限されず、具体的には上記R、R、Rおよびbにおいて例示したものと同様である。
上記R、R、R、R、R10およびbの置換基としての炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基は、特に制限されず、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
上記R、R、R、R、R10およびbの置換基としての炭素数1〜32のアシル基は特に制限されず、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、t−ブチルアセチル基、ピバロイル基、カプロイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−メチルヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜32のアシル基が好ましく、ベンゾイル基がより好ましい。
上記R、R、R、R、R10およびbの置換基は、好ましくは、炭素数6〜18の直鎖のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、または炭素数6〜18のアルコキシ基であり、より好ましくは、n−オクチル基、フェニル基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基である。
上記一般式(1)または一般式(3)中、Zは、酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有する有機残基である。
Z中の酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基[−SOH]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基がより好ましい。
Z中の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、クロロ基、フルオロ基が好ましく、シアノ基、ニトロ基がより好ましい。
Z中の電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環などが挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、チアジアゾール環、キノン環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環がより好ましい。
これらのZは、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入できる。
Zにおいて、シアノ基とカルボン酸を有することが好ましく、シアノ基とカルボン酸を有することにより吸着力が向上し、色素の脱離が効果的に防止されうる。
すなわち、本発明の一実施形態において、一般式(1)または一般式(3)のZは下記構造を有する。
上記において、R11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラリキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはシアノ基である。なお、ハロゲン原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラリキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基については、一般式(1)または一般式(3)において例示した基と同様である。R11は、好ましくは水素原子、メチル基である。
Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、アミド結合を介して結合していることが好ましい。アミド結合を有することにより吸着力が向上し、色素の脱離が効果的に防止されうる。
すなわち、本発明の一実施形態において、一般式(1)または一般式(3)のZは下記構造を有する。
上記において、R12は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラリキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはシアノ基である。なお、ハロゲン原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラリキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基については、一般式(1)または一般式(3)において例示した基と同様である。R12は、好ましくは水素原子、メチル基である。
また、Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、置換基を有していてもよい芳香族残基、置換基を有してもよい炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、あるいは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、Zは、電荷、特に正の電荷を帯びてもよく、この際、Br、I、ClO 、OH、Cl等の対イオンを有していてもよい。置換基を有していてもよい芳香族残基、置換基を有してもよい炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基は上記に記載したものと同様である。
すなわち、Zの好ましい例は、下記がある。
また、本発明に係る増感色素の特に好ましい例を以下に示す。また、下記実施例において、増感色素を下記記号にて規定する。
上記一般式(1)で表される化合物の合成方法は特に制限されず、例えば、特開2009−9931号に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記化合物(D−1)および(D−7)の製造方法の好ましい実施形態を記載する。なお、本願発明は、下記好ましい実施形態に限定されるものではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
[化合物(D−1)の合成]
トリフェニルアミンに9当量のオキシ塩化リンおよび12当量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、窒素雰囲気下にて8時間60℃で加熱することにより、ジホルミル体を得る。次いで、ジホルミル体、3.6当量のシアノ酢酸および6.6当量の酢酸アンモニウムからなる酢酸溶液を1時間加熱還流することにより、化合物(D−1)を得る。
[化合物(D−7)の合成]
下記スキームに従って化合物(D−7)を得る。
(半導体)
半導体層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。これらのうち、好ましく用いられるのは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、より好ましく用いられるのは、TiOまたはNbであるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO(酸化チタン)である。
上記半導体層に用いる半導体は、単独で使用されてもまたは2種以上の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の1種または数種類を併用することもできるし、あるいは、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。あるいは、半導体として、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載のように、酸化亜鉛/酸化錫複合の形態で使用してもよい。なお、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外の成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
半導体層に用いられる半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、半導体層に用いられる半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、半導体層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。なお、上記半導体層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。この際の半導体の表面処理方法は特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、上記有機塩基が液体の場合はそのまま、固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液(有機塩基溶液)を準備し、本発明に係る半導体を上記液体有機塩基または有機塩基溶液に浸漬することで、半導体の表面処理を実施できる。
(光電変換層の作製方法)
光電変換層(半導体層)の作製方法について説明する。
半導体層の半導体が粒子状の場合には、(1)半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製する方法;(2)半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後、縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)などが使用できる。上記(1)の方法が好ましい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
半導体層の作製方法の好ましい形態としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
(半導体含有塗布液の調製)
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。
溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体などが用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。ここで、塗布方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。
導電性支持体上に半導体含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体層(半導体微粒子層)は、一般的に、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度も弱い。このため、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするために、半導体層(半導体微粒子層)の焼成処理が行われる。
半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。半導体層が多孔質構造膜である場合には、固体正孔輸送層の正孔輸送物質などの成分がこの空隙にも存在することが好ましい。ここで、半導体層の空孔率(D)は、特に制限されないが、1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空孔率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空孔率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、特に制限されないが、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500nm〜30μmである。このような範囲であれば、透過性、変換効率などの特性に優れた半導体層となりうる。なお、半導体層は、平均粒径がほぼ同じ半導体微粒子により形成された単層であっても、あるいは平均粒径や種類の異なる半導体微粒子を含む半導体層からなる多層膜(層状構造)であってもよい。
焼成条件は、特に制限されない。焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空孔率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は、1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは100〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。また、基板がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、200℃以上の焼成処理を行わずに、加圧により微粒子どうしおよび微粒子−基板間を固着させることもでき、あるいはマイクロ波により、基板は加熱せずに、半導体層のみを加熱処理することもできる。また、上記観点から、焼成時間は、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、特に好ましくは10〜120分の範囲である。また、焼成雰囲気もまた、特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行われても、または温度や時間を変化させて2回以上繰り返してもよい。
なお、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(半導体層の増感処理)
半導体層1m当たりの本発明の色素の総担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体への増感色素の担持方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて適用できる。例えば、半導体に増感色素を担持させるには、増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体層を長時間浸漬する方法が一般的である。ここで、増感色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。また、各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素等を含ませる順序がどのようであってもよい。あるいは、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
空孔率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体層上や半導体層内部の空隙に吸着する前に、増感色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理は、前述のように増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、増感色素が半導体層(半導体薄膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体薄膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などが上げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
(増感処理の温度、時間)
増感処理の条件は、特に制限されない。例えば、半導体を焼成した基板を増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、増感処理温度は、0〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。また、同様の観点から、増感処理時間は、15分〜20時間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。特に、室温(25℃)条件下で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましい。この効果は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。また、吸着時間を短縮させたり、多孔質電極の深部まで吸着させる観点から、減圧下や真空下で増感処理を行ってもよい。
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
(固体正孔輸送層)
固体正孔輸送層は、光吸収することにより電子を半導体に注入した後に生成する増感色素の酸化体を迅速に還元し、増感色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層である。
固体正孔輸送層は、下記一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物(以下、単に「重合体」とも称する)を含有する。
上記一般式(2)中、
およびXは、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR基、−SR基、−SeR基、または−TeR基を表わす。なお、XおよびXは、同一であってもまたは異なるものであってもよい。R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。ここで、XおよびXは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記X、XおよびR〜Rとしての、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基は特に制限されず、上記一般式(1)におけるアルキル基と同様である。
これらのうち、XおよびXとしては、炭素数6〜18の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数6〜18の直鎖のアルキル基がより好ましい。重合体が長鎖(例えば、炭素数6〜18の)アルキル基を有する場合には、当該アルキル基が自己凝集を阻害する官能基として作用して、自己凝集構造の形成を抑制できるため耐久性が向上できると推定される。
また、R〜Rとしては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基がより好ましい。
上記XおよびXとしての、炭素数6〜24のアリール基は特に制限されず、上記一般式(1)におけるアリール基と同様である。
、XおよびR〜Rにおいて、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素数6〜24のアリール基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。
、X、およびR〜Rにおいて、置換基は、ハロゲン原子、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜32のアシル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、アミノ基、および炭素数2〜24のヘテロアリール基からなる群から選択される。これらの具体的な基は、上記一般式(1)における基と同様である。
上記X、X、およびR〜Rの置換基は、好ましくは、炭素数6〜18の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは、n−オクチル基である。
上記一般式(2)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、固体正孔輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記一般式(2)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される一種又は二種以上の化合物またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記一般式(2)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記一般式(2)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用しできる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2〜7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)ダイマー(H2−1)の製造方法の好ましい例を記載する。ただし、本発明は、下記好ましい例に限定されるわけではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
[3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)ダイマーの合成]
撹拌装置、温度計、および還流冷却管を装着した1000mLのガラス製三口フラスコに、無水テトラヒドロフラン750mL、および3,4−エチレンジオキシチオフェン25g(0.15mol)を添加し、窒素気流下で撹拌しながらアセトン/ドライアイス浴中で内温が−70℃となるまで冷却する。この後、1.6mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液113mL(0.18mol)をシリンジで5分間かけて反応系に滴下する。25分後、無水塩化銅23.5g(0.17mol)を添加し、そのまま3時間程度撹拌しながら反応させる。反応液を水10Lに添加し、生成物を濾過した後、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:塩化メチレン)により精製することにより、PEDOTダイマー17.9g(収率:約72%)を黄白色結晶として得た。
(重合体の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射を組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記固体正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(2)で表される単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体正孔輸送層に添加しうる添加剤としては、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H1−3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極(透明導電膜)2、バリア層3および光電変換層6を形成した基板1をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合溶液中の前記単量体或いはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましく、5〜20mmol/L程度が特に好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.1〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが望ましく、特に1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより望ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された固体正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、一般式(2)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記一般式(2)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、固体正孔輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、上記一般式(2)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する固体正孔輸送層形成用溶液が用いられる。固体正孔輸送層形成用溶液の溶媒としては、電解重合溶液の溶剤として例示したものを使用することができる。
固体正孔輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記固体正孔輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電変換層を前記固体正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる上記一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
固体正孔輸送層中の一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
固体正孔輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、一般式(2)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、一般式(2)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するためには、本発明に使用される重合体が色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが好ましい。重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、好ましい固体正孔輸送層としては吸光度が1.0以下が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、固体正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、FTO導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に色素を吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、一般式(2)で表される化合物由来の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
(バリア層)
本発明の光電変換素子は、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第一電極と半導体層との間に位置するバリア層を有することが好ましい。
バリア層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなどが挙げられる。
特に固体正孔輸送層がp型半導体の場合、バリア層に金属を使用する場合には固体正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が半導体層(光電変換層)よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることもできる。この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリア層の構造は特に制限されないが、光電変換層と同様に、多孔質構造膜であることが好ましい。ただし、バリア層の空孔率は半導体層(光電変換層)の空孔率よりも小さいことが好ましい。具体的には、バリア層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バリア層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、バリア層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリア層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。ここで、バリア層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
(第二電極)
第二電極は、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられる。絶縁性の物質でも、固体正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。また、第二電極は、固体正孔輸送層との接触性が良いことが好ましい。第二電極は、固体正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることも好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、ロジウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)、炭素、カーボンブラック、導電性高分子等の有機導電体などが挙げられる。また、第二電極の厚みもまた、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗は、特に制限されないが、低いことが好ましい具体的には、第二電極の表面抵抗の範囲は、好ましくは80Ω/cm以下であり、さらに好ましくは20Ω/cm以下である。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
第二電極の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できる。例えば、上記第二電極の材料を蒸着(真空蒸着を含む)、スパッタリング、塗布、スクリーン印刷等の方法が好ましく使用される。
(太陽電池)
本発明の光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用できる。したがって、本発明は、上記光電変換素子を有する太陽電池をも提供する。
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を具備し、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記光電変換層、固体正孔輸送層および第二電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、固体正孔輸送層の正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から固体正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に固体正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
〔実施例1:光電変換素子SC−1の作製〕
表面抵抗9Ω/squareの市販のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(FTOの塗布量:7g/m 基板、第一電極の厚み:0.9μm、導電性支持体の厚み:1.1mm)を導電性支持体とした。これを、アルカリ洗剤(関東化学製 シカクリーンLX−3)/超純水=10/90洗浄液に超音波を照射しながら15分間で洗浄した。その後超純水で洗浄した。洗浄液での洗浄と超純水での洗浄を3回繰り返した。その後、合成石英ガラス紫外線ランプを用いて、UV/オゾン洗浄を15分間実施した。
この洗浄基板(導電性支持体)に、バリア層として、TC100(マツモト交商製):チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)をスピンコート法により塗布した。80℃で10分間加熱して乾燥させた後、450℃で10分間焼成を行い、膜厚100nmのバリア層(空孔率C:1.0%)を得た。
この上に、酸化チタンペースト(粒径18nm)をドクターブレード法により塗布した。120℃で5分間加熱してペーストを乾燥させた後、500℃で30分間焼成を行い厚さ4.5μmの多孔質酸化チタン層(半導体層:空孔率D:50体積%)を得た。
増感色素(D−1)及び増感色素に対して10当量のケノデオキシコール酸をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、増感色素濃度3×10−4モル/Lの溶液を調製した。上記多孔質酸化チタン層(半導体層)を担持したFTO基板(導電性支持体)を、この溶液に室温で3時間浸漬して、増感色素の吸着処理を行い、半導体層中の半導体に増感色素を担持させることにより光電変換層を得た。これにより、光電変換電極を得た。なお、この際の半導体層1m当たりの本発明の増感色素の総担持量は、2ミリモルであった。
前記半導体電極を、一般式(2)に対応するモノマー:H1−1の二量体を0.01(モル/l)の割合で含有し、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。この際、電解重合溶液の温度は、25℃に調節した。作用極を前記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。電解開始時の電流密度は100μA/cmであり終了時の電流密度2μA/cmであった。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)30分間電圧を保持して、正孔輸送層を前記半導体電極表面に形成した。得られた半導体電極/正孔輸送層をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
なお、ここで得られた正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
その後、Li[(CFSON]を15×10−3(モル/l)、4−tert−ブチルピリジンを50×10−3(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。
その後、半導体電極/正孔輸送層を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第2電極を作製し、光電変換素子SC−1を得た。
〔実施例2〜24、比較例1:光電変換素子SC−2〜25の作製〕
実施例1における光電変換素子SC−1の作製において、増感色素および/または固体正孔輸送層を構成する重合体を形成するモノマーを表1に記載のものに変更した以外は同様にして、光電変換素子SC−2〜25を作製した。なお、本実施例において、固体正孔輸送層を構成する重合体はすべて、モノマーの二量体(H2−1〜H2−7)を用いて合成された。
〔比較例2:光電変換素子SC−26の作製〕
実施例1における光電変換素子SC−1の作製において、増感色素を表1に記載の化合物(DR−1)に変更した。また、固体正孔輸送層を表1に記載の化合物(HR−1)から形成した。すなわち、スピンコーティングによって形成した。これら以外は実施例1に記載された方法と同様にして、光電変換素子SC−26を作製した。
また、下記表1中の化合物DR−1、DR−2およびHR−1を下記に示す。
〔光電変換素子の評価〕
ソーラーシュミレータ(英弘精機製)を用い、強度100mW/cmのキセノンランプ照射下、酸化物半導体電極(光電変換電極)に5×5mmのマスクをかけた条件下で光電変換特性の測定を行った。
すなわち、光電変換素子SC−1〜26について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、光電変換素子の光電変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
ここで、Pは入射光強度[mW/cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
(光劣化試験後の光電変換効率の測定)
更に劣化操作として、光電変換素子SC−1〜20を、80℃で2時間加熱した後、強度100mW/cmのキセノンランプで120分間光照射し、劣化後の光電変換効率(η(%))を求めた。
表1に各光電変換素子の特性評価結果を示す。
表1から、本発明に係る重合体を含有する固体正孔輸送層と本発明に係る増感色素を有する本発明の光電変換素子(SC−1〜24)は、光電変換効率が高くその安定性にも優れている。
一方、本発明の範囲から外れる増感色素および/または正孔輸送層で構成された比較例の光電変換素子(SC−25,26)は、実施例の光電素子(SC−1〜24)に比べて光電変換効率が小さく、その安定性も劣っている。特に、増感色素が酸性基を1つしか有さないモノ体色素DR−1を使用した比較例1では、本発明に係る重合体からなる正孔輸送層を使用したとしても、熱エネルギーなどが加えられることにより、色素の脱離が生じ、耐久性が悪化している。
これに対して、本発明に係る増感色素は酸性基を2つ有するジ体色素であるため、色素全体の吸着力が向上し、熱エネルギーが加えられた場合であっても、色素の脱離が抑制され、耐久性を向上させることができる。特に、チオフェン連結基(環b)を有する光電変換素子(SC−2〜24)では、そうではない場合(SC−1)に比べて、より優れた光電変換効率および耐久性を示している。さらに、RまたはRが炭素数6〜18の直鎖アルキル基を有する増感色素(SC−3〜5、20、21、23、24)を使用することにより、色素化合物の凝集が防止され、光電変換特性を向上しうることがわかる。また、一般式(3)で示される増感色素(SC−7〜9、12,13,15、17、18、19)を使用した場合には、色素化合物の平面性が向上し、より優れた光電変換効率および耐久性を示すことが確認される。さらに、アミド結合を有する吸着基Zを有する増感色素を使用した場合(SC−8,9)には、アミド結合により吸着力が向上し、特に優れた耐久性を有することが分かる。
以上の結果より、本発明の重合体を含有する固体正孔輸送層とジ体色素である増感色素の組み合わせの効果により、増感色素の吸着力が向上して色素の脱離が防止され、光電変換素子の耐久性向上につながったと推測できる。
1 基板、
2 第一電極、
3 バリア層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 固体正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (9)

  1. 基板上に、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、ならびに第二電極、を有する光電変換素子において、
    前記増感色素は、下記一般式(1):
    上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族残基、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、炭素数2〜32のアルケニル基、炭素数2〜32のアルキニル基、炭素数1〜32のアルコキシ基、または炭素数1〜32のアルキルチオ基であり、この際、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよく;
    は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、または炭素数7〜24のアラルキル基であり;
    環b中の水素原子の少なくとも一つは、置換基で置換されていてもよく、この際、複数の置換基が互いに結合して置換基を有してもよい環を形成してもよく、または複数の環bが縮環していてもよく;
    Zは、酸性基および電子吸引性基または電子吸引性環構造を有する有機残基であり;
    mは、0〜4の整数であり、mが2以上の場合、それぞれの環が独立して置換基を有してもよい;
    で表され、
    前記固体正孔輸送層は、下記一般式(2):
    上記一般式(2)中、
    およびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR基、−SR基、−SeR基、または−TeR基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基であり、この際、XおよびXは、互いに結合して環構造を形成していてもよい、
    で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物を含有する、光電変換素子。
  2. 前記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数2〜24のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜32のアルコキシ基、炭素数2〜32のアルケニル基であり、この際、RおよびRは互いに結合して環構造を形成していてもよい、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記一般式(1)中、mが2〜4である請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記一般式(1)中、少なくとも1つの環bは、置換基として炭素数6〜24の直鎖のアルキル基を有する請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 前記増感色素は、下記一般式(3):
    上記一般式(3)中、R、Zおよびmは前記一般式(1)と同様の定義であり、
    は、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはハロゲン原子であり;R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基である、
    で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記一般式(3)中、Rは、炭素数6〜24の直鎖のアルキル基、または、炭素数6〜24のアルコキシ基である、請求項5に記載の光電変換素子。
  7. 前記一般式(1)または前記一般式(3)のZは、下記構造:
    上記において、R11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはシアノ基である、
    である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記一般式(1)または前記一般式(3)のZは、下記構造:
    上記において、R12は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、またはシアノ基である、
    である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を備える太陽電池。
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