JP2014154289A - 光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

光電変換素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光照射に対する耐久性の高い光電変換素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子であって、前記光電変換層は、前記第一電極上にあり、かつ該第一電極と前記半導体とが接していない領域に、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を含む、光電変換素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子およびその製造方法に関し、さらに詳細には耐久性に優れる光電変換素子およびその製造方法に関する。
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、およびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、色素を吸着させる酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する。
上記の光電変換素子では、酸化チタン等の半導体多孔質表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子が注入されて色素カチオンとなり、電荷輸送層を通じて色素カチオンが対極から電子を受け取る、というサイクルを繰り返す。電荷輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この光電変換素子は、酸化チタンの安定性とも関連して優れた再現性を有しており、研究開発の裾野も大きく広がってきている。
このような光電変換素子において、透明基板上に形成された透明導電膜、または透明導電性基板(以下、「第一電極」とも称する)と、対極(以下、「第二電極」とも称する)とは、電荷輸送層(または正孔輸送層)を介して配置されている。すなわち、電荷輸送層の一方の面は第一電極に接し、他方の面は第二電極に接するように構成されている。したがって、逆電子移動や多数の部分短絡箇所が生じ、これにより著しい電圧・電流損失による致命的な出力低下が生じうる。
かような問題点に対し、第一電極と電荷輸送層との直接的な接触を回避する手段として、「バッファ層」と称する、薄く緻密な酸化物半導体膜を第一電極上に形成し、これを短絡防止層として機能させる技術が提案されている。しかし、この技術では、バッファ層(すなわち短絡防止層)によって、バッファ層の上に配置される半導体微粒子から第一電極への電子移動が妨害されることとなり、光電変換素子の出力特性が低下する。
他方、2以上のメルカプト基を有するモノマーの電解重合によって絶縁膜が形成された光電変換素子用光電極が提案されている(特許文献1)。特許文献1の光電変換素子用光電極に備えられる絶縁膜は、第一電極上であり、かつ当該第一電極上に形成された酸化物半導体多孔質膜を構成する酸化物半導体微粒子が第一電極に接していない領域に形成されている。この絶縁膜もまた、電子の逆移動を抑制し、短絡の発生を防止することを目的としているものであるが、半導体微粒子が第一電極に接しているため、半導体微粒子から第一電極への電子移動が妨害されにくくなるという利点を有している。
特開2003−243054号公報
上記特許文献1の技術によれば、半導体微粒子は第一電極に接する一方で、半導体微粒子が接していない第一電極表面は絶縁膜に覆われるため、電子移動の妨害は起こりにくく、光電変換特性が改良される。
しかしながら、特許文献1では、光電変換素子の出力特性について評価を行っているものの、光を照射し続けたときの耐久性は記載されていない。これについて、本発明者らが特許文献1の絶縁膜を有する光電変換素子について、光照射による耐久性を評価したところ、不満足なレベルであった。また、逆電子移動の防止(短絡の防止)による光電変換効率の初期特性の向上も未だ不十分であり、大きな改善が望まれていた。
そこで本発明は、光照射に対する耐久性の高い光電変換素子およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、光電変換効率の初期特性に優れた光電変換素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、半導体と増感色素を含む光電変換層において、第一電極上であって、かつ半導体が第一電極と接していない領域に、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を形成することで、上記課題が解決されうることを見出した。そして、上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の手段により達成される。
1.基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子であって、前記光電変換層は、前記第一電極上にあり、かつ該第一電極と前記半導体とが接していない領域に、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を含む、光電変換素子。
2.前記導電性高分子は、下記式(1):
上記式(1)中、Xは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、またはアミノ基(−NX基;XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)を表わし、
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX1112基;X11およびX12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
または下記式(2):
上記式(2)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX2122基;X21およびX22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体を含む、上記1.に記載の光電変換素子。
3.前記電荷輸送層は、前記導電性高分子を含む、上記1または2.に記載の光電変換素子。
4.前記半導体は、酸化チタンである、上記1.〜3.のいずれか1つに記載の光電変換素子。
5.基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する上記1.〜4.のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記第一電極および該第一電極上に形成された前記半導体からなる半導体層を、導電性高分子の原料を含む溶液に浸漬し、前記導電性高分子を非共役化させる条件下で、非共役化されてなる導電性高分子を含む還元膜を形成する還元膜形成工程を含む、光電変換素子の製造方法。
本発明によれば、光照射に対する耐久性の高い光電変換素子およびその製造方法が提供されうる。また、本発明によれば、光電変換効率の初期特性に優れた光電変換素子およびその製造方法が提供されうる。
本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に示す断面図である。 図1に示される光電変換素子のA−A断面図である。
本発明は、基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子であって、前記光電変換層は、前記第一電極上にあり、かつ該第一電極と前記半導体とが接していない領域に、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を含む、光電変換素子である。
なお、以下で詳述するように、本明細書中、「導電性高分子が非共役化されてなる還元膜」とは、π共役系高分子からなる導電性高分子が非共役化された高分子(重合体または共重合体)を含む還元膜を示す。さらに、「導電性高分子が非共役化された状態」とは、π電子が非局在化した共役系高分子の共役が切られ、導電性が失われた状態を意味する。
本発明者らは、上述の特許文献1に開示された絶縁膜を有する光電変換素子の耐久性および光電変換効率が低い原因を検討し、光照射による絶縁膜の構造変化が原因の一つであることを突き止めた。より詳細には、特許文献1の絶縁膜は、メルカプト基を有するモノマーから得られる重合体によって形成されており、メルカプト基由来のジスルフィド結合(S−S結合)が含まれていると推測される。したがって、このジスルフィド結合が光照射により切断されて分子構造が大きく変化する結果、絶縁膜としての機能が低下してしまうため、耐久性および光電変換効率が低くなると考えた。
そこで、本発明者らは、光照射によって構造が変化しない絶縁膜を検討してきた。その結果、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を形成することにより、光照射に対する耐久性が高く、また、光電変換効率の初期特性に優れた光電変換素子が得られることを見出した。
また、特許文献1の技術によって十分な光電変換効率や耐久性が得られない他の理由としては、以下のような理由も考えられる。すなわち、特許文献1の技術では、電界重合により絶縁膜を形成するため、反応が進行して絶縁膜が形成されていくと、一定の膜厚まで絶縁膜が成長した段階で、それ以上の厚みの絶縁膜を形成することができなくなる。したがって、十分な厚みの絶縁膜を形成することが難しい。その結果、絶縁膜の機能が十分に得られず、光電変換素子の耐久性や、光電変換効率が低下するという理由も挙げられる。
これに対し、本発明によれば、導電性高分子を形成した上で、当該導電性高分子を非共役化させて還元膜を形成することによって絶縁膜を得るため、非共役化条件によって絶縁膜厚を制御でき、絶縁膜の膜厚を大きくしやすい。したがって、十分な厚みの絶縁膜を形成することができる結果、耐久性や光電変換効率の初期特性に優れた光電変換素子を得ることができる。
なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基体1、第一電極2、光電変換層6、電荷輸送層7、および第二電極8が順次積層されてなる構成を有する。ここで、図に示されるように、光電変換層6は、半導体5、増感色素4、および還元膜3を含有する。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図1の上方(すなわち、矢印9の反対側の方向)から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、基体1上に形成した第一電極2上に、半導体5からなる半導体層を形成し、その後、第一電極2上であって、かつ第一電極2と半導体5とが接していない領域に、還元膜3を形成する。なお、便宜上、図1には、絶縁層3と、増感色素4が吸着された半導体5とがそれぞれ別の層状に形成されている態様を示したが、実際は、図2のように、半導体5からなる半導体層の多孔の隙間を埋めるようにして第一電極2上に還元膜3が形成される。次に、半導体5の表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に電荷輸送層7を形成する。この際、図2に示されるように、電荷輸送層7を形成する電荷輸送材料は、半導体5からなる半導体層の多孔の隙間を埋めるようにして充填して形成される。そして、電荷輸送層7の上に第二電極8を形成する。第一電極2および第二電極8に端子を付けることにより、電流を取り出すことができる。
以下、本発明の光電変換素子の各部材について説明する。
[基体]
基体は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。基体側から光が入射する場合、基体はこの光を透過させることが可能な、すなわち、光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。具体的には、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率を意味するものとする。
基体としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基体の材料としては、剛性を有する基体、および可撓性を有する基体を用いることができる。剛性を有する基体と可撓性を有する基体とを組み合わせて用いてもよい。
剛性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ガラス板およびアクリル板が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点からガラス板を用いることが好ましい。剛性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、0.1〜100mmが好ましく、0.5〜10mmがより好ましい。
一方、可撓性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム;ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム;ポリスルホン(PSF)樹脂フィルム;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂フィルム;ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルムなどが挙げられる。特に、太陽光エネルギーを利用することを考慮し、可視領域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムを基体として用いることが好ましい。当該樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、およびポリカーボネートフィルム等が挙げられ、これらのうち、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが好ましい。なお、可撓性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムが、本発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
上記基体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理や易接着層を設けてもよい。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理により表面処理を行うことができる。また、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、およびエポキシ系共重合体等を易接着層として使用することができる。
[第一電極]
第一電極は、基体と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基体の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極は、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上(上限:100%)であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。
第一電極を構成する材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、金属およびその酸化物、ならびにSn、Sb、FおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含む複合(ドープ)材料を用いることができる。前記金属としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、およびインジウム等が挙げられ、金属酸化物としては、SnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、およびCdIn等が挙げられ、複合(ドープ)材料としては、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等が挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
第一電極を形成する材料の基体への塗布量は、特に制限されないが、基体1m当たり1〜100g程度であることが好ましい。なお、本明細書では、基体とその上に形成された第一電極との積層体を「導電性支持体」とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。導電性支持体の表面抵抗値としては、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値が500Ω/□(square)以下であることが好ましく、20Ω/□(square)以下であることがより好ましい。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
[光電変換層]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。本発明において、光電変換層は第一電極上にあり、半導体、増感色素、および還元膜を必須に含む。
(半導体)
光電変換層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等の粒子を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
さらに具体的な例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。好ましくは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、より好ましくは、TiOまたはNbであり、さらに好ましくはTiO(酸化チタン)である。すなわち、半導体は、酸化チタンであると好ましい。
前記半導体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
光電変換層に用いられる半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、半導体層に用いられる半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、光電変換層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。なお、上記光電変換層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
(還元膜)
本発明に備えられる還元膜(本明細書中、「部分絶縁膜」とも称する)は、光電変換層中、第一電極と半導体とが接していない領域に形成され、電荷の逆電子移動を抑制しうる。還元膜は、受光により発生し、電荷輸送層に注入されたホール(正孔)と、第一電極の電子との再結合である短絡を防止するために、第一電極と接するように、膜状(層状)に形成される。
上述のように、還元膜は、導電性高分子(π共役系高分子)が非共役化されることによって形成される。より詳細には、「非共役化」なる用語は、高分子の主鎖において、炭素−炭素不飽和結合(すなわち、二重結合または三重結合)と、炭素−炭素単結合とが交互に連結した構造(すなわち、共役系高分子の状態)から、不飽和結合に対する付加反応によって不飽和結合がない構造に変換するか、あるいは2つ以上の単結合を介して不飽和結合が存在する構造へと変換することを意味する。かような構造に変換されることにより、導電性高分子は、電気的に非導通となる。また、上記態様は、たとえば、導電性高分子の過酸化電位以上の電位により電解処理(電解重合)を行うことにより達成される。
本形態の導電性高分子化合物の分子量は特に制限はないが、当該高分子化合物に良好な微細構造を与えるためには、適度な分子量を有することが好ましい。
なお、還元膜を形成するための導電性高分子や、非共役化された導電性高分子は、有機溶媒に溶解しにくいため、その重合度、すなわち具体的な分子量を測定することは難しく、特に、以下で詳述する電解重合法で得られた重合体についての分子量の測定は困難である。しかし、重合後、形成された還元膜の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体であること(高分子化合物が形成されたこと)の確認方法としては、導電性高分子の原料となるモノマー又はオリゴマーの溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に還元膜を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に還元膜を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
還元膜を形成するための導電性高分子は、導電性を示す高分子であれば特に制限されることはないが、例えば、アセチレン系、複素5員環系(モノマーとして、ピロールの他、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−ドデシルピロールなどの3−アルキルピロール;N−メチルピロール、N−ドデシルピロールなどのN−アルキルピロール;N−メチル−3−メチルピロール、N−エチル−3−ドデシルピロールなどのN−アルキル−3−アルキルピロール;1−アミノピロール、1−(ジメチルアミノ)ピロールなどのN,N−ジアルキルアミノピロール;3−カルボキシピロールなどを重合して得られたピロール系高分子、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−ドデシルチオフェンなどの3−アルキルチオフェン;などを重合して得られたチオフェン系高分子、イソチアナフテン系高分子、フラン系高分子、カルバゾール系高分子など)、フェニレン系、アニリン系の各導電性高分子やこれらの共重合体、誘導体から選択された少なくとも1つが挙げられる。なかでも、安定性や信頼性が高く、製造も容易であることから、ピロール系高分子またはチオフェン系高分子が好適に用いられる。
より具体的には、導電性高分子は、下記式(1):
上記式(1)中、Xは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、またはアミノ基(−NX基;XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)を表わし、
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX1112基;X11およびX12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
または下記式(2):
上記式(2)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX2122基;X21およびX22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体を含むものであると好ましい。なお、上記重合体または共重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。また、共重合体は、ブロック重合体、ランダム重合体のいずれであってもよい。
上記式(1)または(2)で表される繰り返し単位を含む導電性高分子は、材料となるモノマーを重合して導電性高分子を形成した後、容易に非共役化しやすい。非共役化の方法については、以下で詳述する。
上記式(1)中、Xは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、またはアミノ基(−NX基)であるが、好ましくは、水素原子またはアミノ基である。
上記Xとしての、炭素原子数1〜20のアルキル基は、直鎖、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、特に制限されない。例えば、直鎖もしくは分岐状のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基がより好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基およびイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数3〜6の分岐アルキル基が特に好ましい。
また、上記Xとしての環状のアルキル基は、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基などが挙げられる。これらのうち、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素原子数5〜8の環状のアルキル基が好ましい。
また、上記Xとしての、炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、アズレニル基等が挙げられるが、炭素原子数6〜10のアリール基が好ましい。これらのうち、フェニル基、インデニル基等の炭素原子数6〜9のアリール基が好ましい。
さらに、上記Xとしての、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1〜3個含む、不飽和の環式化合物から誘導される1価の基である。上記Xとしてのヘテロアリール基について、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基等が挙げられるが、炭素原子数3〜10のヘテロアリール基が好ましい。これらのうち、ピリジル基、ピラジニル基等の炭素原子数4〜7のヘテロアリール基が好ましい。
さらにまた、上記Xとしての、アミノ基(−NX基)について、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基であり、これらは、上記Xの定義と同様である。したがって、その説明を省略するが、上記XおよびXは、互いに同じものであると好ましい。また、上記XおよびXは、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数3〜10のヘテロアリール基が好ましい。これらの中でも、上記XおよびXは、水素原子であると特に好ましい。
上記式(1)中のRおよび上記式(2)中のRは、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX1112基または−NX2122基)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基である。
およびRについて、上記式(1)のXと同様の置換基の他、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基等が挙げられる。なお、Xと同様の置換基については、その説明を省略するが、炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数6〜18のアルコキシ基が好ましく、デシルオキシ基がより好ましい。また、炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基は、式:−(CHCHO)Hまたは式:−(OCHCHH[この際、xは、1〜9の整数である]で表わされる基である。これらのうち、xが3〜9であるものが好ましく、−(OCHCHHがより好ましい。
上記式(1)および(2)に示されるように、ピロール環およびチオフェン環の3位および4位は、いずれか一方が無置換である(すなわち、水素原子のみにより置換されている)。非共役化する際のメカニズムとしては、水酸化物イオン(OH)ならびに塩化物イオン(Cl)や臭化物イオン(Br)といったハロゲン化物イオン等の求核剤が3位(または4位)に求核攻撃することを起点として非共役化反応が生じると考えられるため、3位(または4位)が無置換である構造であると好ましい。したがって、かような求核置換反応を生じやすくするため、RおよびRは、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のヘテロアリール基、アミノ基(−NX1112基または−NX2122基;X11およびX12ならびにX21およびX22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数1〜10のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、または炭素原子数2〜10のポリエチレンオシキド基であると好ましい。RおよびRは、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基であるとより好ましく、水素原子であるとさらに好ましい。
以下、導電性高分子を非共役化した態様について、ピロール環を繰り返し単位として有する導電性高分子を非共役化した態様を例示して説明する。なお、以下では、分子構造を説明するためにピロール系高分子の非共役化について説明するが、同様の構造変化を起こしうる導電性高分子もまた、同様に非共役化される。
ピロール環を繰り返し単位として有する導電性高分子(ポリピロール)は、ピロール環に対して求核反応を起こしうる試薬(求核剤)との反応により、非共役化される。非共役化する際の反応の一例としては、水酸化物イオンや塩化物イオン等のハロゲン化物イオンのβ位(3位、4位)への求核攻撃と、それに続くカルボニル基の形成というポリピロールの過酸化反応が挙げられる(α位(2位、5位)への求核攻撃もまた起こりうる。)。かような反応は、重合体の共役鎖成長を止めるだけでなく、既存の共役系もまた寸断させるため、重合体の導電性低下を引き起こす。すなわち、導電性高分子を過酸化させることにより、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を形成することができる。
上記反応を進行させるための具体的な手法としては、以下で詳述するが、ピロールの電解重合において、塩基性環境下(すなわち、pHが高い環境下)で高電位酸化を行う方法が挙げられる。
還元膜の平均厚さ(膜厚)としては、短絡防止効果を発揮することができる膜厚であれば特に制限はないが、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。膜厚を5nm以上とすることにより、十分な絶縁効果を得やすくなり、光電変換素子の耐久性・光電変換効率の点から好ましい。また、100nm以下とすることにより、半導体の表面を必要以上に覆うことがなく、十分な量の増感色素を半導体に担持させることができ、特に光電変換効率の点から好ましい。なお、本明細書において、膜厚(または層の厚み)は、光電変換素子の基体の水平面に対する垂直方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて100点観察し、その平均値を算出した値である。
(増感色素)
本願発明に係る増感色素は、下述するような半導体の増感処理により、半導体に担持されており、光照射時、光励起され起電力を生じ得るものであり、下記式(3A)、式(3B)または式(3C)で表わされる化合物である。
上記式(3A)中、Ar〜Arは、芳香族基である。この際、Ar〜Arのいずれか2つは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、Ar〜Arは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、pは、1〜3の整数であり、好ましくは1または2が好ましい。また、上記式(3B)中、Ar〜Arは、芳香族基である。この際、ArおよびArまたはArおよびArは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、Ar〜Arは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Arは、2価の芳香族基である。また、qは、1〜4の整数であり、1または2が好ましい。さらに、上記式(3C)中、Ar〜Ar10は、芳香族基である。なお、Ar〜Ar10は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Lは、炭素原子数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素原子数3〜9のシクロアルキル基である。この際、ArおよびAr10、またはAr若しくはAr10およびLは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。rは、1〜2の整数であり、好ましくは1である。さらに、上記式(3A)〜(3C)中、Zは、酸性基および電子吸引性基または酸性基および電子吸引性環構造を有するAr〜Ar10のいずれかに置換する基である。
ここで、Ar〜Ar10で表わされる1価あるいは2価の芳香族基は、特に制限されない。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、チオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、フルオレン環等の芳香族環から導かれるものである。これらの芳香族環を複数組み合わせて用いても良く、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ビチオフェン基、4−チエニルフェニル基、ジフェニルスチリル基等、さらには、スチルベン、4−フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン、トリフェニルエテン(例えば、1,1,2−トリフェニルエテン)、フェニルピリジン(例えば、4−フェニルピリジン)、スチリルチオフェン(例えば、2−スチリルチオフェン)、2−(9H−フルオレン−2−イル)チオフェン、2−フェニルベンゾ[b]チオフェン、フェニルビチオフェン環、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−
(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン、フェニルジチエノチオフェン環由来の基などがある。これらの芳香族環は置換基を有していても良く、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、各々置換もしくは未置換の、炭素原子数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、オクタデシル基、3−エチルペンチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシエチル基等)、炭素原子数1〜18のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基)、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基等)等がある。
また、上記式(3A)〜(3C)中、増感色素としては式(3A)で表わされるものが好ましい。上記式(3A)で表わされる増感色素のうち、式(3D)で表わされるものが好ましく、(3D)中、Ar11およびAr12はそれぞれ独立して2価の芳香族基であり、Ar13は芳香族基であり、Z11およびZ12は酸性基および電子吸引性基を有する基または酸性基および電子吸引性環構造を有する基である。式中Ar11ならびにAr12にチオフェン環を含むのが特に好ましい。
また、上記式(3C)中、Lは、炭素原子数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基または炭素原子数3〜9のシクロアルキル基である。
上記Lとしての、炭素原子数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基は特に制限されない。上記Lとしてのアルキル基について、上記式(1)中のXの直鎖もしくは分岐状のアルキル基の例示のほか、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数6〜18の直鎖のアルキル基がより好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基およびイソプロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数3〜6の分岐アルキル基が特に好ましい。
また、上記Lとしての、炭素原子数3〜9のシクロアルキル基もまた特に制限されない。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数3〜7のシクロアルキル基が好ましい。これらの中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。
また、上記式(3A)〜(3C)中、Zは、酸性基および電子吸引性基または酸性基および電子吸引性環構造を有するAr〜Ar10のいずれかに置換する基である。なお、この置換する基Zは、式(3A)中のAr〜Ar、式(3B)中のAr〜Ar、または式(3C)中のAr〜Ar10およびL(好ましくは、Ar〜Ar10)中に存在するいずれかの水素原子(H)に置換され、好ましくは、上記Arの末端の水素原子(H)に置換される。この際、置換する基Z中の酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基[−SOH]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ヒドロキシ基、ホスホニル基、およびスルホニル基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ヒドロキシ基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基がより好ましい。また、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基が好ましく、シアノ基、ニトロ基がより好ましい。電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。これらのうち、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環がより好ましい。これらの置換する基Zは、光電子を効果的に半導体(特に酸化物半導体)に注入できる。また、置換する基Zにおいて、酸性基と、電子吸引性基または電子吸引性環構造とは、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、またはテルル原子(Te)等の原子を介して結合してもよい。または、置換する基Zは、電荷、特に正の電荷を帯びてもよく、この際、Cl、Br、I、ClO 、NO 、SO 2−、HPO 等の対イオンを有していてもよい。
すなわち、上記式(3A)〜(3C)中の置換する基Zの好ましい例は、下記がある。
また、本発明に係る増感色素の特に好ましい例を以下に示す。なお、本願発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、「Ph」は、フェニル基を表わす。また、下記実施例において、増感色素を下記記号にて規定する。
また、上記の増感色素と他の増感色素とを併用して用いることもできる。併用して用いることができる増感色素としては、本発明に係る半導体を分光増感しうるものならばいずれの増感色素であってもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ光電変換効率を上げるため2種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。目的とする光源の波長域と強度分布とに合わせるように、混合する増感色素とその割合を適宜選択することができる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。
併用して用いる増感色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
上記のカルボキシル基を有する増感色素と併用して用いることができる増感色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の増感色素を挙げることができる。
なお、上記増感色素は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
(光電変換層の作製方法)
光電変換層の作製方法は、(1)導電性支持体上への半導体層の形成、(2)還元膜の形成、(3)半導体の増感処理(増感色素の担持)に大別される。上記(1)において、半導体の材料が粒子状の場合には、半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布或いは吹き付ける方法、および半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後に縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)等によって半導体層を形成することができる。上記(1)の工程によって得られた半導体層は焼成することが好ましい。また、(1)において、半導体の材料が膜状であり、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合することによって半導体層を形成することができる。(2)の還元膜の形成工程は、上記(1)の工程によって形成された半導体層の多孔を埋めるように、導電性支持体上に還元膜を形成する工程である。(3)の増感処理方法は、増感色素の半導体層への吸着(担持)処理により行われる。
以下では、上記(1)〜(3)の工程を含む光電変換層の作製方法について詳細に説明する。
(1)導電性支持体上への半導体層の形成
(1−1)半導体含有塗布液の調製
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。当該半導体微粉末はその1次粒子径が微細であることが好ましい。1次粒子径としては、1〜5000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜100nmであることが特に好ましい。半導体含有塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができ、溶媒中に分散された半導体微粉末は1次粒子状で分散する。溶媒中の半導体微粉末の濃度は0.1〜70重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましい。
半導体含有塗布液に用いられうる溶媒としては、半導体微粉末を分散できるものであれば特に制約されず、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が用いられうる。前記有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。塗布液中には、必要に応じて、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を添加してもよい。
(1−2)半導体含有塗布液の塗布
上記(1−1)によって調製した半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行うことにより、半導体層が形成される。当該塗布は、特に制限されず、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって行われる。上記塗布または吹き付け、および乾燥によって得られた半導体層は、半導体微粒子の集合体からなるものであり、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応する。なお、半導体含有塗布液は2種以上の半導体材料を含むものであってもよいし、2種以上の半導体材料を用いて塗布または吹き付けを行い、層状構造の半導体層を形成してもよい。
(1−3)半導体層の焼成処理
上記(1−2)によって形成された半導体層は、空気中または不活性ガス中で焼成することが好ましい。焼成を行うことにより、(1−2)で形成された半導体層と導電性支持体との結合力および半導体粒子どうしの結合力を高め、機械的強度が向上しうる。焼成条件は、所望の実表面積や空孔率を有する半導体層を形成することができれば特に制限されない。焼成温度は、特に制限されないが、1000℃以下であることが好ましく、100〜800℃であることがより好ましく、200〜600℃であることが特に好ましい。また、基体がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、加圧により半導体微粒子−基体間および半導体微粒子どうしを固着させてもよいし、マイクロ波を用いて半導体層のみを焼成してもよい。焼成時間も特に制限されないが、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、10〜120分であることが特に好ましい。また、焼成雰囲気も特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行ってもよいし、温度や時間を変化させて2回以上繰り返し行ってもよい。
焼成された半導体層の構造は、特に制限されないが、増感色素との吸着を効果的に行う観点から多孔質構造(空隙を有するポーラスな構造)であることが好ましい。よって、半導体層の空孔率(D)は、1〜90体積%であることが好ましく、10〜80体積%であることがさらに好ましく、20〜70体積%であることが特に好ましい。なお、半導体層の空孔率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空孔率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。なお、半導体層が多孔質構造膜である場合には、電荷輸送層を構成する材料がこの空隙にも存在するように光電変換素子を製造することが好ましい。
焼成された半導体層の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、500nm〜30μmであるとより好ましく、1μm〜10μmであるとさらに好ましい。
得られた半導体層の見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積、ならびに焼成温度等により制御することができる。また、得られた半導体層は、焼成後、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行うことにより、半導体粒子の表面積および半導体粒子近傍の純度を制御し、色素から半導体粒子への電子注入効率を高めてもよい。
(2)還元膜の形成
本発明は、基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する本発明の光電変換素子の製造方法であって、前記第一電極および該第一電極上に形成された前記半導体からなる半導体層を、導電性高分子の原料を含む溶液に浸漬し、前記導電性高分子を非共役化させる条件下で、非共役化されてなる還元膜を形成する還元膜形成工程を含む、製造方法をも提供する。
上記還元膜の形成工程は、(2−1)導電性高分子からなる膜を形成する工程、および(2−2)当該膜に含まれる導電性高分子を非共役化させる(還元する)工程に大別されるが、これらを同時に行うことができれば、同時に行うのが好ましい。導電性高分子膜の形成と、当該導電性高分子膜の非共役化を同時に行うことができれば、製造工程をより簡素化することができ、また、光電変換層(還元膜)に不純物が混入するのを防止することができるため、好適である。
上記(2−1)の工程と(2−2)の工程を別工程で行う場合は、まず、導電性高分子を構築するためのモノマー(ピロール類、チオフェン類等)を、当該モノマーが縮合する条件下で重合させることにより導電性高分子からなる重合膜を形成する。その後、当該導電性高分子(ポリピロール類、ポリチオフェン類)の不飽和結合(二重結合、三重結合)の還元反応による非共役化により還元膜を形成する。
(2−1)の工程と(2−2)の工程を同時に行う場合は、導電性高分子を構築するためのモノマー(ピロール類、チオフェン類等)の縮合条件よりも激しい条件、すなわち、不飽和結合(二重結合、三重結合)の還元反応も同時に起こるような条件でモノマーを反応させる。ここで、激しい条件とは、具体的には、アルカリ条件下、縮合条件と比較して高い印加電圧により重合反応を行うなどの条件が挙げられる。
上記(2−1)の導電性高分子からなる膜を形成する工程では、半導体が第一電極と接していない領域に当該膜を形成することができるものであれば、公知の重合合法を用いることができる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、光照射による光重合法、以下で詳述する電解重合法等が挙げられる。これらの中でも、第一電極上であって、かつ半導体と第一電極とが接していない領域に還元膜を形成するという目的から、電解重合法が好ましい。作用極を第一電極とすることにより、第一電極上に合成される重合体がそのまま膜として使用できるからである。次に、(2−2)の導電性高分子を非共役化させる工程は、導電性高分子の性質や構造により、主として以下の二種類に大別される。以下では、(a)非共役化を起こす電解質が共存しても導電性高分子の構築と、その導電性高分子が非共役化されてなる還元膜の形成が同時に起こる場合;(b)上記(a)以外の場合について、詳述する。
(a)非共役化を起こす電解質が共存しても導電性高分子の構築と、その導電性高分子が非共役化されてなる還元膜の形成が同時に起こる場合
モノマーおよび電解質が、ともに溶解できる溶媒系を用いた還元膜の形成では、電解重合法により、上記(2−1)および(2−2)の工程、すなわち、導電性高分子からなる膜の形成と導電性高分子の非共役化を同時に行うことができる。なお、このような場合のモノマーの例としては、ピロールが挙げられる。
すなわち、導電性高分子を構成するモノマー(またはオリゴマーであってもよい)、支持電解質および必要に応じて添加剤を適当な溶媒に溶解し、電解重合溶液を調製して、第一電極および半導体層が形成された基体を電解重合溶液に浸漬した状態で、適当な電位をかけて、アルカリ性条件下或いはハロゲンイオン存在下で電解重合を行うことにより、還元膜を形成することができる。以下、ピロール系高分子を用いて還元膜を形成する手順について、詳述する。
まず、還元膜の形成工程としては、モノマーまたはオリゴマーならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質ならびに必要に応じて他の添加剤を添加して、電解重合溶液を作製する。
上記電解重合溶液は、上記モノマー(またはオリゴマー)および支持電解質、ならびに必要に応じて用いられる添加剤が溶解したものであれば特に限定されないが、生成する導電性高分子(たとえば、ポリピロール)を過酸化して非共役化するために、塩基性溶液とすると好ましい。塩基性溶液とすることにより、電解重合において導電性高分子膜の形成から非共役化までを一段階で行うことができる。
電解重合溶液の溶媒としては、モノマーおよび電解質がともに溶解できる溶媒であり、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコールや、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、ニトロベンゼンなどの極性溶媒が挙げられる。また、プロトン性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒のいずれであってもよい。上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、たとえば、水に対し、必要に応じて上記各有機溶媒を加えてもよい。
また、電解重合溶液中のモノマーまたはオリゴマーの濃度は、特に制限されないが、0.001〜10mol/Lが好ましく、0.01〜1mol/Lがより好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がさらに好ましい。
上記「塩基性溶液」とは、塩基性を示す溶液であれば特に限定されないが、水系である場合、そのpHは、7を超えて13以下の範囲が好ましく、8〜10の範囲であるとより好ましい。なお、このときのpH値は、JIS Z 8802:2011に準拠して測定されたものを指す。
電界重合溶液に含まれる電解質(添加剤)としては、塩基性化合物を含有すると好ましい。塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、有機塩基や無機塩基が挙げられる。なかでも、水への溶解性や、電解重合反応において酸化・還元を受けにくい等の観点から、有機塩基よりも無機塩基の方が好ましい。さらに、無機塩基の中でも、電離性の観点から、アルカリ金属の無機塩基が好ましい。
上記の塩基性化合物は、添加剤として電解重合溶液に加えられてもよいが、支持電解質として作用するものであるとより好ましい。このように、支持電解質としての機能も果たす塩基性化合物としては、金属の水酸化物または炭酸塩が好ましい例として挙げられる。
電解重合溶液に含まれる支持電解質(または添加剤)としての塩基性化合物は、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの第二族元素の水酸化物、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化マンガン等の遷移金属元素の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の炭酸塩が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩が好ましく、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。なお、上記塩基性化合物は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
塩基性化合物を支持電解質として電解重合溶液に含む場合、塩基性化合物の濃度は特に限定されないが、0.01〜1mol/L程度が好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がより好ましい。また、塩基性化合物を、支持電解質に対して別途添加剤として電解重合溶液に含む場合、塩基性化合物の濃度は特に限定されないが、0.01〜1mol/L程度が好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がより好ましい。
次に、第一電極2上に半導体5からなる半導体層が形成された基体1を電解重合溶液に浸漬し、電位走引電解法、定電位電解法、定電流電解法など、任意の方法を用いることにより重合を行う。このとき、第一電極2を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解するのが好ましい。
上記重合時の電位範囲は、導電性高分子の過酸化電位以上の電位で電解重合を行うと好ましい。具体的には、ピロールの電解重合では、0.9V付近に第1ピークを示し、この付近の電位で電解すると導電性のポリピロール被膜が形成される一方、さらに電位を上げ、1.1V付近にある第2ピーク以上の電位で電解することにより、ポリピロールが非共役化され、還元膜が形成される。したがって、保持電圧は、1.0〜2.0Vであることが好ましく、1.1〜1.9Vであることがより好ましい。このように、高電位とすることにより、ピロール膜が過酸化されて非共役化し、その結果、還元膜を形成することができる。
このとき、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが好ましく、1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。
(b)上記(a)以外の場合
上記(a)以外の場合とは、非共役化を起こす電解質が共存しても導電性高分子の構築と、その導電性高分子が非共役化されてなる還元膜の形成を同時に起こすことが出来ない場合である。この場合、還元膜の形成の際、上記(2−1)を行った後、さらに(2−2)の工程を行うことによって、還元膜が形成される。すなわち、導電性高分子からなる膜の形成を行った後、当該導電性高分子の非共役化を別途行うことによって、還元膜が形成される。なお、このような場合のモノマーの例としては、チオフェンが挙げられる。
より詳細には、導電性高分子を構成するモノマー(またはオリゴマー)、支持電解質および必要に応じて添加剤を適当な溶媒に溶解し、電解重合溶液を調製して、第一電極および半導体層が形成された基体を電解重合溶液に浸漬した状態で、適当な電位をかけて電解重合を行うことにより、まず、導電性高分子からなる膜(導電性膜)を形成する。次に、ハロゲンオンを供給する四級アンモニウム塩を含む溶液を用いて電解処理することにより、当該導電性膜を非共役化して還元膜を形成する。この場合、(a)と異なり最初の重合では、アルカリ性下或いはハロゲンイオン存在下でない。
まず、還元膜の形成工程としては、導電性高分子を構築するモノマーまたはオリゴマーならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
上記電解重合溶液は、上記モノマー(またはオリゴマー)および支持電解質が溶解したものであれば特に限定されない。
電解重合溶液の溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、ニトロベンゼンなどの非プロトン性有機溶媒を用いると好ましい。また、上記各溶媒は単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、電解重合溶液中の導電性高分子を構築するモノマーまたはオリゴマーの濃度は、特に制限されないが、0.001〜10mol/Lが好ましく、0.01〜1mol/Lがより好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がさらに好ましい。
電界重合溶液に含まれる支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。なお、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記支持電解質の濃度は特に限定されないが、0.01〜1mol/L程度が好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がより好ましい。
次に、第一電極2上に半導体5からなる半導体層が形成された基体1を電解重合溶液に浸漬し、任意の方法を用いることにより重合を行い、導電性高分子からなる導電膜を形成する。このとき、第一電極2を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解するのが好ましい。
上記重合時の電位範囲は、導電性高分子の過酸化電位よりも低い電位で電解重合を行うと好ましい。具体的には、ポリチオフェンの過酸化電位は2.0V付近であるため、これよりも低い電位とすることによってポリチオフェンの導電膜が形成される。このとき、保持電圧は、0.9〜1.9であることが好ましく、1.0〜1.8Vであることがより好ましい。このように、過酸化電位と比較して低電位とすることにより、導電性のポリチオフェン膜が形成される。このとき、印加電流密度としては、上記(a)における還元膜の製造方法と同様であるため、その説明を省略する。
また、上記の方法によって電解重合法を行う際、導電性高分子膜を形成する際の積算電荷量を適当な値に調整することによって、導電性高分子膜、さらには、還元膜の厚みを制御することができる。より詳細には、積算電荷量を大きくすることにより、導電性高分子膜(還元膜)の厚みを大きくすることができる。具体的には、導電性高分子をポリチオフェン膜とした場合、好ましい積算電荷量としては、1〜40mC/cm、より好ましくは5〜20mC/cmである。5mC/cm以上とすることにより、十分な厚みのポリチオフェン膜(還元膜)を形成することができ、光電変換素子の耐久性をより向上させることができる。また、20mC/cm以下とすることにより、増感色素が担持される半導体の表面積を十分に確保することができるため、光電変換効率が良好となる。
次に、上記の方法により形成したポリチオフェンの導電膜を非共役化するため、当該膜が形成された基体を、四級アンモニウム塩を含む溶液に浸漬して電解処理する。
上記溶液の溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒;ブチルラクトン、プロピルラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒等の非プロトン性有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、上記溶液に含まれる四級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−プロピルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ペンチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロライド、エチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−n−プロピルアンモニウムクロライド、tert−ブチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、1,1−ジメチルピロリジニウムクロライド、1,1−ジエチルピロリジニウムクロライド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムクロライド、1,1,2−トリメチルピロリジニウムクロライド、1,1,3−トリエチルピロリジニウムクロライド、1,1−ジ−n−プロピルピロリジニウムクロライド、1,1−ジ−n−ブチルピロリジニウムクロライド、1,1−ジ−n−ペンチルピロリジニウムクロライド、1,1−ジ−n−ヘキシルピロリジニウムクロライド、1,1−ジメチルピペリジニウムクロライド、1,1−ジエチルピペリジニウムクロライド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムクロライド、1,1,4−トリメチルピペリジニウムクロライド、1,1−ジメチルモルホリニウムクロライド、1,1−ジエチルモルホリニウムクロライド、1−メチルピリジニウムクロライド、1−エチルピリジニウムクロライド、1,2−ジメチルピリジニウムクロライド、1,3−ジメチルピリジニウムクロライド、1,4−ジメチルピリジニウムクロライド、1,2,6−トリメチルピリジニウムクロライド、1−n−プロピルピリジニウムクロライド、1−n−ブチルピリジニウムクロライド、1−n−ペンチルピリジニウムクロライド、1−n−ヘキシルピリジニウムクロライド、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジエチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−プロピルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,3−n−ペンチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−ヘキシルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド等、および前記各化合物中の塩素イオンが臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオンに変わった、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジエチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−プロピルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,3−n−ペンチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−n−ヘキシルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド等のイミダゾリウムクロライド系化合物が好ましい。
上記四級アンモニウム塩の濃度は特に限定されないが、0.01〜1mol/L程度が好ましく、0.05〜0.5mol/L程度がより好ましい。
上記の四級アンモニウム塩を含む溶液に、ポリチオフェン膜を形成した基体を浸漬し、電解処理を行う。このとき、第一電極2を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解するのが好ましい。
上記重合時の電位範囲は、ポリチオフェンの過酸化電位以上の電位で電解重合を行うと好ましい。詳細には、ポリチオフェンの過酸化電位は2.0V付近であるため、これ以上の電位とすることによってポリチオフェンの導電膜が過酸化されて非共役化される。その結果、還元膜を形成することができる。より詳細には、ポリチオフェンを非共役化させるための電解処理において、保持電圧は、2.0〜3.0であることが好ましく、2.0〜2.5Vであることがより好ましい。
上記のように電解重合を行うことにより、導電性高分子の構築材料(モノマーまたはオリゴマー)から、まず、導電性高分子が形成され、次に、当該導電性高分子が非共役化されて還元膜が形成される。
(3)増感色素による半導体の増感処理
増感色素による半導体の増感処理は、例えば、増感色素を適切な溶媒に溶解し、当該溶液中によく乾燥させた半導体層(還元膜を含む)を長時間浸漬することによって行われる。当該増感処理によって、増感色素が半導体に吸着されうる。この際、半導体層が多孔質構造を有する場合には、浸漬前に減圧処理、加熱処理等の前処理を行い、膜中の気泡や空隙中の水分を除去することが好ましい。当該前処理によって、増感色素が半導体層内部にも吸着されうる。なお、増感処理は、増感色素含有溶液への半導体層の浸漬に限定されず、その他の公知の増感処理方法も適宜適用することができる。また、この増感色素による半導体の増感処理は還元膜の形成前でも良い。
増感処理条件は特に制限はないが、増感色素が半導体層に深く進入して吸着等が充分に進行できるような条件に設定することが好ましい。例えば、溶液中における増感色素の分解および分解物の半導体層への吸着を防止する観点から、増感処理の温度は、5〜100℃であることが好ましく、25〜80℃であることがより好ましい。また、増感処理の時間は、15分〜20時間であることが好ましく、3〜24時間であることがより好ましい。特に、室温(25℃)で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましいが、設定する温度によって増感処理の時間は適宜変更してもよい。また、増感処理の時間の短縮および半導体層の深部まで吸着させる観点から、減圧下または真空下で増感処理を行ってもよい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができかつ半導体を溶解させたり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、溶媒をあらかじめ脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび塩化メチレン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒を用いることが好ましい。
増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の増感色素を用いる場合に、増感処理方法は、特に限定されず、各増感色素の混合溶液に半導体層を浸漬してもよいし、各増感色素を別々の溶液として準備し、順次に半導体層を浸漬してもよい。各増感色素について別々の溶液を用意し、半導体層を各溶液に順に浸漬させる場合は、半導体層に前記増感色素を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。
半導体層において、半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルであることが好ましく、0.1〜50ミリモルであることがさらに好ましく、0.5〜20ミリモルであることが特に好ましい。
[電荷輸送層]
電荷輸送層は、光吸収することにより電子を半導体に注入した後に生成する増感色素の酸化体を迅速に還元し、増感色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層であり、p型半導体により形成されると好ましい。
本発明に係る電荷輸送層の材料としては、特に制限されず、例えば、レドックス電解質の分散物:芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体等の固体の正孔輸送材料(電荷輸送材料)が挙げられる。ただし、正孔輸送材料の流出・散逸を防ぐという観点から、前記電荷輸送層は固体の正孔輸送材料を含むことが好ましい。さらに、可視光の透過性、十分な導電性などの観点から、電荷輸送層は、導電性高分子を含むことが好ましい。特に、電荷輸送層に含まれる導電性高分子は、上記の還元膜を形成するための導電性高分子であると好ましい。かような態様によれば、光電変換素子を製造するための材料の種類を削減できるほか、電気的特性をより向上させることができる。
以下、レドックス電解質の分散物、芳香族アミン誘導体、およびチオフェン誘導体を詳細に説明する。
レドックス電解質としては、I/I 系や、Br/Br 系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I 系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素とを混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
前記芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
前記チオフェン誘導体は、下記式(4)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物(以下、単に「重合体」とも称する)であることが好ましい。かような重合体は導電性高分子となり、可視光の透過性に優れ、かつ充分な導電性を有する。
上記式(4)中、
およびYは、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR21基、−SR22基、−SeR23基、または−TeR24基を表わす。なお、YおよびYは、同一であってもまたは異なるものであってもよい。R21〜R24は、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。ここで、YおよびYは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては特に制限されず、上記式(3C)中のLの直鎖もしくは分岐状のアルキル基の例示と同様の例示が挙げられる。
炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基としては特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−エチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチルブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−エチル−2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−(n−ブチル)−2−プロペニル基、1−(2−プロペニル)−3−ブテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基、7−オクテニル基、1−メチル−2−ヘプテニル基、2,7−オクタジエニル基、1,1−ジ(2−プロペニル)エチル基、2−ノネニル基、2,6−ノナジエニル基、3,7−ジメチル−6−オクテニル基、1−デセニル基、2−デセニル基、9−デセニル基、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル基、2−ウンデセニル基、2,4−ウンデカジエニル基、7−テトラデセニル基、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル基、1,5,9−トリメチル1−ビニル−4,8−デカジエニル基、3,7,11,15−テトラメチル−2−ヘキサデセニル基、または3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14−ヘキサドデカテトラエニル基等が挙げられる。
21〜R24としては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記YおよびYとしての、炭素数6〜24のアリール基は特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、フルオレニル基がより好ましい。
、YおよびR21〜R24において、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素数6〜24のアリール基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜32のアシル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、アミノ基、および炭素数2〜24のヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記式(4)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、電荷輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記式(4)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記式(4)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記式(4)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記式(4)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記式(4)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。ここで「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。
本発明に使用される重合体は、上記式(4)で表される一種または二種以上の化合物またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記式(4)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記式(4)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用できる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2−7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマー(H2−1)の製造方法の好ましい例を記載する。ただし、本発明は、下記好ましい例に限定されるわけではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
[3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマーの合成]
撹拌装置、温度計、および還流冷却管を装着した1000mLのガラス製三口フラスコに、無水テトラヒドロフラン 750mL、および3,4−エチレンジオキシチオフェン 25g(0.15mol)を添加し、窒素気流下で撹拌しながらアセトン/ドライアイス浴中で内温が−70℃となるまで冷却する。この後、1.6mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液 113mL(0.18mol)をシリンジで5分間かけて反応系に滴下する。25分後、無水塩化銅 23.5g(0.17mol)を添加し、そのまま3時間程度撹拌しながら反応させる。反応液を水10Lに添加し、生成物を濾過した後、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:塩化メチレン)により精製することにより、EDOTダイマー 17.9g(収率:約72%)を黄白色結晶として得た。
(重合体の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射とを組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま固体の電荷輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記式(4)で表される単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネート、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。なお、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
電荷輸送層に添加しうる他の添加剤としては、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBF、H[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極2および光電変換層6を形成した基体1をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する。電解重合溶液中の前記単量体またはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.05〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが好ましく、1mA/cm〜500mA/cmの範囲であることがより好ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。また、当該電解重合に光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用してもよい。照射する光の波長は350〜800nmであることが好ましい。なお、光源としてはキセノンランプを用いることが好ましい。また、光の強度は、1〜100mW/cmであることが好ましく、1〜50mW/cmであることがより好ましい。このように光照射を行いながら電解重合を行うことにより、光電変換層(半導体層)の表面に緻密に重合体の層を形成できる。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された固体の電荷輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、式(4)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体電荷輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体の電荷輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記式(4)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、固体の電荷輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、上記式(4)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する固体電荷輸送層形成用溶液が用いられる。固体電荷輸送層形成用溶液の溶媒としては、電解重合溶液の溶剤として例示したものを使用することができる。
固体電荷輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる式(4)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記固体電荷輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電変換層を前記固体電荷輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる上記式(4)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体電荷輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
固体の電荷輸送層中の式(4)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。電荷(正孔)輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と有機塩基とを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。この際、支持電解質は、上記電荷輸送層作製時の電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の支持電解質が使用できる。支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、電解重合溶液中の支持電解質と、電荷再結合防止のための支持電解質とは、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶液中の支持電解質の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜30mmol/L程度がより好ましい。また、有機塩基としては、特に制限されないが、4−tert−ブチルピリジン、ルチジン等が挙げられる。有機塩基は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶液中の有機塩基の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜60mmol/L程度がより好ましい。溶媒は、上記電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の溶媒が使用できる。なお、電解重合溶液中の溶媒と、電荷再結合防止のための溶媒とは、同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体の電荷輸送層(正孔輸送層)の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、式(4)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、式(4)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するためには、本発明に使用される重合体のイオン化ポテンシャルは、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルよりも小さいことが好ましい。重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、固体電荷輸送層としては1.0以下の吸光度が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい電荷(正孔)輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、固体の電荷輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。
[第二電極]
第二電極は、電荷輸送層(正孔輸送層)と接して配置され、任意の導電性材料で構成されうる。絶縁性の物質でも、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用することができる。第二電極は、素子の電気抵抗を低減する等の観点から、電荷輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第二電極は、電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム、ロジウム、ルテニウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。好ましくは金などの金属薄膜である。
また、第二電極の厚みは、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗値は、特に制限されず、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値は、80Ω/cm以下であることが好ましく、20Ω/cm以下であることがより好ましい。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
以上のような構成を有する光電変換素子は、基体の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の半導体層に担持された増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は、半導体に注入され、その後第一電極に移動する。第一電極に移動した電子は、外部回路を通じて第二電極に移動し、電荷輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、電荷輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光が電気に変換される。
<太陽電池>
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用することができる。したがって、本発明は、上述の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本発明に係る光電変換素子は、色素増感型の太陽電池(セル)として用いられうる。すなわち、本発明に係る太陽電池は、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(本発明に係る光電変換素子)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうちの一方は、前述の光電変換素子の基体となる。一対の保護部材は両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明に係る太陽電池の構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基体に複数の電荷輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および電荷輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本発明に係る太陽電池に、太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、電荷輸送層の電荷輸送材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から電荷輸送層の電荷輸送材料を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層の電荷輸送材料は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
〔光電変換素子の作製〕
(実施例1)
<光電変換層>
(1)半導体層(多孔質層)
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(日本板硝子株式会社製、15mm×25mm;以下、「FTOガラス基板」とも称する。)を第一電極(導電性支持体)とした。この基板上に、二酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10%アセチルアセトン水に分散)を、FTOガラス基板上ヘスクリーン印刷法(塗布面積25mm(5mm×5mm))により塗布した。塗布後、200℃で10分間および500℃で15分間焼成を行い、厚さ2.5μmの二酸化チタン薄膜(二酸化チタン層)を得た。
(2)還元膜
上記二酸化チタン薄膜が形成された第一電極を、電解重合溶液に浸漬した。この電解重合溶液は、ピロール系高分子を構築するための1−アミノピロール(東京化成工業株式会社製 下記の条件で過酸化電位0.8V以上)を0.25mol/Lの濃度、NaHCO(関東化学株式会社製)を0.05mol/Lの濃度で含有する水溶液(電解重合溶液 pH=8.5)である。作用極を上記第一電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgCl 0.01M)、保持電圧を1.8Vとして電解重合を行い、電流値が初期値の10%となった時点で終了させた。上記手順を経ることにより、第一電極上であり、かつ、この第一電極と半導体とが接していない領域において還元膜(部分絶縁膜)を形成した。その後、半導体層および還元膜を有するFTOガラス基板を水で洗浄して乾燥させた。なお、ここで得られた還元膜は、溶媒には不溶の重合膜となっていた。
(3)色素吸着
下記D−38:
をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒(体積比)に溶解し、5×10−4mol/Lの濃度とした。上記の半導体層および還元膜を有するFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極(光電変換層)とした。
<電荷輸送層(正孔輸送層)>
3,4−ethylenedioxythiophene(EDOT)の二量体であるBis−EDOT(Kairon Kem社製;K192)と、Li[(CFSON](関東化学株式会社製)とを、それぞれ1×10−3mol/L、0.05mol/Lの濃度となるように、アセトニトリルに溶解した。その後、色素を担持させた半導体電極を、Bis−EDOTと、Li[(CFSON]を溶解したアセトニトリル溶液に浸漬した。
作用極を上記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。
FTO基板の半導体層(二酸化チタン層)方向から、光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面における光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)、積算電荷量4mCとなるまで保持することによってBis−EDOTを重合し、電荷輸送剤であるPEDOTを有する電荷輸送層を、二酸化チタン層の表面に形成した。得られた半導体電極/PEDOTを有する電荷輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られた電荷輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
<後処理>
Li[(CFSON]と、t−ブチルピリジンとを、それぞれ15×10−3mol/L、50×10−3mol/Lの濃度となるように、アセトニトリルに溶解した。このアセトニトリル溶液に、上記で得られたFTOガラス基板を10分間浸漬した。その後、半導体電極/電荷輸送層の積層体を自然乾燥し、その後、さらに真空蒸着法により、蒸着速度0.5〜1nm/秒で、金を60nmの厚みで蒸着し、第二電極を形成し、本発明の光電変換素子SC−1を得た。
(実施例2)
還元膜を作製する際、電解重合溶液に含まれる1−アミノピロールに代えて、ピロール(東京化成工業株式会社製 下記の条件で過酸化電位0.8V以上)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、光電変換素子SC−2を作製した。
(実施例3)
還元膜の作製方法を下記のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、光電変換素子SC−3を作製した。
上記二酸化チタン薄膜が形成された第一電極を、電解重合溶液に浸漬した。この電解重合溶液は、チオフェン系高分子を構築するためのチオフェン(東京化成工業株式会社製)を0.05mol/Lの濃度、Li[(CFSON](関東化学株式会社製)を0.05mol/Lの濃度で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)である。作用極を上記第一電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgCl 0.01M)、保持電圧を1.5Vとして電解重合を行い、積算電荷量を8.1mC/cmとした。次に、この電極に1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(Aldrich社製)を0.05mol/Lの濃度で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。作用極を上記電極(すなわち、ポリチオフェン薄膜を有する電極)、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を2.0Vとし、電流値が初期値の10%となった時点で終了させた。上記手順を経ることにより、第一電極上であり、かつ、この第一電極と半導体とが接していない領域において還元膜(部分絶縁膜)を形成した。得られた酸化チタンが形成された第一電極/部分絶縁層の混合体を水で洗浄、乾燥した。なお、ここで得られた還元膜は、溶媒には不溶の重合膜となっていた。
(比較例1)
光電変換層に含まれる還元膜の作製において、下記のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、光電変換素子SC−R1を作製した。
酸化チタン薄膜が形成された第一電極を、電解重合溶液に浸漬した。この電解重合溶液は、チオシアヌル酸(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、東京化成工業株式会社製)を1×10−3mol/Lの濃度、LiClO(東京化成工業株式会社製)を0.1mol/Lの濃度で含有する水溶液(電解重合溶液)である。作用極を上記第一電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgCl 0.01M)、保持電圧を1.7Vとして電解重合を行い、電流値が初期値の10%となった時点で終了させた。上記手順を経ることにより、第一電極上であり、かつこの第一電極と半導体とが接していない領域において比較例1の絶縁膜(部分絶縁膜)を形成した。その後、半導体層および絶縁膜を有するFTOガラス基板を水で洗浄して乾燥させた。なお、上記手順で得られた絶縁膜は、メルカプト基に由来するジスルフィド結合によって重合した絶縁膜であり、重合時に導電性高分子は形成されず、絶縁膜が形成されている。そして、この絶縁膜は、溶媒には不溶の重合膜となっていた。
(比較例2)
光電変換層の形成時に還元膜を形成せず、代わりに以下のバリア層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、光電変換素子SC−R2を作製した。
<バリア層>
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(日本板硝子株式会社製、15mm×25mm 以下、「FTOガラス基板」とも称する。)を第一電極とした。この基板上に、テトラキスイソプロポキシチタン1.2mLおよびアセチルアセトン0.8mLをエタノール18mLに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜した。その後、上記FTOガラス基板を450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリア層を形成した。
<光電変換層>
(1)半導体層(多孔質層)
上記のバリア層を備えたFTOガラス基板上に、実施例1の半導体層と同様の材料および方法を用いて半導体層を作製し、厚さ2.5μmの二酸化チタン薄膜を得た。
(2)色素吸着
上記のバリア層および半導体層を備えたFTOガラス基板に対し、上記実施例1と同様の材料および方法を用いて色素を吸着させ、半導体電極(光電変換層)を作製した。
〔光電変換素子の評価〕
上記光電変換素子SC−1〜SC−3、およびSC−R1〜SC−R2について、以下の評価を行った。
(光電変換効率の測定)
評価試験は、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。すなわち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて、室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)および形状因子(曲線因子、フィルファクター)FFを求めた。また、測定されたJsc、Voc、FFから下記式Aに従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
変換効率ηとは、光電変換効率ηと同意であり、太陽電池により光エネルギー(W)が電気エネルギー(W)に変換される効率を意味する。光電変換効率(η(%))は、下記式(A)に基づいて算出した。
式(A) η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
(耐久性の評価)
開回路状態で強度100mW/cmのキセノンランプ光を3時間照射した後、上記と同様に電流−電圧特性を測定し、光劣化後の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、光電変換効率(η(%))を求め、下記式により耐久率を求めた。
耐久率=η/η
前記光電変換素子の評価結果を表1に示す。
上記表1より、光電変換層に含まれる絶縁膜が、非共役化された導電性高分子を含む還元膜である場合、光照射に対する耐久性が良好となり、さらに、光電変換効率もまた向上することが示された。
1 基体、
2 第一電極、
3 還元膜、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 電荷輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光、
10 光電変換素子。

Claims (5)

  1. 基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する光電変換素子であって、
    前記光電変換層は、前記第一電極上にあり、かつ該第一電極と前記半導体とが接していない領域に、導電性高分子が非共役化されてなる還元膜を含む、光電変換素子。
  2. 前記導電性高分子は、下記式(1):
    上記式(1)中、Xは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、またはアミノ基(−NX基;XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)を表わし、
    は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX1112基;X11およびX12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
    または下記式(2):
    上記式(2)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、アミノ基(−NX2122基;X21およびX22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のヘテロアリール基である)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、または炭素原子数2〜18のポリエチレンオシキド基を表わす、
    で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記電荷輸送層は、前記導電性高分子を含む、請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記半導体は、酸化チタンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記第一電極および該第一電極上に形成された前記半導体からなる半導体層を、導電性高分子の原料を含む溶液に浸漬し、前記導電性高分子を非共役化させる条件下で、非共役化されてなる還元膜を形成する還元膜形成工程を含む、光電変換素子の製造方法。
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