JP5895698B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子に関する。
近年、環境問題などから、エネルギー源として太陽光エネルギーが注目されており、太陽光エネルギーの光、熱を活用して、利用し易いエネルギー形態である電気エネルギーに変換する方法が実用化されている。中でも、太陽光を電気エネルギーに変換する方法がその代表的なものであり、この方法には光電変換素子が用いられる。光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウムおよびセレン化インジウム銅等の無機系の材料を用いた光電変換素子が広く用いられ、所謂太陽電池に広く利用されている。しかし、これらの無機系の材料を用いた光電変換素子を用いた太陽電池は、材料として用いるシリコンなどが高度な精製過程を経た高純度品である必要がある、多層pn接合構造を有するため、製造工程が複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いなどの問題点があった。
一方、より簡素な素子として有機材料を用いた光電変換素子の研究も進められている。例えば、非特許文献1に記載のような、n型の有機色素であるペリレンテトラカルボン酸誘導体とp型の有機色素である銅フタロシアニンを接合させた、pn接合型の有機光電変換素子が報告されている。有機光電変換素子において、弱点であると考えられている励起子拡散長の短さと空間電荷層の薄さを改良する為に、単に有機薄膜を積層するpn接合部の面積を大きく増大させ、電荷分離に関与する有機色素数を充分に確保しようという試みがその結果を出しつつある。
また、例えば、非特許文献2に記載されるような、n型の電子伝導性の有機材料とp型の正孔伝導性ポリマーを膜中で複合させることによりpn接合部分を飛躍的に増大させて、膜中全体で電荷分離を行う手法がある。Heegerらは、1995年に、p型の導電性ポリマーとしての共役高分子と、電子伝導材料としてのフラーレンとを混合させた光電変換素子を提案している。
これらの光電変換素子は次第にその特性を向上させてはいるが、高い変換効率のまま安定して挙動するところまでには至っていない。
しかし、1991年にGratzelは、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する光電変換素子の作製に成功した(例えば、非特許文献3参照)。
この光電変換素子では、多孔質酸化チタン表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子注入され色素カチオンとなり、対極から正孔輸送層を通じて色素が電子を受け取るというサイクルを繰り返す。正孔輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この光電変換素子は酸化チタンの安定と相まって、優れた再現性を有しており、研究開発の裾野を大きく広げた。この光電変換素子は色素増感型太陽電池と呼ばれて、大きな期待と注目を浴びている。この方式は、酸化チタン等の安価な金属化合物半導体を高純度まで精製する必要がなく、半導体としては安価なものを使用することができ、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できるという利点を有する。
しかし、光電変換層の色素として資源的制約があるルテニウム錯体を用いるため、高価なルテニウム錯体を用いる必要があることや、経時での安定性が充分でないなどの問題がある。また、更なる問題点として、色素増感型太陽電池は先述のとおり電解液を用いて動作するために、電解液やヨウ素の保持や流出・散逸を防ぐ別の機構が必要となるなどの問題点を有していた。
このような電解液の溶出問題を回避すべく、全固体色素増感型太陽電池の開発も進んでいる。例えば、非特許文献4に記載のアモルファス性有機正孔移動剤を用いたものや、非特許文献5に記載の正孔移動剤にヨウ化銅を用いたものなどが知られている。しかし、これらの正孔移動剤は伝導度が低いため未だ充分な光電変換効率を与えるには至っていない。
さらに、伝導度の比較的高い正孔移動剤としてはポリチオフェン系材料が代表例として挙げられ、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を正孔移動剤として用いた全固体色素増感型太陽電池が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献6参照)。しかしながら、PEDOTは可視光領域(400〜700nm)に吸収を有するため、色素の光吸収に対して損失を生じ、光電変換効率はまだ充分なものではなかった。
これに対して、非特許文献7に記載のPEDOT置換体を用いると伝導度を保ちつつ可視光領域の吸収が低減したことが報告されており、これらのPEDOT置換体を正孔移動剤として用いた全固体色素増感型太陽電池も報告されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、太陽電池の低コスト化を図るべく、ルテニウム錯体に代えて有機色素を用いた色素増感型太陽電池の開発も進められている。例えば、チオフェン骨格を有するメチン系の有機色素(特許文献3)や、繰り返し数が5以上のポリチオフェン骨格を有する有機色素(特許文献4)などを用いたものが報告されている。
特開2003−317814号公報 特開2000−106223号公報 国際公開第04/082061号 特開2005−135656号公報
C.W.Tang:Applied Physics Letters, 48, 183(1986) G.Yu, J.Gao, J.C.Humelen, F.Wudl and A.J.Heeger: Science, 270, 1789(1996) B.O’Regan and M.Gratzel: Nature, 353, 737(1991) U.Bach, D.Lupo, P.Comte, J.E.Moser, F.Weissortel, J.Salbeck, H.Spreitzer and M.Gratzel, Nature, 395, 583(1998) G.R.A.Kumara, S.Kaneko, M.kuya,A.Konno and K.Tennakone: Key Engineering Materals, 119, 228(2002) J.Xia, N.Masaki, M.Lira−Cantu, Y.Kim, K.Jiang and S. Yanagida: Journal of the American Chemical Society, 130, 1258(2008) L.Groenendaal, G.Zotti and F.Joans, Synthetic Metals, 118, 105(2001)
PEDOTやPEDOT置換体等を用いた固体正孔輸送層は、電気、光、熱等のエネルギーを加えることにより形成される。固体正孔輸送層を用いた光電変換素子において、特許文献3や特許文献4に記載されるような有機色素を用いた場合には、この固体正孔輸送層を形成する際に使用される電気、光、熱等のエネルギーや、経時劣化に起因して、有機色素が半導体から脱離してしまい、その結果、変換効率の低下や寿命の低下が生じるという問題があった。特に、正孔輸送層の伝導度が大きいほどこの傾向は顕著であり、特許文献2や非特許文献7に記載されるような伝導度が大きい正孔輸送層を用いた場合には、特許文献3や特許文献4に記載されるような、シアノ基、カルボニル基等を含む低コストの有機色素を用いることは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、固体正孔輸送層を使用することにより電解質の溶出を防止しつつ、半導体からの色素の脱離が防止され、光電変換効率および光電変換機能の安定性に優れる全固体色素増感型の光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する増感色素を光電変換素子に適用することにより、光電変換素子の光電変換効率および耐久性が有意に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明により、光電変換効率に優れ、かつ、高い耐久性を有する光電変換素子を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に表す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の第一は、基体、第一電極、増感色素が担持された半導体を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、および第二電極を有する光電変換素子であって、前記増感色素は、下記一般式(1):
上記一般式(1)中、Dは、発色団を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表し、Tは、互いに独立であって、ハロゲン原子、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、および複素環基からなる群から選択される少なくとも一種であり、iは、0〜5の整数を表し、Wは、電子吸引性基を表し、nは、1または2である;で表される色素化合物を含み、
前記固体正孔輸送層は、下記一般式(2):
上記一般式(2)中、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基、−OR11基、−SR12基、−SeR13基、または−TeR14基であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子または置換されたまたは非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、XおよびXが互いに結合して縮合環を形成するか、または、XおよびXが互いに連結しない;で表される化合物を重合して形成される重合物、または、上記一般式(2)で表される化合物の多量体を重合して形成される重合物を含む、光電変換素子である。
本発明に係る光電変換素子は、基体、第一電極、増感色素が担持された半導体を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、および第二電極を含み、前記増感色素が、上記一般式(1)で表される化合物(以下、単に「増感色素」とも称する)を含み、正孔輸送層が上記一般式(2)で表される化合物を重合して形成される重合物、または、上記一般式(2)で表される化合物の多量体を重合して形成される重合物を含む固体正孔輸送層である点に特徴を有する。すなわち、本発明では増感色素として、上記一般式(1)で表されるようにリン酸構造を有し、正孔輸送層が固体正孔輸送層であることを特徴とする。色素増感型太陽電池に含まれる色素として、カルボキシル基が半導体へ結合、または配位する色素が広く普及しているが、かような色素は、固体正孔輸送層を製造する際に加えられるエネルギーや、経時劣化による分解、または半導体からの脱離が問題となる。これに対し、本発明の増感色素は、ホスホン酸基[−PO(OH)]によって半導体に保持されることから、カルボキシル基によって半導体に保持される色素が脱離等をする条件であっても、半導体に対して安定に保持される。その結果、本発明の増感色素を含む光電変換素子は、耐久性、安定性が向上する。よって、一般式(1)で表される特定の構造を有する増感色素を用いることにより、光電変換効率に優れ、かつ、高い耐久性を有する光電変換素子とすることができる。以下、本発明を詳細に説明する。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子を模式的に表す断面図である。図1に示すように、光電変換素子10は、基体1、第一電極2、バリア層3、光電変換層6、正孔輸送層7、および第二電極8が順次積層されてなる構成を有する。ここで、光電変換層6は、半導体5および増感色素4を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリア層3を有することが好ましい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、第一電極2を形成した基体1上に、バリア層3を形成した後、バリア層3上に半導体5からなる半導体層を形成し、その半導体表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に正孔輸送層7を形成する。この際、正孔輸送層7は、増感色素4を担持した半導体5からなる光電変換層6に侵入し、かつ、その上に存在している。そして、正孔輸送層7の上に第二電極8を形成する。第一電極2および第二電極8に端子を付けることにより電流を取り出すことができる。以下、本発明の光電変換素子の各部材について説明する。
[基体]
基体は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。基体側から光が入射する場合、基体はこの光を透過させることが可能な、すなわち、光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。具体的には、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率を意味するものとする。
基体としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基体の材料としては、剛性を有する基体、および可撓性を有する基体を用いることができる。剛性を有する基体と可撓性を有する基体を組み合わせて用いてもよい。
剛性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ガラス板およびアクリル板が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点からガラス板を用いることが好ましい。剛性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、0.1〜100mmが好ましく、0.5〜10mmがより好ましい。
一方、可撓性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィン類樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム;ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム;ポリスルホン(PSF)樹脂フィルム;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂フィルム;ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルムが挙げられる。特に、太陽光エネルギーを利用することを考慮し、可視領域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムを基体として用いることが好ましい。当該樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、およびポリカーボネートフィルム等が挙げられ、これらのうち、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが好ましい。なお、可撓性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
上記基体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理や易接着層を設けてもよい。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理により表面処理を行うことができる。また、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、およびエポキシ系共重合体等を易接着層として使用することができる。
[第一電極]
第一電極は、基体と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基体の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極は、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。
第一電極を構成する材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、金属およびその酸化物、並びにSn、Sb、FおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含む複合(ドープ)材料を用いることができる。前記金属としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、およびインジウム等が挙げられ、金属酸化物としては、SnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、およびCdIn等が挙げられ、複合(ドープ)材料としては、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等が挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
第一電極を形成する材料の基体への塗布量は、特に制限されないが、基体1m当たり、1〜100g程度であることが好ましい。なお、本明細書では、基体とその上に形成された第一電極との積層体を「導電性支持体」とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。導電性支持体の表面抵抗値としては、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値が500Ω/cm以下であることが好ましく、10Ω/cm以下であることがより好ましい。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
[バリア層]
バリア層は、受光により発生し、正孔輸送層に注入されたホールと、第一電極の電子との再結合である短絡を防止する観点などから、設けられる任意の構成要素である。バリア層は、第一電極と後述する光電変換層との間に、膜状(層状)に配置されうる。
バリア層の構成材料としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。なかでも光電変換層の半導体材料と同等の電気伝導性を有するものであることが好ましい。具体的には、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウム等の金属またはこれらの酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウム等のペロブスカイトまたはこれらの複合酸化物もしくは酸化物混合物;CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BN等の金属化合物が挙げられる。これらの材料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送層がp型半導体であり、バリア層に金属を使用する場合には、当該バリア層には、正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、当該バリア層には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ、伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。用いる酸化物を選択することにより、多孔質半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることも可能である。中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリア層は、後述する光電変換層中の半導体層とともに、多孔質であることが好ましい。この場合、バリア層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/C値が、1.1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。一方、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。
当該D/C値を上記の値とするために、バリア層の空孔率Cは、20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。すなわち、バリア層は、緻密層(緻密な多孔質状)であることが好ましい。これにより、バリア層が短絡防止効果を有効に発揮することができる。ここで、バリア層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、短絡防止効果を発揮することができる膜厚であれば特に制限はない。具体的には、0.01〜10μmであることが好ましく、0.03〜0.5μmであることがより好ましい。
[光電変換層]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。本発明において、光電変換層は半導体および増感色素を必須に含む。より詳しくは、当該光電変換層は、半導体を含有する半導体層に増感色素が担持された構成を有する。
(半導体)
半導体層に用いられる半導体の材料としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等が使用されうる。金属のカルコゲニドの具体例としては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物;カドミウムまたは鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物等が挙げられる。また、その他の半導体の材料としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物;銅−インジウムの硫化物;チタンの窒化物等が挙げられる。より詳細には、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられる。これらのうち、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、またはPbSを用いることが好ましく、TiOまたはNbを用いることがより好ましく、TiO(酸化チタン)を用いることが特に好ましい。これらの材料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせた形態としては、例えば、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合する形態、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化スズの複合の形態等が挙げられる。なお、金属酸化物または金属硫化物に、その他の半導体材料を組み合わせて使用する場合には、当該その他の半導体材料は、金属酸化物または金属硫化物半導体に対する質量比が30%以下であることが好ましい。
半導体の形状としては、特に制限されず、球状、柱状、管状等の任意の形状を有しうる。半導体の大きさもまた、特に制限されず、例えば、半導体が球状である場合には、半導体の平均粒径が1〜5000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましい。なお、上記半導体の「平均粒径」とは、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察したときの1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)を意味する。
上記半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。表面処理に用いられる有機塩基としては、特に制限はなく、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられる。これらのうち、ピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンを用いて表面処理することが好ましい。表面処理方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、当該方法は、当業者が必要に応じて適宜変更することができる。例えば、半導体を表面処理方法の一例として、有機塩基を含む溶液(有機塩基溶液)を準備し、半導体を有機塩基溶液に浸漬する方法が例示される。
(増感色素)
増感色素は、光照射時、光励起され起電力を生じる機能を有する。当該増感色素は、後述の半導体の増感処理により半導体に担持される。本発明では、増感色素として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることを特徴とする。
上記一般式(1)中、Dは、発色団を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表し、Tは、互いに独立であって、ハロゲン原子、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、および複素環基からなる群から選択される少なくとも一種であり、iは、0〜5の整数を表し、Wは、電子吸引性基を表し、nは、1または2である。なお、上記一般式(1)中、ホスホン酸基が結合した炭素−炭素原子数二重結合について、シス体、トランス体のどちらでもよい。
本発明に係る増感色素は、上記一般式(1)においてDで表される発色団に対し、Lで示される単結合または連結基と、ビニレン基とを介して、ホスホン酸基[−PO(OH)]および電子吸引性基を含む点に特徴を有する。当該増感色素を含む光電変換層では、半導体に対して増感色素が安定して保持され、増感色素の脱離を抑制することができる。その結果、当該増感色素を有する光電変換素子は、光電変換効率が向上し、耐久性が向上する。
≪発色団D≫
上記一般式(1)中、Dは、発色団を表し、L、T以外の構造とともに全体として色素を構成するのに必要な原子群を示す。発色団Dの例としては、特に限定されないが、アクリジン、キサンテン、チオキサンテンなどを含むジアリールメチン;トリアリールメチン;インドアニリン、インドフェノールなどを含むジアリールアミン;トリアリールアミン;クマリン、ジアジン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、ビピリジル、ターピリジル、テトラピリジル、キナクリドン、フェナントロリンなどの複素環化合物;ペリレンなどの多環芳香族炭化水素等の骨格を有するものが挙げられる。発色団Dは、その最大吸収波長が240〜800nmの範囲にあると好ましく、250〜600nmの範囲にあるとより好ましい。
発色団Dは、窒素原子を含む構造であるか、または、オリゴチオフェンを含む構造であると好ましい。より詳細には、発色団Dは、下記一般式(3):
上記一般式(3)中、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択され、R、R、Rの少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成するか、もしくは、R、R、R同士が互いに連結しない;で表される発色団の残基であるか、または、前記Lであって2価の連結基であるとより好ましい。
なお、「置換された」とは、R、R、Rにおける少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜40の複素環基、アミノ基(−NR’R’’、ここで、R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、エステル基(−COOR’’’、ここで、R’’’は、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、カルボキシル基、ニトロ基またはシアノ基で置換されたことを意味する。なお、本明細書中、特別な記載がない限り、「置換された」とは、ある化学構造において、少なくとも一つの水素原子が上記置換基により置換されたことを意味するものとする。
また、「残基」とは、ある分子が少なくとも2つの他の分子と直接化学結合する際に、当該ある分子中において少なくとも2つの水素原子を除いた基をいい、いわゆるジイル基である。例えば、H−V−Hで表される化合物から水素原子が解離し、−V−の形になった基をいう。そのため、一般式(1)においては、発色団Dは、置換基であるTとi個直接化学結合しており、かつ連結基であるLとn個直接化学結合している。したがって、一般式(1)中における−D−は、発色団分子であるDからi+n個の水素原子が除かれた基であり、これを発色団の残基と称している。なお、本明細書中、特別な記載がない限り、「残基」とは、ある化学構造が少なくとも2つの他の分子と直接化学結合する際に、当該ある化学構造中において少なくとも2つの水素原子を除いた基をいい、いわゆるジイル基を意味するものとする。
上記R、R、Rは、少なくとも1つが炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基を含んでいると好ましく、2つ以上であるとさらに好ましく、3つすべてが上記芳香族炭化水素基を含んでいると特に好ましい。また、R、R、Rのうち、2つが上記芳香族炭化水素基である場合、残りのR(例えば、R、Rが芳香族炭化水素基である場合のR)は、アルキル基であると好ましい。さらに、R、R、Rは、少なくとも2つが同じ構造を有していると好ましい。
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であって、炭素原子数1〜20のもの(環状の場合は炭素原子数3〜20のもの)が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−アミル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、4−メチルペンチル基、4−メチルペンタン−2−イル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−(n−プロピル)ブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキサン−2−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、1,1−ジメチルペンタン−1−イル基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イル基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−メチルヘプタン−2−イル基、3−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ノニル基、1−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−(n−ブチル)ペンチル基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、1,1,5−トリメチルヘキシル基、2−メチルオクタン−3−イル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−(n−ブチル)ヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、n−ドデシル基、1−メチルウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、1−メチルトリデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などの直鎖状のアルキル基、また、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロエイコシル基などの環状のアルキル基が挙げられる。また、置換されたアルキル基として、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数1〜5の非置換のアルキル基が好ましく、特に、エチル基、シクロペンチル基が好ましい。
上記アルケニル基としては、例えば、前記した炭素原子数2以上のアルキル基に1個以上の二重結合を有するものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。また、置換されたアルケニル基として、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、前記した炭素原子数2以上のアルキル基に1個以上の三重結合を有するものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状のアルキニル基であって、炭素原子数2〜4のものが好ましく、特に、エチニル基が好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、オクタレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、アントリル基、アセナフチレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、アントラセニル基、メチルアントラセニル基、9,10−[1,2]ベンゼノアントラセニル基、フェナントリル基、1H−トリンデニル基、フルオランテニル基、ピレニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサヘリセニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オクタフェニル基、オクタセニル基、ノナフェニル基、ノナセニル基、などが挙げられる。また、置換された芳香族炭化水素基としては、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−スチリルフェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−(1,4−ジフェニル)ナフチル基)、2−(1,4−ジフェニル)アントリル基)、2−(9,10−ジフェニル)アントリル基等が挙げられる。これらの中でも、特に、炭素原子数6〜20のものが好ましく、特に、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−スチリルフェニル基が好ましい。
上記複素環基としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1〜3個含む、飽和または不飽和の環式化合物から誘導される1価の基が挙げられ、これらのうち、不飽和の環式化合物から誘導される基、すなわち不飽和複素環基が好ましい。好ましい不飽和複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
上記R、R、Rは、少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成してもよい。このとき、縮合環を有する発色団Dの構造としては、下記の一般式(6)または一般式(7)で表される構造であると好ましい。
上記一般式(6)中、Zは、単結合または複素環を形成するために必要な原子群を表す。すなわち、上記一般式(6)中、Zは、ベンゼン環と縮合し、複素環が縮合した芳香族炭化水素を形成するために必要な原子群を表す。
単結合以外のZの例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基、ジヘキシルメチレン基、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;シリレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子などが挙げられる。Zの好ましい態様としては、単結合、硫黄原子である。すなわち、一般式(6)において、カルバゾール骨格、フェノチアジン骨格を有していると好ましい。また、このとき、上記Rは、炭素原子数1〜5のアルキル基であると好ましく、エチル基であると特に好ましい。
また、上記一般式(6)中、aおよびbは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、a=b=0が好ましいが、aおよびbがそれぞれ1以上のとき、R1a、R3bは、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜40の複素環基、アミノ基(−NR’R’’、ここで、R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、エステル基(−COOR’’’、ここで、R’’’は、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、カルボキシル基、ニトロ基またはシアノ基からなる群から選択される。
上記一般式(7)中、R21は、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキレン基、炭素原子数1〜20のアルケニレン基、炭素原子数1〜20のアルキニレン基を表し、Zは、単結合または複素環を形成するために必要な原子群を表す。すなわち、上記一般式(7)中、Zは、ベンゼン環と縮合し、複素環が縮合した芳香族炭化水素を形成するために必要な原子群を表す。また、単結合以外のZの例としては、上記Zと同様の例示が挙げられるが、Zの好ましい態様としては、単結合である。また、このとき、上記R21は、炭素原子数1〜5のアルキレン基であると好ましく、シクロペンテニレン基であると特に好ましい。すなわち、一般式(7)において、インドリン骨格を有していると好ましい。
また、上記一般式(7)中、cは、0〜5の整数であり、dは、0〜4の整数であり、c=d=0が好ましいが、cおよびdがそれぞれ1以上のとき、R1c、R3dは、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜40の複素環基、アミノ基(−NR’R’’、ここで、R’およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、エステル基(−COOR’’’、ここで、R’’’は、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基である)、カルボキシル基、ニトロ基またはシアノ基からなる群から選択される。
このとき、c=1、d=0であると好ましく、このとき、R1cは、炭素原子数2〜14の不飽和炭化水素基であると好ましく、置換されたビニル基であるとさらに好ましく、2,2−ジフェニルビニル基であると特に好ましい。
さらに、上記一般式(1)中の発色団Dは、上記一般式(3)の発色団Dの一部を繰り返し単位として、多量化したものであってもよい。具体的には、上記一般式(3)中、−NRの部分構造を二つ以上有する構成であってもよい。さらに具体的には、以下に示す構造であると好ましい。
さらにまた、上記一般式(1)中の発色団Dは、2価の連結基Lを兼ねていてもよく、このとき、前記Lは、チエニレン基の2〜10量体であるオリゴチエニレン基であると好ましく、2〜5量体であるオリゴチエニレン基であるとより好ましい。特に好ましくは、テトラチエニレン基である。
以下に本発明の一般式(1)で表される色素化合物中に含まれる発色団Dの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪連結基L≫
上記一般式(1)中、Lは、単結合または2価の連結基を表す。連結基は、2価の有機残基であり、置換されたまたは非置換の、2価の炭素原子数2〜20の不飽和炭化水素残基、炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素残基、炭素原子数3〜30の複素環残基からなる群から選択される少なくとも一種であるか、またはこれらの組み合わせであってもよい。
2価の不飽和炭化水素残基としては、例えば、置換されたまたは非置換のアルケニレン基、置換されたまたは非置換のアルキニレン基が挙げられ、特にこれらのうち、置換されたまたは非置換の炭素原子数2〜10のアルケニレン基、置換されたまたは非置換の炭素原子数2〜10のアルキニレン基が好ましい。
2価の芳香族炭化水素残基としては、炭素原子数6〜12の芳香族炭化水素残基が好ましい。
2価の複素環残基としては、炭素原子数4〜16の複素環残基が好ましい。
さらに、連結基は、上記アルケニレン基、上記アルキニレン基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素残基および炭素原子数3〜20の複素環残基からなる群から選択される少なくとも一種、またはこれらの組み合わせであると好ましい。
すなわち、上記一般式(1)で表される色素化合物は、下記一般式(4):
上記一般式(4)中、Arは、互いに独立であって、置換されたまたは非置換の、炭素原子数2〜10のアルケニレン基、炭素原子数2〜10のアルキニレン基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素残基および炭素原子数3〜20の複素環残基からなる群から選択される少なくとも一種であり、kは、0〜8の整数を表す;で表される色素化合物であると好適である。なお、ArとArk+1は、それぞれ独立であり、kは、0〜5であると好ましい。kが2以上であるとき、ArとArk+1は、互いに同じ構造であると好ましい。
上記アルケニレン基の具体的な例としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、3−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、3−ペンテニレン基、4−ペンテニレン基、4−メチル−3−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基、4−ヘキセニレン基、5−ヘキセニレン基、1−ヘプテニレン基、2−ヘプテニレン基、3−ヘプテニレン基、4−ヘプテニレン基、5−ヘプテニレン基、6−ヘプテニレン基、1−オクテニレン基、2−オクテニレン基、3−オクテニレン基、4−オクテニレン基、5−オクテニレン基、6−オクテニレン基、7−オクテニレン基、1−ノネニレン基、2−ノネニレン基、3−ノネニレン基、4−ノネニレン基、5−ノネニレン基、6−ノネニレン基、7−ノネニレン基、8−ノネニレン基、1−デセニレン基、2−デセニレン基、3−デセニレン基、4−デセニレン基、5−デセニレン基、6−デセニレン基、7−デセニレン基、8−デセニレン基、または9−デセニレン基などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ビニレン基である。
上記アルキニレン基の具体的な例としては、例えば、エチニレン基、1−プロピニレン基、2−プロピニレン基、1−ブチニレン基、2−ブチニレン基、3−ブチニレン基、1−ペンチニレン基、2−ペンチニレン基、3−ペンチニレン基、4−ペンチニレン基、2−メチル−3−ペンチニレン基、1−ヘキシニレン基、2−ヘキシニレン基、3−ヘキシニレン基、4−ヘキシニレン基、5−ヘキシニレン基、1−ヘプチニレン基、2−ヘプチニレン基、3−ヘプチニレン基、4−ヘプチニレン基、5−ヘプチニレン基、6−ヘプチニレン基、1−オクチニレン基、2−オクチニレン基、3−オクチニレン基、4−オクチニレン基、5−オクチニレン基、6−オクチニレン基、7−オクチニレン基、1−ノニニレン基、2−ノニニレン基、3−ノニニレン基、4−ノニニレン基、5−ノニニレン基、6−ノニニレン基、7−ノニニレン基、8−ノニニレン基、1−デシニレン基、2−デシニレン基、3−デシニレン基、4−デシニレン基、5−デシニレン基、6−デシニレン基、7−デシニレン基、8−デシニレン基、または9−デシニレン基などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、エチニレン基である。
上記芳香族炭化水素残基としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などのフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基などのビフェニレン基、9H−フルオレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、アントラセン−2,6−ジイル基、アントラセン−9,10−ジイル基、フェナントレン−1,8−ジイル基、フェナントレン−9,10−ジイル基、テトラセン−2,8−ジイル基、テトラセン−5,12−ジイル基、ピレン−1,6−ジイル基、ペリレン−3,9−ジイル基、ペリレン−3,10−ジイル基などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、フェニレン基、より好ましくは1,4−フェニレン基である。
また、上記で例示した不飽和炭化水素残基、芳香族炭化水素残基を複数組み合わせて用いてもよく、例えば、1,2−フェニレンビニレン基、1,3−フェニレンビニレン基、更には、1,4−フェニレンビニレン基、スチルベン、4−フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン、トリフェニルエテン(例えば、1,1,2−トリフェニルエテン)、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン等から誘導される2価の基などが挙げられる。これらの中でも、ビニレン基とフェニレン基を組み合わせたものが好ましく、さらに好ましくは、1つ以上の1,4−フェニレン基とビニレン基を組み合わせた1,4−フェニレンビニレン基である。
上記複素環残基は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1〜3個含む、飽和または不飽和の環式化合物から誘導される2価の基を示し、これらのうち、不飽和の環式化合物から誘導される基、すなわち不飽和複素環残基が好ましい。より好ましい不飽和複素環残基としては、炭素原子数3〜20の不飽和複素環残基が好ましく、炭素原子数3〜12の不飽和複素環残基であると特に好ましい。好ましい不飽和複素環残基として、例えば、ピリジレン基、ピロリレン基、ピラジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基、インドリレン基、フリレン基、ベンゾフリレン基、チエニレン基、ベンゾチエニレン基、チエノチオフェンジイル基、ジチエノチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェニレン基などが挙げられる。これらの中でも、チエニレン基、ジチエノチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェニレン基が好ましい。
チエニレン基としては、チオフェン−2,3−ジイル基、チオフェン−2,4−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、チオフェン−3,4−ジイル基が挙げられるが、好ましくは、チオフェン−2,5−ジイル基である。
ジチエノチオフェンジイル基としては、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジイル基、ジチエノ[2,3−b:3’,2’−d]チオフェン−2,6−ジイル基などが挙げられるが、好ましくは、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジイル基である。
上記一般式(1)中、連結基Lは、上記で例示した複素環残基を複数連結して組み合わせて用いると好適であり、例えば、チオフェン環を2つ連結したビチオフェニレン基や、3つ以上のチオフェン環を連結したオリゴチオフェンから誘導される2価の基などが挙げられる。これらの中でも、2つのチオフェン−2,5−ジイル基が連結された2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル基等のビチオフェニレン基、3つまたは4つのチオフェン−2,5−ジイル基が連結された基が好ましい。
さらに、上記で例示した芳香族環残基を構成する芳香族複素環、および複素環残基を構成する複素環を縮合したものを用いてもよく、例えば、ベンゾ[b]チオフェン−2,5−ジイル基、ベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジイル基、ナフト[2,3−b]チオフェン−2,6−ジイル基、アントラ[2,3−b]チオフェン−2,7−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,5−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェン−2,5−ジイル基、ジベンゾフラン−2,8−ジイル基、ジベンゾチオフェン−2,8−ジイル基、ジベンゾチオフェン−3,7−ジイル基、9H−カルバゾールー2,7−ジイル基、9H−カルバゾールー3,6−ジイル基、10H−フェノキサジン−3,7−ジイル基、10H−フェノチアジン−3,7−ジイル基、オキサゾール−2,5−ジイル基、チアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、オキサゾロ[5,4−d]オキサゾール−2,5−ジイル基、チアゾロ[5,4−d]チアゾール−2,5−ジイル基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、キノリン−2,6−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基、アントラゾリン−2,7−ジイル基が挙げられる。
さらにまた、上記一般式(1)中、連結基Lは、上記で例示した不飽和炭化水素残基、芳香族炭化水素残基および複素環残基を複数連結して組み合わせて用いてもよい。
上記で挙げた各置換基の中でも、上記一般式(1)中、連結基としての前記Lは、置換されたもしくは非置換の、チエニレン基および/またはビニレン基を含むと好ましい。なお、置換されたビニレン基において、水素原子を置換する置換基の数および種類は特に限定されないが、置換基として、電子吸引性基を備えていると好ましい。電子吸引性基については、以下に詳述するWと同義であるため説明を省略するが、ビニレン基に備えられる置換基としては、特に、シアノ基が好ましい。
さらに、上記一般式(1)中、前記Lが、下記一般式(5)によって表される構造であると好ましい。
上記一般式(5)中、L’は、単結合、置換されたまたは非置換のビニレン基、フェニレン基およびスチリレン基からなる群から選択され、Y、Y、Y、Yは、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択され、Y、Y、Y、Yの少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成するか、または、Y、Y、Y、Y同士が互いに連結せず、qおよびrは、それぞれ0〜3の整数である;で表される。なお、上記一般式(5)で表される連結基Lは、上記一般式(5)の左端に発色団D、右端にホスホン酸基が置換したビニル基が連結していてもよいし、逆であってもよいが、前者が好ましい。
上記L’は、単結合、置換されたまたは非置換のビニレン基、フェニレン基およびスチリレン基を示すが、置換されたビニレン基を示す場合、L’は、1つ以上の電子吸引性基が置換した構造であると好ましく、特に、シアノ基が置換していると好ましい。このとき、ビニレン基に備えられるシアノ基等の置換基は、上記一般式(5)中のqおよび/またはrが1以上であるとき、炭素−炭素二重結合を形成する二つの炭素原子数のうち、チエニル基に連結した炭素上に置換されていると好ましい。
上記Y、Y、Y、Yは、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、飽和または不飽和の、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択される。
飽和または不飽和の炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基が挙げられる。
上記アルキル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルキル基の中でも、直鎖状のアルキル基であって、炭素原子数1〜10のものが好ましく、特に、n−ヘキシル基が好ましい。
上記アルケニル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルケニル基の中でも、直鎖状のアルケニル基であって、炭素原子数2〜4のものが好ましく、特に、ビニル基が好ましい。
上記アルキニル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルキニル基の中でも、直鎖状のアルキニル基であって、炭素原子数2〜4のものが好ましく、特に、エチニル基が好ましい。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−へキシルオキシ基、3−メチルペンタン−2−イルオキシ基、3−メチルペンタン−3−イルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンタン−2−イルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブタン−2−イルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、3−メチルヘキシルオキシ基、4−メチルヘキシルオキシ基、5−メチルヘキシルオキシ基、1−エチルペンチルオキシ基、1−(n−プロピル)ブチルオキシ基、1,1−ジメチルペンチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、1,1−ジエチルプロピルオキシ基、1,3,3−トリメチルブチルオキシ基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−メチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,4−ジメチルペンタン−3−イルオキシ基、1,1−ジメチルペンタン−1−イルオキシ基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イルオキシオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、1−メチルヘプチルオキシ基、2−メチルヘプチルオキシ基、5−メチルヘプチルオキシ基、2−メチルヘプタン−2−イルオキシ基、3−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−4−イルオキシ基、1−エチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−プロピルペンチルオキシ基、2−プロピルペンチルオキシ基、1,1−ジメチルヘキシルオキシ基、1,4−ジメチルヘキシルオキシ基、1,5−ジメチルヘキシルオキシ基、1−エチル−1−メチルペンチルオキシ基、1−エチル−4−メチルペンチルオキシ基、1,1,4−トリメチルペンチルオキシ基、2,4,4−トリメチルペンチルオキシ基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピルオキシ基、1,1,3,3−テトラメチルブチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、1−メチルオクチルオキシ基、6−メチルオクチルオキシ基、1−エチルヘプチルオキシ基、1−(n−ブチル)ペンチルオキシ基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチルオキシ基、1,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、1,1,5−トリメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクタン−3−イルオキシ基、n−デシルオキシ基、1−メチルノニルオキシ基、1−エチルオクチルオキシ基、1−(n−ブチル)ヘキシルオキシ基、1,1−ジメチルオクチルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、1−メチルデシルオキシ基、1−エチルノニルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、1−メチルウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、1−メチルトリデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数1〜5のものが好ましく、特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基が好ましい。
上記芳香族炭化水素基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記の芳香族炭化水素基の中でも、特に、炭素原子数6〜12のものが好ましく、特に、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
上記複素環基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記の複素環基の中でも、特に、チエニル基が好ましい。
なお、q、rがいずれも1以上の場合、上記Y、Y、Y、Yは、少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成してもよい。このとき、架橋基としては、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基;プロピレン基、ジメチルメチレン基、ジヘキシルメチレン基、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;シリレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子などが挙げられる。これらの中でも、特に、ジヘキシルメチレン基などの置換アルキレン基、硫黄原子が好ましい。
上記qおよびrは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。q+r=0であるとき、L’は、フェニレン基およびスチリレン基であると好ましく、q+r≧1であるとき、L’は、単結合または置換されたまたは非置換のビニレン基であると好ましい。
q+rは1以上の整数であると好ましい。また、qおよびrは、いずれも1以上であるとさらに好ましい。すなわち、連結基Lが、二つ以上のチエニレン基を有しているか、またはチエニレン基が互いに連結して縮合環を形成していると好ましい。q、r、Y、Y、Y、Yについて、好ましい態様としては、以下の態様が挙げられる。
q=1、r=1であるとき、Y、Y、Y、Yがいずれも水素原子であるか、Y、Yが水素原子であり、Y、Yが置換アルキレン基で架橋されているか、Y、Yが水素原子であり、Y、Yが硫黄原子で架橋されているか、Y、Y、Yがいずれも水素原子であり、Yがアルキル基で置換されている態様であると好ましい。さらに、Y、Y、Y、Yがいずれも水素原子であるとき、また、Y、Yが架橋されているとき、L’は、単結合であると好ましい。さらに、Yのみがアルキル基で置換されているとき、L’は、ビニレン基であると好ましい。
また、q=1、r=2であるとき、Y、Y、Yがいずれも水素原子であり、Y、がアルキル基で置換されている態様であると好ましい。さらにこのとき、L’は、単結合であると好ましい。
さらにまた、q=2、r=2であるとき、Y、Yが水素原子であり、Y、Yがアルキル基で置換されている態様であると好ましい。さらにこのとき、L’は、単結合であると好ましい。
以下に本発明の一般式(1)で表される色素化合物中に含まれる連結基Lの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の化学式において、「*」発色団Dまたは一般式(1)中のホスホン酸基に結合した炭素−炭素二重結合都の連結部を示す。
上記に示したL−1〜L−14の連結基のなかでも、特に、L−4〜L−14が好ましい。
≪置換基T
上記一般式(1)中、発色団Dには、置換基Tが連結していてもよい。Tが連結する位置は、発色団D上のいずれの位置であってもよいが、発色団Dが、フェニルアミン系化合物であるとき、Tは、フェニル基上であって窒素原子のp−位またはo−位に置換していると好ましく、p−位であると特に好ましい。
は、互いに独立であって、ハロゲン原子、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、および複素環基からなる群から選択される少なくとも一種であり、iは、0〜5の整数を表す。なお、TとTi+1は、それぞれ独立である。iが2以上であるとき、TとTi+1は、互いに同じ構造であると好ましい。
上記一般式(1)中、前記Tは、互いに独立であって、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基、および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択されると好ましい。
上記ハロゲン原子は、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、好ましくは、塩素原子である。
上記アルキル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルキル基の中でも、直鎖状のアルキル基であって、炭素原子数1〜18の物が好ましく、特に、メチル基、n−ヘキシル基、n−オクタデシル基が好ましい。
上記アルケニル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルケニル基の中でも、直鎖状のアルケニル基であって、炭素原子数2〜4のものが好ましく、特に、ビニル基が好ましい。
上記アルキニル基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルキニル基の中でも、直鎖状のアルキニル基であって、炭素原子数2〜4のものが好ましく、特に、エチニル基が好ましい。
上記ヒドロキシアルキル基は、炭素原子数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基が好ましく、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基、12−ヒドロキシドデシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素原子数1〜5のものが好ましく、特に、ヒドロキシアルキル基が好ましい。
上記アルコキシ基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記のアルコキシ基の中でも、直鎖状のアルコキシ基であって、炭素原子数1〜6のものが好ましく、特に、n−へキシルオキシ基が好ましい。
上記アミノ基としては、炭素原子数0〜30のものが好ましく、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基が挙げられる。ジフェニルアミノ基およびジベンジルアミノ基は、フェニル基上にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよく、好ましくは、アルキル基である。このとき、アルキル基は、炭素原子数1〜10の直鎖のアルキル基が好ましく、n−ヘキシル基であるとより好ましい。特に、4,4’ジヘキシルジフェニルアミノ基であると好適である。
上記芳香族炭化水素基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記の芳香族炭化水素基の中でも、炭素原子数6〜20のものが好ましく、特に、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−スチリルフェニル基が好ましい。
上記複素環基の具体例は上記発色団Dにおける説明と同様であるため、その例示は省略するが、上記の複素環基の中でも、不飽和複素環基が好ましく、特に、チエニル基であると好ましい。すなわち、上記Tは、置換されたまたは非置換のチエニル基を含むと好適である。
≪電子吸引性基W≫
上記一般式(1)中、Wは、電子吸引性基である。電子吸引性基としては、芳香族吸電子置換反応において、o,p配向性を示す不活性置換基またはm配向性を示す不活性置換基が挙げられる。具体的には、ハロゲン原子(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルカノイル基、アロイル基、アルキルアミド基、パーハロゲノアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、パーハロゲノアルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基、パーフルオロアリールスルホニル基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基などが挙げられる。これらのうち、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルカノイル基が好ましく、シアノ基がより好ましい。
アルカノイル基としては、炭素原子数2〜20のアルカノイル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、i−ブタノイル基、t−ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。これらのうち、t−ブタノイル基がより好ましい。
また、電気吸引性基には、電子吸引性環構造もまた含まれる。電子吸引性環構造としては、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。中でも、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環、キノン環、チアジアゾール環が好ましく、ローダニン環、ジローダニン環、イミダゾロン環、ピラゾリン環であることがより好ましい。
≪特に好ましい色素化合物の構造≫
上記の一般式(1)で表される色素化合物の構造のうち、以下の態様であると特に好ましい。すなわち、上記一般式(1)中、Dは、上記D−1〜D−18から選択され、Tは、互いに独立であって、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18の直鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、アミノ基およびチエニル基からなる群から選択される少なくとも一種であり、iは0〜5の整数を表し、Wは、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基およびアルカノイル基からなる群から選択され、Lは、単結合または上記L−1〜L−14から選択され、nは、1または2であると好ましい。
これらの中でも、発色団Dは、D−1、D−10およびD−13から選択されると特に好ましく、Lは、単結合、L−4、L−9、L−11、L−12およびL−13から選択されると特に好ましい。
さらに、上記の中でも、発色団Dは、D−1、D−10およびD−13から選択されると特に好ましく、Lは、単結合、L−4、L−11およびL−12から選択されると特に好ましい。
以下に、一般式(1)で表される好ましい色素化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
上記化合物は、当業者であれば、いずれも公知の反応、例えば、芳香族求電子置換反応、芳香族求核置換反応、カップリング反応、およびメタセシス反応等を適宜組み合わせることによって合成することができる。その他、上記化合物の合成にあたっては、特開平7−5706号公報、同7−5709号公報等が参照されうる。
(光電変換層の作製方法)
次に、光電変換層の作製方法について説明する。光電変換層の作製方法は、(1)導電性支持体上への半導体層の形成、および(2)半導体の増感処理に大別される。(1)において、半導体の材料が粒子状の場合には、半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布或いは吹き付ける方法、および半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後に縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)等によって半導体層を形成することができる。上記2つの方法によって得られた半導体層は焼成することが好ましい。この場合、焼成後、半導体に水分が吸着する前に素早く増感色素による増感処理を行うことが好ましい。また、(1)において、半導体の材料が膜状であり、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合することによって半導体層を形成することができる。(2)の増感処理方法は、増感色素の半導体層への吸着等が挙げられる。
以下、本発明に好ましく用いられる光電変換層の作製方法について詳細に説明する。
(1)導電性支持体上への半導体層の形成
(1−1)半導体含有塗布液の調製
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。当該半導体微粉末はその1次粒子径が微細であることが好ましい。1次粒子径としては、1〜5000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。半導体含有塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができ、溶媒中に分散された半導体微粉末は1次粒子状で分散する。溶媒中の半導体微粉末の濃度は0.1〜70質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましい。
半導体含有塗布液に用いられうる溶媒としては、半導体微粉末を分散できるものであれば特に制約されず、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が用いられうる。前記有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。塗布液中には、必要に応じて、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を添加してもよい。
(1−2)半導体含有塗布液の塗布
上記(1−1)によって調製した半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行うことにより、半導体層が形成される。当該塗布は、特に制限されず、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって行われる。上記塗布または吹き付け、および乾燥によって得られた半導体層は、半導体微粒子の集合体からなるものであり、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応する。なお、半導体含有塗布液は2種以上の半導体材料を含むものであってもよいし、2種以上の半導体材料を用いて塗布または吹き付けを行い、層状構造の半導体層を形成してもよい。
(1−3)半導体層の焼成処理
上記(1−2)によって形成された半導体層は、空気中または不活性ガス中で焼成することが好ましい。焼成を行うことにより、(1−2)で形成された半導体層と導電性支持体との結合力および半導体微粒子どうしの結合力を高め、機械的強度が向上しうる。焼成条件は、所望の実表面積や空孔率を有する半導体層を形成することができれば特に制限されない。焼成温度は、特に制限されないが、1000℃以下であることが好ましく、100〜800℃であることがより好ましく、200〜600℃であることが特に好ましい。また、基体がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、加圧により半導体微粒子−基体間および半導体微粒子どうしを固着させてもよいし、マイクロ波を用いて半導体層のみを焼成してもよい。焼成時間も特に制限されないが、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、10〜120分であることが特に好ましい。また、焼成雰囲気も特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行ってもよいし、温度や時間を変化させて2回以上繰り返し行ってもよい。
焼成された半導体層の構造は、特に制限されないが、増感色素との吸着を効果的に行う観点から多孔質構造(空隙を有するポーラスな構造)であることが好ましい。よって、半導体層の空孔率(D)は、1〜90体積%であることが好ましく、10〜80体積%であることがさらに好ましく、20〜70体積%であることが特に好ましい。なお、半導体層の空孔率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空孔率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。なお、半導体層が多孔質構造膜である場合には、正孔輸送層を構成する材料がこの空隙にも存在するように光電変換素子を製造することが好ましい。
焼成された半導体層の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、500nm〜30μmであることがさらに好ましい。
得られた半導体層の見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積、並びに焼成温度等により制御することができる。また、得られた半導体層は、焼成後、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行うことにより、半導体粒子の表面積および半導体粒子近傍の純度を制御し、色素から半導体粒子への電子注入効率を高めてもよい。
(2)増感色素による半導体の増感処理
増感色素による半導体の増感処理は、例えば、増感色素を適切な溶媒に溶解し、当該溶液中によく乾燥させた半導体層を長時間浸漬することによって行われる。当該増感処理によって、増感色素が半導体に吸着されうる。この際、半導体層が多孔質構造を有する場合には、浸漬前に減圧処理、加熱処理等の前処理を行い、膜中の気泡や空隙中の水分を除去することが好ましい。当該前処理によって、増感色素が半導体層内部にも吸着されうる。なお、増感処理は、増感色素含有溶液への半導体層の浸漬に限定されず、その他の公知の増感処理方法も適宜適用することができる。
増感処理条件は特に制限はないが、増感色素が半導体層に深く進入して吸着等が充分に進行できるような条件に設定することが好ましい。例えば、溶液中における増感色素の分解および分解物の半導体層への吸着を防止する観点から、増感処理の温度は、5〜100℃であることが好ましく、25〜80℃であることがより好ましい。また、増感処理の時間は、15分〜20時間であることが好ましく、3〜24時間であることがより好ましい。特に、室温(25℃)で2〜48時間、特に3〜24時間、増感処理を行うことが好ましいが、設定する温度によって増感処理の時間は適宜変更してもよい。また、増感処理の時間の短縮および半導体層の深部まで吸着させる観点から、減圧下または真空下で増感処理を行ってもよい。
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、増感色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解させたり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体膜に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、溶媒をあらかじめ脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび塩化メチレン、並びにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒を用いることが好ましい。
増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。また他の増感色素(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いてもよいが、耐久性の観点から、本発明に係る増感色素のみを用いることが好ましい。本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる2種以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。2種以上の増感色素を用いる場合に、増感処理方法は、特に限定されず、各増感色素の混合溶液に半導体層を浸漬してもよいし、各増感色素を別々の溶液として準備し、順次に半導体層を浸漬してもよい。
得られた光電変換層において、半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、特に制限されないが、0.01〜100ミリモルであることが好ましく、0.1〜50ミリモルであることがさらに好ましく、0.5〜20ミリモルであることが特に好ましい。
[固体正孔輸送層]
固体正孔輸送層は、光吸収することにより電子を半導体に注入した後に生成する増感色素の酸化体を迅速に還元し、増感色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を有する。
固体正孔輸送層は、下記一般式(2)で表される化合物を重合して形成される重合物、または、下記一般式(2)で表される化合物の多量体を重合して形成される重合物(以下、単に「重合体」とも称する)を含有する。
上記一般式(2)中、
およびXは、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基、−OR11基、−SR12基、−SeR13基、または−TeR14基であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子または置換されたまたは非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基である。ここで、XおよびXは、互いに結合して縮合環を形成するか、または、XおよびXは、互いに連結しない。
上記X、XおよびR11〜R14としてのアルキル基は特に制限されず、上記一般式(1)におけるアルキル基と同様である。
これらのうち、XおよびXとしては、炭素原子数6〜18の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数6〜18の直鎖のアルキル基がより好ましい。重合体が長鎖(例えば、炭素原子数6〜18の)アルキル基を有する場合には、当該アルキル基が自己凝集を阻害する官能基として作用して、自己凝集構造の形成を抑制できるため耐久性が向上できると推定される。
また、R11〜R14としては、炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記XおよびXとしての、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基は特に制限されず、好ましい炭素原子数が異なること以外は、上記一般式(1)における芳香族炭化水素基と同様である。
、XおよびR11〜R14において、「炭素原子数1〜20のアルキル基」、「炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。
、XおよびR11〜R14において、置換基は、ハロゲン原子、各々置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、アミノ基、および炭素原子数1〜24の複素環基からなる群から選択される。これらの具体的な基は、上記一般式(1)における基と同様である。
上記X、XおよびR11〜R14の置換基は、好ましくは、炭素原子数6〜18の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは、n−オクチル基である。また、上記X、XおよびR11〜R14の置換基は、好ましくは、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基、n−ブトキシ基である。なお、このとき、XおよびXのアルコキシ基が互いに連結されている態様も好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、固体正孔輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記一般式(2)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記一般式(2)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記一般式(2)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に使用される重合体は、上記一般式(2)で表される一種または二種以上の化合物またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記一般式(2)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記一般式(2)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用できる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2〜7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
以下に、例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)ダイマー(H2−1)の製造方法の好ましい例を記載する。ただし、本発明は、下記好ましい例に限定されるわけではなく、他の同様の方法または他の公知の方法を適用することができる。
[3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)ダイマーの合成]
撹拌装置、温度計、および還流冷却管を装着した1000mLのガラス製三口フラスコに、無水テトラヒドロフラン750mL、および3,4−エチレンジオキシチオフェン25g(0.15mol)を添加し、窒素気流下で撹拌しながらアセトン/ドライアイス浴中で内温が−70℃となるまで冷却する。この後、1.6mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液113mL(0.18mol)をシリンジで5分間かけて反応系に滴下する。25分後、無水塩化銅23.5g(0.17mol)を添加し、そのまま3時間程度撹拌しながら反応させる。反応液を水10Lに添加し、生成物を濾過した後、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:塩化メチレン)により精製することにより、PEDOTダイマー17.9g(収率:約72%)を黄白色結晶として得た。
(重合体の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射を組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記固体正孔輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記一般式(2)で表される単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、2種以上の混合溶媒とする場合は、クロロベンゼン/アセトニトリルの混合溶媒を用いることが好ましい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CFSON]、(n−CNBF、(n−CNPF、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい、また、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体正孔輸送層に添加しうる添加剤としては、例えば、N(PhBr)SbCl、NOPF、SbCl、I、Br、HClO、(n−CClO、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl、AuCl、NOSbF、AsF、NOBF、LiBFH1−3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極(透明導電膜)2、バリア層3および光電変換層6を形成した基体としての基板1をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNOなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合溶液中の前記単量体或いはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましく、5〜20mmol/L程度が特に好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.1〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01μA/cm〜1000mA/cmの範囲であることが望ましく、0.05μA/cm〜100mA/cmの範囲であるとより好ましく、特に0.1mA/cm〜10mA/cmの範囲であることがより望ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された固体正孔輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、単量体である一般式(2)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mlのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mlを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体正孔輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記一般式(2)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、固体正孔輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、上記一般式(2)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する固体正孔輸送層形成用溶液が用いられる。固体正孔輸送層形成用溶液の溶媒としては、電解重合溶液の溶剤として例示したものを使用することができる。
固体正孔輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記固体正孔輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電反感層を前記固体正孔輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる上記一般式(2)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体正孔輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
固体正孔輸送層中の一般式(2)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。正孔輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
固体正孔輸送層の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、一般式(2)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、一般式(2)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するためには、本発明に使用される重合体が色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが好ましい。重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、好ましい固体正孔輸送層としては吸光度が1.0以下が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい正孔輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、固体正孔輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。作用極として、FTO導電性ガラス基板に形成した有効面積10×20mmの酸化チタン薄膜に色素を吸着したものを用い、前述の電解重合溶液と同組成の溶液に浸漬し、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.3Vとして、半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度32mW/cm、520nm以下の波長をカット)15分間電圧を保持し、一般式(2)の繰り返し単位を有する重合体を前記作用極上に形成して測定する。膜厚のばらつきの影響を補正するために、サンプルの膜厚を測定し、膜厚(μm)で除した値を用いる。膜厚測定は、Dektak3030(SLOAN TECHNOLOGY Co.製)にて測定される。
(バリア層)
本発明の光電変換素子は、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第一電極と半導体層との間に位置するバリア層を有していてもよい。
バリア層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなどが挙げられる。
特に固体正孔輸送層がp型半導体の場合、バリア層に金属を使用する場合には固体正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が半導体層(光電変換層)よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。このとき、酸化物を選択することで半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることもできる。この中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリア層の構造は特に制限されないが、光電変換層と同様に、多孔質構造膜であることが好ましい。ただし、バリア層の空孔率は半導体層(光電変換層)の空孔率よりも小さいことが好ましい。具体的には、バリア層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。ここで、D/Cの上限は、可能な限り大きいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、1000以下程度である。これにより、バリア層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
より具体的には、バリア層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリア層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。ここで、バリア層の空孔率Cの下限は、可能な限り小さいことが好ましいため、特に規定する必要はないが、通常、0.05%以上程度である。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
[第二電極]
第二電極は、正孔輸送層と接して配置され、任意の導電性材料で構成されうる。絶縁性の物質でも、正孔輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用することができる。第二電極は、素子の電気抵抗を低減する等の観点から、正孔輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第二電極は、正孔輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム、ロジウム、ルテニウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。好ましくは金などの金属薄膜である。また、第二電極の厚みは、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗値は、特に制限されず、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値は、80Ω/cm以下であることが好ましく、20Ω/cm以下であることがより好ましい。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm以上であれば十分である。
以上のような構成を有する光電変換素子は、基体の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の半導体層に担持された増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は、半導体に注入され、バリア層を通じて第一電極に移動する。第一電極に移動した電子は、外部回路を通じて第二電極に移動し、正孔輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、正孔輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光が電気に変換される。
本発明に係る光電変換素子は、増感色素がホスホン酸基を有することにより、増感色素が半導体に強固に保持されるため、固体正孔輸送層を形成する際等に問題となっていた増感色素の脱離が抑制される。したがって、耐久性に優れた光電変換素子を得ることができる。また、本発明に係る光電変換素子に含まれる増感色素は、電子吸引性基を含むことにより、電荷分布を適切に制御することができる。より詳細には、電子吸引性の弱いホスホン酸基の近傍に、電子吸引性基をさらに備えることにより、LUMOの電荷分布を酸化チタン側(半導体側)によらせる効果を得ることができると考えられる。したがって、本発明に係る光電変換素子は、高い耐久性を有すると共に、光電変換効率に優れる。
<太陽電池>
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池に特に好適に使用することができる。したがって、本発明は、上述の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池をも提供する。
本発明に係る光電変換素子は、色素増感型の太陽電池(セル)として用いられうる。すなわち、本発明に係る太陽電池は、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(本発明に係る光電変換素子)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうちの一方は、前述の光電変換素子の基体となる。一対の保護部材は両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明に係る太陽電池の構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基体に複数の正孔輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および正孔輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本発明に係る太陽電池に、太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、正孔輸送層の正孔輸送性材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から正孔輸送層の重合体を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に正孔輸送層の重合体は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[合成例1:化合物1の合成]
化合物1を下記スキームにより合成した。
1当量の4−オクタデシルアニリンおよび2.5当量のヨードベンゼンのトルエン溶液に、0.1当量の酢酸パラジウム、および0.2当量のトリ−t−ブチルホスフィン、5当量のt−ブトキシナトリウムを添加した。80℃で12時間撹拌させた後、反応液に水を添加した。反応液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Aを得た。
0℃のDMFに2.5当量のオキシ塩化リンを滴下し、1時間撹拌した後、1当量の化合物Aを加え90℃で8時間撹拌した後に0℃に冷却し、激しく撹拌した状態で過剰量の冷水を加えた後に20℃とし2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Bを得た。
得られた化合物Bをトルエンに溶解し、2.2当量のシアノメチルホスホン酸ジエチル、0.2当量の安息香酸-ピペリジン塩を添加した後、100℃で5時間撹拌した。反応液を20℃に冷却後、水を反応液に加え、次いで酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Cを得た。
得られた化合物Cをジクロロメタンに溶解した後に0℃とし、10当量のトリメチルシリルブロマイドを添加した。20℃で6時間撹拌した後、反応液を濃縮乾固させた後にメタノール:水=95:5の溶液を過剰量加え2時間撹拌した。反応液を濃縮乾固し化合物1を得た。
化合物1の構造は、核磁気共鳴スペクトルおよびマススペクトルにより確認した。
[合成例2:化合物23の合成]
化合物23を下記スキームにより合成した。
トリフェニルアミンのDMF溶液を0℃に冷却し、1.1当量のNBSを加え30分撹拌した後、1.1当量のNBSを追加し30分撹拌し、さらに1.1当量のNBSを加え30分撹拌した後、室温にて1時間撹拌した。反応液に水を添加した後に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Dを得た。
得られた化合物DのDMF溶液に3.5当量の2−チオフェンボラン酸、7当量のt−ブトキシカリウム、0.1当量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加え、80℃で4時間撹拌した。反応液をセライト濾過後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Eを得た。
化合物EのDMF溶液を0℃に冷却し、1当量のNBSを加え30分撹拌した後、室温にて1時間撹拌した。反応液に水を添加した後に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Fを得た。
得られた化合物FのDME溶液に1.5当量の5−ホルミル−2−チオフェンボラン酸、3当量のt−ブトキシカリウム、0.1当量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加え、80℃で4時間撹拌した。反応液をセライト濾過後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Eを得た。
得られた化合物Gをトルエンに溶解し、1.5当量のシアノメチルホスホン酸ジエチル、0.1当量の安息香酸-ピペリジン塩を添加した後、100℃で3時間撹拌した。反応液を20℃に冷却後、水を反応液に加え、次いで酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Hを得た。
得られた化合物Hをジクロロメタンに溶解した後に0℃とし、10当量のトリメチルシリルブロマイドを添加した。20℃で8時間撹拌した後、反応液を濃縮乾固させた後にメタノール:水=95:5の溶液を過剰量加え2時間撹拌した。反応液を濃縮乾固し化合物23を得た。
化合物23の構造は、核磁気共鳴スペクトルおよびマススペクトルにより確認した。
[合成例3:化合物6の合成]
化合物6を下記スキームにより合成した。
2−ブロモフルオレンのTHF溶液を0℃に冷却し、2.5当量のヨウ化メチルおよび2.5当量のt−ブトキシカリウムを加え30分撹拌した後、室温にて8時間撹拌した。反応液に水を添加した後に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Jを得た。
1.05当量の塩化アルミニウムのジクロロメタン溶液を0℃に冷却し、1.05当量の塩化アセチルを加え20分撹拌後、1当量の化合物Jのジクロロメタン溶液を滴下し3時間撹拌した。反応液に1規定の塩酸を加えた後に水を添加し、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Kを得た。
化合物Kのジクロロメタン溶液を0℃に冷却し、1.5当量のメタクロロ安息香酸、1.1当量のトリフルオロ酢酸を添加し5時間撹拌した。反応溶液に飽和チオ硫酸ナトリウムを加えた後、ジクロロメタンで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去した後、メタノール溶液とし、5規定の水酸化ナトリウム水溶液を加え1.5時間撹拌した。その後1規定の塩酸で中和し、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Lを得た。
化合物Lのアセチニトリル溶液に1.3当量の1ブロモヘキサン、1.5当量の炭酸カリウムを加え室温にて1時間撹拌した。反応液に水を添加した後に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Mを得た。
0.1当量の酢酸パラジウムのトルエン溶液に、0.4当量のtert−ブチルホスフィンを加え80℃で撹拌した後、室温まで冷却した。前記溶液に、1当量の化合物M、1当量のジフェニルアミン、および2.5当量のtert−ブトキシナトリウムを添加した。70℃で4時間撹拌した後、反応液に水を添加した。反応液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Nを得た。
化合物Nのクロロホルム/酢酸=1:1溶液を0℃に冷却し、2.2当量のNISを加え1.5時間撹拌した。反応液に水を添加した後にクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Oを得た。
得られた化合物OのTHF溶液に2.2当量のジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2−ボロン酸、5当量のt−ブトキシカリウム水溶液、0.2当量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを加え、60℃で5時間撹拌した。反応液をセライト濾過後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Pを得た。
0℃のDMFに1.2当量のオキシ塩化リンを滴下し、1時間撹拌した後、1当量の化合物Pを加え90℃で4時間撹拌した後に0℃に冷却し、激しく撹拌した状態で過剰量の冷水を加えた後に20℃とし2時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた抽出液の溶媒をロータリーエバポレータにて留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物Qを得た。
得られた化合物Qは合成例1および2と同様にシアノメチルホスホン酸ジエチルとカップリングした後、エチル基の脱保護をし、化合物6を得た。
化合物6の構造は、核磁気共鳴スペクトルおよびマススペクトルにより確認した。
[その他の合成例]
上記の合成例1〜3の合成法に芳香族求電子置換反応、芳香族求核置換反応、カップリング反応、およびメタセシス反応等を適宜組み合わせて、本発明に係る化合物を合成した。
[合成例23〜24]
上記と同様に適宜化学反応を組み合わせて、上記一般式(1)においてホスホン酸基の代わりにカルボキシル基を有する化合物101〜102を合成した。化合物101〜102を下記に示す。
参考例1:光電変換素子1の作製]
基体としてのガラス基体(光透過率:10%以上、厚さ:1〜1000μm)に、第一電極としてフッ素ドープ酸化スズ(FTO)(光透過率:10%以上)を用いて導電性支持体を形成した(FTOの塗布量:1〜100g/m、膜厚:0.1mm〜5mm、表面抵抗値:500Ω/cm以下)。半導体として酸化チタン(アナターゼ型(粉末状)、1次平均粒径:18nm(電子顕微鏡により観察した平均値))を用い、ポリエチレングリコールの分散液(酸化チタンの濃度:0.1〜70質量%)である酸化チタンペーストを前記FTOからなる導電性ガラス基体にスクリーン印刷法により塗布(塗布面積:5×5mm)および乾燥(120℃で3分間)した。当該塗布および乾燥を5回繰り返した後、200℃で10分間、次いで500℃で15分間の焼成を空気中で行い、厚さ13μmの酸化チタン薄膜(空孔率:1〜90体積%)を得た。この薄膜上に、さらに酸化チタン(アナターゼ型、1次平均粒径:400nm(電子顕微鏡により観察した平均値))のポリエチレングリコール分散ペーストを同様の方法で塗布、乾燥、および焼成し、厚さ3μmの酸化チタン薄膜(空孔率:1〜90体積%)を形成し、層厚膜16μmの半導体層を形成した。
合成例で合成した化合物1を、アセトニトリル:tert−ブチルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/Lの増感色素含有溶液を調製した。上記半導体層が形成されたFTOガラス基体を、当該溶液中に室温(25℃)で3時間浸漬して増感色素の半導体への吸着処理を行い、光電変換層を得た。なお、得られた光電変換層の半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、0.01〜100ミリモルであった。
次に、固体正孔輸送層を形成するため、電解重合を以下のように行った。まず、正孔輸送材料の原料となるモノマーである2,2’−ビス−3,4−エチレンジオキシチオフェン(上記化合物H2−1)およびLi[(CFSON]を含有するアセトニトリル溶液(2,2’−ビス−3,4−エチレンジオキシチオフェン濃度:1×10−3mol/L、Li[(CFSON]濃度:0.1mol/L)に浸漬した。続いて、作用極を上記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、印加電流密度0.01μA/cm〜1000μA/cm、保持電圧を−0.3Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度32mW/cm、520nm以下の波長をカット)15分間電圧を保持して、固体正孔輸送層を上記半導体電極表面に形成した。得られた半導体電極/固体正孔輸送層をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
なお、ここで得られた固体正孔輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。その後、Li[(CFSON]を15×10−3mol/L、tert−ブチルピリジンを50×10−3mol/Lの割合で含有するクロロベンゼン:アセトニトリル=19:1の溶液に30分間浸漬した。次いで真空蒸着法により金(Au)を90nmの厚さで蒸着して第二電極を作製し、光電変換素子1を作製した。
[実施例1〜3および参考例2〜19:光電変換素子2〜22の作製]
増感色素として合成例で合成した表に示す化合物を用いたことを除いては、参考例1と同様の方法で実施例1〜3および参考例2〜13の光電変換素子2〜16を作製した。また、参考14〜19は、増感色素として化合物2を用い、固体正孔輸送層を形成する際、それぞれ表1に示す化合物を使用したことを除いては、参考例1と同様の方法で光電変換素子17〜22を作製した。
[比較例1〜2:光電変換素子23〜24の作製]
増感色素として合成例で合成した化合物101〜102を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で光電変換素子23〜24を作成した。
[比較例3:光電変換素子25の作製]
比較例3は、固体正孔輸送層を有する上記実施例とは異なり、正孔輸送層として、液体電解質を用いた。以下、比較例3の光電変換素子の具体的な作製手順を示す。
基体としてガラス基体(光透過率:10%以上、厚さ:1〜1000μm)を、第一電極としてフッ素ドープ酸化スズ(FTO)(光透過率:10%以上)を用いて導電性支持体を形成した(FTOの塗布量:1〜100g/m、膜厚:0.1mm〜5mm、表面抵抗値:500Ω/cm以下)。半導体として酸化チタン(アナターゼ型(粉末状)、1次平均粒径:18nm(電子顕微鏡により観察した平均値))を用い、ポリエチレングリコールの分散液(酸化チタンの濃度:0.1〜70質量%)である酸化チタンペーストを前記FTOからなる導電性ガラス基体にスクリーン印刷法により塗布(塗布面積:5×5mm)および乾燥(120℃で3分間)した。当該塗布および乾燥を5回繰り返した後、200℃で10分間、次いで500℃で15分間の焼成を空気中で行い、厚さ13μmの酸化チタン薄膜(空孔率:1〜90体積%)を得た。この薄膜上に、さらに酸化チタン(アナターゼ型、1次平均粒径:400nm(電子顕微鏡により観察した平均値))のポリエチレングリコール分散ペーストを同様の方法で塗布、乾燥、および焼成し、厚さ3μmの酸化チタン薄膜(空孔率:1〜90体積%)を形成し、層厚膜16μmの半導体層を形成した。
合成例で合成した化合物2を、アセトニトリル:tert−ブチルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/Lの増感色素含有溶液を調製した。上記半導体層が形成されたFTOガラス基体を、当該溶液中に室温(25℃)で3時間浸漬して増感色素の半導体への吸着処理を行い、光電変換層を得た。なお、得られた光電変換層の半導体層1m当たりの増感色素の総担持量は、0.01〜100ミリモルであった。
酸化還元電解質として0.6mol/Lのヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、0.1mol/Lのヨウ化リチウム、および0.05mol/Lのヨウ素を、有機塩基として0.5mol/Lの4−tert−ブチルピリジンを含むアセトニトリル溶液、すなわち液体電解質を正孔輸送層(バンドキャップ:2eV以上、イオン化ポテンシャル:4.5〜5.5eV)に用いた。
第二電極として白金およびクロムを蒸着したガラス板(表面抵抗値:80Ω/cm以下)を用い、正孔輸送層の層厚が20μmとなるようにクランプセルで組み立てることにより光電変換素子25を作製した。
[光電変換素子の評価]
<初期の光電変換効率の測定>
ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用いて、上記光電変換素子に、キセノンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して強度100mW/cmの擬似太陽光を照射した。そして、I−Vテスターを用いて、光電変換素子の室温(25℃)での電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および形状因子(F.F.)を測定した。これらの値に基づき、下記式1から光電変換効率η(%)を算出した。
(光劣化試験後の光電変換効率の測定)
更に劣化操作として、光電変換素子1〜25を、80℃で2時間加熱した後、強度100mW/cmのキセノンランプで120分間光照射し、劣化後の光電変換効率(η’(%))を求めた。そして、初期の光電変換効率ηに対する光劣化後の光電変換効率η’の比(η’/η)を求めた。
(η’/η)が0.9以上 ◎
0.9未満0.85以上 ○
0.85未満0.8以上 △
0.8未満 ×
実施例1〜3、参考例1〜19および比較例1〜3の上記試験の評価結果を表1に示す。
表1の結果から、本発明に係る光電変換素子は、増感色素のπ共役系を拡大することにより吸収波長領域が長波長化し、擬似太陽光に対する短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および光電変換効率が高い値を示した(実施例1〜3、参考例1〜19)。
また、耐久性評価のη’/η値から、本発明に係る増感色素を用いた光電変換素子は、溶出試験後の擬似太陽光に対する短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および光電変換効率が維持され、η’/ηは高い値を示し、溶出耐久試験において良好な結果を示した(実施例1〜3、参考例1〜19)。一方、光電変換層に含まれる増感色素が、上記一般式(1)において、ホスホン酸基を含まない化合物101〜102を増感色素として用いると、溶出試験後の擬似太陽光に対する短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、および光電変換効率は低下し、η’/ηは低い値を示し、耐久試験において不良な結果となった(比較例1〜2)。また、正孔輸送層として、実施例のように固体正孔輸送層ではなく、液体電解質を用いた比較例3においても、耐久試験において不良な結果となった
これらの結果により、上記一般式(1)がホスホン酸基を有することにより、酸化物半導体層と増感色素化合物との相互作用が生じ、増感色素化合物の吸着力が安定したものと考えられる。
以上の結果より、本発明に係る増感色素を含む光電変換素子は、光電変換効率に優れ、かつ、高い耐久性を有することが理解される。
1 基板(基体)、
2 第一電極、
3 バリア層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 固体正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光の入射方向、
10 光電変換素子。

Claims (6)

  1. 基体、第一電極、増感色素が担持された半導体を含有する光電変換層、固体正孔輸送層、および第二電極を有する光電変換素子であって、
    前記増感色素は、下記一般式(1):
    上記一般式(1)中、
    Dは、発色団を表し、
    Lは、下記一般式(5):
    上記一般式(5)中、
    L’は、単結合、置換されたまたは非置換のビニレン基、フェニレン基およびスチリレン基からなる群から選択され、
    、Y 、Y 、Y は、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択され、
    、Y 、Y 、Y の少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成するか、または、Y 、Y 、Y 、Y 同士が互いに連結せず、
    qおよびrは、それぞれ0〜3の整数であり、
    q+rは、1以上の整数である;
    で表され、
    は、互いに独立であって、ハロゲン原子、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、および複素環基からなる群から選択される少なくとも一種であり、
    iは、0〜5の整数を表し、
    Wは、電子吸引性基を表し、
    nは、2である;で表される色素化合物を含み、
    前記固体正孔輸送層は、下記一般式(2):
    上記一般式(2)中、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基、−OR11基、−SR12基、−SeR13基、または−TeR14基であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子または置換されたまたは非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、XおよびXが互いに結合して縮合環を形成するか、または、XおよびXが互いに連結しない;
    で表される化合物を重合して形成される重合物、または、上記一般式(2)で表される化合物の多量体を重合して形成される重合物を含む、光電変換素子。
  2. 上記一般式(1)中、前記Dは、下記一般式(3):
    上記一般式(3)中、
    、R、Rは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択され、
    、R、Rの少なくとも2つが互いに連結して縮合環を形成するか、もしくは、R、R、R同士が互いに連結しない;
    で表される発色団の残基であるか、または、前記Lであって2価の連結基である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 上記一般式(1)中、前記Tは、互いに独立であって、置換されたまたは非置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜40の芳香族炭化水素基、および炭素原子数1〜40の複素環基からなる群から選択される、請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 上記一般式(1)中、前記Tは、置換されたまたは非置換のチエニル基を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 上記一般式(1)中、前記Lは、置換されたもしくは非置換のチエニレン基を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記増感色素は、下記化合物3,5,6,7および11からなる群から選択される少なくとも一つの色素化合物を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
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