JP2014167899A - 色素増感型太陽電池の製造方法 - Google Patents

色素増感型太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電池性能を低下させることなく、増感色素の吸着工程に要する時間を短縮することができる色素増感型太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、前記色素および第一溶媒を含む塗布液を前記半導体からなる半導体層に塗布した後、該半導体層に第二溶媒を少なくとも1回以上塗布して前記光電変換層を作製する工程を含む、色素増感型太陽電池の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、色素増感型太陽電池の製造方法に関し、さらに詳細には、増感色素の吸着工程に要する時間を短縮することができる色素増感型太陽電池の製造方法に関する。
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、およびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属とを接合させるショットキー型太陽電池、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物とを接合させるヘテロ接合型太陽電池等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、酸化チタン上に吸着した色素の増感光電流の膨大で詳細な実験の集大成として、色素を吸着させる酸化チタンを多孔質化し、その電荷分離の面積(電荷分離に寄与する分子数)を充分に確保することによって、安定動作し高い変換効率を有する。
上記の色素増感型太陽電池では、酸化チタン等の半導体多孔質表面に吸着した色素が光励起され、色素から酸化チタンに電子が注入されて色素カチオンとなり、電荷輸送層を通じて色素カチオンが対極から電子を受け取る、というサイクルを繰り返す。電荷輸送層としてはヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液が用いられている。この色素増感型太陽電池は、酸化チタンの安定性とも関連して優れた再現性を有しており、研究開発の裾野も大きく広がってきている。
このような太陽電池において、半導体多孔質表面に色素を吸着させる方法としては、従来、色素溶液に半導体多孔質からなる半導体層を浸漬させた後、乾燥する方法が主として用いられてきた。しかし、このような浸漬法を用いると、十分な量の色素を吸着させるためには、数時間から十数時間程度という長時間を要し、製造効率が良くないという問題点があった。
かような問題点に対し、特許文献1では、色素を含有する溶液を多孔質体に接触させた後に乾燥させる染色工程を複数回行う技術を提案している。
特開2012−113954号公報
上記特許文献1の技術によれば、色素を含有する溶液を多孔質体に数分間接触させた後に乾燥するという工程(特許文献1では、「染色工程」と記載されている)が複数回行われる。このように、複数回の染色工程を経ることにより、従来の浸漬法と比較して、色素の吸着時間を短縮することができる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法をもってしても、色素吸着に10分以上の時間がかかり、大量生産を行うためには、必ずしも十分短縮できたとは言えない。したがって、色素増感型太陽電池の製造において、電池性能を低下させることなく、増感色素の吸着に要する時間をさらに短縮することができる技術が望まれていた。
そこで本発明は、電池性能を低下させることなく、増感色素の吸着工程に要する時間を短縮することができる色素増感型電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、色素および溶媒を含む溶液(色素含有塗布液)を半導体からなる半導体層に塗布した後、当該半導体層に、さらに溶媒を1回以上塗布することで、上記課題が解決されうることを見出した。そして、上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の手段により達成される。
1.基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、前記色素および第一溶媒を含む塗布液を前記半導体からなる半導体層に塗布した後、該半導体層に第二溶媒を少なくとも1回以上塗布して前記光電変換層を作製する工程を含む、色素増感型太陽電池の製造方法。
2.前記第二溶媒は、前記第一溶媒が完全に乾燥する前に塗布される、上記1.に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
3.前記塗布液は、前記色素を1mmol/L以上10mmol/L以下の濃度で含む、上記1.または2.に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
4.前記第二溶媒の粘度は、前記第一溶媒の粘度よりも低い、上記1.〜3.のいずれかに記載の色素増感太陽電池の製造方法。
5.前記第一溶媒の粘度の値は、1.5×10-3Pa・s以上である、上記1.〜4.のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
6.前記第二溶媒の粘度の値は、1.0×10-3Pa・s以下である、上記1.〜5.のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
7.前記第二溶媒の粘度の値は、前記第一溶媒の粘度の値の50%以下である、上記1.〜6.のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
8.上記1.〜7.のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の製造方法により製造される、色素増感型太陽電池。
本発明によれば、電池性能を低下させることなく、増感色素の吸着工程に要する時間を短縮することができる色素増感電池の製造方法が提供されうる。
本発明の一実施形態に係る色素増感型太陽電池の要部を模式的に示す断面図である。
本発明の第一は、基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、前記色素および第一溶媒を含む塗布液(以下、「色素含有塗布液」または「色素溶液」と称することもある)を前記半導体からなる半導体層(以下、単に「半導体層」と称することもある)に塗布した後、該半導体層に第二溶媒を少なくとも1回以上塗布して前記光電変換層を作製する工程を含む、色素増感型太陽電池の製造方法である。
本発明者らは、上述のように、半導体層に色素含有塗布液を塗布した後、当該半導体層に対し、さらに色素を含まない溶媒のみを塗布することにより、色素の吸着工程に要する時間を極めて短縮することができることを見出し、本発明に至った次第である。
上記の本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは、以下のように推測される。
まず、半導体層のような多孔質体と色素との吸着に関し、以下の数式(1)に示す関係式が成り立つ。
上記数式(1)より、上記特許文献1のように、半導体層に色素を含む溶液を接触させた後に乾燥させる場合、溶液を乾燥させる段階における溶媒の蒸発に伴って、色素溶液の濃度Kが大きくなっていく結果、吸着速度が大きくなることがわかる。したがって、特許文献1の技術では、浸漬法よりも吸着速度を大きくすることができるため、色素の吸着を浸漬法よりも短い時間で行うことができる。さらに、上記式(1)から示唆されるように、色素の吸着工程を短縮するためには、高濃度の色素溶液を使用することが望ましい。
しかしながら、高濃度の色素溶液で色素の吸着を行った場合、半導体層を構成する多孔質内の吸着サイト数に対して色素数が多いため、溶液を完全に乾燥させた場合には、余剰分の色素が多孔質表面、すなわち半導体層内に析出することになる。この析出した色素は、洗浄作業により除去されうるが、完全に除去できないことがあり、電池性能を低下させることがある。また、析出した色素は、電子の授受に寄与しないだけでなく、入射光を遮断するため、光電変換効率を低下させるという不都合が生じる。
したがって、特許文献1に開示された技術では、色素濃度の比較的低い溶液を用いる必要がある。しかしながら、低濃度の色素溶液を用いると、色素の吸着速度が遅くなるだけでなく、十分な量の色素を吸着させるためには、色素溶液と半導体層を接触させる回数が必然的に多くなる。したがって、特許文献1の技術では、浸漬法よりも短時間で色素の吸着が可能となるものの、色素を吸着させる時間の短縮には限界があった。
これに対し、本発明によれば、半導体層に接触させる色素含有塗布液を比較的高濃度とした上で、色素の析出もまた抑制することができる。すなわち、色素を高濃度で含む色素溶液を用いることによって色素の吸着速度を高めることができる上、色素溶液を塗布した後に色素を含まない溶媒を塗布することで、余剰の色素が塊状となって析出するのを防ぐことができる。さらに、溶媒を添加することで、色素がその溶媒によって半導体層中の多孔質体の空隙部分に入り込みやすくなるため、半導体層内での色素の拡散が速くなり、増感色素が半導体層に深く進入して吸着等が充分に進行する結果、色素が吸着する効率をより高めることができる。加えて、溶媒中に拡散した色素が多孔質部分に入り込みやすくなるため、色素がより均一に吸着しやすくなり、光電変換効率もまた良好となると考えられる。
なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法に係る実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<色素増感型太陽電池>
まず、本発明の製造方法により製造される色素増感型太陽電池(以下、単に「太陽電池」とも称することがある)の構造について、図1を参照しながら概説する。
図1は、本発明の一実施形態に係る色素増感型太陽電池10の要部を模式的に示す断面図である。図1に示すように、色素増感型太陽電池10は、基体1、第一電極2、バリア層3、光電変換層6、正孔輸送層7、および第二電極8が順次積層されてなる構成を有する。ここで、光電変換層6は、半導体5および増感色素4を含有する。図1に示されるように、第一電極2と光電変換層6との間には、短絡防止、封止などの目的で、バリア層3を有することが好ましい。なお、図1中では、太陽光は、図下方の矢印9の方向から入っているが、本発明は当該形態に限定されず、図1の上方から太陽光が入射してもよい。
次に、本発明に係る色素増感型太陽電池の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、第一電極2を形成した基体1上に、バリア層3を形成した後、バリア層3上に半導体5からなる半導体層を形成し、その半導体5の表面に増感色素4を吸着させて光電変換層6を形成する。その後、光電変換層6の上に正孔輸送層7を形成する。この際、正孔輸送層7は、増感色素4を担持した半導体5からなる光電変換層6に侵入し、かつ、その上に存在している。そして、正孔輸送層7の上に第二電極8を形成する。第一電極2および第二電極8に端子を付けることにより、電流を取り出すことができる。
以下、本発明の特徴的な要素である、光電変換層の作製方法について詳述する。
[光電変換層の作製方法]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する層である。本発明において、光電変換層は第一電極上にあり、半導体および増感色素を必須に含む。より詳細には、光電変換層は、半導体および増感色素を含有し、当該増感色素を担持した半導体を含有する半導体層からなることが好ましい。
光電変換層の作製方法は、(1)導電性支持体上への半導体層の形成、(2)半導体の増感処理(増感色素の担持)に大別される。上記(1)において、半導体の材料が粒子状の場合には、半導体の分散液またはコロイド溶液(半導体含有塗布液)を導電性支持体に塗布或いは吹き付ける方法、および半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し、水分(例えば、空気中の水分)によって加水分解後に縮合を行う方法(ゾル−ゲル法)等によって半導体層を形成することができる。上記(1)の工程によって得られた半導体層は焼成することが好ましい。また、(1)において、半導体の材料が膜状であり、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合することによって半導体層を形成することができる。(2)の増感処理方法は、増感色素の半導体層への吸着(担持)処理により行われる。
以下では、上記(1)および(2)の工程を含む光電変換層の作製方法について詳細に説明する。なお、本工程において用いられる半導体および増感色素の具体的な例示は、後に詳述する。
(1)導電性支持体上への半導体層の形成
(1−1)半導体含有塗布液の調製工程
まず、半導体、好ましくは半導体の微粉末を含む塗布液(半導体含有塗布液)を調製する。当該半導体微粉末はその1次粒子径が微細であることが好ましい。1次粒子径としては、1〜5000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜100nmであることが特に好ましい。半導体含有塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができ、溶媒中に分散された半導体微粉末は1次粒子状で分散する。溶媒中の半導体微粉末の濃度は0.1〜70重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましい。
半導体含有塗布液に用いられうる溶媒としては、半導体微粉末を分散できるものであれば特に制約されず、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が用いられうる。前記有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。塗布液中には、必要に応じて、界面活性剤、酸(酢酸、硝酸など)、粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)、キレート剤(アセチルアセトンなど)を添加してもよい。
(1−2)半導体含有塗布液の塗布工程
上記(1−1)によって調製した半導体含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行うことにより、半導体層が形成される。当該塗布は、特に制限されず、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法によって行われる。上記塗布または吹き付け、および乾燥によって得られた半導体層は、半導体微粒子の集合体からなるものであり、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応する。なお、半導体含有塗布液は2種以上の半導体材料を含むものであってもよいし、2種以上の半導体材料を用いて塗布または吹き付けを行い、層状構造の半導体層を形成してもよい。
(1−3)半導体層の焼成処理工程
上記(1−2)によって形成された半導体層は、空気中または不活性ガス中で焼成することが好ましい。焼成を行うことにより、(1−2)で形成された半導体層と導電性支持体との結合力および半導体粒子どうしの結合力を高め、機械的強度が向上しうる。焼成条件は、所望の実表面積や空隙率を有する半導体層を形成することができれば特に制限されない。焼成温度は、特に制限されないが、1000℃以下であることが好ましく、100〜800℃であることがより好ましく、200〜600℃であることが特に好ましい。また、基体がプラスチック等で耐熱性に劣る場合には、加圧により半導体微粒子−基体間および半導体微粒子どうしを固着させてもよいし、マイクロ波を用いて半導体層のみを焼成してもよい。焼成時間も特に制限されないが、10秒〜12時間であることが好ましく、1〜240分であることがより好ましく、10〜120分であることが特に好ましい。また、焼成雰囲気も特に制限されないが、通常、焼成工程は、大気中または不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素など)雰囲気中で行われる。なお、上記焼成は、単一の温度で1回のみ行ってもよいし、温度や時間を変化させて2回以上繰り返し行ってもよい。
焼成された半導体層の構造は、特に制限されないが、増感色素との吸着を効果的に行う観点から多孔質構造(空隙を有するポーラスな構造)であることが好ましい。よって、半導体層の空隙率(D)は、1〜90体積%であることが好ましく、10〜80体積%であることがさらに好ましく、20〜70体積%であることが特に好ましい。なお、半導体層の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。なお、半導体層が多孔質構造膜である場合には、電荷輸送層を構成する材料がこの空隙にも存在するように色素増感型太陽電池を製造することが好ましい。
焼成された半導体層の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、500nm〜30μmであるとより好ましく、1μm〜10μmであるとさらに好ましい。
得られた半導体層の見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径および比表面積、ならびに焼成温度等により制御することができる。また、得られた半導体層は、焼成後、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行うことにより、半導体粒子の表面積および半導体粒子近傍の純度を制御し、色素から半導体粒子への電子注入効率を高めてもよい。
(2)増感色素による半導体の増感処理
(2−1)色素含有塗布液(色素溶液)の調製工程
まず、増感色素を含む塗布液(色素含有塗布液)を調製する。当該色素含有塗布液は、溶媒および増感色素を必須に含む。このとき、塗布液用の溶媒(第一溶媒)としては、増感色素を溶解することができかつ半導体を溶解させたり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分および気体が半導体層に進入して、増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、溶媒をあらかじめ脱気および蒸留精製しておくことが好ましい。
増感色素の溶解において好ましく用いられる溶媒(第一溶媒)については、以下で詳述するが、たとえば、アセトニトリル(沸点82℃、粘度0.29×10-3Pa・s)等のニトリル系溶媒;メタノール(沸点64.7℃、粘度0.51×10-3Pa・s)、エタノール(沸点78.3℃、粘度1.00×10-3Pa・s)、n−プロパノール(沸点97.15℃、粘度1.72×10-3Pa・s)、イソプロピルアルコール(沸点82℃、粘度1.76×10-3Pa・s)、n−ブチルアルコール(沸点117.7℃、粘度2.28×10-3Pa・s)、tert−ブチルアルコール(沸点83℃、粘度3.35×10-3Pa・s)等のアルコール系溶媒;アセトン(沸点56.5℃、粘度0.29×10-3Pa・s)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル(沸点35℃、粘度0.22×10-3Pa・s)、ジイソプロピルエーテル(沸点69℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃、粘度1.10×10-3Pa・s)等のエーテル系溶媒;塩化メチレン(沸点40℃、粘度0.40×10-3Pa・s)、1,1,2−トリクロロエタン(沸点114℃、粘度0.51×10-3Pa・s)等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。なお、上記括弧内に示した沸点は1atmにおける値である。また、括弧内に示した粘度は、後述の方法に準拠して測定したものであり、30℃における値である。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。すなわち、第一溶媒は、2種類以上の溶媒を含んでいてもよい。
第一溶媒は、1atmにおける沸点が60〜120℃であると好ましく、80〜100℃であるとより好ましい。沸点が120℃以下のものを用いることにより、溶媒の乾燥時間が極端に長くなることがなく、その結果、色素を担持させる工程に要する時間を短縮することができる。また、沸点を60℃以上とすることにより、短時間での色素含有溶液の乾燥に起因する色素の析出を効果的に防止することができる。なお、混合溶媒を用いたときであっても、当該混合溶媒としての沸点が上記範囲内であると好ましい。
したがって、沸点の観点からは、上記溶媒の中でも、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、メチルエチルケトンおよびテトラヒドロフラン、ならびにこれらの混合溶媒、例えば、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、アセトニトリル/エタノール混合溶媒、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒を用いることが好ましい。
さらに、第一溶媒は、第二溶媒と比較して、その粘度が高いと好ましい。なお、これら溶媒の粘度の関係は、以下で詳述する。
色素含有塗布液に含まれる増感色素としては、以下で詳述するものが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、増感色素は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の増感色素を用いる場合には、溶媒に対して2種類の色素を同時に溶解させて色素含有塗布液を調製し、以下で詳述するような塗布作業を行ってもよいし、1種類の増感色素を含む色素溶液を個別に調整して塗布してもよいが、作業効率や色素分散の均一性の観点から前者が好ましい。
色素含有塗布液は、増感色素を1mmol/L以上10mmol/L以下の濃度で含むと好ましい。より好ましくは、5mmol/L以上9mmol/L以下である。1mmol/L以上とすることにより、色素の吸着速度を十分に大きくすることができる。また、10mmol/L以下とすることにより、色素の吸着工程において、色素の析出を効果的に抑制することができる。なお、2種以上の色素を用いた場合、各色素濃度の合計(合計濃度)が上記範囲内であると好ましい。
(2−2)色素含有塗布液(色素溶液)の塗布工程
上記(2−1)によって調製した色素含有塗布液を、上記(1)によって形成した半導体層上に塗布する。このとき、色素含有塗布液を塗布する方法としては、浸漬法は含まれず、滴下法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコート法などの方法によって行われる。これらの中でも、半導体層上に色素含有塗布液を滴下する滴下法が好ましい。
このとき、半導体層に塗布する色素含有塗布液の量は、半導体層の中心部に色素含有塗布液を滴下した際、半導体層の全面を十分に覆うことができる量であれば特に制限はないが、具体的には、半導体層の面積49mm2(7mm×7mm)に対して、25μL以上であると好ましく、40μL以上であるとより好ましく、50μL以上であると特に好ましい。滴下量の上限値は特に制限されないが、多量であると半導体層から過剰な色素含有塗布液が流出し、流出した塗布液はロスとなるため、上限は100μL程度である。すなわち、半導体層の面積1mm2あたり、0.5〜2μLであると好ましく、0.7〜1.2μLであるとより好ましく、0.8〜1μLであると特に好ましい。
色素含有塗布液を滴下した後、これを乾燥させる際、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で乾燥させると好ましい。かような条件で乾燥を行うことにより、増感色素の酸化等による劣化を抑制することができ、電池性能の低下を防止することができる。
また、色素含有塗布液の乾燥方法としては、自然乾燥を行うことが好ましい。換言すると、色素含有塗布液の滴下後は、塗布液中に含まれる溶媒が早急に乾燥しない条件で乾燥させることが好ましい。このように、溶媒の蒸発を極端に早めない条件で行うことにより、増感色素の析出を防止することができる。
乾燥時、さらには色素含有塗布液の塗布時の基板温度は、溶媒の沸点以下の温度とすると好ましく、具体的には、15〜50℃とするのが好ましく、20〜40℃とするのが好ましい。かような温度範囲で乾燥させることにより、溶媒の蒸発が急速に起こることがないため、増感色素の析出を効果的に防止することができる。
(2−3)第二溶媒の塗布工程
上記(2−2)によって半導体層に色素含有塗布液を塗布した後、当該半導体層に対し、増感色素を含まない溶媒(第二溶媒)を塗布する。この操作を行うことにより、半導体層中においてまだ担持されていない(すなわち、塗布溶液中に浮遊している)色素が、塗布液中の溶媒成分の蒸発により析出することを抑制する。さらに、色素含有塗布液を塗布した後に第二溶媒を追加することにより、塗布液の粘度上昇を抑え、半導体層内において含有色素がより拡散しやすくなる。その結果、半導体層内の多孔質表面に増感色素が吸着しやすくなり、色素の吸着に要する時間を短縮することができる。
したがって、半導体層に前記塗布液を塗布した後、半導体層へ塗布される第二溶媒は、塗布液の溶媒(色素含有塗布液中に含まれる溶媒)が完全に乾燥する前に塗布されることが好ましい。なお、完全に乾燥した状態でないことは、塗布溶液の塗布が完了してからの半導体層全体の重量を測定することによって確認できる。すなわち、半導体層の重量[重量=A0(mg)]を予め測定し、半導体層に所定量の塗布液の塗布が完了した後、ある時点での半導体層全体の重量[重量=A1(mg)]を測る。ここで、塗布液に含まれる溶媒成分自体の重量(すなわち、塗布液の重量から含有色素の重量を差し引いた重量)[=A1−A0(mg)]が0になるときが完全に乾燥した状態となる。なお、このような重量の測定の際、塗布溶液中に含まれる増感色素量は塗布溶液全体に対してごく少量であるため、半導体層に吸着した増感色素の重量は無視して計算される。このため、半導体層全体の重量を測定しながら、半導体層を乾燥させ、塗布液の残存量が所定の値になったら、溶媒を追加する。なお、上記では、操作性を考慮して、重量を基準として半導体層の乾燥状態を確認したが、第一溶媒の比重によって、第一溶媒減少量[=A1−A0(mg)]を体積基準で算出して、体積を基準として半導体層の乾燥状態を確認してもよい。また、操作性の観点から、A1およびA0として、半導体層が形成された基体全体の重量を計測してもよい。
より具体的には、半導体層上の塗布液の残存量が、上記(2−2)で塗布した量(初期量)に対して、20〜80重量%となった時点で、溶媒を追加するとよい。より好ましくは30〜50重量%となった時点で、さらに好ましくは35〜45重量%となった時点で溶媒を追加するとよい。色素含有塗布液の20重量%以上が残っている段階で溶媒を追加することにより、第一溶媒の蒸発に伴う粘度上昇を効果的に抑制することができる。したがって、増感色素の拡散速度を効果的に高めることができる。また、溶媒追加前の塗布液の残存量を80重量%以下とすることにより、溶媒を追加する前に半導体層に対して吸着する色素量を多くすることができる。
上述のように、色素含有塗布液が完全に乾燥する前に溶媒を塗布するために、半導体層に塗布液を塗布してから溶媒を塗布するまでの時間(間隔)を制御する方法が好適に用いられる。このとき、溶媒を塗布するまでの時間は、使用される溶媒の種類や塗布液中の色素濃度、乾燥条件にも依存するため、同じ乾燥条件下における色素含有塗布液の塗布後の残存量を、時間経過との関係に基づいて調べておくとよい。これにより、色素含有塗布液の残存量を、所望の量とするための乾燥時間を決定することができる。
なお、色素含有塗布液を上述した好ましい形態とし、これを室温(20℃)で自然乾燥させたとき、塗布液を滴下してから(すなわち、塗布液による塗布が完了した時点であり、半導体層の全面が色素含有塗布液に覆われた状態となる時点から)、第二溶媒の塗布を開始するまでの時間が3分以下であると好ましく、2分以下であるとより好ましい。3分以下とすることにより、塗布液中の溶媒成分の乾燥による色素の析出を効果的に抑制することができる。
また、この第二溶媒を追加するまでの時間間隔の下限値は特に限定されないが、当該時間間隔が短すぎると色素含有塗布液による色素の吸着が進行しにくくなるため、30秒以上とすると好ましく、1分以上であるとより好ましい。30秒以上とすることにより、半導体層を比較的高濃度の色素溶液に接触させる時間が長くなるため、結果として吸着時間を短くすることができるとともに、十分な量の色素を吸着させることができる。
半導体層に対して追加する溶媒量は、上記作用効果を発揮できる量であれば特に制限はないが、色素含有塗布液を塗布してから溶媒を追加するまでに蒸発した溶媒量を補う程度の量であると好ましい。具体的には、色素溶液の塗布量から、溶媒追加時の色素溶液残存量(基体上に残存した量)を差し引いた量(すなわち、先に塗布した色素溶液の減少量)の、80〜120重量%、好ましくは90〜110重量%を第二溶媒の塗布量とするとよい。第二溶媒の量は、第一溶媒と第二溶媒の合計量が半導体層内に保持される限界量以下となる量であるとより好ましい。したがって、第二溶媒の量は、先に塗布した色素溶液の減少量以下とすると好適である。なお、第二溶媒の塗布(添加)量(体積)は、上記したようにして求められた第一溶媒の減少量[=A1−A0(mg)]及び当該溶媒の比重から、決定できる。また、第二溶媒の追加量を上記の量とすることにより、半導体層上の色素溶液の濃度が色素含有塗布液の初期濃度と比較して低くなりすぎることがないため、色素の吸着速度の観点から好適である。
また、第二溶媒は、第一溶媒と同一であっても、異なるものであってもよい。第二溶媒の具体例は、第一溶媒と同じものを用いることができるので、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明に用いられる第一溶媒と第二溶媒の種類について、以下詳述する。
溶媒を追加するタイミングの制御や、コスト等の観点からは、第一溶媒と同じ溶媒とすることが好ましい。一方、以下の観点からは、第一溶媒と第二溶媒の種類を、異なるものとすると好ましい。なかでも、第二溶媒の粘度は、第一溶媒の粘度よりも低いと好ましい。かような構成とすると、半導体層内に色素を拡散させやすくし、得られる色素増感太陽電池の特性を向上させることができる。このように、第二溶媒の粘度を第一溶媒の粘度より低くすることで、第二溶媒を追加した後の、半導体層に保持される色素含有溶液の粘度が低くなる。そうすると、色素含有溶液の浸透速度が増大し、半導体層中の多孔質体の空隙部分に色素が更に入り込みやすくなるため、より色素が均一に分散しやすくなる。その結果、得られる色素増感太陽電池の電池特性を向上させることができる。
上記第一溶媒と第二溶媒の粘度について、より具体的には、まず、第一溶媒の粘度の値は、1.5×10-3Pa・s以上であると好ましい。さらに、第一溶媒の粘度は、1.6×10-3Pa・s以上であるとより好ましく、1.7×10-3Pa・s以上であると特に好ましい。色素含有溶液に用いられる第一溶媒の粘度を低くすると、色素が凝集する傾向があり、半導体層に対して均一に担持させにくくなることがある。しかし、上記のように、第一溶媒の粘度を1.5×10-3Pa・s以上とすることにより、色素含有溶液中の色素の凝集を効果的に抑制することができる。一方、第一溶媒の粘度の上限は、特に制限はないが、4.0×10-3Pa・s以下程度とすると好ましい。第一溶媒の粘度が高すぎると、色素含有溶液を半導体層に塗布する作業における操作性が低下するため、上記値以下とすると好ましい。
また、第二溶媒の粘度の値は、1.5×10-3Pa・s未満であると好ましく、1.1×10-3Pa・s以下であるとより好ましく、1.0×10-3Pa・s以下であるとより好ましく、0.75×10-3Pa・s以下であるとさらに好ましく、0.5×10-3Pa・s以下であると特に好ましい。上記のように、第二溶媒の粘度を1.0×10-3Pa・s以下とすることにより、半導体層に塗布された色素含有溶液中の粘度を効果的に下げ、色素の分散性を高めることができる。一方、第二溶媒の粘度の下限値は、特に制限はないが、0.1×10-3Pa・s以上程度とすると好ましい。第一溶媒の粘度が低すぎると、第二溶媒が蒸発しやすくなり、本発明の効果を十分に得ることが難しくなるため、上記値以上とすると好ましい。
さらに、前記第二溶媒の粘度の値は、前記第一溶媒の粘度の値の60%以下であると好ましく、50%以下であるとより好ましい(下限:1%以上)。上記のように、第二溶媒の粘度の値を、第一溶媒の粘度の値の50%以下とすると、第一溶媒と第二溶媒の粘度差は顕著に大きくなる。ここで、溶媒の粘度は温度(具体的には、基板温度)に依存して変化し、その変化の大きさは溶媒の種類によって異なる。したがって、ある特定の温度で第一溶媒と第二溶媒との粘度の値の差が大きくても、他の温度では粘度の値の差が小さくなってしまうことがある。これに対し、30℃における溶媒粘度(本明細書において、特に記載のない限り、溶媒粘度は30℃における値を採用する。測定方法等に関しては以下で詳述する)を上記のようにすることにより、通常の吸着温度(基板温度)条件であれば、第一溶媒と第二溶媒の粘度において、色素吸着性を良好にするために有意な差を確保することができる。したがって、上記のような粘度範囲とすることにより、色素を、より均一に半導体層に吸着させることができる。
なお、本明細書中の溶媒の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠し、B型粘度計を使用し、測定温度30℃で測定した値を指すものであり、上記に例示した溶媒について、括弧内の粘度はその具体的な値を示すものである。また、混合溶媒の粘度の値は、それぞれの溶媒単独について上記方法により測定した粘度の値に、体積比を掛けることにより算出された値を示す。たとえば、アセトニトリル:tert−ブチルアルコール=3:1(体積比)で混合した場合の溶媒粘度ηは、η={(0.29×10-3)×3/(1+3)}+{(3.35×10-3)×1/(1+3)}=1.06×10-3Pa・sである。
したがって、粘度を好ましい範囲とするために、第一溶媒は、比較的粘度の高い溶媒を単独で用いるか、またはかような溶媒を含む混合溶媒であると好ましい。第一溶媒は、上記例示した溶媒の中でも、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等を単独で用いるか、または当該溶媒を含む混合溶媒であると好ましい。混合溶媒において、アセトニトリル、メタノール、エタノール等の低粘度溶媒を混合してもよい。このような混合溶媒としては、たとえば、メタノール/tert−ブチルアルコール混合溶媒、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒等が挙げられるが、特に、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
また、粘度を好ましい範囲とするために、第二溶媒は、比較的粘度の低い溶媒を用いるか、またはかような溶媒を含む混合溶媒であると好ましい。第二溶媒は、上記例示した溶媒の中でも、アセトニトリル、メタノール、エタノール等を単独で用いるか、または当該溶媒を含む混合溶媒であると好ましい。一種の溶媒を単独で用いる場合、アセトニトリルが特に好ましい。また、混合溶媒において、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の高粘度溶媒を混合してもよい。このような混合溶媒としては、たとえば、アセトニトリル/n−プロパノール、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒等が挙げられるが、特に、アセトニトリル/tert−ブチルアルコール混合溶媒が好ましい。
上記第一溶媒および第二溶媒として、混合溶媒を用いる場合、同じ種類の溶媒を混合した混合溶媒としてもよい。このとき、それぞれの溶媒の体積比を調整し、第一溶媒と第二溶媒とで使用する溶媒の体積比を変更することにより、所望の粘度を有する第一溶媒と第二溶媒を得ることができる。
第二溶媒の半導体層への塗布方法としては、滴下法、スプレー法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコート法などの方法によって行われる。これらの中でも、半導体層上に色素含有塗布液を滴下する滴下法が好ましい。なお、色素吸着は、浸漬法では行わない。
また、第二溶媒の塗布は、色素含有塗布液および第二溶媒の蒸発速度が速い場合は、2回以上行われてもよい。このとき用いられる溶媒の種類、塗布方法は上記と同様であるため、詳細な説明を省略する。
第二溶媒をたとえば1回目と2回目に分けて塗布する際の間隔は、使用される溶媒の種類や塗布液中の色素濃度にも依存するが、色素含有塗布液および第二溶媒をそれぞれ上述した好ましい形態としたとき、3分以下とすると好ましく、2分以下とするとより好ましく、1分以下とするとさらに好ましい。かような時間間隔とすることにより、増感色素の析出を防止すると共に、色素の吸着速度を高めることができる。また、第二溶媒を1回目と2回目に分けて塗布する際の間隔の下限値は特に制限されないが、色素を十分に担持させるという観点から、30秒以上であると好ましい。
上記(2−1)から(2−3)までの全工程に要する時間は、10分以内で行うのが好ましく、8分以内であるとより好ましく、5分以内であると更に好ましく、4分未満であると特に好ましい。また、上記全工程に要する時間の下限値は特に制限されないが、色素を十分に担持させるという観点から、1分以上であると好ましい。このように、本発明では、浸漬法では数時間から十数時間を要していた色素の吸着工程を、数分単位で行うことが可能である。
(2−4)洗浄工程
上記(2−1)〜(2−3)の工程を行った後、任意で洗浄工程を行ってもよい。洗浄工程は、上記(2−3)において追加された溶媒が完全に乾燥していない状態で行われ、上記(2−3)とは明確に区別される。洗浄工程は、上記(2−3)を行い、適度な乾燥時間を経た後もなお半導体層に吸着していない色素を、半導体層の表面(内部)から取り除く工程である。具体的には、半導体層を大量の溶媒に浸漬して搖動させた後に取り出す方法、半導体層に対して多量の溶媒を供給して洗い流す方法、エアーを吹き付けて色素含有塗布液と第二溶媒との混合物を半導体層から取り除く方法等が挙げられる。これらの中でも、半導体層を大量の溶媒に浸漬して搖動させた後に取り出して洗浄する方法が好適に用いられる。
洗浄に用いられる溶媒としては、半導体を溶解させたり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、上記第一溶媒および第二溶媒と同様の溶媒が好適に用いられる。
また、第二溶媒が完全に乾燥していない状態で洗浄を行うためには、溶媒を塗布した後の乾燥時間によって制御されうる。好適な乾燥時間は、溶媒の種類、添加量や乾燥条件にも依存するが、溶媒の塗布工程を上述した好ましい形態とし、これを室温(20℃)で自然乾燥させたとき、半導体層の全面が第二溶媒に覆われてから、洗浄工程を開始するまでの時間が3分以下であると好ましく、2分以下であるとより好ましく、1分以下であるとさらに好ましく、30秒以下であると特に好ましい。かような乾燥時間とすることにより、色素の析出を効果的に防止することができると共に、仮に析出した色素があっても、十分に除去することができる。また、洗浄工程を開始するまでの時間の下限値は特に制限されないが、色素を十分に担持させるという観点から、1秒以上であると好ましい。
上記(2−3)の後、または上記(2−4)を行った場合は(2−4)の後、溶媒を完全に乾燥させることにより、短時間で増感色素が半導体層に担持される。このとき、半導体層に担持される増感色素の総担持量は、特に制限されないが、半導体層1m2当たりで、0.01〜100ミリモルであることが好ましく、0.1〜50ミリモルであることがさらに好ましく、0.5〜20ミリモルであることが特に好ましい。
以下、上述の光電変換層の製造において用いられうる半導体および増感色素の具体例について説明する。
(半導体)
光電変換層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等の粒子を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
さらに具体的な例としては、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti34等が挙げられる。好ましくは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe23、WO3、Nb25、CdS、PbSであり、より好ましくは、TiO2またはNb25であり、さらに好ましくはTiO2(酸化チタン)である。すなわち、半導体は、酸化チタンであると好ましい。
前記半導体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti34)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合体としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
光電変換層に用いられる半導体の形状は、特に制限されず、球状、柱状、管状などのいずれの形状を有していてもよい。また、半導体層に用いられる半導体の大きさもまた、特に制限されない。例えば、光電変換層に用いられる半導体が球状である場合の、半導体の平均粒径は、1〜5000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜100nmであることが特に好ましい。なお、上記光電変換層に用いられる半導体の「平均粒径」は、100個以上のサンプルを電子顕微鏡で観察した時の1次粒子直径の平均粒径(1次平均粒径)である。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
(増感色素)
本発明において、半導体層に増感色素を担持させるために用いられる色素含有塗布液(色素溶液)に含まれる増感色素は、光照射時、光励起されて起電力を生じ得るものである。増感色素は、電荷の半導体への効率的な注入の観点から、アリールアミン系色素が好ましい。また、当該増感色素は、カルボキシル基を有することが好ましい。以下に、好ましい増感色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、増感色素を下記化合物番号にて規定する。
また、上記の増感色素と他の増感色素とを併用して用いることもできる。併用して用いることができる増感色素としては、本発明に係る半導体を分光増感しうるものならばいずれの増感色素であってもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ光電変換効率を上げるため2種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。目的とする光源の波長域と強度分布とに合わせるように、混合する増感色素とその割合を適宜選択することができる。
特に、太陽電池として使用する際、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。
併用して用いる増感色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
上記のカルボキシル基を有する増感色素と併用して用いることができる増感色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の増感色素を挙げることができる。
なお、上記増感色素は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
以下、本発明の製造方法により製造される色素増感型太陽電池に含まれうる、光電変換層以外の各部材について説明する。
[基体]
基体は、電極を塗布方式で形成する場合における、電極形成用塗布液の被塗布部材としての役割を有する。基体側から光が入射する場合、基体はこの光を透過させることが可能な、すなわち、光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。具体的には、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、JIS K 7361−1:1997(ISO 13468−1:1996に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率を意味するものとする。
基体としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
基体の材料としては、剛性を有する基体、および可撓性を有する基体を用いることができる。剛性を有する基体と可撓性を有する基体とを組み合わせて用いてもよい。
剛性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ガラス板およびアクリル板が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点からガラス板を用いることが好ましい。剛性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、0.1〜100mmが好ましく、0.5〜10mmがより好ましい。
一方、可撓性を有する基体としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム;ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム;ポリスルホン(PSF)樹脂フィルム;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂フィルム;ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルムなどが挙げられる。特に、太陽光エネルギーを利用することを考慮し、可視領域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムを基体として用いることが好ましい。当該樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、およびポリカーボネートフィルム等が挙げられ、これらのうち、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが好ましい。なお、可撓性を有する基体の厚さは、特に制限されないが、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。可視域の波長(400〜700nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムが、本発明に特に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
上記基体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理や易接着層を設けてもよい。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理により表面処理を行うことができる。また、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、およびエポキシ系共重合体等を易接着層として使用することができる。
[第一電極]
第一電極は、基体と光電変換層との間に配置される。ここで、第一電極は、基体の光入射方向に対して反対側となる一方の面上に設けられる。第一電極は、光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、50%以上(上限:100%)であることがより好ましく、80%〜100%であることが特に好ましい。
第一電極を構成する材料としては、特に制限されず、公知の材料が使用できる。例えば、金属およびその酸化物、ならびにSn、Sb、FおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含む複合(ドープ)材料を用いることができる。前記金属としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、およびインジウム等が挙げられ、金属酸化物としては、SnO2、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO3、Cd2SnO4、CdSnO4)、In23、およびCdIn24等が挙げられ、複合(ドープ)材料としては、SnをドープしたIn23(ITO)、SbをドープしたSnO2、FをドープしたSnO2(FTO)等が挙げられる。これらのうち、金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワイヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。また、金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、FおよびAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。より好ましくは、SnをドープしたIn23(ITO)、SbをドープしたSnO2、FをドープしたSnO2(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
第一電極を形成する材料の基体への塗布量は、特に制限されないが、基体1m2当たり1〜100g程度であることが好ましい。なお、本明細書では、基体とその上に形成された第一電極との積層体を「導電性支持体」とも称する。
導電性支持体の膜厚としては、特に制限されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。導電性支持体の表面抵抗値としては、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値が500Ω/□(square)以下であることが好ましく、20Ω/□(square)以下であることがより好ましい。なお、導電性支持体の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/□(square)以上であれば十分である。導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板の光透過率の好ましい範囲と同様である。
[バリア層]
バリア層は、受光により発生し、正孔輸送層に注入されたホール(正孔)と、第一電極の電子との再結合である短絡を防止する観点などから、設けられる任意の構成要素である。バリア層は、第一電極と後述する光電変換層との間に、膜状(層状)に配置されうる。
バリア層の構成材料としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができる。なかでも光電変換層の半導体材料と同等の電気伝導性を有するものであることが好ましい。具体的には、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウム等の金属またはこれらの酸化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウム等のペロブスカイトまたはこれらの複合酸化物もしくは酸化物混合物;CdS、CdSe、TiC、Si34、SiC、BN等の金属化合物が挙げられる。これらの材料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送層がp型半導体であり、バリア層に金属を使用する場合には、当該バリア層には、正孔輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものを用いることが好ましい。また、バリア層に金属酸化物を用いる場合には、当該バリア層には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ、伝導帯のエネルギー準位が半導体層よりも低いところにあるものを使用することが好ましい。用いる酸化物を選択することにより、多孔質半導体層(光電変換層)からバリア層への電子移動効率を向上させることも可能である。中でも、半導体層(光電変換層)と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
バリア層は、後述する光電変換層中の半導体層とともに、多孔質であることが好ましい。
バリア層の平均厚さ(膜厚)としては、短絡防止効果を発揮することができる膜厚であれば特に制限はない。具体的には、0.01〜10μmであることが好ましく、0.03〜0.5μmであることがより好ましい。
[電荷輸送層]
電荷輸送層は、光吸収することにより電子を半導体に注入した後に生成する増感色素の酸化体を迅速に還元し、増感色素との界面で注入された正孔を第二電極に輸送する機能を担う層であり、p型半導体により形成されると好ましい。
本発明に係る電荷輸送層の材料としては、特に制限されず、例えば、レドックス電解質の分散物:芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体等の固体の正孔輸送材料(電荷輸送材料)が挙げられる。ただし、正孔輸送材料の流出・散逸を防ぐという観点から、前記電荷輸送層は固体の正孔輸送材料を含むことが好ましい。さらに、可視光の透過性、十分な導電性などの観点から、電荷輸送層は、導電性高分子を含むことが好ましい。特に、電荷輸送層に含まれる導電性高分子は、上記の絶縁膜を形成するための導電性高分子であると好ましい。かような態様によれば、色素増感型太陽電池を製造するための材料の種類を削減できるほか、電気的特性をより向上させることができる。
以下、レドックス電解質の分散物、芳香族アミン誘導体、およびチオフェン誘導体を詳細に説明する。
レドックス電解質としては、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I-/I3 -系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素とを混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
前記芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
前記チオフェン誘導体は、下記式(I)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物(以下、単に「重合体」とも称する)であることが好ましい。かような重合体は導電性高分子となり、可視光の透過性に優れ、かつ充分な導電性を有する。
上記式(I)中、
1およびY2は、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、−OR21基、−SR22基、−SeR23基、または−TeR24基を表わす。なお、Y1およびY2は、同一であってもまたは異なるものであってもよい。R21〜R24は、水素原子または炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。ここで、Y1およびY2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基としては特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−エチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチルブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−エチル−2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−(n−ブチル)−2−プロペニル基、1−(2−プロペニル)−3−ブテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基、7−オクテニル基、1−メチル−2−ヘプテニル基、2,7−オクタジエニル基、1,1−ジ(2−プロペニル)エチル基、2−ノネニル基、2,6−ノナジエニル基、3,7−ジメチル−6−オクテニル基、1−デセニル基、2−デセニル基、9−デセニル基、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル基、2−ウンデセニル基、2,4−ウンデカジエニル基、7−テトラデセニル基、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル基、1,5,9−トリメチル1−ビニル−4,8−デカジエニル基、3,7,11,15−テトラメチル−2−ヘキサデセニル基、または3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14−ヘキサドデカテトラエニル基等が挙げられる。
21〜R24としては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましい。
上記Y1およびY2としての、炭素数6〜24のアリール基は特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基が好ましく、フェニル基、フルオレニル基がより好ましい。
1、Y2およびR21〜R24において、「炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素数6〜24のアリール基」中の水素原子の少なくとも一つは置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、各々置換もしくは非置換の、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜32のアシル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数2〜32のアルケニル基、アミノ基、および炭素数2〜24のヘテロアリール基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記式(I)で表される化合物の好ましい例としては、下記化合物(H1−1)〜(H1−7)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。また、下記実施例において、電荷輸送層を構成する重合体を下記記号にて規定する。
上記重合体の末端は特に制限されず、使用される原料(単量体、二量体、多量体など)の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。ここで、本発明に使用される重合体は、上記式(I)で表される化合物のみから形成されていてもよいし、上記式(I)で表される化合物および他の単量体から形成されていてもよい。好ましくは、上記式(I)で表される化合物のみから形成される。また、その際、重合体は、上記式(I)で表される単一種の化合物のみから形成されていてもよいし、上記式(I)で表される複数種の化合物から形成されていてもよい。
また、他の単量体としては、本発明に係る重合体の特性を阻害しないものであれば特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、ピロール誘導体あるいはフラン誘導体、チアジアゾール等のモノマーやπ共役構造を有するモノマーなどが挙げられる。ここで「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。
本発明に使用される重合体は、上記式(I)で表される一種または二種以上の化合物またはこれらの化合物の多量体を、必要に応じて、その他のモノマーと共に、重合触媒としての金属錯体の存在下で、重合または共重合させる方法により、得ることができる。
ここで、上記式(I)で表される化合物としては、上記に例示した化合物(単量体)を使用することができる。上記に加えて、上記式(I)で表される化合物の二量体または三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物;以後、一括して「多量体」とも称する)を、上記重合または共重合に使用できる。
例えば、上記化合物(H1−1)〜(H1−7)の二量体(H2−1)〜(H2−7)が好ましく使用されうる。
このように二量体等の多量体を用いると、単量体を用いる場合に比して、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。これらの単量体のオリゴマー化した化合物は、例えば、J.R.Reynolds et.al., Adv. Mater., 11, 1379 (1999)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。また、上記単量体の二量体は、T.M.Swager et.al., Journal of the American Chemical Society, 119, 12568 (1997)に記載の方法または当該方法を適宜修飾した方法によって、合成することができる。
例えば、上記重合体の単量体(H1−1)の二量体である、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)ダイマー(H2−1)は、公知の方法により製造される。
(重合体の重合法)
重合方法としては、特に制限されず、例えば、特開2000−106223号公報に記載の方法など、公知の重合方法が適用できる。具体的には、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等が挙げられる。これらのうち、電解重合法を用いた重合法が好ましく、より好ましくは電解重合法と光照射とを組み合わせた光重合法である。電解重合法と光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用することにより、酸化チタン表面に緻密に重合体の層を形成できる。
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま固体の電荷輸送層の形成につながる。即ち、以下のような電解重合法が行われる。一般的には、重合体を構成するモノマー、支持電解質、および溶媒、ならびに必要に応じ添加剤を含む混合物を用いる。
前記式(I)で表される単量体または該単量体の多量体ならびに必要に応じて他のモノマーを、適当な溶媒に溶解し、これに支持電解質を添加して、電解重合溶液を作製する。
ここで、溶媒としては、支持電解質および上記単量体或いはその多量体を溶解できるものであれば特に限定されないが、電位窓の比較的広い有機溶剤を使用することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、プロピレンカーボネート、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。または、上記溶媒に、必要に応じて水やその他の有機溶剤を加えて混合溶媒として使用してもよい。また、上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶媒に対する溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられる。具体的には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、Li[(CF3SO22N]、(n−C494NBF4、(n−C494NPF4、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの塩類が好ましく挙げられる。または、特開2000−106223号公報に記載されるポリマー電解質(例えば、同公報中のPA−1〜PA−10)を支持電解質として使用してもよい。なお、上記支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
電荷輸送層に添加しうる他の添加剤としては、例えば、N(PhBr)3SbCl6、NOPF6、SbCl5、I2、Br2、HClO4、(n−C494ClO4、トリフルオロ酢酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、FeCl3、AuCl3、NOSbF6、AsF5、NOBF4、LiBF4、H3[PMo1240]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのアクセプタードーピング剤、ホールをトラップしにくいバインダー樹脂、レベリング剤等の塗布性改良剤等の各種添加剤が挙げられる。上記添加剤は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
次いで、第一電極2および光電変換層6を形成した基体1をこの電解重合溶液に浸し、光電変換層6を作用電極として、白金線や白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClやAg/AgNO3などを用いて、直流電解する。電解重合溶液中の前記単量体またはその多量体の濃度は、特に制限されないが、0.1〜1000mmol/L程度が好適であり、1〜100mmol/L程度がより好ましい。また、支持電解質濃度は、0.01〜10mol/L程度が好適であり、0.05〜2mol/L程度がより好ましい。また、印加電流密度としては、0.01mA/cm2〜1000mA/cm2の範囲であることが好ましく、1mA/cm2〜500mA/cm2の範囲であることがより好ましい。保持電圧は、−0.5〜+0.2Vであることが好ましく、−0.3〜0.0Vであることがより好ましい。電解重合溶液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。また、当該電解重合に光を照射して重合する光重合法を組み合わせて使用してもよい。照射する光の波長は350〜800nmであると好ましく、430nmを超えて800nm以下であるとより好ましい。なお、光源としてはキセノンランプを用いることが好ましい。また、光の強度は、1〜100mW/cm2であることが好ましく、1〜50mW/cm2であることがより好ましい。このように光照射を行いながら電解重合を行うことにより、光電変換層(半導体層)の表面に緻密に重合体の層を形成できる。なお、電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
重合体の重合度把握は、電解重合で得られた重合体では困難であるが、重合後形成された固体の電荷輸送層の溶媒溶解性は大きく低下するため、重合体かどうかの確認方法としては、式(I)の化合物もしくは前記化合物の多量体の溶解が可能な溶媒である、テトラヒドロフラン(THF)に固体電荷輸送層を浸漬させ、その溶解度で判断できる。
具体的には、25mLのサンプル瓶に化合物(重合体)10mgをとり、THF 10mLを添加して、超音波(25kHz、150W 超音波工業(株)COLLECTOR CURRENT1.5A超音波工業製150)を5分間照射したときに、溶解している化合物が5mg以下の場合は重合していると規定する。
好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)に固体の電荷輸送層を浸漬させた際の溶解度が0.1〜3mgである。
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、例えば、前記式(I)で表される単量体またはその多量体等を以下のような重合触媒を用いて重合することができる。
重合触媒は、特に制限されないが、例えば、塩化鉄(III)(iron(III) chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III) p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)およびその水和物等が挙げられる。
また、重合触媒に加えて、重合速度調整剤を化学重合に使用してもよい。重合速度調整剤としては、特に制限されないが、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤があり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はない。例えば、重合触媒が塩化鉄(III)およびその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)の様な芳香族オキシスルホン酸などが挙げられる。また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)およびその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて光電変換層上に供給されてもよいが、光電変換層上で重合し、固体の電荷輸送層を形成することが好ましい態様である。すなわち、単量体またはこれらの多量体の重合を、前記光電変換層上で行うことが好ましい。
この場合、上記式(I)の単量体またはその多量体等、支持電解質または重合触媒、重合速度調整剤、その他の添加剤、および溶媒を含有する固体電荷輸送層形成用溶液が用いられる。固体電荷輸送層形成用溶液の溶媒としては、電解重合溶液の溶剤として例示したものを使用することができる。
固体電荷輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる式(I)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤およびその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件および望まれる重合後の膜厚により異なるが、概ねその質量濃度(固形分の濃度)は、1〜50質量%の範囲である。
前記固体電荷輸送層形成用溶液を光電変換層上に塗布法により塗布した後、あるいは、光電変換層を前記固体電荷輸送層形成用溶液に浸漬させたまま、重合反応を行なう。
重合反応の条件は、用いる上記式(I)の単量体またはその多量体等、前記重合触媒、および前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。具体的には、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、米国特許第2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート、および米国特許第2761418号、同3508947号、同2761791号記載の多層同時塗布方法等の各種塗布法を用いることができる。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。この場合の塗布回数は、特に制限されず、所望の固体電荷輸送層の厚みに応じて適宜選択できる。
固体の電荷輸送層中の式(I)で表される化合物または前記化合物の多量体を重合して形成される重合物の含有量は、特に制限されない。電荷(正孔)輸送特性、光電変換層の界面近傍で発生した励起子の消滅の抑制・防止能などを考慮すると、全単量体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、電荷の再結合を防止する観点などから、支持電解質と有機塩基とを溶媒に溶解させた溶液に浸漬させてもよい。この際、支持電解質は、上記電荷輸送層作製時の電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の支持電解質が使用できる。支持電解質は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、電解重合溶液中の支持電解質と、電荷再結合防止のための支持電解質とは、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶液中の支持電解質の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜30mmol/L程度がより好ましい。また、有機塩基としては、特に制限されないが、4−tert−ブチルピリジン、ルチジン等が挙げられる。有機塩基は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶液中の有機塩基の濃度は、特に制限されないが、5〜100mmol/L程度が好適であり、10〜60mmol/L程度がより好ましい。溶媒は、上記電解重合溶液の作製で使用されるものと同様の溶媒が使用できる。なお、電解重合溶液中の溶媒と、電荷再結合防止のための溶媒とは、同じであっても異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
固体の電荷輸送層(正孔輸送層)の伝導度を高めるために、重合体は正孔ドープされることが好ましい。この際の、正孔ドープ量は、特に制限されないが、式(I)の化合物あたり、0.15〜0.66(個)であることが好ましい。
電解重合では、式(I)で表される化合物由来の構造を有する重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープされる。
また、光電変換層の増感色素の酸化体を還元するためには、本発明に使用される重合体のイオン化ポテンシャルは、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルよりも小さいことが好ましい。重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は、特に制限されず、使用する増感色素によって異なるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
また、可視光吸収率が低いと吸収による光の損失が少なく、光による劣化も抑えられることから、固体電荷輸送層としては1.0以下の吸光度が好ましい。また、重合体の重合度が高まると吸光度はやや高まり、好ましい電荷(正孔)輸送能を有する重合度を出すためには、吸光度として、0.2以上の吸光度を示す重合度を有する電荷輸送層が好ましい。したがって、本発明に係る重合体は、400〜700nmでの吸光度(400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値)が0.2〜1.0であることが好ましい。
本明細書において、固体の電荷輸送層(重合体)の吸光度は、電解重合前後での作用極の吸光度差を用いて規定され、この際、吸光度は、400〜700nmの波長領域での吸光度の平均値を意味する。吸光度は、分光光度計(JASCO V−530)を用いて測定される。
[第二電極]
第二電極は、電荷輸送層(正孔輸送層)と接して配置され、任意の導電性材料で構成されうる。絶縁性の物質でも、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用することができる。第二電極は、素子の電気抵抗を低減する等の観点から、電荷輸送層との接触が良好であることが好ましい。また、第二電極は、電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。このような材料としては、特に制限されないが、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム、ロジウム、ルテニウム、マグネシウム、インジウム等の金属薄膜、炭素、カーボンブラック、導電性高分子、導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等の有機導電体などが挙げられる。好ましくは金などの金属薄膜である。
また、第二電極の厚みは、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましい。また、第二電極の表面抵抗値は、特に制限されず、可能な限り低い値であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値は、80Ω/cm2以下であることが好ましく、20Ω/cm2以下であることがより好ましい。なお、第二電極の表面抵抗の下限は、可能な限り低いことが好ましいため、特に規定する必要はないが、0.01Ω/cm2以上であれば十分である。
以上のような構成を有する色素増感型太陽電池は、基体の外側から光が照射されると、素子内部の光電変換層の半導体層に担持された増感色素が励起されて電子を放出する。励起された電子は、半導体に注入され、その後第一電極に移動する。第一電極に移動した電子は、外部回路を通じて第二電極に移動し、電荷輸送層に供給される。そして、(電子を放出して)酸化された増感色素は、電荷輸送層から電子を受け取り、基底状態に戻る。このようなサイクルを繰り返すことで、光が電気に変換される。
<その他の構成>
本発明に係る製造方法により製造される色素増感型太陽電池は、例えばインターコネクタにより電気的に接続された複数の太陽電池セル(上記の各部材を有する光電変換素子部分)と、それを挟持する一対の保護部材と、一対の保護部材と複数の太陽電池との間の隙間に充填された封止樹脂とを有する。一対の保護部材のうちの一方は、前述の光電変換素子の基体となる。一対の保護部材は両方が透明であってもよいし、一方のみが透明であってもよい。
本発明に係る製造方法により製造される色素増感型太陽電池の構造の例には、Z型モジュール、W型モジュールが含まれる。Z型モジュールは、対向する一対の保護部材のうち、一方の保護部材に複数の色素を担持した多孔質な半導体層を、他方の基体に複数の電荷輸送層を形成し、これらを貼り合わせた構造を有する。W型モジュールは、保護部材のそれぞれに一つおきに色素を担持した多孔質な半導体層および電荷輸送層の積層体を形成し、セルが互い違いとなるように貼り合わせた構造を有する。
本発明に係る製造方法により製造される色素増感型太陽電池に、太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された増感色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体および外部負荷を経由して第二電極に移動して、電荷輸送層の電荷輸送材料に供給される。一方、半導体に電子を移動させた増感色素は酸化体となっているが、第二電極から電荷輸送層の電荷輸送材料を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層の電荷輸送材料は酸化されて、再び第二電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、単位「mol/L」は「M」とも記載することがある。
〔色素増感型太陽電池の作製〕
(実施例1)
以下のようにして、色素増感型太陽電池を製造した。
<バリア層の形成>
ガラス基板上に、第一電極として、シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)をスパッタリングして透明導電層(FTO)を形成し、導電性ガラス基板(第一電極)を得た。導電性ガラス基板(第一電極)の厚みは1.1mmであった。得られた導電性ガラス基板の透明導電層(FTO)上に、テトラキスイソポロポキシチタン 1.2mLと、アセチルアセトン 0.8mLとをエタノール 18mLに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により塗布した後、450℃で8分間加熱した。それにより、透明導電膜(FTO)上に、厚み50nmの酸化チタンの薄層からなるバリア層を形成した。
<光電変換層の形成>
(1)半導体層(多孔質層)の形成
上記バリア層上に、酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロースを10重量%アセチルアセトン水に分散)を、スクリーン印刷法(塗布面積:49mm2)により塗布した。得られた塗膜を、200℃で10分間、および500℃で15分間焼成して、厚さが3.0μmで空隙率が60体積%の酸化チタンからなる多孔質の半導体層(多孔質層)を得た。
(2)増感色素の吸着
増感色素の例示化合物A−4(350〜650nmに吸収領域を有するものである)を、第一溶媒としてのアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒(沸点 82〜83℃、比重 0.783g/mL、30℃における粘度 1.82×10-3Pa・s、基板温度(20℃)における粘度 3.02×10-3Pa・s)に溶解し、5mMの溶液を調製した。この溶液39mg(50μL)を、マイクロピペットを使用して上記酸化チタンの半導体層(多孔質層)を形成したFTOガラス基板上に滴下した。滴下後、半導体層全体の重量(実際には、半導体層を有する基体全体の重量)を測定することによって上記混合溶媒の減少量を測定しながら、室温(20℃)環境で自然乾燥させた。2分間自然乾燥させたところで、半導体層上の残存色素溶液量が16mg(20μL)になったことが確認された。この時点で、後から追加する第二溶媒としてのアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒を、マイクロピペットを用いて23mg(30μL)滴下した。さらに室温環境で15秒間自然乾燥させたのち、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒中、上記の通り増感色素を吸着させた半導体層を有する基体を搖動させて洗浄し、エアー乾燥した。
以上の操作により、色素が担持された多孔質の半導体層(光電変換層)を有する半導体電極を得た。
<電荷輸送層(正孔輸送層)の形成>
3,4−ethylenedioxythiophene(EDOT)の二量体であるBis−EDOT(Kairon Kem社製;K192)と、Li[(CF3SO22N](関東化学株式会社製)とを、それぞれ1×10-3mol/L、0.05mol/Lの濃度となるように、アセトニトリルに溶解した。その後、色素を担持させた半導体電極を、Bis−EDOTと、Li[(CF3SO22N]を溶解したアセトニトリル溶液に浸漬した。
作用極を上記半導体電極、対極を白金線、参照電極をAg/Ag+(AgNO3 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。
FTO基板の半導体層(二酸化チタン層)方向から、光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面における光強度22mW/cm2、430nm以下の波長をカット)、積算電荷量4mCとなるまで保持することによってBis−EDOTを重合し、電荷輸送剤であるPEDOTを有する電荷輸送層を、二酸化チタン層の表面に形成した。得られた半導体電極/PEDOTを有する電荷輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られた電荷輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっていた。
<後処理>
Li[(CF3SO22N]と、t−ブチルピリジンとを、それぞれ15×10-3mol/L、50×10-3mol/Lの濃度となるように、アセトニトリルに溶解した。このアセトニトリル溶液に、上記で得られたFTOガラス基板を10分間浸漬した。その後、半導体電極/電荷輸送層の積層体を自然乾燥し、その後、さらに真空蒸着法により、蒸着速度0.5〜1nm/秒で、金を60nmの厚みで蒸着し、第二電極を形成し、本発明の色素増感型太陽電池を得た。
(実施例2)
色素濃度を0.9mMとし、溶媒を追加してから洗浄工程までの乾燥時間を50秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例3)
色素濃度を1mMとし、溶媒を追加してから洗浄工程までの乾燥時間を30秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例4)
色素濃度を10mMとし、溶媒を追加してから洗浄工程までの乾燥時間を15秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例5)
色素濃度を12mMとし、溶媒を追加してから洗浄工程までの乾燥時間を45秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例6)
色素溶液の滴下後、乾燥温度(基板温度)を35℃として1分間自然乾燥させた(このとき、半導体層上の残存色素溶液量が16mg(20μL)になったことが確認された)こと、一回目の追加(第二)溶媒を滴下した後、乾燥温度を35℃として1分間自然乾燥させたところで、さらに追加(第二)溶媒を23mg(30μL)滴下したこと、および、二回目の追加(第二)溶媒を追加してから洗浄工程までの乾燥時間を10秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。なお、二回目に追加した溶媒は、一回目に追加したものと同様の溶媒を用いた(ただし、基板温度(35℃)における第一溶媒および第二溶媒の粘度は1.44×10-3Pa・sである)。また、二回目の溶媒の追加は、上記の通り、1回目に追加した溶媒を滴下してから1分間自然乾燥させた後に行ったが、このとき、半導体層上の残存色素溶液量が16mg(20μL)になったことが確認された。
(実施例7)
第二溶媒をアセトニトリル(沸点 82℃、比重 0.786g/mL、30℃における粘度 0.29×10-3Pa・s、基板温度(20℃)における粘度 0.34×10-3Pa・s)のみとし、滴下量を30μLとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例8)
第二溶媒をアセトニトリル(30℃における粘度 0.29×10-3Pa・s、基板温度(35℃)における粘度 0.27×10-3Pa・s)のみとし、滴下量を30μLとしたこと以外は、実施例6と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例9)
第二溶媒をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=3:1(体積比)の混合溶媒(沸点 82〜83℃、比重 0.785g/mL、30℃における粘度1.06×10-3Pa・s、基板温度(20℃)における粘度 1.68×10-3Pa・s)とし、滴下量を30μLとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(実施例10)
第二溶媒をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=3:1(体積比)の混合溶媒とし(基板温度(35℃)における第二溶媒粘度 0.86×10-3Pa・s)、滴下量を30μLとしたこと以外は、実施例6と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例1)
溶媒を追加せず、色素溶液を塗布した後、室温(20℃)環境で4分間自然乾燥させて色素溶液を完全に乾燥してから洗浄を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例2)
上記(2)において、増感色素の吸着操作を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
色素濃度が0.3mMの色素溶液を、メスピペットを用いて酸化チタンの半導体層(多孔質層)を形成したFTOガラス基板上に39mg(50μL)滴下した。滴下後は室温(20℃)環境で4分間自然乾燥させて色素溶液を完全に乾燥させた。このとき、半導体層上の残存色素溶液量が0mgになったことが確認された。続いて、色素溶液の滴下、乾燥を上記と同様に2回行った。すなわち、色素溶液の塗布および乾燥(完全乾燥)を合計3回行った。その後、アセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒で洗浄し、エアー乾燥した。
(比較例3)
上記(2)において、増感色素の吸着操作を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
色素吸着を、浸漬法により行った。詳細には、色素濃度が0.3mM溶液5mL中に酸化チタンの半導体層(多孔質層)を形成したFTOガラス基板を10時間浸漬した。その後、当該基板を色素溶液から取り出した後にアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒で洗浄し、エアー乾燥した。
(比較例4)
溶媒を追加せず、色素溶媒を塗布してから洗浄工程までの乾燥時間を3分30秒に変更し、塗布液の残存量が5μLとなるまで乾燥させた状態で洗浄を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例5)
溶媒の代わりに、色素濃度が5mMの色素溶液30μLを塗布し、実施例とほぼ同量の色素吸着量を得るために、室温環境で1分間自然乾燥させたのち洗浄を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
(比較例6)
色素濃度を0.45mMとし、さらに色素溶液の滴下、乾燥(完全乾燥)を合計2回行ったこと以外は、比較例2と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。
〔色素増感型太陽電池の評価〕
上記実施例1〜10および比較例1〜6にて得られた色素増感型太陽電池について、以下の評価を行った。
(色素吸着量の測定)
上記手順により吸着した色素の総量は、増感色素を吸着させ、洗浄および乾燥を行った後(光電変換層を形成する前)の色素吸着済み半導体層を、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて調整した塩基溶液(濃度:7mmol/L)に浸漬することで色素を完全に溶出させ、当該溶液の吸光度を測定することにより求めた。1cm2当たりの色素吸着量に換算した値を表1に示す。
(光電変換効率の測定)
評価試験は、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の擬似太陽光を照射することにより行った。すなわち、色素増感型太陽電池について、I−Vテスターを用いて、室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)および形状因子(曲線因子、フィルファクター)FFを求めた。また、測定されたJsc、Voc、FFから下記式Aに従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
変換効率ηとは、光電変換効率ηと同意であり、太陽電池により光エネルギー(W)が電気エネルギー(W)に変換される効率を意味する。光電変換効率(η(%))は、下記式(A)に基づいて算出した。
式(A) η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P
ここで、Pは入射光強度[mW・cm-2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm-2]、F.F.は形状因子を示す。
(色素吸着後の表面観察:色素析出)
増感色素を吸着させ、洗浄および乾燥を行った後の光電変換層の表面状態を光学顕微鏡によって観察した。なお、評価ランクは以下の通りである。
〇:49mm2あたり、直径50μm以上の析出色素が10個以下
△:49mm2あたり、直径50μm以上の析出色素が10〜15個
×:49mm2あたり、直径50μm以上の析出色素が16個以上
(色素吸着後の表面観察:表面均一性)
増感色素を吸着させ、洗浄および乾燥を行った後の光電変換層の表面状態を、光学顕微鏡を用いた目視による官能試験により評価した。なお、評価ランクは以下の通りである。
〇:均一性が非常に良好
△:均一性が良好
×:均一性が不良
前記色素増感型太陽電池の評価結果を表1に示す。
上記表1中の比較例3と実施例1〜6との比較により、浸漬法を用いて得られた色素増感型太陽電池は電池性能が良好となるものの、色素吸着工程で長時間を要する一方で、本願発明によれば、電池性能を大きく低下させることなく色素吸着工程を極めて短時間にできることが示された。
次に、実施例2、比較例2、比較例6の比較を検討する。これらの例では、色素濃度と色素溶液の追加回数とを考慮すると、いずれの例も半導体層に接触する色素量は等しくなる。すなわち、比較例2では0.3mMの色素溶液50μLを3回、比較例6では0.45mMの色素溶液50μLを2回、半導体層に対して追加するため、半導体層に塗布された色素量は、0.9mMの色素溶液50μLを1回塗布した実施例2と実質的に等しい。しかしながら、実施例2と比較例6との比較では、色素の吸着量、電池性能および色素吸着工程に要する時間のいずれにおいても実施例2が良好であった。また、実施例2と比較例2との対比では、電池性能の点では若干比較例2が実施例2を上回るものの、比較例2は、色素吸着に要する時間が4倍以上となるため、生産性が良好でない。したがって、以上の比較より、本発明に係る実施例2の方が、電池性能を大きく低下させることなく、生産性が極めて向上するという結果を示している。
さらに、実施例1、6、7〜10の比較により、第一溶媒と第二溶媒の粘度もまた、得られる色素増感太陽電池の特性に影響することが示された。
また、色素を半導体層に吸着させた後の表面観察結果によると、比較例1では余剰分の色素が析出し、析出した色素が表面に多数存在しているのが認められたが、実施例1〜6ではいずれも析出した色素は少なく、電池として機能するためには問題の無い程度の個数しか存在していなかった。さらに、比較例5により、色素溶液を複数回塗布する技術では、色素濃度を高くすると、上述したように、色素の析出が起こり、表面均一性が不良となるということが示された。また、比較例4においては、基板の洗浄時には色素溶液が完全に乾燥する直前の状態であったため、色素の析出が発生し、表面均一性が不良となった。
1 基体、
2 第一電極、
3 バリア層、
4 増感色素、
5 半導体、
6 光電変換層、
7 正孔輸送層、
8 第二電極、
9 太陽光、
10 色素増感型太陽電池。

Claims (8)

  1. 基体、第一電極、半導体および増感色素を含有する光電変換層、電荷輸送層、ならびに第二電極を有する色素増感型太陽電池の製造方法であって、
    前記色素および第一溶媒を含む塗布液を前記半導体からなる半導体層に塗布した後、該半導体層に第二溶媒を少なくとも1回以上塗布して前記光電変換層を作製する工程を含む、色素増感型太陽電池の製造方法。
  2. 前記第二溶媒は、前記第一溶媒が完全に乾燥する前に塗布される、請求項1に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  3. 前記塗布液は、前記色素を1mmol/L以上10mmol/L以下の濃度で含む、請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  4. 前記第二溶媒の粘度は、前記第一溶媒の粘度よりも低い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
  5. 前記第一溶媒の粘度の値は、1.5×10-3Pa・s以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  6. 前記第二溶媒の粘度の値は、1.0×10-3Pa・s以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  7. 前記第二溶媒の粘度の値は、前記第一溶媒の粘度の値の50%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池の製造方法により製造される、色素増感型太陽電池。
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