JP5658504B2 - 光電気素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光を電気に変換し、あるいは電気を光に変換する、光電気素子に関する。
近年、光電池や太陽電池等の光電変換による発電素子、有機ELなどの発光素子、エレクトロクロミック表示素子や電子ペーパーなどの光学表示素子、温度・光などを感知するセンサ素子等に、光電気素子が用いられている。
光電気素子の正孔輸送層には、高い正孔輸送特性が必要とされる。またこの正孔輸送層にとって、界面の面積の大きさが重要である。この界面とは、正孔輸送層と正孔輸送層以外の層との界面であって、外部からのエネルギーにより正孔が生成すると共に、外部から正孔が注入されて作用する界面のことをいう。この正孔輸送層は、従来、金属、有機半導体、無機半導体、導電性高分子、導電性カーボンなどから形成されていた。
例えば光電変換素子では、正孔を輸送するための正孔輸送層が、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、トリフェニルジアミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物などの有機物から形成されている。これらの有機物の正孔輸送能力によって、光電変換素子の変換効率が向上しつつある(特許文献1〜3参照)。
また、分子素子型太陽電池の正孔輸送層の形成にあたり、電子供与性分子(ドナー)と電子受容性分子(アクセプター)とが化学結合して得られる構造体を基板上に薄膜形成することも報告されている(非特許文献1参照)。
しかし、上記各文献で報告されている正孔輸送層では、十分な正孔輸送特性と、正孔輸送層として作用するための十分な界面の面積とが両立されておらず、より優れた正孔輸送特性と十分に広い界面を有する正孔輸送層が望まれているのが、現状である。
特開2009−088045号公報 特開2009−065216号公報 特開2009−054936号公報
今堀博,福住俊一, 「分子太陽電池の展望」, 化学工業2001年7月号, 41頁
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、優れた正孔輸送特性と十分広い反応界面を有する正孔輸送層を備え、変換効率に優れた光電気素子を提供することを目的とする。
本発明に係る光電気素子は、一対の電極と、この電極間に挟まれている電子輸送層及び正孔輸送層と、電解質溶液とを備え、前記正孔輸送層が繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する第一の有機化合物を備え、前記電解質溶液は前記酸化還元部の還元状態を安定化させるものであり、前記第一の有機化合物と前記電解質溶液とが第一のゲル層を構成する。
本発明に係る光電気素子は、前記第一のゲル層内に存在する増感色素を備えてもよい。
本発明に係る光電気素子は、前記電子輸送層と前記正孔輸送層のうちいずれか一方又は両方と電子授受反応を行う増感色素を備えてもよい。
本発明に係る光電気素子の、200ルクスの光が5分間照射された時点での開放電圧A(V)と、この時点で光が遮蔽されてから5分間経過した時点での開放電圧B(V)とが、次の関係式を満たしてもよい。
(B/A)×100≧10
本発明に係る光電気素子において、前記正孔輸送層がニトロキシラジカルポリマーを含有してもよい。
本発明に係る光電気素子において、前記電子輸送層がビオロゲン誘導体、フェノキシル誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。
本発明に係る光電気素子は、前記電子輸送層は繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する第二の有機化合物を備え、前記第二の有機化合物と前記電解質溶液とが第二のゲル層を構成し、前記電子輸送層の酸化還元電位が前記正孔輸送層の酸化還元電位よりも貴であってもよい。
本発明によれば、正孔輸送層の正孔輸送特性が向上すると共に反応界面が広くなり、光電気素子の変換効率が向上する。
本発明の実施の形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態の他の例を示す概略断面図である。 実施例1で得られた光電気素子に光を照射し、続いて遮光した場合の開放電圧の変化の測定結果を示すグラフである。 比較例1で得られた光電気素子に光を照射し、続いて遮光した場合の開放電圧の変化の測定結果を示すグラフである。
本発明の一実施形態では、光電気素子は、一対の電極2,5間に電子輸送層3と正孔輸送層4を挟んで形成される。前記正孔輸送層4は、繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する有機化合物を備える。前記有機化合物は酸化還元部の酸化状態を安定化させる電解質溶液を含んでゲル層6として形成され、増感色素が前記ゲル層6内に存在している。
本実施形態では、正孔輸送層4の有機化合物と電解質溶液がゲル層6を構成することで、有機化合物の反応界面が大きくなり、変換効率が向上する。
更に、本実施形態では、正孔輸送層4の有機化合物と電解質溶液がゲル層6を構成すると共に増感色素がゲル層6内に存在することで、有機化合物の反応界面が大きくなり、変換効率が向上すると共に、増感色素から正孔輸送層4の有機化合物への正孔の受け渡し効率が向上して正孔の輸送効率が向上する。
本実施形態においては、前記正孔輸送層4がニトロキシラジカルポリマーを含むことが好ましい。ニトロキシラジカルポリマーでは、ニトロキシラジカル部位が高速な正孔輸送性機能を発現し、かつ、酸化状態としての安定性も有し、また、ポリマー化した構造であることから層全体として高い正孔輸送機能を発現する効果をもたらす。
また、本実施形態において、前記電子輸送層3がビオロゲン誘導体、フェノキシル誘導体及びイミド誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、電子輸送層3が有機化合物としての安定性を有し、かつ高い電子輸送性を発現するものであり、電子輸送層3として効果的な機能を発現する。
本実施形態に係る光電気素子は、200ルクスの光が5分間照射された時点での開放電圧A(V)と、この時点で光が遮蔽されてから5分間経過した時点での開放電圧B(V)とが、次の関係式を満たすことが好ましい。
(B/A)×100≧10
本実施形態に係る光電気素子は、次のように構成されてもよい。
この光電気素子は、一対の電極2,5間に電子輸送層3と正孔輸送層4を挟んで形成される。電子輸送層3は、繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する有機化合物を備えて形成される。前記有機化合物は酸化還元部の酸化還元状態を安定化させる電解質溶液を含んでゲル層6として形成される。一方、正孔輸送層4は、繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する有機化合物を備えて形成される。前記有機化合物は酸化還元部の酸化還元状態を安定化させる電解質溶液を含んでゲル層7として形成される。そして、電子輸送層3は正孔輸送層4に対して酸化還元電位が貴となっている。
また、電子輸送層3と正孔輸送層4のいずれか一方又は両方と電子授受反応を行う増感色素を備える構成とする。
このように、電子輸送層3および正孔輸送層4をゲル層6、7として形成することにより、電解液の漏液の問題が無い光電気素子を提供することが可能となる。また、電子輸送層3および正孔輸送層4をゲル層6、7として形成し、かつ、電子輸送層3及び正孔輸送層4の一方又は両方を増感色素と相互作用させることにより、十分広い反応界面を有し変換効率に優れた光電気素子を提供することが可能となる。これにより、液漏れの無い、高出力な光電気素子、及び色素増感型太陽電池を提供することができる。
以下、本実施形態を更に具体的に説明する。
図1に示すように、光電気素子は一対の電極2,5間に電子輸送層3と正孔輸送層4を挟んで形成される。すなわち、光電気素子は、第一の電極2と、第二の電極5と、この第一の電極2と第二の電極5との間に挟まれた電子輸送層3及び正孔輸送層4とを備える。
各電極2,5の外側にはそれぞれ基材1,8が設けられている。すなわち、第一の電極2上には第一の基材1が設けられ、第二の電極5上には第二の基材8が設けられている。
正孔輸送層4は酸化還元部を有する有機化合物(第一の有機化合物)から形成される。この第一の有機化合物は電解質溶液を含んで膨潤することでゲル層6(第一のゲル層6)を形成する。すなわち酸化還元部を有する第一の有機化合物と電解質溶液とが第一のゲル層6を構成し、正孔輸送層4は第一のゲル層6内の第一の有機化合物で構成される。第一のゲル層6内には増感色素が存在している。
本実施形態ではこのように光電気素子が増感色素を備えているが、光電気素子は増感色素を備えていなくてもよい。
第一の電極2は、電子輸送層3と電気的に接続されている。第一の電極2は、電子輸送層3から電子を外部に取り出し、或いは電子輸送層3に電子を注入する機能を発揮する。第一の電極2は、電子輸送層3を保持する機能も有してもよい。第二の電極5は、正孔輸送層4と電気的に接続される。第二の電極5は、正孔輸送層4から電子を外部に取り出し、或いは正孔輸送層4に正孔を注入する機能を発揮する。尚、外部とは、光電気素子に電気的に接続された電源回路や二次電池やキャパシタなどをいう。
第一の電極2は、金属等の導電性材料の単独膜から形成されてもよいが、本実施形態では、ガラスやフィルムなどの絶縁性の第一の基材1の上に導電性材料が積層することで、第一の基材1上に第一の電極2が形成される。導電性材料の好ましい例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属;炭素;インジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫等の導電性の金属酸化物;前記金属や化合物の複合物;前記金属や化合物上に酸化シリコン、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなどをコートした材料などが挙げられる。第一の電極2の表面抵抗は低い程よいが、好ましくは表面抵抗が200Ω/□以下、より好ましくは50Ω/□以下である。この表面抵抗の下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/□である。
第二の電極5も、金属等の導電性材料の単独膜で形成されてもよいが、本実施形態ではガラスやフィルムなどの絶縁性の第二の基材8に導電性材料が積層することで、第二の基材8上に第二の電極5が形成されている。第二の電極5を形成するための電極材料(導電性材料)としては、作製する素子の種類によるが、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、グラファイト、カーボンナノチューブ、白金を担持したカーボン等の炭素材料、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫等の導電性の金属酸化物;前記金属や化合物の複合物;前記金属や化合物上に酸化シリコン、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなどをコートした材料;ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。
第一の基材1又は第二の基材8の上に、酸化インジウムや酸化スズ、酸化亜鉛などで構成される透明導電性酸化物の層からなる第一の電極2又は第二の電極5が形成される場合、例えばガラスや樹脂などからなる透光性の第一の基材1又は第二の基材8の上にスパッタ法や蒸着法などの真空プロセスによって第一の電極2又は第二の電極5が形成されてもよいし、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷など湿式法により第一の電極2又は第二の電極5が形成されてもよい。
第一の電極2が基材1の上に形成される場合或いは第二の電極5が基材8の上に形成される場合において、光電気素子が発電素子、発光素子、光センサなどである場合のように、第一の基材1又は第二の基材8を光が通過する必要のある場合には、第一の基材1又は第二の基材8の光透過率が高いことが望ましい。この場合の第一の基材1又は第二の基材8の好ましい光透過率は、波長500nmにおいて50%以上であり、より好ましくは80%以上である。第一の電極2及び第二の電極5の厚みは、0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であれば、均一な厚みで第一の電極2及び第二の電極5が形成され、また第一の電極2及び第二の電極5の光透過性の低下が抑制され、第一の電極2及び第二の電極5を介して十分な光が電子輸送層3や正孔輸送層4に入射する。
正孔輸送層4とは、光電気素子が光照射環境下において、増感色素から正孔を受け取り、電極まで輸送する機能をもつ層を指し、例えば酸化還元電位が銀/塩化銀参照電極に対して+100mVよりも卑であるような酸化還元部を有する層をいう。
正孔輸送層4を構成する有機化合物(第一の有機化合物)は、その分子内の一部として繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有すると共に、他の一部として電解質溶液を含んで膨潤してゲルとなる部位(ゲル部位)を有する。酸化還元部はゲル部位に化学的に結合している。第一の有機化合物の分子内での酸化還元部とゲル部位の位置関係は、特に限定されないが、例えばゲル部位によって分子の主鎖などの骨格が形成される場合に、酸化還元部が側鎖として主鎖に結合している。また第一の有機化合物の分子が、ゲル部位を形成する分子骨格と酸化還元部を形成する分子骨格が交互に結合した構造を有してもよい。このように酸化還元部とゲル部位が第一の有機化合物の同一分子内に存在していると、酸化還元部が第一のゲル層6によって、正孔を輸送し易い位置に保持される。
尚、この第一の有機化合物と電解質溶液とから構成される第一のゲル層についての説明は、後述する第二の有機化合物と電解質溶液とから構成される第二のゲル層7についても同様に当てはまる。
ここで、酸化還元(酸化還元反応)とは、イオンや原子や化合物が電子を授受することであり、酸化還元部とは、酸化還元反応により安定的に電子を授受することができる部位をいうものである。
ゲル層とは、酸化還元部を有する有機化合物が電解質溶液によって膨潤することで形成される層をいう。すなわちゲル状態では有機化合物は立体網目構造をとり、この網目空間内を液体が満たしている状態をゲル層という。
「繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部」とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体となる部位を指す。酸化還元部は酸化体と還元体が同一電荷を持つ酸化還元系構成物質であることが好ましい。
第一のゲル層6、及び後述する第二のゲル層7における反応界面の大きさに影響を与える物理指標として、膨潤度がある。ここで言う膨潤度は、下式で表される。
(膨潤度)=(ゲルの重量)/(ゲル乾燥体の重量)×100 (%)
ゲル乾燥体とは、第一のゲル層6又は第二のゲル層7を乾燥させることで得られるものを指す。第一のゲル層6又は第二のゲル層7を乾燥させるとは、第一のゲル層6又は第二のゲル層7に内包される溶液を除去すること、特に溶媒を除去することを指す。第一のゲル層6又は第二のゲル層7を乾燥させる方法としては、加熱、真空環境中で第一のゲル層6又は第二のゲル層7から溶液または溶媒を除去する方法や、他の溶媒での第一のゲル層6又は第二のゲル層7に内包される溶液または溶媒を除去する方法などが挙げられる。なお、他の溶媒で第一のゲル層6又は第二のゲル層7に内包される溶液または溶媒を除去するに際しては、内包される溶液または溶媒と親和性が高く、かつ、加熱、真空環境中で除去しやすい溶媒を選択することが、第一のゲル層6又は第二のゲル層7に内包される溶液または溶媒の効率的な除去効果をもたらす。
第一のゲル層6の膨潤度は、110〜3000%であることが好ましく、150〜500%であれば更に好ましい。この膨潤度が110%以上、特に150%以上であるとゲル層6中での電解質成分の量が充分に多くなって酸化還元部の安定化の程度が大きくなり、またこの膨潤度が3000%以下、特に500%以下であることで第一のゲル層6中での酸化還元部の密度が充分に大きくなって正孔輸送層4が非常に優れた正孔輸送能力を発揮し、これにより光電気素子の特性が更に向上する。
酸化還元部とゲル部位を有する第一の有機化合物は、低分子体でもよいし、高分子体でもよい。第一の有機化合物が低分子体である場合、第一の有機化合物として、水素結合などを介したいわゆる低分子ゲルを形成する有機化合物を使用することができる。また第一の有機化合物が高分子体の場合は、第一の有機化合物が数平均分子量1000以上の有機化合物であれば、自発的にゲル化の機能を発現することができるために好ましい。高分子体の場合の第一の有機化合物の分子量の上限は特に制限されないが、100万以下であることが好ましい。また第一のゲル層6のゲルの状態は、例えば、こんにゃく状や、イオン交換膜のような外観形状であることが好ましいが、特に制限されるものではない。
また酸化還元部は、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体となる部位を指す。また、酸化還元部は酸化体と還元体が同一電荷を持つ酸化還元系構成物質であることが好ましい。
上記のような酸化還元部とゲル部位とを一つの分子中に有する第一の有機化合物は、例えば次の一般式で表される。
(Xnj:Y
(Xおよび(Xnjはゲル部位を示し、Xはゲル部位を形成する化合物のモノマーを示す。ゲル部位はポリマー骨格で構成され得る。モノマーの重合度nは、n=1〜10万の範囲が好ましい。YはXに結合している酸化還元部を示す。j,kはそれぞれ1分子中に含まれる(X、Yの数を表す任意の整数であり、いずれも1〜10万の範囲が好ましい。酸化還元部Yはゲル部位(Xおよび(Xnjを構成しているポリマー骨格のいかなる部位に結合していてもよい。酸化還元部Yは種類の異なる材料(原子団)を含んでいてもよく、この場合は電子交換反応の観点から酸化還元電位が近い材料(原子団)が好ましい。
酸化還元部とゲル部位を一分子中に有し正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物としては、不対電子を有する化学種、すなわちラジカルを有する化合物(安定ラジカル化合物)などが挙げられる。安定ラジカル化合物としては、分子中にニトロキシド(NO・)を有するラジカル化合物が好ましい。安定ラジカル化合物の分子量(数平均分子量)は1000以上であることが好ましく、この場合、安定ラジカル化合物が常温では固体になり、或いは固体に近づくため、揮発しにくくなり、素子の安定性が向上する。
この安定ラジカル化合物についてさらに説明する。安定ラジカル化合物は、電気化学的酸化反応または電気化学的還元反応の少なくとも一方の過程でラジカル化合物を生成する化合物である。安定ラジカル化合物の種類は特に限定されないが、安定なラジカル化合物であることが好ましい。特に安定ラジカル化合物が、次の[化1]および[化2]の何れか一方又は両方の構造単位を含む有機化合物であることが好ましい。
Figure 0005658504
上記[化1]中、置換基Rは、置換または非置換のC2〜C30のアルキレン基、C2〜C30のアルケニレン基、又はC4〜C30のアリーレン基であり、Xは、ニトロキシルラジカル基の他、オキシラジカル基、硫黄ラジカル基、ヒドラジルラジカル基、炭素ラジカル基、又はホウ素ラジカル基などが好ましい。nは、2以上の整数である。
Figure 0005658504
上記[化2]中、置換基RおよびRはそれぞれ独立に、置換または非置換のC2〜C30のアルキレン基、C2〜C30のアルケニレン基、又はC4〜C30のアリーレン基であり、Yは、ニトキシルラジカル基、硫黄ラジカル基、ヒドラジルラジカル基、又は炭素ラジカル基であり、nは、2以上の整数である。
[化1]および式[化2]に示される安定ラジカル化合物としては、例えば、オキシラジカル化合物、ニトロキシルラジカル化合物、炭素ラジカル化合物、窒素ラジカル化合物、ホウ素ラジカル化合物、硫黄ラジカル化合物等が挙げられる。
上記オキシラジカル化合物の具体例としては、例えば次の[化3]〜[化4]に示されるアリールオキシラジカル化合物、[化5]に示されるセミキノンラジカル化合物等が挙げられる。
Figure 0005658504
Figure 0005658504
Figure 0005658504
[化3]〜[化4]中、置換基R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族のC1〜C30の炭化水素基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシル基である。[化5]中、nは、2以上の整数である。
また、ニトロキシルラジカル化合物の具体例としては、下記[化6]で示されるペリジノキシ環を有する安定ラジカル化合物、[化7]で示されるピロリジノキシ環を有する安定ラジカル化合物、[化8]で示されるピロリノキン環を有する安定ラジカル化合物、[化9]で示されるニトロニルニトロキシド構造を有する安定ラジカル化合物などが挙げられる。
Figure 0005658504
Figure 0005658504
Figure 0005658504
Figure 0005658504
[化6]〜[化8]中、R〜R10およびR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族のC1〜C30の炭化水素基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシル基である。また、[化9]において、nは2以上の整数である。
また、上記ニトロキシルラジカル化合物の具体例としては、次の[化10]で示される三価のヒドラジル基を有するラジカル化合物、[化11]で示される三価のフェルダジル基を有するラジカル化合物、[化12]で示されるアミノトリアジン構造を有するラジカル化合物などが挙げられる。
Figure 0005658504
Figure 0005658504
Figure 0005658504
[化10]〜[化12]中、R11〜R19は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族のC1〜C30の炭化水素基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシル基である。
以上の[化1]〜[化12]で示される有機高分子化合物は安定性に優れ、その結果、光電変換素子やエネルギー蓄積素子において安定して使用できる。このため、[化1]〜[化12]の有機高分子化合物が使用されると、安定性に優れしかも応答速度に優れた光電気素子が容易に得られる。
また、室温で固体状態となる安定ラジカルが用いられることが好ましい。この場合、ラジカル化合物と電子輸送層3との接触が安定に保たれ、他の化学物質との副反応や溶融、拡散による変成、劣化が抑制される。その結果、光電気素子の安定性が優れたものになる。
また、不対電子を有する化学種を含んだポリマー、すなわちラジカルを有するポリマー化合物などが用いられることが好ましく、特に、分子中にニトロキシド(NO・)を有するニトロキシラジカルポリマー化合物が用いられることが好ましい。
高分子体である有機化合物の好ましい例としては、下記[化13]〜[化16]で示される化合物(ニトロキシラジカルポリマー)が挙げられる。
なお、[化13]〜[化16]は
[化13]PTGE:Poly(TEMPO grycidylether)
[化14]PTNB:Poly(TEMPO norbornene)
[化15]PTAm:Poly(TEMPO acrylamide)
[化16]PPGE:Poly(PROXYL grycidylether)
である。
Figure 0005658504
Figure 0005658504
Figure 0005658504
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[化13]〜[化16]におけるnは、モノマーの重合度を示すものであり、1〜10万の範囲が好ましい。
上記の酸化還元部とポリマー骨格を有する第一の有機化合物は、ポリマー骨格がその骨格間に電解質溶液を含有して膨潤することで第一のゲル層6を形成する。このように正孔輸送層4に電解質溶液が含まれることで、酸化還元部の酸化還元反応により形成されるイオン状態が電解質溶液中の対イオンで補償され、酸化還元部が安定化する。
電解質溶液は、電解質と溶媒を含むものであればよい。電解質としては、支持塩と、酸化体と還元体からなる酸化還元系構成物質とが挙げられ、これらのうちのいずれか一方であっても、両方であってもよい。支持塩(支持電解質)としては、例えば過塩素酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、イミダゾリウム塩やピリジニウム塩などのアンモニウム塩、過塩素酸リチウムや四フッ化ホウ素酸カリウムなどアルカリ金属塩などが挙げられる。酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で存在する物質を意味するものであり、このような酸化還元系構成物質としては、例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III)−タリウムイオン(I)、水銀イオン(II)−水銀イオン(I)、ルテニウムイオン(III)−ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III)−鉄イオン(II)、ニッケルイオン(II)−ニッケルイオン(III)、バナジウムイオン(III)−バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
電解質溶液を構成する溶媒としては、水、有機溶媒、イオン液体のいずれか少なくとも一つを含む溶媒が挙げられる。
電解質溶液を構成する溶媒として水や有機溶媒を用いられることによって、第一の有機化合物の酸化還元部の還元状態が安定化し、より安定して正孔が輸送される。溶媒としては水性溶媒及び有機溶媒のいずれも使用され得るが、酸化還元部がより安定化するためには、イオン伝導性に優れた有機溶媒が好ましい。このようなイオン伝導性に優れた有機溶媒としては例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。また、特に光電気素子が光電変換素子として形成される場合、その太陽電池出力特性を向上させる観点からは、溶媒がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、γ―ブチロラクトン、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、吉草酸ニトリル等のニトリル化合物などであることが好ましい。
また電解質溶液の溶媒としてイオン液体が用いられると、酸化還元部の安定化作用が特に向上する。しかもイオン液体は揮発性がなく、難燃性が高いために安定性に優れる。イオン液体としては、公知のイオン性液体全般が用いられ得るが、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートなどイミダゾリウム系、ピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、アゾニウムアミン系のイオン性液体や、欧州特許第718288号明細書、国際公開WO95/18456号パンフレット、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、J. Electrochem. Soc.143巻,10号,3099頁(1996年)、Inorg.Chem. 35巻,1168頁(1996年)に記載されたイオン液体が挙げられる。
上記のような酸化還元部を有する第一の有機化合物と電解質溶液とで構成される第一のゲル層6が第一の電極2の表面上に設けられることによって、正孔輸送層4が形成される。
正孔輸送層4の厚みは、良好な電子輸送性を維持する観点から、10nm〜10mmの範囲であることが好ましく、100nm〜100μmの範囲であれば特に好ましい。この厚みであれば正孔輸送層4の正孔輸送特性の向上と界面の大面積化とがより高いレベルで両立する。
第一の電極2の表面上に正孔輸送層4が設けられるにあたっては、例えばスパッタ法や蒸着法などの真空プロセスにより電極2の表面上に第一の有機化合物を堆積させる方法など、適宜の方法が採用される。特に第一の電極2上に第一の有機化合物を含有する溶液などが塗布される湿式の形成方法が、より簡便で低コストな製法であることから好ましい。正孔輸送層4が数平均分子量1000以上のいわゆる高分子体の第一の有機化合物から形成される場合は、成形性の観点から湿式の形成方法が特に好ましい。湿式の形成方法のプロセスとしては、スピンコート法、液滴を滴下乾燥するドロップキャスト法、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷法などが、挙げられる。
本実施形態における増感色素としては、公知の材料が用いられ得る。この増感色素として、例えば、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。または、RuL(HO)タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体(ここで、Lは、4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンを示す。)、または、ルテニウム−トリス(RuL)、ルテニウム−ビス(RuL)、オスニウム−トリス(OsL)、オスニウム−ビス(OsL)などのタイプの遷移金属錯体、または亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。また、例えば、「FPD・DSSC・光メモリーと機能性色素の最新技術と材料開発」(株式会社エヌ・ティー・エス)のDSSCの章にあるような色素も挙げられる。中でも会合性を有する増感色素は、光電変換時の電荷分離を促進する観点から好ましい。会合体を形成して良好な効果を発揮する増感色素としては、例えば[化17]の構造式で示される増感色素が好ましい。
Figure 0005658504
[化17]の構造式において、X,Xはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環、或いはこれらの基を少なくとも1種類以上有する有機基であり、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。上記の[化17]の構造式で示されるような増感色素は会合性を有することが知られている。このような増感色素が用いられる場合、電子輸送材料と正孔輸送材料に存在する電子と正孔との再結合が劇的に減り、このため光電変換素子の変換効率が向上する。
この増感色素は第一のゲル層6内に存在している。特に増感色素が、第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物と増感色素との間の物理的または化学的作用などによって、第一のゲル層6内に固定化されていることが好ましい。
「増感色素が第一のゲル層6内に存在している」とは、増感色素が第一のゲル層6の表層のみに存在するのではなく、その内部にも存在していることを意味する。これにより、第一のゲル層6内に存在する増感色素の量がある値以上にある状態が持続的に保たれ、光電気素子の出力が向上する。
なお、「増感色素が第一のゲル層6内に存在している状態」には、「増感色素が第一のゲル層6を構成する電解質溶液中に存在している状態」と、「増感色素が第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物と物理的・化学的に相互作用することにより第一のゲル層6中に存在している状態」とが含まれる。増感色素は第一のゲル層6内の全体に亘って存在していることが好ましい。
また、「増感色素が第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物と物理的な相互作用により第一のゲル層6中に保持されている状態」とは、例えば、第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物が、増感色素の分子の移動を妨げる構造を有している状態が挙げられる。増感色素の分子の移動を妨げる構造としては、第一の有機化合物がアルキル鎖などの各種分子鎖による立体障害を発現する構造、または、第一の有機化合物の分子鎖間に存在する空隙サイズが増感色素の分子の移動を抑制することができる程度に小さくなっている構造などが挙げられる。また、物理的相互作用を発現する要因を、増感色素が有していることも有効である。具体的には、増感色素がアルキル鎖などの各種分子鎖による立体障害を発現する構造を有していることや、増感色素同士が架橋するなどして増感色素の分子サイズが大きくなっている構造を有していることなどが、有効である。
また、「増感色素が第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物と化学的な相互作用により第一のゲル層6中に存在している状態」とは、例えば共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合などや、疎水性相互作用、親水性相互作用、静電的相互作用に基づく力などの相互作用により、第一のゲル層6内に増感色素が保持されている状態が挙げられる。特に、増感色素と第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物との間の化学的相互作用によって増感色素が第一のゲル層6内に固定されると、増感色素と第一の有機化合物との距離が接近し、電子移動の効率化が可能になる。
第一の有機化合物と増感色素との間の化学的相互作用により第一のゲル層6内に増感色素が固定される場合には、第一の有機化合物および増感色素に官能基が適宜導入され、この官能基を介した化学反応などにより第一の有機化合物に対して増感色素が固定されることが好ましい。このような官能基としては、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ニトロ基、アルキル基、炭酸基、アルデヒド基、チオール基などが挙げられる。また、官能基を介した化学反応の反応形式としては、縮合反応、付加反応、開環反応等が挙げられる。
増感色素と第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物との化学的結合に際しては、増感色素における官能基が、この増感色素が光励起した状態において電子密度が低くなる部位付近に導入されることが好ましい。更に、第一のゲル層6中の第一の有機化合物における官能基が、この第一の有機化合物中の正孔輸送に関与する部位付近に導入されていることが好ましい。この場合、第一の有機化合物から増感色素への電子移動の効率および第一の有機化合物中での正孔輸送の効率が、向上する。特に、増感色素と第一のゲル層6を構成する有機化合物とが、増感色素の電子雲と第一の有機化合物の電子雲とを結び付ける電子輸送性の高い結合基で結合されると、増感色素から第一の有機化合物への効率のよい正孔移動が可能となる。具体的には、増感色素のπ電子雲と第一の有機化合物のπ電子雲とを結び付ける化学結合として、π電子系をもつエステル結合などが挙げられる。
増感色素と第一の有機化合物とが結合するタイミングは、第一の有機化合物がモノマー状態にあるとき、第一の有機化合物がポリマー化するとき、第一の有機化合物がポリマー化した後、第一の有機化合物がゲル化するとき、第一の有機化合物がゲル化した後の、いずれでもよい。具体的な手法の例としては、第一の有機化合物から形成された正孔輸送層4を増感色素を含有する浴に浸漬する方法、第一の有機化合物と増感色素とを含有する塗布液を第二の電極5上に塗布成膜することで正孔輸送層4を形成する方法などが挙げられ、複数の方法が組み合わされてもよい。
第一のゲル層6内の増感色素の含有量は適宜設定されるが、特に増感色素の含有量が第一の有機化合物100質量部に対して0.1質量部以上であれば、第一のゲル層6の単位膜厚あたりの増感色素の量が充分に多くなり、増感色素の光吸収能力が向上し、高い電流値が得られる。特に増感色素の含有量が第一の有機化合物100質量部に対して1000質量部以下であれば、第一の有機化合物の間に過剰量の増感色素が介在することが抑制され、第一の有機化合物間の電子移動が増感色素によって阻害されることが抑制され、高い導電性が確保される。
電子輸送層3を構成する電子輸送材料としては、酸化還元対などの電解質が溶媒中に溶解している電解質溶液などが挙げられる。
電子輸送層3が電解質溶液から構成される場合には、第一のゲル層6を構成する電解質溶液が電子輸送層3を構成してもよい。この場合、第一のゲル層6を構成する電解質溶液が、電子輸送層3の一部を構成する。
電子輸送材料としては、[化18]に示すガルビノヒドロキシラジカルなどのフェノキシル誘導体、[化19]に示すメチルビオロゲンなどのビオロゲン誘導体、[化20]の(a)及び(b)に示すイミド誘導体、[化21]に示すキノン誘導体などが好ましい。この場合、電荷分離により生成された電子が、非常に速い電子移動反応によって効率よく電極まで輸送され、これにより光電気素子の光電変換効率が向上する。
Figure 0005658504
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[化20](a)(b)及び[化21]において、RおよびR〜Rは、それぞれ独立に、フェニレン基、フェニレン基などの芳香族基、アルキレン基、アルキルエーテルなど脂肪族鎖、エーテル基を指す。置換基R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族のC1〜C30の炭化水素基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシル基である。
電解質溶液中での電子輸送材料の濃度は、0.05mM〜5Mが好ましく、0.005M〜0.1Mであれば更に好ましい。
光電気素子が作製される際は、例えば第二の基材8の上に設けられた第二の電極5の上に第一の有機化合物が湿式法等で積層されることで、正孔輸送層4が第二の電極5上に固定して形成される。この正孔輸送層4の上に電子輸送層3、第一の電極2を配置する。電子輸送層3が電解質溶液で構成される場合には、例えば第一の基材1の上に設けられた第一の電極2と第二の基材8の上に設けられた正孔輸送層4との間が封止材で封止された状態で、この正孔輸送層4と第一の電極2との間の隙間に電解質溶液が充填されることで、電子輸送層3が形成される。このとき電解質溶液の一部が正孔輸送層4に浸透すると共にこの正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が膨潤することで、第一のゲル層6が形成される。
以上の説明のように構成される光電気素子は、光電変換素子として機能する。この光電変換素子にあって、第二の基材8側から第二の電極5を通して、或いは第一の基材1側から第一の電極2を通して光が照射されると、増感色素が光を吸収して励起し、生成した励起電子が電子輸送層3に流れ込んで、第一の電極2を経て外部に取り出されると共に、増感色素における正孔が正孔輸送層4から第二の電極5を経て外部に取り出される。
本実施形態に係る光電気素子は、高い蓄電性能を有する。すなわち、光電気素子に光が照射された後、この光電気素子への光が遮蔽された場合の、開放電圧維持率が高いものである。開放電圧維持率は、光電気素子に200ルクスの光が300秒間照射された時点での光電気素子の開放電圧をA(V)、前記時点で光電気素子への光の照射が遮蔽され、その状態が5分間維持された時点での光電気素子の開放電圧をB(V)とした場合、Aに対するBの百分率((B/A)×100(%))で表される。本実施形態に係る光電気素子では、開放電圧維持率が10%以上となることも可能である。すなわち、前記のA及びBが次の関係式を満たすことも可能である。
(B/A)×100≧10
これは、本実施形態では正孔輸送層4に保持された正孔の、メディエータ(電子輸送層を形成する電子輸送材料)への移動が抑制されるためであると推察される。このような蓄電性の高い光電気素子が電源として用いられると、光の照射の有無によって電力の供給が不安定化するようなことが抑制される。
本実施形態において、電子輸送層3および正孔輸送層4を構成する有機化合物が、その分子内の一部として繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有すると共に、他の一部として電解質溶液を含んで膨潤してゲルとなる部位(ゲル部位)を有してもよい。すなわち、正孔輸送層が有機化合物(第一の有機化合物)から構成され、この第一の有機化合物と電解質溶液とから第一のゲル層6が構成されるだけでなく、更に図2に示すように、電子輸送層3が有機化合物(第二の有機化合物)から構成され、この第二の有機化合物と電解質溶液とから第二のゲル層7が構成されてもよい。
図2において、第一の基材1の上に、酸化インジウムや酸化スズ、酸化亜鉛などで構成される透明導電性酸化物の層からなる第一の電極2が形成される場合、例えばガラスや樹脂などからなる透光性の第一の基材1の上にスパッタ法や蒸着法などの真空プロセスによって第一の電極2が形成されてもよいし、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷など湿式法により第一の電極2が形成されてもよい。なお、第二の電極5の正孔輸送層4とは反対側の表面上に上記の第一の基材1のような第二の基材が配置されてもよい。その場合、第一の電極2と同様に第二の電極5が第二の基材の上に形成されてもよい。
上記のような酸化還元部とゲル部位とを一つの分子中に有する第二の有機化合物は、第一の有機化合物と同様に、例えば次の一般式で表される。
(Xnj:Y
(Xおよび(Xnjはゲル部位を示し、Xはゲル部位を形成する化合物のモノマーを示す。ゲル部位はポリマー骨格で構成され得る。モノマーの重合度nは、n=1〜10万の範囲が好ましい。YはXに結合している酸化還元部を示す。j,kはそれぞれ1分子中に含まれる(X、Yの数を表す任意の整数であり、いずれも1〜10万の範囲が好ましい。酸化還元部Yはゲル部位(Xおよび(Xnjを構成しているポリマー骨格のいかなる部位に結合していてもよい。酸化還元部Yは種類の異なる材料(原子団)を含んでいてもよく、この場合は電子交換反応の観点から酸化還元電位が近い材料(原子団)が好ましい。
酸化還元部とゲル部位を一分子中に有し、且つ電子輸送層3として機能する第二の有機化合物としては、キノン類が化学結合して構成されるキノン誘導体骨格を有するポリマー、イミドを含有するイミド誘導体骨格を有するポリマー、フェノキシルを含有するフェノキシル誘導体骨格を有するポリマー、ビオロゲンを含有するビオロゲン誘導体骨格を有するポリマーなどが挙げられる。これらの有機化合物では、それぞれポリマー骨格がゲル部位となり、キノン誘導体骨格、イミド誘導体骨格、フェノキシル誘導体骨格、ビオロゲン誘導体骨格がそれぞれ酸化還元部となる。
上記の有機化合物のうち、キノン類が化学結合したキノン誘導体骨格を有するポリマーの例として、下記[化22]〜[化25]に示される化学構造を有する化合物が挙げられる。[化22]〜[化25]において、Rはメチレン、エチレン、プロパン−1,3−ジエニル、エチリデン、プロパン−2,2−ジイル、アルカンジイル、ベンジリデン、プロピレン、ビニリデン、プロペン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイルなどの飽和又は不飽和炭化水素類;シクロヘキサンジイル、シクロヘキセンジイル、シクロヘキサジエンジイル、フェニレン、ナフタレン、ビフェニレンなど環状炭化水素類;オキサリル、マロニル、サクシニル、グルタニル、アジポイル、アルカンジオイル、セバコイル、フマロイル、マレオイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイルなどケト、二価アシル基;オキシ、オキシメチレノキシ、オキシカルボニルなどエーテル、エステル類;サルファンジイル、サルファニル、サルホニルなど硫黄を含む基;イミノ、ニトリロ、ヒドラゾ、アゾ、アジノ、ジアゾアミノ、ウリレン、アミドなど窒素を含む基;シランジイル、ジシラン−1,2−ジイルなど珪素を含む基;またはこれらの基の末端を置換した基或いは複合した基を示す。
[化22]はポリマー主鎖にアントラキノンが化学結合して構成される有機化合物の例である。[化23]はアントラキノンが繰り返しユニットとしてポリマー主鎖に組み込まれて構成される有機化合物の例である。[化24]はアントラキノンが架橋ユニットとなっている有機化合物の例である。[化25]は酸素原子と分子内水素結合を形成するプロトン供与性基を有するアントラキノンの例である。
Figure 0005658504
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酸化還元部Yがイミドを含有するイミド誘導体骨格を有するポリマーとして、[化26]や[化27]に示すポリイミドが挙げられる。[化26]や[化27]において、R〜Rとしては、フェニレン基などの芳香族基、アルキレン基、アルキルエーテルなど脂肪族鎖、エーテル基などが挙げられる。上記のようなポリイミドは熱イミド化によって得られる。ポリイミドポリマー骨格はR〜Rの部分で架橋していてもよい。第二の有機化合物が溶媒中で膨潤するのみで溶出しないのであれば、ポリイミドポリマー骨格は架橋構造を有さなくてもよい。ポリイミドポリマー骨格がR〜Rの部分で架橋している場合は、その部分がゲル部位(Xおよび(Xnjに相当する。ポリイミドポリマー骨格が架橋構造を有する場合、架橋ユニットにイミド基が含有されていてもよい。イミド基は、電気化学的に可逆な酸化還元特性を示すのであれば、フタルイミドやピロメリットイミドなどが好適である。
Figure 0005658504
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フェノキシルを含有するフェノキシル誘導体骨格を有するポリマーとしては、例えば[化28]に示すようなガルビ化合物(ガルビポリマー)が挙げられる。このガルビ化合物において、ガルビノキシル基([化29]参照)が酸化還元部Yに相当し、ポリマー骨格がゲル部位(Xおよび(Xnjに相当する。
Figure 0005658504
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ビオロゲンを含有するビオロゲン誘導体骨格を有するポリマーとして、例えば、[化30]や[化31]に示すようなポリビオロゲンポリマーが挙げられる。このポリビオロゲンポリマーにおいては、[化32]が酸化還元部Yに相当し、ポリマー骨格がゲル部位(Xおよび(Xnjに相当する。
Figure 0005658504
Figure 0005658504
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なお、[化22]〜[化24]、[化26]〜[化28]、[化30]及び[化31]におけるm、nは、モノマーの重合度を示すものであり、それぞれ1〜10万の範囲が好ましい。
前述したように、上記の酸化還元部とポリマー骨格を有する有機化合物は、ポリマー骨格がその骨格間に電解質溶液を含有して膨潤することでゲル層6を形成する。このように電子輸送層3に電解質溶液が含まれることで、酸化還元部の酸化還元反応により形成されるイオン状態が電解質溶液中の対イオンで補償され、酸化還元部が安定化される。
光電気素子にあっては、電子輸送層3は正孔輸送層4に対して酸化還元電位が貴であるように構成されている。すなわち、電子輸送層3を設けた電極2の電位が、正孔輸送層4を設けた電極5の電位よりも貴になるようになり、それにより光電気素子の高出力化が図れるものである。なお、視点を変えれば、電子輸送層3に対して正孔輸送層4の酸化還元電位が卑である、と言うことができる。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、電子輸送層3が正孔輸送層4に対して酸化還元電位が貴であるように構成されるには、電子輸送層3を構成する第二の有機化合物の酸化還元電位が、正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物の酸化還元電位よりも貴であるようにされる。逆に言えば、正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物の酸化還元電位が、電子輸送層3を構成する第二の有機化合物の酸化還元電位よりも卑であるようにされる。このように各層の有機化合物間で酸化還元電位に差があることにより、二つのゲル層のうち一方が電子輸送層3として機能することが可能となり、他方が正孔輸送層4として機能することが可能となる。そして、電子輸送層3を構成するゲル層6はn型半導体に近似した機能を発揮するものであり、言わばnゲル(n型のゲル層)になっていると言える。一方、正孔輸送層4を構成するゲル層7はp型半導体に近似した機能を発揮するものであり、言わばpゲル(p型のゲル層)になっていると言える。つまり、この場合、光電気素子は、nゲルとpゲルによって構成されたゲル状体が電極2、5で挟まれて構成されている素子である。
電子輸送層3と正孔輸送層4の電位差(電子輸送層3が正孔輸送層4に対して酸化還元電位が貴であるような電位差)は、電子輸送層3及び正孔輸送層4が、上記したような有機化合物から構成されることで得られる。つまり、上記で説明した電子輸送層3を構成する第二の有機化合物は、上記で説明した正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物よりも酸化還元電位が貴となっている。
電子輸送層3と正孔輸送層4との電位差は200mV以上2000mV以下であることが好ましい。この電位差が200mV未満であると、光電気素子の高い開放電圧を得ることが難しく高い出力を生み出すことが困難になるおそれがある。また、この電位差が2000mVを超えると、光電気素子において光電変換に利用可能な光エネルギーが大きくなり、短波長領域の光しか光電変換に利用されず、このため高い出力を得ることが困難になる おそれがある。
電子輸送層3及び正孔輸送層4の厚みは、良好な電子又は正孔の輸送性を維持する観点から、それぞれ10nm〜10mmの範囲であることが好ましく、100nm〜100μmの範囲であれば特に好ましい。この厚みであれば電子又は正孔の輸送特性の向上と界面の大面積化とがより高いレベルで両立する。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、光電気素子を作製するには、第一の電極2、電子輸送層3、正孔輸送層4、第二の電極5がこの順で、又はこれとは逆の順で順次積層される方法が採用されてもよいし、第一の電極2の表面上に電子輸送層3が設けられ、第二の電極5の表面上に正孔輸送層4が設けられ、続いてこの第一の電極2と第二の電極5とが、電子輸送層3及び正孔輸送層4が設けられた面で重ね合わされて積層される方法が採用されてもよい。電子輸送層3と正孔輸送層4は接している場合のみならず、電子輸送層3と正孔輸送層4の間に電解質溶液の層が形成されていてもよい。すなわち、第一のゲル層6と第二のゲル層7との間に、これらのゲル層6,7を構成しない電解質溶液の層が形成されてもよい。
第一の電極2の表面上に電子輸送層3を設け、或いは第二の電極5の表面上に正孔輸送層4を設けるにあたっては、有機化合物を含有する溶液などを塗布する湿式の形成方法の適用が、より簡便で低コストな製法であることから好ましい。特に電子輸送層3や正孔輸送層4が、数平均分子量1000以上のいわゆる高分子の有機化合物から形成される場合は、成形性の観点から湿式の形成方法が好ましい。湿式のプロセスとしては、スピンコート法、液滴を滴下乾燥するドロップキャスト法、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷法などが挙げられる。その他、スパッタ法や蒸着法などの真空プロセスが採用されてもよい。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が、酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、電解質溶液は、各有機化合物に浸透することによりこれらの有機化合物を膨潤させてゲル層6、7を構成する。この電解質溶液は、ゲル層6、7内の電荷の移動が円滑になるための媒質としても機能する。この電解質溶液は、有機化合物中の酸化還元部の酸化還元状態を安定化させる機能も有する。電解質溶液は、第二のゲル層7中では、電子輸送層3を構成する第二の有機化合物中の酸化還元部の、特に還元状態を安定化させる。また電解質溶液は、第一のゲル層6中では、正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物中の酸化還元部の、特に酸化状態を安定化させる。電解質溶液によって有機化合物の酸化及び還元状態が安定化されることにより、電子移動する有機化合物の構造が安定化され、高い光電変換性能が得られる。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、電解質溶液は、電解質と溶媒とを含むものであればよい。電解質としては、支持塩と、酸化体と還元体から構成される酸化還元系構成物質とが挙げられ、これらのうちのいずれか一方であっても、両方であってもよい。支持塩(支持電解質)としては、例えば過塩素酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、イミダゾリウム塩やピリジニウム塩などのアンモニウム塩、過塩素酸リチウムや四フッ化ホウ素酸カリウムなどアルカリ金属塩などが挙げられる。酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で存在する物質を意味する。このような酸化還元系構成物質としては、例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III)−タリウムイオン(I)、水銀イオン(II)−水銀イオン(I)、ルテニウムイオン(III)−ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III)−鉄イオン(II)、ニッケルイオン(II)−ニッケルイオン(III)、バナジウムイオン(III)−バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定はされない。このような酸化還元系構成物質は、電子輸送層3及び正孔輸送層4内の酸化還元部とは区別されて機能する。
前述のように電解質溶液の層が存在する場合、すなわち電子輸送層3と正孔輸送層4との間に、第一のゲル層6及び第二のゲル層7を構成しない電解質溶液の層が存在する場合、この電解質溶液の層が高分子マトリックスで保持されていてもよい。高分子マトリックスとして使用されるポリフッ化ビニリデン系高分子化合物としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、あるいはフッ化ビニリデンと他の重合性モノマーとの共重合体が挙げられ、好適にはフッ化ビニリデンとラジカル重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合する他の重合性モノマー(以下、共重合性モノマーという。)としては、具体的には、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンなどが例示される。
電解質溶液を構成する溶媒は、例えば水、有機溶媒、イオン液体のうちの少なくとも一つを含む。
電解質溶液の溶媒として水や有機溶媒が用いられると、有機化合物の酸化還元部の還元状態又は酸化状態が安定化され、より安定して電子や正孔が輸送される。溶媒としては水性溶媒及び有機溶媒のいずれも使用できるが、酸化還元部がより安定化するためには、イオン伝導性に優れた有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いられてもよく、二種以上の溶媒が混合されて併用されてもよい。特に光電気素子が光電変換素子として構成される場合、その太陽電池出力特性を向上させる観点からは、溶媒がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、γ―ブチロラクトン、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、吉草酸ニトリル等のニトリル化合物などであることが好ましい。
また電解質溶液の溶媒としてイオン液体が用いられると、電解質溶液による酸化還元部の安定化作用が特に向上する。しかもイオン液体は揮発性がなく、且つ難燃性が高いために、安定性に優れる。イオン液体としては、公知のイオン性液体全般が用いられ得るが、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートなどイミダゾリウム系、ピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、アゾニウムアミン系のイオン性液体や、欧州特許第718288号明細書、国際公開WO95/18456号パンフレット、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、J. Electrochem. Soc.143巻,10号,3099頁(1996年)、Inorg.Chem. 35巻,1168頁(1996年)に記載されているイオン性液体が挙げられる。
電解質溶液の濃度、すなわち、電解質溶液全量(電解質と溶媒の合計量)に対する電解質の量は、0.1〜10mol/Lであることが好ましい。電解質溶液の濃度がこの範囲になることで、有機化合物の酸化還元部が生じる酸化還元状態が、より安定化する。
電解質溶液は、上記したように電子輸送層3および正孔輸送層4の有機化合物によって膨潤されてゲル層6、7の一部となっている。すなわち、正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が電解質溶液によって膨潤することで第一のゲル層6が形成され、正孔輸送層4に浸透した電解質溶液は第一のゲル層6の一部となっている。また、電子輸送層3を構成する第一の有機化合物が電解質溶液によって膨潤することで第二のゲル層7が形成され、電子輸送層3に浸透した電解質溶液は第二のゲル層7の一部となっている。したがって、光電気素子にあっては、電解質溶液は液体状態(流動性のある状態)として存在していないか、液体状態となっていてもその一部だけであり量は少ない。このように、ゲル層6、7が電解質溶液を支持しているので、電解質溶液の漏液の問題が無い光電気素子を提供することが可能となるものである。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、第一のゲル層6及び第二のゲル層7の膨潤度は、110〜3000%であることが好ましく、さらに好ましくは150〜500%である。110%未満である場合、ゲル中での電解質成分が少なくなるため十分に酸化還元部の安定化させることができなくなるおそれがあり、また3000%を超える場合、ゲル中での酸化還元部が少なくなり電子輸送能力が低下するおそれがあるので、いずれの場合も光電気素子の特性が低下するおそれがある。
電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有する場合において、光電気素子は、好ましくは電子輸送層3と正孔輸送層4のいずれか一方又は両方と電子授受反応を行う増感色素を備えている。光電気素子が増感色素を備えることにより光電気素子の光電変換効率がさらに向上する。電子授受反応とは、電子輸送層3及び正孔輸送層4の一方又は両方に対し電子を授け与えたり受け取ったりする相互作用をする反応である。なお、電子輸送層3及び正孔輸送層4の一方から電子を受け取る場合は、通常、電子輸送層3及び正孔輸送層4の他方に電子を授け与える作用を有する。すなわち、増感色素が電子輸送層3から電子を受け取る場合は、通常、この増感色素は正孔輸送層4へ電子を授け与える作用を発揮し、増感色素が正孔輸送層4から電子を受け取る場合は、通常、この増感色素は電子輸送層3へ電子を授け与える作用を発揮する。また、視点を変えれば、正孔を授受する正孔授受反応と言うこともできる。
増感色素としては、上記のような公知の材料が用いられ得る。具体的には後述のD131やK19などが例示できる。中でも膜上で会合性を有する色素は、密に充填して膜表面を覆うために光電変換時の電荷分離を促進する観点から好ましい。会合体を形成して効果のある色素としては、例えば上記[化17]の構造式で示される色素が好ましい。この場合、電子輸送材料と正孔輸送材料に存在する電子と正孔との再結合が劇的に減り、このため光電変換素子の変換効率が向上する。
光電気素子では、増感色素がゲル層6、7内に存在しているものであり、特に増感色素がゲル層6、7を構成する有機化合物との間の物理的または化学的作用などにより、ゲル層6、7内に固定化されていることが好ましい。すなわち、増感色素と第一のゲル層6を構成する第一の有機化合物との間の物理的または化学的作用などにより、増感色素が第一のゲル層6内に固定化されていることが好ましく、また、増感色素と第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物との間の物理的または化学的作用などにより、増感色素が第二のゲル層7内に固定化されていることが好ましい。
「増感色素が第二のゲル層7内に存在している」とは、増感色素が第二のゲル層7の表層のみに存在するのではなく、その内部にも存在していることを意味する。これにより、第二のゲル層7内に存在する増感色素の量がある値以上にある状態が持続的に保たれ、光電気素子の出力が向上する。
なお、「増感色素が第二のゲル層7内に存在している状態」には、「増感色素が第二のゲル層7を構成する電解質溶液中に存在している状態」と、「増感色素が第二のゲル層7を構成する有機化合物と物理的・化学的に相互作用することにより第二のゲル層7中に存在している状態」とが含まれる。増感色素は第二のゲル層7内の全体に亘って存在していることが好ましい。
また、「増感色素が第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物と物理的な相互作用により第二のゲル層7中に保持されている状態」とは、例えば、第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物が、増感色素の分子の移動を妨げる構造を有している状態が挙げられる。増感色素の分子の移動を妨げる構造としては、第二の有機化合物がアルキル鎖などの各種分子鎖による立体障害を発現する構造、または、第二の有機化合物の分子鎖間に存在する空隙サイズが増感色素の分子の移動を抑制することができる程度に小さくなっている構造などが挙げられる。また、物理的相互作用を発現する要因を、増感色素が有していることも有効である。具体的には、増感色素がアルキル鎖などの各種分子鎖による立体障害を発現する構造を有していることや、増感色素同士が架橋するなどして増感色素の分子サイズが大きくなっている構造を有していることなどが、有効である。
また、「増感色素が第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物と化学的な相互作用により第二のゲル層7中に存在している状態」とは、例えば共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合などや、疎水性相互作用、親水性相互作用、静電的相互作用に基づく力などの相互作用により、第二のゲル層7内に増感色素が保持されている状態が挙げられる。特に、増感色素と第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物との間の化学的相互作用により増感色素を第二のゲル層7内に固定されると、増感色素と第二の有機化合物との距離が接近し、電子移動の効率化が可能になる。
第二の有機化合物と増感色素との間の化学的相互作用により第二のゲル層7内に増感色素が固定される場合には、第二の有機化合物および増感色素に官能基を適宜導入され、この官能基を介した化学反応などにより第二の有機化合物に対して増感色素が固定されることが好ましい。このような官能基としては、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ニトロ基、アルキル基、炭酸基、アルデヒド基、チオール基などが挙げられる。また、官能基を介した化学反応の反応形式としては、縮合反応、付加反応、開環反応等が挙げられる。
増感色素と第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物との化学的結合に際しては、増感色素における官能基が、この増感色素が光励起した状態において電子密度が高くなる部位付近に導入され、且つ第二のゲル層7中の第二の有機化合物における官能基が、この第二の有機化合物中の電子輸送に関与する部位付近に導入されていることが好ましい。この場合、増感色素から第二の有機化合物への電子移動の効率および第二の有機化合物中での電子輸送の効率が向上する。特に、増感色素と第二のゲル層7を構成する第二の有機化合物とが、増感色素の電子雲と第二の有機化合物の電子雲とを結び付ける電子輸送性の高い結合基で結合されると、増感色素から第二の有機化合物への効率のよい電子移動が可能になる。具体的には、増感色素のπ電子雲と第二の有機化合物のπ電子雲とを結び付ける化学結合として、π電子系をもつエステル結合が挙げられる。
増感色素と第二の有機化合物とが結合するタイミングは、第二の有機化合物がモノマー状態にあるとき、第二の有機化合物がポリマー化するとき、第二の有機化合物がポリマー化した後、第二の有機化合物がゲル化するとき、第二の有機化合物がゲル化した後の、いずれでもよい。具体的な手法の例としては、第二の有機化合物で形成された電子輸送層3を増感色素を含有する浴に浸漬する方法、第二の有機化合物と増感色素を含有する塗布液を第一の電極2上に塗布成膜することで電子輸送層3を形成する方法などが挙げられ、複数の方法が組み合わされてもよい。
第二のゲル層7内の増感色素の含有量は適宜設定されるが、特に増感色素の含有量が第二の有機化合物100質量部に対して0.1質量部以上であれば、第二のゲル層7の単位膜厚あたりの増感色素の量が充分に多くなり、増感色素の光吸収能力が向上し、高い電流値が得られる。特に増感色素の含有量が第二の有機化合物100質量部に対して1000質量部以下であれば、第二の有機化合物の間に過剰量の増感色素が介在することが抑制され、第二の有機化合物内の電子移動が増感色素によって阻害されることが抑制され、高い導電性が確保される。
このように、電子輸送層3および正孔輸送層4がゲル層6、7として形成され、さらに、電子輸送層3及び正孔輸送層4の一方又は両方に相互作用する増感色素が導入されることにより、十分広い反応界面を有し変換効率に優れた光電気素子を提供することが可能となるものである。
電子輸送層3と正孔輸送層4の両方に色素が導入される場合には、両方の層において光電変換がなされることになる。すなわち、電子輸送層3及び正孔輸送層4のいずれか一方と色素との界面だけではなく、電子輸送層3と色素が接している界面、及び正孔輸送層4と色素が接している界面の両方において光が電気に、又は電気が光に変換される。したがって、光電変換効率がさらに高く高出力な光電気素子が構成される。この電子輸送層3と正孔輸送層4の両方で発電(光電変換)する現象は、いわば「ダブル発電」であると言える。そして、このダブル発電は、電子輸送層3に接する色素と、正孔輸送層4に接する色素が異なるならば、すなわち複数の色素が用いられることで光電気素子が構成されれば、各層に接する色素が最適化され、さらに高出力な光電気素子を得ることが可能となるのである。
上記のように電子輸送層3を構成する第二の有機化合物及び正孔輸送層4を構成する第一の有機化合物が酸化還元部とゲル部位とを有するように構成される光電気素子にあっては、電子輸送層3と正孔輸送層4は、繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する有機化合物を備えて形成されている。しかも有機化合物は酸化還元部の還元状態を安定化させる電解質溶液を含んでゲル層6、7として形成されている。このため、この光電気素子にあっては、分子レベルで構造が細分化され、反応界面が大きくなり、効率よく且つ速い反応速度で電子が輸送され得る。
また、酸化還元部を有する有機化合物のゲル層6、7で電子輸送層と正孔輸送層が形成されることによって、酸化還元部を電極の近傍に保持したり、隣り合う酸化還元部がその間で電子を交換したりすることができるのに十分に近い距離となるように有機化合物を保持することができるものである。また電子輸送層3及び正孔輸送層4とに酸化還元部を高密度に存在させることができる。これにより非常に速い自己電子交換反応速度定数を実現することができ、電子輸送能力を高めることができるものである。さらに電子輸送層3及び正孔輸送層4を有機化合物のゲル層6、7として形成することで、これらの層に接着性を付与したり可とう性や光透過性を付与したりすることが容易になるものである。
また、酸化還元部がゲル層6、7を構成する有機化合物の分子内に存在しているので、酸化還元反応の繰り返しによる電子輸送がより効果的に行なわれる状態で、酸化還元部をゲル層6、7によって保持し易くなるものである。つまり、酸化還元部はゲル層6、7を構成する有機化合物に化学的に結合しているために、酸化還元部が電子を輸送し易い位置にとどまるように酸化還元部をゲル層6、7で保持することができるものである。有機化合物内の酸化還元部の位置関係は、例えば、ゲル層6、7を構成する有機化合物の骨格に対して、酸化還元部が側鎖として配置された構造であってよく、有機化合物の骨格と酸化還元部が交互または一部連続的に配置されて結合していてもよい。
そして、酸化還元部は、拡散ではなく、酸化還元部間の電子交換反応により電子を輸送することができるものである。この電子交換反応は、酸化状態の酸化還元部が近接する還元状態の酸化還元部を酸化することにより、酸化還元部同士で電子を交換する反応であり、それにより見かけ上、層内で電子や正孔が輸送されるものである。イオンが拡散により伝導されるイオン伝導性材料と機能は似ているが、上記の電子輸送機構は酸化還元部が拡散ではなく、近接する酸化還元部と電子を交換することにより輸送する点が異なる。電子輸送層3及び正孔輸送層4においても近接する酸化還元部に電子を渡すために酸化還元部同士が電子移動を可能にするために近接している必要があるが、酸化還元部はゲル層6、7により保持されているために移動の距離は数オングストロームと予想される。特に、上記のように酸化還元部がゲル層6、7を構成する有機化合物の分子内に存在する場合は、近接する酸化還元部と電子交換する反応は自己電子交換反応と呼ばれる反応となる。
したがって、本発明の光電気素子にあっては、上記のように酸化還元部がゲル層6、7に保持されていることによって、電子輸送性を損なうことなく、光を電気に、あるいは電気を光に変換するための反応の場、つまり反応界面を大きくすることができるものであり、変換効率の高い光電気素子を得ることができるものである。
ここで反応界面とは、電子輸送層と、正孔輸送材料や電解質溶液との界面である。例えば光電変換素子では、光吸収により生じた電荷は反応界面で分離されるので、反応界面が広ければ広いほど変換効率が高くなる。従来では十分に反応界面の面積を大きくできなかったのに対して、上記の光電気素子では電子輸送層3及び正孔輸送層4が酸化還元部を有する有機化合物が電解質溶液を含んだゲル層6、7を構成しているため、酸化還元部とゲル層6、7内に浸透した電解質溶液との反応界面が大きくなり、変換効率を高めることができるのである。
反応界面が大きくなる理由としては次の二点が考えられる。1つ目は、従来の無機半導体などからなる電子輸送材料では、無機物であるがゆえに微粒子化されてもナノメートルスケールを下回ることは困難であるのに対して、上記の電子輸送層3及び正孔輸送層4は、酸化還元部が酸化還元して電子を輸送できる状態であれば分子レベルで構造が細分化され、電荷分離に必要な界面の面積が増加することが考えられる。特に、電子輸送層3や正孔輸送層4が高分子の有機化合物から形成される場合、理論上オングストロームスケールでの界面形成が可能である。2つ目は、有機化合物の酸化還元部と、他の層や電解質溶液などとの界面に電荷分離を促進するような特殊な界面状態が形成されている可能性が考えられる。
また、電子輸送層3及び正孔輸送層4は、酸化還元部を有する有機化合物で形成されるので、電位などの電気的な性質や、分子サイズなどの構造的な性質に応じた設計や合成が容易になるものであり、さらに電子輸送層3及び正孔輸送層のゲル化や溶解性の制御などが可能となるものである。また有機化合物から電子輸送層3及び正孔輸送層4が形成されるので、無機半導体などの無機物から電子輸送材料の層が形成される場合のような高温の焼成が不要になって、製造プロセスの上で有利になり、またこれらの層に可とう性を付与することも可能になるものである。さらに、有機化合物は、無機材料や貴金属材料とは異なり、資源枯渇の問題がないこと、毒性が低いこと、廃棄の際には加熱焼却することにより熱エネルギーを回収することができることなども利点として挙げられる。
さらに、上記のように電子輸送層を構成する有機化合物に電解質溶液が含まれている(浸透している)ことによって、有機化合物内に存在する酸化還元部の酸化還元状態が安定化され、より安定して電子が輸送される。すなわち、電子輸送材料として一般的に用いられる金属半導体や金属酸化物半導体などの無機化合物と比較して、有機化合物は酸化還元状態(酸化状態又は還元状態)が不安定であるために電子輸送層3や正孔輸送層4の材料として使用されることが難しいとされている。しかし、有機化合物が電解質溶液を含む構造にすること(有機化合物に電解質溶液が浸透していること)により、酸化還元部の酸化還元反応により形成されるイオン状態が電解質溶液中の対イオンで補償される。つまり例えばカチオン状態になった酸化還元部が電解質溶液中のアニオンの逆の電荷により安定化される。さらに溶媒の溶媒和や双極子モーメントなどの作用により酸化還元部の還元状態が安定化し、この結果、酸化還元部が安定化する。そして、電解質溶液はゲル層6、7によって保持されているので光電気素子に液漏れが生じなくなる。
以上のような、一対の電極間に電子輸送層と正孔輸送層とを挟んで形成される光電気素子を用いれば、光電池や太陽電池等の光電変換による発電素子、有機ELなどの発光素子、エレクトロミック表示素子や電子ペーパーなどの光学表示素子、温度・光などを感知するセンサ素子等を、光電気素子などで構成して作製することができるものである。
本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の目的及び範囲を逸脱しないのであれば、適宜の設計変更等が可能である。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1]
(TEMPO置換ノルボルネンモノマーの合成)
5−ノルボルネン−2,3−カルボン酸無水物2.0g(12.2mmol)をベンゼン180mlに溶解し、4−ヒドロキシ−TEMPO4.2g(24.4mmol)、トリエチルアミン(TEA)2.4ml(17.2mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.63g(5.15mmol)を加え、12時間還流攪拌した。放冷後、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨージド3.9g(15.2mmol)を加え、室温で12時間反応させた。反応後沈殿をろ過し、ろ液をエーテルで抽出し、水洗浄後、溶媒を除去した。これにより得られた残留物を、クロロホルム/ヘキサン/酢酸エチル(混合体積比6/3/1)を展開溶媒として、シリカゲルによりカラム精製した後、ヘキサン/ジクロロメタン(混合体積比8/2)により再結晶し、下記式[化33]で表されるTEMPO置換ノルボルネンモノマーを橙色結晶として得た(収率40%)。
Figure 0005658504
(TEMPO置換ノルボルネンポリマーの合成(単独重合))
10mlナス型フラスコ中でTEMPO置換ノルボルネン100mg(0.20mmol)をトルエン1.0mlに溶解した。なお、[化33]に示すモノマー(TEMPO置換ノルボルネンモノマー)は、endo−,endo−誘導体とendo−,exo−誘導体との2つの異性体から成るが、混合物のまま重合に使用した。この溶液に、第二世代Grubbs触媒2.3mg(0.00270mmol)を加え、Ar雰囲気下、40℃で12時間攪拌した。その後、室温にした後、ジエチルエーテル200mlを使用して再沈殿精製し、生じた薄橙色粉末をグラスフィルターG4でろ集し、50℃で10時間減圧乾燥を行うことにより、下記式[化34]で表される繰り返し単位からなるTEMPO置換ノルボルネンポリマーを得た。得られたTEMPO置換ノルボルネンポリマーの分子量を、クロロホルムを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(カラム東ソー株式会社製TSKgelGMHXL)を使用して測定した結果、数平均分子量30000(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.2であった。
Figure 0005658504
(正孔輸送層の形成)
第二の電極5が設けられた基材8として、厚み0.7mm、シート抵抗100Ω/□の導電性ガラス基板を用意した。この導電性ガラス基板はガラス基板と、このガラス基板の一面に積層された、フッ素ドープされたSnOからなるコーティング膜とから構成され、前記ガラス基板が基材8、コーティング膜が第二の電極5となる。
上記のTEMPO置換ノルボルネンポリマー19.8mg、乳酸エチル0.66ml、[化35]に示すビス(アジド)誘導体1.98mg、クロロホルム0.132mlに溶解した。前記溶液を前記導電性ガラス基板上にスピンコートし100nmの膜厚とした。この膜を60℃で15分間乾燥した後、前記膜にUVを60秒間照射することにより、TEMPO置換ノルボルネンポリマーを架橋させ、Poly(TEMPO norbornene)(PTNB)膜からなる正孔輸送層4を形成した。
Figure 0005658504
(色素担持法)
次に、正孔輸送層4を設けた透明導電ガラスを、[化36]で示される増感色素(D131)のアセトニトリル飽和溶液中に1時間浸漬した。その後に、余剰色素を除去するためにアセトニトリルで5分間洗浄した。
Figure 0005658504
(素子作製法)
電極2が設けられた基材1として、上記正孔輸送層4の形成における導電性ガラス基板と同じ構成を有する導電性ガラス基板を用意した。
5mMの塩化白金酸を溶解したイソプロピルアルコール溶液を前記導電性ガラス基板上にスピンコートした後、400℃で30分間焼成した。
次に、正孔輸送層4が設けられた導電性ガラス基板と、塩化白金処理した導電性ガラス基板とを、正孔輸送層4と塩化白金処理面とが対向するように配置すると共に、両者の間の外縁に幅1mm、厚み50μmの熱溶融性接着剤(デュポン社製、バイネル)を介在させた。この熱溶融性接着剤を加熱しながら前記二つの導電性ガラス基板を厚み方向に加圧することで、二つの導電性ガラス基板を熱溶融性接着剤を介して接合した。熱溶融性接着剤には、電解液の注入口となる空隙を形成した。続いて、正孔輸送層4と塩化白金処理した導電性ガラス基板との間に前記注入口から電解液を充填した。次に、前記注入口にUV硬化性樹脂を塗布した後、UV光を照射して前記UV硬化性樹脂を硬化させることで、前記注入口を孔埋めした。これにより、電解液からなる電子輸送層3を形成すると共にこの電解液を正孔輸送層4へ浸透させ正孔輸送層4を構成するPTNBを膨潤させ、ゲル層6を形成した。前記電解液としては、[化19]に示すメチルビオロゲンを0.02M、塩化カリウム1Mの濃度で含有する水溶液を用いた。以上により、光電気素子を作製した。
[実施例2]
(ニトロキシアミド合成法)
下記[化37]で示す手順で、ニトロキシアミドを合成した。具体的には、4−アミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンを2.8ml(16mmol)にベンゼン(60ml)を加え、0℃の温度に冷却、攪拌したのち、アクリロイルクロリド1.3ml(16mmol)を滴下、0℃で1時間冷却後、室温で終夜攪拌し、結晶を析出させた。次に、溶媒除去を行った後、再結晶で精製し、[化37]のスキームの2の生成物を収率54%で得た。
上記で得られたスキームの2の生成物105mgをメタノール1mlに溶解させ、窒素雰囲気下でAIBN(アゾビスイソブチルニトリル)1.64mgを加え、85℃で終夜攪拌し、結晶を析出させた。次に、溶媒除去を行った後、再結晶で精製し、[化37]のスキームの3の生成物を得た。
さらに、このスキームの3の生成物150mgにTHF(テトラハイドロフラン)5.0mlに溶解させ、窒素雰囲気下でmCPBA(3−クロロベンゾパーオキソ酸)1.23gを加え、85℃で終夜攪拌した。得られた結晶を、溶媒除去後を行い、その後、再結晶で精製することで、[化37]のスキームの4の生成物(ニトロキシアミド)を得た。前記重合体の分子量は3000であった。
Figure 0005658504
(正孔輸送層の形成)
ニトロキシアミド10mg、THF(テトラハイドロフラン)1mlに溶解し、導電性ガラス基板上にドロップキャストし、膜厚100nmに成膜した。
(色素担持法及び素子作製法)
以後は、実施例1と同じ手法により、正孔輸送層4への色素の担持及び光電気素子の作製をおこなった。
[実施例3]
電解液として、[化18]に示すガルビノヒドロキシラジカルを0.01M、N−メチルベンズイミダゾールを0.0025M、過塩素酸リチウムを0.01Mの濃度で含有するアセトニトリル溶液を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で光電気素子を作製した。
[実施例4]
実施例1において、正孔輸送層の形成及び色素の担持にあたり、ニトロキシアミド10mg、増感色素(D131)3mgをTHF(テトラハイドロフラン)1mlに溶解し、得られた溶液を導電性ガラス基板上にドロップキャストした。これにより、増感色素を担持する厚み100nmの正孔輸送層を形成した。
それ以外は実施例1と同じ条件で光電気素子を作製した。
[実施例5]
実施例1において、正孔輸送層の形成及び色素の担持にあたり、まずニトロキシアミド10mgをTHF(テトラハイドロフラン)1mlに溶解し、得られた溶液を導電性ガラス基板上にドロップキャストした。これにより、厚み100nmの正孔輸送層を形成した。続いてこの正孔輸送層に、増感色素(D131)のアセトニトリル飽和溶液をスピンコートすることで、正孔輸送層に増感色素を担持させた。
それ以外は実施例1と同じ条件で光電気素子を作製した。
[比較例1]
実施例1の場合と同じ透明導電ガラス基板上にフラーレン(C60)を蒸着して膜厚10nmの電子輸送層3を形成した。
次に、電子輸送層3を設けた透明導電ガラスを、増感色素(D131)のアセトニトリル飽和溶液中に1時間浸漬した。その後に、余剰色素を除去するためにアセトニトリルで5分間洗浄した。
また、5mMの塩化白金酸を溶解したイソプロピルアルコール溶液を別の導電性ガラス基板1上にスピンコートした後、400℃で30分間焼成した。
次に電子輸送層3が設けられた導電性ガラス基板と、塩化白金処理した導電性ガラス基板とを、電子輸送層3と塩化白金処理面とが対向するように配置すると共に、両者の間の外縁に幅1mm、厚み50μmの熱溶融性接着剤(デュポン社製、バイネル)を介在させた。この熱溶融性接着剤を加熱しながら前記二つの導電性ガラス基板を厚み方向に加圧することで、二つの導電性ガラス基板を熱溶融性接着剤を介して接合した。熱溶融性接着剤には、電解液の注入口となる空隙を形成した。続いて、電子輸送層3と塩化白金処理した導電性ガラス基板との間に前記注入口から電解液を充填した。次に、前記注入口にUV硬化性樹脂を塗布した後、UV光を照射して前記UV硬化性樹脂を硬化させることで、前記注入口を孔埋めした。前記電解液としては、メチルビオロゲンを0.02M、塩化カリウムを1Mの濃度で含有する水溶液を用いた。以上により、光電気素子を作製した。
[評価試験]
各実施例及び比較例で得られた光電気素子の平面視面積1cmの領域に200ルクスの光を照射しながら、Keithley 2400source meter(ケースレイ社製の2400型汎用ソースメータ)を用いたIV測定により各光電気素子の開放電圧および短絡電流値を測定した。光源には蛍光灯(ラピッド蛍光灯FLR20S・W/M、パナソニック株式会社製)を使用し、25℃環境下での測定を行った。また、光電変換部1cmが受光する条件において光電気素子の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
Figure 0005658504
[蓄電特性]
実施例1及び比較例1で得られた光電気素子の蓄電特性を評価した。
まず、各光電気素子に、200ルクスの光を300秒間(5分間)照射し、光電気素子の開放電圧を、Keithley 2400 source meter(ケースレイ社製の2400型汎用ソースメータ)を用いて測定した。続いて、各光電気素子を遮光性の容器内に300秒間(5分間)配置し、光電気素子の開放電圧を前記と同じ方法で測定した。
実施例1についての開放電圧の測定結果を図3に、比較例1についての開放電圧の測定結果を図4に、それぞれ示す。
この結果によれば、実施例1では開放電圧維持率は70%以上であり、蓄電性が高かった。これに対し、比較例1では開放電圧維持率は1%未満であった。
以下の実施例では、電子輸送層3で構成される第二のゲル層6がnゲル、正孔輸送層4で構成される第一のゲル層7がpゲルとなる。
[実施例6]
(ポリデシルビオロゲン(PV10)の合成)
20mlのナスフラスコに4,4’−ビピリジン(1.008g、6.46×10−3mol)と1,10−ジブロモデカン(1.938g、6.46×10−3mol)を加え、CHOH−DMF(=50:50vol%)(10ml)中で攪拌し、完全に溶解させた。これにより得られた液を60℃で54時間攪拌すると、淡黄色沈殿が析出し始めた。さらにこの液を12時間攪拌するとほぼ溶媒がなくなり、溶媒を含んだ淡黄色沈殿が析出した。この淡黄色沈殿をアセトニトリルとクロロホルムで洗浄後、グラスフィルターを用いてろ過し、更に加熱減圧乾燥により溶媒を除去すると、淡黄色粉末であるPV10(1.95g、Yield:65%)を得ることができた。このPV10の構造はNMRにより測定し、それにより、重合度は10、分子量はおよそ3200であり、PV10であると同定することができた。
なお、分子量は数平均分子量であり、分子量の測定は、ゲルパーメイションクロマトグラフィー法で行うことができる。分子量及びその測定については以下のポリマーについても同様である。
(PV10−PSSの合成)
次に、PV10−PSSコンプレックスを以下の方法で合成した。
ポリスチレンスルホン酸(PSS)水溶液(0.2M、10ml、2mmol)を攪拌しながら、これにPV10水溶液(0.1M、10ml、1mmol)を、パスツースピペットを用いてゆっくりと滴下して加えた。ただし、濃度はポリマーの1ユニット当たりの分子量で算出した値である。このようにPV10水溶液を滴下していくと、液中で淡黄色沈殿が生成した。淡黄色沈殿を50℃で終夜真空乾燥することで、PV10−PSSコンプレックスの黄色固体を得た。なお、PV10−PSSは、PV10を成膜しやすくするために用いるものである。
(電子輸送層の形成:PV10膜の成膜)
基板(第一の基材1と第一の電極2)としてFTO基板を用い、PV10−PSSコンプレックス(ポリデシルビオロゲン−ポリスチレンスルホン酸)の5wt%水溶液をFTO基板上に1000rpmでスピンコートし、厚さ100nmの膜(第一のフィルム)を作製した。
この第一のフィルム上に、PV10の5wt%水溶液を6000rpmでスピンコートし、厚さ40nmの膜(第二のフィルム)を積層した。この第一のフィルムと第二のフィルムを、[化36]に示される増感色素D131の飽和アセトニトリル溶液に1時間浸漬後、アセトニトリルで5分間洗浄して余剰色素を除去することで、第三のフィルム(第一のフィルムと第二のフィルムに色素D131を担持させて得られるフィルム)を作製した。
(PTNBの合成)
ノルボルネン系架橋共重合体(PTNB)を以下の方法で合成した。特開2007−070384公報に、ノルボルネン系架橋共重合体及びその製造方法が開示されており、その合成方法により合成できる。
TEMPO置換ノルボルネンモノマーの合成
5−ノルボルネン−2,3−カルボン酸無水物2.0g(12.2mmol)をベンゼン180mlに溶解し、この溶液に更に4−ヒドロキシ−TEMPO4.2g(24.4mmol)、トリエチルアミン(TEA)2.4ml(17.2mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.63g(5.15mmol)を加え、12時間還流撹拌した。放冷後、更にこの溶液に2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨージド3.9g(15.2mmol)を加え、室温で12時間反応させた。反応後、沈殿をろ過し、ろ液をエーテルで抽出し、水洗浄後、溶媒を除去した。これにより得られた残留物を、クロロホルム/ヘキサン/酢酸エチル(混合体積比6/3/1)を展開溶媒としてシリカゲルによりカラム精製した後、ヘキサン/ジクロロメタン(混合体積比8/2)により再結晶することで、[化33]で表されるTEMPO置換ノルボルネンモノマーの橙色結晶を得た(Yield:40%)。
二官能性モノマーの合成
2,5−ノルボルナジエン2.6g(28.2mmol)、p−ジヨードベンゼン1.5g(4.55mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)5mlに溶解した。得られた溶液に、Ar雰囲気下、塩基としてピペリジン2.3g(27.0mmol)、酢酸パラジウム100mg(0.45mmol)、配位子としてトリフェニルホスフィン0.36g(1.37mmol)を加えてから、この溶液を攪拌した。この反応溶液に、ギ酸1.1g(23.9mmol)をシリンジで一度に加えて、60℃で4時間反応させた。なお、この反応で、中和により激しく白煙を生じた。反応後、酢酸エチルによる抽出と、水洗浄とを行った後、溶媒を除去した。これにより得られた残留物を、酢酸エチル/ヘキサン(混合体積比3/1)混合溶媒を使用してシリカゲルによりカラム精製することで(Rf=0.45,eluent:hexane)、二官能性モノマー(1,4−ビスノルボルネニルベンゼン)の無色固体を得た(Yield:35%)。
モノマーの共重合
次に10mlナス型フラスコ中で、上記合成されたTEMPO置換ノルボルネンモノマー100mg(0.20mmol)をジクロロメタン1.0mlに溶解し、これに更に上記合成された二官能性モノマー(1,4−ビスノルボルネニルベンゼン)1.5mg(0.00571mmol)と、第二世代Grubbs触媒2.3mg(0.00270mmol)とを加え、Ar雰囲気下、40℃で12時間攪拌した。なお、上記のモノマー(TEMPO置換ノルボルネンモノマー)は、endo−,endo−誘導体とendo−,exo−誘導体の2つの異性体から成るが、混合物のまま重合に使用した。
重合後、反応液を室温にし、これをジエチルエーテル200mlを用いて再沈殿精製し、これにより生じた薄橙色粉末をグラスフィルターG4でろ集し、この薄橙色粉末を50℃で10時間減圧乾燥した。これにより、繰り返し単位を有し、架橋構造を有するTEMPO置換ノルボルネンモノマー−二官能性モノマー架橋共重合体(PTNB)を87mg得た。前記重合体の分子量は8000であった。
(正孔輸送層の形成:PTNB膜の成膜)
上記のPTNB19.8mg、乳酸エチル0.66ml、架橋剤(BACTC)1.98mgを、クロロホルム0.132mlに溶解した。これにより得られた液を、色素を担持したPV10膜(第三のフィルム)上にドロップキャストすることで、膜厚100nmに成膜した。
次に、前記の膜にUVを60秒間照射することにより、PTNBを架橋させて、PTNB膜を形成した。
(素子の作製)
上記のPTNB膜上に金を膜厚10nmで蒸着した。
また、上記基板とは別の、もう一枚の導電性ガラス基板(FTO基板)を用意した。この基板のコーティング膜上に、イソプロピルアルコールに塩化白金酸をその濃度が5mMとなるように溶解して得られた溶液を、スピンコートした後、400℃で30分間焼成することで、対となる第二の電極5を形成した。
そして、上記の導電性ガラス基板(電子輸送層3及び正孔輸送層4等が積層された基板)と、第二の電極5が形成されたもう一枚の上記の導電性ガラス基板とを、積層面側が内面になるように配置すると共に、両者の間の外縁に幅1mm、厚み50μmの熱溶融性接着剤(デュポン社製、バイネル)を介在させた。この熱溶融性接着剤を加熱しながら前記二つの導電性ガラス基板を厚み方向に加圧することで、二つの導電性ガラス基板を熱溶融性接着剤を介して接合した。なお、熱溶融性接着剤には、電解液の注入口となる空隙を残すよう予め配置した。
続いて、前記注入口から電解液を充填した。電解液としては、LiTFSIを0.5M、N−メチルベンズイミダゾールを1.6Mの濃度で含有する、アセトニトリル溶液を用いた。
次に、前記電解液注入口にUV硬化性樹脂を塗布した後、UV光を照射して前記UV硬化性樹脂を硬化させることで、前記注入口を孔埋めした。
以上により、光電気素子を作製した。
[実施例7]
(ニトロキシアミド合成法)
[化37]で示すスキーム(手順)で、ニトロキシアミドを合成した。
まず、4−アミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンを2.8ml(16mmol)にベンゼン(60ml)を加え、0℃の温度に冷却、攪拌したのち、アクリロイルクロリド1.3ml(16mmol)を滴下、0℃で1時間冷却後、室温で終夜攪拌し、結晶を析出させた。次に、溶媒除去を行った後、再結晶で精製し、スキーム中の生成物(2)を収率54%で得た。
上記で得られた生成物(2)105mgをメタノール1mlに溶解させ、窒素雰囲気下でAIBM(アゾビスイソブチルニトリル)1.64mgを加え、85℃で終夜攪拌し、結晶を析出させた。次に、溶媒除去を行った後、再結晶で精製し、スキーム中の生成物(3)を得た。
さらに、この生成物(3)150mgをTHF(テトラヒドロフラン)5.0mlに溶解させ、更に窒素雰囲気下でmCPBA(3−クロロベンゾパーオキソ酸)1.23gを加え、85℃で終夜攪拌した。溶媒除去を行い、その後、得られた結晶を再結晶で精製することで、スキーム中の生成物(4)を得た。前記重合体の分子量は3000であった。
(正孔輸送層の形成:ニトロキシアミドの成膜)
実施例6と同様の材料・方法でPV10膜(フィルムC)を作製した。
次に、上記のニトロキシアミド19.8mgを、乳酸エチル0.66mlに溶解し、色素を担持したPV10膜(フィルムC)上にドロップキャストし、膜厚100nmに成膜した。
(素子の作製)
前記ニトロキシアミド膜をPTNB膜の代わりに用いたこと以外は、実施例6と同様の材料・方法で光電気素子を作製した。
[実施例8]
(ガルビモノマーの合成)
[化38]で示すスキーム(手順)で、ガルビモノマー及びガルビポリマーを合成した。
反応容器内に、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(135.8g;0.476mol)と、アセトニトリル(270ml)とを入れ、さらに不活性雰囲気下で、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)(106.3g;129.6ml)を加え、70℃で終夜撹拌し、完全に結晶が析出するまで反応した。析出した白色結晶を濾過し、真空乾燥した後、エタノールで再結晶して精製することによって、スキーム中に生成物(1)で示す、(4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)トリメチルシラン(150.0g;0.420mol)の白色板状結晶を得た。
次に、反応容器内で前記(4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)トリメチルシラン(9.83g;0.0275mol)を、不活性雰囲気下、テトラヒドロフラン(200ml)に溶解し、調製された溶液をドライアイス/メタノールを用いて−78℃に冷却した。この反応容器内の溶液に1.58Mのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(15.8ml;0.025mol)を加え、78℃の温度で30分撹拌することでリチオ化した。その後、この溶液に4−ブロモ安息香酸メチル(1.08g;0.005mol、Mw:215.0、TCI)のテトラヒドロフラン(75ml)溶液を添加した後、−78℃〜室温で終夜撹拌した。これにより溶液は黄色から薄黄色、アニオンの発生を示す濃青色へと変化した。反応後、反応容器内の溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を、溶液の色が完全に黄色になるまで加えた後、この溶液をエーテル/水で分液抽出することにより黄色粘稠液体状の生成物を得た。
次に反応容器内に、前記生成物、THF(10ml)、メタノール(7.5ml)、撹拌子を入れ、溶解後、10N−HCl(1〜2ml)を反応容器内の溶液が赤橙色に変化するまで徐々に加え、30分間、室温にて撹拌した。次に溶媒除去、エーテル/水による分液抽出、溶媒除去、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=1/1)による分画、ヘキサンによる再結晶の各操作を経て精製し、スキーム中に生成物(2)で示す、(p−ブロモフェニル)ヒドロガルビノキシル(2.86g;0.0049mol)の橙色結晶を得た。
次いで、反応容器内で前記(p−ブロモフェニル)ヒドロガルビノキシル(2.50g;4.33mmol)を、不活性雰囲気下、トルエン(21.6ml;0.2M)に溶解し、この溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(4.76mg;0.0216mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.150g;0.130mmol)、トリ−n−ブチルビニルすず(1.65g;5.20mmol,Mw:317.1,TCI)を素早く加え、100℃で17時間加熱撹拌した。
これにより得られた反応生成物をエーテル/水で分液抽出し、溶媒除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=1/3)にて分画し、さらにヘキサンで再結晶して精製することによって、スキーム中に生成物(3)で示す、p−ヒドロガルビノキシルスチレン(1.54g;2.93mmol)の橙色微結晶を得た。
(ガルビモノマーの重合)
上記の合成で得られたガルビモノマー(p−ヒドロガルビノキシルスチレン)1gと、テトラエチレングリコールジアクリレート57.7mgと、アゾビスイソブチロニトリル15.1mgを、テトラヒドロフラン2mlに溶解した後、窒素置換し、一晩還流することで、ガルビモノマーを重合させ、スキーム中に生成物(4)で示すガルビポリマーを得た。前記ガルビポリマーの分子量は10000であった。
Figure 0005658504
(電子輸送層の形成:ガルビポリマーの成膜)
電極2が設けられた基材1として、厚み0.7mm、シート抵抗100Ω/□の導電性ガラス基板を用意した。この導電性ガラス基板はガラス基板と、このガラス基板の一面に積層された、フッ素ドープされたSnOからなるコーティング膜とから構成され、前記ガラス基板が第一の基材1、コーティング膜が第一の電極2となる。
上記のガルビポリマー(スキーム中の生成物(4))をクロロベンゼンに2質量%の割合で溶解させた。この溶液を、前記導電性ガラス基板の電極2上に、2000rpmでスピンコートし、60℃、0.01MPa下で1時間乾燥することで、厚み60nmのガルビポリマー膜(電子輸送層3)を形成した。
このガルビポリマー膜を増感色素(D131)のアセトニトリル飽和溶液中に1時間浸漬した。
(素子の作製)
ガルビポリマー膜の表面に、実施例6と同様の方法で、PTNBを成膜しUV照射して正孔輸送層4を形成した。
そして、ガルビ膜をPV10膜の代わりに用いたこと以外は、実施例6と同様の材料・方法により光電気素子を作製した。
[実施例9]
(キノンポリマーの合成)
[化39]に示す反応で、[化25]で示されるキノンポリマーを合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、10mlナスフラスコに、1−メタクリルアミドアントラキノン50mg(0.172mmol、1eq)、ジビニルベンゼン25μl(0.172mmol、1eq)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.48g(3.43μmol、0.02eq)を投入し、これらをTHF1.72mlに溶解後、アルゴンにより溶媒に溶存している酸素を除去した。そして脱気後、70℃で48時間反応させた。反応終了後、メタノールで沈殿物を生成させ、THFでソックスレー洗浄し、黄色固体として重合体37.3mgを得た。この重合体の分子量は4000であった。
Figure 0005658504
(電子輸送層の形成:キノンポリマーの成膜)
基板(第一の基材1と第一の電極2)としてFTO基板を用い、上記の重合体10mgをNメチルピロリドン0.1gに溶解させ、FTO基板上に1000rpmでスピンコートし、厚さ100nmの膜を作製した。
このキノンポリマー膜をD131を飽和して溶解したアセトニトリル溶液に1時間浸漬し、色素担持処理を行った。
(素子の作製)
キノンポリマー膜の表面に、実施例6と同様の方法で、PTNBを成膜しUV照射して正孔輸送層4を形成した。
そして、キノンポリマー膜をPV10膜の代わりに用いたこと以外は、実施例6と同様の材料・方法により光電気素子を作製した。
[実施例10]
(電子輸送層の形成)
実施例6と同様の方法で電子輸送層3を形成した。すなわち、PV10(ポリデシルビオロゲン)とPV10−PSSコンプレックスを合成し、FTO基板上にこれらを成膜し、D131担持を施して、電子輸送層3を形成した。
(正孔輸送層の形成)
実施例6と同様の方法で、ノルボルネン系架橋共重合体(PTNB)を合成した。
そして、基板(第一の基材1と第一の電極2)としてPV10を成膜した基板とは別のもう一枚の導電性ガラス基板(FTO基板)を用い、PTNB19.8mg、乳酸エチル0.66ml、架橋剤(BACTC)1.98mgを、クロロホルム0.132mlに溶解した溶液を、この基板上にドロップキャストし、膜厚100nmに成膜した。
次に、前記の膜にUVを60秒間照射することにより、PTNBを架橋させた。
次に、この膜をD131飽和アセトニトリル溶液に1時間浸漬させた後、アセトニトリルで5分間洗浄して余剰色素を除去した。
(素子の作製)
D131を担持したPV10が設けられた導電性ガラス基板(電子輸送層3が形成された基板)と、D131を担持したPTNBが設けられた導電性ガラス基板(正孔輸送層4が形成された基板)とを、PV10層とPTNB層とが対向するように配置すると共に、両者の間の外縁に幅1mm、厚み50μmの熱溶融性接着剤(デュポン社製、バイネル)を介在させた。この熱溶融性接着剤を加熱しながら前記二つの導電性ガラス基板を厚み方向に加圧することで、二つの導電性ガラス基板を熱溶融性接着剤を介して接合した。なお、熱溶融性接着剤には、電解液の注入口となる空隙を残すよう予め配置した。
続いて、前記注入口から電解液を充填した。前記電解液としては、0.1Mのメチルビオロゲン、0.01Mの化学式[化40]の化合物、0.1MのLiClOを含有する水溶液を用いた。
次に、前記電解液注入口にUV硬化性樹脂を塗布した後、UV光を照射して前記UV硬化性樹脂を硬化させることで、前記注入口を孔埋めした。
以上により、光電気素子を作製した。
Figure 0005658504
[実施例11]
(電子輸送層の形成)
実施例6と同様の方法で電子輸送層3を形成した。すなわち、PV10(ポリデシルビオロゲン)とPV10−PSSコンプレックスを合成し、FTO基板上にこれらを成膜し、D131担持を施して、電子輸送層3を形成した。
(正孔輸送層の形成)
D131に代えて[化41]で示すK19色素を用いる以外は実施例10と同様の方法で正孔輸送層を形成した。
すなわち、実施例10と同様の方法で、ノルボルネン系架橋共重合体(PTNB)を成膜し、UV照射して正孔輸送層を形成した。
そして、この膜を[化41]で示すK19色素の飽和アセトニトリル溶液に1時間浸漬させた後、アセトニトリルで5分間洗浄して余剰色素を除去した。
(素子の作製)
電解液として、0.1Mのメチルビオロゲン、0.01Mの化学式[化40]の化合物、0.1MのLiClOを含有する水溶液を用いた以外は、実施例10と同様の方法で素子を作製した。
すなわち、D131を担持したPV10が設けられた導電性ガラス基板(電子輸送層3が形成された基板)と、K19を担持したPTNBが設けられた導電性ガラス基板(正孔輸送層4が形成された基板)とを、PV10層とPTNB層とが対向するように配置し、熱溶融性接着剤を介在させ、接着剤を加熱しながら厚み方向に加圧することで接合した。そして、注入口から上記の電解液を充填し、UV硬化性樹脂により注入口を孔埋めした。
以上により、光電気素子を作製した。
Figure 0005658504
[比較例2]
(素子の作製)
実施例8における電子輸送層と同様の、D131飽和溶液で処理したガルビポリマー膜を作製した。
次に、イソプロピルアルコールに塩化白金酸をその濃度が5mMとなるように溶解し、得られた溶液を導電性ガラス基板のコーティング膜上にスピンコートした後、400℃で30分間焼成することで、対となる第二の電極5を形成した。
上記のガルビポリマー膜が設けられた基板と第二の電極5とを実施例10と同様の方法により接合し、電解液を注入した。ただし、電解液としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを1M、増感色素(D131)を2mM、LiTFSIを0.5M、N−メチルベンズイミダゾールを1.6Mの濃度で含有する、アセトニトリル溶液を用いた。
すなわち、ガルビポリマー膜が設けられた導電性ガラス基板と、第二の電極5が設けられた導電性ガラス基板とを、ガルビポリマー膜と第二の電極5とが対向するように配置し、熱溶融性接着剤を介在させ、接着剤を加熱しながら加圧することで接合した。次に、注入口から上記の電解液を充填し、UV硬化性樹脂により注入口を孔埋めした。
以上により、光電気素子を作製した。
[評価試験]
実施例6〜11及び比較例2で得られた光電気素子の平面視面積1cmの領域に200ルクスの光を照射しながら、Keithley 2400sourcemeter(ケースレイ社製の2400型汎用ソースメータ)を用いたIV測定により各光電気素子の開放電圧および短絡電流値を測定した。光源には蛍光灯(ラピッド蛍光灯FLR20S・W/M、パナソニック株式会社製)を使用し、25℃環境下での測定を行った。また、光電変換部1cmが受光する条件において光電気素子の評価を行った。その結果を下記表2に示す。
Figure 0005658504
ここで、実施例6〜11の光電気素子においては、有機化合物が電解液を含んでゲル層6、7を形成しており、電解液が流動性の高い状態で存在していなかった。一方、比較例1の光電気素子は電解液が流動性のある状態で存在していた。よって、実施例6〜11の光電気素子は比較例2に比べて液漏れの発生が生じるおそれが少ないことが確認された。
以上の結果から、電子輸送層3及び正孔輸送層4でゲル層6、7を構成することにより液漏れがなく、十分広い界面を有して優れた光電変換効率が得られることが確認された。上記の光電気素子を用いれば高出力な色素増感型太陽電池を構成することが可能になる。
2 第一の電極
3 電子輸送層
4 正孔輸送層
5 第二の電極
6 第一のゲル層
7 第二のゲル層

Claims (7)

  1. 一対の電極と、この電極間に挟まれている電子輸送層及び正孔輸送層と、電解質溶液とを備え、
    前記正孔輸送層が繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する第一の有機化合物を備え、
    前記電解質溶液は前記酸化還元部の還元状態を安定化させるものであり、
    前記第一の有機化合物と前記電解質溶液とが第一のゲル層を構成し、前記第一の有機化合物が前記電解質溶液によって膨潤することで前記第一のゲル層が形成されている光電気素子。
  2. 前記第一のゲル層内に存在する増感色素を備える請求項1に記載の光電気素子。
  3. 200ルクスの光が5分間照射された時点での開放電圧A(V)と、この時点で光が遮蔽されてから5分間経過した時点での開放電圧B(V)とが、次の関係式を満たす請求項に記載の光電気素子。
    (B/A)×100≧10
  4. 前記正孔輸送層がニトロキシラジカルポリマーを含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の光電気素子。
  5. 前記電子輸送層がビオロゲン誘導体、フェノキシル誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の光電気素子。
  6. 前記電子輸送層は繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有する第二の有機化合物を備え、
    前記第二の有機化合物と前記電解質溶液とが第二のゲル層を構成し、前記第二の有機化合物が前記電解質溶液によって膨潤することで前記第二のゲル層が形成され、
    前記電子輸送層の酸化還元電位が前記正孔輸送層の酸化還元電位よりも貴である請求項1乃至のいずれか一項に記載の光電気素子。
  7. 前記第一のゲル層内と前記第二のゲル層内に増感色素が存在する請求項6に記載の光電気素子。
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