JP5167636B2 - 光電変換素子および電子機器 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の太陽電池(光電変換素子)は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層と、色素層と、電子輸送層とを介挿してなり、色素層で発生した正孔および電子を、それぞれ正孔輸送層および電子輸送層を介して取り出すよう構成されている。
かかる観点から、現状、太陽電池の特性(例えば、光電変換効率)の向上を図ることを目的として、種々の研究・検討がなされている。
本発明の光電変換素子は、負極および正極と、
前記負極と前記正極との間に設けられ、主として酸化物系無機半導体材料で構成された半導体層を含む光電変換層と、
前記半導体層に接触して設けられ、電子および正孔のうちの少なくとも一方を輸送する機能を有するキャリア輸送層とを有し、
前記光電変換層は、前記半導体層の表面に、下記一般式(1)で表される化合物を化学結合させてなることを特徴とする。
また、一般式(1)で表される化合物の主骨格は、共役系の化学構造を有するため、その特有な電子雲の広がりにより、優れたキャリア輸送能を有する。
これらのことから、この一般式(1)で表される化合物は、受光により発生したキャリアをすばやく受け取り、キャリア輸送層に受け渡すことができる。これにより、例えば半導体層等において、正孔と電子との再結合が生じるのを防止または抑制することができ、結果として、光電変換素子の光電変換効率を向上することができる。
これにより、半導体層が電子を負極まで輸送する機能を有するものとなる。
本発明の光電変換素子では、前記第1の層に、色素が担持されていることが好ましい。
これにより、光電変換に可視光を利用することができるようになる。
これにより、色素で発生した正孔を確実に正極側に移動(分離)することができる。
本発明の光電変換素子では、前記色素は、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、銅錯体および白金錯体のうちの少なくとも1種の金属錯体を主成分とするものであることが好ましい。
これらの色素は、その最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位が、前記一般式(1)で表される化合物の最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位と最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位との間に位置するものである。
前記一般式(1)で表される化合物がその主骨格にフェニルアミン構造を有するため、このフェニルアミン構造と、ピリジン環を含む配位子との親和性が高い。したがって、色素として、ピリジン環を含む配位子を有する金属錯体を用いることにより、色素と一般式(1)で表される化合物との密着性(親和性)が向上する。このため、色素で発生した正孔を正孔輸送層に円滑に受け渡すことができる。その結果、光電変換素子の光電変換効率がより向上する。
これにより、半導体層が正孔を正極まで輸送する機能を有するものとなる。
本発明の光電変換素子では、前記第2の層に、色素が担持されていることが好ましい。
これにより、光電変換に可視光を利用することができるようになる。
これにより、色素で発生した正孔を確実に正極側に移動(分離)することができる。
本発明の光電変換素子では、前記色素は、クマリン系色素およびメチン系色素のうちの少なくとも一方を主成分とするものであることが好ましい。
これらの色素は、その最高被占軌道のエネルギー順位が、前記一般式(1)で表される化合物の最高被占軌道のエネルギー順位より低いものである。
また、キャリア輸送層は、実質的に液性成分(溶媒または分散媒)を含まないため、この液性成分の揮発により、光電変換素子に特性の変化(劣化)が生じるのを好適に防止することができる。すなわち、光電変換素子は、耐久性にも優れたものとなる。
前記キャリア輸送層は、前記第1の層と、前記第2の層との間に位置し、
前記一般式(2)で表される化合物は、その最低空軌道のエネルギー順位が、前記第1の層の最低空軌道のエネルギー順位と前記第2の層の最低空軌道のエネルギー順位との間に位置し、その最高被占軌道のエネルギー順位が、前記第1の層の最高被占軌道のエネルギー順位と前記第2の層の最高被占軌道のエネルギー順位との間に位置するものであることが好ましい。
これにより、光の利用効率が高くなることから、光電変換素子の光電変換効率がさらに向上する。
これにより、性能に優れる電子機器が得られる。
本発明の電子機器では、前記光電変換素子に生じた起電力により、当該電子機器が備える能動部品の全部または一部が駆動することが好ましい。
これにより、性能に優れる電子機器が得られる。
まず、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合を一例に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第1実施形態を示す部分断面図、図2は、図1に示す太陽電池の厚さ方向の中央部付近の断面を示す拡大図、図3は、図1に示す太陽電池における電子および正孔の移動の概念図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
下基板2および上基板7の構成材料としては、それぞれ、例えば、ガラス材料、セラミックス材料、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような樹脂材料、アルミニウムのような金属材料等が挙げられる。
また、下基板2および上基板7の平均厚さは、その構成材料、太陽電池1Aの用途等により適宜設定される。
下基板2の上面には、負極3が設けられ、上基板7の下面には、正極6が設けられている。これらの負極3および正極6には、それぞれ、外部回路10の導線11の一端が接続されている。
また、負極3および正極6の平均厚さは、それぞれ、その構成材料等により適宜設定され、特に限定されない。
負極3上(負極3の下基板2と反対側の面)には、光電変換層4Aが設けられている。
この酸化物系無機半導体材料(電子輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、SrTiO3、ZnO、Al2O3等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化物系無機半導体材料を主材料とする半導体粒子411Aは、その表面に水酸基を露出する。このため、一般式(1)で表される化合物(以下、単に「化合物(1)」と言う。)が有する反応性基(例えば、水酸基、カルボン酸基、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基等)が水酸基と反応することにより、半導体粒子411A(n型半導体層41A)の表面に化合物(1)を化学結合させることができる。
前者の場合、n型半導体層41Aにおいて、電子の移動がより円滑に行われることとなる。その結果、太陽電池1Aの光電変換効率(発電効率)を向上させることができる。
このn型半導体層41Aの表面には、下記一般式(1)で表される化合物が化学結合している。
これらのことから、この化合物(1)は、色素42Aで発生した正孔をすばやく受け取り、正孔輸送層5Aに受け渡すことができる。これにより、色素42Aやn型半導体層41A等において、正孔と電子との再結合が生じるのを防止または抑制することができ、結果として、太陽電池1Aの光電変換効率を向上することができる。
また、水酸基と反応し得る反応性基を有する置換基(以下、略して「反応性置換基」と言うこともある。)の反応性基以外の部分、すなわち主骨格と反応性基とを連結する連結部の構造は、例えば、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖、炭化水素環、芳香族環および複素環等のうちの1つまたはこれらを組み合わせた構造が挙げられる。
この場合、2つの置換基Zは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。
なお、化合物(1)のは、n型半導体層41Aの表面の全体を被覆するようにして化学結合していてもよいが、図2に示すように、n型半導体層41Aの表面の一部が露出するように疎な状態で化学結合しているのが好ましい。かかる状態で化合物(1)がn型半導体層41Aの表面に化学結合することにより、色素42Aから正孔輸送層5Aへの正孔の受け渡しがより円滑に行われるようになる。その結果、太陽電池1Aの光電変換効率がより向上する。
置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、置換基Rは、置換基Zの炭素数に応じて選択するようにすればよい。例えば、置換基Zの炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基Xの炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
具体的には、芳香族炭化水素環を少なくとも1つ含む構造としては、例えば、下記化4で表されるものが挙げられる。
さらに、基Yにおいて、芳香族炭化水素環の数は、1〜5であるのが好ましく、2〜5であるのがより好ましく、2または3であるのがさらに好ましい。
これらのことを考慮すると、化合物(1)において、基Yとしては、ビフェニレン基またはその誘導体が特に好ましい構造である。
これにより、色素42Aと化合物(1)との間における正孔の受け渡しがより確実に行われるようになる。
また、n型半導体層41Aの表面には、色素42Aが担持されており、主としてこの色素42Aにおいて、電子が励起され、電子と正孔とが発生する。
これらの金属錯体が有する配位子としては、例えば、ピリジン系、ビピリジン系、キノリン系、フェナントロリン系、β−ジケトナート系等の配位子、またはこれらの配位子に各種置換基が導入されたものが挙げられる。
さらに、金属錯体は、中心金属に直接配位する各種置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、シアノ基またはチオシアネート基が好適である。シアノ基またはチオシアネート基が中心金属に配位した金属錯体は、その分子構造が安定化する。このため、かかる金属錯体は、経時的に劣化し難くなり、その結果、太陽電池1Aの長寿命化に寄与する。
このような金属錯体としては、例えば、下記化7〜9で表されるものが好適である。
この封止部8により、太陽電池1Aの内部への水分等の侵入を防止して、光電変換層4Aおよび正孔輸送層5Aの変質(または劣化)を好適に防止することができる。また、太陽電池1Aの形状および強度を維持することができる。
封止部8で囲まれる空間内には、正孔輸送層5Aが設けられている。換言すれば、光電変換層4Aの上面(負極3と反対側の面)を覆うように正孔輸送層5Aが設けられている。この正孔輸送層5Aは、一般式(1)で表される化合物を介して注入された正孔を正極6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5Aは、液体状、ゲル状または固体状のいずれであってもよく、例えば、電解質、有機系または無機系の半導体材料(p型半導体材料)等で構成することができる。
また、電解質で構成されるゲル状の正孔輸送層5Aは、例えば、前述のような電解質をゲル状の基材(ゲル基材)中に保持させたもので構成することができる。
これらの中でも、本実施形態のように、n型半導体層41Aが半導体粒子411Aで構成され、この半導体粒子411A同士の間隙の一部に正孔輸送層5Aが充填されている場合、正孔輸送層5Aは、下記一般式(2)で表される化合物を含む材料で構成するのが好ましい。
また、直鎖アルキル基の炭素数は、3〜6であるのがより好ましい。直鎖アルキル基の炭素数が小さくなり過ぎると、置換基X同士の相互作用が小さくなり、アモルファス化し難い化合物(2)となるおそれがある。その結果、正孔輸送層材料(正孔輸送層5A)が、粘着性を十分に発揮できなくなるおそれがある。
換言すれば、直鎖アルキル基の炭素数を上述したような範囲内にすることにより、隣接する置換基X同士の相互作用がより確実に生じるようになるとともに、化合物(2)の主骨格同士の間における正孔の受け渡しがより確実に行われるようになる。その結果、正孔輸送層5Aは、正孔輸送性および粘着性の双方をより好適に発揮するようになる。
さらに、置換基Xのうちの2つが、直鎖アルキル基である場合、置換基X1と置換基X3とが、直鎖アルキル基であるのが好ましい。これにより、置換基X同士の相互作用がより確実に生じるようになる。このため、正孔輸送層5Aは、より好適に粘着性を発揮するようになる。
また、化合物(2)は、そのガラス転移温度が1〜30℃程度であるのが好ましく、5〜20℃程度であるのがより好ましい。これにより、正孔輸送層材料が低温で固化するのを防止することができる。このため、正孔輸送層材料は、粘着性を有する過冷却状態を維持することができる。その結果、正孔輸送層5Aの形成する際の操作をより容易に行うことができる。
このような正孔輸送層5Aは、前述したように、正孔輸送層材料が常温で粘着性を有し、かつ比較的低温で流動性を有するものであることから、実質的に液性成分(溶媒または分散媒)を含まない状態とすることができる。そのため、この液性成分の揮発により、太陽電池1Aに特性の変化(劣化)が生じるのを好適に防止することができる。すなわち、太陽電池1Aは、耐久性にも優れたものとなる。
なお、化合物(2)は、図3に示すように、その最高被占軌道のエネルギー順位が、化合物(1)の最高被占軌道のエネルギー順位より高いものが好適に使用される。これにより、光電変換層4Aで発生した正孔を円滑に正極6側に移動させることができるようになる。このため、太陽電池1Aの光電変換効率をさらに向上させることができる。
[1] まず、下基板2および上基板7を用意する。
[2] 次に、これらの下基板2および上基板7上に、それぞれ負極3および正極6を形成する。
負極3および正極6は、それぞれ、例えば、蒸着法、スパッタリング法のような気相成膜法、印刷法のような液相成膜法等により形成することができる。
このn型半導体層41Aは、半導体粒子411Aと分散媒とを含有する半導体層形成用材料を負極4上に供給した後、分散媒を除去(乾燥)し、その後、必要に応じて、焼成することにより形成することができる。
半導体層形成用材料を負極4上に供給する方法としては、例えば、ディッピング法、滴下、ドクターブレード法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレーコート法、ロールコート法等の各種塗布法を用いることができる。
また、分散媒を除去する方法としては、例えば、大気圧または減圧下に放置する方法や、空気、窒素ガス等の気体を吹き付ける方法等が挙げられる。
まず、化合物(1)を加熱する。これにより、化合物(1)は、溶融して流動性を有するようになる。
次に、流動性を有する(溶融状態の)化合物(1)をn型半導体層41Aに接触させる。これにより、n型半導体層41Aの内部にまで、化合物(1)が浸透するとともに、そのその表面に化学結合する。
なお、流動性を有する化合物(1)をn型半導体層41Aに接触させる方法としては、次工程[5]で説明する色素含有液を接触させる方法と同様のものを用いることができる。
この色素42Aは、n型半導体層41Aに色素42Aを含有する色素含有液を接触させた後、溶媒(または分散媒)を除去することにより形成することができる。
n型半導体層41Aに色素含有液を接触させる方法としては、例えば、色素含有液中にn型半導体層41Aまで形成された下基板2を浸漬する方法(浸漬法)、n型半導体層41Aに色素含有液を塗布する方法(塗布法)、n型半導体層41Aに色素含有液をシャワー状に供給する方法等が挙げられる。
溶媒(または分散媒)およびそれを除去する方法としては、前記工程[3]と同様とすることができる。
まず、光電変換層4Aと正極6とを対向配置し、光電変換層4Aの外周部を囲むように、封止部8を形成する。なお、このとき、注入口を形成しておく。
また、本工程に先立って、外部回路10の導線11の両端を、それぞれ負極3および正極6に接続する。
まず、正孔輸送層材料(化合物(2))を加熱する。これにより、正孔輸送層材料は、溶融して流動性を有するようになる。
次に、流動性を有する(溶融状態の)正孔輸送層材料を、注入口を介して、封止部8の内側に注入する。これにより、光電変換層4Aの内部、すなわち半導体粒子411A同士の間隙にまで、正孔輸送層材料が浸透して、正孔輸送層5Aが形成される。その結果、光電変換層4A(色素42A)と正孔輸送層5Aとの接触面積が十分に確保され、太陽電池1Aは、光電変換効率に優れたものとなる。
このとき、正孔輸送層材料の溶融状態での粘度は、1〜5cP程度であるのが好ましく、1〜3cP程度であるのがより好ましい。これにより、溶融状態の正孔輸送層材料をn型半導体層41Aの深い部分にまでより確実に到達させることができるようになり、正孔輸送層5Aと光電変換層4Aとの接触面積をより確実に確保することができる。
[8] 次に、封入口を封止する。これにより、太陽電池1Aが得られる。
次に、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第2実施形態を示す部分断面図、図5は、図4に示す太陽電池の厚さ方向の中央部付近の断面を示す拡大図、図6は、図6は、図4に示す太陽電池における電子および正孔の移動の概念図である。なお、以下では、説明の都合上、図4および図5中、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図4に示す太陽電池1Bは、負極3と正極6との間に、負極3側から電子輸送層(キャリア輸送層)5Bおよび光電変換層(第2の層)4Bが、この順で設けられている。
光電変換層4Bの構成は、前記第1実施形態の光電変換層4Aの構成とほぼ同様である。すなわち、図5に示すように、光電変換層4Bは、複数の半導体粒子411Bで構成されたp型半導体層41Bと、半導体粒子411B(p型半導体層41B)の表面に化学結合した化合物(1)(以下、説明の都合上、光電変換層4Bに含まれる化合物(1)を「化合物(1’)」と言う。)と、半導体粒子411Bの表面に担持された色素42Bとで構成されている。
この酸化物系無機半導体材料(正孔輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、Ni、Cu、Al、Ag、Co、In、Fe、Zn、Rh、Ga、Srのうちの少なくとも1種を含む酸化物材料、または、これらの酸化物材料にLiやNを添加した材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本実施形態においても、p型半導体層41Bは、図5(a)に示すように、複数の半導体粒子411Bが互いに接合されて構成され、全体として多孔質状態となっていてもよいし、図5(b)に示すように、複数の半導体粒子411Bが互いに独立して構成されていてもよい。
このため、色素42Bとしては、前述した色素42Aの中でも、特に、クマリン系色素およびメチン系色素のうちの少なくとも一方を主成分とするものが好ましい。これらの色素42Bは、前記条件を満足するものである。
なお、化合物(2)は、図6に示すように、その最低空軌道のエネルギー順位が、化合物(1’)の最低空軌道のエネルギー順位より低いものが好適に使用される。これにより、光電変換層4Bで発生した電子を円滑に負極3側に移動させることができるようになる。このため、太陽電池1Bの光電変換効率をさらに向上させることができる。
次に、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第3実施形態を示す部分断面図、図8は、図7に示す太陽電池における電子および正孔の移動の概念図である。なお、以下では、説明の都合上、図7中、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図7に示す太陽電池1Cは、負極3と正極6との間に、負極3側に光電変換層(第1の層)4Aが、正極6側に光電変換層(第2の層)4Bが設けられ、さらに、これら光電変換層4A、4B同士の間にキャリア輸送層5Cが設けられている。すなわち、図7に示す太陽電池1Cは、図1に示す太陽電池1Aと、図4に示す太陽電池1Bとの双方の構成を組み合わせたものである。
このようなことから、太陽電池1Cは、極めて高い光電変換効率が得られる。
本発明の電子機器は、このような太陽電池1A(または1B、1C)を備えるものである。
図9は、本発明の電子機器を適用した電卓を示す平面図、図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)を示す斜視図である。
図9に示す電卓100は、本体部101と、本体部101の上面(前面)に設けられた表示部102、複数の操作ボタン103および太陽電池設置部104とを備えている。
図9に示す構成では、太陽電池設置部104には、太陽電池1A(または1B、1C)が5つ直列に接続されて配置されている。これらの太陽電池1A(または1B、1C)に生じた起電力より、電卓100の全部に電気が供給されて、操作ボタン103に入力された数値に応じた計算結果が、表示部102に表示される。
図10に示す構成では、太陽電池設置部206が、表示部202の周囲を囲むようにして、太陽電池1A(または1B、1C)が複数、直列に接続されて配置されている。これらの太陽電池1A(または1B、1C)に生じた起電力より、例えば、携帯電話機200の使用時に、表示部202および操作ボタン203に設けられたライト(図示せず)に電気が供給されることにより点灯して、暗所においても操作ボタン203および表示部102の視認が可能となる。
例えば、光電変換素子および電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明の光電変換素子では、光電変換層は、色素を含んでいなくてもよい。この場合、半導体層において、正孔と電子とが発生する。さらに、光電変換層は、半導体粒子で構成されるもの、すなわち多孔体で構成されるものに限らず、緻密体であってもよい。
また、本発明の光電変換素子では、光の入射方向は、図示のものとは異なり、逆方向からであってもよい。すなわち、光の入射方向は、任意である。
1.化合物1A〜1Cの合成
(化合物1A)
3−(p−アミノフェニル)プロパノールを無水ジメチルホルムアミド中で、4−メトキシベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
次に、その得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−メチルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
その後、放冷し、結晶化した。
その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基からヒドロキシル基へ変換し脱保護した後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物1Aであることを確認した。
3−(p−アミノフェニル)プロパノールに代えて5−(p−アミノフェニル)ペンタノールを用いた以外は、前記化合物1Aと同様にして、下記化合物1Bを得た。
3−(p−アミノフェニル)プロパノールを無水ジメチルホルムアミド中で、4−メトキシベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
次に、その得られた化合物1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
次に、3−(p−アミノフェニル)プロパノールから得られたベンジルエーテル誘導体0.37mol、3−(p−ブロモフェニル)プロパノールから得られたベンジルエーテル誘導体0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基からヒドロキシル基へ変換し脱保護した後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物1Cであることを確認した。
(化合物2A)
4−プロピルアニリン1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
次に、得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−メチルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H-核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物2Aであることを確認した。
なお、化合物Aの融点は63.2℃、ガラス転移点は7.3℃であった。
4−プロピルアニリンに代えて4−ヘプチルアニリンを用い、1−ブロモ−4−メチルベンゼンに代えて1−ブロモベンゼンを用いた以外は、前記化合物2Aと同様にして、下記化合物2Bを得た。
3−(p−アミノフェニル)プロパノールを無水ジメチルホルムアミド中で、4−メトキシベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、水酸基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
次に、その得られた化合物1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
さらに、そこで得られた化合物130mmol、4,4’−ジヨードビフェニル62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシドナトリウム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
その後、放冷し、結晶化した。
その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基から水酸基へ変換し脱保護した。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル法、13C−核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物2Cであることを確認した。
(実施例1)
<1> まず、ガラス基板上に、真空蒸着法により、フッ素ドープした酸化スズを蒸着して負極を形成した。なお、負極の平均厚さは、1μmであった。
<2> 次に、平均粒径20nmのアナターゼ型のTiO2粉末(触媒化成工業社製)を含有するペーストを用意した。このペーストを負極上にスキージ法で塗布した後、450℃×60分間で熱処理を行った。これにより、図2(a)に示すような平均厚さ10μmの多孔質のn型半導体層を得た。なお、得られたn型半導体層の空孔率をアルキメデス法により測定した結果、約50%であった。
<4> 次に、シス−ビス(チオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物を乾燥エタノールに、4×10−4Mとなるように溶解した色素含有液を調製した。
この色素含有液を80℃に調製し、n型半導体層を4時間浸漬した。その後、N2気流中に半導体層を引き上げた。これにより、n型半導体層にルテニウム錯体(色素)を担持させた。これにより、平均厚さ11μmの光電変換層を得た。
<5> 一方、ガラス基板上に、真空蒸着法により、フッ素ドープ酸化錫および白金を順次蒸着して正極を形成した。なお、正極の平均厚さは、30μmであった。
<7> 次に、前記化合物2Aを70℃に加熱して溶融状態とした。この溶融状態の化合物2Aを注入口を介して、封止部の内側に注入した。
<8> 次に、注入口をエポキシ系樹脂により封止した。これにより、図1に示す太陽電池を得た。
前記工程<3>において、前記化合物1Aに代えて化合物1Bを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
なお、化合物1Bの融点に応じて、化合物1Bが溶融状態となるように加熱温度を変更した。
前記工程<3>において、前記化合物1Aに代えて化合物1Cを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
なお、化合物1Bの融点に応じて、化合物1Bが溶融状態となるように加熱温度を変更した。
前記工程<7>において、前記化合物2Aに代えて、化合物2Bを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
なお、化合物2Bの融点に応じて、化合物2Bが溶融状態となるように加熱温度を変更した。
前記工程<7>において、前記化合物2Aに代えて、化合物2Cを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
なお、化合物2Bの融点に応じて、化合物2Cが溶融状態となるように加熱温度を変更した。
前記工程<3>において、前記化合物1Aに代えて化合物1Bを用い、前記工程<7>において、前記化合物2Aに代えて、化合物2Bを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
なお、化合物1Bおよび化合物2Bの融点に応じて、それぞれ、化合物1Bおよび化合物2Bが溶融状態となるように加熱温度を変更した。
前記工程<4>を省略して、n型半導体層に色素が担持していない光電変換層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
(実施例8)
前記工程<7>において、前記化合物2Aに代えて、ヨウ素およびヨウ化リチウムをアセトニトリルに溶解した溶液であるIodolyte AN−50(Solaronix社製)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
光電変換層の構成を変更した以外は、前記実施例8と同様にして、図4に示す太陽電池を製造した。
具体的には、前記工程<2>において、前記TiO2粉末に代えてNiO粉末を用いてp型半導体層を形成し、前記工程<4>において、前記シス−ビス(チオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物に代えてメロシアニン誘導体(林原生物化学研究所製)を用いた。
なお、本実施例9においては、前記実施例8の正極および負極が、それぞれ負極および正極として機能する。
光電変換層および電解質層の構成を変更した以外、すなわち、前記実施例1の光電変換層と前記実施例9の光電変換層との間に、Iodolyte AN−50で構成される電解質層が位置するようにした以外は、前記実施例1と同様にして、図7に示す太陽電池を製造した。
電解質層をIodolyte AN−50に代えて、前記化合物2Aで構成した以外は、前記実施例10と同様にして、図7に示す太陽電池を製造した。
(比較例)
前記工程<3>を省略した以外は、前記実施例3と同様にして、図1に示す太陽電池を製造した。
各実施例およぶ比較例で製造された太陽電池について、それぞれ、光電変換効率[%]、開放電圧[Voc/V]、短絡電流[Isc/mA・cm−2]を測定した。
なお、光電変換効率は、擬似太陽光を100mW/cm2の強度で照射することにより測定した。
さらに、各太陽電池を25℃で3ヶ月間貯蔵した後、再度、前記と同様にして、光電変換効率を測定し、貯蔵前後の値を比較することにより低下率を求めた。
これらの結果を、表1に示す。なお、表1に示す光電変換効率、短絡電流および低下効率は、比較例で測定された数値を「1」とした場合の相対値を示し、開放電圧は、比較例で測定された数値分を引いた差を(mV)示す。
これにより、本発明の光電変換素子(太陽電池)では、一般式(1)で表される化合物が色素(光電変換層)で発生したキャリア(正孔または電子)をすばやく受け取り、キャリア輸送層に受け渡ししているものと推察された。
さらに、半導体粒子同士を結合させることなく、独立した状態の半導体層を有する太陽電池を、前記各実施例および各比較例と同様にして、それぞれ製造した。その結果、各実施例に対応する太陽電池では、特性にそれほど変化が認められなかった。これに対して、比較例に対応する太陽電池では、特性の明らかな低下が観察された。
Claims (14)
- 負極および正極と、
前記負極と前記正極との間に設けられ、主として酸化物系無機半導体材料で構成された半導体層を含む光電変換層と、
前記半導体層に接触して設けられ、電子および正孔のうちの少なくとも一方を輸送する機能を有するキャリア輸送層とを有し、
前記光電変換層は、前記半導体層の表面に、下記一般式(1)で表される化合物を化学結合させてなることを特徴とする光電変換素子。
- 前記光電変換層は、前記半導体層としてn型半導体材料で構成される第1の層を有する請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記第1の層に、色素が担持されている請求項2に記載の光電変換素子。
- 前記色素は、その最高被占軌道のエネルギー順位が、前記一般式(1)で表される化合物の最低空軌道のエネルギー順位と、最高被占軌道のエネルギー順位との間に位置するものである請求項3に記載の光電変換素子。
- 前記色素は、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体、銅錯体および白金錯体のうちの少なくとも1種の金属錯体を主成分とするものである請求項4に記載の光電変換素子。
- 前記金属錯体は、ピリジン環を含む配位子を有するものである請求項5に記載の光電変換素子。
- 前記光電変換層は、前記半導体層としてp型半導体材料で構成される第2の層を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の光電変換素子。
- 前記第2の層に、色素が担持されている請求項7に記載の光電変換素子。
- 前記色素は、その最高被占軌道のエネルギー順位が、前記一般式(1)で表される化合物の最高被占軌道のエネルギー順位より低いものである請求項8に記載の光電変換素子。
- 前記色素は、クマリン系色素およびメチン系色素のうちの少なくとも一方を主成分とするものである請求項9に記載の光電変換素子。
- 前記キャリア輸送層が、下記一般式(2)で表される化合物を含む材料で構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の光電変換素子。
- 前記光電変換層は、前記半導体層としてn型半導体材料で構成される第1の層と、前記半導体層としてp型半導体材料で構成される第2の層とを有し、
前記キャリア輸送層は、前記第1の層と、前記第2の層との間に位置し、
前記一般式(2)で表される化合物は、その最低空軌道のエネルギー順位が、前記第1の層の最低空軌道のエネルギー順位と前記第2の層の最低空軌道のエネルギー順位との間に位置し、その最高被占軌道のエネルギー順位が、前記第1の層の最高被占軌道のエネルギー順位と前記第2の層の最高被占軌道のエネルギー順位との間に位置するものである請求項11に記載の光電変換素子。 - 請求項1ないし12のいずれかに記載の光電変換素子を備えることを特徴とする電子機器。
- 前記光電変換素子に生じた起電力により、当該電子機器が備える能動部品の全部または一部が駆動する請求項13に記載の電子機器。
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