前述のように、従来、ローダニン骨格含有アミン構造を有する化合物は光電変換効率が高い色素として知られているが、これらの色素は前述のルテニウム錯体色素に比べ変換効率が劣り、さらなる改善が求められている。
本発明者らは、イミダゾロン骨格含有アミン構造を有する化合物を検討したところ、これを用いた光電変換素子は光電変換効率が高いことが分かった。この新しい色素は、従来のローダニン骨格含有アミン構造を有する化合物より、分子吸光係数が高いこと、色素分子中の電子アクセプター部分(イミダゾロン骨格部分)の電気陰性度が高いため、色素分子の酸性基(X)の求核性が強まり、半導体表面の金属分子に結合または配位しやすくなり光電変換効率が向上したものと推定している。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子について、図により説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す断面図である。
図1に示すように、基板1、1′、透明導電膜2、7、半導体3、増感色素4、電荷輸送層5、隔壁9等から構成されている。
本発明の光電変換素子は、透明導電膜2を付けた基板1(導電性支持体とも言う。)上に、半導体3の粒子を焼結して形成した空孔を有する半導体層を有し、その空孔表面に色素4を吸着させたものが用いられる。対向する一対の電極の内の一つの電極6としては、基板1′上に透明導電膜7が形成され、その上に白金8を蒸着したものが用いられ、両電極間には電解質層として電解質5が充填されている。透明導電膜2及び7に端子を付けて光電流を取り出す。
本発明は、新規化合物(色素)、及びそれを用いた光電変換素子及び太陽電池に関するものである。
《一般式(1)で表される化合物》
以下に、前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)において、Ar1、Ar2は置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、Ar1は互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R2、R3、R4は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表す。R5は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R6はXで置換した、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、nは1以上の整数を表す。j、kは0以上の整数を表し、j+k≧1である。mは1以上の整数を表し、pは2または3である。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
R1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等が挙げられ、アルキニル基としては、プロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
R2、R3、R4で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロポエンチルアミノ基等が挙げられる。
R6で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、チオアルコキシ基としては、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオイソプロピル基、チオブチル基、チオ−tert−ブチル基、チオヘキシル基等が挙げられ、セレノアルコキシ基としては、セレノメチル基、セレノエチル基、セレノプロピル基、セレノブチル基、セレノヘキシル基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロポエンチルアミノ基等が挙げられる。上記アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アミノ基のアルキル上にXが置換する。
R2〜R5で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基としては、R1で挙げたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基と同義である。
Xは酸性基を表し、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホニル基、スルホニル基、及び、それらの塩等が挙げられ、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。
置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、水酸基、アミノ基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基等)が挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
《一般式(2)で表される化合物》
前記一般式(1)で表される化合物の中で、前記一般式(2)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(2)において、Ar1、Ar2は置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、Ar1は互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R2、R3、R4は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表す。R5は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Zは酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。R7、R8は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。qは0以上の整数を表す。Xは酸性基を表し、j、kは0以上の整数を表し、j+k≧1である。mは1以上の整数を表し、pは2または3である。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
R7、R8で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基としては、一般式(1)におけるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基と同義である。
一般式(2)において、Ar1、Ar2、R1〜R5、Xは、一般式(1)におけるAr1、Ar2、R1〜R5、Xと同義である。
《一般式(3)で表される化合物》
前記一般式(2)で表される化合物のYが硫黄原子、すなわち前記一般式(3)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(3)において、Ar1、Ar2は置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、Ar1は互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R2、R3、R4は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表す。R5は水素原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R7、R8は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。qは0以上の整数を表す。Xは酸性基を表し、j、kは0以上の整数を表し、j+k≧1である。mは1以上の整数を表し、pは2または3である。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
一般式(3)において、Ar1、Ar2、R1〜R5、R7、R8、Xは、一般式(2)におけるAr1、Ar2、R1〜R5、R7、R8、Xと同義である。
《一般式(4)で表される化合物》
前記一般式(3)で表される化合物のR5が水素原子、すなわち前記一般式(4)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(4)において、Ar1、Ar2は置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。R1は置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、Ar1は互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、R2、R3、R4は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表す。R7、R8は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。qは0以上の整数を表す。Xは酸性基を表し、j、kは0以上の整数を表し、j+k≧1である。mは1以上の整数を表し、pは2または3である。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
一般式(4)において、Ar1、Ar2、R1〜R4、R7、R8、Xは、一般式(3)におけるAr1、Ar2、R1〜R4、R7、R8、Xと同義である。
《一般式(5)で表される化合物》
前記一般式(4)で表される化合物が、前記一般式(5)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
一般式(5)において、R9、R10はハロゲン原子、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アリール基、アミノ基、複素環基を表す。n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜4の整数を表し、n9、n10が2以上の時は、R9、R10は同じでも異なってもよい。Ar2は置換または未置換のアリーレン基または複素環基を表す。また、R2、R3、R4は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表す。R7、R8は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、置換または未置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。qは0以上の整数を表す。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
R9、R10で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。R9、R10で表される置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アリール基、アミノ基、複素環基としては、一般式(4)における置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アリール基、アミノ基、複素環基と同義である。
一般式(5)において、Ar2、R2〜R4、R7、R8、Xは、一般式(4)におけるAr2、R2〜R4、R7、R8、Xと同義である。
一般式(1)〜(5)で表される化合物の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。この表で、部分構造の波線が付いている部分は、一般式で結合している結合部分を表す。
一般式(1)〜(5)で表される色素(以下、本発明の色素ともいう)は、一般的な合成法により合成することができるが、中でも、特開平7−5709号公報、同7−5706号公報等に記載の方法を用いて合成することができる。
《合成例》
合成例1(色素1の合成)
下記スキームにより、色素1を合成した。
アルデヒド(化合物A)を、1.2当量のdimethyl benzhydrylphosphonate、1.3当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Bを得た。
0℃でDMF3当量に塩化ホスホリル6当量を滴下した後、室温で30分攪拌した。そこに化合物BのDMF溶液を滴下し、100℃で5時間攪拌した。反応液に冷水を加え、室温にて1時間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータで濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Cを得た。
アルデヒド(化合物C)を、2.5当量の化合物M、5当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Dを得た。
化合物Dに1mol/lのHCl水溶液を加え、室温にて10分間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Eを得た。
化合物E、チオヒダントイン3当量、酢酸アンモニウム10当量を加えた酢酸溶液を120℃で3時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Fを得た。
化合物Fのエタノール溶液に、5当量のブロモ酢酸、10当量の水酸化カリウムを加え、70℃で2時間攪拌した。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後に、水、酢酸エチルを加え分液ロートで有機層を除去した。水層に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し色素1を得た。
色素1は、核磁気共鳴スペクトル及びマススペクトルで構造を確認した。
合成例2(色素333の合成)
下記スキームにより、色素333を合成した。
アルデヒド(化合物G)を、4当量の化合物M、5当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1.5時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Hを得た。
化合物Hに1mol/lのHCl水溶液を加え、室温にて10分間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Iを得た。
アルデヒド(化合物I)を、4当量の化合物M、5当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で2時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Jを得た。
化合物Jに1NのHCl水溶液を加え、室温にて10分間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Kを得た。
化合物K、チオヒダントイン4当量、酢酸アンモニウム10当量を加えた酢酸溶液を120℃で2.5時間攪拌した。反応液に水を加えた後に酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Lを得た。
化合物Lのエタノール溶液に、5当量のDL−ブロモコハク酸、15当量の水酸化カリウムを加え、70℃で1.5時間攪拌した。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後に、水、酢酸エチルを加え分液ロートで有機層を除去した。水層に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し色素333を得た。
色素333は、核磁気共鳴スペクトル及びマススペクトルで構造を確認した。
他の化合物も同様にして合成することができる。
このようにして得られた本発明の色素を半導体に担持させることにより増感し、本発明に記載の効果を奏することが可能となる。ここで、半導体に色素を担持させるとは、半導体表面への吸着、半導体が多孔質等のポーラスな構造を有する場合には、半導体の多孔質構造に前記色素を充填する等の種々の態様が挙げられる。
また、半導体層(半導体でもよい)1m2当たりの本発明の色素の総担持量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
本発明の色素を用いて増感処理を行う場合、色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体に本発明の色素を担持させるには、適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
本発明の色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に色素等を含ませる順序がどのようであっても本発明に記載の効果を得ることができる。また、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、本発明に係る半導体の増感処理の詳細については、後述する光電変換素子のところで具体的に説明する。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
次に本発明の光電変換素子について説明する。
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上に、少なくとも半導体に本発明の色素を担持させてなる半導体層、電荷輸送層及び対向電極を有する。以下、半導体、電荷輸送層、対向電極について順次説明する。
《半導体》
半導体電極に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbSであり、好ましく用いられるのは、TiO2またはNb2O5であるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO2(酸化チタン)である。
半導体層に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti3N4)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
上記の有機塩基が液体の場合は、そのまま固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明に係る半導体を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
(導電性支持体)
本発明の光電変換素子や本発明の太陽電池に用いられる導電性支持体には、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のものを用いることができる。導電性支持体に用いられる材料の例としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えばインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。導電性支持体の厚さは特に制約されないが、0.3〜5mmが好ましい。
また、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましく、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な導電性支持体を得るためには、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることがさらに好ましい。
《半導体層の作製》
本発明に係る半導体層の作製方法について説明する。
本発明に係る半導体層の半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
本発明に係る半導体層の好ましい態様としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる半導体電極を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜50nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体微粒子層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするため前記半導体微粒子層の焼成処理が行われる。
本発明においては、この半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
ここで、本発明に係る半導体層の空隙率は10体積%以下が好ましく、さらに好ましくは8体積%以下であり、特に好ましくは0.01〜5体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500〜30000nmである。
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(半導体の増感処理)
半導体の増感処理は、前述のように本発明の色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しおくことが好ましい。このような処理により、本発明の色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
本発明の色素を溶解するのに用いる溶媒は、前記化合物を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記化合物の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
前記化合物の溶解において、好ましく用いられる溶媒はアセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、複数の溶媒を混合してもよい。特に好ましくはアセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を本発明の色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃条件下では3〜48時間が好ましく、さらに好ましくは4〜24時間である。この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
《電荷輸送層》
本発明に用いられる電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を対極に輸送する機能を担う層である。
本発明に係る電荷輸送層は、レドックス電解質の分散物や正孔輸送材料としてのp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主成分として構成されている。
レドックス電解質としては、I−/I3 −系や、Br−/Br3 −系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I−/I3 −系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
電荷輸送剤としては、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つことが好ましい。本発明で使用する電荷輸送剤のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によって電荷輸送層に使用する電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
電荷輸送剤としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体が好ましい。このため、電荷輸送層を主として芳香族アミン誘導体で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルジアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルジアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、電荷輸送層を塗布法により形成する場合に、電荷輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
芳香族アミン誘導体以外の電荷輸送剤としては、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
以下に、電荷輸送剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《対向電極》
本発明に用いられる対向電極について説明する。
対向電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3−イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
〔太陽電池〕
本発明の太陽電池について説明する。
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子の一態様として、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷輸送層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された本発明に係る色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体を経由して対向電極に移動して、電荷移動層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた本発明に係る色素は酸化体となっているが、対向電極から電荷輸送層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明これらに限定されない。
実施例
〔光電変換素子1の作製〕
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、ポリエチレングリコール分散)を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm2)により塗布した。塗布及び乾燥(120℃で3分間)を2回繰り返し、200℃で10分間及び500℃で15分間焼成を行い、厚さ4μmの酸化チタン薄膜を得た。この薄膜上に、さらに酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)400nm、ポリエチレングリコール分散)を同様の方法で塗布及び焼成し、厚さ3μmの酸化チタン薄膜を形成した。
本発明の色素1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。
電荷輸送層(電解液)には、ヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム0.6mol/l、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5mol/lを含むアセトニトリル溶液を用いた。作製した半導体電極、対極に白金及びクロムを蒸着したガラス板を用い、電荷輸送層の層厚が20μmとなるようにクランプセルで組み立てることにより光電変換素子1を作製した。
〔光電変換素子2〜43の作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1を表1に記載の本発明の色素に変更した以外は同様にして、光電変換素子2〜43を作製した。
〔光電変換素子44の作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液の代わりに、色素14をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液及び色素401をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液を1:1の比で混合した色素溶液に変更した以外は同様にして、光電変換素子44を作製した。
〔光電変換素子45の作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液の代わりに、色素9をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液及び色素135をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解した5×10−4mol/lの溶液を1:1の比で混合した色素溶液に変更した以外は同様にして、光電変換素子45を作製した。
〔光電変換素子46の作製〕
光電変換素子1の作製において、粒径18nmの酸化チタン層の膜厚を15μm、粒径400nmの酸化チタン層の膜厚を5μmとし、色素1を色素801に変更し、電荷移動層(電解液)にはヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム0.6mol/l、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5mol/lを含む3−メトキシプロピオニトリルの溶液を用いた以外は同様にして、光電変換素子46を作製した。
〔光電変換素子47の作製〕
光電変換素子46の作製において、色素501を色素502に変更した以外は同様にして、光電変換素子47を作製した。
〔光電変換素子48の作製〕
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、ポリエチレングリコール分散)を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm2)により塗布し200℃で10分間及び450℃で15分間焼成を行い、厚さ1.5μmの酸化チタン薄膜を得た。
本発明の色素5をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。
本発明の色素14をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。その後、クロロベンゼン:アセトニトリル=19:1混合溶媒に、ホール輸送材料である芳香族アミン誘導体2,2’,7,7’−テトラキス(N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)アミン)−9,9’−スピロビフルオレン(OMeTAD)を0.17mol/l、ホールドーピング剤としてN(PhBr)3SbCl6を0.33mmol/l、Li[(CF3SO2)2N]を15mmol/l、t−Butylpyridineを50mmol/lとなるように溶解したホール層形成用塗布液を調製した。そして、当該ホール層形成用塗布液を、前記光増感色素を吸着、結合させた半導体層の上面にスピンコート法により塗布し、層厚10μmの電荷輸送層を形成した。さらに真空蒸着法により金を90nm蒸着し、対極電極を作製し、光電変換素子48を作製した。前述したスピンコート法による塗布ではスピンコートの回転数を1000rpmに設定して行った。
〔光電変換素子49の作製〕
光電変換素子の色素を501に変更した以外は、光電変換素子48と同様にして光電変換素子49を作製した。
〔光電変換素子の評価〕
作製した光電変換素子を、ソーラーシュミレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の擬似太陽光を照射することにより行った。即ち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。
また、分光光度計でモル吸光係数を求めた。
評価の結果を表1に示す。
表1より、本発明のジスチルベン構造を有しイミダゾロン骨格を2個有する色素を用いた光電変換素子6は、ローダニン骨格を1個有する比較の色素を用いた光電変換素子例46に比べ、短絡電流、開放電圧、変換効率において向上が見られた。これは吸収波長が30nm伸び、モル吸光係数(ε)が24000増加したことによると考えられる。また光電変換素子1〜43においても変換効率向上が見られ、複数の色素を用いた光電変換素子44、45においても変換効率の向上が見られ、光電変換素子48は光電変換素子49に比べ短絡電流、開放電圧、変換効率において向上が見られた。また、酸化物半導体へ吸着させると、アリール及び/またはオレフィン、アクセプター部のイミダゾロンによる強い分子間相互作用により凝集が発達し、吸収波長が長波シフトしていることから、より多くの波長の光を吸収していることも変換効率向上の要因と考えられる。