JP2009187820A - 光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換効率が高く、高耐久性の増感色素を用いた光電変換素子、及び、前記光電変換素子を用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】対向電極間に少なくとも下記一般式(1)の構造を有する化合物を含有する光電変換素子。
Figure 2009187820

【選択図】なし

Description

本発明は光電変換素子に関し、特に、色素増感型光電素子、及び、それを用いた太陽電池に関する。
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体はクロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法またはディッピング法等により薄膜化し、電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(例えば、非特許文献1参照。)。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、ルテニウム錯体で分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の利点は酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度まで精製する必要がないこと、従って安価で、更に利用できる光は広い可視光領域にまで亘っており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できることである。
反面、資源的制約があるルテニウム錯体が使われているため、この太陽電池が実用化された場合に、ルテニウム錯体の供給が危ぶまれている。また、このルテニウム錯体は高価であることと、経時での安定性に問題があり、安価で安定な有機色素へ変更することができればこの問題は解決できる。
電子供与能を有するπ電子共役系および電子吸引性を有する酸性吸着基を併せ持つ色素分子が光電変換効率の高い素子を与えることが知られている。電子供与性のπ電子系としてはトリアリールアミン誘導体が広く用いられている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかし、これらの色素の溶液吸収ピークは500nm以下であり、可視光線の長波側の吸収が弱いという問題が残っている。
更に、これらの色素は酸化チタンへの吸着が劣っていたり、高い増感効果を得るには至っておらず、耐久性にも問題があることが解った。トリアリールアミン構造を有する化合物として、高い増感効果を示す太陽電池が韓国のSuyoung Hwangらによって報告された(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、耐久性は満足できるレベルになく、更なる改善が必要であることが判明された。
特開2005−123033号公報 特開2005−123033号公報 特開2006−079898号公報 特開2006−134649号公報 特開2006−156212号公報 Nature,353,737(1991),B.O’Regan、M.Gratzel Chem.Commun.,2007,DOI:10.1039/b709859f、Suyoung Hwang等
本発明は、色素増感型の光電変換素子に用いられる、新規で、変換効率が高く、高耐久性の増感色素を提供することにより、高効率の光電変換素子とそれを用いた太陽電池を提供することを目的とするものである。
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
請求項1に記載の発明は、
『対向電極間に、少なくとも下記一般式(1)の構造を有する化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
Figure 2009187820
(式中、Ar1〜Ar3は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。Ar4、Ar5は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。Xは酸性基を有する有機残基を表し、R1、R2、R3は水素、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、シアノ基、複素環基を表す。nは0以上5以下の整数を表す。)』というものである。
請求項2に記載の発明は、
『前記光電変換素子は色素増感型のものであって、
前記対向電極間に少なくとも半導体層が設けられ、
前記半導体層は、前記一般式(1)の構造を有する化合物を担持させてなることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。』というものである。
請求項3に記載の発明は、『請求項1または2に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。』というものである。
本発明によれば、新規で、変換効率が高く、高耐久性の増感色素を用いることにより、光電変換効率が高く、高耐久性に優れた色素増感型の光電変換素子と当該光電変換素子を備えた太陽電池を提供することが可能になった。
最初に、本発明に係る光電変換素子について図1を用いて具体的に説明する。図1は本発明に係る光電変換素子の一例を示す構成断面図である。
図1に示す様に、光電変換素子は基板1、1’、透明導電膜2、7、半導体3、増感色素4、電解質5、隔壁9等から構成されている。
光電変換素子を構成する光電極としては、透明導電膜2を設けた基板1(導電性支持体ともいう。)上に、半導体3の粒子を焼結させて形成した空孔を有する半導体層を有し、その空孔表面に増感色素4を吸着させたものが用いられる。
また、対向電極6は、図1に示す様に、基板1’に透明導電膜7を設け、透明導電膜7に白金8を蒸着させたものが用いられる。光電極と対向電極6の両極間には電解質層として電解質5が充填されている。
本発明は、光電変換素子に用いられる増感色素4に新規のものを用いるものである。光電変換素子では増感色素が発電時に光酸化反応を繰り返すことにより電流を発生させるものであるが、光電変換素子の耐久性を向上させる上で光安定性に優れる色素が求められていた。本発明者は、光電変換効率が高いトリフェニルアミンを増感色素の母核とし、光励起された電子が酸化チタン電極へ効率的に移動できるようにするため、酸性基を付加して酸化チタンに吸着可能な構造とした。
さらに、下記に示す一般式(1)の構造中のスチルベンユニットに対し、エチレン部にアリール基や複素環基等を導入することにより光安定性が得られる様になったのである。上記対応により光安定性の向上が実現された理由は、おそらく、通電により最も酸化劣化し易いエチレン部にアリール基や複素環基等のかさ高い置換基を導入することで、劣化反応物からの攻撃が抑制され、エチレン部での酸化劣化が抑制されるためと推測される。
この様に、本発明では上記構成により、変換効率が高く、かつ、耐久性に優れた新規の増感色素を見出すことができた。
以下、一般式(1)で表される化合物(以下、本発明に使用される増感色素ともいう)について説明する。本発明に増感色素として用いられる化合物(1)は下記に示す構造のものである。すなわち、
Figure 2009187820
前記一般式(1)において、Ar1〜Ar3は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成しても良い。Ar4、Ar5は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成しても良い。また、Xは酸性基を有する有機残基を表し、R1、R2、R3は水素、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、シアノ基、複素環基を表す。nは0以上5以下の整数を表し、好ましくはnが0以上3以下の整数が好ましい。
Ar1〜Ar5で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンソラニル基等が挙げられる。また、複素環基としては、例えば、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピロール基、フラニル基、チオフェニル基、ベンズイダゾール基、ベンツオキサゾール基等が挙げられる。これらのアリール基、複素環基は、置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、各々置換もしくは未置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基)、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基、等)等である。
Ar5で表されるアリール基または複素環基は、更にXで表される酸性基を有する有機残基で置換されている。酸性基としてはカルボキシル基、ホスホニル基、スルホニル基等が挙げられ、有機残基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環基等あるいはそれらの組合せが挙げられる。好ましい酸性基を有する有機残基としては、例えば、−(アルキレン)−COOH、−(アリーレン)−COOH、−(アルキレン)−PO(OH)2、−CH=C(CN)COOH、−(複素環)−(アルキレン)−COOH、−CH=(複素環)−(アルキレン)−COOH等を挙げることができ、好ましくはAr5にπ共役で結合されている。
また、Ar4で表されるアリール基または複素環基についても、Xで表される酸性基を有する有機残基を有してもよい。
また、R1、R2、R3はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、各々置換もしくは未置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ドデシル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基)、シアノ基、複素環基(例えば、モルホニル基、フラニル基、等)を表す。
本発明に使用可能な増感色素の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009187820
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Figure 2009187820
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本発明に使用可能な増感色素は、公知の合成法により作製することができる。以下に、本発明に使用可能な増感色素の合成例を示すが、本発明に使用される増感色素の作製は下記合成例にのみに限定されるものではない。
〔色素A−1の合成〕
Figure 2009187820
トリフェニルアミン24.5g(0.1モル)をトルエン250mlに溶解し、N,N−ジメチルホルムアミド30mlを加え、氷冷下5℃でオキシ塩化リン30mlを滴下する。次いで、室温で2時間撹拌した後、約60℃で加熱し、放冷後、塩化メチレン200mlで希釈し、炭酸カリウム水溶液で中和する。中和液の有機相を分取し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、減圧濃縮し、得られた残査をカラムクロマトグラフィーにより精製して、ホルミル化された化合物(1)(4−ホルミルトリフェニルアミン)20.5gが得られる。
Figure 2009187820
ベンゾフェノン−4−カルボン酸22.6g(0.1モル)をクロロホルム200mlに溶解し、メタノール4.8g(0.15モル)、パラトルエンスルホン酸0.5gを加えて6時間加熱還流する。放冷後、水、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄する。有機相を分取し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、減圧濃縮し、得られた残査をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより化合物(2)19.2gが得られる。
次いで、化合物(2)19.2gをエタノール60mlに溶解し、撹拌下、NaBH4を1.26g(33ミリモル)を加えて5時間室温で撹拌する。濃縮後、水で洗浄し、得られた残査をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより化合物(3)16.0gが得られる。
化合物(3)16.0gをメタノール100mlに溶解し、トリフェニルホスフィン臭化水素酸塩17.1gのメタノール溶液50mlを室温で滴下、撹拌する。沈殿物を濾取、メタノールで洗浄、乾燥することにより化合物(4)13.8gが得られる。
化合物(4)10.0gと化合物(1)5.0gを添加したジメチルホルムアミド(DMF)溶液100mlに、ナトリウムメトキシド0.8gを添加し、液温を30〜40℃に保って攪拌する。2時間後、水100mlを加えて撹拌して結晶を濾取する。濾取した結晶をカラムクロマトグラフィーにより処理することにより化合物(5)が6.7g得られる。
化合物(5)4.0gを塩化メチレン50mlに溶解し、−78℃でジイソブチルアルミニウムヒドリドの1Mヘキサン溶液4.7mlを滴下する。次いで、30分間の撹拌後、飽和NH4Cl水溶液を滴下し、撹拌しながら室温に戻す。減圧濃縮を行い、得られた残査をカラムクロマトグラフィーで精製することにより化合物(6)が1.1g得られる。
化合物(6)0.79g、シアノ酢酸0.15g、ピペリジン0.2mlをクロロホルム10mlに溶解し、10時間の加熱還流を行う。その後、減圧濃縮を行って得られた残査を水で洗浄し、次いで、トルエンで洗浄した後、酢酸エチルとトルエンから再沈することにより、例示化合物A−1が0.75g得られる。
他の化合物についても同様の手順で合成することが可能である。
上記手順で作製が可能な一般式(1)で表される化合物を半導体に担持させると、その増感作用により、本発明の効果を奏することが可能になる。ここで「半導体に増感色素を担持させる」とは、半導体表面への吸着、あるいは、半導体が多孔質等のポーラスな構造を有する場合には半導体の多孔質構造に増感色素を充填する等、種々の態様を挙げることができる。なお、半導体層(半導体でもよい)1m2あたりの本発明に使用可能な増感色素の総担持量は、0.01ミリモル〜100ミリモルの範囲が好ましく、更に好ましくは0.1ミリモル〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5ミリモル〜20ミリモルである。
本発明に使用可能な増感色素で増感処理を行う場合、前記増感色素を単独で用いてもよいし、また、前述の増感色素のなかから複数を併用することも可能である。さらに、以下に挙げる文献に開示された公知の化合物と混合して使用することも可能である。混合可能な公知の化合物は、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物が挙げられる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広げて太陽光を有効に利用できる様に吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
本発明に使用可能な増感色素を半導体に担持させるには、増感色素化合物をエタノールに代表される適切な溶媒に溶解させ、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
本発明に使用可能な増感色素を複数種類併用したり、その他の増感色素を併用して増感処理を行う場合は、各増感色素の混合溶液を調製して用いたり、それぞれの増感色素について溶液を別々に用意し、半導体を各溶液に順に浸漬することで作製が可能である。各増感色素の溶液を別々に用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に増感色素等を含ませる順序がどのようであっても本発明の効果を発現させることが可能である。また、前記増感色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気などにより水が半導体薄膜上、ならびに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、増感色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
半導体の増感処理の詳細については以下の光電変換素子の項でも具体的に説明する。
次に、本発明に係る光電変換素子について説明する。
本発明に係る光電変換素子は、導電性支持体上の半導体に色素を含ませてなる光電極と対向電極を電解質層を介して対向配置した構造のものである。以下、光電変換素子を構成する半導体、導電性支持体、光電極、電解質、対向電極について順次説明する。
《半導体》
光電極に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムの様な単体、元素周期表の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等が挙げられる。
金属のカルコゲニドとしては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti34等が挙げられる。この中でも、TiO2、ZnO、SnO2、Fe23、WO3、Nb25、CdS、PbSが好ましく、より好ましくはTiO2またはNb25であるが、中でもTiO2が特に好ましい。
光電極に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用したり、また、酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti34)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化スズ複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比を30%以下とすることが好ましい。
また、上記半導体は有機塩基で表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられ、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
上記有機塩基が液体の場合はそのまま、また、固体の場合は有機溶媒に溶解させた溶液を準備し、半導体を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することにより表面処理を実施することができる。
《導電性支持体》
本発明に係る光電変換素子や太陽電池に使用される導電性支持体には、金属板の様な導電性材料、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けたものを用いることができる。導電性支持体に使用される材料の例としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)、導電性金属酸化物(例えばインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)、あるいは、炭素が挙げられる。導電性支持体の厚さは特に制約されないが、0.3〜5mmが好ましい。
また、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。ここで、「実質的に透明である」とは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な導電性支持体を得るための好ましい方法としては、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に導電性金属酸化物からなる導電性層を設ける方法が挙げられる。透明な導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下が好ましく、10Ω/cm2以下が更に好ましい。
《光電極》
本発明で用いられる光電極について、その作製方法をとおして説明する。
本発明で用いられる光電極の半導体が粒子状の場合、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて光電極を作製するのがよい。また、本発明で用いられる半導体が膜状で導電性支持体上に保持されていない場合、半導体を導電性支持体上に貼合して光電極を作製するのが好ましい。
本発明で用いられる光電極の好ましい態様として、導電性支持体上に半導体の微粒子を焼成して形成する方法が挙げられる。半導体を焼成して作製する場合、増感色素による半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は焼成後に実施することが好ましく、特に、焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物を吸着処理することが好ましい。
以下、半導体微粉末を焼成して光電極を形成する方法について詳細に説明する。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
先ず、半導体の微粉末を含む塗布液、すなわち半導体微粉末含有塗布液を調製する。半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、2〜50nmがさらに好ましい。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることにより調製することができる。溶媒中に分散した半導体微粉末は1次粒子状で分散する。
溶媒としては、半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が挙げられる。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記の様にして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹きつけ、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成することにより、導電性支持体上に半導体層(半導体膜ともいう)が形成される。
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して形成された皮膜は、半導体微粒子の集合体からなり、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。この様にして導電性支持体上に形成された半導体微粒子の層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱いので、機械的強度を高めて基板に強く固着させるために焼成処理を行う。この焼成処理により強固な半導体層が形成される。
本発明では、この半導体層の構造は特に限定されるものではなく、どの様な構造を有していてもよいが、多孔質構造、つまり、空隙を有するものでポーラスな層とも言われる構造をとることが好ましい。半導体層を多孔質構造のものにする場合、半導体層の空隙率は10体積%以下が好ましく、更に好ましくは8体積%以下であり、特に好ましくは0.01体積%〜5体積%である。なお、半導体層の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味するもので、空隙率は水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置により測定が可能である。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも1μm以上が好ましく、更に好ましくは1〜25μmである。
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、更に好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや3塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(半導体の増感処理)
半導体の増感処理は、前述した増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しおくことが好ましい。このような処理により、本発明の増感色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
本発明の増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、前記化合物を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記化合物の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
前記化合物の溶解において、好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒であり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を本発明の増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を十分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での増感色素の分解等により生成して分解物が増感色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃条件下では1〜48時間が好ましく、更に好ましくは2〜24時間である。この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。但し、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくにあたり本発明で使用される増感色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して使用することができる。好ましい温度範囲は、10〜100℃であり、更に好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
《電解質》
本発明に用いられる電解質について説明する。
本発明の光電変換素子においては、対向電極間に電解質が充填され、電解質層が形成される。電解質としては、レドックス電解質が好ましく用いられる。ここで、レドックス電解質としては、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。この様なレドックス電解質は、従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I-/I3 -系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することにより得ることができる。電解質層はこれらレドックス電解質の分散物で構成され、それら分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電解質層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
《対向電極》
本発明に用いられる対向電極について説明する。
対向電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料を用いることができ、I3 -イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を十分な速さで行わせる触媒能を持ったものが好ましく使用される。この様なものとしては、例えば、白金電極、導電材料表面に白金メッキや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
〔太陽電池〕
次に、本発明に係る太陽電池について説明する。
本発明に係る太陽電池は、前述してきた本発明に係る光電変換素子の一態様であり、太陽光に最適の設計ならびに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光を照射できる様な構造を有している。
本発明に係る太陽電池を構成する際、光電変換素子で説明した光電極、電解質層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいは、これら全体を樹脂で封止することが好ましい。
本発明に係る太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された前述した一般式(1)で表される化合物を含有する増感色素は照射光もしくは電磁波を吸収することにより励起する。励起により発生した電子は、半導体に移動し、次いで、導電性支持体を経由して対向電極に移動し、電荷移動層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた前記増感色素は酸化体となっているが、対向電極から電解質層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻る。同時に電荷移動層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元され得る状態に戻る。この様にして、回路内を電子が移動することにより、本発明に係る光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例に基づいて本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は下記記載に限定されるものではない。
1.評価実験その1
〔光電変換セル1の作製〕
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)を設けた導電性ガラス基板(FTOガラス基板)上に、市販の酸化チタンペースト(粒径18nm)をドクターブレード法により塗布した後、60℃で10分間加熱してペーストを乾燥させた。ペーストを乾燥させた後、さらに、500℃で30分間焼成処理を行った。
次に、増感色素である例示化合物A−1をエタノールに溶解させて、3×10-4モル/リットルの溶液を作製した。酸化チタンを塗布焼結させたFTOガラス基板を、この溶液に室温で16時間浸漬させて増感色素の吸着処理を行うことにより光電変換電極を作製した。この様にして、光電変換電極を2部作製し、1つはそのまま、もう1つは13ppmのオゾン雰囲気下で20分間オゾン暴露試験を行い、暴露前後の電極を用いて光電変換セルを作製した。
電解液としてヨウ化リチウム0.4モル、ヨウ素0.05モル、4−(t−ブチル)ピリジン0.5モルを含有する3−メチルプロピオニトリル溶液を用意した。対向電極に白金板を用い、先に作製した光電変換電極ならびに電解液とクランプセルで組み立てることにより「光電変換セル1」を得た。
〔光電変換セル2〜10及び比較用光電変換セル1の作製〕
「光電変換セル1」の作製で、例示化合物A−1の代わりに下記に示す表1に記載の例示化合物を用いた他は同様の手順で光電変換電極を2部作製し、1つはオゾン暴露試験を行って、暴露前後の電極を用いて光電変換セルを作製した。作製した光電変換セルを「光電変換セル2〜10」及び「比較用光電変換セル1」を作製した。
得られた各セルについて下記の評価を行った。ここで「光電変換セル1〜10」については「実施例1〜10」、「比較用光電変換セル1」については「比較例1」とした。なお、「比較例1」には下記構造からなる色素Sを用いた。
Figure 2009187820
〔発電特性の評価〕
評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム電創製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルタ(AM−1.5)を透過させたキセノンランプから100mW/cm2の擬似太陽光を照射して行った。各光電変換素子について、I−Vテスタを用いて室温下での電流−電圧特性を測定し、短絡電流(ISC)、開放電圧(VOC)を求めた。評価結果を表1に示す。なお、表中の変換効率比は、暴露後の変換効率を暴露前の変換効率で除することにより得られたものである。
Figure 2009187820
表1に示す様に、「実施例1〜10」は使用した増感色素により、色素Sを用いた「比較例1」に比べて、オゾン暴露前後における変換効率比が高い結果が得られた。この結果から、「実施例1〜10」で使用した増感色素は、スチルベンユニットに対してエチレン部にアリール基や複素環基等の置換基を有さない構造の増感色素を用いた「比較例1」に比べて高耐久性を有するものであると解釈できる。
2.評価実験その2
〔光電変換セル11の作製〕
「光電変換セル1」で用いたものと同様のFTO導電性ガラス基板上に、アルコキシチタン溶液(松本工商:TA−25/IPA希釈)をスピンコート法にて塗布した。室温で30分放置後、450℃で30分間焼成を行って短絡防止層を形成した。続いて、市販の酸化チタンペースト(粒径18nm)を上記基板上にドクターブレード法により塗布した後、60℃で10分間加熱処理後、500℃で30分間焼成を行い、厚さ5μmの酸化チタン薄膜を有する半導体電極基板を得た。
例示化合物A−3をエタノールに溶解させ、3×10-4モル/リットルの溶液を調製した。上記半導体電極基板をこの溶液に室温で16時間浸漬させて増感色素の吸着処理を行った後、クロロホルムで洗浄、真空乾燥して光電変換電極とした。
次に、トルエン溶媒中に、ホール輸送剤として下記化合物(spiro−MeO TAD)0.17モル、ホールドーピング剤としてN(PhBr)3SbCl6を0.33ミリモル、Li[(CF3SO22N]15ミリモルを溶解させ、色素吸着後の上記光電変換電極上にスピンコートしてホール移動層を形成した。
Figure 2009187820
ホール移動層形成後、更に真空蒸着法により金を30nm蒸着して対向電極を作製した。上記対向電極に先に作製した光電変換電極ならびに電解液とクランプセルで組み立てることにより「光電変換セル11」を得た。
〔光電変換セル12〜15の作製〕
「光電変換セル11」の作製で、例示化合物A−3に代えて下記に示す表2に記載の例示化合物を用いた他は同様の手順で「光電変換セル12〜15」と「比較用光電変換セル2」を作製した。
得られた各セルについて前記評価実験その1と同様の評価を行った。ここで「光電変換セル11〜15」については「実施例11〜15」、「比較用光電変換セル2」については「比較例2」とした。なお、「比較例2」に用いた増感色素は「比較例1」と同様に前述の増感色素Sである。結果を表2に示す。
Figure 2009187820
表2に示す様に、「実施例11〜15」は「比較例2」に比べてオゾン暴露前後における光電変換効率が高い結果が得られた。この結果から、「実施例11〜15」で使用された増感色素は、スチルベンユニットに対してエチレン部にアリール基や複素環基等の置換基を有さない「比較例2」で使用した増感色素に比べて高耐久性を有するものであると解釈できる。
本発明に係る光電変換素子の一例を示す構成断面図である。
符号の説明
1、1’ 基板
2、7 透明導電膜
3 金属化合物半導体
4 増感色素
5 電解質
6 対向電極
7 透明導電膜
8 白金(Pt)

Claims (3)

  1. 対向電極間に、少なくとも下記一般式(1)の構造を有する化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
    Figure 2009187820
    (式中、Ar1〜Ar3は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。Ar4、Ar5は各々置換もしくは未置換のアリール基、複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。Xは酸性基を有する有機残基を表し、R1、R2、R3は水素、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、シアノ基、複素環基を表す。nは0以上5以下の整数を表す。)
  2. 前記光電変換素子は色素増感型のものであって、
    前記対向電極間に少なくとも半導体層が設けられ、
    前記半導体層は、前記一般式(1)の構造を有する化合物を担持させてなることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 請求項1または2に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
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