JP2012043734A - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の酸化物超電導線材1は、基材3と、基材3上に設けられた中間層5と酸化物超電導層6と、酸化物超電導層6上に設けられたAgの安定化基層7とを備えて酸化物超電導積層体2が構成され、酸化物超電導積層体2の周面側に、少なくとも酸化物超電導積層体2の側面および基材3側の面を覆うように気相法により形成された金属シード層8が被覆され、金属シード層8の外周側および安定化基層7の上面側に電解めっきによる金属製の安定化層9が積層されてなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
一方、前記従来技術において、Agの安定化層を酸化物超電導線材の全周にカプセル化する技術にあっては、前述の課題は解消できるものの、高価なAgを超電導線材の全周に付着する必要があり、コストの向上が避けられない問題がある。
本発明の酸化物超電導線材は、基材と、該基材上に設けられた中間層と酸化物超電導層と、該酸化物超電導層上に設けられたAgの安定化基層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に、少なくとも該酸化物超電導積層体の側面および前記基材側の面を覆うように気相法により形成された金属シード層が被覆され、該金属シード層の外周側および前記安定化基層の上面側に電解めっきによる金属製の安定化層が積層されてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材は、前記酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うように前記金属シード層が被覆され、該金属シード層の外周側に前記安定化層が積層されてなることが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材において、前記金属シード層が、スパッタ法により形成されたCuであり、前記金属製の安定化層が電解めっきにより形成されたCuであることが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、前記酸化物超電導積層体の全周を被覆する所定の厚さの前記金属シード層を気相法により形成した後、Cuの電解めっき液に浸漬して電解することによりCuの前記安定化層を前記金属シード層の全周に形成することが好ましい。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、Cuをスパッタして前記金属シード層を形成することが好ましい。
本発明において、酸化物超電導層の側面側及び基材の裏面側とAgの安定化基層の表面側、即ち、酸化物超電導積層体の全周を金属シード層で覆って保護する構成とするならば、金属シード層の外周側に形成する電解めっきによる安定化層の密着性が良くなる。
金属シード層をスパッタ法により形成したCuとし、Cuの電解めっきにより安定化層を形成することにより、電解めっきによる安定化層の密着性をより向上させることができる。
図1は本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材1を模式的に示す概略断面図であり、図2は該酸化物超電導線材1に組み込まれている酸化物超電導積層体2の概略構成図、図3は該酸化物超電導積層体2の積層構造の詳細を示す構成図である。
酸化物超電導積層体2はテープ状の基材3の上に、中間層5と酸化物超電導層6と安定化基層7を積層してなり、この酸化物超電導積層体2を中心部に備え、その全周面を覆うように金属シード層8と電解めっきによる金属製の安定化層9が形成され、安定化層9の全周面を覆うように樹脂製の被覆層10が形成され、酸化物超電導線材1が構成されている。なお、被覆層10は必須ではなく、酸化物超電導線材の使用用途に応じて適宜設けられるものであり、被覆層10を有さない構成とすることもできる。
酸化物超電導積層体2は、より詳細には図3に示す如く、基材3の上面に拡散防止層11とベッド層12と配向層15とキャップ層16とからなる中間層5が積層され、その上に酸化物超電導層6と安定化基層7を積層して構成されているが、図1、図2では図示の簡略化のために中間層5を1層のように描いている。なお、拡散防止層11とベッド層12は必須ではなく、場合によっては略しても良い。
この配向層15をIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する酸化物超電導層6の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層6を得るようにすることができる。
例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
図4に示す装置は、拡散防止層11とベッド層12を備えたテープ状の基材3をその長手方向に走行するための走行系(図示略)と、その表面が基材3の表面に対して斜めに向いて対峙されたターゲット21と、ターゲット21にイオンを照射するスパッタビーム照射装置22と、基材3の表面に対して斜め方向からイオン(希ガスイオンと酸素イオンの混合イオン)を照射するイオン源23とを有しており、これらの各装置は真空容器(図示略)内に配置されている。
このように、ベッド層12の表面に、ターゲット21の構成粒子を堆積させつつ、所定の入射角度でイオン照射を行うことにより、形成されるスパッタ膜の特定の結晶軸がイオンの入射方向に固定され、結晶のc軸が金属基板の表面に対して垂直方向に配向するとともに、結晶のa軸及びb軸が面内において一定方向に配向する。このため、IBAD法によってベッド層12上に形成された配向層15は、高い面内配向度、例えばΔφ=12〜16゜程度を得ることができる。
例えばCeO2によって構成される。キャップ層16は、上述のように自己配向していることにより、配向層15よりも更に高い面内配向度、例えばΔφ=4〜6゜程度を得ることができる。
CeO2層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導層6は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、塗布熱分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、PLD(パルスレーザー蒸着)法、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)又はCVD法を用いることができる。
なお、安定化基層7をAgから構成する理由として、酸化物超電導層6に酸素をドープするアニール工程においてドープした酸素を酸化物超電導層6から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。Agの安定化基層7を成膜するには、スパッタ法などの成膜法を採用し、その厚さを1〜30μm程度に形成できる。
本実施形態においては、酸化物超電導層6を保護するために、以下に説明する気相法により形成された金属シード層8と電解めっきによるCuの安定化層9を形成して酸化物超電導積層体2の全周をカバーする構造を採用する。
このため、基材3の側面側と裏面側には、拡散防止層11、ベッド層12、配向層15、キャップ層16を成膜する工程を経る内に、不要な堆積物や高温生成物などが僅かに付着してしまう。また、基材3を構成する材料がハステロイである場合、基材3上に各層を成膜する際の加熱により、基材3の表面が酸化されてしまう。そのため、基材3の側面側と裏面側は、電解めっきの付きが特に悪いことを勘案し、気相法により金属シード層8をテープ状の酸化物超電導積層体2の全周(周面全体)を覆うように必要な厚さ形成する。
ここで、酸化物超電導積層体2を金属シード層8で被覆する前に、基材3の裏面側に付着した不純物や酸化物を逆スパッタにより除去することも好ましい。
金属シード層8は気相法で形成されており、気相法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)が挙げられるが、比較的簡便に成膜が可能であり、コストも安価であるため、スパッタ法が特に好ましい。スパッタ法としては、イオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法のいずれの方法でもよい。
酸化物超電導積層体2の全周を覆うようにCuをスパッタして金属シード層8を形成し、次に、金属シード層8の全周を覆うようにCuを電解めっきして安定化層9を形成するならば、金属シード層8と安定化層9の密着性を向上させることができる。
図5は、イオンビームスパッタ法により酸化物超電導積層体2の全周を覆うようにCuを成膜する場合に使用される成膜装置の一例の要部を示す概略構成図である。
図5に示す成膜装置は、基材3と中間層5と酸化物超電導層6と安定化基層7がこの順に積層されて構成された、テープ状の酸化物超電導積層体2をその長手方向に走行するための走行系(図示略)と、その表面が酸化物超電導積層体2の安定化基層7側の表面に対して斜めに向いて対峙された第1のターゲット31Aと、第1のターゲット31Aにイオンを照射する第1のスパッタビーム照射装置32Aと、その表面が酸化物超電導積層体2の基材3側の表面に対して斜めに向いて対峙された第2のターゲット31Bと、第2のターゲット31Bにイオンを照射する第2のスパッタビーム照射装置32Bとを有しており、これらの各装置は真空容器(図示略)内に配置されている。なお、図5においては、図面を見やすくするために中間層5と酸化物超電導層6は省略されている。
なお、図5に示す成膜装置では、第1のターゲット31Aおよび第2のターゲット31Bは、夫々、酸化物超電導積層体2の表面に対して斜めに向いて対峙された例を示しているが、本発明はこの例に限定されない。前述の如く、酸化物超電導積層体2の厚さは数100μm程度と薄いため、第1のターゲット31Aおよび第2のターゲット31Bを酸化物超電導積層体2に対向配置しても、第1のターゲット31A及び第2のターゲット31Bより叩き出されたCu粒子は、酸化物超電導積層体2の側面側にもまわり込むため、酸化物超電導積層体2の全周に亘ってCuがスパッタされる。
図6は、イオンビームスパッタ法により酸化物超電導積層体2の全周を覆うように金属シード層8を形成する場合に使用される成膜装置の他例を示す概略斜視図である。以下の説明においても、スパッタ法により金属シード層8を形成する方法の他の例として、図6に示す成膜装置を使用してCuをスパッタして金属シード層8を成膜する方法について説明する。
成膜装置50は、テープ状の酸化物超電導積層体2を巻回するリール等の巻回部材を複数個同軸的に配列してなり、離間して対向配置された一対の第1ロール54、第2ロール55より構成される酸化物超電導積層体2が走行する走行系51と、走行系51に酸化物超電導積層体2を送り出す送出リール52と、走行系51から排出される酸化物超電導積層体2を巻き取る巻取リール53と、酸化物超電導積層体2に対して金属シード層8を形成する第1の成膜系56及び第2の成膜系57とを備えている。成膜装置50は真空容器S1に収容されており、真空容器S1には真空排気装置S2が接続され、この真空排気装置S2により真空容器S1内を所定の圧力に減圧するようになっている。
これによって、走行系51である一対の第1ロール54及び第2ロール55に巻回された酸化物超電導積層体2が、第1ロール及び第2ロールを周回し、第1のターゲット57aに対向する位置および第2のターゲット56aに対向する位置に複数列並んで移動するようになる。その後、真空排気装置を駆動し、真空容器内を減圧する。
以上の工程により、酸化物超電導積層体2の全周を覆うように金属シード層8を形成することができる。
図6に示す構成の成膜装置50を使用して金属シード層8を形成するならば、イオンの照射により第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aから叩き出すか蒸発された各ターゲット56a、57aの構成粒子であるCuを、良好な収率で酸化物超電導積層体2の表面、裏面、及び両側面に堆積させることができ、生産工程の短縮化、及びターゲットの有効利用が可能となる。
金属シード層8の膜厚が5nm未満では、薄すぎるため、電解めっきによりCuの安定化層9を形成する際、所定の電流密度で電解めっきを行うためには大きな電圧をかける必要があり電解めっき工程の安全性を考慮すると好ましくない。また、金属シード層8の膜厚が5nm未満では、薄すぎて、酸化物超電導積層体2の全周を覆う場合に特に基材3の裏面側にムラが出やすく、金属シード層8に厚さムラが生じた場合は、金属シード層8の上に電解めっきによりCuの安定化層9を形成する際、電解集中を生じて電解めっきに支障を来たすとともに、電解めっきのムラの原因となる。
金属シード層8の膜厚が、200nmを超える場合、スパッタ法により金属シード層8を形成するには長時間を要するため、生産性が低下するため好ましくない。
さらに、金属シード層8の厚さを5〜200nmの好適な範囲とすることにより、酸化物超電導積層体2の側面側の保護が充分であって、電解めっき時に安定的なめっきが全周に可能であり、ムラのない電解めっき層である安定化層9を備えた酸化物超電導線材1を得ることができる。
図7は、本発明に係る他の実施形態の酸化物超電導線材1Bを模式的に示す概略断面図である。図7に示す酸化物超電導線材1Bにおいて、図1に示す第1実施形態の酸化物超電導線材1と同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図7に示す本実施形態の酸化物超電導線材1Bは、酸化物超電導積層体2の側面および基材3側の面(基材3の裏面)を覆うように金属シード層8Bが形成され、金属シード層8Bの外周面と金属安定化基層7の上面を覆うように電解めっきによる金属製の安定化層9が形成され、さらに、安定化層9の全周面を覆うように樹脂製の被覆層10が形成されて構成されている。なお、被覆層10は必須ではなく、酸化物超電導線材の使用用途に応じて適宜設けられるものであり、被覆層10を有さない構成とすることもできる。
本実施形態の酸化物超電導線材1Bは、基材3上に中間層5を介し形成されている酸化物超電導層6の表面側をAgの安定化基層7で覆って保護するとともに、酸化物超電導層6の両側面側及び基材3の裏面側を金属シード層8Bで覆って保護するので、Cuの電解めっきを行う場合の硫酸銅水溶液に浸漬して電解処理する安定化層9の形成時、酸化物超電導積層体2の両側面、即ち、酸化物超電導層6の両側面側が硫酸銅水溶液による浸漬を受けるおそれが無くなり、上記した第1実施形態の酸化物超電導線材1と同様に、超電導特性の劣化を防止できる。
また、酸化物超電導積層体2の全周面を電解めっきによるCuの安定化層9で完全に覆うことができるので、酸化物超電導線材1Bを湿分の雰囲気中で長期間使用しても湿分が酸化物超電導層6側に侵入するおそれを回避することができ、酸化物超電導線材1Bの特性劣化も防止できる。さらに、酸化物超電導層6の表面側のみにAgの安定化基層7を設けた構成とすることにより、Agの使用量を抑えてコストアップを避けることができる。
金属シード層8Bを形成する気相法としては、上記した第1実施形態と同様の方法が挙げられるが、本実施形態の酸化物超電導線材1Bは、安定化基層7の上面に金属シード層8Bが形成されない構成であるため、酸化物超電導積層体2の基材3側及び側面側のみが成膜されるようにして金属シード層8Bを形成する必要がある。具体的には、図5に示す成膜装置を用いて金属シード層8Bを形成する場合は、酸化物超電導積層体2の安定化基層7側に対向配置された第1のターゲット31A及び第1のスパッタビーム照射装置32Aは使用せず、酸化物超電導積層体2の基材3側に対向配置された第2のターゲット31B及び第2のスパッタビーム照射装置32Bのみを用いて成膜する。このように酸化物超電導積層体2の基材3側より成膜することにより、第2のターゲット31Bより叩き出されたスパッタ粒子(Cu粒子)は、厚さ数100μm程度と薄い酸化物超電導積層体2の側面側にまで回り込むため、酸化物超電導積層体2の基材3側及び側面側を覆うように金属シード層8Bを形成することができる。
以上の工程により、基材3上に中間層5を介し形成されている酸化物超電導層6の表面側をAgの安定化基層7で覆って保護するとともに、酸化物超電導層6の両側面側及び基材3の裏面側を金属シード層8Bで覆って保護し、さらに、金属シード層8Bの外周及び安定化基層7の上面を安定化層9で覆って保護した酸化物超電導線材1を製造することができる。
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の基材を用意し、このテープ状基材の表面を平均粒径3μmのアルミナ砥粒を用いて研磨し、表面を鏡面に仕上げた。
このテープ基材をエタノール、アセトンの有機溶剤を用いて脱脂、洗浄した。
次に、イオンビームスパッタ法を用いてテープ基材の表面にAl2O3からなる厚さ100nmの拡散防止層を形成し、更にその上にイオンビームスパッタ法を用いてY2O3からなる厚さ30nmのベッド層を形成した。イオンビームスパッタ法の実施にあたりテープ状の基材はスパッタ装置の内部においてリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜できるようにしてテープ状基材の全長にわたり、拡散防止層とベッド層を形成した。
次に、図4に示す構造のイオンビームアシストスパッタ装置を用いてIBAD法を実施し、イオンビームアシスト蒸着によりベッド層上に厚さ5〜10nmのMgOの配向層を形成した。この場合、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対し、45゜とした。IBAD法の実施にあたりテープ状の基材はスパッタ装置の内部においてリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜できるようにしてテープ状基材の全長にわたり、MgOの配向層を形成した。
次に、スパッタ法により酸化物超電導層上に厚さ10μmのAgの安定化基層を形成した。このスパッタ法においてもテープ状の基材をリールからリールへ供給する間に成膜できるようにしている。次に、酸素アニールを500℃で10時間行い、26時間炉冷後、取り出した。以上の方法により、テープ状の長尺の基材上に拡散防止層とベッド層と配向層とキャップ層と酸化物超電導層と安定化基層を備えた構造の酸化物超電導積層体を作製した。
スパッタ法によりCuの金属シード層を作製しないこと以外は、実施例1と同様にして酸化物超電導線材を作製した。比較例1では、酸化物超電導積層体のAgの安定化基層上には厚さ75μmのCuの電解めっき層からなる安定化層が形成されていたが、酸化物超電導積層体の基材側や側面側のCuの電解めっき層の厚さは10〜50μmとAgの安定化基層上のCuの電解めっき層よりも薄くなっており、且つ、厚い部分と薄い部分でバラつきがあり、酸化物超電導積層体の全周に亘って均一にCuの安定化層を形成することができなかった。
実施例1と同様にして酸化物超電導積層体を作製した。
次に、作製した酸化物超電導積層体の全周に、表2に示す条件でCuを無電解めっきして、厚さ10μmの無電解めっき層を形成した。続いて、硫酸銅水溶液への浸漬時間を16.7分としたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ65μmのCuの電解めっき層を形成した。
実施例1の酸化物超電導線材は、機械的に折り曲げても、Cuの電解めっき層に歪みが発生したり、剥離が起こることが無く、Cuの電解めっき層の密着性が良好であった。また、実施例1の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体の全周に亘って均一に75μmの電解めっき層が形成されていた。
比較例1の酸化物超電導線材は、機械的に折り曲げるとCuの電解めっき層に歪みが発生し、密着性は実施例1の酸化物超電導線材よりも劣っていた。また、比較例1の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体のAgの安定化基層上には厚さ75μmのCuの電解めっき層からなる安定化層が形成されていたが、酸化物超電導積層体の基材側や側面側のCuの電解めっき層の厚さは10〜50μmとAgの安定化基層上のCuの電解めっき層よりも薄くなっており、且つ、厚い部分と薄い部分でバラつきがあり、酸化物超電導積層体の全周に亘って均一にCuの安定化層を形成することができなかった。
比較例2の酸化物超電導線材は、Cuの電解めっき層が密着しておらず、ところどころ剥離していた。また、電解めっき層の厚さも不均一であった。
以上の結果より、酸化物超電導積層体の外周を覆うように気相法により金属シード層を形成し、この金属シード層の外周に電解めっきにより安定化層を形成することにより、安定化層の密着性が良好な酸化物超電導線材を提供することができることが明らかとなった。また、本発明によれば、安定化層を全周に亘って均一な厚みで形成することができることが明らかとなった。
Claims (6)
- 基材と、該基材上に設けられた中間層と酸化物超電導層と、該酸化物超電導層上に設けられたAgの安定化基層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に、少なくとも該酸化物超電導積層体の側面および前記基材側の面を覆うように気相法により形成された金属シード層が被覆され、該金属シード層の外周側および前記安定化基層の上面側に電解めっきによる金属製の安定化層が積層されてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
- 前記酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うように前記金属シード層が被覆され、該金属シード層の外周側に前記安定化層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材。
- 前記金属シード層が、スパッタ法により形成されたCuであり、前記金属製の安定化層が電解めっきにより形成されたCuであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導線材。
- 基材と、該基材上に設けられた中間層と酸化物超電導層と、該酸化物超電導層上に設けられたAgの安定化基層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に、少なくとも該酸化物超電導積層体の側面および前記基材側の面を覆うように気相法により形成された金属シード層が被覆され、該金属シード層の外周側および前記安定化基層の上面側に電解めっきによる金属製の安定化層が積層されてなる酸化物超電導線材を製造する方法であって、前記酸化物超電導積層体の少なくとも側面および前記基材側の面を被覆する所定の厚さの金属シード層を気相法により形成した後、Cuの電解めっき液に浸漬して電解することによりCuの安定化層を、少なくとも前記金属シード層の外周側および前記安定化基層の上面側に形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記酸化物超電導積層体の全周を被覆する所定の厚さの前記金属シード層を気相法により形成した後、Cuの電解めっき液に浸漬して電解することによりCuの前記安定化層を前記金属シード層の全周に形成することを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- Cuをスパッタして前記金属シード層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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