JP5597511B2 - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基材上に中間層と酸化物超電導層と安定化層を備えた積層構造の酸化物超電導線材とその製造方法に関する。
近年になって発見されたRE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示し、電流損失が低いため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、強度が高く、耐熱性もあり、線材に加工することが容易な金属を長尺のテープ状に加工し、この金属基材テープ上に酸化物超電導層を形成する方法が研究されている。
酸化物超電導体は電気的異方性を有しているので、基材上に酸化物超電導層を形成する場合、結晶の配向制御を行う必要があり、その方法の一例として、基材上に中間層を介して酸化物超電導層を積層する技術が知られている。この中間層を利用する技術の一例として、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法:Ion Beam Assisted Deposition)が知られており、この方法は、スパッタリング法によりターゲットから叩き出した構成粒子を基材上に堆積させる際、イオン銃から発生されたアルゴンイオン等を同時に斜め方向(例えば、45度方向)から照射しながら中間層を堆積させる方法として知られている。このIBAD法によれば、高い2軸配向性を示す中間層を基材上に成膜できるので、この中間層上に酸化物超電導薄膜を形成することにより、超電導特性の優れた酸化物超電導導体を得ることができる。
前記酸化物超電導導体にあっては、酸化物超電導層上に、薄い銀の安定化層を形成し、その上に銅などの良導電性金属材料からなる厚い安定化層を設けた2層構造の安定化層を積層する構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
前記銀の安定化層は、酸化物超電導層を酸素熱処理する際に酸素量の変動を調節する目的のためにも設けられている。また、前記銅の安定化層は、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該酸化物超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能させるための目的で設けられている。
図6は、従来の酸化物超電導導体の一構成例を示す模式図である。図6に示す酸化物超電導導体200は、ハステロイテープなどの長尺状の基材201上にIBAD法などにより形成された中間層202と、REBaCu7−X(REはYを含む希土類元素)からなる酸化物超電導体からなる酸化物超電導層203と、良導電性の安定化層204とが順次積層されて構成されている。このような構成の酸化物超電導導体200では、水分によりダメージを受けやすい超電導層203の側面が外部に露呈しているため、製造工程中などに水分が浸入することにより超電導特性の低下を引き起こす虞がある。そのため、超電導層203に水分が浸入するのを防ぐためには、超電導層203の上面と側面の両方をカバーすることが望ましい。酸化物超電導導体において、超電導層の上面及び側面をカバーした構造として、基板、バッファ層、マルチフィラメント超電導体層、安定化層からなる構造であって、基板上に複数設けたマルチフィラメント超電導体層を金属の安定化層で覆ってカプセル化した構造が知られている(特許文献2参照)。
特開2007−80780号公報 特表2009−544144号公報
安定化層として用いられる銅は、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該酸化物超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能させるために、通常、数十μm〜数百μmの厚みが必要とされる。銅の安定化層の厚さは、超電導線材の使用温度や、超電導線材に流れる電流、クエンチ(常電導転移)が発生したときの検知システムなどにより必要とされる厚さが異なる。薄い銅の安定化層の形成方法としてはメッキ法などが知られているが、メッキは電界を使った結晶成長であるためプロセスに時間がかかり、厚い銅の安定化層を形成する場合には生産性に問題がある。また、長尺の基材上に酸化物超電導層が形成された長尺線材に厚い安定化層を形成するには、大きなめっき浴が必要となり、設備の規模が非常に大きくなってしまう。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材、及び該酸化物超電導線材を良好な生産性で製造できる酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成とした。
本発明の酸化物超電導線材は、基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層が被覆され、この第1安定化層の外方に第2安定化層が被覆され、前記第2安定化層が、めっき安定化層と、金属テープの貼り合わせにより前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成されてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材において、前記第1安定化層上に前記貼り合わせ安定化層が積層され、該第1安定化層と該貼り合わせ安定化層で被覆された前記酸化物超電導積層体の外周全体を覆うように前記めっき安定化層が被覆されてなることができる。
本発明の酸化物超電導線材において、前記第1安定化層により被覆された前記酸化物超電導積層体の外周全体を覆うように前記めっき安定化層が被覆され、該第1安定化層と該めっき安定化層により被覆された酸化物超電導積層体の上面側に、前記貼り合わせ安定化層が積層されてなることもできる。
本発明の酸化物超電導線材において、前記めっき安定化層の厚さが20μm以上であることもできる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えてなる酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層を形成する第1安定化層形成工程と、該第1安定化層の外方に第2安定化層を形成する第2安定化層形成工程と、を備えてなり、
前記第2安定化層が、めっき安定化層と、前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成されてなり、前記第2安定化層形成工程が、めっきにより前記めっき安定化層を形成する工程と、金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせ安定化層を形成する工程と、を備えてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記第2安定化層形成工程は、前記貼り合わせ安定化層を形成する工程の後に、前記めっき安定化層を形成する工程を行うことができる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記第2安定化層形成工程は、前記めっき安定化層を形成する工程の後に、前記貼り合わせ安定化層を形成する工程を行うこともできる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記めっき安定化層の厚さを20μm以上とすることもできる。
本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体の外周面を覆うように第1安定化層及び第2安定化層が形成されている構成であるため、酸化物超電導層を含む酸化物超電導積層体の上面、下面及び側面全てが外部から遮蔽された構成が実現できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
また、本発明の酸化物超電導線材は、第2安定化層が貼り合わせ安定化層とめっき安定化層により構成されているため、酸化物超電導積層体の下面側および側面側に形成される第2安定化層の厚さは、酸化物超電導積層体の上面側に形成される第2安定化層の厚さよりも薄くすることができる。従って、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層の上方に形成する安定化層の厚さを所望の厚さに保ちつつ、該線材のサイズをコンパクトにすることができる。
さらに、本発明の酸化物超電導線材において、第1安定化層がスパッタ法などの気相法により形成される場合に、万が一ピンホールなどの欠陥部が形成されていても、めっき安定化層の厚さを20μm以上にするならば、第1安定化層のピンホールなどの欠陥部を埋めることができ、酸化物超電導層に外部から水分が浸入することをより効果的に防ぐことができる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、金属テープの貼り合せによる貼り合わせ安定化層の形成と、めっきによるめっき安定化層の形成を組み合わせて第2安定化層を形成する構成とした。これにより、第2安定化層を電気めっきのみで形成する場合と比較して、短時間でより厚い第2安定化層を形成することができる。従って、本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、超電導線の安定性を高めた酸化物超電導線材を、良好な生産性で製造することができる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導積層体の全周を第1安定化層で覆って保護するので、めっき安定化層の形成工程においてめっき浴に浸漬して電解処理する際に、酸化物超電導積層体の上面側及び両側面側がいずれもめっき浴による浸漬を受けるおそれが無くなり、超電導特性の劣化を防止できる。また、酸化物超電導積層体の全周に第1安定化層を形成したことにより、めっき安定化層の形成時に、酸化物等電導積層体の下面側(基材側)および側面側にめっきが付き難くなることを防ぐことができる。
さらに、本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、第1安定化層の上面に貼り合わせ安定化層を形成した後に、電気めっきによるめっき安定化層を形成することにより、第1安定化層に万が一ピンホールなどの欠陥部が形成されていた場合にも、このピンホールなどの欠陥部からめっき浴が侵入することがなく、めっき浴の侵入により酸化物超電導層が劣化することを抑止できる。
本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を示す概略断面図。 図1に示す酸化物超電導線材に組み込まれている酸化物超電導積層体の層構造を詳細に示す構成図。 イオンビームスパッタ法により第1安定化層を成膜するための成膜装置構成と成膜状態の一例を示す説明図。 図4(a)は本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態の概略断面図であり、図4(b)は電気めっきのみで第2安定化層を形成した場合の酸化物超電導線材の一例構造の概略断面図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態を示す概略断面図 従来の酸化物超電導線材の一例構造を示す模式図である。
以下、本発明に係る酸化物超電導線材の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材1を模式的に示す概略断面図であり、図2は該酸化物超電導線材1に組み込まれている酸化物超電導積層体2の積層構造を詳細に示す構成図である。
図1に示す酸化物超電導線材1は、テープ状の基材3の上に、中間層5と酸化物超電導層6を順次積層してなる酸化物超電導積層体2を中心部に備え、酸化物超電導積層体2の全周面を覆うようにAgの第1安定化層7が形成され、この第1安定化層7の外周を覆うように第2安定化層10が形成されてなる。第2安定化層10は、貼り合わせ安定化層8とめっき安定化層9とから構成され、第1安定化層7上に貼り合わせ安定化層8が積層形成され、第1安定化層7により被覆された酸化物超電導積層体2および貼り合わせ安定化層8の外周全体を覆うようにめっき安定化層9が形成されている。
酸化物超電導積層体2は、より詳細には図2に示す如く、基材3の上面に拡散防止層11とベッド層12と配向層15とキャップ層16とからなる中間層5が積層され、その上に酸化物超電導層6が積層されて構成されているが、図1では図示の簡略化のために中間層5を1層のように描いている。なお、拡散防止層11とベッド層12は必須ではなく、場合によっては略しても良い。
基材3は、通常の超電導線材の基材として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材3の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
拡散防止層11は、基材3の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。拡散防止層11の厚さが10nm未満となると、基材3の構成元素の拡散を十分に防止できなくなる虞がある。一方、拡散防止層11の厚さが400nmを超えると、拡散防止層11の内部応力が増大し、これにより、他の層を含めて全体が基材3から剥離しやすくなる虞がある。また、拡散防止層11の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
ベッド層12は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層12は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、組成式(α2x(β(1−x)で示されるものが例示できる。より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができる。ベッド層12の厚さは例えば10〜100nmである。また、ベッド層12の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
配向層15は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層されるキャップ層16の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。配向層15の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示することができる。
この配向層15をIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する酸化物超電導層6の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層6を得るようにすることができる。
例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる配向層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
キャップ層16は、面内結晶軸が配向した配向層15表面に成膜されることによってエピタキシャル成長し、その後、横方向に粒成長して、結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料であれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層16の材質がCeOである場合、キャップ層16は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
例えばCeOによって構成されるキャップ層16は、上述のように自己配向していることにより、配向層15よりも更に高い面内配向度、例えばΔΦ=4〜6゜程度を得ることができる。
キャップ層16は、例えば、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
CeO層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導層6は公知のもので良く、REBaCu7−X(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu7−X)又はGd123(GdBaCu7−X)などを例示することができる。
酸化物超電導層6は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、塗布熱分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、PLD(パルスレーザー蒸着)法、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)又はCVD法を用いることができる。
ここで前述のように、良好な配向性を有するキャップ層16上に酸化物超電導層6を形成すると、このキャップ層16上に積層される酸化物超電導層6もキャップ層16の配向性に整合するように結晶化する。よってキャップ層16上に形成された酸化物超電導層6は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層6を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材3の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材3の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層6は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材3の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
図2に示す構造の酸化物超電導積層体2において、酸化物超電導層6の上面及び両側面側は特に保護されずに露出されており、外乱などによりクエンチ(常電導転移)した場合に酸化物超電導層6の電流を転流させて電流を安定化させるバイパスが必要であること、酸化物超電導層6が湿気などにより特性が劣化するおそれがあること、酸化物超電導層6の露出部分に後工程の処理でダメージを与えると、超電導特性が劣化するおそれがあること、などを考慮し、何らかのカバーで保護する必要がある。
本実施形態においては、酸化物超電導層6を保護するために、第1安定化層7と第2安定化層10を形成して酸化物超電導積層体2の全周をカバーする構造を採用する。
酸化物超電導層積層体2の周面全体を覆うように形成されている第1安定化層7は、好ましくはスパッタ法などの気相法により形成されたAg層から構成されている。
ここで、第1安定化層7をAgから構成する理由として、酸化物超電導層6に酸素をドープするアニール工程においてドープした酸素を酸化物超電導層6から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。Agの第1安定化層7を成膜するには、スパッタ法などの気相法による成膜法を採用し、その厚さを1〜30μm程度に形成できる。なお、第1安定化層7の形成方法の詳細については、後述する。
第2安定化層10の一部である貼り合わせ安定化層8は、金属テープより構成されており、良導電性の金属テープよりなることが好ましい。貼り合わせ安定化層8である金属テープの材質として、具体的には、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金が挙げられ、高い導電性を有するためCuが特に好ましい。貼り合わせ安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜変更可能であるが、10〜300μm程度とすることが好ましい。貼り合わせ安定化層8の厚さを下限値以上とすることにより酸化物超電導層6を安定化する一層高い効果が得られ、上限値以下とすることで酸化物超電導線材1を薄型化できる
第2安定化層10の一部であるめっき安定化層9は、電気めっきにより形成されている。めっき安定化層9を構成する材質としては、良導電性の金属が好ましく、Cu、Alなどが挙げられ、高い導電性を有するためCuが特に好ましい。めっき安定化層9の厚さは特に限定されず、適宜変更可能であるが、10〜100μm程度とすることができ、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、20μm以上50μm以下とすることがより好ましい。Agの第1安定化層7がスパッタ法などの気相法により形成される場合、第1安定化層7中にピンホールが形成される場合があるが、めっき安定化層9の厚さを20μm以上とすることにより、このピンホールを埋めることができ、酸化物超電導層6に外部から水分が浸入することを効果的に防ぐことができる。また、めっき安定化層9の厚さが50μmを超えると、めっき安定化層9の形成工程に長時間を要してしまう虞がある。また、めっき安定化層9の厚さが厚くなりすぎると、めっき安定化層9自体が硬くなるので、得られる酸化物超電導線材が硬くなり、該酸化物超電導線材を巻回してコイル状にするなどの加工をする場合に、ハンドリング性が悪くなる可能性がある。そのため、めっき安定化層9の厚さを50μm以下とすることにより、ハンドリング性が良好になる。例えば、めっきのみで形成した100μm厚の安定化層と、50μm厚のめっき安定化層9と100μm厚の貼り合わせ安定化層8を複合して形成した安定化層とを比較すると、後者の方が曲げ剛性が小さくなることを本発明者は確認している。そのため、酸化物超電導線材をコイル状に巻回して超電導機器に適用する場合、超電導機器が小型化され、酸化物超電導線材の巻き径が小さくなるほど、めっき安定化層9と貼り合わせ安定化層8の複合で安定化層を形成する本発明の酸化物超電導線材1の方が、めっきのみで同程度の厚みの安定化層を形成した酸化物超電導線材と比較して、取り扱い性(ハンドリング性)が良好になる。
また、このようにめっき安定化層9の厚さを抑えてめっき安定化層9が硬くならない厚さにしておくと、安定化層として電流のバイパスとするための厚さが不足する虞があるが、この点については、貼り合わせ安定化層8として10〜300μmの範囲から選択して充分な厚さを確保するならば、めっき安定化層9と貼り合わせ安定化層8を合わせた分の合計厚さとして充分に厚い第2安定化層10とすることができる。よって、超電導特性の安定化の面において不足はない。なお、貼り合わせ安定化層8を片面半田層付きの銅テープとした場合、上述の厚さの銅テープは可撓性に富む軟質のものを入手可能であるので、銅テープの貼り合わせ安定化層8が酸化物超電導線材を硬くしてしまうことがない。
本実施形態の酸化物超電導線材1は、酸化物超電導積層体2の外周面を覆うように第1安定化層7及び第2安定化層10のめっき安定化層9が形成されている構成であるため、酸化物超電導層6を含む酸化物超電導積層体2の上面、下面及び側面全てが外部から遮蔽された構成が実現できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層6への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
図4(a)に本実施形態の酸化物超電導線材1の断面図を示し、図4(b)に電気めっきのみで第2安定化層を形成した場合の酸化物超電導線材の一例構造の断面図を示す。図4(b)に示す酸化物超電導線材100は、酸化物超電導積層体102の外周を覆うように、第1安定化層107と、電気めっきにより形成された第2安定化層110がこの順に形成されている。第2安定化層を電気めっきのみで形成した酸化物超電導線材100においては、第2安定化層の厚さは酸化物超電導積層体102の全周に亘ってほぼ同一となる。これに対し、本実施形態の酸化物超電導線材1は、第2安定化層10が貼り合わせ安定化層8とめっき安定化層9により構成されているため、酸化物超電導積層体2の下面側および側面側に形成される第2安定化層10の厚さは、酸化物超電導積層体2の上面側に形成される第2安定化層10の厚さよりも薄くすることができる。そのため、図4(a)に示す本実施形態の酸化物超電導線材1および図4(b)に示す酸化物超電導線材100において、酸化物超電導層6の上方に形成される第2安定化層の厚さが同一である場合、本実施形態の酸化物超電導線材1の幅および厚さは、酸化物超電導線材100の幅および厚さよりも小さくなる。従って、本発明によれば、酸化物超電導線材1のサイズをコンパクトにすることができる。
次に、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法について説明する。
本実施形態の酸化物超電導線材1の製造方法は、酸化物超電導積層体2の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層7を形成する第1安定化層形成工程と、第1安定化層7の外方に第2安定化層10を形成する第2安定化層形成工程と、を備えてなる。第2安定化層形成工程においては、金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせ安定化層8を形成する工程の後に、めっきによりめっき安定化層9を形成する工程を行うことにより、第2安定化層10を形成する。
まず、上述した構成の酸化物超電導積層体2を準備し、この酸化物超電導積層体2の全周を覆うようにAgの第1安定化層7を気相法により形成する(第1安定化層形成工程)。気相法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)が挙げられるが、比較的簡便に成膜が可能であり、コストも安価であるため、スパッタ法が特に好ましい。スパッタ法としては、イオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法のいずれの方法でもよい。
スパッタ法により第1安定化層7を形成する方法の一例として、イオンビームスパッタ法によりAgをスパッタして第1安定化層7を成膜する方法について説明する。
図3は、イオンビームスパッタ法により酸化物超電導積層体2の全周を覆うようにAgを成膜する場合に使用される成膜装置の一例を示す概略構成図である。
図3に示す成膜装置50は、基材3と中間層5と酸化物超電導層6がこの順に積層されて構成されたテープ状の酸化物超電導積層体2を、長手方向に走行させて連続成膜することができる装置である。
成膜装置50は、テープ状の酸化物超電導積層体2を巻回するリール等の巻回部材を複数個同軸的に配列してなり、離間して対向配置された一対の第1ロール54、第2ロール55より構成される酸化物超電導積層体2が走行する走行系51と、走行系51に酸化物超電導積層体2を送り出す送出リール52と、走行系51から排出される酸化物超電導積層体2を巻き取る巻取リール53と、酸化物超電導積層体2に対して第1安定化層7を形成する第1の成膜系56及び第2の成膜系57とを備えている。成膜装置50は真空容器S1に収容されており、真空容器S1には真空排気装置S2が接続され、この真空排気装置S2により真空容器S1内を所定の圧力に減圧するようになっている。
第1の成膜系56と第2の成膜系57は、走行系51を走行する酸化物薄膜積層体2を挟んで対向配置されている。第1の成膜系56は、第1ロール54側から第2ロール55側に向かう直線経路(図3中、矢印Aで示す順方向の往路)を走行する酸化物超電導積層体2の酸化物超電導層6と対向するように配置された第1のターゲット56aと、第1のターゲット56aにイオンを照射する第1のスパッタビーム照射装置56bとを備え、第2の成膜系57は、第2ロール55側から第1ロール54側に向かう直線経路(図3中、矢印Bで示す逆方向の復路)を走行する酸化物超電導積層体2の酸化物超電導層6と対向するように配置された第2のターゲット57aと、第2のターゲット57aにイオンを照射する第2のスパッタビーム照射装置57bとを備えている。第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aは、Agより構成されている。
この形態では、第1ロール54は、送出リール52と巻取リール53との間に設けられ、第2ロール55は、第1ロール54と離間して対向配置されている。この形態において、第1ロール54と第2ロール55はそれらの回転中心軸を鉛直向きとして配置され、第1ロール54の周面と第2ロール55の周面にはテープ状の酸化物超電導積層体2が、これらの間を複数ターン相互に離間しながら周回するように巻き付けられ、この周回された酸化物超電導積層体2は、酸化物超電導層6の表面を外周側にして複数周(図3に示す例では7周)、各周がレーストラック状になるように複数列が互いに離間して並設した状態で掛け渡されている。
第1ロール54、第2ロール55、送出リール52及び巻取リール53を駆動装置(図示略)により互いに同期して駆動させることにより、送出リール52から送り出された酸化物超電導積層体2が第1ロール54の周面上に供給され、第1ロール54及び第2ロール55にガイドされて各周においてレーストラック状に複数周走行した後、巻取リール53に巻き取られるようになっている。酸化物超電導積層体2が走行系51をレーストラック状に走行している間、酸化物超電導積層体2には、第1の成膜系56及び第2の成膜系57によって、夫々、イオンの照射により第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aから叩き出すか蒸発された各ターゲット56a、57aの構成粒子であるAgが成膜される。
図3に示す構成の成膜装置50を用いてテープ状の酸化物超電導積層体2の全周を覆うように第1安定化層7を成膜するには、第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aを所定の位置に設置し、次いで、送出リール52に巻回されている酸化物超電導積層体2を引き出しながら、第1ロール54及び第2ロール55に順次、相互に離間するように複数ターン巻回し、その後、酸化物超電導積層体2の先端側を巻取リール53に巻き取り可能に取り付ける。
これによって、走行系51である一対の第1ロール54及び第2ロール55に巻回された酸化物超電導積層体2が、第1ロール及び第2ロールを周回し、第1のターゲット57aに対向する位置および第2のターゲット56aに対向する位置に複数列並んで移動するようになる。その後、真空排気装置を駆動し、真空容器内を減圧する。
次に、駆動手段(図示略)を作動させて、第1ロール54、第2ロール55、送出リール52及び巻取リール53を互いに同期して駆動させることにより、走行系51に酸化物超電導積層体2を走行させるとともに、第1のスパッタビーム照射装置56b及び第2のスパッタビーム照射装置57bを作動させる。
これにより、第1のスパッタビーム照射装置56bから第1のターゲット56aにイオンを照射し、第1のターゲット56aの構成粒子であるAgを叩き出すか蒸発させて、第1の成膜系56を図3中矢印A方向に走行中の酸化物超電導積層体2の酸化物超電導層6側の表面上に堆積するとともに、第2のスパッタビーム照射装置57bから第2のターゲット57aにイオンを照射し、第2のターゲット57aの構成粒子であるAgを叩き出すか蒸発させて、第2の成膜系57を図3中矢印B方向に走行中の酸化物超電導積層体2の酸化物超電導層6側の表面上に堆積する。
この際、走行系51を走行する酸化物超電導積層体2は、図3に示す如く互いに離間して複数レーンが並設した状態で第1ロール54、第2ロール55に複数周掛け渡されている。そのため、イオンの照射により第1のターゲット56aから叩き出されるか蒸発されたAg粒子は、第1の成膜系56を走行中の複数列が互いに離間して並設された酸化物超電導積層体2間の隙間を通り抜けて、第1の成膜系56と走行系51を介して対向する第2の成膜系57を走行中の酸化物超電導積層体2の裏面まで到達し、第2の成膜系57を走行中の酸化物超電導積層体2の裏面上(基材3側)に堆積する。同様に、イオンの照射により第2のターゲット57aから叩き出されるか蒸発されたAg粒子は、第2の成膜系57を走行中の複数列が互いに離間して並設された酸化物超電導積層体2間の隙間を通り抜けて、第2の成膜系57と走行系51を介して対向する第1の成膜系56を走行中の酸化物超電導積層体2の裏面まで到達し、第2の成膜系56を走行中の酸化物超電導積層体2の裏面上(基材3側)に堆積する。また、酸化物超電導積層体2の厚さは、通常数100μm程度と薄いため、第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aより叩き出されたAg粒子は、酸化物超電導積層体2の側面側にもまわり込むため、酸化物超電導積層体2の全周に亘ってAgがスパッタされる。
酸化物超電導積層体2は、走行系51を走行中にその全周に亘ってAgの第1安定化層7が形成された後、巻取リール53に巻き取られる。
以上の工程により、酸化物超電導積層体2の全周を覆うように第1安定化層7を形成することができる。
図3に示す構成の成膜装置50を使用してAgの第1安定化層7を形成するならば、イオンの照射により第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aからのAg粒子を、良好な収率で酸化物超電導積層体2の表面、裏面、及び両側面に堆積させることができ、生産工程の短縮化、及びターゲットの有効利用が可能となる。
上述したように、酸化物超電導積層体2の製造工程ではテープ状の長尺の基材3の上に、拡散防止層11、ベッド層12、配向層15、キャップ層16の各層を成膜する過程においては、真空雰囲気において雰囲気を制御して行う成膜法を駆使し、必要に応じて数100℃の高温度に繰り返し加熱しながら各層を成膜するる。そのため、基材3の側面側と裏面側は、繰り返し成膜雰囲気に曝されながら、成膜する層によっては数100℃の高温に加熱される。
このため、基材3の側面側と裏面側には、拡散防止層11、ベッド層12、配向層15、キャップ層16を成膜する工程を経る内に、不要な堆積物や高温生成物などが僅かに付着してしまう。また、基材3を構成する材料がハステロイである場合、基材3上に各層を成膜する際の加熱により、基材3の表面が酸化されて酸化皮膜が形成されてしまう。そのため、基材3の側面側と裏面側は、電気めっきによるめっきの付きが特に悪くなっているが、本実施形態のように酸化物超電導積層体2の全周(周面全体)を覆うようにAgの第1安定化層7を形成することにより、後述する第2安定化層形成工程において、めっき安定化層9を形成する際に、基材3の裏面側および酸化物超電導積層体2の側面側のめっきの付きが良くなる。
ここで形成する第1安定化層7の厚さは1〜30μmの範囲であることが好ましい。第1安定化層7の厚さは、酸化物超電導積層体2の全周に亘って均一である必要は無く、第1安定化層7が酸化物超電導積層体2の全周に亘って前記範囲の厚さで形成されていれば、後述するめっき安定化層9の形成工程において、酸化物超電導積層体2の基材3側及び側面側のめっきの付きを良くすることができる。
次に、酸化物超電導積層体の全周を覆うように第1安定化層7を形成した線材の外周を覆うように第2安定化層10を形成する(第2安定化層形成工程)。
第2安定化層形成工程では、まず、酸化物超電導線材2が第1安定化層7により被覆された線材の上面である酸化物超電導層6の上方側の面に、金属テープを半田により貼り合わせることにより、貼り合わせ安定化層8を形成する。金属テープの材質及び厚さは前述の通りである。また、金属テープの貼り合わせ方法については特に制限されず、加熱により半田を溶融させ、必要に応じて加圧すればよく、例えば、一対の加熱・加圧ロール間を通過させる方法などが挙げられる。
次いで、酸化物超電導積層体2が第1安定化層7により被覆された線材の上面に貼り合わせ安定化層8を積層した積層体をめっき浴に浸漬させて電気めっきを行うことにより、該積層体の全周を覆ってめっき安定化層9を形成する。めっき安定化層9はCuまたはAlより形成されていることが好ましく、Cuより形成されていることがより好ましい。めっき安定化層9をCuより形成する場合、酸化物超電導積層体2を第1安定化層7及び貼り合わせめっき安定化層8により被覆した積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬させて電気めっきを行うことにより、該積層体の全周を覆ってCuのめっき安定化層9を形成することができる。
以上の工程により、酸化物超電導線材1を製造することができる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、金属テープの貼り合せによる貼り合わせ安定化層8の形成と、めっきによるめっき安定化層9の形成を組み合わせて第2安定化層10を形成する構成とした。これにより、第2安定化層をめっきのみで形成する場合と比較して、短時間でより厚い第2安定化層を形成することができる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、超電導線の安定性を高めた酸化物超電導線材を、良好な生産性で製造することができる。
また、貼り合わせ安定化層8とめっき安定化層9により第2安定化層10を形成するため、図4に示す如く、製造される酸化物超電導線材1をコンパクト化することができ、第2安定化層10を形成する材料の使用量を少なく抑えることができる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法では、酸化物超電導積層体2の全周をAgの第1安定化層7で覆って保護するので、めっき安定化層9の形成工程においてめっき浴に浸漬して電解処理する際に、酸化物超電導積層体2の両側面、即ち、中間層15の両側面側と酸化物超電導層6の両側面側がいずれもめっき浴による浸漬を受けるおそれが無くなり、超電導特性の劣化を防止できる。また、酸化物超電導積層体2の全周にAgの第1安定化層7を形成したことにより、めっき安定化層9の形成時に、酸化物超電導積層体2の下面側(基材3側)および側面側にめっきが付き難くなることを防ぐことができる。
また、スパッタ法などの気相法により第1安定化層7を形成する場合、第1安定化層7中にピンホールなどの欠陥部が形成される場合があるが、本実施形態のように、第1安定化層7の上面に貼り合わせ安定化層8を形成した後に、電気めっきによるめっき安定化層9を形成することにより、第1安定化層7に形成されたピンホールなどの欠陥部からめっき浴が侵入することがなく、酸化物超電導層6が劣化することを抑止することができる。
さらに、図3に示すような成膜装置のように、一対のリール間に酸化物超電導積層体2を搬送しながらAgの第1安定化層7を成膜する場合、リール間を搬送される間に、成膜された第1安定化層7の側部の一部がわずかに剥がれてしまう場合がある。また、酸化物超電導線材の使用用途によっては、酸化物超電導積層体2の外周を第1安定化層7で被覆した線材を、機械的に切断して所望の幅および長さにする場合がある。この場合、切断面の近辺の第1安定化層7の一部がわずかに剥がれてしまう場合がある。このように、第1安定化層7の一部が剥離した場合にも、本実施形態のように、第1安定化層7の上面に半田を介して貼り合わせ安定化層8を形成した後に、電気めっきによるめっき安定化層9を形成することにより、貼り合わせ安定化層8の片面側の半田により第1安定化層7の剥離部を塞いで酸化物超電導層6が外部に露呈することを防ぐことができるので、第1安定化層7に形成された剥離部からめっき浴が侵入することがなく、酸化物超電導層6が劣化することを抑止することができる。また、第1安定化層7が剥がれた部分にめっきが付かなくなることを防ぐことができる。
また、上述のように、酸化物超電導積層体2の外周を第1安定化層7で被覆した線材を、機械的に切断して所望の幅および長さにする場合、該線材の切断面において、酸化物超電導層6が露出してしまう。その場合、本実施形態の製造方法において、第1安定化層7の上面に金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせめっき層8を形成する際に、加熱および加圧して金属テープを貼り合わせることにより、加熱により溶けた半田が、加圧により酸化物超電導積層体2の側面側まで流動して露出していた酸化物超電導層6を覆うことができるので、酸化物超電導層6が水分の浸入により劣化することを防ぐことができる。
(第2実施形態)
図5は、本発明に係る第2実施形態の酸化物超電導線材1Bを模式的に示す概略断面図である。図5に示す酸化物超電導線材1Bにおいて、図1に示す第1実施形態の酸化物超電導線材1と同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、説明を省略する。
図5に示す酸化物超電導線材1Bは、テープ状の基材3の上に、中間層5と酸化物超電導層6を順次積層してなる酸化物超電導積層体2を中心部に備え、酸化物超電導積層体2の全周面を覆うようにAgの第1安定化層7が形成され、この第1安定化層7の外周を覆うように第2安定化層10Bが形成されてなる。第2安定化層10Bは、貼り合わせ安定化層8Bとめっき安定化層9Bとから構成され、第1安定化層7の外周を覆うようにめっき安定化層9Bが形成され、めっき安定化層9Bの上に貼り合わせ安定化層8Bが積層形成されている。
図5に示す酸化物超電導線材1Bは、上記した第1実施形態の酸化物超電導線材1とは、貼り合わせ安定化層8Bがめっき安定化層の内側では無く、めっき安定化層9Bの外側(上面)に設けられている点で異なっている。
本実施形態の酸化物超電導線材1Bは、酸化物超電導積層体2の外周面を覆うように第1安定化層及び第2安定化層10のめっき安定化層9Bが形成されている構成であるため、酸化物超電導層6を含む酸化物超電導積層体2の上面、下面及び側面全てが外部から遮蔽された構成が実現できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層6への水分の浸入を抑え、上記第1実施形態の酸化物超電導線材1と同様に、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材1Bは、第2安定化層10Bが貼り合わせ安定化層8Bとめっき安定化層9Bにより構成されているため、酸化物超電導積層体2の下面側および側面側に形成される第2安定化層10Bの厚さは、酸化物超電導積層体2の上面側に形成される第2安定化層10Bの厚さよりも薄くすることができる。そのため、上記第1実施形態の酸化物超電導線材1と同様に、第2安定化層を電気めっきのみで形成する場合に比べて、酸化物超電導線材1Bのサイズをコンパクトにすることができる。
本実施形態の酸化物超電導線材1Bの製造方法は、酸化物超電導積層体2の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層7を形成する第1安定化層形成工程と、第1安定化層7の外方に第2安定化層10Bを形成する第2安定化層形成工程と、を備えてなる。第2安定化層形成工程においては、めっきによりめっき安定化層9Bを形成する工程の後に、金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせ安定化層8Bを形成する工程を行うことにより、第2安定化層10Bを形成する。なお、本実施形態の酸化物超電導線材1Bの製造方法において、貼り合わせ安定化層8B及びめっき安定化層9Bの材質、厚さ、及び形成方法は、それぞれ、上記第1実施形態の貼り合わせ安定化層8及びめっき安定化層9と同様である。
本実施形態の酸化物超電導線材1Bを製造するには、テープ状の基材3上に中間層5及び酸化物超電導層6が順次積層された酸化物超電導積層体2を準備し、この酸化物超電導積層体2の外周を覆うように、Agの第1安定化層7を上記第1実施形態と同様の手法により形成する。
次に、酸化物超電導積層体2の外周を第1安定化層7で被覆した線材を、硫酸銅水溶液などのめっきに浸漬させて電気めっきを行うことにより、第1金属安定化層7の外周を覆うようにめっき安定化層9Bを形成する。次いで、酸化物超電導層6の上方のめっき安定化層9B上に、金属テープを半田で貼り合わせることにより、貼り合わせ安定化層8Bを形成する。
以上の工程により、酸化物超電導積層体2の上面、下面および両側面を第1安定化層7および第2安定化層10で覆って保護した酸化物超電導線材1Bを製造することができる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、金属テープの貼り合せによる貼り合わせ安定化層8Bの形成と、めっきによるめっき安定化層9Bの形成を組み合わせて第2安定化層10Bを形成する構成とした。これにより、第2安定化層をめっきのみで形成する場合と比較して、短時間でより厚い第2安定化層を形成することができる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、超電導線の安定性を高めた酸化物超電導線材を、良好な生産性で製造することができる。
また、貼り合わせ安定化層8Bとめっき安定化層9Bにより第2安定化層10Bを形成するため、上記第1実施形態と同様に、製造される酸化物超電導線材1Bをコンパクト化することができ、第2安定化層10Bを形成する材料の使用量を少なく抑えることができる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法では、上記第1実施形態と同様に、酸化物超電導積層体2の全周をAgの第1安定化層7で覆って保護するので、めっき安定化層9Bの形成工程においてめっき浴に浸漬して電解処理する際に、酸化物超電導積層体2の両側面、即ち、中間層15の両側面側と酸化物超電導層6の両側面側がいずれもめっき浴による浸漬を受けるおそれが無くなり、超電導特性の劣化を防止できる。また、酸化物超電導積層体2の全周にAgの第1安定化層7を形成したことにより、電気めっきによるめっき安定化層9Bの形成時に、酸化物等電導積層体2の下面側(基材3側)および側面側にめっきが付き難くなることを防ぐことができる。
以上、本発明の酸化物超電導線材およびその製造方法について説明したが、上記実施形態において、酸化物超電導線材の各部、酸化物超電導線材の製造方法に使用する装置を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
「酸化物超電導積層体の作製」
幅10mm、厚さ0.1mmのハステロイC276(米国ヘインズ社製商品名)製の金属基材の上に、IBAD法により1.2μm厚のGdZr(GZO)なる組成の配向層層を形成し、さらにこの配向層の上にPLD法により1.0μm厚のCeOなる組成のキャップ層を成膜した。次に、このキャップ層の上にPLD法により1.0μm厚のGdBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層を形成して酸化物超電導積層体を作製した。
「Ag被覆酸化物超電導積層体の作製」
図3に示す構造のイオンビームスパッタ装置を用いて、スパッタ法により上記で作製した酸化物超電導積層体の全周にAgからなる厚さ8μmの第1安定化層を形成した(以下、得られた被覆体を「Ag被覆酸化物超電導積層体」と称する。)。イオンビームスパッタ法の実施にあたりテープ状の酸化物超電導積層体はスパッタ装置の内部においてリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜できるようにしてテープ状の酸化物超電導積層体の全周、全長にわたり、Agの第1安定化層を形成した。なお、Agのスパッタは、無酸素雰囲気中、ビーム電流2.8A、ビーム電圧700V、アクセレレーター電圧200Vで行った。
「実施例1」
上記で作製したAg被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の上面に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、貼り合わせ安定化層を積層形成した。次に、Ag被覆酸化物超電導積層体に貼り合わせ安定化層が積層された線材を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該線材を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該線材の外周に形成した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、線材をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして貼り合わせ安定化層を備えたテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuからなるめっき安定化層を形成した。
なお、Cuの電気めっきは、被めっき体(線材)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃、浸漬時間18分で行った。
以上の工程により、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。
「実施例2」
上記と同様の手法で作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成した。次に、Ag被覆酸化物超電導積層体の外周にめっき安定化層が形成された線材の酸化物超電導層側の上面に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。なお、電気めっきは実施例1と同様の条件で行った。
「比較例1」
上記と同様の手法で作製したAg被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の上面に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。
「比較例2」
上記と同様の手法で作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成することにより、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。なお、電気めっきは実施例1と同様の条件で行った。
「比較例3」
上記と同様の手法で作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、そのまま、酸化物超電導線材とした。臨界電流値は400Aであった。
実施例1、2および比較例1〜3の各酸化物超電導線材を、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持し、20時間経過後、及び120時間経過後の各酸化物超電導線材の臨界電流値を測定した。
各酸化物超電導線材について、前記雰囲気保持前の臨界電流値Iに対して前記雰囲気保持後の臨界電流値Iの割合(I/I×100(%))を算出し、得られた値を超電導特性保持率として表1に記載した。
Figure 0005597511
表1の結果より、本発明に係る実施例1および2の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体を第1安定化層、貼り合わせ安定化層及びめっき安定化層で保護する構成であるため、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができるので、水分侵入により酸化物超電導層が劣化することがなく、超電導特性が低下することを防ぐことができる。
「実施例3」
上記と同様の手法で作製した幅10mm、長さ10mのAg被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の上面に、厚さ80μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、貼り合わせ安定化層を積層形成した。
銅テープの貼り合せは、テープ状のAg被覆酸化物超電導積層体をリールから繰り出して、Ag被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の面に、一方の面に半田が形成された銅テープの半田面が接触するように銅テープを重ね合わせて積層体とし、この積層体を一対の加熱・加圧ロール間を通過させて半田を介してAg被覆酸化物超電導積層体と銅テープを一体化し、ロール通過後の積層体を他のリールに巻き取るようにしてテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuの貼り合わせ安定化層を形成した。なお、銅テープ貼り合わせ時、Ag被覆酸化物超電導積層体の搬送速度は100m/hで行い、Cuの貼り合わせ安定化層の形成に要した時間は6分であった。
次に、Ag被覆酸化物超電導積層体に貼り合わせ安定化層が積層された幅10mm、長さ10mの線材を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該線材を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該線材の外周に形成した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、線材をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして貼り合わせ安定化層を備えたテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuからなるめっき安定化層を形成した。
なお、Cuの電気めっきは、被めっき体(線材)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃、浸漬時間18分、線材の搬送速度1m/minで行った。線材のめっき浴への浸漬時間の他、線材を一方のリールから送り出す時間及び巻取る時間などの他の作業時間を加えためっき安定化層形成に要した総時間は28分であった。
以上の工程により、Ag被覆酸化物超電導積層体を、貼り合わせ安定化層及びめっき安定化層よりなる第2安定化層で被覆した酸化物超電導線材を作製した。実施例2では、Ag被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の面上に厚さ100μmの第2安定化層を形成する総工程時間は34分であった。
「比較例4」
上記と同様の手法で作製した幅10mm、長さ10mのAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ100μmのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、線材をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして貼り合わせ安定化層を備えたテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuからなるめっき安定化層を形成した。
なお、Cuの電気めっきは、被めっき体(線材)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃、浸漬時間90分、積層体の搬送速度1m/minで行った。積層体のめっき浴への浸漬時間の他、積層体を一方のリールから送り出す時間及び巻取る時間などの他の作業時間を加えためっき安定化層形成に要した総時間は100分であった。
以上の工程により、Ag被覆酸化物超電導積層体を、厚さ100μmのめっき安定化層で被覆した酸化物超電導線材を、総工程時間100分で作製した。
実施例3および比較例4の結果より、第2安定化層をめっき安定化層と貼り合わせ安定化層の複合により形成する本発明に係る実施例2では、第2安定化層(めっき安定化層)を電気めっきのみで形成する場合に比べて、より短い工程時間で第2安定化層を形成することができることが確認された。したがって、本発明によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材を良好な生産性で製造することができる。
「実施例4」
上記と同様の手法で作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、表2に示す厚さのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成して、サンプルNo.1〜4のめっき被覆超電導線材を作製した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、線材をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして貼り合わせ安定化層を備えたテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuからなるめっき安定化層を形成した。なお、Cuの電気めっきは、被めっき体(線材)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃で行った。
得られたサンプルNo.1〜4のめっき被覆超電導線材を、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持し、24間経過後、及び120時間経過後の各酸化物超電導線材の臨界電流値を測定した。
各めっき被覆超電導線材について、前記雰囲気保持前の臨界電流値Iに対して前記雰囲気保持後の臨界電流値Iの割合(I/I×100(%))を算出し、得られた値を超電導特性保持率として表2に併記した。
Figure 0005597511
表2の結果より、めっき安定化層の厚さを20μm以上とすることにより、スパッタ法により形成されたAgの第1安定化層にピンホールのような欠陥部が形成された場合にも、このピンホールを埋めることができ、酸化物超電導層に外部から水分が浸入することを効果的に防ぐことができるため、酸化物超電導層が水分侵入により劣化することを抑止し、超電導特性が低下することを効果的に防ぐことができることが確認された。
「実施例5」
上記と同様の手法でAg被覆酸化物超電導積層体を作成し、得られたAg被覆酸化物超電導積層体のAgの第1安定化層(Ag層)の一部を剥がし取り、Ag層に50μm径の欠陥部を作製した。次に、Ag層に欠陥部を作製したAg被覆酸化物超電導積層体の酸化物超電導層側の上面に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、貼り合わせ安定化層を積層形成した。次に、このAg被覆酸化物超電導積層体に貼り合わせ安定化層が積層された線材を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該線材を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該線材の外周に形成した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、線材をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして貼り合わせ安定化層を備えたテープ状のAg被覆酸化物超電導積層体の全長にわたり、Cuからなるめっき安定化層を形成した。
なお、Cuの電気めっきは、被めっき体(線材)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃、浸漬時間18分で行った。
以上の工程により、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。
「実施例6」
実施例5と同様の手法でAg層に50μm径の欠陥部を作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成した。次に、Ag被覆酸化物超電導積層体の外周にめっき安定化層が形成された線材の酸化物超電導層側の上面に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせることにより、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。なお、電気めっきは実施例5と同様の条件で行った。
「比較例5」
実施例5と同様の手法でAg層に50μm径の欠陥部を作製したAg被覆酸化物超電導積層体を、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、該積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmのCuのめっき安定化層を該積層体の外周に形成することにより、臨界電流値400Aの酸化物超電導線材を作製した。なお、電気めっきは実施例5と同様の条件で行った。
実施例5、6および比較例5の各酸化物超電導線材を、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持し、24時間経過後、及び120時間経過後の各酸化物超電導線材の臨界電流値を測定した。
各酸化物超電導線材について、前記雰囲気保持前の臨界電流値Iに対して前記雰囲気保持後の臨界電流値Iの割合(I/I×100(%))を算出し、得られた値を超電導特性保持率として表3に記載した。
Figure 0005597511
表3の結果より、本発明に係る実施例5および6の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体を第1安定化層、貼り合わせ安定化層及びめっき安定化層で保護する構成であるため、万一、Agの第1安定化層に欠陥部が生じた場合にも、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができるので、水分侵入により酸化物超電導層が劣化することがなく、超電導特性が低下することを防ぐことができる。
本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種電力機器に用いられる酸化物超電導線材に利用することができる。
1、1B…酸化物超電導線材、2…酸化物超電導積層体、3…基材、5…中間層、6…酸化物超電導層、7…第1安定化層、8、8B…貼り合わせ安定化層、9、9B…めっき安定化層、10、10B…第2安定化層、11…拡散防止層、12…ベッド層、15…配向層、16…キャップ層、50…成膜装置、51…走行系、52…送出リール、53…巻取リール、54…第1ロール、55…第2ロール、56…第1の成膜系、56a…第1のターゲット、56b…第1のスパッタビーム照射装置、57…第2の成膜系、57a…第2のターゲット、57b…第2のスパッタビーム照射装置、S1…真空容器、S2…真空排気装置。

Claims (8)

  1. 基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層が被覆され、この第1安定化層の外方に第2安定化層が被覆され、
    前記第2安定化層が、めっき安定化層と、金属テープの貼り合わせにより前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成され
    前記第1安定化層上に前記貼り合わせ安定化層が積層され、該第1安定化層と該貼り合わせ安定化層で被覆された前記酸化物超電導積層体の外周全体を覆うように前記めっき安定化層が被覆されてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
  2. 基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えて酸化物超電導積層体が構成され、該酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層が被覆され、この第1安定化層の外方に第2安定化層が被覆され、
    前記第2安定化層が、めっき安定化層と、金属テープの貼り合わせにより前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成され
    前記めっき安定化層の厚さが20μm以上であることを特徴とする酸化物超電導線材。
  3. 前記第1安定化層上に前記貼り合わせ安定化層が積層され、該第1安定化層と該貼り合わせ安定化層で被覆された前記酸化物超電導積層体の外周全体を覆うように前記めっき安定化層が被覆されてなることを特徴とする請求項に記載の酸化物超電導線材。
  4. 前記第1安定化層により被覆された前記酸化物超電導積層体の外周全体を覆うように前記めっき安定化層が被覆され、該第1安定化層と該めっき安定化層により被覆された酸化物超電導積層体の上面側に、前記貼り合わせ安定化層が積層されてなることを特徴とする請求項に記載の酸化物超電導線材。
  5. 基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えてなる酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層を形成する第1安定化層形成工程と、該第1安定化層の外方に第2安定化層を形成する第2安定化層形成工程と、を備えてなり、
    前記第2安定化層が、めっき安定化層と、前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成されてなり、
    前記第2安定化層形成工程が、めっきにより前記めっき安定化層を形成する工程と、金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせ安定化層を形成する工程と、を備えてなり、
    前記第2安定化層形成工程は、前記貼り合わせ安定化層を形成する工程の後に、前記めっき安定化層を形成する工程を行うことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた酸化物超電導層とを備えてなる酸化物超電導積層体の周面側に該周面全体を覆うようにAgの第1安定化層を形成する第1安定化層形成工程と、該第1安定化層の外方に第2安定化層を形成する第2安定化層形成工程と、を備えてなり、
    前記第2安定化層が、めっき安定化層と、前記酸化物超電導層の上面側に形成された貼り合わせ安定化層より構成されてなり、
    前記第2安定化層形成工程が、めっきにより前記めっき安定化層を形成する工程と、金属テープを半田により貼り合わせて貼り合わせ安定化層を形成する工程と、を備えてなり、
    前記めっき安定化層の厚さを20μm以上とすることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記第2安定化層形成工程は、前記貼り合わせ安定化層を形成する工程の後に、前記めっき安定化層を形成する工程を行うことを特徴とする請求項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記第2安定化層形成工程は、前記めっき安定化層を形成する工程の後に、前記貼り合わせ安定化層を形成する工程を行うことを特徴とする請求項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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