JP6809794B2 - 超電導線材、超電導コイル及び超電導線材の製造方法 - Google Patents

超電導線材、超電導コイル及び超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超電導マグネットなどに用いられる超電導線材、超電導コイル及び超電導線材の製造方法に関する。
従来、液体窒素温度(77K)以上で超電導を示すRE系の高温超電導体(RE:希土類元素)を用いた超電導線材が知られている。RE系の高温超電導線材を使用したマグネットは、一般的に、線材が周回したコイル構造をなしている。また、線材の固定や熱伝導性の向上を目的として、エポキシ等の樹脂でコイルを含浸した構造のコイルが開発されている。
ところで、RE系の高温超電導線材は、薄膜が積層した構造をなしており、薄膜の積層方向に引き剥がす力が印加されると線材が剥離してしまう虞がある。そのため、コイルをエポキシ系の樹脂で含浸した構造では、コイルの冷却により発生する熱応力や通電により発生する電磁力により線材の剥離が生じ、コイルが劣化するという問題が生じる(例えば、非特許文献1参照)。
上記の線材の剥離問題を解決するために、例えば、パラフィンやワックス等でコイルを含浸した構造(例えば、非特許文献2参照)や、剥離材を線材に共巻した構造、線材にエポキシとの密着性の悪いポリイミドをコーティングした構造や熱収縮チューブにより保護した構造(例えば、非特許文献3参照)等が提案されている。また、線材を銅安定化層により保護した構造の高温超電導線材も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2013−8556号公報
Y. Yanagisawa, H. Nakagome, T. Takematsu, T. Takao, N. Sato,M. Takahashi, H. Maeda PhysicaC 471 (2011) 480-485 Shigeo Nagaya, et al. IEEE/CSC & ESAS EUROPEAN SUPERCONDUCTIVITY NEWS FORUM, No. 22, October/November 2012. Y. Yanagisawa et al. PhysicaC 495 (2013) 15-18
しかしながら、パラフィンやワックス等でコイルを含浸する場合、ターン間の熱伝導度が低下してしまうといった問題がある。
また、線材保護層を用いると、線材の工学的上限電流密度(Je)が低下してしまい、線材の特性を十分に活用できないといった問題もある。
ここで、「工学的上限電流密度」とは、磁場の効果を含めた上でのコイルの臨界電流にコイルのターン数を乗じ、それをコイル全体の断面積(コイルの軸を含む面の断面積)で除したものである。以下、同様である。
さらに、剥離材や剥離層をコイル内に設けると、剥離部分に機械的強度の不足が生じ、冷却等により線材が移動してコイルの劣化が生じてしまう。
このように、コイルの線材占積率や工学的上限電流密度を低下させることなく剥離を防止するためには、線材自体で超電導導体層の耐剥離力を向上させる必要がある。なお、上記特許文献1では、酸化物超電導層と中間層との界面の剥離の防止を目的としており、超電導層内での剥離に対しては効果的ではない。
本発明の目的は、工学的上限電流密度の低下を抑制しつつ、超電導導体層の耐剥離力の高い超電導線材、超電導コイル及び超電導線材の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
金属製の基材の一面側に中間層を介して超電導導体層が形成されるとともに、前記基材、前記中間層及び前記超電導導体層の全体が金属層を構成する銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金により覆われた超電導線材であって、
前記基材の前記一面には、前記基材と前記金属層とを結合する補強部が設けられ、
前記補強部の構成材料は前記金属層と同一の銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金であり、前記補強部は、前記中間層と前記超電導導体層が部分的に除去されて露出した、表面粗さが算術平均粗さ0.5[μm]以上とされた前記基材の表面に結合されていることを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超電導線材において、
前記金属層は、前記基材、前記中間層及び前記超電導導体層を覆う内層と、この内層を覆う外層と有する二層構造からなり、
前記内層は、銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金からなり、
前記外層は、銅からなることを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超電導線材において、
前記補強部は、当該超電導線材の長手方向に沿った線状に形成されているか、或いは、点状に形成されていることを特徴としている。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超電導線材において、
前記補強部は、当該超電導線材の長手方向に平行であって、当該超電導線材の全長よりも短い線状に形成されていることを特徴としている。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4記載の超電導線材において、
前記補強部は、その周囲で隣り合う他の補強部と、超電導線材の幅方向の位置が異なっていることを特徴としている。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5記載の超電導線材において、
前記補強部の長さの平均値と等しい長さの平均長領域に含まれる前記補強部の本数が、前記超電導線材の長手方向の他の平均長領域に対して1本以上異なる平均長領域を有することを特徴としている。
また、請求項7に記載の発明は、請求項4又は5記載の超電導線材において、
前記補強部により超電導線材の幅方向に分割された領域が、当該超電導線材の長手方向に沿って複数並んで設けられており、
当該超電導線材の長手方向について隣り合う領域同士は、前記補強部の超電導線材の幅方向の数が異なることを特徴としている。
また、請求項8に記載の発明は、超電導コイルにおいて、
請求項5から7のいずれか一項に記載の超電導線材が巻回されていることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の超電導線材の製造方法であって、
金属製の基材の一面側に中間層を介して超電導導体層を形成する工程と、
前記基材の前記一面に形成された前記中間層及び前記超電導導体層を部分的に除去して表面を露出させる工程と、
前記基材の前記一面における部分的に表面が露出された露出部並びに前記中間層及び前記超電導導体層が除去された空隙部分に所定の構成材料からなる金属を配設するとともに、前記超電導導体層の前記中間層と反対側の面を所定の構成材料と同一材料の金属で覆うことで、前記露出部と前記超電導導体層を覆う金属層とを結合する工程と、
を含むことを特徴としている。
上記発明では、上記の構成により、工学的上限電流密度の低下を抑制しつつ、超電導導体層の耐剥離力の高い超電導線材、超電導コイル及び超電導線材の製造方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る超電導線材の斜視図である。 図1のII-II線における超電導線材の断面図である。 図3(a)〜図3(c)は、補強部の変形例を模式的に示す平面図である。 図4(a)、図4(b)は、補強部の変形例を模式的に示す平面図である。 超電導コイルの線材長手方向に垂直な断面を示した断面図である。
以下に、本発明を実施するための好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
[超電導線材の構造]
図1は、本実施形態に係る超電導線材100の斜視図である。また、図2は、図1のII-II線における超電導線材100の断面図である。
図1及び図2に示すように、超電導線材100は、超電導成膜用基材1(以下、「基材1」とする)の厚さ方向の一方の主面(以下、成膜面11という)側に、中間層2を介して酸化物超電導導体層3(以下、「超電導導体層3」とする)が形成されている。また、基材1、中間層2及び超電導導体層3は、内層41及び外層42を有する金属層4により覆われている。以下、実施形態の例として、図3(a)にあるように、線材長手方向に平行な複数本の線状補強部5が等間隔に形成されている形態を考える。
基材1は、金属製の基材1であり、テープ状の低磁性の金属基板が用いられる。
金属基板の材料としては、強度及び耐熱性に優れた金属が用いられ、具体的には、例えば、Co、Cu、Cr、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金が用いられる。特に、耐食性及び耐熱性が優れているという観点からハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)等のNi基合金、またはステンレス鋼等のFe基合金を用いることが好ましい。
また、基材1の厚さは、例えば、50[μm]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。
成膜面11は、略平滑な面とされており、成膜面11の表面粗さが、例えば、10[nm]以下とされていることが好ましい。
なお、表面粗さとは、JISB-0601-2001において規定する表面粗さパラメータの「高さ方向の振幅平均パラメータ」における算術平均粗さRaである。
中間層2は、超電導導体層3において例えば高い2軸配向性を実現するための層である。このような中間層2は、例えば、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基材1と超電導導体層3を構成する超電導体との中間的な値を示す。
また、中間層2は、単層構造であっても良いし、多層構造であっても良い。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、非晶質のGdZr7−δ(δは酸素不定比量)やAl或いはY等を含むベッド層と、結晶質のMgO等を含みIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により成形された強制配向層と、LaMnO3+δ(δは酸素不定比量)を含むLMO層と、を順に積層した構成となっていても良い。また、LMO層の上にCeO2等を含むキャップ層をさらに設けても良い。
また、中間層2の厚さは、例えば、0.2[μm]以下であり、多層構造の場合の各層の厚さは、LMO層が30[nm]、強制配向層のMgO層が40[nm]、ベッド層のY層が7[nm]、Al層が80[nm]である。なお、これらの数値はいずれも一例であってこれらに限られるものではない。
この中間層2の表面には、超電導導体層3が積層されている。
超電導導体層3は、酸化物超電導体、特に銅酸化物超電導体を含んでいることが好ましい。銅酸化物超電導体としては、高温超電導体としてのREBaCu7−δ(以下、RE系超電導体と称す)が好ましい。なお、RE系超電導体中のREは、例えば、Y,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素である。また、δは、酸素不定比量であって、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。なお、酸素不定比量は、オートクレーブ等の装置を用いて高圧酸素アニール等を行えば、δは0未満、すなわち、負の値をとることもある。
また、超電導導体層3の厚さは、例えば、1[μm]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。
また、基材1の成膜面(一面)11には、中間層2及び超電導導体層3が存せずに部分的に当該基材1の表面が露出された露出部12が設けられている。
露出部12は、基材1の成膜面11に積層された中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去することで形成される。具体的には、例えば、フェムト秒パルスレーザを用いて、中間層2及び超電導導体層3を部分的に厚さ方向に削ることで、基材1の表面を露出して露出部12を形成する。
また、露出部12の幅は、例えば、超電導導体層3の除去による線材の臨界電流の低下への影響を考慮して、0.2[mm]以下であるが、一例であってこれに限られるものではない。
なお、図示は省略するが、基材1の成膜面11に積層された中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去する際に、基材1自体が成膜面11の表面側からわずかに座刳られるように加工されても良い。
また、露出部12は、超電導線材100の長手方向に沿って線状に複数本(例えば、図1及び図2には、3本図示)形成されている。具体的には、露出部12の各々は、例えば、超電導線材100の長手方向側の一端部から他端部に亘るように長手方向に沿って線状に形成されている。
また、露出部12は、少なくとも一つ設けられていれば良い。また、露出部12を複数形成する場合、例えば、超電導導体層3の強度を確保するため、長手方向に略直交する方向(基材1の幅方向)に隣合うものとの間に2[mm]程度の間隔を空けるのが好ましい。
なお、露出部12の数、形状、配置等はいずれも一例である。
また、露出部12の表面粗さは、算術平均粗さRaが0.5[μm]以上、5[μm]以下であることが望ましい。算術平均粗さRaを0.5[μm]以上とすることにより、所望とするアンカー効果が得られ、露出部12と補強部5(後述)との十分な密着性を得ることができる。その一方で、算術平均粗さRaが5[μm]より大きいと、露出部12に補強部5を配設する際に空孔が発生し易くなって、補強部5の構成材料である金属を均一に配設することが困難となる。
これら基材1、中間層2及び超電導導体層3全体を覆うように金属層4が設けられている。
金属層4は、超電導導体層3を保護する安定化層を構成している。安定化層とは、当該超電導線材100の超電導状態が部分的に不安定となって抵抗が発生した場合に、電流を迂回させることで常電導状態が全体に波及することを防ぐためのものである。
この金属層4は、具体的には、基材1、中間層2及び超電導導体層3を覆う内層41と、この内層41を覆う外層42と有する二層構造をなしている。
内層41は、例えば、銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金から構成され、スパッタリング装置を用いて成膜される。スパッタリングにより、基材1の露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分を被覆するように内層41の構成材料である金属が配設される。
また、内層41は、酸素雰囲気中での熱処理(酸素アニール)により金属製の基材1との間で金属同士が強固に結合する。すなわち、内層41のうち、基材1の露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分に配設されている金属は、露出部12と金属層4とを結合する金属製の補強部5を構成している。
また、内層41のうち、超電導導体層3を中間層2と反対側から覆う部分(図2における上側部分)の金属の厚さは、例えば、2[μm]程度であり、基材1を覆う部分(図2における下側部分)の金属の厚さは、例えば、1.8[μm]以下であるが、一例であってこれらに限られるものではない。
なお、図1及び図2にあっては、内層41を構成する金属を模式的に表し、図中では内層41を構成する金属が露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分を埋めるように配設されているが、例えば、露出部12並びに空隙部分の表面を被覆するように所定の厚さで形成されていても良い。
外層42は、例えば、銅から構成され、鍍金により所定の厚さで成膜される。
また、外層42及び内層41を構成する金属どうしは結合し、外層42のうち、基材1の露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分に配設されている内層41を被覆する部分の金属は、露出部12と金属層4とを結合する金属製の補強部5を構成している。そして、当該補強部5は、平面視にて露出部12と略等しい形状をなし、今述べている形態の例においては、超電導線材100の長手方向に沿って線状に複数形成されている。
また、外層42の厚さは、例えば、20[μm]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。
なお、金属層4が、基材1、中間層2及び超電導導体層3全体を覆うようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、少なくとも超電導導体層3を中間層2と反対側から覆う形態であれば良い。
以下に、補強部5の変形例について説明する。
すなわち、上記した補強部5の数や形状は、一例であってこれに限られるものではなく、超電導線材100の臨界電流の低下への影響、超電導導体層3の幅や確保すべき強度等に応じて適宜任意に変更可能である(図3(a)〜図3(c)及び図4(a),図4(b)参照)。
ここで、図3(a)〜図3(c)及び図4(a),図4(b)は、補強部5の変形例を模式的に示す平面図である。なお、図3(a)〜図3(c)及び図4(a),図4(b)にあっては、基材1A〜1Eと補強部5A〜5Eのみを模式的に表し、その他の構成の図示は省略するものとする。また、図3(a)〜図3(c)及び図4(a),図4(b)において、符号Lは線材長手方向、符号Wは線材幅方向を示す。
例えば、上記実施形態と同様に、補強部5Aの形状を線状とする場合、図3(a)に示すように、基材1Aの幅方向に所定の間隔を空けて6本並設されていても良い。
なお、線状の補強部5Aの寸法は、上記実施形態の補強部5と同様に、当該補強部5Aに対応する露出部12の寸法として、例えば、幅0.2[mm]以下、隣合うものとの間隔が1[mm]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。
また、補強部5Bは、例えば、図3(b)に示すように、基材1Bの長手方向に沿って形成されるとともに当該長手方向に隣合うものとの間に間隔を空けたミシン目状に形成されていても良い。ここで、補強部5Bの形状をミシン目状とする場合にも、基材1Bの幅方向に複数本(図3(b)では、7本等)並設されていても良い。
なお、ミシン目状の補強部5Bの寸法は、当該補強部5Bに対応する露出部12の寸法として、例えば、長さ2〜20[mm]程度、隣合うものとの間隔が1[mm]程度、幅0.2[mm]以下であるが、一例であってこれに限られるものではない。
また、補強部5Cは、例えば、図3(c)に示すように、各々が所定の面積を有し、基材1C上で隣合うものとの間に間隔を空けた点状に形成されていても良い。ここで、点状の補強部5Cの各々は、例えば、円形状であっても良いし、多角形状であっても良い。
なお、点状の補強部5Cの各々の面積は、当該補強部5Cに対応する露出部12の面積として、例えば、0.01[mm2]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。
ここで、先述の特許文献1(特開2013−8556号公報)も上記補強部5に類似した解決法を提示している。しかし、特許文献1では「酸化物超電導層とキャップ層との界面に界面反応部」を形成し、そのアンカー効果により超電導層の剥離を防止しようとしているのに対して、本発明の補強部5の形成の際には、後述するように界面反応部を形成させないという違いがある。
界面反応部を形成させるためには溝を形成する際にキャップ層をある程度残す必要があり、またその後に加熱焼成処理を行う必要が生じる。一方、本発明では形成される溝の深さは金属基板を露出させるだけのものであり、中間層は残さず、また、深く掘りすぎたとしても問題にはならない。また加熱焼成処理を行う必要もなく、加工に要するコストを低く抑えることができる。
また、超電導線材100は、超電導導体層3の接合強度の向上と臨界電流の増加の両立が要求される。
接合強度は補強部5の接合面積の拡大によって向上させることができるが、臨界電流は超電導導体層3から補強部5を除いた線材幅方向Wの幅の合計値に比例するため、単純に補強部5の接合面積の拡大を図るだけでは臨界電流が低下して両立を図ることが難しい。
このような接合強度の向上と臨界電流の増加の両立の観点からは、図3(a)のように、補強部5Aを線材長手方向Lに沿った直線状とすることが有利である。補強部5Aを線材幅方向Wに広げることなく、線材長手方向Lに沿って長く延ばせば接合面積を飛躍的に拡大して接合強度を高めることができ、超電導導体層3から補強部5を除いた線材幅方向Wの幅の合計値の減少も生じないからである。
ここで、図3(a)の補強部5Aをさらに改良した補強部5Dについて説明する。
図4(a)に示すように、線材長手方向Lに沿って三つの領域R1〜R3が順番に繰り返し並んで設けられており、各領域R1〜R3内に、線材長手方向Lに平行な直線状の補強部5Dが複数本形成されている。
領域R1では、四本の補強部5Dが、線材の全幅を線材幅方向Wについて均一間隔で五分割する配置で形成されている。
領域R2では、五本の補強部5Dが、線材の全幅を線材幅方向Wについて均一間隔で六分割する配置で形成されている。
領域R3では、三本の補強部5Dが、線材の全幅を線材幅方向Wについて均一間隔で四分割する配置で形成されている。
すなわち、当該超電導線材の長手方向Lについて隣り合う領域同士は、補強部5Dの超電導線材の幅方向Wの数が異なる構成となっている。
また、領域R1〜R3は隣り合う領域同士でそれぞれの領域内の補強部5Dの線材幅方向Wの位置が全て異なっている。また、これにより、何れの補強部5Dも、当該補強部5Dの周囲で隣り合う他の補強部5Dと線材幅方向Wの位置が異なった状態となっている。
また、領域R1〜R3内の補強部5Dは、何れも超電導線材100の全長よりも短い線材長手方向Lに沿った直線状であって、その長さはほぼ均一である。
なお、線状の補強部5Dの寸法は、上記実施形態の補強部5と同様に、当該補強部5Dに対応する露出部12の寸法として、例えば、幅0.2[mm]以下、隣合うものとの間隔が0.5〜1.5[mm]程度であるが、一例であってこれに限られるものではない。また、補強部5Dが隣り合う全ての補強部5Dと線材幅方向Wの位置が異なっていなければならないわけでもない。
さらに、図3(a)の補強部5Aを図4(b)に示すように改良したもう一つの補強部5Eについて説明する。
この補強部5Eは両端を持つ長さが有限の線状で、いずれも線材の長手方向に平行である。それらの両端位置はそろっておらずばらついているが、それらの長さのばらつきは比較的小さい。そして、線材長手方向のある直線上に集中せず、それらの線材幅方向の位置が分散している。
ここで、図4(b)に示す平均長領域Raは、全ての補強部5Eの線材長手方向Lの長さの平均値Laと等しい長さの領域である。この平均長領域Ra内に含まれる補強部5Eの本数を、各々の補強部5Eの領域内で占める長さの比率に基づいてカウントする。例えば、補強部5Eの一つである補強部5Eaについては、平均長領域Ra内において平均値Laの70パーセントの長さで存在しているので、0.7本とカウントする。平均長領域Ra内に存在している補強部5Eすべてについて同様にカウントし、その合計を平均長領域Ra内に含まれる補強部5Eの本数とする。この平均長領域Ra内に含まれる補強部5Eの本数は、4.3本となる。
図4(a)、図4(b)のような補強部の分布では、この領域をとる位置によって領域内に含まれる本数の数が比較的大きく変化する。たとえば図4(a)のような補強部の分布では、領域の位置によってその本数が最少で3本、最多で5本となる。
また図4(b)では、平均長領域Raを図の中央やや右寄りの位置にとると、その本数は5本程度となるのに対して、図の左側の位置にとるとその本数は4よりも小さな値となる。このように、平均長領域Raに含まれる補強部5Eの本数が超電導線材の長手方向の他の平均長領域Raに対して1本以上異なる平均長領域Raを有している。
一方、図3(b)のような補強部の分布では、その本数はおよそ6本でほぼ一定である。さらに図3(a)のような補強部の分布では、その本数はちょうど6本で完全に一定となる。この点も図4(a)、図4(b)のような補強部の分布の特徴である。
補強部5Aに対する補強部5D,5Eの改良の意義を説明する。
図3(a)における補強部5Aのように直線状の補強部を設けた超電導線材は、補強部5Aの接合面積が飛躍的に増加し、剥離に対する耐性が大きく向上する。また、これにより、補強部5Aの線材幅方向Wの幅を広く確保する必要がなくなるので、超電導導体層3から補強部5を除いた線材幅方向Wの幅の合計値を広く確保することができ、線材全体の臨界電流の低下を効率的に抑えることができる。
一方、この超電導線材をパンケーキコイル状に巻いて超電導コイルを形成する場合に別の問題が生じる。パンケーキコイルはテープ型の超電導線材が重なるように同一平面上で巻回されたものである。図5は、図3(a)の補強部5Aを有する超電導線材を4ターン巻いてその表面全体にポリイミドフィルム(例えば、カプトン(登録商標))と含浸材(例えば、エポキシ樹脂)からなる保護層6を形成した超電導コイル60の線材長手方向Lに垂直となる断面を示した断面図である。なお、図5では超電導線材を4ターン巻いているが、これは例示に過ぎず、ターン数は増減可能である。また、図5では図3(a)によりも補強部5Aの数を少なくして図示している。
超電導コイルは室温で作製された後、液体窒素温度(77K)あるいはそれよりも低い極低温に冷却されて用いられる。このとき、超電導コイルには熱収縮による変形と応力が生じる。一般に金属は熱収縮が小さく、樹脂材料は熱収縮が大きい。そのため、金属と樹脂が共存してなおかつ互いに固定されている超電導コイルでは、極低温に冷却されるとそれらの熱収縮の違いに由来する熱応力が発生する。
図5に示すように、図3(a)のような線状の補強部5Aは、パンケーキコイルにおいて線材幅方向Wについて同じ位置でコイル径方向に積み重ねられていくことになる。すると線材厚さ方向の応力が各々のターンで補強部5Aに集中し、線材幅方向W(コイル軸方向)に関して同一位置に並んでしまう。その部位に近接する超電導層の中に、形成過程の良否等に起因して先天的に接合強度の弱い箇所が存在すると、当該弱い箇所の補強部5Aに接する超電導導体層の端部が剥離を起こし、同位置において金属層4も破断hが生じるおそれがあった。
補強部5D,5Eは、線材長手方向Lに沿って並んだ領域ごとに線材幅方向Wの配置及び本数を変えている。これにより、超電導線材を巻いてパンケーキコイルを形成したときに、線材幅方向Wにおける補強部5D、5Eの位置が近接ターンで直列することを妨ぐことができ、熱収縮によって生じる応力の特定領域への集中を緩和することができる。そして、これにより、パンケーキコイルを構成する超電導線材の超電導導体層の剥離及び金属層の破断が生じる可能性の抑止、低減を図っている。
[超電導線材の製造方法]
次に、超電導線材100の製造方法について説明する。
先ず、金属製の基材1(例えば、ハステロイ基板等)の成膜面11側に中間層2を介して超電導導体層3を形成する工程を行う。
具体的には、金属製の基材1の成膜面11上に、例えば、マグネトロンスパッタリング法やIBAD法等により中間層2を成膜した後、この中間層2上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等によりRE系の超電導導体層3を成膜する。
基材1に中間層2や超電導導体層3を形成する方法は、公知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、基材1の成膜面11に形成された中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去して当該基材1の表面を露出させる工程を行う。
具体的には、中間層2及び超電導導体層3が積層された基材1に対して、超電導導体層3側よりフェムト秒パルスレーザを照射して、基材1の成膜面11上の中間層2及び超電導導体層3を部分的に厚さ方向に削ることで除去する。これにより、基材1の表面が露出された所定形状(例えば、線状等)の露出部12を形成する。
ここで、パルスレーザは、レーザ光のパルス幅が100ナノ秒以下、且つ、ピークパワーが10[kW]以上であることが望ましい。
次に、基材1、中間層2及び超電導導体層3を金属層4で覆い、露出部12と超電導導体層3を覆う金属層4とを結合する工程を行う。
具体的には、スパッタリング法を用いて基材1、中間層2及び超電導導体層3全体を覆う内層41を所定の厚さで成膜する。すなわち、基材1の成膜面11における部分的に当該基材1の表面が露出された露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分を被覆するように内層41の構成材料である金属(例えば、銀等)を配設するとともに、基材1、中間層2及び超電導導体層3全体を内層41の構成材料である金属(例えば、銀等)で覆う。これにより、超電導導体層3の中間層2と反対側の面が金属で覆われる。
そして、酸素雰囲気中で所定温度(例えば、600℃等)に加熱する熱処理を行うことにより、金属製の基材1の露出部12と超電導導体層3を覆う内層41の金属とを結合する。
なお、内層41を成膜する前に、例えば、溶剤や超音波等を用いて基材1、中間層2及び超電導導体層3を洗浄しても良い。
その後、内層41の外側に外層42を所定の厚さで成膜する。具体的には、例えば、鍍金により、外層42の構成材料である金属(例えば、銅等)で内層41を覆う。
[実施例1]
本発明を適用した超電導線材の耐剥離性を確認する試験を行った。
<試験体>
RE系の超電導線材(型番:SF4050、SuperPower Inc.)を用意した。
この超電導線材は、長さ500[mm]、厚さ50[μm]、幅4[mm]のハステロイ基板(Hastelloy(登録商標) C-276)上に、厚さ0.2[μm]以下の中間層及び厚さ1[μm]のRE系の超電導導体層を成膜し、その後、全体を覆うように厚さ2[μm]以下の銀層(内層に相当する)を形成して酸素雰囲気中で熱処理したものである。
そして、上記の超電導線材に対して、超電導導体層側よりフェムト秒パルスレーザを照射し、銀層、超電導導体層及び中間層を部分的に除去する加工を行い、当該線材の長手方向に沿って幅30[μm]の線状の加工部(露出部に相当する)を幅方向に1[mm]間隔で3本形成した。その後、スパッタリング法を用いて、加工部及び超電導導体層及び中間層が除去された空隙部分を被覆するように厚さ2[μm]程度の銀膜を付加し、酸素雰囲気中で熱処理を行うことで、ハステロイ基板と銀とを結合した。そして、当該線材全体を覆うように厚さ20[μm]の銅層を鍍金により付加した。
また、線材の側面に付加されている金属の影響を排除するために、当該線材の幅方向側の端部及び長手方向側の端部をそれぞれ端面から0.3[mm]の位置で裁断したものを実施例1の試験体とした。
また、RE系の超電導線材(型番:SF4050、SuperPower Inc.)の幅方向側の端部及び
長手方向側の端部をそれぞれ端面から0.3[mm]の位置で裁断したものを比較例1の試験体とした。
<剥離試験>
ピール試験装置を用いて、90度ピール試験を行った。具体的には、各試験体の底面を両面テープで試験板に固定するとともに、試験体の長手方向側の一端部を超電導導体層で上下に分断されるように二つに引裂き、固定されている下側の部分に対して固定されていない上側の部分が90度の角度となるように10mm/minの負荷速度で引き剥がしていく。このとき、試験体の長手方向側の一端部からの各距離毎に、引き剥がすのに必要な力(密着力[N/m])を測定した。
その結果、比較例1の試験体では、集計された密着力が20〜70[N/m]程度で、それ
らの平均値が40[N/m]であったのに対して、実施例1の試験体では、集計された密着力
が100〜160[N/m]程度で、それらの平均値が130[N/m]であった。つまり、ハステロイ基板と銀層とを結合した実施例1の試験体では、ハステロイ基板と銀層とが結合されていない比較例1の試験体に対して3倍以上の密着力を有すると考えられる。
また、実施例1及び比較例1の各試験体について、液体窒素中における臨界電流値を4端子法により測定したところ、比較例1の試験体の臨界電流値は86[A]であったのに対
して、実施例1の試験体の臨界電流値は84[A]であった。すなわち、超電導導体層を部
分的に除去したことによる臨界電流値の低下は、約3%程のわずかなものであったと考えられる。
[実施例2]
本発明を適用した超電導線材における超電導導体層を部分的に除去する加工方法を検討する試験を行った。
<試験体>
RE系の超電導線材(型番:SCS4050、SuperPower Inc.)を用意した。この超電導線材は、長さ500[mm]、厚さ50[μm]、幅4[mm]のハステロイ基板(Hastelloy C-276)上に、厚さ0.2[μm]以下の中間層及び厚さ1[μm]のRE系の超電導導体層を成膜し、その後、全体を覆うように厚さ2[μm]以下の銀層(内層に相当する)を形成して酸素雰囲気中で熱処理し、さらに当該線材全体を覆うように厚さ20[μm]の銅層(外層に相当する)を鍍金により付加したものである。
そして、上記の超電導線材に対して、超電導導体層側よりフェムト秒パルスレーザを照射し、銅層、銀層、超電導導体層及び中間層を部分的に除去する加工を行い、当該線材の長手方向に沿って幅30[μm]の線状の加工部(露出部に相当する)を幅方向に略等しい間隔で19本形成した。その後、スパッタリング法を用いて、加工部及び超電導導体層及び中間層が除去された空隙部分を被覆するように厚さ2[μm]程度の銀膜を付加し、酸素雰囲気中で熱処理を行うことで、ハステロイ基板と銀とを結合したものを実施例2の試験体とした。
また、RE系の超電導線材(型番:SCS4050、SuperPower Inc.)を比較例2の試験体とした。
また、RE系の超電導線材(型番:SCS4050、SuperPower Inc.)に対して、超電導導体層側より500WのCW(Continuous wave:連続発振)レーザを照射し、銅層、銀層、超電導導体層及び中間層を部分的に除去する加工を行い、当該線材の長手方向に沿って幅30[μm]の線状の加工部(露出部に相当する)を1本形成した。その後、スパッタリング法を用いて、加工部及び超電導導体層及び中間層が除去された空隙部分を被覆するように厚さ2[μm]程度の銀膜を付加し、酸素雰囲気中で熱処理を行うことで、ハステロイ基板と銀とを結合したものを比較例3の試験体とした。
実施例2及び比較例2の各試験体について、液体窒素中における臨界電流値を4端子法により測定したところ、比較例2の試験体の臨界電流値は89[A]であったのに対して、実施例2の試験体の臨界電流値は75[A]であった。
つまり、19本の線状の補強部を設ける加工による臨界電流値の低下は、約15%程度であった。パルスレーザによる加工で線状の加工部1本あたり臨界電流値が約0.8%低下し、実際には加工部1本に付き幅33[μm]の超電導導体層が取り除かれたと考えられる。パルスレーザによる線状の加工部の幅が30[μm]であったことから、略一致していると考えられる。
一方、比較例3の試験体についても、液体窒素中における臨界電流値を4端子法により測定したが、この試験体では比較例2の試験体に対して、CWレーザによる加工で加工部1本あたり臨界電流値が約3%低下した。また、加工部では、基板の溶融、異物の付着が見られた。
CWレーザによる加工では加熱加工となるため、加工部周囲の超電導導体層の特性に影響を与えていると考えられる。
結果、超電導線材の超電導導体層を部分的に除去する加工方法としては、パルスレーザによる加工がCWレーザによる加工に対して優れていると考えられる。
[実施例3]
本発明を適用した超電導線材における補強部の形状を検討する試験を行った。
<試験体>
RE系の超電導線材(型番:SCS4050、SuperPower Inc.)を用意した。
そして、上記の超電導線材に対して、超電導導体層側よりフェムト秒パルスレーザを照射し、銅層、銀層、超電導導体層及び中間層を部分的に除去する加工を行い、当該線材の長手方向に沿ってミシン目状の加工部(露出部に相当する)を形成した。このミシン目は、長さ2[mm]、幅30[μm]の加工部と長さ1[mm]の非加工部の繰り返しを一本の線とし、幅方向に1[mm]間隔で3本形成した。その後、スパッタリング法を用いて、加工部及び超電導導体層及び中間層が除去された空隙部分を埋めるように厚さ2[μm]程度の銀膜を付加し、酸素雰囲気中で熱処理を行うことで、ハステロイ基板と銀とを結合したものを実施例3の試験体とした。
実施例3の試験体について、液体窒素中における臨界電流値を4端子法により測定したところ、この試験体では比較例2の試験体に対して、パルスレーザによる加工でミシン目状の加工部1本あたり臨界電流値が約0.8%低下した。
加工部の形状をミシン目状とした実施例3の試験体は、加工部の形状を線状とした実施例2の試験体と略同様の試験結果となった。
[実施例4]
本発明の適用の形の一つとして、以下のような超電導線材500mを用意した。その超電導導体層側には、フェムト秒パルスレーザの照射とそれに続く銀スパッタリングにより線材長手方向に平行な複数の直線状補強部が形成されている。ただしその本数は一様ではなく、線材長手方向0.5mごとに4本、5本、6本と変化し、超電導層が線材幅方向にそれぞれ5分割、6分割、7分割されている。そしてこの組み合わせが1.5mごとに周期的に繰り返されている。この超電導線材を用いて、1つのパンケーキコイルあたり250m分、計500m分のダブルパンケーキコイル(以下DPコイル)を作製した。このDPコイルの巻き枠内径はφ100mmで、コイル外径はφ300mmである。そして、そのターン数は794、平均ターン間隔(巻回によって重ねられる超電導線材のコイル径方向の間隔)は0.13mmである。なお、線材の平均厚さは0.1mmで、本DPコイルはターン間の絶縁のために平均厚さ0.025mmのポリイミドテープを共巻きにしている。
本DPコイルの最内ターンにおける周方向の長さは314mmで直線状補強部の一つの領域の長さが0.5m(500mm)なので、1.6周ごとに線材幅方向の補強部位置が変化する。即ち、各領域の線材長手方向Lの長さがコイル最内ターン(最内周)の2周分よりも短く、1.6周で線材幅方向Wの補強部の本数が異なる次の領域に変化する。従って、3ターン以上補強部位置が重なることはない。これは外側のターンでも同じで、最外ターンの周方向長さは942mmとなるが、これは線材における直線状補強部の三つの領域からなる補強部構造の周期1.5m(1500mm)が1.6周に相当する。そのため、補強部位置が3ターン以上重ならず、その結果線材幅方向Wにおける補強部の位置が3ターン以上連続して直列することを妨げ、熱収縮によって生じる応力の特定領域への集中を緩和することができる。
[本実施形態の技術的効果]
上記超電導線材100は、金属製の基材1の成膜面11側に中間層2を介して超電導導体層3が形成されるとともに、少なくとも超電導導体層3が中間層2と反対側から金属層4により覆われている。基材1の成膜面11には、中間層2及び超電導導体層3が存せずに部分的に当該基材1の表面が露出された露出部12が設けられ、露出部12と金属層4とを結合する金属層4と同一の金属製の補強部5が設けられてなる。
したがって、超電導導体層3を覆う金属層4を補強部5により基材1と強固に結合させることができ、超電導線材100自体の強度を向上させて超電導導体層3の耐剥離力を高めることができる。
また、補強部5は、当該超電導線材100の長手方向に沿った線状に形成されているか、或いは、長手方向に沿って形成されるとともに当該長手方向に隣合うものとの間に間隔を空けたミシン目状に形成されているか、或いは、点状に形成されている。
すなわち、例えば、超電導導体層3の幅や確保すべき強度等に応じて、補強部5の形状を適宜変更することができ、これにより、線材の臨界電流の低下の抑制及び超電導導体層3の耐剥離力の向上を適正に図ることができる。さらに、補強部5を設けることで超電導線材100を細線化した場合と実質的に同等の構造とすることができ、超電導線材100の遮蔽電流や交流損失による影響の低減を図ることができる。
また、補強部を線材長手方向Lに平行に形成することにより、当該補強部を線材幅方向Wに拡幅することなく線材長手方向Lに延ばすことで接合強度を向上させ、また、超電導導体層から補強部を除いた幅の低減を生じないことから、線材の臨界電流を大きく低減させることがない。
さらに、補強部の超電導線材の幅方向の数が、超電導線材の長手方向の位置によって異なるように構成したとき、たとえば図4(a)に示すように、補強部により超電導線材の幅方向に分割された領域を線材長手方向Lに複数並べて設け、隣り合う領域同士の補強部の超電導線材の幅方向の数を異なるように形成することにより、線材長手方向Lに沿って領域ごとに補強部の線材幅方向Wにおける位置を変えることができる。これにより、当該超電導線材を巻いて超電導コイルを形成した場合に、線材幅方向Wにおける補強部の位置が近接ターンで直列することを妨げ、熱収縮によって生じる応力の特定領域への集中を緩和することができる。そしてその結果、超電導導体層の中に先天的に剥離しやすい部位があったとしても、その部位での超電導導体層の剥離や同位置での金属層の破断が生じる可能性を低減することが可能となる。
なお、図4(b)のように近接する線状補強部の両端位置がそろっていない場合でも、同様の効果が見込める。
また、超電導線材の長手方向に平行でその全長よりも短く、周囲の隣り合う他の補強部と、超電導線材の幅方向の位置が異なっている複数の補強部が設けられた超電導線材を巻き付けて形成された超電導コイルでは、線材幅方向Wにおける補強部の位置が近接ターンで連続して直列することを妨げ、熱収縮によって生じる応力の特定領域への集中を緩和することができる。
また、金属製の基材1の成膜面11側に中間層2を介して超電導導体層3を形成する工程と、基材1の成膜面11に形成された中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去して表面を露出させる工程と、基材1の成膜面11における部分的に表面が露出された露出部12並びに中間層2及び超電導導体層3が除去された空隙部分に金属を配設するとともに、超電導導体層3の中間層2と反対側の面を金属で覆うことで、露出部12と超電導導体層3を覆う金属層4とを結合する工程と、を含んでいる。
これにより、線材の臨界電流の低下を抑制しつつ、超電導導体層3の耐剥離力の高い超電導線材100の製造を簡便に行うことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記実施形態では、中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去する加工を、パルスレーザを用いて行うようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。例えば、エッチング等を用いて中間層2及び超電導導体層3を部分的に除去しても良い。
なお、各領域内の補強部の本数は例示のものに限られず、隣り合う領域の補強部の本数が不一致であること又は隣り合う領域の補強部と線材幅方向Wについて位置は異なっていることを条件に任意に変更可能である。
100 超電導線材
1、1A、1B、1C 基材
11 成膜面
12 露出部
2 中間層
3 超電導導体層
4 金属層
41 内層
42 外層
5、5A、5B、5C、5D、5E 補強部
60 超電導コイル
R1〜R3 領域

Claims (9)

  1. 金属製の基材の一面側に中間層を介して超電導導体層が形成されるとともに、前記基材、前記中間層及び前記超電導導体層の全体が金属層を構成する銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金により覆われた超電導線材であって、
    前記基材の前記一面には、前記基材と前記金属層とを結合する補強部が設けられ、
    前記補強部の構成材料は前記金属層と同一の銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金であり、
    前記補強部は、前記中間層と前記超電導導体層が部分的に除去されて露出した、表面粗さが0.5[μm]以上とされた前記基材の表面に結合されていることを特徴とする超電導線材。
  2. 前記金属層は、前記基材、前記中間層及び前記超電導導体層を覆う内層と、この内層を覆う外層と有する二層構造からなり、
    前記内層は、銀或いは金、又は、銀或いは金を含む合金からなり、
    前記外層は、銅からなることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材。
  3. 前記補強部は、当該超電導線材の長手方向に沿った線状に形成されているか、或いは、点状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導線材。
  4. 前記補強部は、当該超電導線材の長手方向に平行であって、当該超電導線材の全長よりも短い線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導線材。
  5. 前記補強部は、その周囲で隣り合う他の補強部と、超電導線材の幅方向の位置が異なっていることを特徴とする請求項4に記載の超電導線材。
  6. 前記補強部の長さの平均値と等しい長さの平均長領域に含まれる前記補強部の本数が、前記超電導線材の長手方向の他の平均長領域に対して1本以上異なる平均長領域を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の超電導線材。
  7. 前記補強部により超電導線材の幅方向に分割された領域が、当該超電導線材の長手方向に沿って複数並んで設けられており、
    当該超電導線材の長手方向について隣り合う領域同士は、前記補強部の超電導線材の幅方向の数が異なることを特徴とする請求項4又は5に記載の超電導線材。
  8. 請求項5から7のいずれか一項に記載の超電導線材が巻回されていることを特徴とする超電導コイル。
  9. 請求項1又は2に記載の超電導線材の製造方法であって、
    金属製の基材の一面側に中間層を介して超電導導体層を形成する工程と、
    前記基材の前記一面に形成された前記中間層及び前記超電導導体層を部分的に除去して表面を露出させる工程と、
    前記基材の前記一面における部分的に表面が露出された露出部並びに前記中間層及び前記超電導導体層が除去された空隙部分に所定の構成材料からなる金属を配設するとともに、前記超電導導体層の前記中間層と反対側の面を所定の構成材料と同一材料の金属で覆うことで、前記露出部と前記超電導導体層を覆う金属層とを結合する工程と、
    を含むことを特徴とする超電導線材の製造方法。
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