JP2011040176A - 超電導テープ線およびそれを用いた超電導コイル - Google Patents

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貞憲 岩井
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圭 小柳
Taizo Tosaka
泰造 戸坂
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賢司 田崎
Tsutomu Kurusu
努 来栖
Shigeru Ioka
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Abstract

【課題】 超電導テープ線の保護層の劣化を起こすことなく、冷却や電磁力による超電導テープ線の各層に生じる負荷応力の防止する超電導テープ線の提供を目的とする。
【解決手段】 可撓性を有する基板上2に、酸化物超電導層4が中間層3を介して形成され、酸化物超電導層4上に保護層5が形成されることによりなる積層物を形成し、酸化物超電導層4への過剰電流の迂回経路となる安定化層6を、積層物の表面の少なくとも保護層5の面上に形成し、金属テープ7を保護層5の面上に形成される安定化層6の面上に接着する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多層構造の超電導テープ線およびそれを用いた超電導コイルに関する。
従来の多層構造の超電導テープ線は、基板の上に中間層が形成され、中間層の上に酸化物超電導層が形成され、酸化物超電導層の上に保護層が形成される構造のものが一般的である。しかし、この従来の多層構造の超電導テープ線を用いて超電導コイルを製作、運転を行うと、コイルの製作や運転時に超電導テープを構成する層に生じる負荷応力により、超電導テープ線を構成する層が剥離、変形、クラックを起こしてしまう。
この超電導テープを構成する層に生じる負荷応力には、超電導コイル製作時の超電導テープ線の曲げ応力によるもの、超電導コイル冷却時の超電導テープの各層の膨張率の違いによるもの、超電導コイル運転時に酸化物超電導層に働く電磁力によるものなどがある。
上記の要因によって生じる負荷応力による剥離、変形、クラックの発生を防止するために様々な技術が開発されている。
例えば、酸化物超電導層の上に銅メッキによる金属安定化層を、基板および中間層と同等の厚さに形成することにより、超電導コイル製作時の曲げ歪による酸化物超電導層への負荷応力を軽減する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この技術は、冷却や運転時の電磁力によって生じる、より強い負荷応力対しては、十分に耐えうるものではなかった。
そこで、曲げ歪による負荷応力だけでなく、冷却や電磁力による負荷応力も防止するために、酸化物超電導層上の保護層にハンダによって金属テープを接着させ、超電導テープ線の補強を行う技術が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第3568561号 特許第3949960号
しかしながら、特許文献2の技術には、保護層にハンダによって金属テープを接着させるために、ハンダと保護層の銀が反応し、時間経過につれて劣化し、保護層の働きが低下するという課題があった。
そこで本発明は、超電導テープ線の保護層の劣化を起こすことなく、曲げ応力や冷却、電磁力による超電導テープ線の各層に生じる負荷応力を防止する超電導テープ線の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の超電導テープ線は、可撓性を有する基板上に、酸化物超電導層が中間層を介して形成され、酸化物超電導層上に保護層が形成されることによりなる積層物と、積層物の表面の少なくとも保護層の面上に形成され、酸化物超電導層への過剰電流の迂回経路となる安定化層と、保護層の面上に形成される安定化層の面上に接着される金属テープとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、超電導テープ線の保護層の劣化を起こすことなく、曲げ応力や冷却、電磁力によって超電導テープ線の各層に生じる負荷応力による剥離、変形、クラックの発生を防止することができる。
本発明の第1の実施形態に係る超電導テープ線の切断面を示す斜視図。 本発明の第1の実施形態に係る超電導テープ線を用いた超電導コイルを示し、(a)は上面図、(b)は縦断面図、(c)は要部拡大断面図。 本発明の第1の実施形態に係る超電導テープ線を用いた超電導コイルの電界−電流特性図。 本発明の第2の実施形態に係る超電導テープ線を用いた超電導コイルの電界−電流特性図。
以下、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第1の実施形態の超電導テープ線の構成について図1を用いて説明する。
図1は、厚み0.1mm、幅4.0mmのテープ状の基板2の上に中間層3が形成され、中間層3の上に酸化物超電導層4が形成され、酸化物超電導層4の上に保護層5が形成され、基板2、中間層3、酸化物超電導層4、保護層5からなる積層物の表面が安定化層6で覆われ、厚み0.1mm、幅4.0mmの銅等の良導電性金属の金属テープ7が安定化層6の表面であって、積層物の保護層の面に形成される安定化層の面上にハンダ8で接着された超電導テープ線1である。
基板2は、ハステロイ(登録商標)、ステンレス鋼やニッケル合金どの高強度の金属材料を用いるのが通例であるが、ガラス、セラミクス等の非金属材料でも適用可能である。
中間層3は、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、SrTiO3、MgOなどの結晶配向性が優れ、酸化物超電導層の熱膨張率に近い膨張率を有する材料を用いることで、中間層の上に結晶配向性の優れた酸化物超電導層を形成させ、金属基板と超電導体の熱膨張の差異に起因する熱歪を防止することができる。
酸化物超電導層4は、Y1Ba2Cu37−x、Y2Ba4Cu8Ox、Y3Ba3Cu6Oxなる組成、あるいは(Bi,Pb)2Ca2Sr2Cu3Ox、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、あるいは、Tl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体をレーザ蒸着装置等によって形成する。
保護層5は、材料は一般的に銀が用いられ、真空蒸着法などによりメッキされることによって形成される。ここで、保護層5に用いられる銀は、酸素の拡散係数が高いため、酸化物超電導層に含まれる酸素が酸化物超電導層から拡散することを防止し、酸化物超電導体の組成を保つ働きがある。この効果を持つ物質であれば、銀以外の材料,例えば金、白金でも適用可能である。
安定化層6は、基板2、中間層3、酸化物超電導層4、保護層5からなる積層物の表面を、銅あるいはAlなどの良電導性の金属をメッキ等の方法により形成される。また、安定化層の形成しやすくするために、銀、金、白金などからなる下地安定化層を含む構造としてもよい。
超電導コイルが臨界電流を上回って使用されると、超電導状態を保つことができず、酸化物超電導層の一部が、高い電気抵抗をもった常電導体に変化する。このとき、常電導体に流れる電流によって熱が発生し、この熱によりさらに常電導体への変化が起きることにより、超電導コイルの焼き切れや、冷却材の一瞬の気化が生じることがある(クエンチ現象)。
安定化層6は、超電導コイルのクエンチ現象を防止するために、酸化物超電導層に臨界電流を越えた電流が流れたときに、酸化物超電導層への過剰電流の迂回経路となる働きをもつ。
金属テープ7は、超電導テープの補強の働きがあり、銅、ステンレス鋼等の金属が用いられるが、曲げ歪みや引張に強い材料であれば、合成樹脂、セラミクス等の金属以外の材料でも適用可能である。
なお、安定化層6は積層物の表面であって、少なくとも保護層の面上に形成されていれば、上記の電流の迂回経路としての働きと、以下に記述する金属テープとの接着面としての働きを持たせることができる。
第1の実施形態の超電導テープ線を用いた超電導コイルを図2に示す。
図2(a)は、超電導コイルを円筒上面から眺めた図であり、図2(b)は、図2(a)の超電導コイルのA-A’線に沿う断面図である。図2(c)は、超電導コイルの超電導テープ巻き回し部分の断面図である。
巻芯10は、内径90mm、外径100mmであり、FRP等の材質からなる。巻芯10に超電導テープ線1と、幅4.5mm、厚み0.1mmの樹脂を塗布した絶縁テープ11を重ねて20ターン巻き回した後、樹脂で含浸することで、超電導コイル9を作成する。
図3に、補強された超電導テープ線1を用いた超電導コイル9と、補強されていない超電導テープ線を用いた超電導コイルを液体窒素中で通電した場合の電界−電流特性を示す。図3の横軸は超電導コイルに流す電流であり、縦軸は超電導コイルに発生する電界である。補強されていない超電導テープ線を用いた超電導コイルの場合には、コイル臨界電流値(1mV/cmの電界が発生するときの電流値)は38.9A、n値13.1と劣化が見られたが、補強された超電導テープ線1を用いた超電導コイル9の場合には、コイル臨界電流値53.4、n値29.8と良好な超電導特性を有することが確認された。
(効果)
本発明の第1の実施形態によれば、金属テープ7を安定化層6に接着し、超電導テープ線を補強することにより、超電導テープの各層に生じる負荷応力を防止することができ、かつ、金属テープ7は、銀の保護層5ではなく、銅の安定化層6にハンダ8で接着されるので、銀とハンダ8が反応し、保護層5の効果が低下することがないという効果がある。
なお、従来の銀の保護層に金属テープを接着する技術では、銀とハンダに含まれるフラックスが反応してしまうために、強酸性のフラックスを含むハンダを使用することができなかったが、本発明の第1の実施形態では、銅等の安定化層上にハンダで金属テープを接着させるため、強酸性のフラックスを含むハンダを用いることが可能となる。その結果、強酸性のフラックスにより金属テープ表面の不動態を除去することができ、より強固な金属テープの接着が可能となる。
(第2の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態が、第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態のハンダ8の構成が、第2の実施形態では非導電性の接着剤の構成となっている点であり、接着剤以外の構成は、第1の実施形態と第2の実施形態で同一である。
ここで、接着剤は、エポキシ系やアクリル系の樹脂等からなる、冷却による収縮が小さく、割れにくい材料のものが用いられ、さらに常温で接着可能な性質のものも適用可能である。
なお、常温とは一般的な外気温、室温である約5℃〜35℃を指し、常温で接着可能とは、接着工程において常温以上の熱を外部から加えることを要せず、接着工程において接着剤および接着対象部位が常温以上の高温とならないことをいう。
(作用)
良導電性金属の安定化層を持たない超電導テープ線は、導電性のあるハンダ等によって金属テープを接着し、ハンダおよび金属テープを、超電導コイルのクエンチ現象の防止のための、酸化物超電導層への過剰電流の迂回経路とする必要があった。
第2の実施形態の超電導テープの構造によれば、超電導コイルのクエンチ現象の防止のための、酸化物超電導層への過剰電流の迂回経路は、銅等の良導電性金属による安定化層で確保されているので、金属テープを非導電性の接着剤によって接着することができる。
第1の実施形態と同様に、超電導コイルを作成し、実験したところ、図4に示すようにコイル臨界電流値52.5、n値31.7と良好な超電導特性を有することが確認された。
(効果)
本発明の第2の実施形態によれば、接着剤はハンダに比べて可撓性が高いため、金属テープを接着剤によって接着することにより、第1の実施形態の効果に加え、補強した超電導テープを径の小さいコイルに巻きつけるときも、接着部が割れにくいという効果を持ち合わせる。また、接着剤による接着は、ハンダによる接着に比べ、工程の手間や時間が少なくて済む。
さらに、常温で接着可能な接着剤を用いれば、例えばハンダの熱処理時のような酸化物超電導層へのダメージが生じないという効果がある。
なお、本発明の実施形態は上述した実施の形態に限られないことは言うまでもない。超電導テープ線の厚み・幅・材料や、超電導コイルの内径・外径・コイルの巻き数などは、適時変更可能であるし、金属テープの厚み・材料・接着方法も上記方法に限られない。
また、超電導テープ線1の巻芯10への巻きつけ方法は、金属テープを外周面にして巻くとき、金属テープを内周面にして巻くときのどちらでも、超電導テープ線の各層に生じる負荷応力を抑えることができるので、金属テープを外周面、内周面にする巻き方の両方が可能である。
1・・・超電導テープ線
2・・・金属基板
3・・・中間層
4・・・酸化物超電導層
5・・・保護層
6・・・安定化層
7・・・金属テープ
8・・・ハンダ
9・・・超電導コイル
10・・・巻芯
11・・・絶縁テープ

Claims (5)

  1. 可撓性を有する基板上に、酸化物超電導層が中間層を介して形成され、前記酸化物超電導層上に保護層が形成されることによりなる積層物と、
    前記積層物の表面の少なくとも前記保護層の面上に形成され、前記酸化物超電導層への過剰電流の迂回経路となる安定化層と、
    前記保護層の面上に形成される前記安定化層の面上に接着される金属テープとを備えることを特徴とした超電導テープ線。
  2. 前記金属テープをハンダで接着することを特徴とした請求項1に記載の超電導テープ線。
  3. 前記金属テープを非導電性の接着剤で接着することを特徴とした請求項1に記載の超電導テープ線。
  4. 前記接着剤が、さらに常温で接着可能であることを特徴とした請求項3に記載の超電導テープ線。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された超電導テープ線を用いたことを特徴とする超電導コイル。
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