WO2012105145A1 - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材およびその製造方法 Download PDF

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Definitions

  • a structure in which two stabilization layers are stacked is employed.
  • the silver stabilizing layer is also provided for the purpose of adjusting fluctuations in the amount of oxygen when the oxide superconducting layer is subjected to oxygen heat treatment.
  • the stabilization layer such as copper is provided for the purpose of functioning as a bypass for commutating the current of the oxide superconducting layer when the oxide superconducting layer attempts to transition from the superconducting state to the normal conducting state. ing.
  • a silver layer 7 is formed so as to cover the upper surface (that is, the upper surface of the oxide superconducting layer 3) and both side surfaces orthogonal to the width direction (silver composite laminate S1), and the metal stabilizing layer 8 is formed on the upper surface of the silver layer 7.
  • the oxide superconducting wire 10C includes a conversion coating 9C on the outer surface of the laminate S3 B are formed structure.
  • Top laminate S3 metal stabilization layer 8 is laminated on B silver composite laminate S1 is the upper surface (i.e., upper surface of the metal stabilization layer 8) side surfaces perpendicular to and the width direction (the metal stabilization layer 8 And both side surfaces of the silver layer 7) are covered with the chemical conversion film 9C.
  • the second step is performed by the same method as the manufacturing method of the oxide superconducting wire 10 of the first embodiment described above, thereby producing the silver-coated laminate S1.
  • the metal stabilization layer 8 is formed by laminating a metal tape formed of a highly conductive material such as copper on the silver layer 7P of the produced silver composite laminate S1 through solder or the like. Then, the stacked body S3 B is produced.
  • FIG. 7 is a cross-sectional perspective view schematically showing a fourth embodiment of the oxide superconducting wire according to the present invention.
  • the oxide superconducting wire 10D shown in FIG. 7 has the entire circumference of the superconducting laminate 5 on the outer surface of the superconducting laminate 5 formed by sequentially laminating the intermediate layer 2 and the oxide superconducting layer 3 on the substrate 1.
  • silver layer 7B is formed so as to cover the outer surface of the stack S4 B metal stabilization layer 8 is laminated on the silver layer 7B, conversion coating 9D covering the entire peripheral surface of the laminate S4 B is formed
  • conversion coating 9D covering the entire peripheral surface of the laminate S4 B is formed
  • the said laminated body was made into a cathode, the electrode was immersed as a positive electrode, electroplating was performed, and the 20-micrometer-thick copper plating layer ( A metal stabilizing layer) was formed on the outer periphery of the laminate.
  • a plating layer metal stabilization layer
  • the copper electroplating was carried out at a plating bath temperature of 25 ° C. and an immersion time of 18 minutes, so that the current density of the object to be plated (laminated body) was 5 A / dm 2 .

Abstract

酸化物超電導線材であって、基材、中間層、酸化物超電導層が順に積層された超電導積層体と、前記超電導積層体の外面のうち、少なくとも前記酸化物超電導層の上面に被着するように形成された銀層と、前記銀層を備えた前記超電導積層体の外面に、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤より形成された化成皮膜とを有することを特徴とする。

Description

酸化物超電導線材およびその製造方法
 本発明は、酸化物超電導線材およびその製造方法に関する。本願は、2011年1月31日に、日本に出願された特願2011-018979号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 近年になって発見されたRE-123系酸化物超電導体(REBaCu7-X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示し、電流損失が低いため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。また、この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、金属基材テープ上に酸化物超電導層を形成する方法が研究されている。
 酸化物超電導線材にあっては、酸化物超電導層上に銀で形成される薄い安定化層と、その上に設けられ、銅などの良導電性金属材料で形成される厚い安定化層との2層の安定化層を積層する構造が採用されている。前記銀の安定化層は、酸化物超電導層を酸素熱処理する際に、酸素量の変動を調節する目的のためにも設けられている。一方、前記銅などの安定化層は、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、前記酸化物超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能させるための目的で設けられている。
 2層構造の安定化層を形成する技術の一例として、酸化物超電導層の上にスパッタリングにより薄い銀の安定化層を設けた後、線材全体を硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬し、電気めっきにより銀の安定化層上に銅の安定化層を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。また、酸化物超電導層の上に銀の安定化層を設けた線材と銅製の安定化材テープとをはんだを介して重ね合わせて、それを加熱・加圧ロールに通すことによって、銀の安定化層上に銅の安定化層を形成する技術も知られている(特許文献2参照)。
特開2007-80780号公報 特開2009-48987号公報
 RE-123系酸化物超電導層の特定組成の材料は水分により劣化しやすく、線材を水分の多い環境に保管した場合、もしくは線材に水分が付着した状態のまま放置した場合に、酸化物超電導層に水分が浸入すると、超電導特性が低下する要因となる。
 引用文献1のようにめっき処理して銅の安定化層を形成した構造では、銅めっき部に欠陥があるとめっき欠陥部から水分が浸入して酸化物超電導層に達し、酸化物超電導層が劣化してしまう虞がある。
 引用文献2のように銀の安定化層上に銅製の安定化材テープを積層して銅の安定化層を形成する技術では、銅の安定化層にめっき欠陥部が形成される問題はない。しかし、銀の安定化層の上面のみが銅の安定化層で保護される構造であり、水分によりダメージを受けやすい酸化物超電導層の側面が外部に露呈しているため、製造の途中工程などで水分が浸入することにより超電導特性の低下を引き起こす虞がある。
 本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することを目的とする。
 本発明の第1様態の酸化物超電導線材は、基材、中間層、酸化物超電導層が順に積層された超電導積層体と、前記超電導積層体の外面のうち、少なくとも前記酸化物超電導層の上面に被着するように形成された銀層と、前記銀層を備えた前記超電導積層体の外面に、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤より形成された化成皮膜とを有する。
 本発明の第1様態の酸化物超電導線材は、銀層を備えた超電導積層体の外周面に化成皮膜が形成されている。
 この場合、酸化物超電導層が外部から遮蔽された構成を実現できる。従って、上記構成を有することで酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、その結果、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性が劣化することを防止できる。
 本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、前記超電導積層体の外周面全体に被着するように前記銀層が形成されることが好ましい。
 この場合、超電導積層体の外周全体を覆うように銀層および化成皮膜が形成されるため、さらに効果的に超電導積層体を外部から遮蔽できる。従って、より確実に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができるので、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがない。その結果、本発明の酸化物超電導線材は、より確実に超電導特性の劣化を防ぐことができる。
 また、本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、前記銀層の上に積層された金属安定化層を含み、前記化成皮膜が、前記銀層と前記金属安定化層とを覆うように形成されることが好ましい。
 この場合、酸化物超電導層の上に銀層と金属安定化層を備えるため、酸化物超電導層をさらに安定化することができる。また、酸化物超電導層の上面が、銀層、金属安定化層、および化成皮膜により被覆され、さらに効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる。従って、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなくなり、超電導特性が劣化することをより確実に防止できる。
 本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、金属安定化層を含み、前記銀層の上に、前記化成皮膜が前記銀層を覆うように形成され、前記化成皮膜を介して金属安定化層が積層されていることが好ましい。
 この場合、酸化物超電導層の上面が銀層、化成皮膜、および金属安定化層により被覆される構成となり、効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる。従って、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなくなり、超電導特性が劣化することを確実に防止できる。
 本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、前記金属安定化層が、金属テープの貼り合わせ又はめっきにより形成されていることが好ましい。
 金属安定化層が金属テープの貼り合わせより形成されている場合、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層の厚さを調整できる。その結果、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層を安定化するに充分な厚さを容易に確保でき、高い安定化効果を有する。一方、金属安定化層がめっきにより形成されている場合、銀層を備えた超電導積層体の全面を覆うように金属安定化層が形成される。そのため、本発明の酸化物超電導線材は、超電導積層体を外部からより効果的に遮蔽することができるので、水分による酸化物超電導層の劣化をさらに確実に抑制できる。
 また、本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、前記銀層の一部に剥離部が形成され、この剥離部を前記化成皮膜が覆っていることが好ましい。
 この場合、仮に銀層の一部に剥離部が形成されていた場合であっても、前記剥離部が化成皮膜により覆われているため、酸化物超電導層を化成皮膜で遮蔽できる。その結果、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層への水分の浸入を抑制でき、超電導特性の劣化を防ぐことができる。
 さらに、本発明の第1様態の酸化物超電導線材においては、前記含窒素複素環化合物が、イミダゾール系化合物であることが好ましい。
 本発明の第2様態の酸化物超電導線材の製造方法は、基材、中間層、酸化物超電導層が順に積層されることで形成された超電導積層体を準備する第1工程と、前記超電導積層体の外面のうち、少なくとも前記酸化物超電導層の上面に被着するように銀層を形成して銀複合積層体を作製する第2工程と、前記銀複合積層体を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより、前記銀複合積層体の外面に化成皮膜を形成する第3工程と、を備える。
 本発明の第2様態の酸化物超電導線材の製造方法は、銀複合積層体の外面に化成皮膜を形成する。
 この場合、酸化物超電導層が外部から遮蔽された構成の酸化物超電導線材を製造できる。結果として、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性が劣化することを防止できる酸化物超電導線材を提供できる。
 また、本発明の第2様態の酸化物超電導線材の製造方法においては、前記第2工程において、前記銀層を形成した後に、前記銀層の上に、金属安定化層を積層し、その後、前記第3工程において、前記銀層と前記金属安定化層を覆うように前記化成皮膜を形成することが好ましい。
 この場合、酸化物超電導層上に銀層と金属安定化層を形成する構成となるため、酸化物超電導層を安定化する効果が更に向上した酸化物超電導線材を製造できる。また、酸化物超電導層の上面が銀層、金属安定化層、および化成皮膜により被覆される構成の酸化物超電導線材が製造できるため、さらに効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる。その結果、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなくなり、超電導特性が劣化することをより確実に防ぐことができる酸化物超電導線材を提供できる。
 また、本発明の第2様態の酸化物超電導線材の製造方法においては、前記第3工程において、前記酸化物超電導層の上に形成された前記銀複合積層体の外面に化成皮膜を形成した後に、前記銀層の上に積層された前記化成皮膜を介して、金属安定化層を積層することが好ましい。
 この場合、酸化物超電導層の上面が銀層、化成皮膜、および金属安定化層により被覆される酸化物超電導線材が製造できるため、より効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる。その結果、本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することをより確実に防ぐことができる酸化物超電導線材を提供できる。
 また、本発明の第2様態の酸化物超電導線材の製造方法においては、前記含窒素複素環化合物として、イミダゾール系化合物を用いることが好ましい。
 本発明によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法が提供される。
本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を示す断面斜視図である。 図1に示す酸化物超電導線材の積層構造を模式的に示す構成図である。 銀層に剥離部がある場合の本発明に係る酸化物超電導線材の一例構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態を示す断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第3実施形態を示す断面斜視図である。 図5に示す酸化物超電導線材の積層構造を模式的に示す構成図である。 本発明に係る超電導線材の他の例を示す断面模式図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第4実施形態を示す断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第5実施形態を示す断面斜視図である。 イオンビームスパッタ法により銀層を成膜するための成膜装置構成と成膜状態の一例を示す説明図である。 プレッシャークッカー試験前の比較例1の酸化物超電導線材の外観写真である。 プレッシャークッカー試験24時間後の実施例1の酸化物超電導線材の外観写真である。 プレッシャークッカー試験24時間後の比較例1の酸化物超電導線材の外観写真である。 実施例3の酸化物超電導線材の銀層の剥離部付近の電子顕微鏡写真である。 実施例3の酸化物超電導線材の銀層の剥離部上の膜の分析結果を示す図であり、分析を行った剥離部の拡大写真である。 実施例3の酸化物超電導線材の銀層の剥離部上の膜の分析結果を示す図であり、剥離部のAg元素分布を示している。 実施例3の酸化物超電導線材の銀層の剥離部上の膜の分析結果を示す図であり、剥離部のBa元素分布を示している。 実施例3の酸化物超電導線材の銀層の剥離部上の膜の分析結果を示す図であり、剥離部のC元素分布を示している。 プレッシャークッカー試験24時間後の比較例4の酸化物超電導線材の外観写真である。
 以下、本発明に係る酸化物超電導線材及びその製造方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
 図1は本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を模式的に示す断面斜視図であり、図2は図1に示す酸化物超電導線材の積層構造を模式的に示す構成図である。
 図1及び図2に示す酸化物超電導線材10は、基材1の上に中間層2と酸化物超電導層3とを順次積層して形成される超電導積層体5の外面に、銀層7が形成され、この銀層7の外面に化成皮膜9が形成された構造を有している。銀層7は、超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)および幅方向に直交する両側面を覆うように形成されている。また、化成皮膜9は銀層7の外表面全体を覆うように形成されている。
 基材1は、通常の超電導線材の基材として使用し得る形状、材料であれば良く、形状は長尺のプレート状、シート状、又はテープ状であることが好ましく、材料は耐熱性の金属で形成されることが好ましい。また、前記耐熱性の金属の中でも、合金であることが好ましく、ニッケル(Ni)合金又は銅(Cu)合金であることがより好ましい。特に、市販品であればハステロイ(商品名、ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用されうる。また、基材1としてニッケル(Ni)合金などに集合組織を導入した配向金属基材を用い、その上に中間層2および酸化物超電導層3を形成してもよい。
 基材1の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10~500μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで強度が一層向上し、上限値以下とすることでオーバーオールの臨界電流密度を一層向上させることができる。
 中間層2は、酸化物超電導層3の結晶配向性を制御し、基材1中の金属元素の酸化物超電導層3への拡散を防止する。さらに、中間層2は、基材1と酸化物超電導層3との物理的特性(熱膨張率及び格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能し、その材料は、物理的特性が基材1と酸化物超電導層3との中間的な値を示す金属酸化物であることが好ましい。中間層2の具体的な材料としては、例えば、GdZr、MgO、ZrO-Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物が好ましい。
 中間層2は、単層であっても、複数層であっても良い。例えば、前記金属酸化物で形成される単層(金属酸化物層)である場合は、結晶配向性を有していることが好ましく、複数層である場合には、少なくとも最外層(最も酸化物超電導層3に近い層)が結晶配向性を有していることが好ましい。
 中間層2は、基材1側にベッド層が介在された複数層の構造を有していてもよい。ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するための層であり、その上に配置される膜の配向性を得るために用いられる。このようなベッド層は、必要に応じて配置され、その材料は、例えば、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ばれる)等から構成される。このベッド層は、例えば、スパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10~200nmである。
 さらに、本発明において、中間層2は、基材1側に拡散防止層とベッド層が積層された複数層の構造を有していてもよい。この場合、中間層2は、基材1とベッド層との間に拡散防止層が介在された構造を有する。拡散防止層は、基材1の構成元素拡散を防止する目的で形成された層で、その材料は、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から構成され、その厚さは、例えば10~400nmである。なお、拡散防止層の結晶性は限定されないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
 中間層2を構成する他の層及び酸化物超電導層3等を形成する際に、必然的に加熱等によって熱処理される。その場合であっても、上述のように基材1とベッド層との間に拡散防止層を介在させることにより、基材1の構成元素の一部がベッド層を介して酸化物超電導層3側に拡散することを効果的に抑制することができる。基材1とベッド層との間に拡散防止層を介在させる場合の、ベッド層及び拡散防止層の材料の組み合わせの具体例としては、拡散防止層としてAl、ベッド層としてYを用いる組み合わせを挙げることができる。
 また中間層2は、前記金属酸化物層の上に、さらにキャップ層が積層された複数層の構造を有していても良い。キャップ層は、酸化物超電導層3の配向性を制御する機能を有するとともに、酸化物超電導層3を構成する元素の中間層2への拡散、及び酸化物超電導層3積層時に使用するガスと中間層2との反応を抑制する機能等を有する。
 キャップ層は、前記金属酸化物層の表面に沿ってエピタキシャル成長し、その後、横方向(面内方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成された層であることが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層よりも高い面内配向性が得られる。
 キャップ層の材料は、上記機能を発現し得る材料であれば特に限定されないが、具体的な材料としては、例えばCeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が好ましい。キャップ層の材料がCeOである場合、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe-M-O系酸化物を含んだ材料であっても良い。
 キャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが好ましい。
 中間層2の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.1~5μmである。
 中間層2が、前記金属酸化物層の上にキャップ層が積層された複数層の構造である場合には、キャップ層の厚さは、通常、0.1~1.5μmである。
 中間層2は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、もしくはイオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法によって積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層3およびキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO-Y(YSZ)で形成される中間層2は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
 酸化物超電導層3は通常知られている組成で形成される酸化物超電導体を広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)で構成される材料、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan-1Cu4+2n+δで構成される組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体を用いても良い。
 酸化物超電導層3は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、もしくは電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等によって積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
 酸化物超電導層3の厚みは、0.5~5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
 超電導積層体5の上面(酸化物超電導層3の上面)および幅方向に直交する両側面を覆うように形成されている銀層7は、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さを1~30μm程度である。より詳細には、酸化物超電導層3の上に積層される銀層7Pの厚さは1~30μm程度であり、超電導積層体5の側面側に形成された銀層7Qの厚さは、通常、銀層7Pよりも薄く0.5~26μm程度である。なお、気相法により成膜された銀層7は、銀の粒子が超電導積層体5の表面(成膜面)に被着することで膜を形成している。そのため、銀層7は全体的に均一な膜ではなく、膜厚もしくは膜表面形状にバラつきがある場合もありうる。銀層7の形成方法の詳細については、後述する。
 銀層7を備える構成を採用する理由としては、銀は良導電性かつ酸化物超電導層3と接触抵抗が低く、良くなじむ点、及び、酸化物超電導層3に酸素をドープするアニール工程において、ドープした酸素を酸化物超電導層3から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。
 なお、図1および図2に示す例では銀層7(7Q)が、超電導積層体5の側面全体を覆っている例を示しているが、本発明はこの例に限定されない。銀層7は、少なくとも酸化物超電導層3の上面および側面を覆っていれば、後述する化成皮膜9が銀層7の表面上に形成される構成であるため、酸化物超電導層3を外部から遮蔽し、酸化物超電導層3に水分が浸入することを抑止できる。
 銀層7の外面に形成された化成皮膜9は、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤によって形成される。化成皮膜9の形成方法の詳細は後述するが、超電導積層体5の外面に銀層7が形成された銀層複合積層体S1を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤により処理することで、化成皮膜9を形成できる。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、銀および銅等の良導電性の金属材料と錯形成可能な含窒素複素環化合物とを含む金属表面処理剤であれば特に限定されず、金属の変色防止剤、防食剤、防錆剤、酸化防止剤、プレフラックス剤、もしくは封孔処理剤等として従来公知の表面処理剤を使用することができ、一般に市販されている処理剤を使用できる。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、水溶性、非水溶性(溶剤系)のどちらも使用できるが、環境負荷を低減できる点から水溶性の処理剤を用いることが好ましい。
 このような含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、超電導積層体5の外面に銀層7が形成された銀複合積層体S1を接触させることにより、銀複合積層体S1の外面に積層された銀層7の表面の銀と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応し、銀-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化し、銀層7の表面に化成皮膜9が形成される。化成皮膜9の詳細な化学構造は現時点では明らかではないが、銀-含窒素複素環化合物錯体を含む構造の高分子膜であると推定される。なお、後述の実施形態のように、超電導積層体5の外面に銅等によって構成される金属安定化層が形成された積層体を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理する場合は、外表面の銀だけでなく、外表面の銅の安定化層も金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物と反応する。また、銀層7の表面には、銀-含窒素複素環化合物錯体を含む化成皮膜9が形成され、銅の安定化層の表面には銅-含窒素複素環化合物錯体を含む化成皮膜が形成される。また、化成皮膜は、上述の銀錯体(または銅錯体)以外の化合物を含んでいても含んでいなくてもよい。化成皮膜の形成に用いる金属表面処理剤の種類により銀錯体(または銅錯体)以外の化合物も生成され、化成皮膜を構成する場合がある。
 化成皮膜9の厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 化成皮膜9を形成する金属表面処理剤が含有する含窒素複素環化合物としては、銀および銅等の良導電性を有する金属材料との錯形成が可能であり、且つ、窒素原子を含む複素環化合物であれば、特に限定されない。具体的な含窒素複素環化合物としては、銀層7と後述する銅系の金属安定化層との反応性が良いため、イミダゾール系化合物またはトリアゾール系化合物であることが好ましく、イミダゾール系化合物がより好ましい。
 化成皮膜9を形成する金属表面処理剤が含有する含窒素複素環化合物として適するイミダゾール化合物は、分子中にイミダゾール骨格を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、アルキルイミダゾール化合物、アリールイミダゾール化合物、アラルキルイミダゾール化合物、アルキルベンズイミダゾール化合物、アリールベンズイミダゾール化合物、及びアラルキルベンズイミダゾール化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
 前記アルキルイミダゾール化合物としては、1-デシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-オクチルイミダゾール、及び2-シクロヘキシルイミダゾール等が挙げられる。
 前記アリールイミダゾール化合物としては、1-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-トルイルイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-1-ベンジルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジルイミダゾール、2,4-ジフェニルイミダゾール、2,4-ジフェニル-5-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-(3,4-ジクロロフェニル)イミダゾール、2-フェニル-4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-メチルイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-フェニル-5-メチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、2-ノニル-4-フェニルイミダゾール、4-フェニル-5-デシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ベンジルイミダゾール、2-(1-ナフチル)イミダゾール、2-(2-ナフチル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-(2-ナフチル)イミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(1-ナフチル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、及び2-(4-ピリジル)-4,5-ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。
 前記アラルキルイミダゾール化合物としては、1-ベンジルイミダゾール、1-(4-クロロフェニル)メチル-2-メチルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、2-ベンジル-4-メチルイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)イミダゾール、2-(5-フェニルペンチル)イミダゾール、2-メチル-4,5-ジベンジルイミダゾール、1-(2,4-ジクロロフェニル)メチル-2-ベンジルイミダゾール、及び2-(1-ナフチル)メチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
 前記アルキルベンズイミダゾール化合物としては、1-ドデシル-2-メチルベンズイミダゾール、2-プロピルベンズイミダゾール、2-ペンチルベンズイミダゾール、2-オクチルベンズイミダゾール、2-ノニルベンズイミダゾール、2-ヘプタデシルベンズイミダゾール、2-ヘキシル-5-メチルベンズイミダゾール、2-ペンチル-5,6-ジクロロベンズイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンズイミダゾール、2-(2,4,4-トリメチルペンチル)ベンズイミダゾール、2-シクロヘキシルベンズイミダゾール、2-(5-シクロヘキシルペンチル)ベンズイミダゾール、2-フェノキシメチルベンズイミダゾール、2-(2-アミノエチル)ベンズイミダゾール、2,2´-エチレンジベンズイミダゾール、2-(メルカプトメチル)ベンズイミダゾール、及び2-ペンチルメルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
 前記アリールベンズイミダゾール化合物としては、1-フェニルベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)ベンズイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルベンズイミダゾール、2-オルソトリル-5,6-ジメチルベンズイミダゾール、2-(1-ナフチル)-5-クロロベンズイミダゾール、5-フェニルベンズイミダゾール、及び2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール等のアリールベンズイミダゾール化合物が挙げられる。
 前記アラルキルベンズイミダゾール化合物としては、1-ベンジルベンズイミダゾール、2-ベンジルベンズイミダゾール、2-(4-クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(4-ブロモフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(2,4-ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(3,4-ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-パラトリルメチル-5,6-ジクロロベンズイミダゾール、1-アリル-2-(4-クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)ベンズイミダゾール、2-(3-フェニルプロピル)-5-メチルベンズイミダゾール、2-(1-ナフチル)メチルベンズイミダゾール、2-(2-フェニルビニル)ベンズイミダゾール、2-(ベンジルメルカプト)ベンズイミダゾール、及び2-(2-ベンジルメルカプトエチル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
 化成皮膜9を形成する金属表面処理剤が含有する含窒素複素環化合物として適するトリアゾール系化合物としては、分子中にトリアゾール骨格を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体およびこれらの金属塩が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
 化成皮膜9を形成する金属表面処理剤には、これらの含窒素複素環化合物が溶媒に溶解された状態で含有されている。
 前記溶媒としては、上記した含窒素複素環化合物を完全に溶解させることができれば、特に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、及びジメチルホルムアミドなどのアミド類等を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の低減、取り扱いの容易さ、作業性の点で、水、水と混和する有機溶媒、もしくは水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
 含窒素複素環化合物は、金属表面処理剤中に、0.01~10重量%の割合、好ましくは0.1~5重量%の割合で含有されている。
 化成皮膜9を形成する金属表面処理剤は、前記含窒素複素環化合物以外に、有機酸、無機酸、アミン系化合物、無機塩基、金属塩、界面活性剤、もしくはキレート剤などを含有していてもよい。
 前記有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ラウリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、グリコール酸、グリオキシル酸、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、及びアクリル酸等が挙げられる。
 前記無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などが挙げられる。
 前記アミン系化合物としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミン、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2,4-ジフェニルイミダゾール、及び2-ウンデシルイミダゾールなどのアゾール類が挙げられる。
 前記無機塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
 前記金属塩としては、例えば、酢酸銅、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅塩、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛などの亜鉛塩、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属塩などが挙げられる。
 このような含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、市販品を使用でき、例えば、四国化成社製のタフエースF2(LX)PKなどのタフエースシリーズ等が挙げられる。また、東京化成工業社製の1,2,3-ベンゾトリアゾールを、所望の添加剤とともに水もしくは溶剤に溶かして金属表面処理剤とすることもできる。
 次に、本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法について説明する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法は、基材1、中間層2、酸化物超電導層3が順に積層されて形成される超電導積層体5を準備する第1工程と、超電導積層体5の外面に、少なくとも酸化物超電導層3の上面と側面に被着するように銀層7を形成して銀複合積層体S1を作製する第2工程と、銀複合積層体S1を、上記した含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤により処理することにより、銀層7の外面に化成皮膜9を形成する第3工程と、を備える。
 まず、前述した超電導積層体5を準備する(第1工程)。一例として、基材1上にスパッタ法で拡散防止層とベッド層を形成した後、このベッド層の上にIBAD法で中間層2を形成し、さらにPLD法でキャップ層と酸化物超電導層3とを形成することにより超電導積層体5を得ることができる。
 次に、超電導積層体5の上面(酸化物超電導層3の上面)と幅方向に直交する両側面に被着するように銀層7を形成して銀複合積層体S1を作製する(第2工程)。ここで、超電導積層体5の側面の銀層7Qは、少なくとも酸化物超電導層3の側面を覆うように被着していればよい。
 銀層7の形成方法は特に限定されず従来公知の方法を適用できるが、気相法により形成することが好ましい。気相法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、及び化学気相成長法(CVD法)が挙げられるが、比較的簡便に成膜が可能であり、コストも安価であるため、スパッタ法が特に好ましい。スパッタ法としては、イオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、もしくはマグネトロンスパッタ法のいずれの方法でもよい。
 スパッタ法により銀層7を形成する方法の一例として、イオンビームスパッタ法により銀をスパッタして、銀層を形成する場合について説明する。まず、超電導積層体5の酸化物超電導層3と銀のターゲットとを対向配置する。そして、この状態でイオンビームをターゲットに照射し、ターゲットの構成粒子である銀を叩き出す、もしくは蒸発させて、銀粒子を対向する超電導積層体5の酸化物超電導層3の上に堆積させて銀層7を成膜する。ここで、超電導積層体5の厚さは、通常、数100μm程度と薄いため、ターゲットからの銀粒子は超電導積層体5の側面側にも被着し、さらに銀粒子が超電導積層体5の幅方向に直交する側面にも被着し、銀側7Qが形成される。以上により、銀層7を形成することができる。なお、銀層7の成膜条件については、従来の方法を用いて、適宜調整すればよい。また、長尺テープ状の超電導積層体5に銀層7を成膜する場合には、スパッタ装置の内部に、長尺テープ状の超電導積層体5が巻回されたリールを含むテープ送り機構を設け、一方のリールから他方のリールに超電導積層体5を繰り出す間に銀層を成膜することで、長尺テープ状の超電導積層体5の全長にわたり銀層7を形成することができる。
 形成する銀層7の厚さは、1~30μm程度であり、より詳細には、酸化物超電導層3の上の銀層7Pの厚さは1~30μm程度であり、超電導積層体5の側面に形成された銀層7Qの厚さは、上記のようなスパッタ法等の気相法により形成された場合は、通常、銀層7Pよりも薄く、0.5~26μm程度である。なお、気相法により成膜された銀層7は、銀の粒子が超電導積層体5の表面(成膜面)に被着して膜を形成している。そのため、銀層7は全体的に均一な膜ではなく、膜厚もしくは膜表面形状にバラつきがある場合もありうる。
 次に、作製した銀複合積層体S1を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより、銀層7の外側に化成皮膜9を形成する(第3工程)。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、上述の処理剤を使用できる。中でも、含窒素複素環化合物としてイミダゾール系化合物、またはトリアゾール系化合物を含む金属表面処理剤を使用することが好ましく、特に、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤は、銀層7との反応性が良いため好適である。
 形成する化成皮膜9の厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 銀複合積層体S1を金属表面処理剤で処理する方法としては、銀複合積層体S1を上記金属表面処理剤に含浸する、銀複合積層体S1に上記金属表面処理剤を吹き付ける、もしくはスピンコーターを用いて塗布した後、乾燥する方法等が挙げられる。
 銀複合積層体S1を金属表面処理剤で処理する処理温度は、通常10~80℃、好ましくは15~70℃、より好ましくは20~60℃である。前記温度範囲で処理することにより、銀層7の表面に十分な化成皮膜を形成することができる。
 銀複合積層体S1を金属表面処理剤で処理する処理時間は、通常1秒~30分、好ましくは5秒~25分、より好ましくは10秒~20分である。前記処理時間で処理することにより、銀層7の表面に十分な皮膜を形成させることができる。
 形成する化成皮膜9の厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度であるが、適宜、処理方法、条件を変えて膜厚をコントロールすることができる。
 このような含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、超電導積層体5の外面に銀層7が形成された銀複合積層体S1とを接触させることにより、銀複合積層体S1の外周の銀層7の表面の銀と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応する。その反応によって、銀-含窒素複素環化合物錯体が形成されることで高分子化し、銀層7の表面に化成皮膜9が形成される。化成皮膜9の詳細な化学構造は現時点では明らかではないが、銀-含窒素複素環化合物錯体を含む構造の高分子膜であると推定される。
 以上の工程により、酸化物超電導線材10を製造できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10は、超電導積層体5の上面および側面を覆うように銀層7および化成皮膜9が形成されている構成であるため、酸化物超電導層3を含む超電導積層体5の上面及び側面を外部から遮蔽できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えることができ、その結果、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
 また、本実施形態の酸化物超電導線材10は、銀層7及び化成皮膜9により酸化物超電導層3が被覆された構成であるが、酸化物超電導線材10の運転温度として想定される77K(液体窒素温度)程度の極めて低温の状況下でも、熱収縮により、化成皮膜9に変形もしくはクラックが生じない。通常、高分子(樹脂)などの有機膜により被覆された超電導線材においては、液体窒素温度等の極めて低温状況下での使用によって、クラックの発生などが問題になることがあるが、驚くべきことに、本実施形態の酸化物超電導線材10では後述する実施例の結果が示すように、このような問題は生じない。化成皮膜9による被覆が液体窒素温度等の極めて低温状況下での使用にも耐えうる理由は現在のところ明らかではない。一方、化成皮膜9の厚さが数nm~数百nm程度と非常に薄いこと、及び銀層7の表面の銀と金属表面処理剤とが反応して、銀層7の表面に化成皮膜が形成されていることにより、銀層7と化成皮膜9との密着性が良好であること等が要因として推定される。
 さらに、本実施形態の酸化物超電導線材10は、上記のように薄い化成皮膜9に被覆された構成であるため、線材の小型化が可能であり、線材を巻銅などに巻回することでコイル加工して超電導コイルとして用いる際にも取り扱い性が良好である。
 また、本発明者の検討によれば、後述の実施例3に示すように、銀複合積層体S1を上記金属表面処理剤で処理すると、銀層7の一部がイオン化して銀-含窒素複素環化合物の高分子膜(錯体)を形成する。また、イオン化した銀の一部は凝集して被処理体(銀複合積層体S1)に被着する。そのため、仮に、銀層7の一部が剥離して剥離部が形成され、酸化物超電導層3の一部が露出している場合にも、凝集した銀と化成皮膜により銀層7の剥離部が埋められ、酸化物超電導層3を外部から遮蔽することができる。図3は、本実施形態の酸化物超電導線材において、仮に銀層7の一部が剥離していた場合の一例を模式的に示す斜視図である。図3に示す形態の酸化物超電導線材10Aは、銀層7の剥離部17が化成皮膜9により被覆されているため、酸化物超電導層3が化成皮膜9により外部から遮蔽された構造を有する。そのため、後述の実施例3の結果が示すように、銀層7に剥離部17がある場合にも、酸化物超電導層3への水分の浸入および超電導特性の劣化を抑制できる。
 このような銀層7の剥離部17は頻繁には形成されないが、製造工程中に銀層7の一部が僅かに剥離してしまう場合に形成されうる。例えば、中間層2及び酸化物超電導層3の成膜等の製造工程の途中に混入した異物が、除去されず酸化物超電導層3に付着した状態で銀層7を成膜した場合には、該異物の剥離に伴い銀層7の一部も剥離してしまうような場合がある。異物の混入を防ぐためには、線材の洗浄が有効であるが、線材に付着した異物はエアー洗浄などでは除去しにくく、また、線材表面をブラッシングして洗浄すると、表面の膜を傷つけてしまい、特性が劣化するおそれがある。線材の長尺化もしくは製造本数の増加に伴い、銀層7に剥離部が形成される可能性が高くなるため、銀層7への剥離部の導入を完全に無くすことよりも、銀層7形成後に剥離部を修復することがより現実的である。
 本実施形態の酸化物超電導線材およびその製造方法によれば、後述の実施例に示すように、万が一銀層に剥離部が導入された場合にも、化成皮膜により被覆する構成であることにより、酸化物超電導層を外部から完全に遮蔽できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法によれば、製造工程の簡略化、不良品率の低下、及び生産性の向上が望める。
[第2実施形態]
 図4は本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態を模式的に示す断面斜視図である。
 図4に示す酸化物超電導線材10Bは、基材1の上に中間層2、酸化物超電導層3を順次積層して形成される超電導積層体5の外面に、銀層7Bが形成され、この銀層7の外側に化成皮膜9Bが形成された構造を有している。銀層7Bは、超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)を覆う銀層7Pと、超電導積層体5の幅方向に直交する両側面を覆う銀層7Qと、超電導積層体5の下面(すなわち、基材1の裏面)を覆う銀層7Rとで構成されている。化成皮膜9は銀層7の外面上に形成されており、超電導積層体5の全周を覆っている。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、超電導積層体5の下面(基材1の裏面)側も、銀層7および化成皮膜9により被覆されている点で、第1実施形態の超電導線材10とは異なっている。図4において、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
 超電導積層体5の外周面を覆うように形成されている銀層7Bは、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さは1~30μm程度である。より詳細には、酸化物超電導層3の上に積層された銀層7Pの厚さは1~30μm程度であり、超電導積層体5の側面側および裏面側に形成された銀層7Qおよび7Rの厚さは、通常、銀層7Pよりも薄く、0.5~26μm程度である。なお、気相法により成膜された銀層7Bは、銀の粒子が超電導積層体5の表面(成膜面)に被着して膜を形成している。そのため、銀層7Bは全体的に均一な膜ではなく、膜厚もしくは膜表面形状にバラつきがある場合もありうる。銀層7Bの形成方法の詳細については、後述する。
 銀層7Bの外面上に形成された化成皮膜9Bは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10に含まれる化成皮膜9と同様に、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤により形成されている。化成皮膜9Bは、超電導積層体5の外面に銀層7Bが形成された銀層複合積層体S2を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することによって形成される。
 化成皮膜9Bの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、超電導積層体5の外周面全体を覆うように銀層7Bおよび化成皮膜9Bが形成されている。そのため、上述の第1実施形態の酸化物超電導線材10よりも、さらに効果的に超電導積層体5を外部から遮蔽できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Bによれば、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10のもたらす効果に加え、下面も外部から遮蔽できるという効果も得られ、より確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑える。その結果、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性の劣化をより効果的に防ぐことができる。
 次に、本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法について説明する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、基材1、中間層2、酸化物超電導層3が順に積層されることで形成された超電導積層体5を準備する第1工程と、超電導積層体5の外面の全周に被着するように銀層7Bを形成して銀複合積層体S2を形成する第2工程と、銀複合積層体S2を、上記した含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより、銀層7Bの外面に化成皮膜9Bを形成する第3工程と、を備える。
 まず、前述した超電導積層体5を準備し(第1工程)、超電導積層体5の外面の全体を覆うように銀層7Bを形成して銀複合積層体S2を作製する(第2工程)。
 銀層7Bの形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用できるが、気相法により形成することが好ましい。気相法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、及び化学気相成長法(CVD法)が挙げられるが、比較的簡便に成膜が可能であり、コストも安価であるため、スパッタ法が特に好ましい。スパッタ法としては、イオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、もしくはマグネトロンスパッタ法のいずれの方法でもよい。
 スパッタ法により銀層7Bを形成する方法の一例として、イオンビームスパッタ法により銀をスパッタして銀層7Bを成膜する方法について説明する。
 図9は、イオンビームスパッタ法により超電導積層体5の全外面を覆うように銀を成膜する場合に使用される成膜装置の一例を示す概略構成図である。
 図9に示す成膜装置50は、基材1、中間層2、酸化物超電導層3が順に積層されて構成されたテープ状の超電導積層体5を、長手方向に送って連続成膜することができる装置である。
 成膜装置50は、テープ状の超電導積層体5が巻回されたリール等の巻回部材を複数個同軸的に配列して構成されるテープ送り機構と、超電導積層体5に対して銀層7Bを形成する第1の成膜系56と、及び第2の成膜系57とを備えている。また、前記テープ送り機構は、間隔を空けて対向配置された一対の第1ロール54及び第2ロール55と、第1ロール54及び第2ロール55より構成される超電導積層体5が走行する走行系51と、走行系51に超電導積層体5を送り出す送出リール52と、走行系51から排出される超電導積層体5を巻き取る巻取リール53とを有している。成膜装置50は真空容器G1に収容されており、真空容器G1には真空排気装置G2が接続され、この真空排気装置G2により真空容器G1内を所定の圧力に減圧する。
 第1の成膜系56と第2の成膜系57は、走行系51を走行する超電導積層体5を挟んで対向配置されている。第1の成膜系56は、第1ロール54側から第2ロール55側に向かう直線経路(図9中、矢印Aで示す順方向の往路)を走行する超電導積層体5に設けられた酸化物超電導層3と対向するように配置された第1のターゲット56aと、第1のターゲット56aにイオンを照射する第1のスパッタビーム照射装置56bとを備えている。第2の成膜系57は、第2ロール55側から第1ロール54側に向かう直線経路(図9中、矢印Bで示す逆方向の復路)を走行する超電導積層体5に設けられた酸化物超電導層3と対向するように配置された第2のターゲット57aと、第2のターゲット57aにイオンを照射する第2のスパッタビーム照射装置57bとを備えている。第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aは、銀より構成されている。
 この形態では、第1ロール54は、送出リール52と巻取リール53との間に設けられ、第2ロール55は、第1ロール54と間隔を空けて対向配置されている。この形態において、第1ロール54及び第2ロール55は回転中心軸の方向が鉛直方向に配置されている。また、第1ロール54の周面及び第2ロール55の周面にはテープ状の超電導積層体5が、第1ロール54と第2ロール55との間を複数回、相互に間を空けながら周回するように巻き付けられる。さらに、周回された超電導積層体5は、酸化物超電導層3の表面を外周側にして複数周(図9に示す例では7周)、各周がレーストラック状になるように複数列が互いに間隔を空けて並設した状態で掛け渡されている。
 第1ロール54、第2ロール55、送出リール52、及び巻取リール53を駆動装置(図示略)により互いに同期して駆動させることにより、送出リール52から送り出された超電導積層体5が第1ロール54の周面上に供給され、第1ロール54及び第2ロール55にガイドされて各周においてレーストラック状に複数周走行した後、巻取リール53に巻き取られる。超電導積層体5が走行系51をレーストラック状に走行している間、超電導積層体5には、第1の成膜系56及び第2の成膜系57によって、それぞれ、イオンの照射により第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aから叩き出された、もしくは蒸発した各ターゲット56a、57aの構成粒子である銀が成膜される。
 図9に示す構成の成膜装置50を用いてテープ状の超電導積層体5の全周を覆うように銀層7Bを成膜するには、第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aを所定の位置に設置し、次いで、送出リール52に巻回されている超電導積層体5を引き出しながら、第1ロール54及び第2ロール55に順次、相互に間隔を空けなら複数回巻回され、その後、超電導積層体5の先端側を、テープ状の超電導積層体5を巻き取ることができる巻取リール53に接続する。
 これによって、走行系51を構成する一対の第1ロール54及び第2ロール55に巻回された超電導積層体5が、第1ロール54及び第2ロール55を周回し、第1のターゲット56aに対向する位置および第2のターゲット57aに対向する位置に複数列並んで移動する。その後、真空排気装置を駆動することで、真空容器内を減圧する。
 次に、駆動手段(図示略)を作動させて、第1ロール54、第2ロール55、送出リール52、及び巻取リール53を互いに同期して駆動させることにより、走行系51に超電導積層体5を走行させる、第1のスパッタビーム照射装置56b及び第2のスパッタビーム照射装置57bを作動させる。
 これにより、第1のスパッタビーム照射装置56bから第1のターゲット56aにイオンを照射し、第1のターゲット56aの構成粒子である銀を叩き出す、もしくは蒸発させて、第1の成膜系56を図9中矢印A方向に走行中の超電導積層体5の酸化物超電導層3側の表面上に堆積する。また、それと同時に、第2のスパッタビーム照射装置57bから第2のターゲット57aにイオンを照射し、第2のターゲット57aの構成粒子である銀を叩き出す、もしくは蒸発させて、第2の成膜系57を図9中矢印B方向に走行中の超電導積層体5の酸化物超電導層3側の表面上に堆積する。
 この際、走行系51を走行する超電導積層体5は、図9に示すように互いに間隔を空けて複数レーンが並設した状態で第1ロール54及び第2ロール55に複数周掛け渡されている。そのため、イオンの照射により第1のターゲット56aから叩き出された、もしくは蒸発された銀粒子は、第1の成膜系56を走行中の複数列が互いに間隔を空けて並設された超電導積層体5間の隙間を通り抜けることで、第1の成膜系56と走行系51を介して対向する第2の成膜系57を走行中の超電導積層体5の裏面まで到達する。さらに、超電導積層体5の裏面まで到達した上記銀粒子は、第2の成膜系57を走行中の超電導積層体5の裏面上(基材1側)に堆積する。同様に、イオンの照射により第2のターゲット57aから叩き出された、もしくは蒸発された銀粒子は、第2の成膜系57を走行中の複数列が互いに間隔を空けて並設された超電導積層体5間の隙間を通り抜けることで、第2の成膜系57と走行系51を介して対向する第1の成膜系56を走行中の超電導積層体5の裏面まで到達する。さらに、超電導積層体5の裏面まで到達した上記銀粒子は、第2の成膜系56を走行中の超電導積層体5の裏面上(基材1側)に堆積する。また、超電導積層体5の厚さは、通常数100μm程度と薄いため、第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aより叩き出された銀粒子は、超電導積層体5の側面側にも積層されるため、超電導積層体5の全面に亘って銀がスパッタされる。
 超電導積層体5は、走行系51を走行中にその全面に銀層7Bが形成された後、巻取リール53に巻き取られる。
 以上の工程により、超電導積層体5の全周を覆うように銀層7Bを形成して銀複合積層体S2を作製できる。
 図9に示す構成の成膜装置50を使用して銀層7Bを形成するならば、イオンの照射により第1のターゲット56a及び第2のターゲット57aから叩き出された、もしくは蒸発された銀粒子を、良好な収率で超電導積層体5の表面、裏面、及び両側面に堆積させることができ、生産工程の短縮化、及びターゲットの有効利用が可能となる。
 次に、作製した銀複合積層体S2を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより、銀層7Bの外側に化成皮膜9Bを形成する(第3工程)。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、上記した処理剤を使用できる。中でも、銀層7Bおよび後述する銅系の金属安定化層との反応性が良い特性を有する含窒素複素環化合物として、イミダゾール系化合物、またはトリアゾール系化合物を含む金属表面処理剤を使用することが好ましい。特に、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤はより好適である。
 形成する化成皮膜9Bの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 銀複合積層体S2を金属表面処理剤で処理する方法および条件は、前記第1実施形態の場合と同様である。
 前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、超電導積層体5の外面に銀層7Bが形成された銀複合積層体S2とを接触させることにより、銀複合積層体S2の外周の銀層7Bの表面の銀と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応し、銀-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化し、銀層7Bの表面に化成皮膜9Bが形成される。
 以上の工程により、本実施形態の酸化物超電導線材10Bを製造できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法によれば、超電導積層体5の外面全体を覆うように銀層7Bおよび化成皮膜9Bを形成する。そのため、上述の第1実施形態よりも、さらに効果的な遮蔽構造を有している。従って、本実施形態の製造方法によれば、上記第1実施形態のもたらす効果と比べて、より確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えることができる。その結果、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性の劣化を防止できる酸化物超電導線材を提供できる。
[第3実施形態]
 図5は本発明に係る酸化物超電導線材の第3実施形態を模式的に示す断面斜視図であり、図6Aは図5に示す酸化物超電導線材の積層構造を模式的に示す構成図である。
 図5及び図6Aに示す積層体S3は、基材1の上に中間層2、酸化物超電導層3を順次積層して形成される超電導積層体5の外面のうち、超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)および幅方向に直交する両側面を覆うように銀層7が形成され(銀複合積層体S1)、この銀層7の上面に金属安定化層8が積層された構造を有している。また、酸化物超電導線材10Cは、積層体S3の外面に化成皮膜9Cが形成された構造を有している。銀複合積層体S1の上面に金属安定化層8が積層された積層体S3は、その上面(すなわち、金属安定化層8の上面)および幅方向に直交する両側面(金属安定化層8の両側面および銀層7の両側面)が化成皮膜9Cで被覆されている。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cは、前記第1実施形態の酸化物超電導線材10の構成と比較して、超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)に形成された銀層7と化成皮膜9との間に金属安定化層8が介在されている点で異なっている。図5及び図6Aにおいて、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
 銀層7のうち、酸化物超電導層3上の銀層7P上に積層された金属安定化層8は、良導電性の金属材料で形成され、酸化物超電導層3が超電導状態から常電導状態に遷移する際、銀層7とともに、酸化物超電導層3の電流が転流するバイパスとして機能する。
 金属安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有する材料であればよく、特に限定されない。具他的には、銅、黄銅(Cu-Zn合金)、Cu-Ni合金等の銅合金、もしくはステンレス等の比較的安価な材料を用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることから銅が好ましい。
 なお、酸化物超電導線材10Cを超電導限流器に使用する場合は、金属安定化層8は比較的抵抗が高い金属材料によって構成されることが好ましく、Ni-Cr等のNi系合金などを使用できる。
 金属安定化層8の形成方法は特に限定されず、例えば、銅などの良導電性材料で形成される金属テープを、半田などの接合剤を介して銀層7上に積層することにより形成できる。
 金属安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10~300μmに設定することが好ましい。10μm以上である場合、酸化物超電導層3を安定化する一層高い効果が得られ、30μm以下である場合、酸化物超電導線材10Cを薄型化できる。
 化成皮膜9Cは、金属安定化層8の上面を覆う化成皮膜9Pと、金属安定化層8の両側面を覆う化成皮膜9Qと、超電導積層体5の側面側の銀層7Qを覆う化成皮膜9Qとで構成されている。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cの化成皮膜9Cは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10に設けられた化成皮膜9と同様に、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することによって形成されている。化成皮膜9Cは、銀複合積層体S1の上面に金属安定化層8が積層された積層体S3を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより形成される。
 前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、銀複合積層体S1上に金属安定化層8が積層された積層体S3を接触させることにより、積層体S3の外表面の銀層7Qの表面の銀および金属安定化層8の表面の金属(例えば、銅)と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応する。そのうち、銀層7Qの表面では銀-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化し、銀層7Qの表面に化成皮膜9Qが形成される。一方、銅などの金属安定化層8の表面では銅-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化することで、金属安定化層8の上面に化成皮膜9Pが、金属安定化層8の側面に化成皮膜9Qがそれぞれ形成される。
 化成皮膜9Cの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 なお、図5および図6Aに示す例では化成皮膜9P、9Q、9Qの厚さが同程度である例を示しているが、本発明はこの例に限定されず、化成皮膜9Cの厚さは不均一であってもよい。化成皮膜9Cの厚さは、積層体S3の表面金属と使用する金属表面処理剤の金属との反応性により異なる。例えば、銀よりも銅との反応性が高い金属表面処理剤を用いて化成皮膜9Cを形成した場合は、銅の金属安定化層8の表面に形成される化成皮膜9P、9Qの厚さは、銀層7の表面に形成される化成皮膜9Qの厚さよりも厚くなる。
 次に、本実施形態の酸化物超電導線材10Cの製造方法について説明する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cの製造方法は、まず、前述の第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法と同様の方法で第2工程までを行い、銀被覆積層体S1を作製する。その後、作製した銀複合積層体S1の銀層7P上に、銅などの良導電性材料で形成される金属テープを、半田などを介して積層することにより金属安定化層8を形成することで、積層体S3を作製する。
 その後、銀複合積層体S1上に金属安定化層8を積層した積層体S3を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより積層体S3の外面に化成皮膜9Cを形成する(第3工程)。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、上記した処理剤を使用できる。中でも、銀層7および銅系の金属安定化層8との反応性が良いため、含窒素複素環化合物としてイミダゾール系化合物またはトリアゾール系化合物を含む金属表面処理剤を使用することが好ましく、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤は特に好適である。
 形成する化成皮膜9Cの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 積層体S3を金属表面処理剤で処理する方法および条件は、前記第1実施形態の場合と同様である。
 以上の工程により、本実施形態の酸化物超電導線材10Cを製造できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cは、前記第1実施形態の酸化物超電導線材10の構成に加え、酸化物超電導層3の上に積層された銀層7の上に金属安定化層8が形成された構成である。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Cによれば、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10のもたらす効果に加え、酸化物超電導層3を安定化する効果が更に高まる。また、酸化物超電導層3の上面が銀層7、金属安定化層8、および化成皮膜9により被覆されているため、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10よりも、さらに確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
 また、金属安定化層8が金属テープを貼り合わせることにより形成されており、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層8の厚さを調整できる。したがって、酸化物超電導層3を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材10Cを作製できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cは、銀被覆積層体5の上面(銀層7Pの上面)に金属安定化層8が積層された積層体S3の外面全体に、化成皮膜9Cが形成されている。一方、本発明においては、銀層7の表面上のみに化成皮膜が形成される構成も作製できる。
 図6Bは、本発明に係る酸化物超電導線材の他の例を示す断面斜視図である。図6Bに示す酸化物超電導線材10Cは、基材1の上に中間層2、酸化物超電導層3を順次積層して形成される超電導積層体5の外面のうち、超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)および幅方向に直交する両側面を覆うように銀層7が形成され、銀層7の外面に化成皮膜9Cが形成され、この銀層7の上面に化成皮膜9Cを介して金属安定化層8が積層された構造を有している。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cは、前記第1実施形態の酸化物超電導線材10の構成に加え、酸化物超電導層3の上に積層された銀層7P上に、化成皮膜9Cを介して金属安定化層8が積層された構成を有している。図6Bにおいて、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10および上記第3実施形態の酸化物超電導線材10Cと同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10と同様に、超電導積層体5の外面のうち、超電導積層体5の上面および側面を覆うように銀層7および化成皮膜9が形成されている。したがって、酸化物超電導層3を含む超電導積層体5の上面及び側面が外部から遮蔽できる。このような構造を有することで、酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。また、酸化物超電導層3の上面が銀層7P、化成皮膜9C、および金属安定化層8により被覆されているため、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10よりも、さらに確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Cを製造するには、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法と同様の方法で銀被覆積層体S1を作製した後に、銀被覆積層体S1の外面に化成皮膜9Cを形成し、さらに、この銀被覆積層体S1の銀層7Pの上に積層された化成皮膜9Cの上に金属安定化層8を形成すればよい。金属安定化層8の形成方法は、上記第3実施形態の金属安定化層8の形成方法と同様である。
 なお、図6Bに示す例では、超電導積層体5の上面(酸化物超電導層3の上面)および側面に銀層7が形成されている例を示しているが、本発明はこの例に限定されない。
 図4に示す上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bのように、超電導積層体5の全外面を覆うように銀層7Bが形成され、銀層7Bの外面に化成皮膜が形成されていてもよい。
 この場合、上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの構成に加え、酸化物超電導層3の上に積層された銀層7P上に、化成皮膜を介して金属安定化層8が積層される。そのため、上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bよりも、さらに確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
 上述の構造の酸化物超電導線材を製造するには、上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法と同様の方法で銀被覆積層体S2を作製した後、前記銀被覆積層体S2の銀層7Pの上に積層された化成皮膜9Bの上に金属安定化層8を形成すればよい。金属安定化層8の形成方法は、上記第3実施形態の金属安定化層8の形成方法と同様である。
[第4実施形態]
 図7は本発明に係る酸化物超電導線材の第4実施形態を模式的に示す断面斜視図である。
 図7に示す酸化物超電導線材10Dは、基材1の上に中間層2と酸化物超電導層3を順次積層して形成される超電導積層体5の外面に、超電導積層体5の全周を覆うように銀層7Bが形成され、この銀層7Bの上に金属安定化層8が積層された積層体S4の外面に、積層体S4の全周面を覆う化成皮膜9Dが形成された構造を有している。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Dは、前記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの構成と比較して、酸化物超電導層3上に形成された銀層7Pと化成皮膜9との間に、第3実施形態で上述した金属安定化層8が介在されている点で異なっている。図7において、前記第1~第3実施形態の酸化物超電導線材10、10B、10Cと同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
 化成皮膜9Dは、金属安定化層8の上面を覆う化成皮膜9Pと、金属安定化層8の両側面を覆う化成皮膜9Qと、超電導積層体5の側面側の銀層7Qを覆う化成皮膜9Qと、超電導積層体5の基材1側(下面)の銀層7Rを覆う化成皮膜9Rとを含んでいる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Dの化成皮膜9Dは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10の化成皮膜9と同様に、銀複合積層体S2の上面に金属安定化層8が積層された積層体S4を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤によって処理することで形成されている。
 前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、銀複合積層体S2の上面に金属安定化層8が積層された積層体S4とを接触させることにより、積層体S4の外表面の銀層7Q並びに7Rの表面の銀、及び金属安定化層8の表面の金属(例えば、銅)と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応する。そして、銀層7Q上および銀層7Rの表面では銀-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化することで、銀層7Qの表面に化成皮膜9Qが、銀層7Rの表面に化成皮膜9Rがそれぞれ形成される。また、銅などの金属安定化層8の表面では銅-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化することで、金属安定化層8の上面に化成皮膜9Pが、金属安定化層8の側面に化成皮膜9Qがそれぞれ形成される。
 化成皮膜9Dの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 なお、図7に示す例では化成皮膜9P、9Q、9Q、9Rの厚さが同程度である例を示しているが、本発明はこの例に限定されず、化成皮膜9Dの厚さは不均一であってもよい。化成皮膜9Dの厚さは、積層体S4の表面金属と使用する金属表面処理剤の金属との反応性により異なる。例えば、銀よりも銅との反応性が高い金属表面処理剤を用いて化成皮膜9Dを形成した場合は、銅の金属安定化層8の表面に形成される化成皮膜9P、9Qの厚さは、銀層7の表面に形成される化成皮膜9Q、9Rの厚さよりも厚くなる。
 次に、本実施形態の酸化物超電導線材10Dの製造方法について説明する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Dの製造方法は、まず、前述の第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法と同様の方法で第2工程までを行い、銀被覆積層体S2を作製する。その後、作製した銀複合積層体S2の銀層7P上に、銅などの良導電性材料で形成される金属テープを、半田などを介して積層することにより金属安定化層8を形成することで、積層体S4を作製する。
 その後、銀複合積層体S2上に金属安定化層8を積層した積層体S4を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより積層体S4の外面に化成皮膜9Dを形成する(第3工程)。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、上記した処理剤を使用できる。中でも、銀層7Bおよび銅系の金属安定化層8との反応性が良いため、含窒素複素環化合物としてイミダゾール系化合物またはトリアゾール系化合物を含む金属表面処理剤を使用することが好ましく、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤は特に好適である。
 形成する化成皮膜9Dの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 積層体S4を金属表面処理剤で処理する方法および条件は、前記第1実施形態の場合と同様である。
 以上の工程により、本実施形態の酸化物超電導線材10Dを製造できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Dは、超電導積層体5の外周面全体を覆うように銀層7Bおよび化成皮膜9Dが形成されている。そのため、上述の第1実施形態の酸化物超電導線材10よりも、さらに効果的に超電導積層体5を外部から遮蔽できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Dによれば、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10のもたらす効果と比べて、より確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えることができる。その結果、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性の劣化を一層効果的に防止できる。
 また、本実施形態の酸化物超電導線材10Dは、前記第1実施形態の酸化物超電導線材10の構成に加え、酸化物超電導層3の上に積層された銀層7Pの上に金属安定化層8が形成された構成である。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Dによれば、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10のもたらす効果に加え、酸化物超電導層3を安定化する効果が更に高まる。さらに、金属安定化層8が金属テープを貼り合わせることより形成されており、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層8の厚さを調整できる。したがって、酸化物超電導層3を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材10Dとなる。
[第5実施形態]
 図8は本発明に係る酸化物超電導線材の第5実施形態を模式的に示す断面斜視図である。
 図8に示す酸化物超電導線材10Eは、基材1の上に中間層2、酸化物超電導層3を順次積層して形成される超電導積層体5の外面に、超電導積層体5の全周を覆うように銀層7Bが形成された銀複合積層体S2を中心に備える。さらに、この銀複合積層体S2の外周面全体に、めっき法により形成された金属安定化層8Eと化成皮膜9Eとが順次被覆された構造を有している。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Dは、前記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの構成と比較して、超電導積層体5の全周を覆う銀層7Bと化成皮膜9との間に、めっき法により形成された金属安定化層8Eが介在されている点で異なっている。図8において、前記第1~第4実施形態の酸化物超電導線材10、10B、10C、10Dと同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
 銀複合積層体S2の外周を覆う金属安定化層8Eは、酸化物超電導層3が超電導状態から常電導状態に遷移する際、銀層7Bとともに、酸化物超電導層3の電流が転流するバイパスとして機能する。
 金属安定化層8Eは、電気めっきにより形成されている。金属安定化層8Eを構成する材料としては、良導電性の金属が好ましく、Cu、Alなどが挙げられ、高い導電性を有するためCuが特に好ましい。金属安定化層8Eの厚さは特に限定されず、適宜変更可能であるが、10~100μm程度に設定することができ、20μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。金属安定化層8Eの厚さが10μm以上である場合、酸化物超電導層3を安定化する一層高い効果が得られ、100μm以下である場合、酸化物超電導線材10Dを薄型化できる。
 化成皮膜9Eは、金属安定化層8Eの外周面を覆うように形成されている。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Eの化成皮膜9Eは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10の化成皮膜9と同様に、銀複合積層体S2の外周が金属安定化層8Eにより被覆された被覆体を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより形成されている。
 前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤と、銀複合積層体S2の外周が金属安定化層8Eにより被覆された被覆体とを接触させることにより、前記被覆体の外表面の金属安定化層8Eの表面の金属(例えば、銅)と、金属表面処理剤中の含窒素複素環化合物とが反応する。そして、銅などの金属安定化層8Eの表面で銅-含窒素複素環化合物錯体を形成して高分子化することで、金属安定化層8Eの表面に化成皮膜9Eが形成される。
 化成皮膜9Eの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 次に、本実施形態の酸化物超電導線材10Eの製造方法について説明する。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Eの製造方法は、まず、前述の第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法と同様の方法で第2工程までを行い、銀被覆積層体S2を作製する。
 さらに、作製した銀被覆積層体S2をめっき浴に浸漬させて電気めっきを行うことにより、銀被覆積層体S2の全周面を覆う金属安定化層8Eを形成する。金属安定化層8EはCuまたはAlより形成されていることが好ましく、Cuより形成されていることがより好ましい。
 金属安定化層8EをCuのめっきより形成する場合、銀被覆積層体S2を硫酸銅水溶液で構成されるめっき浴に浸漬させて電気めっきを行うことにより、銀被覆積層体S2の全周面を覆ってCuの金属安定化層8Eを形成することができる。
 その後、銀複合積層体S2の外周を金属安定化層8Eにより被覆した被覆体を、前述の含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより前記被覆体の外側に化成皮膜9Eを形成する(第3工程)。
 含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤としては、上記した処理剤を使用できる。中でも、金属安定化層8Eとの反応性が良いため、含窒素複素環化合物としてイミダゾール系化合物またはトリアゾール系化合物を含む金属表面処理剤を使用することが好ましく、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤は特に好適である。
 形成する化成皮膜9Eの厚さは特に限定されず、例えば0.1nm~3.0μm程度である。
 銀複合積層体S2の外周面を金属安定化層8Eにより被覆した被覆体を金属表面処理剤で処理する方法および条件は、前記第1実施形態の場合と同様である。
 以上の工程により、本実施形態の酸化物超電導線材10Eを製造できる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Eは、前記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの構成と比較して、超電導積層体5の全周を覆う銀層7Bと化成皮膜9との間に金属安定化層8Eが設けられる点で異なっている。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Eによれば、上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bの効果に加え、酸化物超電導層3を安定化する効果が更に高まる。また、超電導積層体5の全周が銀層7B、金属安定化層8Eおよび化成皮膜9Eにより被覆されているため、上記第2実施形態の酸化物超電導線材10Bよりも、さらに効果的に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することをより確実に防ぐことができる。
 前述の特許文献1の技術のように、超電導積層体の超電導層の上に銀層を形成した後、電気めっきにより積層体の外周に安定化層を形成して、超電導線材の安定化および密閉構造を実現しようとする技術が知られている。しかし、本発明者の検討によれば、万が一銀層に数十μm程度の大きな剥離部が形成された状態で、銀層の外側に電気めっきにより金属安定化層を形成した場合には、前記剥離部が金属安定化層により充分に埋められないような場合があることが明らかとなった。これは、このように大きな剥離部が形成された場合、剥離部で露出している酸化物超電導層にめっきが付着し難く、めっき層(金属安定化層)で酸化物超電導層を充分に保護できないことが原因であると考えられる。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Eは、後述の実施例5に示すように、仮に、銀層に数十μm程度の大きな剥離部が形成され、めっき層(金属安定化層8E)により前記剥離部が充分に埋められないような場合にも、化成皮膜により金属安定化層8Eを被覆することにより、酸化物超電導層を外部から完全に遮蔽し、酸化物超電導層が水分により劣化することを抑制できる。
 めっき法により形成された金属安定化層8Eでも埋めきれないような剥離部が銀層7Bにある場合にも、化成皮膜9Eを形成することにより酸化物超電導層3を外部から遮蔽する構造を実現できる理由としては、次の理由が考えられる。すなわち、本実施形態の酸化物超電導線材10Eは、前記第1実施形態および後述の実施例3に示す酸化物超電導線材の場合と同様に、化成皮膜9Eを形成する際に上記金属表面処理剤で処理すると、銀層7Bあるいは金属安定化層8Eの一部がイオン化して、銀-含窒素複素環化合物あるいは銅-含窒素複素環化合物の高分子膜を形成する。さらに、イオン化した銀あるいは銅の一部は、凝集して被処理体(金属安定化層8Eに被覆された銀複合積層体S2)に被着する。そのため、この被着物である化成皮膜9Eにより、銀層7Bおよび金属安定化層8Eで被覆されずに露出していた酸化物超電導層3の表面が覆われることで、外部から遮蔽された構造が実現できると推定される。このように、本実施形態では、万が一銀層7Bに剥離部が導入された場合にも、化成皮膜9Eにより剥離部を覆い、前記剥離部を塞ぐことができる。さらに、化成皮膜9Eを形成する金属表面処理剤が前述のように銀とだけでなく、銅とも作用することにより、万が一、めっき法により形成された銅の金属安定化層8Eにピンホールがあった場合にも、前記ピンホールも化成皮膜9Eにより塞ぐことができる。
 このような銀層7Bの剥離部は頻繁には形成されないが、稀に、製造工程の途中に銀層7Bの一部が僅かに剥離してしまう場合などがある。例えば、製造工程の途中に混入した異物が、除去されず酸化物超電導層3に付着した状態で銀層7Bを成膜した場合には、該異物の剥離に伴い銀層7Bの一部も剥離してしまう場合がある。
 異物の混入を防ぐためには、線材を洗浄することが有効であるが、線材に付着した異物はエアー洗浄などでは除去しにくく、また、線材表面をブラッシングによって洗浄すると、表面の膜を傷つけてしまい、特性が劣化するおそれがある。線材の長尺化もしくは製造本数の増加により銀層7Bに剥離部が形成される可能性が高くなるため、銀層7Bへの剥離部の導入を完全に無くすことより、銀層7Bの形成後に剥離部を修復する方が、より現実的である。
 本実施形態の酸化物超電導線材10Eおよびその製造方法によれば、万が一異物が混入して銀層に剥離部が導入され、この剥離部がめっき法により形成された金属安定化層8Eによっても埋め切れないような場合にも、化成皮膜により被覆することにより、前記剥離部を被覆して酸化物超電導層が外部から完全に遮蔽された構造を実現できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法によれば、製造工程の簡略化、不良品率の低下、生産性の向上が望める。
 なお、図8に示す例では銀層7Bは超電導積層体5の外周全体を覆っているが、本発明はこの例に限定されず、図1に示す第1実施形態の酸化物超電導線材10のように、銀層が超電導積層体5の上面(すなわち、酸化物超電導層3の上面)および幅方向に直交する両側面を覆っている構成もできる。しかしながら、基材1の裏面側は、中間層2および酸化物超電導層3を成膜する工程を経る内に、不要な堆積物もしくは高温生成物などが僅かに付着する、あるいは、基材1の裏面側(酸化物超電導層3が形成されていない面側)が酸化されて酸化皮膜が形成されることがある。そのため、基材1の裏面側は、電気めっきによるめっきの付きが特に悪くなる場合があるが、図8に示す本実施形態のように超電導積層体5の全周(周面全体)を覆うように銀層7Bを形成することにより、めっき法により金属安定化層8Eを形成する際に、基材1の裏面側のめっきの付きを良くすることができる。
 以上、本発明の酸化物超電導線材およびその製造方法について説明したが、上記実施形態において、酸化物超電導線材の各部、酸化物超電導線材の製造方法に使用する装置を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
「超電導積層体の作製」
 幅10mm、厚さ100μmのハステロイC276(米国ヘインズ社製商品名)製のテープ状の金属基材の上に、IBAD法により1.0μm厚のGdZr(GZO)で表される組成の中間層を形成し、さらにこの配向層の上にPLD法により1.0μm厚のCeOで表される組成のキャップ層を成膜した。次に、このキャップ層の上にPLD法により1.0μm厚のGdBaCu7-xで表される組成の酸化物超電導層を形成して超電導積層体を作製した。なお、各層の成膜を実施する際、成膜装置内部でテープ状の基材をリールに複数回巻回された状態で収納しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に各層を成膜することで、テープ状の基材の全長にわたり各層を形成した。
「実施例1」
 上記で作製した超電導積層体の酸化物超電導層側を成膜面として、スパッタ法により厚さ2μmの銀層を成膜して銀複合積層体を作製した。銀層は超電導積層体の酸化物超電導層の上面および酸化物超電導層の側面側に形成されており、酸化物超電導層の側面は銀層に被覆されていた。なお、銀層の成膜は、成膜装置内部でテープ状の超電導積層体をリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜することで、テープ状の超電導積層体の全長にわたり銀層を形成した。
 次に、作製した銀複合積層体を、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤(四国化成社製、タフエースF2(LX)PK)に40℃で60秒間浸漬した後、100℃で60秒間乾燥することにより、銀層の表面を覆う厚さ120nmの化成皮膜を形成して、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=390Aの酸化物超電導線材を作製した。
「実施例2」
 実施例1と同様にして銀複合積層体を作製し、この銀複合積層体の酸化物超電導層の上面側の銀層上に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせた積層体を作製した。その後、この積層体を、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤(四国化成社製、タフエースF2(LX)PK)に40℃で60秒間浸漬した後、100℃で60秒間乾燥することにより、銀層および銅層の表面を覆う化成皮膜を形成して、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=420Aの酸化物超電導線材を作製した。なお、銅層の表面に形成された化成皮膜の厚さは200nmであり、銀層の表面に形成された化成皮膜の厚さは120nmであった。これは、銀よりも銅の方が使用した金属表面処理剤との反応性が高いためである。
「実施例3」
 実施例1と同様にして銀複合積層体を作製した後、実施例1と同様の手順で銀層の表面に厚さ120nmの化成皮膜を形成した。さらに、この銀複合積層体の酸化物超電導層の上面側の銀層に形成された化成皮膜上に、厚さ100μmの銅テープを半田で貼り合わせて、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=390Aの酸化物超電導線材を作製した。
「比較例1」
 銀複合積層体の外側に化成皮膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=380Aの酸化物超電導線材を作製した。
「比較例2」
 外面に化成皮膜を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=390Aの酸化物超電導線材を作製した。
 実施例1~3および比較例1、2の各酸化物超電導線材について、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持するプレッシャークッカー試験を行い、試験時間24時間経過後、及び100時間経過後の各酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icを測定した。
 各酸化物超電導線材について、プレッシャークッカー試験前の臨界電流値Ic0に対して試験後の臨界電流値Icの割合(Ic/Ic0×100(%))を算出し、得られた値を超電導特性保持率として表1に記載した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1の結果より、本発明に係る実施例1~3の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層の上面および側面を銀層および化成皮膜で保護する構成であるため、化成皮膜を有さない比較例1、2の酸化物超電導線材と比較して、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、水分侵入により酸化物超電導層が劣化することを抑制できることは明らかである。
 また、図10Aにプレッシャークッカー試験前の比較例1の酸化物超電導線材の外観写真を示し、図10Bに試験24時間後の実施例1の酸化物超電導線材の外観写真を示し、図10Cに試験24時間後の比較例1の酸化物超電導線材の外観写真を示す。なお、実施例1の酸化物超電導線材のプレッシャークッカー試験前の外観は、図10Aと同様であった。また、図10A~Cの外観写真において酸化物超電導線材から伸びる線状物は、線材へ通電するための電力配線である。
 図10Bに示すように、実施例1の酸化物超電導線材は24時間のプレッシャークッカー試験後も外観に変化がほとんど見られなかった。これに対し、図10Cに示す比較例1の酸化物超電導線材は、24時間のプレッシャークッカー試験後には、線材上面に多数の白色析出物が生成していた。この白色結晶は、酸化物超電導層に水分が浸入することにより発生した炭酸バリウムである。この結果より、本発明に係る実施例1の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が化成皮膜により保護された構造であるため、酸化物超電導層への水分の侵入を効果的に抑止できることは明らかである。
 さらに、実施例1、2の酸化物超電導線材は、プレッシャークッカー試験(120℃;393K)前後に、液体窒素温度(-196℃;77K)で超電導特性を測定している。表1に示した結果より、実施例1、2の酸化物超電導線材は、高温から極めて低温までの温度変化に対する耐性が高く、かつ、温度変化による熱収縮等に起因する化成皮膜の剥離やクラックの導入がない。従って、液体窒素温度等の極めて低温での使用が想定される酸化物超電導線材として好適であると考えられる。
「実施例4」
 実施例1と同様の方法で銀被覆積層体を作製し、得られた銀被覆積層体の銀層の一部(約30μm×30μm)を剥がし取り、下層の酸化物超電導層が露出する剥離部を作製した。
 次に、銀層に剥離部を作製した銀複合積層体を、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤(四国化成社製、タフエースF2(LX)PK)に40℃で60秒間浸漬した後、100℃で60秒間乾燥することにより、銀複合積層体を覆う厚さ120nmの化成皮膜を形成して、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=390Aの酸化物超電導線材を作製した。
 得られた酸化物超電導線材の銀層の剥離部付近の電子顕微鏡写真を図11に示す。図11の写真に示すように、銀層の剥離部には、剥離面を覆う微細な粒状物が観察された。なお、化成皮膜は厚さが非常に薄いため、肉眼および図11の写真では確認できなかった。
 そこで、図11の剥離部について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)により組成分析を行った。図12Aは分析を行った剥離部の拡大写真(倍率20000倍)、図12Bは剥離部のAg元素分布、図11Cは剥離部のBa元素分布、図12Dは剥離部のC元素分布である。図12B~図12Dにおいて、明るく見える部分が、各元素が分布している部分である。図12の結果より、剥離部には銀と炭素が分布しており、銀と炭素を含む化成皮膜が形成されていると考えられる。また、Baは酸化物超電導層の構成元素であり、化成皮膜が非常に薄いために、検出光が化成皮膜を透過して下層の酸化物超電導層まで入射および反射したことにより、Baが検出されたと考えられる。なお、剥離部以外の銀層(図11の写真において鱗状に見える広範部分)上についても同様に組成分析を行ったが、銀層の検出ピーク強度が強すぎて、他の構成元素のピークを検出することができなかった。
 図11および図12A~Dの剥離部の顕微鏡写真より、粒状に見える物質はAgであり、スパッタ法により形成された通常のAgの蒸着粒子と比較すると大粒である。これは、化成皮膜形成時に、銀層の一部が金属表面処理剤にイオン化して凝集したためと考えられる。この結果より、剥離部は、銀粒子および化成皮膜形成時に溶け出した銀イオンと金属処理剤とが反応した銀錯体とを含む化成皮膜により覆われている構造であると推定される。
 また、実施例4の酸化物超電導線材について、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持するプレッシャークッカー試験を行い、試験時間24時間経過後の臨界電流値Ic(77K)を測定したところ、Ic=360Aであり、超電導特性が保持されていた。
 実施例4の結果より、本発明の酸化物超電導線材は、万が一銀層に、その一部が剥離した剥離部が存在する場合にも、化成皮膜により酸化物超電導層が保護されるため、水分による酸化物超電導層の劣化を抑制することができることが明らかである。
「実施例5、比較例3」
 以下の検討例は、万が一、酸化物超電導層に異物が付着した状態で銀層を成膜した場合、銀層成膜後に異物が酸化物超電導層から剥離し、この剥離部分に成膜されていた銀層も同時に剥離して銀層に剥離部が形成された場合を想定した試験例である。この場合、剥離部の大きさは異物の大きさと同等またはそれ以上となると考えられる。本発明者の検討によれば、このように大きな剥離部が形成された場合、剥離部で露出している酸化物超電導層に銅のめっきが付着し難く、銅のめっき層(金属安定化層)で酸化物超電導層を充分に保護できない場合がある。そこで、製造工程における異物の混入の影響により銀層に剥離部が形成された場合を想定して、以下の実施例5および比較例3の検討を行った。
 上記と同様の手法で超電導積層体を作製した後、直径30~120μm程度の金属屑(異物)をランダムに超電導積層体の酸化物超電導層上に付着させた。
 次に、図9に示す構造のイオンビームスパッタ装置を用いて、スパッタ法により上記で異物を付着させた超電導積層体の全周に厚さ2μmの銀層を形成して銀複合積層体を作製した。イオンビームスパッタ法の実施にあたりテープ状の超電導積層体はスパッタ装置の内部においてリールに巻回しておき、一方のリールから他方のリールに繰り出す間に成膜することでテープ状の超電導積層体の全周、全長にわたり、銀層を形成した。なお、銀のスパッタは、無酸素雰囲気中、ビーム電流2.8A、ビーム電圧700V、アクセレレーター電圧200Vで行った。その後、得られた銀複合積層体を、長さ0.3mずつに切断して、25本の銀複合積層体を作製した。分割した25本の銀複合積層体のうち、8本の銀複合積層体は銀層に平均直径約70μmの剥離(剥離部)が形成されていた。
 次いで、作製した25本の銀複合積層体について、硫酸銅水溶液のめっき浴中に、前記積層体を陰極とし、電極を正極として浸漬して電気めっきを行い、厚さ20μmの銅のめっき層(金属安定化層)を前記積層体の外周に形成した。硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬する際、銀複合積層体をリールから繰り出してめっき浴に浸漬後、めっき浴から引き出して他のリールに巻き取るようにして、前記積層体の全長にわたり、銅のめっき層(金属安定化層)を形成した。なお、銅の電気めっきは、被めっき体(積層体)の電流密度が5A/dmとなるように設定し、めっき浴温度25℃、浸漬時間18分で行った。
 続いて、銅のめっき層を形成した銀複合積層体のうち15本について、イミダゾール系化合物を含む金属表面処理剤(四国化成社製、タフエースF2(LX)PK)に40℃で60秒間浸漬した後、室温で乾燥する処理を行い、銅のめっき層(金属安定化層)の表面を覆う厚さ200nmの化成皮膜を形成して、実施例5の酸化物超電導線材を15本作製した。なお、使用した銅のめっき層を形成した銀複合積層体15本中5本には、銀層に剥離(剥離部)が形成されていた。
 また、上記で銅のめっき層を形成した銀複合積層体のうち残り10本(銀層に剥離(剥離部)が形成された積層体3本を含む)は、化成皮膜を形成せずにそのまま比較例3の酸化物超電導線材とした。
 実施例5および比較例3の各酸化物超電導線材について、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0(A)を測定した後、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持するプレッシャークッカー試験を行い、試験時間48時間経過後、及び100時間経過後の各酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icを測定した。
 各酸化物超電導線材について、プレッシャークッカー試験前の臨界電流値Ic0に対する試験後の臨界電流値Icの割合(Ic/Ic0×100(%))である超電導特性保持率を算出し、超電導特性保持率が90%以上はOK、超電導特性保持率が90%未満はNGとして判定した。
 その結果、実施例5の酸化物超電導線材は、プレッシャークッカー試験100時間経過後も、15本のサンプル全て超電導特性保持率が90%以上のOK判定であった。
 一方、比較例3の酸化物超電導線材は、プレッシャークッカー試験48時間後に10サンプル中3サンプルが、超電導特性保持率が90%未満となり、試験100時間後のOK判定サンプル率は70%であり、3割が劣化していた。
 比較例3の酸化物超電導線材では、3割の線材において超電導特性の劣化が確認されたが、これは10本中3本のサンプルで、混入させた異物に由来する銀層の剥離部が形成されており、周囲を20μm厚の銅のめっき層(金属安定化層)で被覆することでは、酸化物超電導層を完全に外部から遮蔽することが出来ず、酸化物超電導層へ水分が浸入して超電導特性が劣化したと考えられる。
 これに対し、実施例5の酸化物超電導線材は、15本全てのサンプルにおいて、プレッシャークッカー試験後も超電導特性が保持されていた。この結果より、実施例4の酸化物超電導線材は、万が一、銀層に数十μm程度の大きな剥離部が形成され、銅のめっき層により前記剥離部が充分に埋められないような場合にも、化成皮膜により銅のめっき層を被覆する構成であることにより、酸化物超電導層を外部から完全に遮蔽し、酸化物超電導層が水分により劣化することを抑制できることが明らかである。
「比較例4」
 実施例1と同様の方法で銀被覆積層体を作製した。次に、銀とは錯体を形成しないが、銀層の上に皮膜を形成可能な金属表面処理剤(メルテックス社製、エンテックCU-560)を使用し、作製した銀複合積層体をこの金属表面処理剤に60℃で10秒間浸漬した後、エアーカッターで乾燥することにより、銀層の表面を覆う厚さ200nmの皮膜を形成して、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=430Aの酸化物超電導線材を作製した。
 比較例4の酸化物超電導線材について、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0(A)を測定した後、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持するプレッシャークッカー試験を行い、試験時間24時間経過後、及び100時間経過後の各酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icを測定した。
 プレッシャークッカー試験前の臨界電流値Ic0に対する試験後の臨界電流値Icの割合(Ic/Ic0×100(%))である超電導特性保持率を算出したところ、プレッシャークッカー試験24時間後の超電導特性保持率は13%であり、試験100時間後の超電導特性保持率は0%であった。
 図13にプレッシャークッカー試験24時間後の比較例4の酸化物超電導線材の外観写真を示す。図13に示すように、試験24時間後の比較例4の酸化物超電導線材は、皮膜にクラックが入り、皮膜の剥離も起こっていた。これは比較例4の酸化物超電導線材では、銀とは錯体を形成しない金属表面処理剤より皮膜が形成されているため、銀層と皮膜との密着性が低いことが原因であると考えられる。
 これに対し、上記実施例1の酸化物超電導線材は、銀と錯体を形成する金属表面処理剤を用いて処理することで化成皮膜を形成したことにより、銀層の表面に銀錯体が形成された化成皮膜は、銀層との密着性が高く、プレッシャークッカー試験100時間後も化成皮膜にクラックが入ったり、剥離したりすることはなかった。
 本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種電力機器に用いられる酸化物超電導線材に利用することができる。
 1…基材、2…中間層、3…酸化物超電導層、5…超電導積層体、7、7B…銀層、8、8E…金属安定化層、9、9B、9C、9C、9D、9E…化成皮膜、10、10A、10B、10C、10C、10D、10E…酸化物超電導線材、50…成膜装置、51…走行系、52…送出リール、53…巻取リール、54…第1ロール、55…第2ロール、56…第1の成膜系、56a…第1のターゲット、56b…第1のスパッタビーム照射装置、57…第2の成膜系、57a…第2のターゲット、57b…第2のスパッタビーム照射装置、G1…真空容器、G2…真空排気装置、S1、S2…銀複合積層体、S3、S4…積層体。

Claims (11)

  1.  酸化物超電導線材であって、
     基材、中間層、酸化物超電導層が順に積層された超電導積層体と、
     前記超電導積層体の外面のうち、少なくとも前記酸化物超電導層の上面に被着するように形成された銀層と、
     前記銀層を備えた前記超電導積層体の外面に、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤より形成された化成皮膜と
     を有することを特徴とする酸化物超電導線材。
  2.  請求項1に記載の酸化物超電導線材であって、
     前記超電導積層体の外周面全体に被着するように前記銀層が形成されることを特徴とする酸化物超電導線材。
  3.  請求項1または2に記載の酸化物超電導線材であって、 前記銀層の上に積層された金属安定化層を含み、
     前記化成皮膜が、前記銀層と前記金属安定化層を覆うように形成されることを特徴とする酸化物超電導線材。
  4.  請求項1または2に記載の酸化物超電導線材であって、
     金属安定化層を含み、
     前記銀層の上に、前記化成皮膜が前記銀層を覆うように形成され、前記化成皮膜を介して前記金属安定化層が積層されることを特徴とする酸化物超電導線材。
  5.  請求項3または4に記載の酸化物超電導線材であって、
     前記金属安定化層が、金属テープの貼り合わせ又はめっきにより形成されることを特徴とする酸化物超電導線材。
  6.  請求項1~5のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材であって、
     前記銀層の一部に剥離部が形成され、この剥離部を前記化成皮膜が覆っていることを特徴とする酸化物超電導線材。
  7.  請求項1~6のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材であって、
     前記含窒素複素環化合物が、イミダゾール系化合物であることを特徴とする酸化物超電導線材。
  8.  酸化物超電導線材の製造方法であって、
     基材、中間層、酸化物超電導層が順に積層されることで形成された超電導積層体を準備し、
     前記超電導積層体の外面のうち、少なくとも前記酸化物超電導層の上面に被着するように銀層を形成して銀複合積層体を作製し、
     前記銀複合積層体を、含窒素複素環化合物を含む金属表面処理剤で処理することにより、前記銀複合積層体の外面に化成皮膜を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  9.  請求項8に記載の酸化物超電導線材の製造方法であって、
     前記銀複合積層体を作製する際に、前記銀層を形成した後に、前記銀層の上に金属安定化層を積層し、その後、前記化成皮膜を形成する際に、前記銀層と前記金属安定化層を覆うように前記化成皮膜を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  10.  請求項8に記載の酸化物超電導線材の製造方法であって、
     前記化成皮膜を形成する際に、前記酸化物超電導層の上に積層された前記銀複合積層体の外面に化成皮膜を形成した後に、前記銀層上に前記化成皮膜を介して金属安定化層を積層することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  11.  請求項8~10に記載の酸化物超電導線材の製造方法であって、
     前記含窒素複素環化合物として、イミダゾール系化合物を用いることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
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