JP2009048987A - 安定化材複合酸化物超電導テープ及びその製造方法 - Google Patents

安定化材複合酸化物超電導テープ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを介して高速且つ確実に接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造することが可能な方法の提供。
【解決手段】酸化物超電導体層の表面に銀からなるコーティング層が設けられた酸化物超電導テープと安定化材テープとを、ハンダを介して接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造する方法であって、酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを挟んで重ね合わせた被複合化材を、一対の加熱・加圧ロールのみによって加圧して安定化材複合酸化物超電導テープを製造することを特徴とする安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導体層の表面に銀からなるコーティング層が設けられた酸化物超電導テープと安定化材テープとを、ハンダを介して接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造する方法に関し、特に、一般的なラミネート装置に準ずる装置を用いて高速に接合することが可能であり、また高抵抗の熱伝導性の低い金属を貼り合わせることが可能な安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法に関する。
酸化物超電導テープは、テープ状金属基板の上に、イットリウム系酸化物超電導体等の酸化物超電導体の薄膜をコーティングすることによって作製される。この酸化物超電導テープは、電気的な安全性を確保するため、表面に低抵抗金属をコーティングしてあるが、このコーティング材としては、酸化物超電導薄膜との界面が化学的に安定な銀が主に用いられている(例えば、特許文献1,2参照。)。
酸化物超電導テープの超電導特性が向上するにつれて、安定化材として必要な銀の厚さは厚くなり、現段階では100〜200μmの厚さが必要となるといわれている。これを全て銀で構成すると、酸化物超電導テープが非常に高価になるため、銀は数μm以下の厚さに抑え、その上に銅を積層し、十分な厚さの安定化材を複合化した安定化材複合酸化物超電導テープを構成することが検討されている。
このような厚さに銅を積層する方法として、メッキ等の湿式法によるコーティング、又はテープ状の金属銅をハンダで貼り合わせる方法が検討されている。メッキの場合は、銅が若干硬くなってしまうので、得られる安定化材複合酸化物超電導テープのフレキシビリティに影響を与える可能性が懸念される。一方、金属銅テープをハンダで貼り合わせた構造については、既に市販が開始されている(例えば、非特許文献1参照。)。
金属テープをハンダで連続的に貼り合わせる方法として、特許文献3には、銅又は銅合金をクラッドする場合に、一方の面にSnめっきを行い加圧、加熱して接合する方法が開示されている。
また、従来、一般的なラミネート方法及びラミネータとしては、例えば、特許文献4〜11に開示された技術が提案されている。
さらに、特許文献12には、酸化物超電導層上にAgの下地安定化薄膜を形成し、続いてメッキ法によりCuの安定化層を形成する製造方法が開示されている。
超電導の常伝導遷移を利用する電力系統保護用限流器を構成する超電導線材においては、安定化保護のために被覆する金属膜の抵抗を高くすることで、線材の長さを短くすることができ、コスト低減に繋がる。そこで、高抵抗の金属を貼り合わせることにより、高抵抗でかつ機械的強度の強い線材を構成する場合がある(非特許文献2参照。)。
一方、機械的強度の強い基板を使い、該基板上にイオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と記す。)によって酸化物からなる中間層を成膜し、該中間層上に酸化物超電導薄膜を成膜し、その上に銀の保護膜を成膜した線材(以下、IBAD線材と記す。)においては、保護膜として使われる銀膜をできるだけ薄くするだけで高抵抗の線材を実現する試みがなされている(非特許文献3,4参照。)。
特許第3403465号公報 特許第3568561号公報 http://www.amsuper.com/products/htsWire/344Super.cfm 特開平2−217182号公報 特公平6−75800号公報 特公平6−73920号公報 特公平6−87513号公報 特許第2799227号公報 特許第2850186号公報 特許第2888321公報 特許第2923556公報 特許第3182989号公報 特開平7−73759号公報 http://www.amsuper.com/products/htsWire/344SS.cfm http://www.superpower-inc.com/pdf/2006_ASC+2LX04+2G+for+SFCL+Paper+YYXie.pdf http://www.superpower-inc.com/pdf/2006_ASC+2LX04+2G+for+SFCL+Pres+YYX.pdf
テープ状の金属をハンダで複合する過程において、接合するテープ間にハンダを挟み、これらの材料を一度ハンダの溶融温度以上に加熱してから、爾後凝固温度に下げることが必要なため、その間テープを密着させた状態を保つために、例えば、特許文献4に開示されているように、加熱・加圧を維持しながら送っているベルト状の設備などを用いる必要があった。この方法では、製造設備が大掛かりになるとともに、テープの送り速度等の制限が生じる。
一方、フレキシブルなプリント基板などを作製する際は、導電性が必要ないので、ハンダではなく熱硬化性樹脂を用いた貼り合わせ装置(ラミネータ)が用いられる。この場合、加熱・加圧だけで硬化し、元に戻ることはないため、加熱・加圧ロールに貼り合わせる材料を一度通すだけで、充分な貼り合わせが可能であることから、簡単な設備で高いスループットが得られる(特許文献5〜特許文献11)。
酸化物超電導テープと安定化材テープとを、ハンダを介して接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造しようとする場合でも、酸化物超電導テープと安定化材テープとを高速に接合し得る方法が望まれ、特許文献3にはそうした例が記載されているが、ハンダ凝固のタイミングが加熱・加圧ロールの噛合いの位置と合わなくなると、隙間が開いたり、剥離する等の問題が生じることがある。また、このとき隙間の発生を嫌って、ロールの加圧強度を強くしすぎると、複合化するテープ材にダメージを与えることがあり、たとえば銀で被覆した酸化物超電導テープに銅テープを複合化する場合は、超電導特性が劣化するおそれがある。
また、非特許文献3,4に開示されたように、IBAD法線材においても、安定化層である銀が薄くなることにより、機械的、化学的強度が不十分になる可能性がある。また、熱容量が小さくなってしまうために、局所的な発熱から熱暴走に至る危険が増大する。
従って、IBAD法線材においても、高抵抗の金属を貼り合わせた構造が求められていた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを介して高速且つ確実に接合し、高品質の安定化材複合酸化物超電導テープを製造することが可能な方法の提供を目的とする。
また本発明は、IBAD法線材において、高抵抗の金属を貼り合わせた安定化材複合酸化物超電導テープの提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、酸化物超電導体層の表面に銀からなるコーティング層が設けられた酸化物超電導テープと安定化材テープとを、ハンダを介して接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造する方法であって、酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを挟んで重ね合わせた被複合化材を、一対の加熱・加圧ロールのみによって加圧して安定化材複合酸化物超電導テープを製造することを特徴とする安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法を提供する。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、ハンダの厚さが10μm以下であることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、安定化材テープの片面に予めハンダをメッキしておき、このハンダ面を酸化物超電導テープのコーティング層と接するように重ね合わせることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、被複合化材を加熱・加圧ロールに通す前に、予熱炉を通過させて予めハンダ溶融温度以上に加熱することが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、安定化材テープとして、銅よりも高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープを用いる場合に、被複合化材を加熱・加圧ロールに通す前に、予熱炉を通過させて予めハンダ溶融温度より30℃以上高温に加熱することが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、予熱炉の端部を細長く伸ばして先端位置が加熱・加圧ロール噛合い位置から20mm以内となるように構成することが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、加熱・加圧ロールの温度をハンダ溶融温度以下に設定することが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、加熱・加圧ロールの噛合い位置の圧力を100MPa以下とすることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、加熱・加圧ロールの少なくとも表面が軟質材で構成されていることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、加熱・加圧ロールの後段に、高さに差を持たせて複数のロールを設けることによって、加熱・加圧ロール上でのテープの接地長を長くすることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、各テープのテンションを5MPa以上とすることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法において、加熱・加圧ロールを通過させるテープ線速を50m/h以上とすることが好ましい。
また本発明は、金属基板の表面に、IBAD法によって酸化物からなる中間層が成膜され、該中間層の表面に酸化物超電導薄膜が成膜され、該酸化物超電導薄膜上に銀からなるコーティング層が成膜された酸化物超電導テープと、銅よりも高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープとが、ハンダを介して接合されてなることを特徴とする安定化材複合酸化物超電導テープを提供する。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープにおいて、前記安定化材テープが、前記金属基板と同じか又は同等の熱膨張率を有する合金材料からなることが好ましい。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープにおいて、前記安定化材テープが、Ni−Cr合金、ハステロイ、インコネルからなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項14に記載の安定化材複合酸化物超電導テープ。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープにおいて、該安定化材複合酸化物超電導テープは、前述した本発明に係る安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法により製造されることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを介して高速且つ確実に接合し、高品質の安定化材複合酸化物超電導テープを製造することができる。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープは、高特性で機械的強度の強い線材であるIBAD法線材において、高抵抗の線材を実現するにあたって、銀を薄くするのみならず、高強度金属を被覆する構成をとることに成功したことにより、機械的・化学的に安定でなおかつ高抵抗な高特性超電導テープを得ることができる。
また、IBAD法線材において、貼り合わせ金属として、熱膨張係数が金属基板と同等の高抵抗金属を利用することにより、良好な貼り合わせ状態を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法の一実施形態を説明する製造装置の構成図である。図1中、符号1は安定化材テープ、2は酸化物超電導テープ、3は予熱炉、4は加熱・加圧ロール、5は安定化材複合酸化物超電導テープ、6は被複合化材である。
安定化材テープ1は、銅等の低抵抗金属テープ、あるいは真鍮、Ni−Cu合金、ステンレス鋼等の高抵抗の金属テープで、厚さは50μmから200μm程度である。本実施形態において、安定化材テープ1の片側にハンダ(スズに微量のCu、銀等を添加したもの、融点230℃)を2μmから10μm程度の厚さにメッキしてある。このように、予め安定化材テープ1の片面に、ハンダを薄くコーティングしてあるため、銀をコーティングした酸化物超電導テープ2の表面全体にハンダが接触した形を保つことができる。このような方法であれば、ハンダに対する濡れ性がさほど良くない金属表面であっても、フラックスを使わずに薄くハンダを伸ばすことができ、ハンダが厚すぎることによる機械的特性の悪化を防ぐことができる。
酸化物超電導テープ2は、テープ状金属基板の上に、イットリウム系酸化物超電導体等の酸化物超電導体の薄膜をコーティングし、さらに酸化物超電導薄膜上に、銀からなるコーティング層が設けられた構造になっている。
本実施形態の製造方法は、安定化材テープ1のハンダメッキ面と酸化物超電導テープ2の銀コーティング面とを向かい合わせにした状態で、予熱炉3内に搬送し、これらのテープ1,2をハンダ溶融温度以上に加熱し(250℃以上)、この被複合化材6を一対の加熱・加圧ロール4を通過させ、加圧すると共に、ハンダ溶融温度以下に冷却し(ロール表面で160−220℃)、加圧下でハンダを凝固させ、安定化材複合酸化物超電導テープを高速で連続生産することが可能である。
この加圧下でのハンダ凝固を効果的に実施するためには、ハンダが凝固温度に下がるタイミングで、被複合化材6が加熱・加圧ロール4付近に来るように、温度勾配とテープ線速とを調整する必要がある。本実施形態では、予熱炉3の出口側を嘴状に細く伸ばし、加熱・加圧ロール4の噛合い位置の手前20mm以内の位置で、予熱された被複合化材6が予熱炉3から出て、直ちに加熱・加圧ロール4に巻き込まれる構造としている。これにより、予熱炉3内で溶融温度以上に加熱されたハンダが、加熱・加圧ロール4の手前で凝固しない構成になっている。また、テープ線速を上げることにより、凝固位置をより下流側にすることができる。本実施形態の装置構成においては、50m/h以上のテープ線速で運転することが望ましい。
このとき、銅テープなどの低抵抗・高熱伝導性の安定化材テープ1を用いる場合には、その安定化材テープ1の熱伝導性が良いために、比較的広い温度条件下において貼り合わせが可能である。しかしながら、銅よりも高抵抗・低熱伝導性の金属、例えばステンレス鋼、Ni−Cr合金等からなる高抵抗・低熱伝導性の安定化材テープ1の貼り合わせにおいては、安定化材テープ1の熱伝導性が悪いために、予熱炉3の温度を銅テープの場合よりも高くする必要がある。後述する実施例2において詳細を記すが、本発明者が行った試験の結果、高抵抗・低熱伝導性の安定化材テープ1を用いる場合には、予熱炉3の温度をハンダ溶融温度(230℃)よりも30℃高い260℃とした場合に、辛うじて貼り合わせが可能であり、予熱炉温度をハンダ溶融温度より50〜100℃高い300℃以上の温度とした場合に、良好な貼り合わせが可能であった。従って、ステンレス鋼、Ni−Cr合金等からなる高抵抗・低熱伝導性の安定化材テープ1の貼り合わせにおいては、予熱炉3の温度をハンダ溶融温度よりも30℃以上高い温度、好ましくはハンダ溶融温度よりも50〜100℃高い温度とすることが望ましい。
加熱・加圧ロール4の材質としては、シリコーンゴム等の軟質材が望ましい。金属等の硬い素材を用いることもできるが、得られる安定化材複合酸化物超電導テープ5の超電導特性劣化を防ぐためには、テープ上での押しつけ圧(ロール圧)を100MPa以下とすることが望ましい。
図2は、加熱・加圧ロール4のロール材質の違いによる加圧領域の違いを模式的に示す図であり、(a)は金属ロール、(b)はシリコーンゴムロール(以下、ゴムロールと記す。)の場合を示す。(a)の金属ロールの場合は、ロールが変形しないので、加圧領域8は、一対のロール4,4の接触部分の狭い範囲となる。一方、ゴムロール7,7を用いる場合には、加圧によりゴムロール7,7が(b)に示すように若干変形し、加圧領域8の長さが長くなり、圧力が分散される。その結果、ゴムロール7,7を用いた場合には、押しつけ圧が100MPa以下となる。
さらに、ゴムロール7を用いる場合、ゴムの硬さを調整することによって、ハンダ凝固位置の最適化が容易となり、良好な接合界面が得られる。
また、図3に示すように、加圧・加熱ロール4の後段に、段差ロール9,9を設けることによって、接合された安定化材複合酸化物超電導テープ1がロール4上に接地した状態でテンションがかかる長さ(接地領域10)を確保することができる。これによって、ハンダ凝固位置が、ロール噛合い位置よりも後方になってしまった場合にも、大きな剥がれを生じることなく、接合することができる。
銅からなる安定化材テープ1とNi−Cr合金基板を持つ酸化物超電導テープ2とを接合する場合、各テープにかけるテンションは、5MPa以上とすることが望ましい。テープにかけるテンションが充分でないと、加熱・加圧ロール4で加圧する前後の位置でハンダの凝固が生じた場合に、剥がれや隙間が生じやすくなる。
次に、本発明に係る安定化材複合酸化物超電導テープの実施形態を説明する。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープは、金属基板の表面に、IBAD法によって酸化物からなる中間層が成膜され、該中間層の表面に酸化物超電導薄膜が成膜され、該酸化物超電導薄膜上に銀からなるコーティング層が成膜された酸化物超電導テープと、銅よりも高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープとが、ハンダを介して接合されてなることを特徴とする。本発明の安定化材複合酸化物超電導テープは、前述した本発明に係る安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法によって製造することが好ましい。
非特許文献3、4等に開示されているような銀を被覆したIBAD法線材に、ハンダ貼り合わせ法により高抵抗金属を貼り合わせる際の問題点として、この高抵抗金属が銅等の低抵抗金属に比べて機械的に塑性変形しにくいため、熱膨張係数の違い等により、貼り合わせ界面に大きな歪みが入りやすいという問題がある。界面の歪みがあまりに大きいと、剥離を起こしやすい。このため、界面歪み低減のために、高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープとしては、熱膨張係数が基板金属と近い素材を、一定の厚さ以下で貼り合わせる必要があることがわかった。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの好適な実施形態において、前記安定化材テープは、厚さが0.1mm以下であり、酸化物超電導テープの金属基板と同じか又は同等の熱膨張率を有する合金材料からなることを特徴としている。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープのさらに好適な実施形態において、前記安定化材テープは、Ni−Cr合金、ハステロイ、インコネルからなる群から選択される1種であることを特徴としている。
厚さ100μmのNi−Cr合金基板上に、IBAD法によって厚さ1μmのGdZrからなる中間層を成膜し、この中間層上に、イットリウム系酸化物超電導体(YBaCu7−x)からなる厚さ2μmの酸化物超電導薄膜を成膜し、さらに酸化物超電導薄膜上に、銀からなる厚さ10μmのコーティング層を成膜して酸化物超電導テープ2を作製した。
一方、厚さ100μmの銅テープの片面に、ハンダ(スズに微量のCu、銀等を添加したもの、融点230℃)を厚さ2μmとなるようにメッキした安定化材テープ1を用意した。
図1に示すように、内部を250〜260℃に保温した長さ20cmの予熱炉3と、その出口側に配置した一対の加熱・加圧ロール(金属ロール4又はゴムロール7)とを備えた製造装置を用意した。予熱炉3の出口には、嘴状の延長部を設け、その出口は加熱・加圧ロールの噛合わせ位置から20mm以内とした。前記安定化材テープ1のコーティング層と酸化物超電導テープ2のハンダメッキ面とが向かい合わせになるように供給し、図1に示すように予熱炉3を通過させて予熱し、予熱炉3から引き出された被複合化材6を加熱・加圧ロールで加圧しながら冷却し、安定化材複合酸化物超電導テープ5を製造した。
この安定化材複合酸化物超電導テープ5の製造において、加熱・加圧ロール温度と、テープ線速とを適宜変更し、得られた安定化材複合酸化物超電導テープ5の接合状態を調べて比較した。結果を表1に記す。
Figure 2009048987
表1の結果より、テープ線速を50m/h以上とすることで、接合状態の良好な安定化材複合酸化物超電導テープ5を製造できることが実証された。
また、加熱・加圧ロールの材質(金属又はシリコーンゴム)、ロール圧、テープ線速を適宜変更し、複合化前の酸化物超電導テープ2と、複合化後の安定化材複合酸化物超電導テープ5のそれぞれの臨界電流(Ic)を測定し、複合化前後の臨界電流の劣化率を調べ、比較した。結果を表2に記す。
Figure 2009048987
表2の結果より、ロール圧を100MPa以下にすることで、得られる安定化材複合酸化物超電導テープ5の超電導特性の劣化が少なくなることがわかった。さらに、加熱・加圧ロールとしてゴムロールを用い、ロール圧を10MPa以下とした場合には、テープ線速30m/hとした場合、超電導特性の劣化が無く、100m/hでも劣化が小さく、良好な結果が得られた。
安定化材テープとして、厚さ100μmのNi−Cr合金テープの片面に、ハンダ(スズに微量のCu、銀等を添加したもの、融点230℃)を厚さ2μmとなるようにメッキした安定化材テープを用い、それ以外は実施例1と同様にして安定化材複合酸化物超電導テープ5を製造した。
この安定化材複合酸化物超電導テープ5の製造において、加圧ロール温度と予熱炉の予熱温度とを、表3に示す条件とし、得られた安定化材複合酸化物超電導テープ5における貼り合わせ状態を調べた。テープ線側はすべて100m/hとした。なお、貼り合わせ状態の評価基準は、表3の下欄に記した通りである。
Figure 2009048987
表3の結果より、高抵抗・低熱伝導性の安定化材テープの貼り合わせにおいては、予熱温度をハンダ溶融温度(230℃)よりも30℃高い260℃とした場合に、辛うじて貼り合わせが可能であり、予熱炉温度をハンダ溶融温度より50〜100℃高い300℃以上の温度とした場合に、良好な貼り合わせが可能であった。
厚さ100μmのハステロイC276基板上に、IBAD法により厚さ1μmのGdZrからなる中間層を成膜し、この中間層上に、パルスレーザ蒸着法によりイットリウム系酸化物超電導体(YBaCu7−x)からなる厚さ2μmの酸化物超電導薄膜を成膜し、さらに酸化物超電導薄膜上に、銀からなる厚さ10μmのコーティング層を成膜して酸化物超電導テープ2を作製した。
一方、この酸化物超電導テープ2に貼り合わせる低磁性の高抵抗金属から成る安定化材として、
(1)厚さ0.1mmのハステロイC276製テープ、
(2)厚さ0.1mmのステンレス鋼製テープ、
(3)厚さ0.1mmのNi−Cr合金(NCH1)製テープ、
を用意し、これら(1)〜(3)のテープの片面に、ハンダ(スズに微量のCu、銀等を添加したもの、融点230℃)を厚さ2μmとなるようにメッキした安定化材テープを用意した。
実施例1と同様にして、前記酸化物超電導テープ2と、(1)〜(3)のそれぞれの安定化材テープとを貼り合わせ、その貼り合わせ状態を比較した。
その結果、(1)ハステロイC276製テープと、(3)Ni−Cr合金製テープについては良好な結果が得られた。(2)ステンレス鋼製テープは基板との熱膨張率が異なるほか、酸化に弱いため、ハンダがうまく乗らなかった可能性がある。
(3)Ni−Cr合金製テープについて、貼り合わせ金属の厚さを最適化した結果、厚さ40μmにおいて非常に良好な貼り合わせ状態が得られた。
本発明の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法の一実施形態を説明する製造装置の構成図である。 加熱・加圧ロールのロール材質の違いによる加圧領域の違いを模式的に示す図であり、(a)は金属ロール、(b)はシリコーンゴムロールの場合を示す。 加圧・加熱ロールの後段に、段差ロールを設けた構成を例示する構成図である。
符号の説明
1…安定化材テープ、2…酸化物超電導テープ、3…予熱炉、4…加熱・加圧ロール、5…安定化材複合酸化物超電導テープ、6…被複合化材、7…ゴムロール、8…加圧領域、9…段差ロール、10…接地領域。

Claims (16)

  1. 酸化物超電導体層の表面に銀からなるコーティング層が設けられた酸化物超電導テープと安定化材テープとを、ハンダを介して接合して安定化材複合酸化物超電導テープを製造する方法であって、
    酸化物超電導テープと安定化材テープとをハンダを挟んで重ね合わせた被複合化材を、一対の加熱・加圧ロールのみによって加圧して安定化材複合酸化物超電導テープを製造することを特徴とする安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  2. ハンダの厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  3. 安定化材テープの片面に予めハンダをメッキしておき、このハンダ面を酸化物超電導テープのコーティング層と接するように重ね合わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  4. 被複合化材を加熱・加圧ロールに通す前に、予熱炉を通過させて予めハンダ溶融温度以上に加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  5. 安定化材テープとして、銅よりも高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープを用いる場合に、被複合化材を加熱・加圧ロールに通す前に、予熱炉を通過させて予めハンダ溶融温度より30℃以上高温に加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  6. 予熱炉の端部を細長く伸ばして先端位置が加熱・加圧ロール噛合い位置から20mm以内となるように構成することを特徴とする請求項4又は5に記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  7. 加熱・加圧ロールの温度をハンダ溶融温度以下に設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  8. 加熱・加圧ロールの噛合い位置の圧力を100MPa以下とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  9. 加熱・加圧ロールの少なくとも表面が軟質材で構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  10. 加熱・加圧ロールの後段に、高さに差を持たせて複数のロールを設けることによって、加熱・加圧ロール上でのテープの接地長を長くすることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  11. 各テープのテンションを5MPa以上とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  12. 加熱・加圧ロールを通過させるテープ線速を50m/h以上とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法。
  13. 金属基板の表面に、イオンビームアシスト蒸着法によって酸化物からなる中間層が成膜され、該中間層の表面に酸化物超電導薄膜が成膜され、該酸化物超電導薄膜上に銀からなるコーティング層が成膜された酸化物超電導テープと、銅よりも高抵抗且つ低熱伝導性の金属からなる安定化材テープとが、ハンダを介して接合されてなることを特徴とする安定化材複合酸化物超電導テープ。
  14. 前記安定化材テープが、前記金属基板と同じか又は同等の熱膨張率を有する合金材料からなることを特徴とする請求項13に記載の安定化材複合酸化物超電導テープ。
  15. 前記安定化材テープが、Ni−Cr合金、ハステロイ、インコネルからなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項14に記載の安定化材複合酸化物超電導テープ。
  16. 請求項1〜12のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープの製造方法により製造されたことを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の安定化材複合酸化物超電導テープ。
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