JP6587839B2 - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に、基板と超電導層との間に形成される中間層として少なくともMgO層を有する酸化物超電導線材の製造方法に関する。
酸化物超電導体は、その臨界温度(Tc)が液体窒素温度(77K)を超えることから超電導マグネット、超電導ケーブル、電力機器及びデバイス等への応用が期待されており、多くの研究結果が報告されている。酸化物超電導体を上記の分野に適用するためには、臨界電流密度(Jc)が高く、かつ高い臨界電流(Icで示し、Jcとともに超電導特性を意味する)を有する長尺の線材を製造する必要がある。一方、長尺の線材を得るためには、強度及び可撓性の観点から金属テープ上に酸化物超電導体を形成する必要がある。また、NbSnやNbAl等の金属系超電導体と同等に実用レベルで使用可能とするためには、Icが500A/cm(77K、自己磁界中)程度の値が必要である。
これら条件を満たす酸化物超電導体を備える線材として、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7であり、以下、「RE系」とも称する)の酸化物超電導線材が知られている。
この酸化物超電導線材(以下、「超電導線材」とも称する)では、超電導体の結晶が2軸配向しているため、周知のビスマス系の銀シース線材に比べて臨界電流(Ic)が高く、液体窒素温度での磁場特性に優れている。これにより、RE系超電導線材は、現在、液体ヘリウム温度近傍の低温で使用されている超電導機器に適用して、高温状態で使用できる利点を有する。
RE系超電導線材の作製には、結晶配向性の高い基材上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成する必要がある。これは、RE系の酸化物超電導体の結晶が、その結晶軸のa軸とb軸方向には電気を流しやすいが、c軸方向には電気を流し難いという電気的異方性を有していることに起因する。すなわち、基材上に酸化物超電導層を形成する場合には、電気を流す方向にa軸或いはb軸を配向させてc軸をその他の方向に配向させる必要がある。従って、酸化物超電導層を成膜する下地となる基材においても、その結晶配向性を良好にする必要がある。
このようなRE系超電導線材に用いる基材として、テープ状の金属基材上に、複合照射法と呼ばれるIBAD(Ion Beam Assisted Deposition:イオンビームアシスト)法によって中間層を形成した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。IBAD法により形成される中間層は、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が金属テープと酸化物超電導層との中間的な値を示す材料、例えば、MgO、YSZ(イットリア安定化ジルコニウム)、SrTiO等によって構成されている。このような中間層は、金属テープと酸化物超電導層との物理的特性の差を緩和するバッファー層として機能する。また、IBAD法によって成膜されることにより、中間層の結晶は高い結晶配向性を有している。この中間層の結晶格子をテンプレートとして用いることによって、その上方に配置される酸化物超電導層の結晶の面内配向度と方位を向上させることが行われている。なお、面内配向度の向上は、結晶配向度を表す指標である面内方向の結晶軸分散の半値幅ΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくすることと同じである。
例えば、MgOにより構成される中間層(「MgO層」という)は、立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶粒が、多数、結晶粒界を介し接合一体化されて構成される。MgO層では各結晶粒の結晶軸のc軸は基材の上面(成膜面)に対し直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸同士及びb軸同士は、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。なお、各結晶粒のa軸同士或いはb軸同士は、それらのなす角(粒界傾角)を30度以内にして接合一体化されるとよい。このようにMgO層の結晶面内配向性が高ければ高い程、このMgO層の上層として成膜されるCeO層の配向性も高くなり、このCeO層を下地層とする超電導層も高い結晶配向性となる。超電導層の結晶面内配向性が高ければ、臨界電流(Ic)、臨界磁場、臨界温度等の超電導特性が優れた酸化物超電導線材を作製できる。
例えば、特許文献2には、基材の表面に、イオンビームアシストスパッタ法により、背圧を変えて4回対称MgO膜を成膜したり、3回対称MgOを成膜したりすることで優れた配向性を示すMgO層を形成する技術が開示されている。特許文献2においてMgO層が形成される基材の表面は、Y、CeO、Dy、Nd、Pr11、Sc、Sm、Tb、Tmや、これらと金属酸化物MO(Mは、Ti、Zr、又はHfを示す。)との混合物等により構成される。また、この特許文献2には、イオンビームアシストスパッタ法によりMgO膜を形成する際に、真空チャンバ内において、加熱ヒータを作動させて、基材ホルダに載置された基材を加熱して、下限の温度は限定せずに30℃以下の温度にする技術が開示されている。
特開2004−71359号公報 特開2011−137199号公報
これら従来の技術で示すように、酸化物超電導線材の超電導特性を向上するために、超電導層が形成される中間層において、より優れた配向性を有するMgO層を形成して、その上層として形成され、且つ超電導層の下地層となるCeO層を高配向にすることが望まれている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、中間層として、配向性の優れたMgO層を形成して、その上層のCeO層の高配向性を実現して、優れた超電導特性を有する超電導線材を好適に製造する酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、基板上に少なくともLaMnO層を表面に有する基材の前記表面にイオンビームアシスト法により成膜したMgO層を形成する第1工程と、前記MgO層が形成された基材に、前記MgOの上層として少なくともCeO 層及びREBaCuO超電導層(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1種以上の元素を示す)を形成する第2工程とを有し、前記第1工程では、前記基材の表面の前記LaMnO層への前記MgO層の成膜時に、前記基材を5℃以上40℃以下の設定温度で冷却するようにした。
本発明によれば、中間層として、配向性の優れたMgO層を形成できるので、その上層のCeO層の高配向性を実現して、優れた超電導特性を有する超電導線材を好適に製造できる。
本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法を適用して製造される酸化物超電導線材の構造を示す概略構成図 本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法の説明に供するフローチャート 本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法におけるMgO層形成装置の一例を模式的に示す概略構成図 MgO形成装置の冷却機構部を模式的に示す成膜部の平面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の発明者らは、先ず、酸化物超電導線材における中間層として、MgO層の配向性を向上させるべく、MgO層が形成される下地層(配向制御層)として様々な材料による層を検討した。そして、MgO層の下地層を、LaMnO(酸化ランタンマンガン)層にすれば、そのLaMnO層上には、より配向性の優れたMgO層を形成でき、MgO層の上層として形成されるCeO層が高配向性を有することを見出した。
また、発明者らは、この構成において、MgO層の配向性を一層高めるために、特許文献2を参照して、加熱ヒータを作動させて、基材ホルダに載置され、且つ、LaMnO層が形成された基材を加熱してMgO層を形成したところ、形成されたMgO層及びCeO層の配向性が落ちる場合があった。そして、この原因は、MgO層の下地層がLaMnO層である場合、所定温度範囲外であると成膜されるMgO層及びCeO層の配向性の劣化が現れることが判った。そこで、発明者らは、酸化物超電導線材の製造方法において、基材のLaMnO層上にMgO層を形成する際に、所定温度範囲内の温度になるように基材を冷却することで、優れた所望の配向性を有するMgO層を形成できることを見出した。
まず、本実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で製造する酸化物超電導線材の一例について説明する。
<酸化物超電導線材>
図1は、本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材の要部構成を示すテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。
酸化物超電導線材(以下、「超電導線材」という)1は、例えば、テープ状の金属基板10上に、中間層(ここでは複数の層21〜25)、酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)30、安定化層40を順に積層して形成される。また、金属基板10から安定化層まで積層した積層体の周囲は、銅保護層(図示省略)で被覆される。これにより、超電導線材1は、テープ状をなしており、可撓性を有する。
金属基板10は、強度及び耐熱性に優れた、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金を用いることができる。例えば、金属基板10として、Ni又はNiに、W、Mo、Cr、Fe、Co、V及びMnから選択された一種類以上の添加元素を含むNi基合金が用いられる。また、金属基板10を、強圧延加工後の金属基板とすると、Ni基合金とステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)、ニクロムから選択されたいずれか1種の耐熱金属を積層させた複合基板を用いることもできる。具体的には、金属基板10は、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、又は、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される低磁性の結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板にすることが望ましい。金属基板10の厚さは、例えば、0.1mm以下である。
中間層は、例えば金属基板10からの元素の拡散が超電導層30に及ぶのを防止するための中間層(拡散防止層)と、超電導層30の結晶を一定の方向に配向させるために拡散防止層上に形成される中間層(配向層)、配向層の配向性を得るために機能する中間層(配向制御層或いはベッド層)、真上に形成される超電導層の配向性を制御する機能と、超電導層を構成する元素の下層への拡散防止や超電導層と下層との反応を抑制するキャップ層等のように複数の中間層を有する。中間層は、1層以上の何層で構成されてもよい。本実施の形態では、中間層は、金属基板10上に、第1中間層21〜第5中間層25を順に積層して構成される。
第1中間層21は、酸化アルミニウム(Al)層、ガリウムドープ酸化亜鉛(GdZr:GZO)層、或いはイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)層等であり、スパッタリング法を用いて形成される。
第2中間層22は、LaMnO層であり、スパッタリング法を用いて形成される。本実施の形態では、第1中間層21が拡散防止層とも称してもよく、第2中間層22が配向制御層或いはベッド層と称してもよい。第3中間層23は、酸化マグネシウム(MgO)層であり、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD:Ion Beam Assisted Deposition)によりLaMnO層である第2中間層22上に成膜される。第3中間層23は、配向層とも称してもよい。
第4中間層24は、酸化ランタンマンガン(LaMnO)層等であり、スパッタリング法(PLD法でもよい)により第3中間層23上に成膜される。また、第5中間層25は、酸化セリウム(CeO)層であり、超電導層30の下地層である。第5中間層25であるCeO層は、第4中間層24上に成膜される。第5中間層25は、キャップ層とも称する。なお、本実施の形態の中間層を第1中間層から第4中間層の4層で形成したが、MgO層(ここでは第3中間層23)LaMnO層上に成膜されるMgO層を含み、MgO層上にCeO層(本実施の形態では第5中間層)を有する層構造とすれば、どのように形成されてもよい。また、中間層を構成する各層(1〜5層)の厚みは、例えば、約1000[nm]である。
超電導層30は、例えばREBaCu系超電導体(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1又は2種以上の希土類元素であり、y≦2及びz=6.2〜7)等の酸化物超電導体で構成される。このRE系超電導体としては、YBaCuで表されるイットリウム系超電導体が代表的である。超電導層30の成膜には、有機金属体積法(MOD:Metal-organic deposition)、パルスレーザー蒸着法(PLD:Pulsed Laser Deposition)、スパッタ法、又は有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を適用できる。
超電導層30は、ここでは、MOD法を用いて形成される。MOD法は、有機金属化合物を原料として、アモルファス状の活性な前駆体を基板表面に形成し、これを熱処理し結晶化することにより超電導層を成膜するものである。このMOD法は、非真空中でも長尺の基材に連続的に酸化物超電導層を形成できるので、PLD法やCVD法等の気相法よりも、プロセスが簡単で低コスト化が可能である。
なお、超電導層30には、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つを含む50[nm]以下の酸化物粒子が磁束ピンニング点として分散していることが好ましい。この場合、超電導層30の成膜法としては、三フッ化酢酸塩(TFA)を用いたTFA−MOD(Trifluoroacetates-Metal Organic Deposition)法が好適である。例えば、TFAを含むバリウム(Ba)溶液中に、Baと親和性の高いジルコニウム(Zr)含有ナフテン酸塩等を混合することにより、RE系超電導体からなる超電導層30に、Zrを含む酸化物粒子(BaZrO)を磁束ピンニング点として分散させることができる。なお、超電導層30中に磁束ピンニング点を分散する手法は、公知の技術を適用することができる(例えば特開2012−059468号公報)。超電導層30中に磁束ピンニング点を分散させることにより、超電導線材1が湾曲した状態で用いられても、磁場の影響を受けにくく、安定した超電導特性が発揮される。
安定化層40は、超電導層30の直上に形成され、主に水分等から超電導層30を保護するとともに、超電導状態が部分的に破れて抵抗が発生(常電導転移)した場合に電流を迂回させる。安定化層40は、電気抵抗率が低く、熱伝導率の高い材料で構成されるのが好ましく、銀(Ag)、あるいは銀の合金で構成される。安定化層40の成膜には、例えばスパッタリング法を適用できる。安定化層40の厚みはここでは1〜30[μm]である。
金属基板10から銀安定化層まで積層した積層体の周囲を被覆する銅保護層(図示省略)は、銀(Ag)を用いるよりもコスト低廉化を図ることができる。銅保護層は、例えば、メッキ法の電気メッキ法を用いて、安定化層40上に成膜されるように形成される。
<本実施の形態に係る超電導線材の製造方法の概要>
図2は、本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法の説明に供するフローチャートである。
図2に示すように、超電導線材1(図1参照)の製造方法は、ステップS1では、金属基板10上に、中間層を形成する。本実施の形態では、中間層は複数層で形成されるので、まず、金属基板10上に、スパッタリング法で第1中間層(例えばAl層)21及び第2中間層22(LaMnO層)22を順に成膜し、第2中間層22であるLaMnO層上にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により第3中間層23であるMgO層を成膜する。次いで、MgO層上に、スパッタリング法により第4中間層24(例えば、LaMnO層)を形成し、LaMnO層上に、スパッタリング法により第5中間層25(例えば、CeO層)を成膜する。これら各層を順に成膜することで中間層を形成する。
ステップS2では、テープ状の金属基板10に形成した中間層上に、MOD法により超電導層30を形成する。MOD法では、先ず、金属基板10上に中間層を成膜してなるテープ材を、超電導原料溶液(有機金属塩を有機溶媒に溶解させたもの)に浸して、引き上げること(いわゆるディップコート法)により、テープ材の表面、つまり中間層の表面に超電導原料溶液を付着させて、仮焼成炉内で、仮焼成する。そして、これらの処理(ディップコートと仮焼成)を適宜繰り返すことで、テープ材に超電導前駆体を形成する。次いで、本焼成炉内で、テープ材上の超電導前駆体に対して本焼成を行うことにより、酸化物超電導層(超電導層30)を形成する。なお、これらディップコート、仮焼成、本焼成等の各処理は、各処理を施す機器(例えば、超電導原料溶液を貯留した容器、仮焼成炉、本焼成炉)内を、送り出しリールから巻き取りリールに送られるテープ材を通過させることで行うことが望ましい。ステップS3では、超電導層30上にスパッタリング法により安定化層40を形成する。次いで、超電導層30及び安定化層40を順に積層されたテープ材上に、電気メッキ法等により銅保護層を形成して、超電導線材1が製造される。
このように超電導線材を製造する際に、図2のステップS1における中間層を形成する工程において、上述したように、MgO層である第3中間層23の結晶面内配向性が高ければ高い程、このMgO層の上層として形成されるCeO層(第5中間層25)も高い結晶配向性を有し、ひいては、CeO層(第5中間層25)を下地層とする超電導層30の配向性が向上する。
ステップS1の中間層形成工程におけるMgO層(第3中間層23)の生成について詳細に説明する。
まず、金属基板10に第1中間層21及び第2中間層22を順に形成する。第1中間層21は、例えばAl層であり、このAl層上に、第2中間層22として、例えば、スパッタ法によりLaMnO層を形成する。
次いで、金属基板10上の第1中間層(Al層)21上に形成されたLaMnO層(第2中間層22)上に接して、IBAD法によってMgO層(第3中間層23)を形成する。
ここで、MgO層を形成するMgO形成装置の一例と、この形成装置を用いたIBAD法によりMgO層を形成する方法について説明する。
図3は、本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法におけるMgO層形成装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
MgO形成装置60は、成膜部61と、ターゲット63と、ターゲットホルダ64と、スパッタ部65と、真空チャンバ66と、イオンガン67とを有する。
成膜部61は、金属基板10上に第1中間層(拡散防止層として機能)21と第2中間層(ベッド層として機能)22が順次成膜されて形成された基材50の表面、つまり、LaMnO層上にMgO膜を成膜してMgO層を形成する。
なお、基材50は、長尺のテープ状金属基板であるので、ここでは、真空チャンバ66内で成膜部を挟む位置、若しくは真空チャンバ66外で真空チャンバ66を挟む位置に、基材の送り出し装置(例えば、送り出しリール)と、巻き取り装置(例えば巻き取りリール)とを備えることが好ましい。送り出し装置から連続的に成膜部61の基材ホルダ612に送り出し、続いて巻き取り装置で巻き取ることで、基材ホルダ612の表面で、基材50の表面(成膜面)にMgO層である第3中間層23が形成される。
成膜部61は、基材50を保持する基材ホルダ612と、基材ホルダ612に保持される基材50を冷却する冷却機構部614とを有する。
基材ホルダ612は、MgO形成装置60、具体的に真空チャンバ66内に搬入される基材50を表面で保持する。ここでは、基材50は基材ホルダ612の表面上を走行するように構成される。また、基材ホルダ612が保持する基材50は、冷却機構部614により所定の温度となるように冷却される。
冷却機構部614は、基材ホルダ612を所定の温度で冷却することで基材50を所定の温度で冷却する。
図4は、MgO形成装置60の冷却機構部614を模式的に示す成膜部61の平面図である。図4に示すように、冷却機構部614は、基材ホルダ612内に、基材50と接触する表面全面に亘って配置され、内部に冷却水が流され、且つ、熱伝導材料から構成される配管である。ここでは一端部を基材50の走行方向と直交する一側方側に配置し、中央部分を基材ホルダ612の全面に亘るように蛇行して配置し、他端部を基材50の走行方向と直交する他側方側に配置している。
冷却機構部614の配管では、一端部から内部に冷却水を流すことで、成膜部61において、基材50が走行する基材ホルダ612の表面を全面に亘って冷却しつつ他端部側から排出される。冷却機構部614である配管の一端部と他端部は、図示しない冷却水供給装置に接続されており、他端部から排出された冷却後の冷却水を再び冷却して、一端部に流す。なお、成膜部61は、基材ホルダ612の温度を計測する温度センサを有しており、MgO形成装置60は、図示しない制御部により、温度センサで検出する温度を監視しつつ、所定の範囲(後述する0℃以上40℃以下)内の温度となるように冷却機構部614である配管に流す冷却水を制御する。また、成膜部61は、基材ホルダ612の水平角度を調整できる角度調整部(図示省略)を有する。
ターゲット63は、ここでは、Mg(MgOでもよい)を構成粒子として有しており、必要に応じて成膜雰囲気中に酸素ガスを供給して成膜する。ターゲット63は、基材ホルダ612において基材50を保持する面の斜め上方に所定間隔をもって対向配置される。
ターゲットホルダ64は、ターゲット63を保持するとともに、保持するターゲット63に電圧を印加してスパッタリングが可能となっている。
スパッタ部65はターゲット63の構成粒子を叩き出し可能である。ここでは、スパッタ部65は、ターゲットホルダ64及び成膜部61の基材ホルダ612に電気的に接続されており、ターゲットホルダ64を介して、ターゲット63に高周波電圧を印加してターゲット63の構成粒子を叩き出す、つまり、スパッタリングを行う。
例えば、スパッタ部65は、高周波電源と整合器、スイッチ等を有する。高周波電源は、スイッチオンにより、インピーダンスの調整を行う整合器を介してターゲット63(詳細にはターゲット保持部)に、正負両極性成分を有する高周波電圧を、印加する。なお、この高周波電源は、ターゲット63から供給材料をスパッタリングによって叩き出すことが可能な周波数範囲の高周波電圧を発生する電源であり、接地電圧に対して正負両方の成分を有する高周波電圧を供給する。スパッタ部65は、所謂RFスパッタ法によりターゲット63から基材50のLaMnO層上(成膜面)にMgOを供給しているが、これに限らず、ターゲット63にイオンビームを照射するイオンビームスパッタ法を適用しても良い。また、電子ビーム蒸着法、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、CVD法(化学気相成長法)等の方法を適用して、基材50の表面にMgOを供給する構成のスパッタ部65としてもよい。
真空チャンバ66は、内部のMgO形成空間と外部とを気密的に仕切る室であり、MgO形成空間内で基材50の周囲を、真空雰囲気に保持する。なお、真空チャンバには、ガスボンベ等の雰囲気ガス供給装置が接続されており、MgO形成空間を真空等の低圧状態で、且つ、アルゴンガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気にしたり、低圧状態で、且つ、酸素を含む不活性ガス雰囲気にしたりできる。また、この真空チャンバには、MgO形成空間のガスを排気する真空ポンプ等のガス排気部が接続されている。MgO形成装置60は、図示しない制御部により、ガス供給部とガス排出部の動作を制御して、真空チャンバ内の圧力を制御する。
イオンガン67は、ガスの原子または分子の一部をイオン化してイオンビームとして、基材50の表面(LaMnO層)に照射する装置である。
イオンガン67は、基材ホルダ612において基材50を保持する面の斜め上方に所定間隔をもって対向され、かつ、ターゲット63と離間して配置される。
なお、成膜部61が備える角度調整部は、イオンガン67に取り付けることによって、イオンガン67の傾斜角度を調整してイオンの照射角度が調製されるようにしてもよい。
このイオンガン67の構成は周知の構成である。例えば、イオンガン67は、フィラメントを有する本体容器内に、本体に接続されたArガス等を導入する導入管を介してイオン化させるガスを導入し、本体容器の正面に備える引き出し電極を介してイオンをビーム状(黒矢印で示す)に照射する。
イオンガン67は、その中心軸Cを基材50の上面(第2中間層22であるLaMnO層の上面;成膜面)に対して傾斜角度θ(30〜60deg.が好ましいが、ここでは45deg.)で傾斜して対向する。つまり、イオンガン67は基材50のLaMnO層の上面に対して傾斜角θでイオン照射できる位置に配設されている。なお、イオンガン67によって基材50に照射されるイオンは、He、Ne、Ar、Xe、Kr等の希ガスのイオン、あるいは、それらと酸素イオンの混合イオン等で良いが、ここではArを使用する。
このMgO形成装置60では、IBAD法を用いて、成膜部61の基材ホルダ612の表面で基材50の表面(LaMnO層)を成膜して、基材50の表面に第3中間層23であるMgO層形成する。
まず、図3に示すMgO形成装置60の真空チャンバ66内に、送り出し装置から送り出された長尺の基材50が導入されて、成膜部61の基材ホルダ612に、基材50の表面であるLaMnO層を表面(成膜面)となるようにセットする。
次いで、ターゲットホルダ64にターゲット63としてMgOをセットするとともに、イオンガン67から基材50の表面(LaMnO層)に照射できるようにする。ここででは、イオンガン67から照射されるイオンを基材50の表面(LaMnO層)に照射できるようにする。
次いで、真空チャンバ66内をガス排出部(図示省略)により所定の圧力に調整する。また、MgO層形成装置60は、真空チャンバ66に接続されたガス供給部(図示省略)により、真空チャンバ内にArガス等の不活性ガスや雰囲気ガスを導入して、真空チャンバ66内の圧力を所定の圧力となるように制御する。
ところで、IBAD法により成膜されたMgO層は、5nm程度の薄膜で良好な配向膜が得られるが、膜厚や温度等の制御が困難であり、特にMgO層の配向は成膜温度への依存性が高いことが知られている。具体的には、成膜するための設定温度が40℃以下であれば良好な配向を得ることができるが、IBAD法では、成膜時にMgO膜の積層とイオンビームによるエッチングが同時に行われるので、基材50、成膜部61(具体的には基材ホルダ612)が加熱され、設定温度を維持することが難しく安定した配向を有する長尺のMgO層を有する中間層を形成することが困難である。また、MgO層の成膜時の基材50の設定温度が、5℃未満であると、LaMnO層に成膜されるMgO膜の配向が乱れ、形成されるMgO層の配向も乱れることが判った。
特に、MgO層の真下がLaMnO層である場合、MgO成膜時の配向性の制御は、他の層と比較して、更に困難である。
これに対し、本実施の形態では、MgO層形成装置60が、IBAD法によりMgO層を形成する際に、成膜部61内部の冷却機構部614を用いて基材ホルダ612を介して基材50(LaMnO層)を冷却する。MgO形成装置60は、成膜部61において、基材50(LaMnO層)の温度を、5℃以上40℃以下の範囲内の設定温度にて冷却する。より好ましくは、基材50(LaMnO層)の温度を、15℃以上40℃以下の範囲の設定温度にて冷却する。この範囲設定は、MgO層の成膜時の基材50の設定温度が、40℃を超えると、LaMnO層に成膜されるMgO膜の配向が乱れ、形成されるMgO層の配向も乱れる虞があるためである。
加えて、イオンガン67とスパッタ部65を作動させる。
スパッタ部65を作動させる、具体的には、スパッタ部65においてスイッチをオンすると、ターゲット63側に高周波電圧を印加して、整合器を介してインピーダンスマッチングが行われる。そして、不活性ガスが供給された真空チャンバ66内にプラズマが発生し、イオン化したアルゴンがターゲット63をスパッタリングする(ターゲット63の構成粒子(Mg)を叩き出す)、叩き出されたターゲット63の構成粒子(例えば、Mg)基材50のLaMnO層上に飛来する。そして、LaMnO層上に、ターゲット63から叩き出した構成粒子(Mg)を堆積させると同時に、イオンガン67からArイオンと酸素イオンの混合イオンを照射する。
本実施の形態では、金属基板10上に少なくともLaMnO層(第2中間層22)を表面に有する基材50の表面にイオンビームアシスト法により成膜したMgO層(第3中間層23)を形成する第1工程と、MgO層(第3中間層23)が形成された基材50に、MgO(第3中間層23)の上層として少なくともCeO層(第5中間層25)及びREBaCuO超電導層30(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1種以上の元素を示す)を形成する第2工程とを有する。第1工程は、基材50の表面のLaMnO層(第2中間層22)へのMgO層(第3中間層23)の成膜時に、基材50を冷却する。また、MgO層(第3中間層23)の成膜時に冷却する基材50の設定温度が、5℃以上40℃以下とする。また、第2工程として、MgO層(第3中間層23)の直上にLaMnO層(第4中間層24)を成膜した後で、CeO層(第5中間層)及びREBaCuO超電導層30を順に形成してもよい。
LaMnO層へのIBAD法によりMgO層の成膜時に、冷却機構部614を用いて、基材50、具体的には、LaMnO層を、5℃以上40℃以下の範囲の特定の温度に冷却する。これにより、従来のIBAD法により長尺の基材50に長手方向に沿ってMgO層を形成(成膜)する場合と異なり、イオンビーム照射によって基材50の温度が上昇することによって、長手方向で形成されるCeO層の配向度が著しく低下することがない。すなわち、MgO層の形成時に、イオンビーム照射により基材50の表面(具体的にはLaMnO層の温度が上昇することがなく、5℃以上40℃以下の範囲内の設定温度のLaMnO層に、MgOを成膜してMgO層を形成する。このように、LaMnO層上に接して第3中間層23であるMgO層を形成するとともに、その形成時(所謂成膜時)のLaMnO層の温度を特定の温度で制御することで、MgO層自体の配向性を向上させることができる。これにより、MgO層の上層として形成され、且つ、超電導層30の下地層として機能するCeO層の面内配向度ΔΦ(°)を小さくして向上させることができ、面配向性の優れた高配向のCeO層を形成できる。加えて、CeO層上に超電導層を形成することで製造される超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icを向上させることができる。したがって、中間層として、配向性の優れたMgO層を形成できるので、その上層のCeO層の高配向性を実現して、優れた超電導特性を有する超電導線材を好適に製造できる。
<実施例1>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてLaMnO層を成膜して基材50を形成した。この基材50の表面のLaMnO層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向層として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して、0m−100mまで25℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚515nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに3.5deg.であった。このようなCeO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で160A、100mの部分で170Aであり0mから10m部分の間隔で測定しても略均等な値であった。
<実施例2>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてLaMnO層を成膜して基材50を形成した。この基材50の表面のLaMnO層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向膜として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して0m−100mまで35℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚515nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに3.9deg.であった。このようなCeO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で155A、100mの部分で160Aであり0mから10m部分の間隔で測定しても略均等な値であった。
<実施例3>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてLaMnO層を成膜して基材50を形成した。この基材50の表面のLaMnO層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向層として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して0m−100mまで25℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚15nmのLaMnO層と膜厚500nmのCeO層を順に形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに3.2deg.であった。このようなCeO/LaMnO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で200A、100mの部分で210Aであり0mから10m部分の間隔で測定しても略均等な値であった。
<比較例1>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてGdZr層を成膜して基材を形成した。この基材の表面のGdZr層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向層として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して、0m−100mまで25℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚515nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに7.0deg.であった。このようなCeO/MgO/GdZr/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で50A、100mの部分で55Aであり0mから10m部分の間隔で測定しても略均等な値であった。
<比較例2>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上にLaMnO/Al層を形成して基材50とし、このLaMnO層上に、IBAD法により配向膜として膜厚8nmのMgO層を形成した。このMgO層は、MgO装置60において、冷却機構部614を使用せず、基材50の設定温度を冷却することなく、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。このMgO層形成時には、連続的な温度上昇が生じ、MgO層が形成される基材50は、0m部分では35℃、100m部分では180℃であった。そしてMgO層上に膜厚15nmのLaMnO層と膜厚500nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分で3.9であり、100m部分で8.0deg.であった。このようなCeO/LaMnO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で160A、100mの部分で20Aであった。
<比較例3>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてLaMnO層を成膜して基材50を形成した。この基材50の表面のLaMnO層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向層として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して、0m−100mまで50℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚515nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに6.0deg.であった。このようなCeO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で90A、100mの部分で95Aであった。
<比較例4>
金属基板10としての100m長のハステロイテープ(Hastelloy:登録商標)上に拡散防止層としてAl層を成膜し、そのAl層上に配向制御層(ベッド層)としてLaMnO層を成膜して基材50を形成した。この基材50の表面のLaMnO層上に、MgO形成装置60を用いてIBAD法により配向層として膜厚8nmのMgO層を形成した。すなわち、このMgO層は、基材50を冷却しつつ、MgターゲットをRFスパッタで成膜し、同時に45deg.の角度からイオンガン67を用いてイオンビームを照射して形成した。MgO層形成時における基材50の冷却は、成膜部61において、冷却機構部614を用いて、走行する基材50に対して、0m−100mまで0℃の一定の設定温度で冷却することにより行われた。そしてMgO層上に膜厚515nmのCeO層を形成した結果、CeO層の配向度ΔΦは、0m部分、100m部分ともに6.2deg.であった。このようなCeO/MgO/LaMnO/Al/Hastelloyテープ上にTFA−MOD法によりYBCO層を形成した結果、製造される幅5mm、全長100mのYBCO超電導線材の超電導特性(臨界電流値)Icは、0mの部分で80A、100mの部分で85Aであった。
これら実施例1〜3及び比較例1〜4におけるMgO層直下の層(制御配向層)、MCeO層の配向度ΔΦ、超電導特性(臨界電流値)Icを表1に示す。
Figure 0006587839
比較例1と実施例1〜3の結果に示すように、Y層にMgO層を成膜した構成をよりも、LaMnO層にMgO層を成膜した構成の方が、MgO層の上方で形成されるCeO層の配向性(配向度ΔΦ(deg.))が遙かに優れることが判った。これにより製造される超電導線材の超電導特性も、Y層に成膜したMgO層を有する超電導線材よりも、LaMnO層に成膜したMgO層を有する超電導線材の方が、超電導特性が遙かに優れることが判った。
実施例3と比較例2〜4の結果に示すように、LaMnO層にMgO層を成膜した場合、LaMnO層を表面に有する基材の冷却設定温度を5℃以上40℃以下の範囲外の設定温度である50℃或いは0℃で一定となるように冷却するよりも、5℃以上40℃以下の範囲内の25℃で一定となるように冷却した方が、CeO層の配向性(配向度ΔΦ(deg.))が遙かに優れ、長手方向での配向度ΔΦdeg.の均一性も優れることが判った。
このように、本実施の形態の製造方法によれば、基材50の表面のLaMnO層へのMgO層の成膜時に、基材を冷却し、そのときの基材の設定温度を、冷却設定温度を5℃以上40℃以下にしている。これにより、長尺の超電導線材を製造する際に、長手方向で延在するCeO層の配向度が向上して、均一な優れた配向性を有し、このCeO層を下地層とする超電導層を好適に形成して、優れた超電導特性を有する超電導線材を製造できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、超電導層上に形成された銀安定化層に、銅保護層を好適に形成することにより、超電導層を銅保護層で被覆した構成を有する酸化物超電導線材を、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造できる効果を有し、長尺のテープ状の酸化物超電導線材の製造に有用である。
1 超電導線材
10 金属基板
21 第1中間層
22 第2中間層
23 第3中間層
24 第4中間層
25 第5中間層
30 超電導層
40 安定化層
50 基材
60 MgO形成装置
61 成膜部
63 ターゲット
64 ターゲットホルダ
65 スパッタ部
66 真空チャンバ
67 イオンガン
612 基材ホルダ
614 冷却機構部

Claims (3)

  1. 基板上に少なくともLaMnO層を表面に有する基材の前記表面にイオンビームアシスト法により成膜したMgO層を形成する第1工程と、
    前記MgO層が形成された基材に、前記MgO層の上層として少なくともCeO 及びREBaCuO超電導層(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1種以上の元素を示す)を形成する第2工程とを有し、
    前記第1工程では、前記基材の表面の前記LaMnO層への前記MgO層の成膜時に、前記基材を5℃以上40℃以下の設定温度で冷却する、
    酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記第1の工程では、前記基材を25℃以上35℃以下の設定温度で冷却する、
    請求項1記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記第2工程では、前記MgO層の直上にLaMnO層を成膜した後で、前記CeO層及び前記REBaCuO超電導層を順に形成する、
    請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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