本発明とは別の第1の参考形態について、図1乃至図14を参照しつつ説明する。
本参考形態に係るコネクタ10は、いわゆる雌型のコネクタであり、複数の雌型のコネクタ端子20,20,…とコネクタハウジング(以下、単に「ハウジング」と称する。)70とを備えている。このコネクタ10は、相手方の雄型のコネクタ(図示せず:以下、「相手方コネクタ」と称する。)と互いに嵌合及び離脱が可能であり、その相手方コネクタは、前記複数のコネクタ端子20,20,…に対応する数の雄型のコネクタ端子(図示せず:以下、単に「相手方端子」と称する。)と、これらの相手方端子を保持するコネクタハウジング(図示せず:以下、単に「相手方ハウジング」と称する。)とによって構成される。
前記コネクタ端子20は、前記相手方端子と嵌合及び離脱が可能であり、当該コネクタ端子20に当該相手方端子が挿入されて嵌合する(挿嵌される)ことで、両端子が互いに電気的に接続される。図1乃至図7に示されるように、このコネクタ端子20は、相手方端子が挿嵌される端子挿嵌部30と、被覆電線(以下、単に「電線」と称する。)Wの端末が接続される(図9乃至図11参照)電線接続部50と、端子挿嵌部30と電線接続部50とを連結し且つ電気的に接続する連結部60とを備える。
前記端子挿嵌部30と前記電線接続部50は、図11に示されるように、当該端子挿嵌部30に挿嵌される相手方端子の挿嵌(嵌合)方向(本参考形態においては図6に示されるような相手方端子Tの中心軸方向)Cと、当該電線接続部50に接続される後述の電線Wの端末の軸心方向Xとがそれぞれ互いに平行若しくは略平行になると共に、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとにそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なるように並設される。
前記連結部60は、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとにそれぞれ交差する方向に端子挿嵌部30と電線接続部50とを連結している。本参考形態においては、連結部60は、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとにそれぞれ直交する方向に端子挿嵌部30と電線接続部50との先端部同士を連結している。即ち、端子挿嵌部30と電線接続部50と連結部60とは、当該連結部60の両端からこれと直交する方向に前記端子挿嵌部30及び前記電線接続部50がそれぞれ突出するような位置関係にそれぞれ配設されている。
前記コネクタ端子20は、導電性板材(本参考形態においては金属板)を図8に示される所定形状に打ち抜き、該所定形状の金属板に折り曲げ加工等を施すことにより形成される。従って、端子挿嵌部30の少なくとも一部(本参考形態においては、端子挿嵌部30の基壁36)と、電線接続部50の少なくとも一部(本参考形態においては、電線接続部50の基壁52)と、連結部60とが、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとを含む平面に沿った共通の板状体により構成されている(図1及び図2参照)。
前記端子挿嵌部30は、前後方向(前記中心軸方向C)に沿った細長い角筒状に形成され、その前側に、相手方端子が挿入可能である開口が形成されている。より詳細には、端子挿嵌部30は、底壁32と、該底壁32の左右両側縁から立ち上がる一対の側壁34,34と、一方の側壁34の上端縁から他方の側壁34の上端縁まで架け渡され、底壁32と略平行な基壁36とで構成されている。
図6及び図7に示されるように、基壁36は、二層に形成されている。そして、下側の層における後端部の一方の側壁34側から該一方の側壁34に沿って連絡部38が垂下し、この連絡部38の下端から底壁32に沿うようにして板状のバネ片40が延びている。このバネ片40は、斜め上方に向かって傾斜しつつ端子挿嵌部30の後端部から片持ち状に延設されている。そして、その前端部は、頂上部42を経て下方に向かって僅かに傾斜した自由端となっている。
基壁36の下側の層には、略矩形状に下方へ打ち出し成形された受圧部44が形成されている。該受圧部44は、前記バネ片40の頂上部42と対向する位置にあり、このバネ片40と前記端子挿嵌部30に挿嵌された相手方端子との接触圧を確保する。詳細には、先ず、相手方端子Tが端子挿嵌部30に挿嵌された際に、該相手方端子Tとバネ片40の頂上部42とが接触してバネ片40は下方側に弾性変形する。このバネ片40の弾性変形に基づく弾発力により、相手方端子Tがバネ片40によって上方側に押圧される。その結果、受圧部44とバネ片40の頂上部42とで相手方端子Tが狭持され、電気的な接続がなされる。その際に、受圧部44は、バネ片40の頂上部42に押圧されることで上方側に移動しようとする相手方端子Tの前記上方側への移動を規制することで接触圧を確保する。
底壁32の中央付近には補助バネ片46が形成されている。この補助バネ片46は、略矩形状に形成されると共に、前記バネ片40に沿って斜め上方に傾斜しながら片持ち状に延びる。該補助バネ片46は、底壁32を部分的に切り起こすことによって形成されており、端子挿嵌部30の下方に露出している。
バネ片40と補助バネ片46とは、互いに撓み変形していない自由状態のとき(端子挿嵌部30に相手方端子が挿嵌されていないとき)には互いに僅かな間隔をおいて離間している。しかし、端子挿嵌部30に相手方端子が挿嵌された際には、その相手方端子がバネ片40と接触することでこれを下方に撓み変形させ、当該バネ片40の下面を補助バネ片46に対して上方から当接させる。
図1乃至図5に示すように、前記電線接続部50は、接続される電線Wの端末の軸心方向Xに沿って延びる基壁(この参考形態では天井壁)52と、この基壁52の両側縁から下方に向かって延設される一対の導体バレル54,54及び一対のインシュレーションバレル56,56とを備える。一対の導体バレル54,54と一対のインシュレーションバレル56,56とは、基壁52の長手方向(前記軸心方向X)に沿って前後に並んで設けられている。詳しくは、基壁52の前方側両側縁から一対の導体バレル54,54が下方に向かって互いの間隔が広がるように延設され、基壁52の後方側両側縁から一対のインシュレーションバレル56,56が下方に向かって互いの間隔が広がるように延設されている。尚、本参考形態においては、導体バレル54とインシュレーションバレル56とは、それぞれ一対ずつ形成されているが、これに限定される必要はなく、それぞれ二対以上形成されてもよい。
連結部60は、端子挿嵌部30と電線接続部50とを連結し且つ電気的に接続している平面視矩形状の板状体であり、本参考形態においては、端子挿嵌部30の基壁36及び電線接続部50の基壁52と一体的に形成されている。詳しくは、前記連結部60と、前記端子挿嵌部30の基壁36と、電線接続部50の基壁52とが、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとを含む平面に沿った一枚(共通)の板状体で構成されている。そして、連結部60は、前記中心軸方向Cに沿って延びる端子挿嵌部30の基壁36の先端部と、前記軸心方向Xに沿って延びる電線接続部50の基壁52の先端部とを、前記中心軸方向C及び前記軸心方向Xに直交する方向に沿って連結するように配設されている。
前記連結部60の長辺方向(図1及び図2における左右方向)の中間部位(本参考形態においては、中央部)には、下方に突出する突条(リブ)62が形成されている。該突条62は、前後方向に沿って延び、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとの捩れに対する連結部60の剛性を高める。本参考形態においては、突条62は、前後方向に沿った一本の直線状に形成されているが、これに限定される必要もなく、複数本形成されてもよく、曲線状や鋸歯状であってもよい。即ち、突条は、板状の連結部60の前記捩れに対する剛性を高めるものであればその形状や数は限定されない。
図12乃至図14に示されるように、ハウジング70は、合成樹脂により略直方体形状に成形されたもので、複数の前記コネクタ端子20がそれぞれ挿嵌される(収容される)複数のキャビティ(コネクタ端子収容室)72,72,…を備えている。また、ハウジング70の上部には、相手方ハウジングと係脱可能な係合片76が形成されている。
各キャビティ72は、コネクタ端子20を収納(挿嵌)するための略直方体形状の収納空間であり、ハウジング70の背面側から前方(正面)側に向かって延びるように形成されている。該キャビティ72には、ハウジング70の背面側から前方側に向かって、コネクタ端子20が先端側から挿入される。各キャビティ72は、前記コネクタ端子20の全体が挿入可能な形状を有する。
各キャビティ72は、前記コネクタ端子20が、その端子挿嵌部30と電線接続部50とが上下方向に沿って並ぶ姿勢で挿嵌可能な形状を有し、本参考形態では正面視縦長の矩形状の収納空間である。より詳しくは、後述するように、電線Wの端末が接続された電線接続部50と前記連結部60との境界に近い位置で、当該連結部60が、当該電線接続部50が端子挿嵌部30側に近づく向きに直角に屈曲し、さらに、端子挿嵌部30が電線接続部50の下側に位置する姿勢で、コネクタ端子20が各キャビティ72に挿嵌される。即ち、キャビティ72は、正面視における端子挿嵌部30の底壁32と基壁36との間隔に対応する幅と、端子挿嵌部30の電線接続部50とは反対側の側壁34と前記屈曲させた電線接続部50の基壁52との間隔に対応する高さとを有する縦長の収納空間である。
前記キャビティ72は、挿嵌されるコネクタ端子20における前記端子挿嵌部30と電線接続部50との並び方向(図12における上下方向)と直交する方向(図12における左右方向)に並んでいる。即ち、正面視縦長の矩形状の収納空間であるキャビティ72が左右方向に並んでいる。本参考形態においては、左右方向に等間隔で4つ並んだキャビティ72の列が上下2段に存在している。
前記ハウジング70の正面側の壁には、前記各キャビティ72及びこれに収容されるコネクタ端子20と対応する位置に、それぞれ、複数の開口74,74,…が設けられ、これらの開口74にそれぞれ相手方端子が挿入可能である。即ち、開口74,74,…は、コネクタ10が相手方コネクタと嵌合する際、キャビティ72内に挿嵌されているコネクタ端子20の端子挿嵌部30に相手方端子が挿嵌するのを許容するように、ハウジング70の正面側の壁を貫通している。
係合片76は、ハウジング70が相手方ハウジング(図示せず)と嵌合・離脱する際に弾性変形するものであり、上面中央部には、相手方ハウジングと係合する係合突起78が突出している。
次に、前記コネクタ端子20の製造方法、並びに当該コネクタ端子20及びハウジング70の使用要領を説明する。
コネクタ端子20は次のようにして製造される。まず、導電性板材(本参考形態においては、板厚0.2mmの金属板)が図8に示されるようにプレスされることによって所定形状に打ち抜かれる。この形状は、展開状態の複数のコネクタ端子20’と、これらの展開状態のコネクタ端子20’同士を連結する帯状片(いわゆるキャリア)90を含む形状である。この連結状態のまま、展開状態のコネクタ端子20’,20がそれぞれ所定の手順によって折り曲げ加工され、その後に帯状片90から分断される。これにより、複数のコネクタ端子20が製造される。
前記コネクタ端子20は次のようにして使用される。まず、図9乃至図11に示されるように、コネクタ端子20の電線接続部50に、その長手方向に沿って、導体である芯線2の先端を露出させた電線Wの端末がセットされる。このとき、電線Wの端末は、芯線2の露出している部分が一対の導体バレル54,54同士の間に位置決めされ、前記露出している芯線2の近傍の絶縁被覆(芯線が絶縁層によって被覆されている部分)4が一対のインシュレーションバレル56,56同士の間に位置決めされる。
次に、一対の導体バレル54,54が、その間を通る電線Wの露出させた芯線2を抱き込むようにかしめられることで、前記電線Wの芯線2に前記電線接続部50が圧着され、かつ、電気的に接続される。同様に、一対のインシュレーションバレル56,56が、その間を通る前記電線Wの絶縁被覆4を抱き込むようにかしめられることで、前記電線Wの絶縁部分にも前記電線接続部50が圧着され、当該電線接続部50と当該電線Wとが強固に結合される。
次に、図12に示されるように、前記連結部60のうちこの連結部60と前記電線Wが接続された状態の電線接続部50との境界に近い部位が折り曲げられ、これにより当該電線接続部50と端子挿嵌部30との距離が短縮される。詳しくは、前記電線Wが圧着された電線接続部50の基壁52が端子挿嵌部30の基壁36に対して正面視略直角方向となるように、折り曲げられる。
前記折り曲げ後、前記コネクタ端子20の端子挿嵌部30が前記電線接続部50の下側に位置する姿勢で、当該コネクタ端子20がハウジング70のキャビティ72内に先端側から挿嵌される。この挿嵌により、ハウジング70の開口74とコネクタ端子20における筒状の端子挿嵌部30の先端側開口とが一致し、当該開口74を通じて相手方端子がハウジング70の前面側からコネクタ端子20の端子挿嵌部30に挿嵌することが可能な状態となる。この挿嵌により、コネクタ10は、相手方コネクタと電気的に接続可能となる。
以上示したコネクタ端子20では、相手方端子との嵌合(挿嵌)方向Cにおける全体の長さ(全長)が、従来のコネクタ端子よりも短くなる(短尺化される)。具体的に、前記コネクタ端子20では、その端子挿嵌部30と電線接続部50とが、相手方端子の中心軸(挿嵌)方向C及び接続される電線Wの端末の軸心方向Xにそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なるように並設されているので、前記図35に示される従来のコネクタ端子120のように端子挿嵌部130と電線接続部150とが前後方向に沿って直列に並ぶものに比べ、相手方端子の中心軸(挿嵌)方向C及び電線Wの端末の軸心方向Xにそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なっている長さ分だけ、全長が短くなる。
例えば、本参考形態における端子挿嵌部30及び電線接続部50と同様な構成の端子挿嵌部と電線接続部とを用い、これら端子挿嵌部と電線接続部とを前後方向に沿って直列に連設した従来型のコネクタ端子を形成した場合、その従来型のコネクタ端子の全長を15.5mmとすると、端子挿嵌部30と電線接続部50とが連結部60を介して並設されている本参考形態に係るコネクタ端子20の全長は5.4mmとなり、従来品の全長の約1/3となる。
従って、上記構成のコネクタ端子20は、相手方端子の嵌合方向前方におけるスペース(嵌合作業スペース)が大きくとれない場合でも、当該相手方端子との嵌合及び離脱のための作業を容易に行うことが可能となる。
また、本参考形態のように、端子挿嵌部30の少なくとも一部と、電線接続部50の少なくとも一部と、連結部60とが、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとを含む平面に沿った共通の板状体により構成されていれば、コネクタ端子20の構造は、簡易且つ軽量なものとなる。従って、コネクタ端子20の部品点数や製造工程が減り、その結果、製造コストの低減を図ることができる。
また、連結部60に突条62が形成されることで、連結部60は、板状体に形成されても、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとの捩れに対する連結部60の剛性を高めることができる。その結果、コネクタ10の製造工程において、コネクタ端子20が電線Wに接続される際やハウジング70のキャビティ72内に挿嵌される際に、連結部60の折れ曲りによる不良品の発生率が減少する。
さらに、ハウジング70が、複数のコネクタ端子20,20,…を端子挿嵌部30と電線接続部50との並び方向と直交する方向に並ぶように保持する(挿嵌される)ことが、当該コネクタ端子20の全長方向(前記中心軸方向C)におけるハウジング70の全長を短くする。
また、ハウジング70は、複数のコネクタ端子20,20,…を、その端子挿嵌部30と電線接続部50との並び方向と直交する方向に当該コネクタ端子20が並ぶように、保持するため、互いに隣り合うコネクタ端子20,20間の距離(ピッチ)は、従来のように端子挿嵌部と電線接続部とが直列に連設されたコネクタ端子同士のピッチと同程度に抑えることが可能である。即ち、上記コネクタ10においては、複数の上述のコネクタ端子20,20,…の並んでいる方向に沿ったコネクタ端子20,20間の距離を従来のコネクタと比べて大きくすることなく、相手方コネクタとの嵌合方向におけるハウジング70の全長を短くすることができる。その結果、コネクタ10は、その複数のコネクタ端子20,20,…が並ぶ方向における幅を従来のコネクタと比べて大きくすることなく、嵌合方向における長さを短くすることができ、これにより、嵌合作業スペースが小さくても相手方端子(相手方コネクタ)と容易に嵌合・離脱させることを可能にする。
次に、第2の参考形態について図15乃至図25を参照しつつ説明する。ここで、上記第1の参考形態と同じ構成については、同じ符号を用いると共にその詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
図15乃至図19に示されるように、この参考形態に係るコネクタ端子20aは、電線接続部50と端子挿嵌部30aと連結部60aとを備える。
前記端子挿嵌部30aは、角筒状に形成されており、図20にも示されるような底壁32を有し、その先端からバネ片40aが延び、このバネ片40aが後方側に折り返されている。このバネ片40aは、斜め上方に向かって傾斜しつつ端子挿嵌部30aの底壁32先端から後方に向かって延設されている。そして、バネ片40aの中央部(頂上部)42aを経て底壁まで斜め下方に向かい、底壁32に当接した後、端部が再度、斜め上方に向かうように形成されている。
このような形状を有するバネ片40aは、相手方端子Tが端子挿嵌部30aに挿嵌された際、該相手側端子Tと前記頂上部42aにて接触し、この頂上部42aが下方側に沈むように弾性変形する。この弾性変形に基づく弾発力により、バネ片40aは相手方端子Tを上向きに押圧して基壁36に押付ける。すなわち、基壁36とバネ片40aの頂上部42aとが相手方端子Tを挟持する。これにより、両端子間の電気的な接続がなされる。
連結部60aには、端子挿嵌部30aと電線接続部50との中間に位置する係止片(係止部)80が形成されている。係止片80は、コネクタハウジング70のキャビティ72内に形成されたランスに係止されるためのものである。この参考形態では、図22に示されるように連結部60aの先端側に突片80’(図22参照)が形成され、この突片80’が図21に示されるように後方側へ折り返されることで、前記係止片80が形成されている。
このコネクタ端子20aは、前記第1の参考形態と同様に形成される。すなわち、まず、導電性板材がプレスされることによって、図22に示されるように、所定形状(展開状態のコネクタ端子20’a)に打ち抜かれ、この打ち抜かれたコネクタ端子20’aが所定の手順によって折り曲げ加工等を施され、その後、帯状片90から切り離されることで、コネクタ端子20aが製造される。
図23乃至図25に示されるように、ハウジング70の各キャビティ72内には、それぞれランス82が突設されている。ランス82は、キャビティ72の内側壁から水平方向に向かって突出し、且つ前方に向かって円弧状に湾曲し、キャビティ72内に収納されるコネクタ端子20aの端子挿嵌部30aと電線接続部50との間に位置する。
前記第1の参考形態同様、コネクタ端子20aは、その連結部60aが電線Wを接続した状態の電線接続部50と当該連結部60aとの境界位置に近い位置で折り曲げられた後に、ハウジング70のキャビティ72内に挿嵌される。この挿嵌時に係止片80がランス82と当接して当該ランス82を弾性変形させるが、当該係止片80がランス82を通過した時点で当該ランス82が弾性変形前の状態に戻り、当該ランス82の先端が係止片80の先端と係合する。これにより、コネクタ端子20aがキャビティ72内部に係止される(図25参照)。
この参考形態に係るコネクタ端子20aにおいても、第1の参考形態同様、相手方端子との嵌合方向Cにおける全体の長さが、短くなる。即ち、前記コネクタ端子20aでは、第1の参考形態同様、相手方端子Tの中心軸(挿嵌)方向C及び電線Wの端末の軸心方向Xにそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なっている長さ分だけ、従来の端子挿嵌部130と電線接続部150とが直列に連設されたコネクタ端子120よりも全長が短くなる。そのため、相手方端子の嵌合方向前方におけるスペースが小さくても、従来のコネクタ端子よりも容易に相手方端子との嵌合及び離脱作業を行うことが可能となる。
さらに、前記連結部60aは、端子挿嵌部30aと電線接続部50との中間位置に、コネクタハウジング70のキャビティ72内面に形成されたランス82に係止される係止片(係止部)80を有するから、当該連結部60aを備えるコネクタ端子20aはキャビティ72内に確実に係止される。従って、使用の際の振動等にかかわらずコネクタ端子20aはコネクタハウジング70内に確実に保持される。
また、前記第1の参考形態と全く同様の理由により、前記コネクタ端子20aを保持するハウジング70の幅を従来よりも大きくすることなく、当該ハウジングの全長(前記中心軸方向Cでの長さ)を短縮することができる。
次に、第3の参考形態について図26〜図32を参照しながら説明する。
この第3の参考形態に係る解決課題は、コネクタ端子の変形や破損の抑止にある。例えば、前記第2の参考形態に係るコネクタ端子20aが図26に示されるように電線Wの端末に圧着された状態では、当該コネクタ端子20aの端子挿嵌部30aが電線接続部50a及びこれが圧着される電線Wの中心軸からオフセットされているために、他の異物と引掛かり易い。特に、図26に示されるように前記コネクタ端子20aが端末に圧着された複数の電線Wが束ねられた場合、コネクタ端子20a同士での引掛かりが生じ易くなる。このような引掛かりは、コネクタ端子20aの変形、特に、図27に矢印Aで示されるように端子挿嵌部30aを電線接続部50から開かせるような変形を生じさせやすい。
そこで、この第3の参考形態に係るコネクタ端子20bは、前記第2の参考形態に係るコネクタ端子20aと同等の基本構成を具備するのに加え、図28〜図32に示されるような左右一対の保護部58をさらに有する。
この保護部58は、前記電線接続部50に形成されたもので、当該電線接続部50における一対のインシュレーションバレル56よりもさらに後方の位置(連結部60aから離れた位置)で当該電線接続部50の基壁52から延びる。そして、前記インシュレーションバレル56とともに曲げ加工を受けることにより、前記端子挿嵌部30aを前記連結部60aと反対の側(すなわち後ろ側)から覆う形状に成形される。具体的には、図31及び図32に示される状態から、図28〜図30に示されるように左右の保護部58の先端同士が接触もしくは近接する程度までこれらの保護部58が曲げ加工された後、第2の参考形態と同様に連結部60aが略直角に折り曲げられることにより、両保護部58は後方から端子挿嵌部30aへの異物(例えば他の端子)の接触を阻止するように位置する。
従って、この第3の参考形態に係るコネクタ端子20bによれば、電線接続部50の導体バレル54及びインシュレーションバレル56にこれらのバレル54,56と近似した保護部58を加えただけの簡素かつ安価な構造で、前記端子挿嵌部30aが他の端子と引掛かることによる当該コネクタ端子20bの変形を有効に抑止することができる。
なお、前記保護部58の形状は図28〜図30に示されるものに限定されず、前記端子挿嵌部30aを有効に保護できるものであればよい。例えば、両保護部58の先端が電線W側に湾曲していてもよい。
この第3の参考形態に係るコネクタ端子20bが例えば前記図14や図24に示されるハウジング70に保持される場合、当該コネクタ端子20bの保護部58もキャビティ72内に挿入可能となるように当該キャビティ72の形状が設定されればよい。
次に、本発明の実施の形態について図33及び図34を参照しながら説明する。
この実施の形態に係るコネクタ端子20cでは、前記と同様の変形を抑止するために、電線接続部を構成するインシュレーションバレルが利用される。具体的に、このコネクタ端子20cは、前記第2の参考形態に係るコネクタ端子20aと同様、図33に示すような端子挿嵌部30a、電線接続部50、及びこれらを連結する連結部60aを有し、前記電線接続部50は、一対の導体バレル54,54と一対のインシュレーションバレル56A,56Bとを有するが、そのうち一方のインシュレーションバレル56Bは、展開図である図34にも示されるように、前記端子挿嵌部30aの後端部(連結部60aと反対側の端部)に一体につながっている。そして、他方のインシュレーションバレル56Aが電線Wの絶縁被覆4の周方向の大半部分に巻付けられ、かつ、電線Wが前記インシュレーションバレル56Bに近づく側に連結部60aが略90°に曲げられることにより、前記インシュレーションバレル56A,56Bが電線Wに圧着されている。
このように、端子挿嵌部30aを保護するための構造として、一対のインシュレーションバレル56のうち一方のインシュレーションバレル56Bを、端子挿嵌部30aと連結するようにした連結部(上記の連結部60aを第1連結部とした場合の第2連結部)として構成することにより、端子挿嵌部30aの先端部を第1連結部60aによって連結するのみならず、後端部を前記第2連結部であるインシュレーションバレル56Bによって連結することができるため、より確実に端子挿嵌部30aを保護することができる。
このように一方のインシュレーションバレル56Bが連結部60aとは別に端子挿嵌部30aと一体につながることは、コネクタ端子20c全体の剛性を飛躍的に高め、特に電線接続部50と端子挿嵌部30aとが互いに開く向きの変形を有効に抑止する。しかも、この効果は、特別な補強部材を付加することなく、前記インシュレーションバレル56Bを端子挿嵌部30aに一体につなぐだけの簡素な構造で実現される。
なお、この実施の形態については、連結部60aが必ずしも略直角に曲げられていなくてもよい。また、インシュレーションバレル56Bが端子挿嵌部30aにつながる位置も適宜設定可能である。
なお、図34に示すように、端子挿嵌部30aの後端部32aを切り欠くことで、図33に示すように、折り曲げ加工後のコネクタ端子20の後端部32aに傾斜を形成し、他の部品等と引っ掛かることにより外力を受けることを防止する構造にしてもよい。
本発明は、以上示した実施の形態に限定されず、例えば次のような形態をとることも可能である。
・前記第1の参考形態においては、コネクタ端子20の連結部60が端子挿嵌部30の先端部と電線接続部50の先端部とを連結しているが、本発明において当該連結部60は前記各部30,50の中央部同士又は後端部同士等を連結してもよく、あるいは、前記中心軸方向Cにおける異なる位置同士(例えば、一方の先端部と他方の後端部と)を連結してもよい。即ち、連結部60は、端子挿嵌部30の前記中心軸方向Cと電線接続部50の前記軸心方向Xとにそれぞれ直交する方向に端子挿嵌部30と電線接続部50とを連結する必要はなく、前記中心軸方向Cと前記軸心方向Xとに交差する方向であればよい。
・前記各実施形態では、連結部60が一定幅(前後方向における長さが一定)の一枚の板状体として形成されているが、この連結部60はその幅が一定でない(すなわち変化する)板状体であってもよい。
・前記第1の参考形態におけるコネクタ10には、コネクタ端子20が左右方向に4つ並ぶ列が上下方向に2段となるように配設されているが、本発明はこれに限定されない。ハウジング70が複数のコネクタ端子20,20,…を該コネクタ端子20における端子挿嵌部30と電線接続部50との前記並設方向と直交する方向に並ぶように保持できるよう、キャビティ72,72,…がハウジング70に形成されていればよい。このようにキャビティ72,72,…が形成されることで、キャビティ72,72間のピッチ(間隔)を従来のコネクタ同様の狭ピッチに維持することができる。従って、左右方向に並ぶキャビティ72の個数は4つより多くても、また少なくてもよく、前記列の数も1段若しくは3段以上であってもよい。
以上のように、本発明は、被覆電線の端末に設けられ、相手方端子と接続されるコネクタ端子を提供する。このコネクタ端子は、前記相手方端子が挿嵌される端子挿嵌部と、前記被覆電線の端末に接続される電線接続部と、前記端子挿嵌部と電線接続部とを連結し且つこれらを電気的に接続する連結部とを備える。前記端子挿嵌部と前記電線接続部とは、前記端子挿嵌部に挿嵌される相手方端子の挿嵌方向と前記電線接続部に接続される被覆電線の端末の軸心方向とが平行若しくは略平行になるように並び、かつ、前記相手方端子の挿嵌方向及び前記被覆電線の端末の軸心方向にそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なる姿勢で、前記連結部を介して互いに連結されている。
このコネクタ端子の相手方端子との嵌合(挿嵌)方向における全体の長さ(全長)は、従来のコネクタ端子よりも短くなる(短尺化される)。即ち、このコネクタ端子の端子挿嵌部と電線接続部とは、前記相手方端子の挿嵌方向及び前記被覆電線の端末の軸心方向にそれぞれ直交若しくは略直交する方向において互いに重なる姿勢で相互連結されているので、従来のコネクタ端子のようにその端子挿嵌部と電線接続部とが相手方端子との挿嵌方向に直列に並んでいるものに比べ、同方向についてのコネクタ端子の長さは前記端子挿嵌部と前記電線接続部の重なり分だけ短くなる。従って、前記嵌合方向についてのスペースが大きくとれなくても、前記端子長が短い分、コネクタ同士を嵌合する作業及び離脱させる作業は容易となる。
本発明では、前記端子挿嵌部の少なくとも一部と、電線接続部の少なくとも一部と、連結部とが、前記相手方端子の挿嵌方向と前記被覆電線の端末の軸心方向とを含む平面に沿った共通の板状体により構成される。このことは、コネクタ端子の構造をより簡易且つ軽量にする。従って、前記コネクタ端子の部品点数や製造工程等が減り、その結果、製造コストの低減を図ることが可能になる。
さらに、前記連結部は、前記端子挿嵌部を前記電線接続部に近づける向きに略直角に曲げられる。このことは、当該端子挿嵌部と当該電線接続部との並び方向の寸法を削減することを可能にする。
また、前記電線接続部が、前記連結部から前記被覆電線の軸方向と平行な方向に延びる基壁と、この基壁の幅方向両端から延び、前記被覆電線の端末において露出した導体に圧着される導体バレルと、この導体バレルよりも前記連結部から離れた位置で前記基壁の幅方向両端から延び、前記被覆電線の絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレルとを有し、さらに、前記インシュレーションバレルの一方が前記連結部とは別に前記端子挿嵌部と一体につながっているので、そのコネクタ端子の変形や破損を防ぐ上で有効である。すなわち、この構造では、前記端子挿嵌部と前記電線接続部が連結部を介して連結されるのに加え、当該連結部とは別に前記インシュレーションバレルを介しても連結されているので、コネクタ端子全体の剛性が高く、当該端子の変形が有効に抑止される。
また、前記連結部は、前記端子挿嵌部と前記電線接続部との中間の位置に、コネクタハウジングの内面に形成されたランスに係止されるための係止部を有していてもよい。この係止部は、コネクタハウジング内に挿嵌されたコネクタ端子が当該コネクタハウジング内に確実に係止されることを可能にする。
また本発明は、コネクタであって、複数の上述のコネクタ端子と、これらのコネクタ端子を当該コネクタ端子がその端子挿嵌部と電線接続部との並び方向と直交する方向に並ぶように保持するコネクタハウジングとを備えるものである。
このコネクタでは、前記のように各コネクタ端子の全長が短縮される分、これらを保持するコネクタハウジングの全長も短くすることができる。しかも、このコネクタハウジングは、前記コネクタ端子がその端子挿嵌部と電線接続部の並び方向と直交する方向に当該コネクタ端子を保持するので、互いに隣り合うコネクタ端子間の距離(ピッチ)は、従来のように端子挿嵌部と電線接続部とが直列に連設されるコネクタ端子間の距離と略同等に抑えることも可能である。
即ち、本発明に係るコネクタにおいては、コネクタ端子間の距離を従来のコネクタと略同等に抑えながら、相手方コネクタとの嵌合方向におけるコネクタハウジングの全長を短くすることが可能である。このことは、相手方コネクタとの嵌合方向と直交する方向におけるコネクタハウジングの大きさを従来のコネクタと比べてあまり大きくすることなく、かつ、嵌合方向における嵌合作業スペースが小さい場合にも、前記コネクタ端子(コネクタ)とその相手方端子(相手方コネクタ)との嵌合及び離脱を容易にすることができる。