JP2011238438A - 燃料電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、燃料電池用電極の製造方法に関し、複数のアルコールを溶媒に用いる際に、塗膜のひび割れの発生を良好に抑制できる燃料電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の燃料電池用電極の製造方法は、(1)低級モノアルコール中に触媒担持カーボン及び電解質を分散させた触媒インク20を基材18上に塗布して、上記基材18上に触媒インク20の層を形成するインク層形成工程と、(2)上記触媒インク20の層の表面に多価アルコール24を塗布する多価アルコール塗布工程と、(3)上記多価アルコール24が塗布された前記触媒インク20の層を乾燥する乾燥工程と、を備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、燃料電池用電極の製造方法に関する。
従来、例えば特許文献1には、水よりも沸点の高い2価又は3価アルコールを溶媒として用いて触媒インクを生成する工程と、この触媒インクを電解質膜上に塗布し、乾燥させることで電極を形成する工程と、を備える燃料電池用電極の製造方法が開示されている。水よりも沸点の高い2価又は3価アルコールを溶媒として用いると、低沸点モノアルコールを溶媒として用いる場合に比べ、触媒インクのチクソ性や粘性を高くできる。従って、印刷時におけるインクの切れを良くすることができるので、間欠塗工性を向上できる。また、水よりも沸点の高い2価又は3価アルコールを溶媒として用いると、低沸点モノアルコールのみを溶媒として用いる場合に比べ、塗膜のひび割れを抑制できる。
特開2002−280003号公報 特開2003−297373号公報
ところで、触媒インクのチクソ性や粘性は、低沸点アルコールを用いた場合でも、固形分比率や分散方法、熱処理、高分子電解質の溶媒による粘性変化などでも高くすることができる。また、速乾性の問題も、水分比率や外部環境の制御などでも対応が可能であり、間欠塗工性が問題とはならない。
しかしながら、触媒インク用の溶媒に高沸点多価アルコールのみを用いれば、次のような問題が生じる。例えば、乾燥温度が同じと仮定した場合、低沸点モノアルコール等を溶媒として用いた場合に比べて乾燥速度が遅くなるので乾燥時間が長くなる。また、乾燥速度を上げるために乾燥温度を高温に設定すれば、それだけ多くの熱量を要することになるので、生産性が低下する可能性がある。
上記問題を低減する方法のひとつとして、高沸点多価アルコールと低沸点アルコールとを溶媒に併用する方法が考えられる。このように、2種類のアルコールを併用することで、上記問題の低減を図りつつ、塗膜のひび割れの抑制といった高沸点多価アルコールのメリットを享受できる。しかしながら、2種類のアルコールを併用すると、それだけ分散系が複雑となるので、触媒インクの分散状態が不良となる場合がある。従って、2種類のアルコールを併用する場合には、塗膜のひび割れの発生を十分に抑制できなくなる可能性があった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複数のアルコールを溶媒に用いる際に、塗膜のひび割れの発生を良好に抑制できる燃料電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池用電極の製造方法であって、
低級モノアルコール中に触媒担持カーボン及び電解質を分散させた触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に触媒インク層を形成するインク層形成工程と、
前記触媒インク層の表面に多価アルコールを塗布する多価アルコール塗布工程と、
前記多価アルコールが塗布された前記触媒インク層を乾燥する乾燥工程と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記多価アルコールの塗布方法が、ダイコート方式又はスプレー方式であることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記触媒インクの塗布方法が、ダイコート方式又はドクターブレード方式であることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3何れか1つの発明において、
前記低級モノアルコールがエタノールであることを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4何れか1つの発明において、
前記多価アルコールがプロピレングリコールであることを特徴とする。
第1〜第5の発明によれば、低級モノアルコールを用いて触媒担持カーボン及び電解質を分散させることで、触媒インクの分散状態を良好に保つことができる。また、その触媒インクの表面に多価アルコールを塗布することで、その後の乾燥工程において、低級モノアルコール及び多価アルコールをこの順に蒸発させることが可能となる。従って、触媒インクを緩やかに乾燥できるので塗膜にひび割れが生じることを良好に抑制できる。
本発明の製造方法に用いる電極製造装置の斜視模式図である。 実施例1のインクから作製した触媒層の拡大写真である。 比較例1のインクから作製した触媒層の拡大写真である。 実施例2と比較例2のインクの粒度分布の測定結果を示す図である。
以下、図1〜図4を参照に、本発明の燃料電池用電極の製造方法について説明する。先ず、本発明の燃料電池用電極の製造方法に用いる電極製造装置10の構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、電極製造装置10は、インクタンク12を備えている。インクタンク12は、内部にペースト状の触媒インク20を貯留している。
また、図1に示すように、インクタンク12は、インク供給配管14を介してダイヘッド16と接続されている。インクタンク12は、内部に図示しないポンプを備え、このポンプで触媒インク20を吸引し、ダイヘッド16側へ圧送する。ダイヘッド16は、触媒インクの吐出装置としてのダイの先端部に設けられるものであり、通常、一定幅のスリッド状に形成されている。
ダイヘッド16のインク吐出口に対向して、シート状の基材18が配置されている。基材18は、防水性や耐熱変性を有する材料から形成されている。基材18の外部接触面は、図示しない搬送機構によって支持され、基材18は、搬送機構を駆動することで図中矢印方向に移動可能となっている。
また、図1に示すように、電極製造装置10は、アルコールタンク22を備えている。アルコールタンク22は、内部に多価アルコール24を貯留している。
アルコールタンク22は、アルコール供給配管26を介してダイヘッド28と接続されている。アルコールタンク22は、インクタンク12同様、内部に図示しないポンプを備え、このポンプで多価アルコール24を吸引し、ダイヘッド28側へ圧送する。ダイヘッド28は、アルコール吐出装置としてのダイの先端部に設けられるものであり、ダイヘッド16同様、一定幅のスリッド状に形成されている。ダイヘッド28のアルコール吐出口は、ダイヘッド16のインク吐出口同様、基材18に対向している。
また、図1に示すように、電極製造装置10は、乾燥炉30を備えている。乾燥炉30は、その内部に供給する空気の温度や供給量等を調節して内部の温度を制御可能に構成されている。
次に、この電極製造装置10を用いて、本発明の燃料電池用電極を製造する方法について説明する。本発明の燃料電池用電極の製造方法は、(1)低級モノアルコール中に触媒担持カーボン及び電解質を分散させた触媒インク20を基材18上に塗布して、上記基材18上に触媒インク20の層を形成するインク層形成工程と、(2)上記触媒インク20の層の表面に多価アルコール24を塗布する多価アルコール塗布工程と、(3)上記多価アルコール24が塗布された前記触媒インク20の層を乾燥する乾燥工程と、を備える。
(1)インク層形成工程
本工程は、低級モノアルコール中に触媒担持カーボン及び電解質を分散させた触媒インク20を基材18上に塗布して、上記基材18上に触媒インク20の層を形成する工程である。
本工程においては、先ず、触媒担持カーボン、電解質及び低級モノアルコールを準備する。ここで、触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はそれらの合金等の粒子が使用される。また、担体としてのカーボンには、一般的にカーボンブラックが使用されるが、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等も使用できる。
また、電解質には、リン酸基、スルホン酸基やホスホン酸基といった酸性官能基を側鎖に有する炭化水素系の高分子樹脂が使用される。代表的な高分子樹脂としては、NAFION(デュポン社、登録商標)、FLEMION(旭硝子(株)、登録商標)、ACIPLEX(旭化成ケミカルズ(株)、登録商標)等が挙げられる。
低級モノアルコールは、触媒担持カーボン及び電解質の分散媒として用いられるものである。本発明において、低級モノアルコールとは、炭素数が4以下のモノアルコールを指す。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールである。これら低級モノアルコールはいずれも入手が容易であり何れを使用してもよいが、生産性向上の観点から水よりも沸点が低いものを使用することが好ましく、エタノールを使用することが特に好ましい。
低級モノアルコールは、取り扱い上の観点から、一定量の水で薄められていてもよい。従って、低級モノアルコールの濃度は必ずしも100%である必要はなく、使用する触媒や電解質の種類、カーボンと電解質の混合割合等によって適宜調製した上で使用することができる。
続いて、準備した触媒担持カーボン、電解質及び低級モノアルコールから触媒インク20を調製する。具体的には、触媒担持カーボン及び電解質を低級モノアルコール中に分散させて触媒インク20を調製する。分散手段は特に限定されず、例えば、超音波ホモジナイザーやジェットミル、ビーズミルを使用することができる。
続いて、調製した触媒インク20を基材18上に塗布して触媒インク20の層を形成する。触媒インク20の塗布には、ダイヘッド16を使用するダイコーター方式を採用する。ダイコーター方式は、触媒インク20を連続的に供給できるので量産に適した方式である。触媒インク20の層は、例えば、1μm〜600μm、好ましくは1μm〜300μmの厚さに形成される。
(2)多価アルコール塗布工程
本工程は、上記(1)インク層形成工程で基材18上に形成した触媒インク20の層の表面に、多価アルコール24を塗布する工程である。
本工程で使用する多価アルコール24としては、2価又は3価のアルコールであり、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリンといった2価又は3価の低級アルコールが挙げられる。2価又は3価の低級アルコールとしては、上記(1)インク層形成工程で用いる低級モノアルコールよりも高沸点のものを使用することが好ましい。例えば、低級モノアルコールとしてエタノールを使用した場合には、それよりも高沸点のエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールや1,4−ブタンジオールを用いることが好ましい。
多価アルコール24として低級モノアルコールよりも高沸点のもの使用することで、低級モノアルコール、多価アルコール24の順にアルコールを蒸発させることができる。そのため、後述する(3)乾燥工程において、触媒インク20を緩やかに乾燥させることが可能となるので、製膜にひび割れが生じることを抑制できる。多価アルコール24の塗布には、ダイヘッド28を使用したダイコーター方式を採用する。
(3)乾燥工程
本工程は、上記(2)多価アルコール塗布工程後、触媒インク20の層を60℃以上に加温して、触媒インク20中の低級モノアルコール及び多価アルコール24を乾燥除去する工程である。具体的には、触媒インク20の層の全体に60℃〜120℃の温風を当てて、これらのアルコール成分を蒸発させる。60℃〜120℃の温風を当てることで、触媒インク20中の電解質の熱分解を抑制しつつ、上記アルコール成分を効率的に除去できる。また、送風と同時に脱気することで除去速度を更にあげてもよい。
なお、上記燃料電池用電極の製造方法においては、ダイヘッド16,28を使用したダイコーター方式により触媒インク20、多価アルコール24をそれぞれ塗布したが、他の方式によってこれらを塗布してもよい。例えば、触媒インク20はドクターブレード方式により塗布することができる。また、多価アルコール24はスプレー方式により塗布することができる。これら他の方式は、触媒インク20、多価アルコール24を連続的に供給できる塗布方式である。従って、これら他の方式を採用し、又はダイコーター方式と適宜組み合わせることにより、燃料電池用電極の量産に適した製造方法を実現できる。
次に、実施例を参照して、本発明の燃料電池用電極の製造方法を詳細に説明する。
(インクの調製1)
Ptを30重量%担持したカーボンブラック(Ketjen)、水、エタノール及び電解質としてのNafionのエタノール溶液を、カーボン濃度3.5%、Nafion溶液/カーボンブラック(重量比)=1.0/1.0、水/エタノール(重量比)=1.0/1.0となるように調合した。調合後、撹拌しながら超音波ホモジナイザーで分散処理した。分散処理終了後、引き続き撹拌を4時間行い、分散を安定化させて触媒インクを得た。
(インクの塗布)
[実施例1]
調製した触媒インクをダイコーティングでPTFEシート上に塗布し、その表面に、霧状にしたプロピレングリコールを更に塗布した。この際、トータルのWET膜厚が220μmとなるように塗布した。
[比較例1]
調製した触媒インクをダイコーティングでPTFEシート上に塗布した。この際、実施例1同様、WET膜厚が220μmとなるように塗布した。
(塗布面の観察)
実施例1のインクから作製した触媒層と比較例1のインクから作製した触媒層とのひび割れの大小を目視で確認した。これらの触媒層の拡大写真を図2及び図3に示す。図2は、実施例1のインクから作製した触媒層の拡大写真である。図3は、比較例1のインクから作製した触媒層の拡大写真である。
図2から分かるように、実施例1のインクから作製した触媒層には、ひび割れが全く監察されなかった。一方、図3から分かるように、比較例1の触媒層には多数のひび割れが観察された。このことから、プロピレングリコールを更に塗布することで、ひび割れを防止できることが分かった。
(触媒インクの調製2)
[比較例2]
Ptを30重量%担持したカーボンブラック(OSAB)、水、エタノール、プロピレングリコール及び電解質としてのNafionのエタノール溶液を、カーボン濃度5.0%、Nafion溶液/カーボンブラック(重量比)=1.0/1.0、水/エタノール/プロピレングリコール(重量比)=4.5/2.0/3.5となるように調合した。調合後、撹拌しながら超音波ホモジナイザーで分散処理した。分散処理終了後、引き続き撹拌を4時間行い、分散を安定化させて比較例2のインクを得た。
[実施例2]
Ptを30重量%担持したカーボンブラック(OSAB)、水、エタノール及び電解質としてのNafionのエタノール溶液を、カーボン濃度5.0%、Nafion溶液/カーボンブラック(重量比)=1.0/1.0、水/エタノール(重量比)=6.9/3.1となるように調合した。調合後、撹拌しながら超音波ホモジナイザーで分散処理した。分散処理終了後、引き続き撹拌を4時間行い、分散を安定化させて実施例2のインクを得た。なお、実施例2のインクの水/エタノール比率は、比較例2のインクのそれとほぼ同等になるよう調製した。
(分散性評価)
比較例2及び実施例2のインクについて、日機装(社)製マイクロトラックを用いて粒度分布をそれぞれ測定し、分散性を評価した。図4は、比較例2及び実施例2のインクの粒度分布の測定結果を示す図である。図4から分かるように、実施例2のインクの粒子径のほとんどは0.1〜1μmの範囲内にあるのに対して、比較例2のインクの粒子径は、0.1μm〜10μmの範囲にあり、粒子径のばらつきが見られた。このことから、インク調製時にプロピレングリコールを加えると、インクの分散状態が低下することが分かった。
以上の実施例から、本発明の製造方法を採用すれば、インクの分散状態を良好に保ちつつ、触媒層のひび割れを良好に抑制できることが示された。
10 電極製造装置
12 インクタンク
14 インク供給配管
16,28 ダイヘッド
18 基材
20 触媒インク
22 アルコールタンク
24 多価アルコール
26 アルコール供給配管
30 乾燥炉

Claims (5)

  1. 低級モノアルコール中に触媒担持カーボン及び電解質を分散させた触媒インクを基材上に塗布して、前記基材上に触媒インク層を形成するインク層形成工程と、
    前記触媒インク層の表面に多価アルコールを塗布する多価アルコール塗布工程と、
    前記多価アルコールが塗布された前記触媒インク層を乾燥する乾燥工程と、
    を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  2. 前記多価アルコールの塗布方法が、ダイコート方式又はスプレー方式であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  3. 前記触媒インクの塗布方法が、ダイコート方式又はドクターブレード方式であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  4. 前記低級モノアルコールがエタノールであることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  5. 前記多価アルコールがプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
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