JP6677193B2 - 燃料電池電極用触媒インクに使用する溶媒の選定方法 - Google Patents
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Description
(1)触媒担持粒子、アイオノマー、水、及び溶媒を含む燃料電池電極用触媒インクの製造において、水と一緒に混合溶液を形成し、混合溶液中で触媒担持粒子にアイオノマーを吸着させて触媒担持粒子及びアイオノマーを分散させるための溶媒の選定方法であって、
溶媒として、
(i)標準状態での沸点が100℃以下であり、
ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)を使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーの疎水部のHSP値とのHSP値差が11.8以上であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が29.9以下である、
溶媒を選定する、前記方法。
本発明の燃料電池電極用触媒インクに使用するための溶媒の選定方法は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
(Ra)2=4(δdB−δdA)2+(δpB−δpA)2+(δhB−δhA)2
(式中、
Raは、物質AのHSP値と物質BのHSP値とのHSP値差を示し、
δdBは、物質Bの分散力項を示し、δdAは、物質Aの分散力項を示し、
δpBは、物質Bの双極子項を示し、δpAは、物質Aの双極子項を示し、
δhBは、物質Bの水素結合項を示し、δhAは、物質Aの水素結合項を示す)
により求めることができる。
空気極(カソード):O2+4H++4e−→2H2O
燃料極(アノード):2H2→4H++4e−
において触媒作用を示すものであれば限定されるものではなく、当該技術分野で公知の金属触媒を使用することができる。金属触媒には、例えば、以下に限定されないが、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、又はそれらの合金、例えば白金コバルトなどがある。
比較例1:溶媒としてジアセトンアルコール(DAAともいう)を使用する、電極シートの調製
溶媒として、
(i)標準状態での沸点が166℃であり、
ハンセン溶解度パラメーターを使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーとして使用するナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差が5.5であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が32.5である、
ジアセトンアルコールを選定した。
(1)30重量%のPtCoを担持したカーボン担体粒子1.6gと、水7.66gと、ナフィオン溶液(固形分濃度、21.1重量%)3.45gとを、25℃で、懸濁させて、懸濁液を得た。得られた懸濁液に、ジアセトンアルコール11.38gと、プロピレングリコール0.87gとを加えて混合液を得た。
(2)得られた混合液を、
(I)スターラーを使用して、25℃で、250rpmの回転速度で10分間撹拌し、
(II)超音波ホモジナイザー(株式会社エスエムテー製 UH−600)を使用して、氷水中において、超音波照射75秒/停止105秒を1サイクルとして、16サイクル実施して分散し、
(III)薄膜旋回型ミキサー(プライミクス株式会社製 フィルミックス)を使用して、25℃で、20m/秒の速度で3分間さらに分散し、
(IV)遠心脱泡機(株式会社シンキー製 あわとり練太郎)を使用して、1000rpmの回転速度で5分間脱泡して、
触媒インクを調製した。
(3)触媒インクを、アプリケーターを使用してテフロン基材上に塗布し、約120μmの厚さの電極シート前駆体を得た。得られた電極シート前駆体を、送風乾燥機(パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社製 MOV−112)を使用して、85℃で5分間乾燥し、電極シートを得た。
溶媒として、
(i)標準状態での沸点が82.4℃であり、
ハンセン溶解度パラメーターを使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーとして使用するナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差が10.3であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が28.1である、
2−プロパノールを選定した。
溶媒として2−プロパノールを選定した以外は、比較例1と同様にして電極シートを調製した。
溶媒として、
(i)標準状態での沸点が78℃であり、
ハンセン溶解度パラメーターを使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーとして使用するナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差が11.8であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が24.0である、
エタノールを選定した。
溶媒としてエタノールを選定した以外は、比較例1と同様にして電極シートを調製した。
実施例2:貯蔵弾性率測定
比較例1及び2並びに実施例1で調製した電極シートについて、以下の手順で貯蔵弾性率を測定した。
図3中の曲線は、比較例1及び2並びに実施例1で選定した各溶媒のHSP値とナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差と、調製した電極シートの貯蔵弾性率の関係から求めた回帰曲線である。
図3及び図4より、ナフィオンの疎水部とのHSP値差が大きいと貯蔵弾性率が低いことが分かる。
通常、ナフィオンはナフィオン溶液中で、ナフィオン分子が数10〜数100本凝集した構造(ナフィオン凝集体)をとっている。比較例1及び2のように、溶媒のHSP値とナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP差が小さい場合、溶媒がナフィオン凝集体の疎水部に侵入することによって、ナフィオン分子間の疎水性相互作用は弱くなる。その結果、ナフィオン凝集体は膨潤し、凝集状態がほどけた状態になり、ナフィオンは溶媒に溶解する。ナフィオンが溶媒に溶解すると、ナフィオンは相対的に触媒担持粒子に吸着しにくくなり、触媒インクにおける触媒担持粒子の分散性は低下する。
それに対し、実施例1のように、溶媒のHSP値とナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差が大きい場合、水及び選定した溶媒の混合溶液及び触媒インク中において、ナフィオン分子間の疎水性相互作用が強くなり、ナフィオンは凝集体を形成したまま溶媒になじみにくくなる。その結果、ナフィオンは相対的に触媒担持粒子に吸着し、触媒インクにおける触媒担体粒子の分散性は向上する。
株式会社東陽テクニカ製のMEA発電評価装置を用いて、測定した。
セル温度を82℃、バブラー温度を55℃として、I−V評価を行った。図5には、各溶媒とナフィオンの疎水部とのHSP値差に対する0.2A/cm2での電圧値をプロットした図を示す。
図5中の直線は、比較例1及び2並びに実施例1で選定した各溶媒のHSP値とナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差と、調製した電極シートの0.2A/cm2の電流における電圧の関係から求めた回帰直線である。
図5より、比較例1及び2並びに実施例1で選定した各溶媒のHSP値とナフィオンの疎水部のHSP値とのHSP値差が大きくなるにつれて、相対湿度30%の条件下での、0.2A/cm2の電流値における電圧が大きくなり、すなわち、燃料電池電極の性能が高くなることがわかる。ナフィオンは凝集体として触媒担持粒子に多点吸着しており、触媒担持粒子中の活性種近傍に多く存在するため、MEAのH+伝導性に優れている。
(i)標準状態での沸点が100℃以下であり、
ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)を使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーの疎水部のHSP値とのHSP値差が11.8以上であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が29.9以下である、
溶媒を選定した場合に、得られた触媒インクを使用して調製した電極シートの貯蔵弾性率の結果から触媒インクにおける触媒担持粒子の分散性の改善が示され、選定した溶媒の沸点から乾燥時間が短縮されたことが示され、さらに、得られた触媒インクを使用して調製した燃料電池電極の電流−電圧測定の結果から燃料電池の電池性能の改善が示された。
Claims (1)
- 触媒担持粒子、アイオノマー、水、及び溶媒を含む燃料電池電極用触媒インクの製造において、水と一緒に混合溶液を形成し、混合溶液中で触媒担持粒子にアイオノマーを吸着させて触媒担持粒子及びアイオノマーを分散させるための溶媒の選定方法であって、
溶媒として、
(i)標準状態での沸点が100℃以下であり、
ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)を使用した場合に、
(ii)溶媒のHSP値とアイオノマーの疎水部のHSP値とのHSP値差が11.8以上であり、
(iii)溶媒のHSP値と水のHSP値とのHSP値差が29.9以下である、
溶媒を選定する、前記方法。
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JP2017033952A JP6677193B2 (ja) | 2017-02-24 | 2017-02-24 | 燃料電池電極用触媒インクに使用する溶媒の選定方法 |
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JP2017033952A JP6677193B2 (ja) | 2017-02-24 | 2017-02-24 | 燃料電池電極用触媒インクに使用する溶媒の選定方法 |
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JP2018139203A JP2018139203A (ja) | 2018-09-06 |
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JP2017033952A Active JP6677193B2 (ja) | 2017-02-24 | 2017-02-24 | 燃料電池電極用触媒インクに使用する溶媒の選定方法 |
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