JP7128634B2 - アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに触媒インク - Google Patents

アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに触媒インク Download PDF

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Description

本発明は、アイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに触媒インクに関し、さらに詳しくは、電極触媒の表面がアイオノマでコートされたアイオノマコート触媒及びその製造方法、並びに、このようなアイオノマコート触媒を用いた触媒インクに関する。
固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子形燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層アイオノマ)との複合体からなる。
固体高分子形燃料電池に用いられる触媒層は、一般に、
(a)電極触媒及びアイオノマを含み、固形分濃度が約10%の触媒インクを作製し、
(b)種々の方法を用いて、触媒インクを基材表面に塗布し、塗膜中の溶媒を揮発させることにより基材表面に触媒層を形成し、
(c)基材表面の触媒層を電解質膜に転写する
ことにより製造されている。
また、基材の代わりに固体高分子電解質膜に触媒インクを直接塗布する方法もある。
基材表面への触媒インクの塗布方法としては、例えば、スプレー法(特許文献1)、ドクターブレードやアプリケーターを用いたブレードコート法(特許文献2)、ダイコート法、リバースロールコータ法(特許文献3、特許文献4)、間欠ダイ塗工法(非特許文献1)などが知られている。いずれの方法を用いる場合であっても、触媒インクの性状は、触媒層の健全性や生産性に影響を与える。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献2には、
(a)電極触媒と、水と、アルコールとを混合して触媒分散液を作製し、
(b)アイオノマーと溶媒とを混合し、この混合溶液を濃縮することによりゲル化アイオノマー溶液を作製し、
(c)触媒分散液と、ゲル化アイオノマー溶液とを混合する
触媒インクの製造方法が開示されている。
同文献には、
(A) 触媒分散液とアイオノマー溶液とを混合して触媒インクを作製する場合において、アイオノマー溶液の粘度が低いと、触媒インクを用いて製造された触媒層に亀裂が生じやすい点、及び
(B)ゲル化アイオノマー溶液の濃縮時に溶媒と同時に水も蒸発するため、ゲル化アイオノマー溶液の貯蔵弾性率を150Pa以上に調製することが可能となる点
が記載されている。
また、特許文献3には、
(a)電極触媒、高分子電解質、及び液体媒体を含むスラリーを調製し、
(b)スラリーから液体媒体の一部を揮発させ、スラリーの固形分濃度を25~50質量%に調整する
電極触媒層用触媒組成物の製造方法が開示されている。
同文献には、このような組成物を用いると、触媒層を形成する際の材料ロスを大幅に低減することができ、触媒層の亀裂の発生も抑制できる点が記載されている。
さらに、特許文献5には、触媒インクの性状の改善を目的とするものではないが、
(a)高酸素透過アイオノマ、白金担持カーボン、水、及びプロパノールを含む分散液を作製し、
(b)分散液から溶媒を蒸発させることにより乾燥粉を作製し、
(c)乾燥粉、ナフィオン(登録商標)溶液、水、及びプロパノールを混合して分散液を作製し、
(d)この分散液を、ドクターブレード法によってポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布する
触媒層の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)このような方法により、触媒表面が高酸素透過アイオノマ/第2アイオノマからなる二層構造の触媒層アイオノマで被覆されている触媒層が得られる点、及び
(B)触媒層アイオノマを二層構造にすると、製造コストを増大させることなく、触媒層の酸素透過性を向上させることができる点、
が記載されている。
燃料電池車を普及させるためには、燃料電池のさらなる量産化が必要である。燃料電池の生産性を向上させるためには、ライン搬送のスピードを上げる必要がある。しかし、触媒層を製造する工程は、触媒インクに含まれる溶媒を揮発させる工程を含んでいる。そのため、従来の方法を用いて触媒層を製造する場合において、単にライン搬送のスピードを上げると、触媒インクを乾燥させるための炉長が伸びてしまい、設備コストとエネルギーコストが増加する。
この問題を解決する方法として、
(1)触媒インクの乾燥温度を上げる第1の方法、
(2)触媒インクの溶媒として、低沸点(高蒸気圧)溶媒を使用する第2の方法、
(3)触媒インクの固形分濃度を上げる第3の方法、
などが考えられる。
しかし、第1の方法は、触媒インクに含まれる有機溶媒への引火のリスクが増加する。第2の方法は、低沸点溶媒が有機溶剤中毒防止規則(有機則)の対象となる有機溶剤であるため、作業環境から低沸点溶媒の蒸気を排気するための排気設備が必要となる。
さらに、第3の方法は、触媒インクの固形分濃度が高くなるほど、乾燥時間を短縮することはできるが、触媒インクの粘度が増加する。触媒インクの粘度が高くなるほど、均一塗工性やインクの分散性が低下し、良好な塗面ができにくくなる。さらに、触媒インクの粘度が高くなりすぎると、ブレード法では塗工できず、塗工方法は、リバースロールコータ法などに限定される。
特開2007-115532号公報 特開2014-192070号公報 特開2014-120242号公報 特開昭60-151968号公報 特開2014-216157号公報
トヨタテクニカルレビュー、Vol.61、p32(2015)
本発明が解決しようとする課題は、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを製造することが可能なアイオノマコート触媒、及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなアイオノマコート触媒を用いた触媒インクを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るアイオノマコート触媒は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記アイオノマコート触媒は、
電極触媒と、
前記電極触媒の表面を被覆するアイオノマ(A)と
を備えている。
(2)前記アイオノマコート触媒は、次の式(1)で表される残存率R(%)が30%以上である。
R(%)=(x0-x)×100/x0 ・・・(1)
但し、
xは、前記アイオノマコート触媒を水:エタノール=70:30(重量比)の混合溶媒に加えて分散液とした時に、前記混合溶媒中に溶け出した前記アイオノマ(A)の濃度、
0は、前記混合溶媒に前記アイオノマ(A)のすべてが溶け出したと仮定した時の、前記混合溶媒中のアイオノマ濃度の理論値。
本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する第1工程と、
前記分散液を乾燥させ、粉末を得る第2工程と、
前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理し、本発明に係るアイオノマコート触媒を得る第3工程と
を備えていることを要旨とする。
前記第1工程は、前記分散液を高圧ホモジナイザーで分散処理するものが好ましい。
本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、前記第3工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、前記アイオノマ(A)を溶解させることが可能な溶媒の蒸気に曝す第4工程をさらに備えていても良い。
また、本発明に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、前記第4工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、再度、130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する第5工程をさらに備えていても良い。
さらに、本発明に係る触媒インクは、
本発明に係るアイオノマコート触媒と、
前記アイオノマコート触媒を分散させるための分散媒と
を備えている。
一般に、触媒インクの固形分濃度が増加するほど、触媒インクの粘度が増加する。これは、固形分濃度が高くなるほど、溶媒中のアイオノマ濃度が高くなるため、及び、電極触媒粒子間の凝集力が増加するためと考えられる。この傾向は、特に、電極触媒がカーボンを含む場合に顕著となる。
これに対し、所定の条件下で製造されたアイオノマコート触媒を用いると、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを製造することができる。これは、
(a)所定の条件下でアイオノマコート触媒を製造すると、電極触媒表面にアイオノマが強固に吸着し、アイオノマが難溶化するため、
(b)分散媒中に溶解しているアイオノマ濃度を過度に増加させることなく、触媒インクに含まれるアイオノマの総量を増加させることができるため、及び、
(c)電極触媒を難溶化したアイオノマでコートすることにより、触媒インク中における電極触媒の凝集が抑制されるため
と考えられる。
さらに、高圧ホモジナイザーで分散液の分散処理を行った場合、1回目の熱処理が施されたアイオノマコート触媒を溶媒蒸気に曝した場合、及び、溶媒蒸気処理後のアイオノマコート触媒に対して2回目の熱処理を施した場合には、いずれもコートされたアイオノマの安定性がさらに向上する。これは、これらの処理を追加することにより、アイオノマ同士の絡み合いがさらに促進されたためと考えられる。
本発明に係るアイオノマコート触媒、及び触媒インクの製造工程の模式図である。 図2(A)は、低水比率のコート用インクの断面模式図である。図2(B)は、高水比率のコート用インクの模式図である。 図3(A)は、熱処理前のアイオノマコート触媒の断面模式図である。図3(B)、熱処理後のアイオノマコート触媒の模式図である。 図4(A)は、従来の触媒インク(コートなし)の模式図である。図4(B)は、本発明に係る触媒インク(コートあり)の模式図である。
アイオノマ残存率の測定方法の模式図である。 水比率とアイオノマ残存率との関係を示す図である。 熱処理温度とアイオノマ残存率との関係を示す図である。 種々の方法で作製された触媒インクのせん断粘度である。 残存率と粘度比との関係を示す図である。
超音波ホモジナイザー又は高圧ホモジナイザーで分散処理した時の、アイオノマコート触媒の生成過程の模式図である。 アイオノマコート触媒をアルコール蒸気で処理した時の、アイオノマの状態変化の模式図である。 実施例7~8、及び比較例5で得られたアイオノマコート触媒のせん断粘度である。 実施例9~10、及び比較例6で得られたアイオノマコート触媒のせん断粘度である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. アイオノマコート触媒]
本発明に係るアイオノマコート触媒は、以下の構成を備えている。
(1)前記アイオノマコート触媒は、
電極触媒と、
前記電極触媒の表面を被覆するアイオノマ(A)と
を備えている。
(2)前記アイオノマコート触媒は、残存率R(%)が30%以上である。
[1.1. 電極触媒]
本発明において、電極触媒は、特に限定されるものではなく、酸素還元反応活性又は水素酸化反応活性を示す材料であれば良い。電極触媒としては、具体的には、白金、白金合金、パラジウム合金、金属酸窒化物、カーボンアロイなどがある。
電極触媒は、単独で用いても良く、あるいは、適当な担体表面に触媒微粒子を担持したものでも良い。担体の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の材料を用いることができる。担体ととしては、例えば、炭素材料(例えば、カーボン、活性炭、フラーレン、カーボンナノフォン、カーボンナノチューブ)、金属酸化物などがある。
電極触媒は、カーボン担体と、前記カーボン担体の表面に担持された触媒微粒子とを備えているものが好ましい。一般に、カーボン担体を含む電極触媒を用いて、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを製造することは難しい。これは、触媒インクの固形分濃度が高くなるほど、溶媒中におけるカーボン間の凝集力が強くなるためと考えられる。
これに対し、カーボン担体を含む電極触媒に対して本発明を適用すると、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを製造することができる。
さらに、触媒担体として用いられるカーボン材料には、種々の材料が知られている。この場合、同一のアイオノマ(A)を用いて同一条件下で被覆処理を行った場合であっても、カーボン担体の種類の相違(特に、比表面積の相違)により、残存率R(%)が異なる場合がある。一般に、カーボン担体の比表面積が大きくなるほど、残存率(R)(%)が低下しやすい。
これに対し、後述する方法を用いると、カーボン担体の種類の相違によらず、高い残存率R(%)が得られる。具体的には、カーボン担体の比表面積が150m2/g以上1300m2/g以下であっても、残存率R(%)は、40%以上となる。処理条件をさらに最適化すると、残存率R(%)は、50%以上、あるいは、70%以上となる。
[1.2. アイオノマ(A)]
電極触媒の表面は、アイオノマ(A)で被覆されている。本発明において、アイオノマ(A)の種類は、特に限定されない。
アイオノマ(A)としては、例えば、
(a)高酸素透過アイオノマ、
(b)ナフィオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)に代表されるポリパーフルオロカーボンスルホン酸、
などがある。
特に、アイオノマ(A)は、高酸素透過アイオノマが好ましい。一般に、燃料電池の性能は、触媒表面への酸素の拡散が律速となる。これに対し、電極触媒の表面を高酸素透過アイオノマで被覆すると、触媒層の酸素透過性が向上し、燃料電池の性能が向上する。
ここで、「高酸素透過アイオノマ」とは、酸素透過係数が5×10-12cm3・cm/cm・s・Pa以上であり、かつ、イオン交換容量(IEC)が0.6meq/g以上2.0meq/g以下であるアイオノマをいう。
「酸素透過係数」とは、アイオノマからキャスト膜(膜厚20~100μm、160℃で30分熱処理)を作製し、膜の一方の側には圧力105Pa、相対湿度80%の酸素を、他方の側には圧力105Pa、相対湿度80%のヘリウムを供給した状態で、等圧ガスクロマトグラフィ法に基づいて測定された酸素透過係数をいう。
高酸素透過アイオノマとしては、例えば、構造内に、脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンを含むアイオノマなどがある。
[1.3. 残存率]
「残存率」とは、アイオノマコート触媒を水/エタノール混合溶媒に分散させた時に、混合溶媒に溶解することなく、電極触媒の表面に残存しているアイオノマの割合をいう。残存率R(%)は、具体的には、次の式(1)で表される。
R(%)=(x0-x)×100/x0 ・・・(1)
但し、
xは、前記アイオノマコート触媒を水:エタノール=70:30(重量比)の混合溶媒に加えて分散液とした時に、前記混合溶媒中に溶け出した前記アイオノマ(A)の濃度、
0は、前記混合溶媒に前記アイオノマ(A)のすべてが溶け出したと仮定した時の、前記混合溶媒中のアイオノマ濃度の理論値であり、アイオノマ(A)の濃度が1.5重量%~2.5重量%となるように、アイオノマコート触媒の投入量を調整する。
残存率を測定するに際しては、アイオノマコート触媒に対して過剰の混合溶媒を添加するのが好ましい。具体的には、1gのアイオノマに対して、40g以上の混合溶媒を添加するのが好ましい。
測定時の混合溶媒の温度及び処理時間は、目的に応じて任意に選択することができる。本発明では、混合溶媒の温度は、0~10℃とする。また、可溶性成分を混合溶媒に十分溶解させるために、超音波ホモジナイザー等を用いて、分散液を9分間分散処理を行う。
アイオノマコート触媒を溶媒に分散させて触媒インクを作製した場合において、アイオノマ(A)の残存率が高くなるほど、アイオノマ(A)が溶媒に溶解しにくくなる。そのため、触媒インク中の溶媒に溶解しているアイオノマ(A)の濃度が低下する。また、これによって、溶媒中に分散している電極触媒の凝集も抑制される。その結果、触媒インク中の固形分濃度を高くした場合であっても、触媒インクの粘度が過度に増加するのを抑制することができる。このような効果を得るためには、残存率は、30%以上である必要がある。残存率は、好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、50%以上、さらに好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。
[1.4. アイオノマ(A)の含有量]
アイオノマコート触媒に含まれるアイオノマ(A)の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、アイオノマコート触媒中のアイオノマ(A)の含有量が少なすぎると、プロトン伝導度の不足を補うために、触媒インク中に別途、アイオノマを添加する必要がある。そのため、低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクを作製するのが困難となる。
一方、アイオノマコート触媒中のアイオノマ(A)の含有量が過剰になると、反応ガスが拡散する空隙が少なくなり、またアイオノマコート触媒同士の電子抵抗が高くなる。その結果、触媒層の性能が低下する。
最適なアイオノマ(A)の含有量は、電極触媒の種類により異なる。例えば、電極触媒として、カーボン担体の表面に触媒微粒子が担持されたものを用いる場合、アイオノマ/カーボン比(I/C比)は、0.2以上0.7以下が好ましい。I/C比は、さらに好ましくは、0.4以上0.7以下である。
ここで、「I/C比」とは、カーボン担体の重量(Wc)に対するアイオノマ(A)の重量(Wi)の比(=Wi/Wc)をいう。
[1.5. 用途]
本発明に係るアイオノマコート触媒は、触媒層を形成するための触媒インクに用いられる。本発明において、触媒層の形成方法は、特に限定されない。触媒層の形成方法としては、例えば、 スプレー法、ブレードコート法、ダイコート法、リバースロールコータ法、間欠ダイ塗工法などがある。本発明は、いずれの方法に対しても適用できる。
本発明に係るアイオノマコート触媒は、特に、ブレードコート法又は間欠ダイ塗工法で塗工するための触媒インクに用いるのが好ましい。本発明を用いると、従来、困難であった低粘度、かつ、高固形分濃度の触媒インクが得られるので、ブレードコート法又は間欠ダイ塗工法により触媒インクを塗工した時に、良好な塗面が得られる。また、乾燥時間の短縮、アルコール使用量の低減、乾燥エネルギーの削減も可能となる。
また、本発明に係るアイオノマコート触媒を用いた触媒層は、固体高分子形燃料電池の触媒層として好適であるが、触媒層の用途は、これに限定されない。
触媒層の用途としては、例えば、
(a)リン酸形燃料電池、アルカリ形燃料電池、直接形燃料電池などの燃料電池、
(b)水電解、ソーダ電解などの電解セル用の電極、
などがある。
[2. アイオノマコート触媒の製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する第1工程と、
前記分散液を乾燥させ、粉末を得る第2工程と、
前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理し、本発明に係るアイオノマコート触媒を得る第3工程と
を備えている。
[2.1. 第1工程]
まず、電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する(第1工程)。
[2.1.1. 電極触媒、及びアイオノマ(A)]
電極触媒、及びアイオノマ(A)の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.1.2. 分散媒]
電極触媒、及びアイオノマ(A)を分散させる分散媒には、水、又は、水とアルコールの混合溶媒を用いる。
アルコールは、アイオノマ(A)の溶解及び電極触媒の分散が可能なものである限りにおいて、特に限定されない。アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどがある。
また、分散媒の量は、アイオノマ(A)の溶解、及び、電極触媒の均一分散が可能である限りにおいて、特に限定されない。
[2.1.3. 水比率]
「水比率」とは、分散媒に含まれる水とアルコールの総重量(Wt)に対する水の重量(Ww)の比(=Ww/Wt)をいう。
水比率は、アイオノマ(A)の残存率に影響を与える。一般に、水比率が高くなるほど、アイオノマ(A)の残存率が高くなる。残存率を30%以上とするためには、水比率は、0.8以上である必要がある。水比率は、さらに好ましくは、0.85以上、さらに好ましくは、0.88以上である。
[2.1.4. 分散方法]
分散液の調製方法は、特に限定されない。分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ディスクミルなどがある。
特に、第1工程は、分散液を高圧ホモジナイザーで分散処理するものが好ましい。分散液を高圧ホモジナイザー処理すると、他の分散方法を用いた場合に比べて、アイオノマがより均一に分散する。高圧ホモジナイザーは、湿式ジェットミル、湿式微粒化装置などとも称呼されている装置である。具体的な商品名としては、スターバースト(スギノマシン社製)、ナノヴェイタ(吉田機械興業社製)、マイクロフルイダイザ(パウレック社製)、OMEGA(アシザワ・ファインテック社製)などがある。
分散液を高圧ホモジナイザー処理する場合、その処理条件は、分散液の組成に応じて最適な条件を選択するのが望ましい。一般に、処理時の圧力が高くなるほど、アイオノマ分子が均一に分散する。このような効果を得るためには、圧力は、50MPa以上が好ましい。圧力は、さらに好ましくは、70MPa以上である。
一方、圧力が高くなりすぎると、分散液の温度が過度に上昇し、あるいは、過分散となる場合がある。従って、圧力は、250MPa以下が好ましい。圧力は、さらに好ましくは、150MPa以下である。
[2.2. 第2工程]
次に、前記分散液を乾燥させ、粉末を得る(第2工程)。分散液の乾燥方法、及び乾燥条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法及び条件を選択することができる。
[2.3. 第3工程]
次に、前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する(第3工程)。これにより、本発明に係るアイオノマコート触媒が得られる。
熱処理温度は、アイオノマ(A)の残存率に影響を与える。一般に、熱処理温度が高くなるほど、アイオノマ(A)の残存率が高くなる。残存率を30%以上とするためには、熱処理温度は、130℃以上である必要がある。熱処理温度は、好ましくは、150℃以上、さらに好ましくは、160℃以上である。
一方、熱処理温度が高くなりすぎると、アイオノマ(A)が分解するおそれがある。従って、熱処理温度は、200℃以下である必要がある。熱処理温度は、好ましくは、190℃以下、さらに好ましくは、180℃以下である。
[3. アイオノマコート触媒の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する第1工程と、
前記分散液を乾燥させ、粉末を得る第2工程と、
前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理し、本発明に係るアイオノマコート触媒を得る第3工程と、
前記第3工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、前記アイオノマ(A)を溶解させることが可能な溶媒の蒸気に曝す第4工程と
を備えている。
[3.1. 第1工程~第3工程]
第1工程~第3工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.2. 第4工程]
次に、前記第3工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、前記アイオノマ(A)を溶解させることが可能な溶媒の蒸気に曝す(第4工程)。溶媒の蒸気に曝す処理(以下、単に「蒸気処理」ともいう)は、必ずしも必要ではないが、アイオノマコート触媒を蒸気処理することにより、アイオノマの安定性(すなわち、アイオノマの残存率)がさらに向上する。
[3.2.1. 溶媒]
蒸気処理に用いられる溶媒は、アイオノマ(A)を溶解させることが可能なもの(あるいは、アイオノマ溶液を形成可能なもの)である限りにおいて、特に限定されない。アイオノマ(A)は、親水的なスルホン酸と、疎水的なフッ化炭素鎖から構成されている。そのため、蒸気処理に用いられる溶媒は、その両者と親和性を有するものが好ましい。一般に、アイオノマ(A)が溶解しやすい溶媒ほど、蒸気処理時に容易に分子鎖がほぐれ、分子鎖の運動性が向上し、かつ、分子鎖の絡み合いが促進されると考えられる。
蒸気処理に好適な溶媒としては、例えば、
(a)エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール、
(b)水とアルコールの混合溶媒、
(c)ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルなどの水に溶解する有機溶媒、
(d)水と(c)の有機溶媒の混合溶媒、
などがある。
これらの中でも、溶媒は、水とアルコールの混合溶媒が好ましい。この場合、アルコール比率(溶媒に含まれるアルコールの割合)が小さすぎると、疎水的なフッ化炭素鎖の凝集をほぐせず、分子鎖の運動性が高まらない。従って、アルコール比率は、0.01以上が好ましい。アルコール比率は、好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.7以上である。
一方、アルコール比率が大きくなりすぎると、親水的なスルホン酸基の凝集をほぐせず、分子鎖の運動性が高まらない。従って、アルコール比率は、0.99以下が好ましい。アルコール比率は、好ましくは、0.95以下である。
[3.2.2. 処理温度]
蒸気処理の温度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な温度を選択することができる。一般に、処理温度が高くなるほど、ミクロな分子運動よる絡み合いが促進される。このような効果を得るためには、処理温度は、0℃以上が好ましい。処理温度は、好ましくは、30℃以上、さらに好ましくは、50℃以上である。
一方、処理温度が高すぎると、溶媒が反応(例えば、アルコールがエーテル化する副反応)してしまう、あるいは、オートクレーブのような耐圧設備が必要となる。従って、処理温度は、200℃以下が好ましい。処理温度は、好ましくは、120℃以下、さらに好ましくは、100℃以下である。一般には、溶媒の沸点よりもやや低い温度で揮発させた蒸気で処理することが好ましい。
[4. アイオノマコート触媒の製造方法(3)]
本発明の第3の実施の形態に係るアイオノマコート触媒の製造方法は、
電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する第1工程と、
前記分散液を乾燥させ、粉末を得る第2工程と、
前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理し、本発明に係るアイオノマコート触媒を得る第3工程と、
前記第3工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、前記アイオノマ(A)を溶解させることが可能な溶媒の蒸気に曝す第4工程と、
前記第4工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、再度、130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する第5工程と
を備えている。
[4.1. 第1工程~第3工程、第4工程]
第1工程~第3工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。また、第4工程の詳細については、第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[4.2. 第5工程]
次に、前記第4工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、再度、130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する(第5工程)。これにより、分子鎖の絡み合いがさらに促進される。
第5工程の詳細は、第3工程と同様であるので、説明を省略する。
[5. 触媒インク]
本発明に係る触媒インクは、
本発明に係るアイオノマコート触媒と、
前記アイオノマコート触媒を分散させるための分散媒と
を備えている。
本発明に係る触媒インクは、前記分散媒に添加されたアイオノマ(B)をさらに備えていても良い。
[5.1. アイオノマコート触媒]
熱処理後のアイオノマコート触媒は凝集しているので、そのままでは触媒インクに適した粒径を持たない場合が多い。そのため、熱処理後のアイオノマコート触媒は、ブレードミル、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、ディスクミルなどを用いて適度に粉砕するのが好ましい。粉砕は、湿式で行っても良く、あるいは、乾式で行っても良い。アイオノマコート触媒のその他の点ついては、上述した通りであるので、説明を省略する。
[5.2. 分散媒]
触媒インクに用いられる分散媒は、アイオノマコート触媒を分散させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。また、触媒インクがアイオノマ(B)をさらに含む場合には、分散媒は、アイオノマ(B)を溶解又は分散させることが可能なものであればよい。
分散媒としては、例えば、アルコール、ケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、グリコール、エステル、カルボン酸などがある。
[5.3. アイオノマ(B)]
触媒インクは、アイオノマ(B)をさらに備えていても良い。アイオノマ(B)は、アイオノマ(A)と同一の材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。アイオノマ(B)に関するその他の点については、アイオノマ(A)と同様であるので、説明を省略する。
例えば、アイオノマ(A)の含有量が少ないアイオノマコート触媒を用いて触媒インクを作製する場合において、分散媒にアイオノマ(A)を追加すると、触媒インクに含まれるアイオノマ(A)の濃度を増加させることができる。
あるいは、分散媒にアイオノマ(A)とは異なる材料からなるアイオノマ(B)を添加すると、電極触媒の表面がアイオノマ(A)/アイオノマ(B)の二層構造を備えたアイオノマで被覆された触媒層が得られる。特に、アイオノマ(A)として高酸素透過アイオノマを用い、アイオノマ(B)として高いプロトン伝導度を持つポリパーフルオロカーボンスルホン酸を用いると、高プロトン伝導性と高酸素透過性の双方を兼ね備えた触媒層が得られる。
[5.4. 固形分濃度、粘度]
「固形分濃度」とは、触媒インクの全重量に対する電極触媒及びアイオノマの重量の割合をいう。一般に、触媒インクの固形分濃度が高くなるほど、触媒インクの粘度が高くなる。触媒インクの粘度が高くなりすぎると、均一塗工性やインク分散性が悪化するため、良好な塗面ができにくい。そのため、ブレードコート法では塗工できず、塗工方法はリバースロールコーター法などに限定される。
これに対し、本発明に係るアイオノマコート触媒を用いると、低粘度、かつ、高固形分濃度であり、しかもブレードコート法や間欠ダイ塗工法で塗工可能な触媒インクが得られる。製造条件を最適化すると、固形分濃度が14wt%以上40wt%以下であり、かつ、せん断速度:562s-1でのせん断粘度が0.13Pa・s以下である触媒インクが得られる。
[6. 作用]
[6.1. アイオノマコート触媒による触媒インクの低粘度化]
図1に、本発明に係るアイオノマコート触媒、及び触媒インクの製造工程の模式図を示す。アイオノマコート触媒は、図1の上図及び中図に示すように、
(a)白金担持カーボンなどの電極触媒、及びアイオノマ(A)を含む分散液(コート用インク)を作製し、
(b)分散液から分散媒を揮発させ、
(c)乾燥させた電極触媒及びアイオノマ(A)の混合物を熱処理する
ことにより得られる。
また、触媒インク(塗工用インク)は、図1の下図に示すように、熱処理後のアイオノマコート触媒を粉砕し、分散媒に再分散させることにより得られる。
一般に、触媒インクの固形分濃度が増加するほど、触媒インクの粘度が増加する。これは、固形分濃度が高くなるほど、溶媒中のアイオノマ濃度が高くなるため、及び、電極触媒粒子間の凝集力が増加するためと考えられる。この傾向は、特に、電極触媒がカーボンを含む場合に顕著となる。
これに対し、図1に示す方法により触媒インクを製造すると、固形分濃度が高い場合であっても低粘度を示す。これは、以下の理由によると考えられる。
[6.1.1. 水比率の影響]
図2(A)に、低水比率のコート用インク(電極触媒及びアイオノマ(A)を含む分散液)の模式図を示す。また、図2(B)に、高水比率のコート用インクの模式図を示す。
本発明において、コート用インクを製造する際には、分散媒として、水、又は、水とアルコールの混合溶媒が用いられる。この時、コート用インクの水比率が低すぎると、図2(A)に示すように、電極触媒の表面に吸着しているアイオノマ(A)はごく一部であり、大半のアイオノマ(A)は分散媒中に浮遊している。
これに対し、コート用インクの水比率が高くなると、図2(B)に示すように、大半のアイオノマ(A)が電極触媒に吸着する。これは、高水比率の分散媒を用いることにより、アイオノマ(A)の疎水部を介してアイオノマ(A)が電極触媒の表面(電極触媒が触媒担持カーボンである場合には、主としてカーボン担体の表面)に吸着しやすくなるためと考えられる。
[6.1.2. 熱処理温度の影響]
図3(A)に、熱処理前のアイオノマコート触媒の模式図を示す。図3(B)に、熱処理後のアイオノマコート触媒の模式図を示す。
熱処理前のアイオノマコート触媒は、図3(A)に示すように、電極触媒の表面にアイオノマ(A)が弱く吸着しているだけであり、アイオノマ(A)同士の絡み合いも少ない。そのため、このようなアイオノマコート触媒を分散媒に再分散させると、アイオノマ(A)の一部が電極触媒表面から脱離し、分散媒中に溶解すると考えられる。
これに対し、コート用インクから分散媒を揮発させた後、所定の温度で熱処理すると、図3(B)に示すように、電極触媒とアイオノマ(A)との密着性が向上し、かつ、アイオノマ(A)同士の絡み合いも増す。その結果、アイオノマ(A)が難溶化し、アイオノマコート触媒を分散媒に再分散させても、アイオノマ(A)が分散媒中に溶解しにくくなると考えられる。
[6.1.3. 低粘度化のメカニズム]
図4(A)に、従来の触媒インク(コートなし)の模式図を示す。図4(B)に、本発明に係る触媒インク(コートあり)の模式図を示す。
従来の触媒インクは、図4(A)に示すように、電極触媒とアイオノマとを分散媒に分散させている。そのため、固形分濃度が高くなると、分散媒中のアイオノマ濃度が増加する。また、分散媒中において電極触媒が接触する頻度が高くなるため、電極触媒同士が凝集しやすくなる。その結果、固形分濃度が高くなるほど、触媒インクの粘度が増大する。
一方、本発明に係る触媒インクは、図4(B)に示すように、アイオノマコート触媒を分散媒に分散させている。しかも、電極触媒を被覆するアイオノマ(A)は、熱処理によって難溶化している。そのため、分散媒中に溶解しているアイオノマ濃度を過度に増加させることなく、触媒インクに含まれるアイオノマの総量を増加させることができる。また、電極触媒を難溶化したアイオノマでコートすることにより、電極触媒間の反発力が強くなり、触媒インク中における電極触媒の凝集が抑制される。その結果、本発明に係る触媒インクは、固形分濃度が高い場合であっても、低粘度を示すと考えられる。
[6.2. 高圧ホモジナイザーによるアイオノマの安定性の向上]
図10に、超音波ホモジナイザー又は高圧ホモジナイザーで分散処理した時の、アイオノマコート触媒の生成過程の模式図を示す。
アイオノマは、親水部と疎水部を持っているため、溶液中ではアイオノマはミセル状態にある。そのため、アイオノマ溶液に白金担持カーボンを添加し、超音波ホモジナイザーで分散させた場合、アイオノマミセルが十分にほぐれる前にアイオノマがカーボン表面に吸着すると考えられる。この状態から乾燥・熱処理を行うと、カーボン表面がアイオノマで不均一に被覆された状態となる。そのため、アイオノマとカーボン表面との接点が少なくなり、アイオノマの安定性が低い。
これに対し、分散液を高圧ホモジナイザーで分散処理すると、アイオノマが十分にほぐれた状態でカーボン表面に吸着するため、カーボン表面がアイオノマで均一に被覆された状態となる。その結果、アイオノマとカーボン表面との接点が増えるため、コートされたアイオノマの安定性が向上する。
また、高圧ホモジナイザー処理を行うと、比表面積が大きな触媒担体であっても、アイオノマ-コート触媒の残存率を高めることができる。これを用いて触媒インクを作製すると、インクの粘度が低下し、高固形分化した触媒インクが得られる。また、これによって、触媒インク塗工後の乾燥負荷が軽減される。
[6.3. 蒸気処理によるアイオノマ同士の絡み合いの増加]
図11に、アイオノマコート触媒をアルコール蒸気で処理した時の、アイオノマの状態変化の模式図を示す。分散、乾燥、及び熱処理のみによって作製されたアイオノマコート触媒は、図11の左図に示すように、カーボン担体表面のアイオノマの絡み合いが少ないと考えられる。
これに対し、アイオノマコート触媒を溶媒の蒸気(例えば、1-プロパノール:水=9:1の蒸気)に曝すと、図11の右図に示すように、アイオノマ分子のミクロな運動が促進され、アイオノマ同士の絡み合いが増加する。その結果、アイオノマの安定性がさらに向上すると考えられる。
(実施例1~2、比較例1~2)
[1. 試料の作製]
[1.1. アイオノマコート触媒の作製]
白金担持カーボンA(比表面積:171m2/g)、水、アルコール、及び高酸素透過アイオノマ溶液を混合した。固形分濃度(=(触媒+アイオノマの重量)/全重量)は9wt%、アイオノマ(A)/カーボン比(IA/C比)は0.4、水比率は0.8~0.92とした。この混合液を超音波ホモジナイザーで分散させ、コート用インクを得た。
次に、全排気型オーブンを用いてコート用インクを80℃に加熱し、溶媒を揮発させた。さらに、真空乾燥器で乾燥粉を80~200℃で2時間熱処理し、アイオノマコート触媒を得た。
[1.2. 触媒インクの作製(実施例1~2)]
熱処理を行ったアイオノマコート触媒を粉砕し、分級した。次に、アイオノマコート触媒、水、アルコール、及びアイオノマ(B)溶液を混合した。アルコールには、エタノール又は1-プロパノールを用いた。アイオノマ(B)溶液には、高酸素透過アイオノマ溶液(実施例1)、又はナフィオン(登録商標)溶液(実施例2)を用いた。また、水比率は0.67、アイオノマ(B)/カーボン比(IB/C比)は0.35、固形分濃度は20wt%とした。この混合液を超音波ホモジナイザー又はビーズミルで分散させ、触媒インク(塗工用インク)を得た。触媒インク全体のI/C比は、0.75とした。
[1.3. 触媒インクの作製(比較例1~2)]
アイオノマでコートされていない白金担持カーボンA、水、アルコール、及びアイオノマ溶液を混合した。アルコールには、エタノールを用いた。アイオノマ溶液には、高酸素透過アイオノマ溶液(比較例1)、又はナフィオン(登録商標)溶液(比較例2)を用いた。この混合溶液を超音波ホモジナイザー又はビーズミルで分散させ、触媒インク(塗工用インク)を得た。触媒インク全体のI/C比は、0.75とした。
[2. 試験方法]
図5に、アイオノマ残存率の測定方法の模式図を示す。熱処理を行ったアイオノマコート触媒を、水:エタノール=7:3の溶液に加え、超音波ホモジナイザーで分散させた。得られた分散液を0.45μm径のシリンジフィルターでろ過し、ろ液を乾燥させた。乾燥時の重量変化から、ろ液のアイオノマ濃度を算出した。さらに、式(1)を用いて残存率を算出した。
[3. 結果]
[3.1. 水比率]
図6に、水比率とアイオノマ残存率との関係を示す。図6より、水比率が0.8以上になると、残存率が30%以上になることがわかる。水比率が0.88以上になると、残存率が70%以上となった。分散媒をエタノール(図6中、「○」印)から1-プロパノール(図6中、「●」印)に変えても、ほぼ同様の結果が得られた。
[3.2. 熱処理温度]
図7に、熱処理温度とアイオノマ残存率との関係を示す。図7より、熱処理温度を130℃以上にすると、残存率が30%以上になることがわかる。熱処理温度を160℃以上にすると、残存率は70%以上となった。
(実施例3~6、比較例3~4)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例3、4]
実施例1と同様にして、白金担持カーボンAの表面が高酸素透過アイオノマでコートされたアイオノマコート触媒を作製した(IA/C=0.4)。但し、水比率は、0.86(残存率34%に相当、実施例3)、又は、0.90(残存率89%に相当、実施例4)とした。また、熱処理温度は、200℃とした。以下、実施例1と同様にして、アイオノマコート触媒、及び後添加の高酸素透過アイオノマ(IB/C=0.35)を含む触媒インクを作製した(I/C=0.75)。
[1.2. 実施例5、6]
実施例2と同様にして、白金担持カーボンAの表面が高酸素透過アイオノマでコートされたアイオノマコート触媒を作製した(IA/C=0.4)。但し、水比率は、0.86(残存率34%に相当、実施例5)、又は、0.90(残存率89%に相当、実施例6)とした。また、熱処理温度は、200℃とした。以下、実施例2と同様にして、アイオノマコート触媒、及び後添加のナフィオン(登録商標)(IB/C=0.35)を含む触媒インクを作製した(I/C=0.75)。
[1.3. 比較例3、4]
比較例1、2と同様にして、アイオノマでコートされていない白金担持カーボンAと、高酸素透過アイオノマ溶液(比較例3)、又はナフィオン(登録商標)溶液(比較例4)を含む触媒インクを作製した(I/C=0.75)。
[2. 試験方法及び結果]
[2.1. せん断粘度]
得られた触媒インクのせん断速度562s-1でのせん断粘度を測定した。図8に、種々の方法で作製された触媒インクのせん断粘度を示す。図8より、以下のことがわかる。
(1)コート有りの白金担持カーボンAを用いた触媒インク(実施例3、4)は、コート無しの白金担持カーボンAを用いた触媒インク(比較例3)より粘度が低下した。
(2)安定性の高い(残存率89%)のアイオノマコート触媒を用いた実施例4は、安定性の低い(残存率34%)のアイオノマコート触媒を用いた実施例3より粘度が低下した。実施例4は、固形分濃度が高いにもかかわらず、その粘度は、ブレードコート法で塗工可能な範囲内となった。
(3)ナフィオン(登録商標)のみを含む触媒インク(比較例4)は、相対的に粘度は低いが、ブレードコート法で塗工可能な粘度の上限を超えている。一方、高酸素透過アイオノマでコートされた白金担持カーボンAと後添加のナフィオン(登録商標)を含む触媒インク(実施例5、6)は、比較例4に比べて粘度が低下した。
(4)安定性の高いのアイオノマコート触媒を用いた実施例6は、安定性の低い(残存率34%)のアイオノマコート触媒を用いた実施例5より粘度が低下した。
[2.2. 粘度比]
図9に、残存率と粘度比との関係を示す。ここで、「粘度比」とは、コート有りの触媒を用いた触媒インクの粘度をコート無しの触媒を用いた触媒インクの粘度で規格化した値をいう。実施例3、4については、比較例3で規格化し、実施例5、6については、比較例4で規格化した。図9より、粘度比を0.5以下にするためには、残存率を30%以上にすれば良いことがわかる。
(実施例7~11、比較例5~6)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例7~8]
[1.1.1. アイオノマコート触媒の調製]
白金担持カーボンB(比表面積:586m2/g)、水、アルコール、及び高酸素透過アイオノマ溶液を混合した。固形分濃度(=(触媒+アイオノマの重量)/全重量)は5wt%、アイオノマ(A)/カーボン比(IA/C比)は0.4、水比率は0.95とした。この混合液を超音波ホモジナイザー(30分間、実施例7)、又は高圧ホモジナイザー(75MPa、3回処理、実施例8)で分散させ、コート用インクを得た。
次に、全排気型オーブンを用いてコート用インクを80℃に加熱し、溶媒を揮発させた。さらに、真空乾燥器で乾燥粉を180℃で2時間熱処理し、アイオノマコート触媒を得た。得られたアイオノマコート触媒の残存率を測定した結果、超音波ホモジナイザー分散(実施例7)では残存率59%、高圧ホモジナイザー分散(実施例8)では残存率78%であった。
[1.1.2. 触媒インクの作製]
これら2種のアイオノマコート触媒を用い、実施例2と同様にして、高酸素透過アイオノマをコートした白金担持カーボンB(IA/C=0.4)と、後添加のナフィオン(登録商標)(IB/C=0.35)を含み、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を調製した。
[1.2. 比較例5]
比較例2と同様にして、アイオノマでコートされていない白金担持カーボンB、水、アルコール、及びナフィオン(登録商標)を含む混合溶液を調製した。この混合溶液を超音波ホモジナイザーで分散させ、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を得た。触媒インク全体のI/C比は、0.75とした。
[1.3. 実施例9、10]
[1.3.1. アイオノマコート触媒の調製]
白金担持カーボンC(比表面積:1287m2/g)、水、アルコール、及び高酸素透過アイオノマ溶液を混合した。固形分濃度(=(触媒+アイオノマの重量)/全重量)は5wt%、アイオノマ(A)/カーボン比(IA/C比)は0.4、水比率は0.95とした。この混合液を超音波ホモジナイザー(30分間、実施例9)、又は高圧ホモジナイザー(75MPa、3回処理、実施例8)で分散させ、コート用インクを得た。
次に、全排気型オーブンを用いてコート用インクを80℃に加熱し、溶媒を揮発させた。さらに、真空乾燥器で乾燥粉を180℃で2時間熱処理し、アイオノマコート触媒を得た。得られたアイオノマコート触媒の残存率を測定した結果、超音波ホモジナイザー分散(実施例9)では残存率55%、高圧ホモジナイザー分散(実施例10)では残存率75%であった。
[1.3.2. 触媒インクの作製]
これら2種のアイオノマコート触媒を用い、実施例2と同様にして、高酸素透過アイオノマをコートした白金担持カーボンC(IA/C=0.4)と、後添加のナフィオン(登録商標)(IB/C=0.35)を含み、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を調製した。
[1.4. 比較例6]
比較例2と同様にして、アイオノマでコートされていない白金担持カーボンC、水、アルコール、及びナフィオン(登録商標)を含む混合溶液を調製した。この混合溶液を超音波ホモジナイザーで分散させ、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を得た。触媒インク全体のI/C比は、0.75とした。
[1.5. 実施例11]
[1.5.1. アイオノマコート触媒の調製]
白金担持カーボンC、水、アルコール、及び高酸素透過アイオノマ溶液を混合した。固形分濃度(=(触媒+アイオノマの重量)/全重量)は5wt%、アイオノマ(A)/カーボン比(IA/C比)は0.2、水比率は0.95とした。この混合液を高圧ホモジナイザー(75MPa、3回処理)で分散させ、コート用インクを得た。
次に、全排気型オーブンを用いてコート用インクを80℃に加熱し、溶媒を揮発させた。さらに、真空乾燥器で乾燥粉を180℃で2時間熱処理し、アイオノマコート触媒を得た。得られたアイオノマコート触媒の残存率を測定した結果、残存率78%であった。
[1.5.2. 触媒インクの作製]
このアイオノマコート触媒を用い、実施例2と同様にして、高酸素透過アイオノマをコートした白金担持カーボンC(IA/C=0.2)と、後添加のナフィオン(登録商標)(IB/C=0.55)を含み、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を調製した。
[2. 試験方法及び結果]
得られた触媒インクのせん断速度562s-1でのせん断粘度を測定した。図12に、実施例7~8、及び比較例5で得られたアイオノマコート触媒のせん断粘度を示す。図13に、実施例9~10、及び比較例6で得られたアイオノマコート触媒のせん断粘度を示す。さらに、表1に、各試料の履歴及びせん断粘度を示した。なお、表1には、前述した実施例3~6、比較例3~4、及び後述する実施例12~13の結果も併せて示した。図12、図13、及び表1より、以下のことが分かる。
(1)白金担持カーボン種を変えても、アイオノマコート触媒を用いることで、触媒インク(塗工用インク)の粘度は、未コートの白金担持カーボンを用いた触媒インクよりも低減された。
(2)同一条件下で比較した場合、白金担持カーボンの比表面積が大きくなるほど、アイオノマ残存率(すなわち、アイオノマの安定性)が低下した。
(3)高圧ホモジナイザーを用いて分散させたコート用インクから調製したアイオノマコート触媒(実施例8、10)は、超音波ホモジナイザーを用いて分散させたコート用インクから調製したアイオノマーコート触媒(実施例7、9)よりも安定性が高い。その結果、実施例8、10の触媒インクの粘度は、実施例7、9のそれより低い。
(4)IA/C=0.2(実施例11)であっても、高圧ホモジナイザーを用いることにより、低粘度の触媒インクが得られた。
Figure 0007128634000001
(実施例12~13)
[1. 試料の作製]
[1.1. アイオノマコート触媒の調製]
[1.1.1. 実施例12]
実施例9のアイオノマコート触媒と、1-プロパノール:水=9:1(wt)混合溶液と、が混ざらないように容器に入れた。この容器を、窒素ガスを少量フローさせながら80℃に設定した恒温槽に静置した。この処理により、アイオノマコート触媒がアルコール/水混合蒸気に曝され、混合蒸気が被覆されたアイオノマに吸着される。3時間後、窒素ガスの流量を増やし、容器に残っていた混合溶媒と触媒に吸着した溶媒を揮発させた。実施例12のアイオノマコート触媒の残存率は、68%であった。
[1.1.2. 実施例13]
実施例12で得られたアイオノマコート触媒を、真空乾燥機で180℃、2時間の熱処理を行った。実施例13のアイオノマコート触媒の残存率は、76%であった。
[1.2. 触媒インクの作製]
これらのアイオノマコート触媒を用い、実施例2と同様にして、高酸素透過アイオノマをコートした白金担持カーボンC(IA/C=0.4)と、後添加のナフィオン(登録商標)(IB/C=0.35)を含み、固形分濃度が20%であり、かつ、水比率が0.67である触媒インク(塗工用インク)を調製した。
[2. 試験方法及び結果]
得られた触媒インクのせん断速度562s-1でのせん断粘度を測定した。表1に、その結果を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)アイオノマコート触媒をアルコールを含む蒸気に曝すと、コートされたアイオノマの安定性が向上する(実施例9、12)。
(2)それに加えて、さらに熱処理を行うと、コートされたアイオノマの安定性がさらに向上する(実施例12、13)。
(3)アイオノマの安定性が高くなると、触媒インクの粘度がより低減される(比較例6、実施例12、13)。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るアイオノマコート触媒及び触媒インクは、燃料電池などの各種電気化学デバイスの触媒層を製造するために用いることができる。

Claims (15)

  1. 以下の構成を備えたアイオノマコート触媒。
    (1)前記アイオノマコート触媒は、
    電極触媒と、
    前記電極触媒の表面を被覆するアイオノマ(A)と
    を備えている。
    (2)前記アイオノマコート触媒は、次の式(1)で表される残存率R(%)が30%以上である。
    R(%)=(x0-x)×100/x0 ・・・(1)
    但し、
    xは、前記アイオノマコート触媒を水:エタノール=70:30(重量比)の混合溶媒に加えて分散液とした時に、前記混合溶媒中に溶け出した前記アイオノマ(A)の濃度、
    0は、前記混合溶媒に前記アイオノマ(A)のすべてが溶け出したと仮定した時の、前記混合溶媒中のアイオノマ濃度の理論値。
    (3)前記アイオノマ(A)は、酸素透過係数が5×10 -12 cm 3 ・cm/cm・s・Pa以上である高酸素透過アイオノマからなる。
  2. 前記電極触媒は、
    カーボン担体と、
    前記カーボン担体の表面に担持された触媒微粒子と
    を備えている請求項1に記載のアイオノマコート触媒。
  3. 前記カーボン担体は、比表面積が150m2/g以上1300m2/g以下であり、
    前記残存率R(%)は、40%以上である
    請求項2に記載のアイオノマコート触媒。
  4. I/C比が0.2以上0.7以下である請求項2又は3に記載のアイオノマコート触媒。
    但し、「I/C比」とは、前記カーボン担体の重量(Wc)に対する前記アイオノマ(A)の重量(Wi)の比(=Wi/Wc)をいう。
  5. 前記残存率R(%)が70%以上である請求項1から4までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒。
  6. ブレードコート法又は間欠ダイ塗工法で塗工するための触媒インクに用いられる請求項1から5までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒。
  7. 電極触媒、アイオノマ(A)、水、及び、必要に応じてアルコールを含み、水比率が0.8以上である分散液を調整する第1工程と、
    前記分散液を乾燥させ、粉末を得る第2工程と、
    前記粉末を130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理し、請求項1から6までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒を得る第3工程と
    を備えたアイオノマコート触媒の製造方法。
  8. 前記水比率が0.88以上である請求項7に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  9. 前記熱処理温度は、160℃以上である請求項7又は8に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  10. 前記第1工程は、前記分散液を高圧ホモジナイザーで分散処理するものからなる請求項7から9までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  11. 前記第3工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、前記アイオノマ(A)を溶解させることが可能な溶媒の蒸気に曝す第4工程をさらに備えた請求項7から10までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  12. 前記第4工程で得られた前記アイオノマコート触媒を、再度、130℃以上200℃以下の熱処理温度で熱処理する第5工程をさらに備えた請求項11に記載のアイオノマコート触媒の製造方法。
  13. 請求項1から6までのいずれか1項に記載のアイオノマコート触媒と、
    前記アイオノマコート触媒を分散させるための分散媒と
    を備えた触媒インク。
  14. 前記分散媒に添加されたアイオノマ(B)をさらに備えた請求項13に記載の触媒インク。
  15. 固形分濃度が14wt%以上40wt%以下であり、
    せん断速度:562s-1でのせん断粘度が0.13Pa・s以下である
    請求項13又は14に記載の触媒インク。
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