JP2011235788A - 車両用シートのスライド装置 - Google Patents

Abstract

【課題】特にロアレールを高剛性にすることなく簡単な構成で、車両の前突時においてもシート本体を的確に前後移動させる。
【解決手段】シート本体２の底面部に固設した前後に長尺なアッパーレール２１と、該アッパーレール２１を前後方向にスライド自在に保持する車体のフロア５側に配設したロアレール２２と、アッパーレール２１の前部分に固定され、アッパーレール２１の前傾移動に際して該アッパーレール２１と共に下方に移動するブラケット４１と、アッパーレール２１の後部分に固定され、アッパーレール２１の後部の上方移動に際して該アッパーレール２１と共に上方に移動するＪフック部材３６と、ブラケット４１の下方への移動時にブラケット４１が当接して下方への力を吸収自在で、Ｊフック部材３６の上方への移動時にＪフック部材３６が当接して上方への力を吸収自在な補強部材２６を設ける。
【選択図】図２

Description

本発明は、車体本体側に設けたロアレールに対してシート本体側に設けたアッパーレールを前後移動することによりシート本体を前後スライド自在にする車両用シートのスライド装置に関する。

一般に、車両用シートのスライド装置は、車体のフロア上に固設されて前後方向に長尺なロアレールと、当該ロアレールに相対移動可能に連結されてシート本体を支持するアッパーレールとを備えて要部が構成されている。このような車両用シートのスライド装置では、車両衝突時等において、シートベルトが乗員をシートに固定しようとすると、アッパーレール前部には、ロアレールに対して前傾する方向に強い力が作用する一方、アッパーレール後部には、ロアレールから上方に浮き上がろうとする方向に強い力が作用する。

このため、例えば、特開平５−１２４４６２号公報（以下、特許文献１）では、ロアレールに形成されたガイド空間内にアッパーレールのスライド部を挿通するとともにロアレールに形成された開口を通してアッパーレールをスライド部から外部に延出し、ロアレールの開口縁に外方に突出する係合突起を設けるとともにアッパーレールにこの係合突起に両側から係合する規制突片を設け、係合突起と規制突片の係合により開口の開きを規制し、ロアレールからアッパーレールのスライド部が離脱するのを防止するシートトラックの技術が開示されている。

特開平５−１２４４６２号公報

しかしながら、上述の特許文献１は、あくまでもロアレールからアッパーレールのスライド部が離脱するのを防止する技術であって、前述したようなアッパーレール前部のロアレールに対して前傾する方向に作用する力に対しては対処できないという問題がある。このアッパーレール前部の下方に対しての力が強く作用すると、ロアレールが下に凸状に屈曲される虞があり、この屈曲によりアッパーレールの前後移動が困難になる。そして、特に、車室内に前後３列のシートを備えた所謂３列シート車においては、２列目のシート本体の前後移動が阻害されると、３列目のシートに着座した乗員の速やかな脱出が困難となる虞がある。これに対処し、前突時にも円滑なシートスライドを確保すべく、例えば、ロアレールを高い剛性部材で構成することも考えられるが、このようなロアレールの高剛性化は重量増加やコストの高騰等を招く虞がある。

本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、特にロアレールを高剛性にすることなく簡単な構成で、車両の前突時においてもシート本体を的確に前後移動させることができる車両用シートのスライド装置を提供することを目的とする。

本発明は、シート本体の底面部に固設した前後に長尺なアッパーレールと、該アッパーレールを前後方向にスライド自在に保持する車体のフロア側に配設したロアレールと、上記アッパーレールの前部分に固定され、上記アッパーレールの前傾移動に際して該アッパーレールと共に下方に移動するブラケットと、上記ブラケットの下方への移動時に上記ブラケットが当接して下方への力を吸収自在なブラケット受け部材とを備えたことを特徴としている。

本発明の車両用シートのスライド装置によれば、特にロアレールを高剛性にすることなく簡単な構成で、車両の前突時においてもシート本体を的確に前後移動させることが可能となる。

本発明の実施の一形態に係る車両外側より観る車両用シート全体の概略構成図である。 本発明の実施の一形態に係るスライド装置の説明図であって、（ａ）はスライド装置の平面図、（ｂ）は左側面図である。 図２のＩＩＩ−ＩＩＩ断面図である。 本発明の実施の一形態に係るブラケットの斜視図である。 本発明の実施の一形態に係るブラケットの説明図であって、（ａ）は（ｂ）の平面図、（ｂ）は（ｃ）の左側面図、（ｃ）は正面図、（ｄ）は（ｃ）の右側面図である。

以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。

図１において、符号１は車両用シートを示し、この車両用シート１は、例えば、車室内に前後３列のシートを備えた所謂３列シート車の２列目に位置するシートであり、このシート１は、シート本体２と、このシート本体２を車体のフロア５上に支持するスライド装置３と、を備えて構成されている。

シート本体２は、乗員１００が着座するシートクッション１０と、このシートクッション１０の後部にリクライニング機構１１を介して傾動可能に連結されたシートバック１２とを備えて主要に構成されている。また、シートクッション１０の後部には、衝突時等に乗員１００をシート本体２に拘束するシートベルト（例えば、３点式ELR（Emergency Locking Retractor）シートベルト）１５の基端部が連結されている。

スライド装置３は、車体外側に配置されたスライド機構２０ｏと車体中央側に配置されたスライド機構２０ｉの車幅方向に平行配置された左右一対のスライド機構を備えて主要に構成されている（なお、図１では、車体外側に配置されたスライド機構２０ｏのみを示す）。

この車体外側に配置されたスライド機構２０ｏは、シート本体２の底面部に固設した前後に長尺なアッパーレール２１と、アッパーレール２１に設けた複数（本実施の形態では、前、後、中央の３組）のローラ２３を転動自在に保持して、アッパーレール２１を前後方向にスライド自在に保持する車体のフロア５に配設したロアレール２２とを有して構成されている。

図２及び図３に示すように、ロアレール２２は、略角筒形状をなす長尺な板金部材で構成されている。ロアレール２２の頂壁２４には、長手方向に直線状に延在するスリット２５が形成され、このスリット２５を介して、ロアレール２２の内外が連通されている。

また、ロアレール２２の側壁と底壁の外側には、ロアレール２２を補強するレール状の補強部材２６が外装されており、この補強部材２６は、ロアレール２２の底壁とフロア５との間に共に固定されている。補強部材２６の長手方向の両縁部は、後端から略前端にかけて外側（ロアレール２２とは反対の側）に向けて屈曲され、更に、下側に向けて屈曲してフランジ部２７ａ、２７ｂが形成されている。

一方、アッパーレール２１は、スリット２５を貫通してロアレール２２の内外に立設する縦壁２８と、この縦壁２８の上部から車体外側に向けて屈曲して延在する頂壁２９とが形成された、断面略逆Ｌ字形状をなす板金部材で構成されており、この頂壁２９がシート本体２の底面部に固定されることで、シート本体２の底面部にアッパーレール２１が固定されている。

アッパーレール２１の縦壁２８において、ロアレール２２内に臨まされる下部領域の前、後、中央の各部には、ローラ軸３１、３１、３１が固定され、これらローラ軸３１、３１、３１の両端部には、左右一対をなすローラ２３、２３、２３が、それぞれベアリングを介して回動可能に軸支されている。

各ローラ軸３１、３１、３１に軸支された左右一対のローラ２３、２３、２３は、ロアレール２２内に収容され、スリット２５を挟んで左右に位置する頂壁２４と、当該頂壁２４に略平行に対向する底壁との間にそれぞれ保持されている。そして、これらロアレール２２内に保持されたローラ２３、２３、２３を介してアッパーレール２１がロアレール２２と相対移動可能に連結されることにより、アッパーレール２１の頂壁２９に固設されたシート本体２の車体前後方向へのシートスライドが可能となっている。

また、アッパーレール２１の頂壁２９の後側部分には、下側に向けて延出された断面逆Ｌ字形状をなすフック取り付け用ブラケット３５が設けられている。そして、このフック取り付け用ブラケット３５により、略後部のローラ２３の上方の位置に、断面がＪ形状の板金のＪフック部材３６が下方に向けて延出され、固定されている。このＪフック部材３６の上方に向けて屈曲されている先端部分は、上述の補強部材２６のフランジ部２７ａの内側に延出されており、Ｊフック部材３６が上方へ移動した際には、Ｊフック部材３６が当接してＪフック部材３６の上方への移動を規制して上方への力を吸収可能になっている。

更に、アッパーレール２１の前部の略前部のローラ２３の上方の位置で、縦壁２８と頂壁２９とで囲まれる部位には、略直方体形状のブラケット４１がアッパーレール２１に固定されている。

このブラケット４１は、図４、５に示すように、前面部４５と、右側面部４６と、左側面部４７と、上面部４８と、後面部４９とを有し、補強部材２６のフランジ部２７ａに面する下面は開放して形成されている。そして、ブラケット４１の左側面部４７と上面部４８が、アッパーレール２１の縦壁２８と頂壁２９の内側に沿って固定されることで、ブラケット４１がアッパーレール２１に固定されている。

ブラケット４１の左側面部４７は、下方に延出して形成されており、この下方に延出した部分に前側のローラ２３のローラ軸３１を挿通する孔４７ａが穿設されている。

ブラケット４１の前面部４５と後面部４９は、下の端部の幅が、補強部材２６のフランジ部２７ａの上方に位置して、該フランジ部２７ａの幅よりも狭くなるように形成されている。このため、アッパーレール２１が前に傾いた場合、ブラケット４１もアッパーレール２１の前側と共に下方に移動してブラケット４１の前面部４５の下端部が補強部材２６のフランジ部２７ａに当接してブラケット４１の下方への移動を規制して下方への力を吸収可能になっている。

このように、本実施の形態では、補強部材２６のフランジ部２７ａの後端部分がＪフック受け部材として設けられており、前端部分がブラケット受け部材として設けられている。

上述のように構成される本実施の形態による車両用シート１では、車両の前突時等においては、例えば、図１中に矢印で示すように、乗員１００に作用する衝撃荷重がシートベルト１５等に伝達されると、アッパーレール２１には、前端部側を下方に移動させるとともに、後端部側を上方に移動させようとする荷重が作用する。従って、前突によってロアレール２２が屈曲される場合には、そのほとんどの場合、前突時に下に凸となるよう屈曲される。

しかしながら、本実施の形態によるスライド機構２０ｏでは、後側では、浮き上がろうとする力が、後側のローラ２３を介してロアレール２２の頂壁２４の後側に作用すると共に、Ｊフック部材３６を介して補強部材２６のフランジ部２７ａの後部に分散して作用する。また、スライド機構２０ｏの前側では、下方への力が、前側のローラ２３を介してロアレール２２の底壁に作用すると共に、ブラケット４１を介して補強部材２６のフランジ部２７ａのローラ２３近傍位置の上面部に分散して作用する。このように、前突時等にスライド機構２０ｏに作用する力は、スライド機構２０ｏの後側でも前側でも分散して伝達されて、ロアレール２２に集中して伝達されることがないため、特にロアレール２２を高剛性にすることなく、ロアレール２２が下に凸となるよう屈曲されることが確実に防止されるので、車両の前突時においてもシート本体を的確に前後移動させることが可能となっている。

また、本実施の形態によるスライド機構２０ｏでは、特に前側では、補強部材２６に作用力を分散するブラケット４１を追加するのみでロアレール２２の屈曲防止に大きな効果を奏するので、従来のスライド機構２０ｏにも容易に適用でき汎用性が広い。

尚、本実施の形態では、スライド装置３の車体外側に配置されたスライド機構２０ｏについて説明したが、車体中央側に配置されたスライド機構２０ｉは、車体外側に配置されたスライド機構２０ｏと同様に、Ｊフック部材３６、ブラケット４１を共に設けて構成しても良く、強度的に十分であれば、いずれか一つのみを設けて構成するようにしても良い。

１ 車両用シート
２ シート本体
３ スライド装置
５ フロア
１５ シートベルト
２０ｏ、２０ｉ スライド機構
２１ アッパーレール
２２ ロアレール
２３ ローラ
２６ 補強部材（Ｊフック受け部材、ブラケット受け部材）
２７ａ、２７ｂ フランジ部
３６ Ｊフック部材
４１ ブラケット
１００ 乗員

Claims (4)

1. シート本体の底面部に固設した前後に長尺なアッパーレールと、
   該アッパーレールを前後方向にスライド自在に保持する車体のフロア側に配設したロアレールと、
   上記アッパーレールの前部分に固定され、上記アッパーレールの前傾移動に際して該アッパーレールと共に下方に移動するブラケットと、
   上記ブラケットの下方への移動時に上記ブラケットが当接して下方への力を吸収自在なブラケット受け部材と、
   を備えたことを特徴とする車両用シートのスライド装置。
2. 上記アッパーレールの後部分に固定され、上記アッパーレールの後部の上方移動に際して該アッパーレールと共に上方に移動する断面がＪ形状のＪフック部材と、
   上記Ｊフック部材の上方への移動時に上記Ｊフック部材が当接して上方への力を吸収自在なＪフック受け部材と、
   を備えたことを特徴とする請求項１記載の車両用シートのスライド装置。
3. 上記ブラケット受け部材は、上記Ｊフック受け部材を前方に延出して形成したことを特徴とする請求項２記載の車両用シートのスライド装置。
4. 上記アッパーレールと上記ロアレールは、上記シート本体の車体外側と車体中央側にそれぞれ設けられ、上記ブラケットと上記ブラケット受け部材は、少なくとも上記車体外側に設けられていることを特徴とする請求項１乃至請求項３の何れか一つに記載の車両用シートのスライド装置。

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